「Round Zero ~Killing time」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

Round Zero ~Killing time」(2011/10/26 (水) 09:10:12) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*Round Zero ~Killing time ◆LuuKRM2PEg 「成る程、既に三分の一が死んでいるのか」  D-8エリアに存在する『Wの世界』の園咲邸を模したような屋敷で、金居は静かに呟く。  時計の針が六時を越えた頃、突如としてこの屋敷に存在する全ての映像媒体が起動して、大ショッカーによる放送が行われた。そこで知った、死者の名前と『禁止エリア』なる存在。  誰が死んだかは、彼にとってはどうでもよかった。強いて言うなら同じ世界の住民である剣崎一真や桐生豪、乃木怜治が東京タワーで出会ったと言う霧島美穂に少し関心が向いたが、別にそこまで気にするほどではない。  それよりも、気になるのは禁止エリアによって行動がある程度制限されたことだ。何でもそこに向かうと、問答無用で首輪が爆発されるらしい。  しかもその中には、これから向かうはずだった病院があるE-4エリアまで含まれている。そこまで大きな問題ではないが、例え乃木と合流したとしても長時間の休息は不可能となった。  もっとも、間に合わないなら間に合わないで他の施設を目指せばいい。 「それにしても……何故、奴が大ショッカーにいる?」  そしてもう一つ、金居にとって疑問となっている存在が一つ。あの放送を行っていたキングという男は、見覚えがあった。  一万年前に行われたかつてのバトルファイトで見た、種の繁栄を賭けて戦っていたアンデッドの一人。それもスペードのカテゴリーキングだ。  何故、奴が大ショッカー側にいるのか? 何故、封印された筈の奴が再び解放されたのか? そして何よりも、何故世界の命運を賭けたこの状況で奴は笑っているのか?  放送を行っていた奴の態度からは、悲観といった感情が一切感じられない。いやむしろ、この状況を楽しんでいるかのようにも感じられた。  天王寺が率いるBOARDによって開放されてから再び行われたバトルファイトで、キングと直接出会った事は無い。故に、奴の思考や目的がまるで読めなかった。 「……俺達は、ただのゲームの駒に過ぎないと、そう言いたいのか? 貴様は」  その言葉には、確かな憤りが込められている。  放送の最後でキングはこの戦いをゲームと呼び、馬鹿なプレイヤーは最初で潰されると言った。それはすなわち、奴にとって自分達は遊び道具に過ぎない事を示す。  アンデッドの王にまで登り詰めた金居には、それが屈辱だった。だが、ここで怒りを覚えても仕方がない。今は精々、奴の言葉通りにゲームとやらを続ける。 「良いだろう……だが、忘れるな。俺はアンデッドとして、最後には貴様を封印してみせる」  この世界の何処にもいない、だが自分を確実に見ているであろうキングに言い聞かせるように、金居はそう告げた。  そして彼は豪華な雰囲気を放つ椅子から立ち上がり、自身の傍らで佇んでいる男に振り向く。五代雄介の顔は人形のように固まっており、一切の感情が感じられなかった。  地の石の効果で、ライジングアルティメットとなって絶大なる戦闘力を手に入れて、操り人形となった男。しかし物事は都合よく行かず、情報を引き出そうとしても何も答えない。  どうやらこれはクウガの意思を全て奪う代償に、全ての意識を抹消してしまうようだ。もっとも、別にそこまで悲観することは無い。情報を引き出せないのなら、捨て駒としても上等だからだ。   「さて……そろそろ行くか」  全ての荷物を纏めた金居は部屋から出て、その後をついて行くように五代も無言で歩く。  この屋敷を捜索したが、研究室のような施設を見つけられただけで、後は何も無い。故に、これ以上ここに留まっている理由は無かった。  屋敷に出ると、外は既に暗闇で包まれている。まるで全ての物を押し潰してしまうかのような、究極の闇。  しかし今の五代雄介に宿るのは、究極すらも遥かに超えた闇だった。そして、それを意のままに操る手段を、金居は持っている。果てしなき闇を進む彼らの表情からは、一切の感情が感じられなかった。 ◆ 「くっ……まだだ、まだだ……っ!」  草加雅人は足元が覚束無いまま、道をたった一人で進んでいる。