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Uに一人だけの/COSMO BLAZER - (2013/08/10 (土) 23:54:23) の1つ前との変更点

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*Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE MainScene06 COSMO BLAZER 「確かここだったかな……」  ダグバがランスのデイパックの中を調べていたのはあるものを探す為だった。  それは拡声器、つまりランスに此処までの深手を負わせた事を伝えリント達やクウガを招き寄せる為である。 「あったあった」  そして拡声器を取り出しそのスイッチをオンにする。 「さてと……」  そして拡声器のマイクに口を当て、 『聞こえるかな、リントのみんな……僕の名前はダグバ、ン・ダグバ・ゼバ、リントからは未確認生命体第0号とも呼ばれているよ……』  拡声器がダグバの声を広げる。同一エリアはほぼ確実にその声を伝える。 『さっき、このタワーを崩壊させたリントの呼び声に従ってここに来て、そのリントを倒したばかり……でもまだ殺してはいない……』  聞く側にしてみればランスの呼びかけから10分程度しか経過していない。関係者はさらなる衝撃を受ける事だろう。だが、聞く側の衝撃はこれだけに留まらない。 『このリントを守りたいならば早くここに来てよ、殺されたくないならね……』  そう呼びかければリントはやって来る。ダグバはそう考えていた。勿論、ダグバの真の狙いは目の前で殺す為だから来ない限りは殺すつもりはない。 『早く僕の所に来て……僕を笑が――』  『笑顔にしてくれないかな』そう口にしようとしたが言葉はそこで途切れる―― 「……何のつもりかな?」  ダグバの足下に拡声器とテックランサーが落ちている。振り向くと、ランスがめり込まれた壁から抜け出ようとしていた。  刺さっていたランサーを抜いて拡声器を持つ手を狙って投げつけたのだろう。結果は御覧の通り、拡声器を落とす程度で終わった程度ではあった。 「私は忘れていた……何故我々テッカマンがこの強靱な身体を持っているのかを……」  だが、突如ランスは何の脈絡も無く謎の話を展開する。 「君は何を言っているのかな?」 「そもそも我等テッカマンの使命は、宇宙の星々を支配すべく侵略する事だ……」 「へー」  真面目な話、ランスの話など殆ど理解できていない。 「だが冷静に考えて見ろ、その星に住む連中が脆弱な虫螻如きならばここまで強靱な肉体は必要ない……」 「どうでもいいよ、そんな話」  他のリントが来るまでの退屈しのぎ程度なら付き合っても構わないけど、正直ダグバはそう思っていた。 「ならばこういう事では無いのか? 我等ラダムは知っていたのではないのか、侵略するときに、想像を絶する程の強敵と戦う事を……テッカマンの力が必要だという事を……それならば説明が付く……!」  ここまで熱弁するランスであったが、 「……何が言いたいの?」  流石にダグバも付き合いきれなくなった様だ。もう一度雷でも落として黙らせるか? そう思っていたが、 「遺憾な事だが認めてやる……貴様が我等が倒さねばならない強敵である事を……」  ここまでの話は、ダグバが自分達ラダムの敵として相応しい事を認める為の前振りだったのだろう。 「ああそう」  だがダグバにとってはそんな事などどうでも良かった。それ故に最早投げやりの返事である。 「だが……これだけは訂正して貰うぞ……私は『リント』なる有象無象の存在では無い!!」  声を張り上げるランスに対し、 「ふうん、リントじゃなかったら誰なの?」  そう問いかけるダグバ、その返答は―― 「名前はモロトフ……所属は……ラダムだぁぁぁぁぁ!」  その言葉と共にランスは高速で走り出す。 「私に対して……いや、我等テッカマンに対する度重なる冒涜の罪、貴様の命を以て贖ってもらうぞ、ン・ダグバ・ゼバ!!」  バーニアを限界まで噴かせてダグバへと迫る。 「ふうん、さっきよりはやる気みたいだね」  だがダグバは表情変える事無く突風を巻き起こし雷を落とそうとする。 「同じ手段が何時までも使えると思うな!!」  しかしランスはスピードを落とす事無く、上下左右不規則にジグザグ動き落雷を回避する。  パワーとスピードが最高の状態であるが故に突風如きではバランスを崩す事も無く、不規則かつ高速ジグザグ運動のお陰で落雷を回避する事が出来るのだ。  そしてダグバの背後へと回り込もうとするが、 「でもこの程度じゃね」  ダグバはランスの襲撃を読み拾い上げたテックランサーを突き刺そうとした。しかし、 「貴様がそう来る事など読んでいた!!」  その言葉と共にテックランサーを高く蹴り上げる。そしてそのままダグバの足下を駆け抜け上方へと高く飛び上がりテックランサーをその手に掴む。 「コイツは返して貰う!」  ランサーだけでは無くその手にはランス自身のデイパック、そして拡声器が握られている。すぐさま拡声器をデイパックに仕舞い。 「そして散れ!」  肩部から無数のレーザーを下部数メートル下のダグバへと放ちながらそのまま距離を取る。しかし、 「この程度じゃまだ全然足りないね」  鮮やかに後方へと飛びレーザーを回避する。無論、数発程度の流れ弾は受けたがこの程度ではダメージになりはしない。 「でも、あのタワーを崩した攻撃だったら届いたかもね」  それはボルテッカを使えという挑発である。 「挑発に乗ると思うか?」 「他に方法があるのかな?」  ダグバの指摘はもっともだろう、テックレーザーでも殆どダメージが与えられないならば、やはりボルテッカの直撃以外に方法は無い。  しかし、それには2つ問題がある。  1つはダグバ自身がボルテッカを耐えきる可能性だ。テックレーザーが意味を成さないほど強固なダグバの防御、それをボルテッカならば打ち破れる保証は無い。  もう1つはどんなに強力なボルテッカであっても1発しか使えない以上、回避されればそれで終わりだ。  そして先のレーザーにしても数メートルという決して遠くない距離からの攻撃にもかかわらず殆ど回避して見せたのだ。  つまり、遠距離からのボルテッカは確実に回避される、故に至近距離から放たねばならないのだ。 「ただし、出来るならばね……」  ダグバはその力を解放し周囲に暴風を巻き上げる。 「ぐっ!!」  その力は凄まじく空中にいたランスも大きく吹き飛ばされ距離を開けられてしまう。 「まだこれだけの力があったか……」 「これだけじゃない……」  その時、無数の瓦礫が浮かび上がり縦横無尽に飛び回る。無数の瓦礫は至る所で衝突を繰り返す。 「何ぃ!?」  ランスは状況が悪くなったのを察した。  ランスのパワーとスピードならば暴風の嵐の中でもさほど問題は無い。  但し、それは暴風だけが障害ならの話だ。  そう、飛び回る無数の瓦礫が視界と行く手を阻んでいるのだ。  瓦礫1つで今更テッカマンが傷つくわけがない? それは甘い考えだ。超高速で飛び回っている状態で衝突するという事は、相対的に超高速で飛んでくる瓦礫をぶつけられるという事と同義だ。  当然、その威力は相当なもの。流石のランスもダメージは避けられない。仮にダメージを最小限に抑えられたとしても、その衝撃でスピードとパワーは大分殺されてしまう。  しかしスピードとパワーを落としてしまえば、暴風に耐えきれなくなり、バランスを崩してしまう。  更に言えば、限界までスピードとパワーを上げた状態だからこそダグバの攻撃を回避出来ている状況、スピードとパワーが落ちるという事はダグバの攻撃を回避しきれなくなる事を意味する。  故に、今ダグバが展開しているのは瓦礫と暴風の結界とも言えよう――  当然瓦礫で視界も阻まれる為、ダグバに迫る事すら難しくなる。 「だが……条件は同じ……ではないな……!」 「そう、この状況でも僕は君に仕掛ける事ができる」  落雷がランス目がけて落ちる。しかしランスはそれを読んでいたが為、紙一重で回避する。  が、すぐ近くに瓦礫が迫ってくる。 「ふん!」  無論、ランスのランサーが瓦礫を粉砕する。が、その直後再び落雷が落ちてくる。無論それも回避するが――  そう、瓦礫と落雷、そして暴風の波状攻撃がランスを襲い続けるのだ。 「この状況でも私の位置、瓦礫の動きそれら全てを読み切っている……! 何て奴だ……!!」 「さぁ、この状況……どうするのかな?」  ダグバは楽しそうに攻撃を仕掛けている。状況的にランスは追い詰められていると言わざるを得ない――  だが―― 「瓦礫を展開した事が仇となったな!!」  ランスは一切怯まず再びバーニアを最大まで噴かせ高速で動き始める。 「!?」  ダグバは雷を落としランスを落とそうとするが落ちる雷はことごとく外れていく――  だが何故だ? 無数の瓦礫が飛び回る中で何故奴はスピードとパワーを落とす事無く動けるのだ?  そしてダグバは見た―― 「なるほどね……」  瓦礫に張り付き足場の様にして走り飛び回っているランスの姿を――  アラスカ基地襲撃の際、ランスは重力を無視し天井や壁に張り付いて移動した事があった――  要するにそれと同じ――言うなればランスの能力とも言える。 「リントの世界にいるニンジャみたいだね」  故に飛来する瓦礫をランスは障害では無く足場へと変えたのだ。いや、足場だけでは無い――  それを蹴り上げる事で別の瓦礫や雷に対する盾代わりとしたのだ――  更に先程同様アトランダムに縦横無尽に上下左右を超高速で駆け回る動き――  徐々に――徐々にだが確実にランスはダグバへと迫る――  至近距離からのボルテッカ――それが決まればダグバは倒せる――  そしてダグバの背後にテックランサーを携えた影が――  だが―― 「そこだね」  ダグバは裏拳を放ち影をその拳で貫く――致命傷は避けられない――が、 「な……」  それは、テックランサーが刺さっただけの人間大の瓦礫であった。無論瓦礫は砕け散るが―― 「幾ら貴様が強靱であろうと、この至近距離からならばひとたまりもなかろう!」  ダグバの背後には本物のランスが回り込んでいた。 「ボルテッカァァァァァ!!」  そして首からダグバ目がけて大量のエネルギーを放出する――  が、 「遅いよ」  ダグバはランスの動きを読み――見事に紙一重で回避したのだ。ボルテッカのエネルギーはテックランサーだけを消し去り明後日の方向へと―― 「惜しかったね……今の攻撃……うん、少しは楽しめた……」  渾身のランスの攻撃が失敗に終わった――  ボルテッカは一度のテックセットで1発限り、故に最早ランスにダグバを倒す手立ては無い―― 「だけど……まだ笑顔にはなれな……」  ダグバの言葉が止まる――  そう、そこにいる筈の――ボルテッカを外して放心状態になっているであろうランスの姿が無かったのだ―― 「これは……」  流石のダグバも何が起こったのか理解できないでいる――その時、 「貴様ならば避けてくれると思っていた……」  ランスの声が響く―― 「これで私はさらなる力を手に入れた……その点だけには感謝してやる……」  何処だ、何処にいるのだ――ダグバが振り向くと――  何かのエネルギーが体が超高速で飛んでくる――あれは―― 「まさか……」  先程のボルテッカのエネルギーだ――そしてその内部には――ランスがいた。  そう、ランスがボルテッカのエネルギーを纏って飛来しているのだ―― 「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」  ボルテッカのエネルギーを纏ったランスがダグバへと迫る。  ダグバは暴風を巻き起こし、更には雷を落としランスを止めようとする。  しかしボルテッカのエネルギーが暴風や雷如きで止まるわけも無い。  