その表情からはいつもの余裕は微塵も無く、鬼のように歪んでいた。  頬から次々と流れる脂汗は、雑草の生えた地面に落下しては飲み込まれる。息も絶え絶えで、全身に凄まじい激痛が残ったままだった。本来ならば歩く事すらも難しい状態だったが、彼は動いている。  草加を動かしている物はたった一つ。園田真理を救いたいという、揺るぎない信念。 「真理……真理……真理ッ!」  それだけを胸に、愛しい彼女の名前を呼んで身体に鞭を打って進む。だが、そのスピードはあまりにも遅かった。  何故、こうなったか。考えるまでもない、五代雄介が何の前触れもなく自分達を裏切ったからだ。しかもその際に秋山蓮は、メモリとカードデッキを持って一人で逃げる。  もう、自分が利用出来る者は誰もいない。だが関係ない、優勝して真理を蘇らせるまでは戦わなければならないのだから。五代との戦いで気絶し、大分時間が経ってしまっている。  これ以上、止まるわけにはいかなかった。例え何処にも行けなくても、例え何も見えなくても、止まれない。  それが小さな明かりすら見えない、闇の中だろうと。 「心配するな、真理……俺がまたお前の笑顔を取り戻してやるから……待っていてくれ……」  真理の笑顔を脳裏に思い浮かべ、草加は思わず笑みを浮かべる。彼女の幸せを思えば、戦えた。彼女と共にいる日々を願えば、戦えた。  園田真理というたった一つの希望を信じて、永遠とも思えるような暗闇を進む。一体何処に向かっているのか、何処を目指しているのか。草加自身、分かっていない。  オルフェノクのような化け物、そして異世界の住民を皆殺しに出来ればそれで良かった。優勝した矢先には真理を蘇生させて、自分の世界からオルフェノクどもを一掃する。 「だから、泣かないでくれ……お前に涙は似合わない……」  俺達の世界は、俺達人間の物。だからどんな手を使ってでも、化け物どもを殺して取り戻してみせる。ここで死んだら、今まで何のために生きてきて戦ってきたのか。全てが無意味になってしまう。  忘れもしない流星塾生の同窓会が行われたあの日、オルフェノクに俺達は殺された。しかしようやくカイザのベルトを手にして、敵討ちをする事が出来るようになる。  乾巧も、木場勇治も、海堂直也も、村上峡児も、誰一人として残さず殺さなければならない化け物だ。この手で全員消せば、奴らによって全てを滅茶苦茶にされた真理が本当に救われる。  その時が来るまで、諦められない。 「俺が……俺が必ず君を助けてみせる……だから……アァッ!」  草加の思いは、転倒した事によって途中で途切れてしまう。どれだけ強い執念を持っていようとも、身体のダメージは深刻だった。  転んだ事によって、荷物が辺りに散らばってしまう。草加は何とかして起きあがろうとするが、身体が言う事を聞かない。 「だから……俺だけを見ていてくれ、真理。君に相応しいのは……俺だけなんだから」  流星塾にいる頃から、ずっと真理の事を思ってきた。それだけは今も変わらない。君を泣かせるような奴は、俺が全員殺す。世界に君の邪魔になるような存在があるのなら、俺が一つ残らず破壊する。  俺は君を助ける。だから、君も俺の事を助けてくれ。いつものように、その優しい手で俺の手を握ってくれ。  それだけが、俺の望みなんだ。 「死んで……たまるか!」  彼女は俺の生きる理由。彼女は俺にとっての全て。彼女こそが俺の世界でもある。  それを潰した奴らは、この手で殺す。奴らは唯一無二である、俺の母親となってくれる女を殺した。奴らは俺を守ってくれる母親を殺した。  許さない。許せるわけがない。例えどれだけ命乞いをしようとも、皆殺しにする。皮を剥ぎ、四肢を砕き、首を千切ってもまだ足りない。  どす黒い憎悪を胸に抱きながら、草加は芋虫のように地面を這い蹲って、カイザの変身ギアに手を伸ばした。指先が届くまで、あと少し。  しかしその最中、視界の外より一本の腕が唐突に現れて、カイザギアを奪った。何事かと思った瞬間、近くに気配を感じる。  草加は顔を上げて来訪者の姿を確認しようとするが、その速度は遅かった。ようやく見えるようになった頭部も、辺りが暗いでよく見えない。  ただ唯一はっきりしているのは、来訪者から感じる視線が氷のように冷たい事だけ。そして、オルフェノクのような薄気味悪さも感じられた。   「……何者だ」  草加は思わず、そう訪ねた。  自分は見下されている。そう思った事で苛立ちを感じたが、草加は必死にそれを堪えた。  