そのまま超高速でダグバへと迫る。 「ぐっ」  ダグバは横に飛んで回避しようとする。確かに直線的な動きしかしないボルテッカならそれで回避出来る。  だが、今のはボルテッカのエネルギーを纏ったランスによる突撃だ。故にダグバの動きを読んで方向を修正する事は容易い。  よって――  ランスの拳が遂にダグバに直撃したのだ――  ランスのいる世界で、本来ならば10年後、1人の『死』の名を持つテッカマンが、最強と呼べる1人の伝説のテッカマンを完膚なきまでに倒した。  だが、その伝説のテッカマンは、1人の新たな世代の『冬』の名を持つテッカマンと特訓を行い、  新たな技を手に入れてその『死』の名を持つテッカマンを打ち倒した――  その技は――放たれたボルテッカのエネルギーに自ら飛び込みそのエネルギーを纏ったまま敵に突撃を仕掛けるという技だ。  突撃技であるクラッシュイントルード、そして最強技であるボルテッカ、その両方の特性を持った技、  故にボルテッカ・クラッシュイントルードと呼称する事にしようか――  ボルテッカのエネルギーを持ったまま一点突撃、それ故に単純な破壊力だけならばボルテッカ以上と考えて良い――  そう、ランスは奇しくも、本来の歴史ならば10年後伝説の――かつて自身を倒した『刃』の名を持つテッカマンが会得した技を考案したのだ――  勿論、その伝説のテッカマンのそれとは若干趣は違うだろうが、ボルテッカのエネルギーを纏った上での突撃という意味では同じ事だ。  モロトフは考えたのだ。ボルテッカ以上の威力のある攻撃を当てる事が出来ればブラスター化したテッカマンに勝てると。  そして、ダグバが自ら雷を打ち込んで強化する姿を見て思いついたのだ。  自らのボルテッカのエネルギーを付加した上で突撃を仕掛ければ、ボルテッカ以上の威力をはじき出せると――  そう、ランスは最初からこの技を決め技に使うつもりだったのだ。それまでの事は全てこの一撃の為の囮、消失したテックランサーも次にテックセットしたときに生成されるので惜しくは無い。  ボルテッカはエネルギー総量こそ大きいが範囲も広い故に威力は分散される。だがそれを一点に留めたならばその一点に注ぎ込まれるエネルギーは通常の数倍。  元々が自身が生み出したエネルギーなのだから完全なるテッカマンならば自身が耐えきれないという事も無い。  ランスは完全を越える最強の力をその手に掴んだのだ――  ボルテッカ・クラッシュイントルードによる突撃により、ダグバの身体は数十メートルも吹っ飛ばされる。 「ダガー……これはダガーの分だ、貴様が侮辱した我等テッカマンの1人の名だ」  ランスはエネルギーを纏ったままそう口にする。そしてそのまま高速で吹っ飛ばされたダグバへと迫る。  ランスは考えたのだ、1度の突撃程度でダグバが倒せるとは限らないと。  何しろ、ボルテッカを直撃させたにもかかわらず無傷だったブラスター化したブレードの事もあるのだ。流石にこれで倒せると自惚れるつもりは無い。  それに何より――  2度目の突撃が命中するする――その一撃でダグバは更に数十メートルも空中を舞う。 「これはアックスの分だ」  テッカマンを愚弄したダグバにテッカマンの力を骨の髄まで思い知らせなければならない。その為に連続で突撃を仕掛ける事を選んだのだ。  さらに連続で二撃の突撃が―― 「ブレード、レイピア……裏切り者ではあるが奴等も一応テッカマンなのでな……(エビル……義理は果たしたぞ……)」  内心でエビルに対し呟きつつ、再度空中を高速で飛んでいるダグバへと迫る。  いかに絶大的な力を持つダグバであっても、空中を飛行する能力は無い。  故に、空中に吹っ飛ばされてしまえば流石のダグバも自由には動けない――  だからこそダグバを空中に飛ばしながら連続で突撃を仕掛けるという事だ。  ボルテッカ・クラッシュイントルードのエネルギーは絶大、一撃決まればそれだけで数十メートル吹っ飛ぶ、何時しか2人は風都タワー跡付近を離れていく―― 「ソード!」  さらなる突撃――それでもランスは止まらない―― 「オメガ様の分だ!!」  我等が主、テッカマンオメガの分の攻撃を決めた―― 「これが……エビルの分だ!!」  決して仲は良くはなかった――  だが間違いなく同じラダムにおける好敵手であった――  その男の分の一撃の叩き込んだ―― 「凄いよ……まだこんな力があったなんて……」 「ふん……大した事ではない……たったひとつの単純(シンプル)な答えだ……『貴様は私を怒らせた』……それだけだ……」 「そっか……」  冷静に考えて見れば、ダグバはリントを怒りや憎しみなどで追い込む事で強くしようとしていた。  結果的にダグバはランスに対しそれを行ってしまったのだ。  そう、実の所ダグバはランスには何一つ期待していなかったのだ。  ランスを侮辱するような発言の数々は別に深い考えがあったわけではない。淡々と自身の経験に基づく事実を告げただけなのだ。  しかしそれがランスを激怒させこの結果を招いたのだ――  その攻撃はダグバへと確実にダメージを与えている――  しかし――  確かにボルテッカ・クラッシュイントルードは絶大な力を持つ――  だが、幾ら元は自分自身が放出したエネルギーとはいえ、その奔流の中で長時間いられる道理は無い。  その強い負荷はランスの身体に対し徐々にダメージを与えている――  本来の使用者が使ったときも一度の突撃で済ませたのだ、長時間維持するものではない。  だからこそ次の一撃で決めなければならない―― 「そしてこれが私の分!!」  その時、ダグバが自らに雷を落とした――自己強化を図ったのだろうがこのまま仕掛ける以外は無い―― 「これで終わりだ、ダグバ!!」  そう最後の突撃を仕掛ける――しかし、 「なっ……」  ダグバは電撃態となり空中でその突撃を受け止める。そしてそのまま―― 「このエネルギーの中に……入ってくる……だとぉ!?」  ダグバがランスのいるエネルギーの奔流へと乗り込んで来たのだ。 「捕まえたよ……」 「ぐっ……」  空中を自在に動けない以上、このまま突撃を受け続ければ流石のダグバも耐えきれない。  しかし、ダグバは弱点を見抜いていた。結局の所ランスの攻撃は突撃しか無い。  故に、突撃した瞬間ならば組み付けると考えたのだ。  エネルギーの奔流がダグバを灼く――それでもダグバは止まらずランスに電撃を浴びせる。  電撃態となったダグバが放つ落雷はボルテッカのエネルギーだけでは完全に防ぎきれずランスに痺れを与える。 「がぁぁ……」 「もう逃げられないよ」  ダグバがそのままランスを殴りつける。エネルギーの奔流故にランスの身体は吹き飛ばされる事無くその場に留まるがランス自身に強い衝撃が奔る。 「だが……このエネルギー……貴様とてそう長い時間は……」 「そうだね……でもそれは君も同じだろう……我慢比べでもしようか……実に楽しいよ……」  笑っている――  ここまで追い込んだにもかかわらず未だ恐怖せず楽しんでいる―― 「おのれ……」  だがこのまま終わるつもりはない。ランスもその拳を振り上げダグバの顔を殴りつける。  しかしその直後今度はダグバの拳を連続で2回受ける。  この状況においてもダグバの方が攻撃ペースもパワーも上、このままでは何れランスの方が先に潰れてしまう。 「さぁ、もっと……もっと僕を笑顔にしてよ!!」  気が付けばランスとダグバはI-8の海上を飛んでいた、その中でも両名の戦いは続く――  ダグバの猛攻は止まらない。それによりランスの装甲も少しずつ破壊されていく 「言った筈だ……私はコメディアンでも大道芸人でもない!! 笑顔になりたければ一人で勝手に笑え!! 有能なる私を巻き込むな!!」  だがランスも負けるわけにはいかない。  この戦いはランスだけの戦いでは無い。この戦いは自分達ラダムのテッカマンの矜持を守る戦いでもあるのだ。  自分の敗北はテッカマンの完全否定、それは決して許されない。 「ぐっ……ダガー、アックス、ソード、オメガ様……そしてエビル……私に力を!!」  この宇宙の中においてはラダムはちっぽけな生命体かもしれない――  その中でもランス、あるいはモロトフという個体はとてもとても小さな存在だろう――  だが、例え小さな存在でも、1つの心がある――  それを今、この宇宙の中で燃やすのだ――  だが、現実は非情である――  無情なるダグバの拳が迫――  その時―― 「あ……れ……」  ダグバの拳が急に力を失った――  ランスの身体に触れてもそれは触れたに過ぎない―― 「何……!?」  ほんの一瞬、ほんの一瞬だったがダグバの姿が元の優男の姿に戻った気がした――だが、またすぐさま元の電撃態に戻る―― 「いや、関係無い……!」  そう、理由はどうあれほんの僅かだがダグバに隙が出来た事に違いは無い。  一瞬あれば十分、完全で有能なるテッカマンであるランスならばそれだけで十分過ぎる程だ。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」  ランスは両腕を構えダグバへと狙いを定め―― 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!!」  心の底から溢れ出す感情を声に出しつつ全力かつ連続でダグバに拳を叩き込む――  そして最後――  ランスは拳を引いて構え―― 「ハートォォォォ!! バァァーニィィィィングッッ!!」  ダグバの胸をえぐるアッパーを叩き込んだ――  そして――  エネルギー体は海上で炸裂し巨大な水柱を打ち上げた―― SubScene04 S1(Spirits) 「はぁ……はぁ……」  沖は川から出る。随分と流されてしまったが結果としては警察側の対岸に辿り着けた様だ。  何にせよ急いで警察署まで行かなければならない。 「もう……本郷さんの姿は見えない……か」  先程まで見えていた本郷の姿はもう見えない。 「そうか……きっと本郷さんは俺に大事な事を思い出させるために……」  本郷が現れたのは、自分に仮面ライダーとして本当に大事な事を思い出させる為、沖はそう結論づけた。 「情けないな……死んでからも本郷さんに迷惑をかけるなんて……」  ともかく今一度構えをとり、 「変身……!」  沖はスーパー1へと変身した。今の所はまだ変身機能が完全に死んだわけではないらしい。  とはいえ、不調である事に違いは無くメンテナンスを受けなければ何れは限界が訪れる。それ故に次も変身出来る保証は無い。  それでもだ、例え変身機能を失っても戦い続けよう――  変身出来ようが出来まいがその魂だけは永遠に仮面ライダースーパー1なのだから―― 「そういえば……一文字さんはもう来ているのだろうか?」  一文字との取り決めでは18時にこの市街地で合流する予定となっている。  しかし具体的な場所は決めていないのが問題だ。  具体的な事は警察署に行ってからになるがそのことについても考えた方が良いだろう。 「とりあえず、中学校に風都タワー、そっちの方に一度向かった方が……」  と、川の向こうへと振り向く。 「……!?」  そして、見た――いや、正確には見えなくなっていたのだ。本来ならば川の向こうに建っている筈の非常に目立つ建造物が―― 「風都タワーが……消えた……!」  その代わりに雷鳴が轟くのが見えている――川に落ちる直前に響いた轟音と関係があるのだろうか?  雷鳴と言えば先に戦った奴を思い出すが警察署に向かった筈の奴がわざわざ真逆の方向に進むだろうか? 「どういうことだ……!」  どうやら状況は自分が考えている以上に悪化しているらしい。  警察署にいる仲間達、  中学校で分かれた仲間達、  18時に合流する予定の一文字、  何処かで戦っているだろう結城丈二、  そして敵か味方か不明瞭な村雨良、  彼等の安否も不明瞭な状況に加えタワーの消失――  沖一也の魂が向かうべきは――? 