この状況はチャンスでもある。もしも現れたのがフィリップのようなお人好しであれば、自分の事を救おうとする筈だ。例えそうでない奴だとしても、自分をすぐに殺さない分まだ可能性はあるかもしれない。  もしも、こちらを利用しようと考えるならばそれはそれで良しとする。今は相手の手駒でも、時間を待てば出し抜ける機会は訪れるかもしれない。いざとなったら盾にする事も、立場を逆転させる事も出来るはず。  そうすれば真理を救える、そうすれば真理とまた一緒にいられる。ようやく見えてきた微かな希望を胸に、草加は来訪者の反応を待った。 「フン、まだ生きていたのか」  しかし帰ってきたのは、冷たい一言。  その意味を考える暇もなく、草加の耳に銃声が響く。次の瞬間、彼の頭部に凄まじい熱と衝撃が走った。頭が押し潰されてしまいそうな重圧を感じて、視界が真っ赤に染まる。  目の前の色を拭い払う事なんて出来ない。一体何が起こったのかなんて、考える事が出来ない。  唯一考える事が出来るのは、この世界で一番大切な存在。園田真理の笑顔、園田真理との思い出、園田真理が自分の隣にいる未来。  しかしそれらも、血のような赤に塗り潰されていく。変わりに見えるのは、流星塾生達のように灰となっていく自分自身。  嫌だ、真理が消えていく。真理が見えてなくなっていくなんて、嫌だ。死にたくない、俺はまだ死にたくない。こんな俺は、俺じゃない。一体誰なんだ、この男は。  助けてくれ、真理。いつものように俺の手を握ってくれ。  助けてくれ、真理。俺も君を助ける、君の事を守ってあげるから。だから、君も俺と一緒にいてくれ。そうすれば、君も俺も幸せになれるから。  この世界には、俺と君以外に誰もいなくてもいいし、何も必要ない。俺は君だけを見ているし、君も俺だけを見ていれば良いんだ。  だから、そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。俺から目をそらさないでくれ、俺に背中を向けないでくれ。  何処にも行かないでくれ。どうして俺を一人にして、そっちに行ってしまうんだ。どうして俺も一緒に連れて行ってくれないんだ。  いつものように……子供の頃のように、俺の手を引いて歩いてくれ。そうしないと、俺は壊れてしまう。俺から何もかもが無くなってしまう。俺は生きていけなくなる。  ねえ、まってくれよ……まり。  果てしない暗闇の中で、草加は真理に手を伸ばすが届かない。自分から去っていく真理の後を追っていくが、届かない。  それは当然だった。彼の見ている真理は真実ではない、虚像の存在。もう園田真理は、この世にいないのだから。  しかし草加がそれに気付く事は永遠にない。彼はもう何が幻で、何が真実なのかが分からないのだから。  ただ一つだけ、彼が知る事の出来ない真実が一つだけ存在する。それは、草加が真理と同じ世界に行った事を。  草加雅人がこの世界で、たった一人への愛に生きた生涯を終えた事を。 ◆  もう動く事のない男の身体を、金居は冷ややかに見下ろしていた。頭部には風穴が空いており、そこから大量の血液が飛び出している。  脳だった赤い肉や、骨だった白い欠片も散らばっていた。大半の人間が見たら吐き気を促すだろうが、彼は特に何も感じていない。感じる必要も意義も存在しなかった。  ただ、邪魔者が一人減った程度にしか思っていない。金居が名も知らぬ男を殺した理由はたった一つ。男からは、利用価値が見いだせなかった為。  こいつは先程、クウガの男と行動を共にしていた奴だ。しかも、ライジングアルティメットになった瞬間、何の躊躇いもなく殺しにかかっている。  だからこいつはまるで信用出来なかった。同行者を襲う奴から情報を引き出そうとしたところで、真実を伝えられるわけがない。手駒にしたとしても、途中で裏切るに決まっている。  周りにも、クウガの男以外に気配が一切感じられない。故に、金居はデザートイーグルの引き金を引いて頭部を撃ち抜いた。先程の戦いで負ったダメージが深かったのか、何の抵抗も出来ずに死んでしまう。  金居は男が使っていた変身ベルトを始めとした、全ての支給品を回収した。それを終えた頃、倒れた男の身体から突然、全ての色が消えていく。髪の毛も破裂した肉片も、灰色に染まっていった。 「何……?」  何事か――そう思った頃には、金居の目前で男はまるで灰のように崩れ落ちる。後に残ったのは、銀色に輝く首輪だけだった。  流石の金居も、思わず目を見開いてしまう。