【1日目/日中】 【G-9/川岸(警察署側)】 【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意、仮面ライダースーパー1に変身中、メンテナンス不足により機能低下 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、首輪(祈里) [思考] 基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す 0:風都タワーに何が? 1:ダグバより先に警察署に向かい、そこにいる人たちを助ける。また、チェックマシンをマップ内から探す 2:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。 3:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。また首輪の解析も行う。 4:この命に代えてもいつきとアインハルトを守る。 5:先輩ライダーを捜す。一文字との合流の事も考えておく。 6:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…? 7:仮面ライダーZXか… 8:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。 [備考] ※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。 ※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。 ※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。 ※チェックマシンによるメンテナンスを長期間受けなかったため、ファイブハンド等の機能が使用不能になりました(付け替えること自体は可能ですが、各能力が全く使えません)  今の所変身は出来ていますが、次に変身を解除すれば再変身ができなくなる可能性もあります。  チェックマシンがこの殺し合いの会場にあるかは今のところ不明です。 ※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。 SubScene05 大海 「ふふふふふ……」  I-9海上にて―― 「あぁぁっはっはっはっはっは……」  ダグバは身体を仰向けに浮かべ笑っていた―― 「どうやらイノナカノカワズは僕の方だったみたいだね……」  その胸には何かにえぐられた様な大きな裂傷が広がっており今も出血を続けている。  無論、グロンギ特有の生命力故に、この傷で死に至るという事は無い。  だが、傷の再生が遅々として進んでいない――  ダグバの身体には大きな異変が起こっていた――  先の戦いにおいてダグバは突然力を失った様に見えた。  それは一瞬の事ではあったがその僅かな隙を突かれこの有様となったのだ。  では何故、ダグバは力を失ったのだろうか?  繰り返すが今のダグバはバックルの破損により完全態に変身する能力を失っている。  その代わり、スーパー1との戦いで電撃態へと変身する力を得たわけだが――  実の所、そこに致命的な落とし穴があったのだ。  そもそも、電撃態とは一体何かを今一度考えて見よう。  電撃態は元々ガドルがクウガの強化を参考にして得た事が基本となっている。  クウガは未確認生命体との戦いの最中、偶発的に電気の力で強化出来る事に気が付いた。  それをクウガは金の力と呼称した。  ところで、クウガは古代に存在した資料を基にその力を解明していった。  その過程の中で赤、青、緑、紫、そしてもう1つ凄まじき戦士についての記述は見つかった。  だが、金の力については何一つ描かれていなかったのだ――  つまり、古代のクウガは金の力を持たなかったのである。  さて、先程も説明したと思うがクウガがガドルを撃破したとき、赤の金の力を更に強化した、黒の金のクウガとなった。  クウガが黒の金のクウガとなったのは何としてでも漆黒の凄まじき戦士の姿になるわけにはいかなかったからだ。  しかし、その黒の金のクウガの力を以てしてもダグバには全く通用せず、遂に凄まじき戦士の姿、ダグバが求めるその姿を――  要するに、金の力は所詮凄まじき戦士には遠く及ばないというわけだ。  ここまでの説明を読んで気になった人はいないだろうか?  赤、赤の金、黒の金と強化を進めていく内に、凄まじき戦士の姿に近づいている事に――確実に色はそうなって来ている。  つまりこうは考えられないだろうか? 金の力というのは凄まじき戦士の力を引き出しているだけではなかろうか。  強化ではなく、本来持っていた力の限定的な解放、そういう解釈の方がむしろ正解ではなかろうか?  ダグバの方に話を戻そう。  結局の所、今のダグバはバックルの破損により完全態の前段階、中間体にしか変身出来ない。  これはバックルが完全態の力を制御しきれない引き出せないからなのは読者諸兄もおわかりいただけるだろう。  だが、電気の力で電撃態という強化された姿となれる様になった――  しかしこれはクウガと照らし合わせても解る通り、完全態の力を限定的に取り戻しただけとも言える。  おわかりだろうか?  バックルが破損により完全態の力を引き出せないから中間体程度の力しか出せないというのに、  そんな状態で無理矢理完全態の力を引き出そうとして――無理が来ない方がどうかしている。  ガドルの電撃態とダグバの電撃態は違う。  ガドルのバックルは完全な状態でありガドルはゴのその先に進もうとしていた。電撃態で究極の力の一部を引き出せてもバックルは十分に耐えうる事が出来る。  ダグバの場合はそうではない。元々バックル自体が究極の力に耐えられない状態なのにその力を引き出そうとするのだ――  ダグバ本人は耐えられても、バックルの方が耐えられない。  勿論、バックルの破損はその時点ではそこまで致命的なものではなかった。その為、中間体で戦う事や、短時間の電撃態ならば十分耐えうる事が出来た。  しかしランスとの激闘によりバックルにかかる負荷は甚大なものとなった。ダグバは調子に乗って自己強化を繰り返し電撃態のパワーを上げているのも問題だ。  バックルの破損はダグバの知らぬ所で広がっていたのだろう  そして最後には電撃態となった状態でボルテッカのエネルギーが渦巻く内部へと突入しランスとの格闘戦――  遂に限界を超え、バックルの破損が致命的なものとなった。変身機能に支障が生じる程の――  それ故に一瞬程度変身が解除され力を失ったのだ――ダグバの強靱な意志故にすぐさま再変身出来たが致命的な事に違いは無い。  どちらにせよ、バックルの破損が広がり、変身などの機能が大分低下してしまった事に間違いは無い。  故に――今のダグバの再生能力は大分低下している。その為、通常ならばすぐに再生されるべき筈の胸の傷が再生しないのだ。  胸の傷以外にも全身に受けたダメージは大きい、これらが回復するのにも大分時間が必要だろう。  そして一番に致命的なのは変身機能だ。バックルの破損は先程とは比較にならないほど大きくなっている。  このまま変身出来るかどうかすら怪しい所だ、何の問題も無く変身出来るかも知れないが、時間をおかなくては変身出来ないかもしれない。はたまたもう二度と変身出来ない可能性すらありうる。  仮に変身出来たとしても以前の様な無茶は効かない。電撃態を使用する事は出来ても当然使用すればするだけバックルの破損は広がり変身機能は悪化する事になる。  いや、それどころか今のバックルの状態では中間体への変身すらもバックルにダメージを与える事になる。  そう、今ダグバが変身しても、いつまた突然先程の様に力を失い変身が解除されるかわからない状態なのだ。  ダグバは既に致命的な爆弾を抱えた状態と言う事だ。  この状態を回復させるためには専門の技師に時間をかけてバックルを直してもらうしかない。しかし、そんな都合の良い話なんてあるわけがない――  だが、それでもダグバは止まる事は無い。自らの笑顔を求め、これからも戦いを求めていくことだろう――  人は誰もが幸福、あるいは笑顔を求めている――  それは結局の所ダグバも同じ事だ――  その方向が人とは違うだけの話だ―― 「楽しかったなぁ……」  海を漂いながらダグバは笑う――  致命的なダメージを受けながらもダグバは喜んでいた――  今暫くは動けないが何れは島に戻らなければならない――  クウガ達との戦いが待っている――いや、それだけじゃない―― 「この傷のお礼はしてあげないとね……」  そう、大きな借りが出来たのだ、それは必ず返さなければならない。 「テッカマンランス……モロトフ……君の事は忘れないよ……決してね」  ダグバはここまで多くの戦士と戦ってきた――  だが、クウガを除く者は何れも『力を持ったリント』以上の認識を持たないでいた。  時を止める魔法でダグバを追い詰めようとした魔法少女暁美ほむら、  全ての者を恐怖させるにもかかわらず平然と楽しそうに笑っていた超光戦士シャンゼリオン涼村暁、  受け継がれる光の力で一時的に戦闘不能にしてくれたウルトラマンネクサス姫矢准、  ダグバの持つバックルを破壊し完全態への変身能力を失わせてくれた覇王流アインハルト・ストラトスと無差別格闘早乙女流早乙女乱馬、  何れもダグバを楽しませてくれたが所詮は『力があるだけのリント』の範疇を出ない。  しかし、今戦ったあの戦士は違った――完全態だったらとかそういう事を言うつもりは全く無い。  そう、純粋な意味でギリギリの状態だったのだ。一歩間違えればどうなっていたか――  この傷はその証明なのだ――  だからこそダグバは忘れない――  自分を追い詰めたテッカマンランスに変身した男の名がモロトフであり、そして所属がラダムだという事を――  それはこれまで他の誰にも出来なかった事だ――  そういう意味ではモロトフは完全勝利したのだ――  自身がリント等という有象無象では無く――  モロトフという宇宙に一人だけの存在である事を示したのだから―― 【I-9/海上】 【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】 [状態]:全身に極大のダメージ、胸部に大規模な裂傷と刺傷(回復中、但しその速度は大幅に低下)、ベルトの装飾品を破壊(それにより完全体への変身不可を含めた変身機能等に致命的な障害発生)、強い電気を浴びたことによる身体強化 [装備]:なし [道具]:支給品一式×4(ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、スタンガン、ランダム支給品(ほむら1~2(武器ではない)、祈里0~1) [思考] 基本:この状況を楽しむ。 0:とりあえず今はこのまま海を漂う。陸に戻ったら何処に向かう? 1:モロトフには必ずお礼をする。勿論クウガにも。 2:リント達を探す。 3:強い変身能力者たちに期待 4:そういえば……どうして思い出の場所(グロンギ遺跡)が? [備考] ※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です ※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。空中から電撃を落とす能力も同様です。 ※ベルトのバックル部を破壊されたため、中間体にしか変身できなくなりました。またランスとの激闘と電撃態の使い過ぎによりバックルの破損が進行しました。  その為、一時的かどうかも含め変身不能な状態に陥っている可能性があります。また仮に変身出来ても突然変身が解除される可能性があります。  同時に、中間体への変身であってもバックルの破損を進行させる状態となったので変身機能等の機能は低下する事になります。最悪変身不能に陥る可能性があります。 ※スーパー1のエレキ光線によって、パワーが強化されました。完全体にはなれませんが、電撃体には変身可能です(但し、上述の通り、バックルの破損を加速度的に進行させることになります)。 ※第二回放送のニードルのなぞなぞを全く理解していません(地図記号について知らず、グロンギの算法もリントと異なるため)。 MainScene07 宇宙に一人だけの  I-7の砂浜、1人の男が海から戻ってきた――テッカマンランスがテックセットを解除し元の姿に戻ったモロトフだ。 「はぁ……はぁ……」  全身に受けたダメージは甚大、テックランサーで貫かれた傷もある、しまいには体力の消耗も相当なもの。  文字通り、満身創痍、それ以外のなにものでもない。  それでも渾身の一撃の手ごたえは確かにあった。此方も限界だった故にあの後あのまま離脱しなければ海に飲まれ兼ねなかったから仕留めたかどうかの確認は出来なかったが――  仮に仕留めきれなかったとしても、あれだけのダメージを与えたのだ、暫くは動けないだろう。テッカマンの力を思い知らせるという最低限の目的は果たした。  後はそれこそ他の参加者に丸投げ、あるいはつぶし合わせれば良いだろう。  とはいえ、今にも背後から『強くなって僕を笑顔にしてよ』という声が聞こえてきそうな気がするのが恐ろしい所だ。  一番の理想はあのまま海の藻屑となってくれれば良いが――あれだけ追い詰めたのに逆転しかけたダグバの恐ろしさを考えるとあまり期待できない。 「それにしても奴め……最期まで笑っていた……忌々しい……」  思い返すのはラッシュをかけた時の奴の表情だ。  猛攻をかけられ一気に追い詰められている状況であってもダグバは笑っていたのである。  世間では、被虐によって快楽を得るという特異な性癖を持つ者がいる。  しかしダグバはそういうタイプとはまた違う――  単純に今にも自分が死にそうな状況すらも楽しめる特異な存在なのだろう。  全く理解出来ない思考だ――  殆ど勝利したと言って良い状況なのに。全く勝った喜びを感じないのだ―― 「だが……意義はあった」  しかし高い代償を払っただけの意味はあった。  そう、ブラスター化したブレードに対する対抗策を手中に収めたのだ。  ボルテッカ・クラッシュイントルード、これならばボルテッカに対し無傷であったブレードを破る事が出来るかも知れない。  そして、実際に追い詰められた事で絶対的なものではない事も知る事が出来た。  なにしろ、以前敗れ去った時は、至近距離からのボルテッカならば耐えられないと慢心したが故の完全敗北だ。  もし、ボルテッカ・クラッシュイントルードを使った状況で追い詰められなければ、きっとブレードとの戦いでは慢心して同じ結果へと導きかねない。  それを知る事が出来ただけでも十分過ぎるという事だ―― 「待っていろブレード、この技を得た私が貴様を倒す、必ず倒す」  そんな中、モロトフはデイパックから拡声器を取り出しそのスイッチをオフにする。  戦いの中でオフにしていなかった為、今までずっと声を拾っていたのだろう。  流石にデイパック内部に入れてからは拾った声が周囲に広まったという事は無いが、デイパックに入れる前の音声は拾われている――恐らく周囲に届いているだろう。  だが、それはむしろ好都合だ。何しろダグバによって自分が痛めつけられたという不名誉な話を広められていたのだ。戦いの音声が広がってくれればそんな汚名も大分そそげるだろう。  そんな中―― 「だが……後何回戦えるだろうか……」  そう、高い代償というのは単純なダメージや疲労だけではない。  モロトフの手には自身のテッククリスタルが握られている――  僅かにヒビの入ったクリスタルが――  かつてブレードがダガーの仕掛けた干渉スペクトル――テックシステムを阻害し拡散したエネルギーで逆に己を傷つけるそれによってクリスタルにダメージを与え最終的に砕かれた事があった――  当然、クリスタルが砕け散ればテックセットが不可能となるのは言うまでも無い。  そう、それと同じ事がランスのクリスタルにも起こっているのだ。  勿論、ランスの場合は干渉スペクトルというテックシステムをダイレクトに阻害するものに晒されているわけではない。  無論、通常レベルの戦闘ならばまず破損する事はあり得ない。  だが、この場での戦闘は普通では無い――  度重なる激闘そのものがクリスタルに多大な負荷をかけていたのだ――  決定打は間違いなくダグバとの戦闘、ダグバ自身の猛攻に加えランス自身もボルテッカ・イントルードによるボルテッカエネルギーの奔流に長時間晒されていたが故に多大な負荷が掛かっていた。  いや、それ以前から致命的なダメージを受けていた事も否定できない――勿論、これは仮説の1つレベルでしかないが――  思い出して欲しい――そう、キュアピーチとの戦いの際にラブサンシャインフレッシュとボルテッカとの直接対決を行った時の事を――  ここまで説明すればもうおわかりだろう、プリキュアの必殺技がクリスタルそのものにダメージを与えていた可能性があるという事だ。  プリキュアの力は生命を守るための力、生命を脅かすラダムのテッカマンの力とは相反するものだ。  ならばプリキュアの力が守る為に――ラダムの力を司るクリスタルへと作用した可能性は高いと言える。さながらそれは干渉スペクトルに近い力が――  あり得ないとは言えないだろう。実際にプリキュアの力がガイアメモリの毒素を浄化した事例が存在するのだから――  人の心を歪めているラダムのテッカマンの力の源に作用する可能性は高いと言えるだろう――  それが確かならばその時点でクリスタルに致命的なダメージを受けた事になる。何しろ数キロ四方を焦土と化す程の激しいエネルギーだったのだ、クリスタルに影響がない方がどうかしている。  その時は気付かないぐらい取るに足らないものであっても、その後の激しい戦闘で致命的になるまで広がったと考えられなくも無い。    とはいえ、それが確かなのかはデータが足りない。だが、仮に違ったとしてもその戦いもまた大きな負荷となった事だけは確実だ。  どちらにせよ、度重なる激闘によってクリスタルが限界を超え破損した、その事実だけは確かである。  勿論、干渉スペクトルに晒され続けた状況でテックセットしたが故にクリスタルが破壊されたブレードの場合とは若干違う。  今の段階ならば変わらずテックセットは可能であり、戦闘を行う事も出来るだろう。  だが、先の仮説が確かならば、プリキュアの力、つまりは必殺技を受ければ加速度的に破損は進行する事になる。  ちなみにランスは後にキュアパッションの必殺技ハピネス・ハリケーンを受けている。勿論この時点ではクリスタルに影響は無かった――だが、これは目に見えないだけで実際は相応の負荷が掛かっていた可能性は否定できない事を記しておく。  それでなくても、ダグバ戦の様な激しい戦闘を繰り返せばどちらにしてもクリスタルの破損が進行する事になる――  その内、通常のテックセットや戦闘にも支障が出るようになり――最終的には砕けてしまい、二度とテックセット出来なくなるだろう――  それでも、モロトフは足を止めるわけにはいかない。テッカマンが優秀である事を虫螻共に思い知らせなければならないのだ――  とはいえ、今までの様に無節操に戦うというわけにはいかない。戦い所をある程度選ぶ必要があるだろう。  特に、ブレードを倒す前に砕けてしまっては意味が無くなってしまう。それだけは避けなければならない――  が、どちらにせよダグバ戦での消耗が激しすぎる以上は今暫く――つまりは数時間は戦えない。  こんな状態でテックセットした所で、マトモに戦えないのはモロトフ自身が理解している。  今必要なのは休息というわけだ。  幸い、参加者達は風都タワー跡に意識が向いている。当初の狙いとは違うが、そこから離れ今は休むのが得策だろう。  正直な所、ほんの30分程前は風都タワー跡に集まっていた連中を一網打尽にするつもりだった。  だが、今は連中をつぶし合わせ自分はのんべんだらりと休んでいるつもりという有様。  冷静に考えて見ればどうしてこうなったと言いたい気持ちだ。  だが――これで良かったのだろう。  そう、有象無象ではない宇宙に一人だけの存在であるテッカマンランスことモロトフ――その彼自身がその心のままに動いた結果なのだから―― 「ふぅ……やれやれだ……」 【I-7/砂浜】 【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード】 [状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大) [装備]:テッククリスタル(僅かにヒビ)@宇宙の騎士テッカマンブレード [道具]:支給品一式、拡声器、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品0~1個(確認済) [思考]基本:参加者及び主催者全て倒す。 0:どうしてこうなった…… 1:今は休む、市街地には近づかない。だがテッククリスタルのヒビは…… 2:いずれブラスター化したブレードを倒す。 3:プリキュアと魔法少女なる存在を皆殺しにする。 4:キュアピーチ(本名を知らない)と佐倉杏子の生死に関してはどうでもいい。ただし、生きてまた現れるなら今度こそ排除する。 5:ゴ・ガドル・バという小物もいずれ始末する。ン・ダグバ・ゼバについては他の参加者に任せる。 [備考] ※参戦時期は死亡後(第39話)です。 ※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。 ※ボルテッカの威力が通常より低いと感じ、加頭が何かを施したと推測しています。 ※ガドルの呼びかけを聞きましたが戦いの音に巻き込まれたので、全てを聞けたわけではありません。 ※ボルテッカ・クラッシュイントルード(Ⅱでブレードがデッド戦で使った技)を会得しました。 ※度重なる激闘でクリスタルが破損しています、現状は変身及び戦闘に支障はありませんが激しい戦闘(例えばダグバ戦)を繰り返せば破損は進行し何れクリスタルが破壊する可能性が高いです。  また、プリキュアの必殺技を受ける事で破損が加速度的に進行する可能性があります。 【共通の備考】 ※ランスの拡声器使用後、H-8の風都タワー跡にて約10分後にダグバが拡声器で呼びかけを行っています。その後、ランスが拡声器をデイパックに仕舞うまでの音声が周囲に広まった可能性が高いです。 ※ダグバとランスの戦闘によりH-8エリアそしてI-8に数多くの雷鳴が響きました。 *時系列順で読む Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]Next:[[街角軍記]] *投下順で読む Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]Next:[[死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴)]] |Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]|[[沖一也]]|Next:[[金の心を持つ男]]| |Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]|[[ン・ダグバ・ゼバ]]|Next:[[解放されしライジングドラゴン]]| |Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]|[[モロトフ]]|Next:[[地球に生きる僕らが奇跡]]| ----