射殺した相手の身体が灰になるなど、自分の世界では到底有り得ない現象だったからだ。  しかしそれは一瞬で、彼はすぐに瞳を細める。それどころか、薄い笑みすらも浮かべていた。 「……わざわざ自分から証拠を消してくれるとは、実に有り難いな」  男の成れの果てである灰は、ゆっくりと風に流されていく。このまま行けば、誰にも見つからないまま消えていく筈だ。  自分が奴を殺害した痕跡が一切残らない。それどころか、死因の特定も遺体の発見すらも出来ないだろう。放送で男の名前は呼ばれるだろうが、犯人が自分だと証明する事は誰にも出来ない。  灰の山に埋もれた首輪も、証拠になるとは考えにくい。最良の手段としては首輪を川に捨てる事だが、その間に誰かに見つかっては疑われてしまう。  何にせよ、これ以上この場に留まっていてもどうにもならない。そう思いながら金居は、首輪から目をそらして去っていった。 「変身一発……か。それにしても、お前はいい物を持っていたな」  答えが返ってこない事を知りつつも、金居は五代に向けてそう告げる。五代のデイバッグには二本の瓶が入っていた。もう一つの『555の世界』で人間解放軍の科学者である野村が生み出した、変身一発と呼ばれるドリンク剤。  本来ならば草加雅人以外の人間にオルフェノクの記号を埋め込み、カイザに変身した後の灰化を食い止める存在。それが、五代の支給品として配られていた。  だが言葉の反面、金居は変身一発に大した期待を抱いていない。副作用を無効か出来る反面、変身一発を飲んだ人間によって二度目の変身を行われると今度はベルトが灰化するようだ。  そこまで事態は希望に満ちていない――まるでこの殺し合いを象徴しているかのようだと、金居は無意識の内に呟いた。 【1日目 夜】 【E-7 道路】 【金居@仮面ライダー剣】 【時間軸】第42話終了後 【状態】健康 【装備】デザートイーグル(2発消費)@現実、カイザドライバー@仮面ライダー555、カイザブレイガン@仮面ライダー555、カイザショット@仮面ライダー555、ロストドライバー@仮面ライダーW 【道具】支給品一式×2、地の石@劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト 五代の不明支給品×1(確認済み)、草加の不明支給品×1(確認済み) 【思考・状況】 1:自分の世界の勝利を目指す為、他の世界の参加者同士で潰し合わせる。能動的に戦うつもりはない。 2:他の世界、及び大ショッカーの情報を集める。 3:自分の世界の仮面ライダーは利用出来るなら利用する。アンデッドには遭遇したくない。 4:利用できる参加者と接触したら、乃木を潰す様に焚きつける。 5:地の石の力を使いクウガを支配・利用する(過度な信頼はしない)。 6:22時までにE-5の病院に向かう。 【備考】 ※アンデッドが致命傷を受ければ封印(=カード化)されると考えています ※首輪が自身の力に制限をかけていることに気づきました ※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 ※地の石の効果を知りました。 ※五代の不明支給品の一つは変身一発@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロストです 【五代雄介@仮面ライダークウガ】 【時間軸】第46話終了後 【状態】健康、地の石による支配 【装備】アマダム@仮面ライダークウガ 【道具】無し 【思考・状況】 1:地の石を持つ者(金居)に従う。 【備考】 ※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。 ※地の石による支配力がどれぐらいかは次の書き手以降に任せます。 ※地の石の支配によって、言葉を発する事が出来ません。 &color(red){【草加雅人@仮面ライダー555 死亡確認】}  &color(red){残り38人} &color(red){※草加の遺体は灰化しました。首輪は【D-7 草原】に放置されています。} |083:[[会食参加希望者達(後編)]]|投下順|085:[[愚者の祭典/終曲・笑う死神(前編)]]| |082:[[世界の真実]]|時系列順|085:[[愚者の祭典/終曲・笑う死神(前編)]]| |073:[[落ちた偶像 ~kuuga vs χ~]]|[[金居]]|| |073:[[落ちた偶像 ~kuuga vs χ~]]|[[五代雄介]]|| |073:[[落ちた偶像 ~kuuga vs χ~]]|[[草加雅人]]|| ----