*Uに一人だけの/COSMO BLAZER ◆7pf62HiyTE MainScene06 COSMO BLAZER 「確かここだったかな……」  ダグバがランスのデイパックの中を調べていたのはあるものを探す為だった。  それは拡声器、つまりランスに此処までの深手を負わせた事を伝えリント達やクウガを招き寄せる為である。 「あったあった」  そして拡声器を取り出しそのスイッチをオンにする。 「さてと……」  そして拡声器のマイクに口を当て、 『聞こえるかな、リントのみんな……僕の名前はダグバ、[[ン・ダグバ・ゼバ]]、リントからは未確認生命体第0号とも呼ばれているよ……』  拡声器がダグバの声を広げる。同一エリアはほぼ確実にその声を伝える。 『さっき、このタワーを崩壊させたリントの呼び声に従ってここに来て、そのリントを倒したばかり……でもまだ殺してはいない……』  聞く側にしてみればランスの呼びかけから10分程度しか経過していない。関係者はさらなる衝撃を受ける事だろう。だが、聞く側の衝撃はこれだけに留まらない。 『このリントを守りたいならば早くここに来てよ、殺されたくないならね……』  そう呼びかければリントはやって来る。ダグバはそう考えていた。勿論、ダグバの真の狙いは目の前で殺す為だから来ない限りは殺すつもりはない。 『早く僕の所に来て……僕を笑が――』  『笑顔にしてくれないかな』そう口にしようとしたが言葉はそこで途切れる―― 「……何のつもりかな?」  ダグバの足下に拡声器とテックランサーが落ちている。振り向くと、ランスがめり込まれた壁から抜け出ようとしていた。  刺さっていたランサーを抜いて拡声器を持つ手を狙って投げつけたのだろう。結果は御覧の通り、拡声器を落とす程度で終わった程度ではあった。 「私は忘れていた……何故我々テッカマンがこの強靱な身体を持っているのかを……」  だが、突如ランスは何の脈絡も無く謎の話を展開する。 「君は何を言っているのかな?」 「そもそも我等テッカマンの使命は、宇宙の星々を支配すべく侵略する事だ……」 「へー」  真面目な話、ランスの話など殆ど理解できていない。 「だが冷静に考えて見ろ、その星に住む連中が脆弱な虫螻如きならばここまで強靱な肉体は必要ない……」 「どうでもいいよ、そんな話」  他のリントが来るまでの退屈しのぎ程度なら付き合っても構わないけど、正直ダグバはそう思っていた。 「ならばこういう事では無いのか? 我等ラダムは知っていたのではないのか、侵略するときに、想像を絶する程の強敵と戦う事を……テッカマンの力が必要だという事を……それならば説明が付く……!」  ここまで熱弁するランスであったが、 「……何が言いたいの?」  流石にダグバも付き合いきれなくなった様だ。もう一度雷でも落として黙らせるか? そう思っていたが、 「遺憾な事だが認めてやる……貴様が我等が倒さねばならない強敵である事を……」  ここまでの話は、ダグバが自分達ラダムの敵として相応しい事を認める為の前振りだったのだろう。 「ああそう」  だがダグバにとってはそんな事などどうでも良かった。それ故に最早投げやりの返事である。 「だが……これだけは訂正して貰うぞ……私は『リント』なる有象無象の存在では無い!!」  声を張り上げるランスに対し、 「ふうん、リントじゃなかったら誰なの?」  そう問いかけるダグバ、その返答は―― 「名前は[[モロトフ]]……所属は……ラダムだぁぁぁぁぁ!」  その言葉と共にランスは高速で走り出す。 「私に対して……いや、我等テッカマンに対する度重なる冒涜の罪、貴様の命を以て贖ってもらうぞ、ン・ダグバ・ゼバ!!」  バーニアを限界まで噴かせてダグバへと迫る。 「ふうん、さっきよりはやる気みたいだね」  だがダグバは表情変える事無く突風を巻き起こし雷を落とそうとする。 「同じ手段が何時までも使えると思うな!!」  しかしランスはスピードを落とす事無く、上下左右不規則にジグザグ動き落雷を回避する。  パワーとスピードが最高の状態であるが故に突風如きではバランスを崩す事も無く、不規則かつ高速ジグザグ運動のお陰で落雷を回避する事が出来るのだ。  そしてダグバの背後へと回り込もうとするが、 「でもこの程度じゃね」  ダグバはランスの襲撃を読み拾い上げたテックランサーを突き刺そうとした。しかし、 「貴様がそう来る事など読んでいた!!」  その言葉と共にテックランサーを高く蹴り上げる。そしてそのままダグバの足下を駆け抜け上方へと高く飛び上がりテックランサーをその手に掴む。 「コイツは返して貰う!」  ランサーだけでは無くその手にはランス自身のデイパック、そして拡声器が握られている。すぐさま拡声器をデイパックに仕舞い。 「そして散れ!」  肩部から無数のレーザーを下部数メートル下のダグバへと放ちながらそのまま距離を取る。しかし、 「この程度じゃまだ全然足りないね」  鮮やかに後方へと飛びレーザーを回避する。無論、数発程度の流れ弾は受けたがこの程度ではダメージになりはしない。 「でも、あのタワーを崩した攻撃だったら届いたかもね」  それはボルテッカを使えという挑発である。 「挑発に乗ると思うか?」 「他に方法があるのかな?」  ダグバの指摘はもっともだろう、テックレーザーでも殆どダメージが与えられないならば、やはりボルテッカの直撃以外に方法は無い。  しかし、それには2つ問題がある。  1つはダグバ自身がボルテッカを耐えきる可能性だ。テックレーザーが意味を成さないほど強固なダグバの防御、それをボルテッカならば打ち破れる保証は無い。  もう1つはどんなに強力なボルテッカであっても1発しか使えない以上、回避されればそれで終わりだ。  そして先のレーザーにしても数メートルという決して遠くない距離からの攻撃にもかかわらず殆ど回避して見せたのだ。  つまり、遠距離からのボルテッカは確実に回避される、故に至近距離から放たねばならないのだ。 「ただし、出来るならばね……」  ダグバはその力を解放し周囲に暴風を巻き上げる。 「ぐっ!!」  その力は凄まじく空中にいたランスも大きく吹き飛ばされ距離を開けられてしまう。 「まだこれだけの力があったか……」 「これだけじゃない……」  その時、無数の瓦礫が浮かび上がり縦横無尽に飛び回る。無数の瓦礫は至る所で衝突を繰り返す。 「何ぃ!?」  ランスは状況が悪くなったのを察した。  ランスのパワーとスピードならば暴風の嵐の中でもさほど問題は無い。  但し、それは暴風だけが障害ならの話だ。  そう、飛び回る無数の瓦礫が視界と行く手を阻んでいるのだ。  瓦礫1つで今更テッカマンが傷つくわけがない? それは甘い考えだ。超高速で飛び回っている状態で衝突するという事は、相対的に超高速で飛んでくる瓦礫をぶつけられるという事と同義だ。  当然、その威力は相当なもの。流石のランスもダメージは避けられない。仮にダメージを最小限に抑えられたとしても、その衝撃でスピードとパワーは大分殺されてしまう。  しかしスピードとパワーを落としてしまえば、暴風に耐えきれなくなり、バランスを崩してしまう。  更に言えば、限界までスピードとパワーを上げた状態だからこそダグバの攻撃を回避出来ている状況、スピードとパワーが落ちるという事はダグバの攻撃を回避しきれなくなる事を意味する。  故に、今ダグバが展開しているのは瓦礫と暴風の結界とも言えよう――  当然瓦礫で視界も阻まれる為、ダグバに迫る事すら難しくなる。 「だが……条件は同じ……ではないな……!」 「そう、この状況でも僕は君に仕掛ける事ができる」  落雷がランス目がけて落ちる。しかしランスはそれを読んでいたが為、紙一重で回避する。  が、すぐ近くに瓦礫が迫ってくる。 「ふん!」  無論、ランスのランサーが瓦礫を粉砕する。が、その直後再び落雷が落ちてくる。無論それも回避するが――  そう、瓦礫と落雷、そして暴風の波状攻撃がランスを襲い続けるのだ。 「この状況でも私の位置、瓦礫の動きそれら全てを読み切っている……! 何て奴だ……!!」 「さぁ、この状況……どうするのかな?」  ダグバは楽しそうに攻撃を仕掛けている。状況的にランスは追い詰められていると言わざるを得ない――  だが―― 「瓦礫を展開した事が仇となったな!!」  ランスは一切怯まず再びバーニアを最大まで噴かせ高速で動き始める。 「!?」  ダグバは雷を落としランスを落とそうとするが落ちる雷はことごとく外れていく――  だが何故だ? 無数の瓦礫が飛び回る中で何故奴はスピードとパワーを落とす事無く動けるのだ?  そしてダグバは見た―― 「なるほどね……」  瓦礫に張り付き足場の様にして走り飛び回っているランスの姿を――  アラスカ基地襲撃の際、ランスは重力を無視し天井や壁に張り付いて移動した事があった――  要するにそれと同じ――言うなればランスの能力とも言える。 「リントの世界にいるニンジャみたいだね」  故に飛来する瓦礫をランスは障害では無く足場へと変えたのだ。いや、足場だけでは無い――  それを蹴り上げる事で別の瓦礫や雷に対する盾代わりとしたのだ――  更に先程同様アトランダムに縦横無尽に上下左右を超高速で駆け回る動き――  徐々に――徐々にだが確実にランスはダグバへと迫る――  至近距離からのボルテッカ――それが決まればダグバは倒せる――  そしてダグバの背後にテックランサーを携えた影が――  だが―― 「そこだね」  ダグバは裏拳を放ち影をその拳で貫く――致命傷は避けられない――が、 「な……」  それは、テックランサーが刺さっただけの人間大の瓦礫であった。無論瓦礫は砕け散るが―― 「幾ら貴様が強靱であろうと、この至近距離からならばひとたまりもなかろう!」  ダグバの背後には本物のランスが回り込んでいた。 「ボルテッカァァァァァ!!」  そして首からダグバ目がけて大量のエネルギーを放出する――  が、 「遅いよ」  ダグバはランスの動きを読み――見事に紙一重で回避したのだ。ボルテッカのエネルギーはテックランサーだけを消し去り明後日の方向へと―― 「惜しかったね……今の攻撃……うん、少しは楽しめた……」  渾身のランスの攻撃が失敗に終わった――  ボルテッカは一度のテックセットで1発限り、故に最早ランスにダグバを倒す手立ては無い―― 「だけど……まだ笑顔にはなれな……」  ダグバの言葉が止まる――  そう、そこにいる筈の――ボルテッカを外して放心状態になっているであろうランスの姿が無かったのだ―― 「これは……」  流石のダグバも何が起こったのか理解できないでいる――その時、 「貴様ならば避けてくれると思っていた……」  ランスの声が響く―― 「これで私はさらなる力を手に入れた……その点だけには感謝してやる……」  何処だ、何処にいるのだ――ダグバが振り向くと――  何かのエネルギーが体が超高速で飛んでくる――あれは―― 「まさか……」  先程のボルテッカのエネルギーだ――そしてその内部には――ランスがいた。  そう、ランスがボルテッカのエネルギーを纏って飛来しているのだ―― 「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」  ボルテッカのエネルギーを纏ったランスがダグバへと迫る。  ダグバは暴風を巻き起こし、更には雷を落としランスを止めようとする。  しかしボルテッカのエネルギーが暴風や雷如きで止まるわけも無い。  そのまま超高速でダグバへと迫る。 「ぐっ」  ダグバは横に飛んで回避しようとする。確かに直線的な動きしかしないボルテッカならそれで回避出来る。  だが、今のはボルテッカのエネルギーを纏ったランスによる突撃だ。故にダグバの動きを読んで方向を修正する事は容易い。  よって――  ランスの拳が遂にダグバに直撃したのだ――  ランスのいる世界で、本来ならば10年後、1人の『死』の名を持つテッカマンが、最強と呼べる1人の伝説のテッカマンを完膚なきまでに倒した。  だが、その伝説のテッカマンは、1人の新たな世代の『冬』の名を持つテッカマンと特訓を行い、  新たな技を手に入れてその『死』の名を持つテッカマンを打ち倒した――  その技は――放たれたボルテッカのエネルギーに自ら飛び込みそのエネルギーを纏ったまま敵に突撃を仕掛けるという技だ。  突撃技であるクラッシュイントルード、そして最強技であるボルテッカ、その両方の特性を持った技、  故にボルテッカ・クラッシュイントルードと呼称する事にしようか――  ボルテッカのエネルギーを持ったまま一点突撃、それ故に単純な破壊力だけならばボルテッカ以上と考えて良い――  そう、ランスは奇しくも、本来の歴史ならば10年後伝説の――かつて自身を倒した『刃』の名を持つテッカマンが会得した技を考案したのだ――  勿論、その伝説のテッカマンのそれとは若干趣は違うだろうが、ボルテッカのエネルギーを纏った上での突撃という意味では同じ事だ。  モロトフは考えたのだ。ボルテッカ以上の威力のある攻撃を当てる事が出来ればブラスター化したテッカマンに勝てると。  そして、ダグバが自ら雷を打ち込んで強化する姿を見て思いついたのだ。  自らのボルテッカのエネルギーを付加した上で突撃を仕掛ければ、ボルテッカ以上の威力をはじき出せると――  そう、ランスは最初からこの技を決め技に使うつもりだったのだ。それまでの事は全てこの一撃の為の囮、消失したテックランサーも次にテックセットしたときに生成されるので惜しくは無い。  ボルテッカはエネルギー総量こそ大きいが範囲も広い故に威力は分散される。だがそれを一点に留めたならばその一点に注ぎ込まれるエネルギーは通常の数倍。  元々が自身が生み出したエネルギーなのだから完全なるテッカマンならば自身が耐えきれないという事も無い。  ランスは完全を越える最強の力をその手に掴んだのだ――  ボルテッカ・クラッシュイントルードによる突撃により、ダグバの身体は数十メートルも吹っ飛ばされる。 「ダガー……これはダガーの分だ、貴様が侮辱した我等テッカマンの1人の名だ」  ランスはエネルギーを纏ったままそう口にする。そしてそのまま高速で吹っ飛ばされたダグバへと迫る。  ランスは考えたのだ、1度の突撃程度でダグバが倒せるとは限らないと。  何しろ、ボルテッカを直撃させたにもかかわらず無傷だったブラスター化したブレードの事もあるのだ。流石にこれで倒せると自惚れるつもりは無い。  それに何より――  2度目の突撃が命中するする――その一撃でダグバは更に数十メートルも空中を舞う。 「これはアックスの分だ」  テッカマンを愚弄したダグバにテッカマンの力を骨の髄まで思い知らせなければならない。その為に連続で突撃を仕掛ける事を選んだのだ。  さらに連続で二撃の突撃が―― 「ブレード、レイピア……裏切り者ではあるが奴等も一応テッカマンなのでな……(エビル……義理は果たしたぞ……)」  内心でエビルに対し呟きつつ、再度空中を高速で飛んでいるダグバへと迫る。  いかに絶大的な力を持つダグバであっても、空中を飛行する能力は無い。  故に、空中に吹っ飛ばされてしまえば流石のダグバも自由には動けない――  だからこそダグバを空中に飛ばしながら連続で突撃を仕掛けるという事だ。  ボルテッカ・クラッシュイントルードのエネルギーは絶大、一撃決まればそれだけで数十メートル吹っ飛ぶ、何時しか2人は風都タワー跡付近を離れていく―― 「ソード!」  さらなる突撃――それでもランスは止まらない―― 「オメガ様の分だ!!」  我等が主、テッカマンオメガの分の攻撃を決めた―― 「これが……エビルの分だ!!」  決して仲は良くはなかった――  だが間違いなく同じラダムにおける好敵手であった――  その男の分の一撃の叩き込んだ―― 「凄いよ……まだこんな力があったなんて……」 「ふん……大した事ではない……たったひとつの単純(シンプル)な答えだ……『貴様は私を怒らせた』……それだけだ……」 「そっか……」  冷静に考えて見れば、ダグバはリントを怒りや憎しみなどで追い込む事で強くしようとしていた。  結果的にダグバはランスに対しそれを行ってしまったのだ。  そう、実の所ダグバはランスには何一つ期待していなかったのだ。  ランスを侮辱するような発言の数々は別に深い考えがあったわけではない。淡々と自身の経験に基づく事実を告げただけなのだ。  しかしそれがランスを激怒させこの結果を招いたのだ――  その攻撃はダグバへと確実にダメージを与えている――  しかし――  確かにボルテッカ・クラッシュイントルードは絶大な力を持つ――  だが、幾ら元は自分自身が放出したエネルギーとはいえ、その奔流の中で長時間いられる道理は無い。  その強い負荷はランスの身体に対し徐々にダメージを与えている――  本来の使用者が使ったときも一度の突撃で済ませたのだ、長時間維持するものではない。  だからこそ次の一撃で決めなければならない―― 「そしてこれが私の分!!」  その時、ダグバが自らに雷を落とした――自己強化を図ったのだろうがこのまま仕掛ける以外は無い―― 「これで終わりだ、ダグバ!!」  そう最後の突撃を仕掛ける――しかし、 「なっ……」  ダグバは電撃態となり空中でその突撃を受け止める。そしてそのまま―― 「このエネルギーの中に……入ってくる……だとぉ!?」  ダグバがランスのいるエネルギーの奔流へと乗り込んで来たのだ。 「捕まえたよ……」 「ぐっ……」  空中を自在に動けない以上、このまま突撃を受け続ければ流石のダグバも耐えきれない。  しかし、ダグバは弱点を見抜いていた。結局の所ランスの攻撃は突撃しか無い。  故に、突撃した瞬間ならば組み付けると考えたのだ。  エネルギーの奔流がダグバを灼く――それでもダグバは止まらずランスに電撃を浴びせる。  電撃態となったダグバが放つ落雷はボルテッカのエネルギーだけでは完全に防ぎきれずランスに痺れを与える。 「がぁぁ……」 「もう逃げられないよ」  ダグバがそのままランスを殴りつける。エネルギーの奔流故にランスの身体は吹き飛ばされる事無くその場に留まるがランス自身に強い衝撃が奔る。 「だが……このエネルギー……貴様とてそう長い時間は……」 「そうだね……でもそれは君も同じだろう……我慢比べでもしようか……実に楽しいよ……」  笑っている――  ここまで追い込んだにもかかわらず未だ恐怖せず楽しんでいる―― 「おのれ……」  だがこのまま終わるつもりはない。ランスもその拳を振り上げダグバの顔を殴りつける。  しかしその直後今度はダグバの拳を連続で2回受ける。  この状況においてもダグバの方が攻撃ペースもパワーも上、このままでは何れランスの方が先に潰れてしまう。 「さぁ、もっと……もっと僕を笑顔にしてよ!!」  気が付けばランスとダグバはI-8の海上を飛んでいた、その中でも両名の戦いは続く――  ダグバの猛攻は止まらない。それによりランスの装甲も少しずつ破壊されていく 「言った筈だ……私はコメディアンでも大道芸人でもない!! 笑顔になりたければ一人で勝手に笑え!! 有能なる私を巻き込むな!!」  だがランスも負けるわけにはいかない。  この戦いはランスだけの戦いでは無い。この戦いは自分達ラダムのテッカマンの矜持を守る戦いでもあるのだ。  自分の敗北はテッカマンの完全否定、それは決して許されない。 「ぐっ……ダガー、アックス、ソード、オメガ様……そしてエビル……私に力を!!」  この宇宙の中においてはラダムはちっぽけな生命体かもしれない――  その中でもランス、あるいはモロトフという個体はとてもとても小さな存在だろう――  だが、例え小さな存在でも、1つの心がある――  それを今、この宇宙の中で燃やすのだ――  だが、現実は非情である――  無情なるダグバの拳が迫――  その時―― 「あ……れ……」  ダグバの拳が急に力を失った――  ランスの身体に触れてもそれは触れたに過ぎない―― 「何……!?」  ほんの一瞬、ほんの一瞬だったがダグバの姿が元の優男の姿に戻った気がした――だが、またすぐさま元の電撃態に戻る―― 「いや、関係無い……!」  そう、理由はどうあれほんの僅かだがダグバに隙が出来た事に違いは無い。  一瞬あれば十分、完全で有能なるテッカマンであるランスならばそれだけで十分過ぎる程だ。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」  ランスは両腕を構えダグバへと狙いを定め―― 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!!」  心の底から溢れ出す感情を声に出しつつ全力かつ連続でダグバに拳を叩き込む――  そして最後――  ランスは拳を引いて構え―― 「ハートォォォォ!! バァァーニィィィィングッッ!!」  ダグバの胸をえぐるアッパーを叩き込んだ――  そして――  エネルギー体は海上で炸裂し巨大な水柱を打ち上げた―― SubScene04 S1(Spirits) 「はぁ……はぁ……」  沖は川から出る。随分と流されてしまったが結果としては警察側の対岸に辿り着けた様だ。  何にせよ急いで警察署まで行かなければならない。 「もう……本郷さんの姿は見えない……か」  先程まで見えていた本郷の姿はもう見えない。 「そうか……きっと本郷さんは俺に大事な事を思い出させるために……」  本郷が現れたのは、自分に仮面ライダーとして本当に大事な事を思い出させる為、沖はそう結論づけた。 「情けないな……死んでからも本郷さんに迷惑をかけるなんて……」  ともかく今一度構えをとり、 「変身……!」  沖はスーパー1へと変身した。今の所はまだ変身機能が完全に死んだわけではないらしい。  とはいえ、不調である事に違いは無くメンテナンスを受けなければ何れは限界が訪れる。それ故に次も変身出来る保証は無い。  それでもだ、例え変身機能を失っても戦い続けよう――  変身出来ようが出来まいがその魂だけは永遠に仮面ライダースーパー1なのだから―― 「そういえば……一文字さんはもう来ているのだろうか?」  一文字との取り決めでは18時にこの市街地で合流する予定となっている。  しかし具体的な場所は決めていないのが問題だ。  具体的な事は警察署に行ってからになるがそのことについても考えた方が良いだろう。 「とりあえず、中学校に風都タワー、そっちの方に一度向かった方が……」  と、川の向こうへと振り向く。 「……!?」  そして、見た――いや、正確には見えなくなっていたのだ。本来ならば川の向こうに建っている筈の非常に目立つ建造物が―― 「風都タワーが……消えた……!」  その代わりに雷鳴が轟くのが見えている――川に落ちる直前に響いた轟音と関係があるのだろうか?  雷鳴と言えば先に戦った奴を思い出すが警察署に向かった筈の奴がわざわざ真逆の方向に進むだろうか? 「どういうことだ……!」  どうやら状況は自分が考えている以上に悪化しているらしい。  警察署にいる仲間達、  中学校で分かれた仲間達、  18時に合流する予定の一文字、  何処かで戦っているだろう[[結城丈二]]、  そして敵か味方か不明瞭な[[村雨良]]、  彼等の安否も不明瞭な状況に加えタワーの消失――  [[沖一也]]の魂が向かうべきは――? 