*Round Zero ~Killing time ◆LuuKRM2PEg 「成る程、既に三分の一が死んでいるのか」  D-8エリアに存在する『Wの世界』の園咲邸を模したような屋敷で、金居は静かに呟く。  時計の針が六時を越えた頃、突如としてこの屋敷に存在する全ての映像媒体が起動して、大ショッカーによる放送が行われた。そこで知った、死者の名前と『禁止エリア』なる存在。  誰が死んだかは、彼にとってはどうでもよかった。強いて言うなら同じ世界の住民である剣崎一真や桐生豪、乃木怜治が東京タワーで出会ったと言う霧島美穂に少し関心が向いたが、別にそこまで気にするほどではない。  それよりも、気になるのは禁止エリアによって行動がある程度制限されたことだ。何でもそこに向かうと、問答無用で首輪が爆発されるらしい。  しかもその中には、これから向かうはずだった病院があるE-4エリアまで含まれている。そこまで大きな問題ではないが、例え乃木と合流したとしても長時間の休息は不可能となった。  もっとも、間に合わないなら間に合わないで他の施設を目指せばいい。 「それにしても……何故、奴が大ショッカーにいる?」  そしてもう一つ、金居にとって疑問となっている存在が一つ。あの放送を行っていたキングという男は、見覚えがあった。  一万年前に行われたかつてのバトルファイトで見た、種の繁栄を賭けて戦っていたアンデッドの一人。それもスペードのカテゴリーキングだ。  何故、奴が大ショッカー側にいるのか? 何故、封印された筈の奴が再び解放されたのか? そして何よりも、何故世界の命運を賭けたこの状況で奴は笑っているのか?  放送を行っていた奴の態度からは、悲観といった感情が一切感じられない。いやむしろ、この状況を楽しんでいるかのようにも感じられた。  天王寺が率いるBOARDによって開放されてから再び行われたバトルファイトで、キングと直接出会った事は無い。故に、奴の思考や目的がまるで読めなかった。 「……俺達は、ただのゲームの駒に過ぎないと、そう言いたいのか? 貴様は」  その言葉には、確かな憤りが込められている。  放送の最後でキングはこの戦いをゲームと呼び、馬鹿なプレイヤーは最初で潰されると言った。それはすなわち、奴にとって自分達は遊び道具に過ぎない事を示す。  アンデッドの王にまで登り詰めた金居には、それが屈辱だった。だが、ここで怒りを覚えても仕方がない。今は精々、奴の言葉通りにゲームとやらを続ける。 「良いだろう……だが、忘れるな。俺はアンデッドとして、最後には貴様を封印してみせる」  この世界の何処にもいない、だが自分を確実に見ているであろうキングに言い聞かせるように、金居はそう告げた。  そして彼は豪華な雰囲気を放つ椅子から立ち上がり、自身の傍らで佇んでいる男に振り向く。五代雄介の顔は人形のように固まっており、一切の感情が感じられなかった。  地の石の効果で、ライジングアルティメットとなって絶大なる戦闘力を手に入れて、操り人形となった男。しかし物事は都合よく行かず、情報を引き出そうとしても何も答えない。  どうやらこれはクウガの意思を全て奪う代償に、全ての意識を抹消してしまうようだ。もっとも、別にそこまで悲観することは無い。情報を引き出せないのなら、捨て駒としても上等だからだ。   「さて……そろそろ行くか」  全ての荷物を纏めた金居は部屋から出て、その後をついて行くように五代も無言で歩く。  この屋敷を捜索したが、研究室のような施設を見つけられただけで、後は何も無い。故に、これ以上ここに留まっている理由は無かった。  屋敷に出ると、外は既に暗闇で包まれている。まるで全ての物を押し潰してしまうかのような、究極の闇。  しかし今の五代雄介に宿るのは、究極すらも遥かに超えた闇だった。そして、それを意のままに操る手段を、金居は持っている。果てしなき闇を進む彼らの表情からは、一切の感情が感じられなかった。 ◆ 「くっ……まだだ、まだだ……っ!」  草加雅人は足元が覚束無いまま、道をたった一人で進んでいる。その表情からはいつもの余裕は微塵も無く、鬼のように歪んでいた。  頬から次々と流れる脂汗は、雑草の生えた地面に落下しては飲み込まれる。息も絶え絶えで、全身に凄まじい激痛が残ったままだった。本来ならば歩く事すらも難しい状態だったが、彼は動いている。  草加を動かしている物はたった一つ。園田真理を救いたいという、揺るぎない信念。 「真理……真理……真理ッ!」  それだけを胸に、愛しい彼女の名前を呼んで身体に鞭を打って進む。だが、そのスピードはあまりにも遅かった。  何故、こうなったか。考えるまでもない、五代雄介が何の前触れもなく自分達を裏切ったからだ。しかもその際に秋山蓮は、メモリとカードデッキを持って一人で逃げる。  もう、自分が利用出来る者は誰もいない。だが関係ない、優勝して真理を蘇らせるまでは戦わなければならないのだから。五代との戦いで気絶し、大分時間が経ってしまっている。  これ以上、止まるわけにはいかなかった。例え何処にも行けなくても、例え何も見えなくても、止まれない。  それが小さな明かりすら見えない、闇の中だろうと。 「心配するな、真理……俺がまたお前の笑顔を取り戻してやるから……待っていてくれ……」  真理の笑顔を脳裏に思い浮かべ、草加は思わず笑みを浮かべる。彼女の幸せを思えば、戦えた。彼女と共にいる日々を願えば、戦えた。  園田真理というたった一つの希望を信じて、永遠とも思えるような暗闇を進む。一体何処に向かっているのか、何処を目指しているのか。草加自身、分かっていない。  オルフェノクのような化け物、そして異世界の住民を皆殺しに出来ればそれで良かった。優勝した矢先には真理を蘇生させて、自分の世界からオルフェノクどもを一掃する。 「だから、泣かないでくれ……お前に涙は似合わない……」  俺達の世界は、俺達人間の物。だからどんな手を使ってでも、化け物どもを殺して取り戻してみせる。ここで死んだら、今まで何のために生きてきて戦ってきたのか。全てが無意味になってしまう。  忘れもしない流星塾生の同窓会が行われたあの日、オルフェノクに俺達は殺された。しかしようやくカイザのベルトを手にして、敵討ちをする事が出来るようになる。  乾巧も、木場勇治も、海堂直也も、村上峡児も、誰一人として残さず殺さなければならない化け物だ。この手で全員消せば、奴らによって全てを滅茶苦茶にされた真理が本当に救われる。  その時が来るまで、諦められない。 「俺が……俺が必ず君を助けてみせる……だから……アァッ!」  草加の思いは、転倒した事によって途中で途切れてしまう。どれだけ強い執念を持っていようとも、身体のダメージは深刻だった。  転んだ事によって、荷物が辺りに散らばってしまう。草加は何とかして起きあがろうとするが、身体が言う事を聞かない。 「だから……俺だけを見ていてくれ、真理。君に相応しいのは……俺だけなんだから」  流星塾にいる頃から、ずっと真理の事を思ってきた。それだけは今も変わらない。君を泣かせるような奴は、俺が全員殺す。世界に君の邪魔になるような存在があるのなら、俺が一つ残らず破壊する。  俺は君を助ける。だから、君も俺の事を助けてくれ。いつものように、その優しい手で俺の手を握ってくれ。  それだけが、俺の望みなんだ。 「死んで……たまるか!」  彼女は俺の生きる理由。彼女は俺にとっての全て。彼女こそが俺の世界でもある。  それを潰した奴らは、この手で殺す。奴らは唯一無二である、俺の母親となってくれる女を殺した。奴らは俺を守ってくれる母親を殺した。  許さない。許せるわけがない。例えどれだけ命乞いをしようとも、皆殺しにする。皮を剥ぎ、四肢を砕き、首を千切ってもまだ足りない。  どす黒い憎悪を胸に抱きながら、草加は芋虫のように地面を這い蹲って、カイザの変身ギアに手を伸ばした。指先が届くまで、あと少し。  しかしその最中、視界の外より一本の腕が唐突に現れて、カイザギアを奪った。何事かと思った瞬間、近くに気配を感じる。  草加は顔を上げて来訪者の姿を確認しようとするが、その速度は遅かった。ようやく見えるようになった頭部も、辺りが暗いでよく見えない。  ただ唯一はっきりしているのは、来訪者から感じる視線が氷のように冷たい事だけ。そして、オルフェノクのような薄気味悪さも感じられた。   「……何者だ」  草加は思わず、そう訪ねた。  自分は見下されている。そう思った事で苛立ちを感じたが、草加は必死にそれを堪えた。  この状況はチャンスでもある。もしも現れたのがフィリップのようなお人好しであれば、自分の事を救おうとする筈だ。例えそうでない奴だとしても、自分をすぐに殺さない分まだ可能性はあるかもしれない。  もしも、こちらを利用しようと考えるならばそれはそれで良しとする。