【1日目/日中】 【G-9/川岸(警察署側)】 【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】 [状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意、仮面ライダースーパー1に変身中、メンテナンス不足により機能低下 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、首輪(祈里) [思考] 基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す 0:風都タワーに何が? 1:ダグバより先に警察署に向かい、そこにいる人たちを助ける。また、チェックマシンをマップ内から探す 2:[[本郷猛]]の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。 3:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。また首輪の解析も行う。 4:この命に代えてもいつきとアインハルトを守る。 5:先輩ライダーを捜す。一文字との合流の事も考えておく。 6:鎧の男([[バラゴ]])は許さない。だが生存しているのか…? 7:仮面ライダーZXか… 8:[[ダークプリキュア]]についてはいつきに任せる。 [備考] ※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。 ※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました ※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました ※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。 ※[[ノーザ]]が死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。 ※チェックマシンによるメンテナンスを長期間受けなかったため、ファイブハンド等の機能が使用不能になりました(付け替えること自体は可能ですが、各能力が全く使えません)  今の所変身は出来ていますが、次に変身を解除すれば再変身ができなくなる可能性もあります。  チェックマシンがこの殺し合いの会場にあるかは今のところ不明です。 ※[[第二回放送]]の[[ニードル]]のなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。 SubScene05 大海 「ふふふふふ……」  I-9海上にて―― 「あぁぁっはっはっはっはっは……」  ダグバは身体を仰向けに浮かべ笑っていた―― 「どうやらイノナカノカワズは僕の方だったみたいだね……」  その胸には何かにえぐられた様な大きな裂傷が広がっており今も出血を続けている。  無論、グロンギ特有の生命力故に、この傷で死に至るという事は無い。  だが、傷の再生が遅々として進んでいない――  ダグバの身体には大きな異変が起こっていた――  先の戦いにおいてダグバは突然力を失った様に見えた。  それは一瞬の事ではあったがその僅かな隙を突かれこの有様となったのだ。  では何故、ダグバは力を失ったのだろうか?  繰り返すが今のダグバはバックルの破損により完全態に変身する能力を失っている。  その代わり、スーパー1との戦いで電撃態へと変身する力を得たわけだが――  実の所、そこに致命的な落とし穴があったのだ。  そもそも、電撃態とは一体何かを今一度考えて見よう。  電撃態は元々ガドルがクウガの強化を参考にして得た事が基本となっている。  クウガは未確認生命体との戦いの最中、偶発的に電気の力で強化出来る事に気が付いた。  それをクウガは金の力と呼称した。  ところで、クウガは古代に存在した資料を基にその力を解明していった。  その過程の中で赤、青、緑、紫、そしてもう1つ凄まじき戦士についての記述は見つかった。  だが、金の力については何一つ描かれていなかったのだ――  つまり、古代のクウガは金の力を持たなかったのである。  さて、先程も説明したと思うがクウガがガドルを撃破したとき、赤の金の力を更に強化した、黒の金のクウガとなった。  クウガが黒の金のクウガとなったのは何としてでも漆黒の凄まじき戦士の姿になるわけにはいかなかったからだ。  しかし、その黒の金のクウガの力を以てしてもダグバには全く通用せず、遂に凄まじき戦士の姿、ダグバが求めるその姿を――  要するに、金の力は所詮凄まじき戦士には遠く及ばないというわけだ。  ここまでの説明を読んで気になった人はいないだろうか?  赤、赤の金、黒の金と強化を進めていく内に、凄まじき戦士の姿に近づいている事に――確実に色はそうなって来ている。  つまりこうは考えられないだろうか? 金の力というのは凄まじき戦士の力を引き出しているだけではなかろうか。  強化ではなく、本来持っていた力の限定的な解放、そういう解釈の方がむしろ正解ではなかろうか?  ダグバの方に話を戻そう。  結局の所、今のダグバはバックルの破損により完全態の前段階、中間体にしか変身出来ない。  これはバックルが完全態の力を制御しきれない引き出せないからなのは読者諸兄もおわかりいただけるだろう。  だが、電気の力で電撃態という強化された姿となれる様になった――  しかしこれはクウガと照らし合わせても解る通り、完全態の力を限定的に取り戻しただけとも言える。  おわかりだろうか?  バックルが破損により完全態の力を引き出せないから中間体程度の力しか出せないというのに、  そんな状態で無理矢理完全態の力を引き出そうとして――無理が来ない方がどうかしている。  ガドルの電撃態とダグバの電撃態は違う。  ガドルのバックルは完全な状態でありガドルはゴのその先に進もうとしていた。電撃態で究極の力の一部を引き出せてもバックルは十分に耐えうる事が出来る。  ダグバの場合はそうではない。元々バックル自体が究極の力に耐えられない状態なのにその力を引き出そうとするのだ――  ダグバ本人は耐えられても、バックルの方が耐えられない。  勿論、バックルの破損はその時点ではそこまで致命的なものではなかった。その為、中間体で戦う事や、短時間の電撃態ならば十分耐えうる事が出来た。  しかしランスとの激闘によりバックルにかかる負荷は甚大なものとなった。ダグバは調子に乗って自己強化を繰り返し電撃態のパワーを上げているのも問題だ。  バックルの破損はダグバの知らぬ所で広がっていたのだろう  そして最後には電撃態となった状態でボルテッカのエネルギーが渦巻く内部へと突入しランスとの格闘戦――  遂に限界を超え、バックルの破損が致命的なものとなった。変身機能に支障が生じる程の――  それ故に一瞬程度変身が解除され力を失ったのだ――ダグバの強靱な意志故にすぐさま再変身出来たが致命的な事に違いは無い。  どちらにせよ、バックルの破損が広がり、変身などの機能が大分低下してしまった事に間違いは無い。  故に――今のダグバの再生能力は大分低下している。その為、通常ならばすぐに再生されるべき筈の胸の傷が再生しないのだ。  胸の傷以外にも全身に受けたダメージは大きい、これらが回復するのにも大分時間が必要だろう。  そして一番に致命的なのは変身機能だ。バックルの破損は先程とは比較にならないほど大きくなっている。  このまま変身出来るかどうかすら怪しい所だ、何の問題も無く変身出来るかも知れないが、時間をおかなくては変身出来ないかもしれない。はたまたもう二度と変身出来ない可能性すらありうる。  仮に変身出来たとしても以前の様な無茶は効かない。電撃態を使用する事は出来ても当然使用すればするだけバックルの破損は広がり変身機能は悪化する事になる。  いや、それどころか今のバックルの状態では中間体への変身すらもバックルにダメージを与える事になる。  そう、今ダグバが変身しても、いつまた突然先程の様に力を失い変身が解除されるかわからない状態なのだ。  ダグバは既に致命的な爆弾を抱えた状態と言う事だ。  この状態を回復させるためには専門の技師に時間をかけてバックルを直してもらうしかない。しかし、そんな都合の良い話なんてあるわけがない――  だが、それでもダグバは止まる事は無い。自らの笑顔を求め、これからも戦いを求めていくことだろう――  人は誰もが幸福、あるいは笑顔を求めている――  それは結局の所ダグバも同じ事だ――  その方向が人とは違うだけの話だ―― 「楽しかったなぁ……」  海を漂いながらダグバは笑う――  致命的なダメージを受けながらもダグバは喜んでいた――  今暫くは動けないが何れは島に戻らなければならない――  クウガ達との戦いが待っている――いや、それだけじゃない―― 「この傷のお礼はしてあげないとね……」  そう、大きな借りが出来たのだ、それは必ず返さなければならない。 「テッカマンランス……モロトフ……君の事は忘れないよ……決してね」  ダグバはここまで多くの戦士と戦ってきた――  だが、クウガを除く者は何れも『力を持ったリント』以上の認識を持たないでいた。  時を止める魔法でダグバを追い詰めようとした魔法少女[[暁美ほむら]]、  全ての者を恐怖させるにもかかわらず平然と楽しそうに笑っていた超光戦士シャンゼリオン[[涼村暁]]、  受け継がれる光の力で一時的に戦闘不能にしてくれたウルトラマンネクサス[[姫矢准]]、  ダグバの持つバックルを破壊し完全態への変身能力を失わせてくれた覇王流[[アインハルト・ストラトス]]と無差別格闘早乙女流[[早乙女乱馬]]、  何れもダグバを楽しませてくれたが所詮は『力があるだけのリント』の範疇を出ない。  しかし、今戦ったあの戦士は違った――完全態だったらとかそういう事を言うつもりは全く無い。  そう、純粋な意味でギリギリの状態だったのだ。一歩間違えればどうなっていたか――  この傷はその証明なのだ――  だからこそダグバは忘れない――  自分を追い詰めたテッカマンランスに変身した男の名がモロトフであり、そして所属がラダムだという事を――  それはこれまで他の誰にも出来なかった事だ――  そういう意味ではモロトフは完全勝利したのだ――  自身がリント等という有象無象では無く――  モロトフという宇宙に一人だけの存在である事を示したのだから―― 【I-9/海上】 【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】 [状態]:全身に極大のダメージ、胸部に大規模な裂傷と刺傷(回復中、但しその速度は大幅に低下)、ベルトの装飾品を破壊(それにより完全体への変身不可を含めた変身機能等に致命的な障害発生)、強い電気を浴びたことによる身体強化 [装備]:なし [道具]:支給品一式×4(ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、スタンガン、ランダム支給品(ほむら1~2(武器ではない)、祈里0~1) [思考] 基本:この状況を楽しむ。 0:とりあえず今はこのまま海を漂う。陸に戻ったら何処に向かう? 1:モロトフには必ずお礼をする。勿論クウガにも。 2:リント達を探す。 3:強い変身能力者たちに期待 4:そういえば……どうして思い出の場所(グロンギ遺跡)が? [備考] ※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です ※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。空中から電撃を落とす能力も同様です。 ※ベルトのバックル部を破壊されたため、中間体にしか変身できなくなりました。またランスとの激闘と電撃態の使い過ぎによりバックルの破損が進行しました。  その為、一時的かどうかも含め変身不能な状態に陥っている可能性があります。