今は相手の手駒でも、時間を待てば出し抜ける機会は訪れるかもしれない。いざとなったら盾にする事も、立場を逆転させる事も出来るはず。  そうすれば真理を救える、そうすれば真理とまた一緒にいられる。ようやく見えてきた微かな希望を胸に、草加は来訪者の反応を待った。 「フン、まだ生きていたのか」  しかし帰ってきたのは、冷たい一言。  その意味を考える暇もなく、草加の耳に銃声が響く。次の瞬間、彼の頭部に凄まじい熱と衝撃が走った。頭が押し潰されてしまいそうな重圧を感じて、視界が真っ赤に染まる。  目の前の色を拭い払う事なんて出来ない。一体何が起こったのかなんて、考える事が出来ない。  唯一考える事が出来るのは、この世界で一番大切な存在。園田真理の笑顔、園田真理との思い出、園田真理が自分の隣にいる未来。  しかしそれらも、血のような赤に塗り潰されていく。変わりに見えるのは、流星塾生達のように灰となっていく自分自身。  嫌だ、真理が消えていく。真理が見えてなくなっていくなんて、嫌だ。死にたくない、俺はまだ死にたくない。こんな俺は、俺じゃない。一体誰なんだ、この男は。  助けてくれ、真理。いつものように俺の手を握ってくれ。  助けてくれ、真理。俺も君を助ける、君の事を守ってあげるから。だから、君も俺と一緒にいてくれ。そうすれば、君も俺も幸せになれるから。  この世界には、俺と君以外に誰もいなくてもいいし、何も必要ない。俺は君だけを見ているし、君も俺だけを見ていれば良いんだ。  だから、そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。俺から目をそらさないでくれ、俺に背中を向けないでくれ。  何処にも行かないでくれ。どうして俺を一人にして、そっちに行ってしまうんだ。どうして俺も一緒に連れて行ってくれないんだ。  いつものように……子供の頃のように、俺の手を引いて歩いてくれ。そうしないと、俺は壊れてしまう。俺から何もかもが無くなってしまう。俺は生きていけなくなる。  ねえ、まってくれよ……まり。  果てしない暗闇の中で、草加は真理に手を伸ばすが届かない。自分から去っていく真理の後を追っていくが、届かない。  それは当然だった。彼の見ている真理は真実ではない、虚像の存在。もう園田真理は、この世にいないのだから。  しかし草加がそれに気付く事は永遠にない。彼はもう何が幻で、何が真実なのかが分からないのだから。  ただ一つだけ、彼が知る事の出来ない真実が一つだけ存在する。それは、草加が真理と同じ世界に行った事を。  草加雅人がこの世界で、たった一人への愛に生きた生涯を終えた事を。 ◆  もう動く事のない男の身体を、金居は冷ややかに見下ろしていた。頭部には風穴が空いており、そこから大量の血液が飛び出している。  脳だった赤い肉や、骨だった白い欠片も散らばっていた。大半の人間が見たら吐き気を促すだろうが、彼は特に何も感じていない。感じる必要も意義も存在しなかった。  ただ、邪魔者が一人減った程度にしか思っていない。金居が名も知らぬ男を殺した理由はたった一つ。男からは、利用価値が見いだせなかった為。  こいつは先程、クウガの男と行動を共にしていた奴だ。しかも、ライジングアルティメットになった瞬間、何の躊躇いもなく殺しにかかっている。  だからこいつはまるで信用出来なかった。同行者を襲う奴から情報を引き出そうとしたところで、真実を伝えられるわけがない。手駒にしたとしても、途中で裏切るに決まっている。  周りにも、クウガの男以外に気配が一切感じられない。故に、金居はデザートイーグルの引き金を引いて頭部を撃ち抜いた。先程の戦いで負ったダメージが深かったのか、何の抵抗も出来ずに死んでしまう。  金居は男が使っていた変身ベルトを始めとした、全ての支給品を回収した。それを終えた頃、倒れた男の身体から突然、全ての色が消えていく。髪の毛も破裂した肉片も、灰色に染まっていった。 「何……?」  何事か――そう思った頃には、金居の目前で男はまるで灰のように崩れ落ちる。後に残ったのは、銀色に輝く首輪だけだった。  流石の金居も、思わず目を見開いてしまう。射殺した相手の身体が灰になるなど、自分の世界では到底有り得ない現象だったからだ。  しかしそれは一瞬で、彼はすぐに瞳を細める。それどころか、薄い笑みすらも浮かべていた。 「……わざわざ自分から証拠を消してくれるとは、実に有り難いな」  男の成れの果てである灰は、ゆっくりと風に流されていく。