また仮に変身出来ても突然変身が解除される可能性があります。  同時に、中間体への変身であってもバックルの破損を進行させる状態となったので変身機能等の機能は低下する事になります。最悪変身不能に陥る可能性があります。 ※スーパー1のエレキ光線によって、パワーが強化されました。完全体にはなれませんが、電撃体には変身可能です(但し、上述の通り、バックルの破損を加速度的に進行させることになります)。 ※第二回放送のニードルのなぞなぞを全く理解していません(地図記号について知らず、グロンギの算法もリントと異なるため)。 MainScene07 宇宙に一人だけの  I-7の砂浜、1人の男が海から戻ってきた――テッカマンランスがテックセットを解除し元の姿に戻ったモロトフだ。 「はぁ……はぁ……」  全身に受けたダメージは甚大、テックランサーで貫かれた傷もある、しまいには体力の消耗も相当なもの。  文字通り、満身創痍、それ以外のなにものでもない。  それでも渾身の一撃の手ごたえは確かにあった。此方も限界だった故にあの後あのまま離脱しなければ海に飲まれ兼ねなかったから仕留めたかどうかの確認は出来なかったが――  仮に仕留めきれなかったとしても、あれだけのダメージを与えたのだ、暫くは動けないだろう。テッカマンの力を思い知らせるという最低限の目的は果たした。  後はそれこそ他の参加者に丸投げ、あるいはつぶし合わせれば良いだろう。  とはいえ、今にも背後から『強くなって僕を笑顔にしてよ』という声が聞こえてきそうな気がするのが恐ろしい所だ。  一番の理想はあのまま海の藻屑となってくれれば良いが――あれだけ追い詰めたのに逆転しかけたダグバの恐ろしさを考えるとあまり期待できない。 「それにしても奴め……最期まで笑っていた……忌々しい……」  思い返すのはラッシュをかけた時の奴の表情だ。  猛攻をかけられ一気に追い詰められている状況であってもダグバは笑っていたのである。  世間では、被虐によって快楽を得るという特異な性癖を持つ者がいる。  しかしダグバはそういうタイプとはまた違う――  単純に今にも自分が死にそうな状況すらも楽しめる特異な存在なのだろう。  全く理解出来ない思考だ――  殆ど勝利したと言って良い状況なのに。全く勝った喜びを感じないのだ―― 「だが……意義はあった」  しかし高い代償を払っただけの意味はあった。  そう、ブラスター化したブレードに対する対抗策を手中に収めたのだ。  ボルテッカ・クラッシュイントルード、これならばボルテッカに対し無傷であったブレードを破る事が出来るかも知れない。  そして、実際に追い詰められた事で絶対的なものではない事も知る事が出来た。  なにしろ、以前敗れ去った時は、至近距離からのボルテッカならば耐えられないと慢心したが故の完全敗北だ。  もし、ボルテッカ・クラッシュイントルードを使った状況で追い詰められなければ、きっとブレードとの戦いでは慢心して同じ結果へと導きかねない。  それを知る事が出来ただけでも十分過ぎるという事だ―― 「待っていろブレード、この技を得た私が貴様を倒す、必ず倒す」  そんな中、モロトフはデイパックから拡声器を取り出しそのスイッチをオフにする。  戦いの中でオフにしていなかった為、今までずっと声を拾っていたのだろう。  流石にデイパック内部に入れてからは拾った声が周囲に広まったという事は無いが、デイパックに入れる前の音声は拾われている――恐らく周囲に届いているだろう。  だが、それはむしろ好都合だ。何しろダグバによって自分が痛めつけられたという不名誉な話を広められていたのだ。戦いの音声が広がってくれればそんな汚名も大分そそげるだろう。  そんな中―― 「だが……後何回戦えるだろうか……」  そう、高い代償というのは単純なダメージや疲労だけではない。  モロトフの手には自身のテッククリスタルが握られている――  僅かにヒビの入ったクリスタルが――  かつてブレードがダガーの仕掛けた干渉スペクトル――テックシステムを阻害し拡散したエネルギーで逆に己を傷つけるそれによってクリスタルにダメージを与え最終的に砕かれた事があった――  当然、クリスタルが砕け散ればテックセットが不可能となるのは言うまでも無い。  そう、それと同じ事がランスのクリスタルにも起こっているのだ。  勿論、ランスの場合は干渉スペクトルというテックシステムをダイレクトに阻害するものに晒されているわけではない。  無論、通常レベルの戦闘ならばまず破損する事はあり得ない。  だが、この場での戦闘は普通では無い――  度重なる激闘そのものがクリスタルに多大な負荷をかけていたのだ――  決定打は間違いなくダグバとの戦闘、ダグバ自身の猛攻に加えランス自身もボルテッカ・イントルードによるボルテッカエネルギーの奔流に長時間晒されていたが故に多大な負荷が掛かっていた。  いや、それ以前から致命的なダメージを受けていた事も否定できない――勿論、これは仮説の1つレベルでしかないが――  思い出して欲しい――そう、キュアピーチとの戦いの際にラブサンシャインフレッシュとボルテッカとの直接対決を行った時の事を――  ここまで説明すればもうおわかりだろう、プリキュアの必殺技がクリスタルそのものにダメージを与えていた可能性があるという事だ。  プリキュアの力は生命を守るための力、生命を脅かすラダムのテッカマンの力とは相反するものだ。  ならばプリキュアの力が守る為に――ラダムの力を司るクリスタルへと作用した可能性は高いと言える。さながらそれは干渉スペクトルに近い力が――  あり得ないとは言えないだろう。実際にプリキュアの力がガイアメモリの毒素を浄化した事例が存在するのだから――  人の心を歪めているラダムのテッカマンの力の源に作用する可能性は高いと言えるだろう――  それが確かならばその時点でクリスタルに致命的なダメージを受けた事になる。何しろ数キロ四方を焦土と化す程の激しいエネルギーだったのだ、クリスタルに影響がない方がどうかしている。  その時は気付かないぐらい取るに足らないものであっても、その後の激しい戦闘で致命的になるまで広がったと考えられなくも無い。    とはいえ、それが確かなのかはデータが足りない。だが、仮に違ったとしてもその戦いもまた大きな負荷となった事だけは確実だ。  どちらにせよ、度重なる激闘によってクリスタルが限界を超え破損した、その事実だけは確かである。  勿論、干渉スペクトルに晒され続けた状況でテックセットしたが故にクリスタルが破壊されたブレードの場合とは若干違う。  今の段階ならば変わらずテックセットは可能であり、戦闘を行う事も出来るだろう。  だが、先の仮説が確かならば、プリキュアの力、つまりは必殺技を受ければ加速度的に破損は進行する事になる。  ちなみにランスは後にキュアパッションの必殺技ハピネス・ハリケーンを受けている。勿論この時点ではクリスタルに影響は無かった――だが、これは目に見えないだけで実際は相応の負荷が掛かっていた可能性は否定できない事を記しておく。  それでなくても、ダグバ戦の様な激しい戦闘を繰り返せばどちらにしてもクリスタルの破損が進行する事になる――  その内、通常のテックセットや戦闘にも支障が出るようになり――最終的には砕けてしまい、二度とテックセット出来なくなるだろう――  それでも、モロトフは足を止めるわけにはいかない。テッカマンが優秀である事を虫螻共に思い知らせなければならないのだ――  とはいえ、今までの様に無節操に戦うというわけにはいかない。戦い所をある程度選ぶ必要があるだろう。  特に、ブレードを倒す前に砕けてしまっては意味が無くなってしまう。それだけは避けなければならない――  が、どちらにせよダグバ戦での消耗が激しすぎる以上は今暫く――つまりは数時間は戦えない。  こんな状態でテックセットした所で、マトモに戦えないのはモロトフ自身が理解している。  今必要なのは休息というわけだ。  幸い、参加者達は風都タワー跡に意識が向いている。当初の狙いとは違うが、そこから離れ今は休むのが得策だろう。  正直な所、ほんの30分程前は風都タワー跡に集まっていた連中を一網打尽にするつもりだった。  だが、今は連中をつぶし合わせ自分はのんべんだらりと休んでいるつもりという有様。  冷静に考えて見ればどうしてこうなったと言いたい気持ちだ。  だが――これで良かったのだろう。  そう、有象無象ではない宇宙に一人だけの存在であるテッカマンランスことモロトフ――その彼自身がその心のままに動いた結果なのだから―― 「ふぅ……やれやれだ……」 【I-7/砂浜】 【モロトフ@宇宙の騎士テッカマンブレード】 [状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大) [装備]:テッククリスタル(僅かにヒビ)@宇宙の騎士テッカマンブレード [道具]:支給品一式、拡声器、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、ランダム支給品0~1個(確認済) [思考]基本:参加者及び主催者全て倒す。 0:どうしてこうなった…… 1:今は休む、市街地には近づかない。だがテッククリスタルのヒビは…… 2:いずれブラスター化したブレードを倒す。 3:プリキュアと魔法少女なる存在を皆殺しにする。 4:キュアピーチ(本名を知らない)と[[佐倉杏子]]の生死に関してはどうでもいい。ただし、生きてまた現れるなら今度こそ排除する。 5:[[ゴ・ガドル・バ]]という小物もいずれ始末する。ン・ダグバ・ゼバについては他の参加者に任せる。 [備考] ※参戦時期は死亡後(第39話)です。 ※参加者の時間軸が異なる可能性に気付きました。 ※ボルテッカの威力が通常より低いと感じ、加頭が何かを施したと推測しています。 ※ガドルの呼びかけを聞きましたが戦いの音に巻き込まれたので、全てを聞けたわけではありません。 ※ボルテッカ・クラッシュイントルード(Ⅱでブレードがデッド戦で使った技)を会得しました。 ※度重なる激闘でクリスタルが破損しています、現状は変身及び戦闘に支障はありませんが激しい戦闘(例えばダグバ戦)を繰り返せば破損は進行し何れクリスタルが破壊する可能性が高いです。  また、プリキュアの必殺技を受ける事で破損が加速度的に進行する可能性があります。 【共通の備考】 ※ランスの拡声器使用後、H-8の風都タワー跡にて約10分後にダグバが拡声器で呼びかけを行っています。その後、ランスが拡声器をデイパックに仕舞うまでの音声が周囲に広まった可能性が高いです。 ※ダグバとランスの戦闘によりH-8エリアそしてI-8に数多くの雷鳴が響きました。 *時系列順で読む Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]Next:[[街角軍記]] *投下順で読む Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]Next:[[死神の祭典(第1楽章 悪魔の祝宴)]] |Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]|[[沖一也]]|Next:[[金の心を持つ男]]| |Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]|[[ン・ダグバ・ゼバ]]|Next:[[解放されしライジングドラゴン]]| |Back:[[Uに一人だけの/ダグバの世界]]|[[モロトフ]]|Next:[[地球に生きる僕らが奇跡]]| ----

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