このまま行けば、誰にも見つからないまま消えていく筈だ。  自分が奴を殺害した痕跡が一切残らない。それどころか、死因の特定も遺体の発見すらも出来ないだろう。放送で男の名前は呼ばれるだろうが、犯人が自分だと証明する事は誰にも出来ない。  灰の山に埋もれた首輪も、証拠になるとは考えにくい。最良の手段としては首輪を川に捨てる事だが、その間に誰かに見つかっては疑われてしまう。  何にせよ、これ以上この場に留まっていてもどうにもならない。そう思いながら金居は、首輪から目をそらして去っていった。 「変身一発……か。それにしても、お前はいい物を持っていたな」  答えが返ってこない事を知りつつも、金居は五代に向けてそう告げる。五代のデイバッグには二本の瓶が入っていた。もう一つの『555の世界』で人間解放軍の科学者である野村が生み出した、変身一発と呼ばれるドリンク剤。  本来ならば草加雅人以外の人間にオルフェノクの記号を埋め込み、カイザに変身した後の灰化を食い止める存在。それが、五代の支給品として配られていた。  だが言葉の反面、金居は変身一発に大した期待を抱いていない。副作用を無効か出来る反面、変身一発を飲んだ人間によって二度目の変身を行われると今度はベルトが灰化するようだ。  そこまで事態は希望に満ちていない――まるでこの殺し合いを象徴しているかのようだと、金居は無意識の内に呟いた。 【1日目 夜】 【E-7 道路】 【金居@仮面ライダー剣】 【時間軸】第42話終了後 【状態】健康 【装備】デザートイーグル(2発消費)@現実、カイザドライバー@仮面ライダー555、カイザブレイガン@仮面ライダー555、カイザショット@仮面ライダー555、ロストドライバー@仮面ライダーW 【道具】支給品一式×3、地の石@劇場版仮面ライダーディケイド オールライダー対大ショッカー、変身一発(残り二本)@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロスト 五代の不明支給品×1(確認済み)、草加の不明支給品×1(確認済み) 【思考・状況】 1:自分の世界の勝利を目指す為、他の世界の参加者同士で潰し合わせる。能動的に戦うつもりはない。 2:他の世界、及び大ショッカーの情報を集める。 3:自分の世界の仮面ライダーは利用出来るなら利用する。アンデッドには遭遇したくない。 4:利用できる参加者と接触したら、乃木を潰す様に焚きつける。 5:地の石の力を使いクウガを支配・利用する(過度な信頼はしない)。 6:22時までにE-5の病院に向かう。 【備考】 ※アンデッドが致命傷を受ければ封印(=カード化)されると考えています ※首輪が自身の力に制限をかけていることに気づきました ※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 ※地の石の効果を知りました。 ※五代の不明支給品の一つは変身一発@劇場版 仮面ライダー555 パラダイス・ロストです 【五代雄介@仮面ライダークウガ】 【時間軸】第46話終了後 【状態】健康、地の石による支配 【装備】アマダム@仮面ライダークウガ 【道具】無し 【思考・状況】 1:地の石を持つ者(金居)に従う。 【備考】 ※首輪の考案について纏めたファイルを見ました。 ※地の石による支配力がどれぐらいかは次の書き手以降に任せます。 ※地の石の支配によって、言葉を発する事が出来ません。 &color(red){【草加雅人@仮面ライダー555 死亡確認】}  &color(red){残り38人} &color(red){※草加の遺体は灰化しました。首輪は【D-7 草原】に放置されています。} |083:[[会食参加希望者達(後編)]]|投下順|085:[[愚者の祭典/終曲・笑う死神(前編)]]| |082:[[世界の真実]]|時系列順|085:[[愚者の祭典/終曲・笑う死神(前編)]]| |073:[[落ちた偶像 ~kuuga vs χ~]]|[[金居]]|088:[[太陽は闇に葬られん(前編)]]| |073:[[落ちた偶像 ~kuuga vs χ~]]|[[五代雄介]]|088:[[太陽は闇に葬られん(前編)]]| |073:[[落ちた偶像 ~kuuga vs χ~]]|[[草加雅人]]|&color(red){GAME OVER}| ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: