*使命 ◆gry038wOvE ──光あるところに、漆黒の闇ありき。 ──古の時代より、人類は闇を恐れた。 ──しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、 ──人類は希望の光を得たのだ。 彼は魔戒騎士の最高位・黄金騎士の牙狼の称号を持つ者、[[冴島鋼牙]]。 白き衣をたなびかせ、彼は夜の森を歩いていた。 常人ならば大の大人であろうとも不気味に思うであろう、暗い森を顔色一つ変えずに歩いていく。 鍛え上げられた精神は、この程度の事に恐怖を抱かないのだろう。険しげな彼の顔は、殺し合いへの強い否定の心によるものだった。 たとえ命を懸けてでも、加頭という『ドーパント』の野望を止めてみせる──その覚悟が足を動かし続ける。 数十分前、名簿に目を通した彼は、[[涼邑零]]と[[バラゴ]]の名があることに気が付いた。 零──彼は鋼牙と同じく魔戒騎士である。何度もぶつかり合った相手でありながら、今は互いを『ザルバ』──友と認める男だ(同名の相棒はここに連れてこられた際に加頭に奪われたらしい)。 この男がいるのは鋼牙としても心強い。共に加頭を倒す剣となってくれるであろう男なのだから。 だが、もう一人のバラゴの名前が問題なのだ。 彼は暗黒に堕ちた魔戒騎士である。鋼牙の父を殺し、零の恋人を殺し、数多の人の命を葬ってきた悪の男だ。 二度の死を経験したはずの彼が、再びここに召喚されてきた──そういう事なのだろう。 それが、バラゴとしての意思を持つ者なのか、魂の抜け殻なのかはわからない──いずれにせよ、彼が他の参加者を襲うであろうことはおよそ間違いないと考えた。 ゆえに、この殺し合いは誰も殺し合わずに終わるとは思えなかったのである。 鋼牙は一刻も早くバラゴを葬り去ろうと歩いている。 零は確かに合流したいが、別々に行動した方が効率は良い。護りし者として、一人でも多くの人を保護したいからだ。 確かにこの殺し合いには常人ではなく、「仮面ライダー」や「テッカマン」と呼ばれる超人もいるようだが、どこまで能力があり、信用できるかもわからない。 まずは己の力でできる限りの事をする──それが護りし者の使命だ。 「君!」 木々の葉が揺れる音に交じって、男の声が耳を打つ。 通常、こういう緊張した状況で周囲に人の気配があれば口うるさい魔導輪が教えてくれるのだが、そいつが今はいない。 それゆえ、鋼牙は人に突然声をかけられたことに慣れず、一瞬だけ驚いた。 険しい顔でそちらを向く。 きっと、常人ならばその眼力に威圧されるだろう。しかし、相手はそういう人間ではなかった。 「……私は警察の者だ」 顔立ちの整った若い刑事である。彼は警察手帳を片手に、こちらを見ている。 彼は警察という職業にあるゆえ、相手の顔が怖くても屈しない。むしろ、相手を怯えさせるだけの顔ができねばならない職業である。 鋼牙の態度に警戒を示しながらも、一条は彼に近付いていく。 「……俺は冴島だ。冴島鋼牙」 「冴島さんですか。ともかく、早い段階で一人保護できてよかった……」 「保護? ……そうか、あなたは警察なんだったな」 鋼牙は警察という職業にあまり興味はなかった。魔戒騎士ほど辛い訓練も無ければ、ホラーの相手もできない。 だが、この職務に忠実な姿は鋼牙に共感を与えた。鋼牙も「人を護る」という使命に対してどこまでも一途な男だったからだ。 無論、魔戒騎士の鋼牙に保護は不要ない。だが、敢えて彼と行動する口実のひとつとして「彼に保護される」というのも悪くない。 先ほど確かに加頭が怪物へと変化するのを見たとはいえ、鋼牙が魔戒騎士であることを名乗っても信用されるとは限らない。別に隠す気はない(後でザルバを使って彼の記憶を消せばいい)が、自ら名乗るのは気が引けた。 魔戒騎士の力を教えるのは、何か事が起こってからでも充分だろう。ともかく、適当な口実で一緒に行動した方が楽だった。 鋼牙は黙って、刑事の下へと歩いていく。それが黙って保護を受けるという意味だと、刑事も理解した。 「ところで、君……その腰の剣は……」 ふと、鋼牙は自分の腰が剣を差していたことに気が付いた。 咄嗟に使えるようにコートの外に露出していたのが災いだったのだろう。 ここまで職務に忠実な刑事を相手に、融通など効くだろうか。まして、こんな危険物を没収しないはずがあろうか。 鋼牙にしては迂闊だったのだが、今は上手く弁解するしかなかった。 「……俺には必要なものだ。それだけしか言えない。それに俺は、これを人に向ける気はない。……あの加頭という男を倒すためだけに使うつもりでいる」 「しかし君……!」 「銃刀法違反か……この場であまり言うべきじゃないだろう。加頭という男は俺たち全員に武器を支給している。殺しをするヤツにも、殺しをしないヤツにも。自分の身を守るのにも必要だ」 「……わかった。しかし、状況によっては私が没収する」 思ったよりも融通の聞く刑事であったことに安堵する。 まあ、本当に人の命を守るには、法律の壁は邪魔になることもある。──それをわかってくれているのだろう。 ……どうせ、普通の人間にはこの剣を没収することなどできないが。 「そういえば、ちゃんと名乗っていなかったな。私は[[一条薫]]という者だ。よろしく頼む」 「────カオル、か」 その名前が鋼牙を反応させないはずがない。 男女問わずさほど珍しい名前でもないが、その名を聞くと一瞬だけ凍ってしまうのだ。 御月カオル──鋼牙が心底護りたいと思った女性の名前を。 (このまま生きて帰らないわけにはいかないな……) バラゴや加頭を倒し、人の命を護る──その覚悟は変わらない。 だが、己が命も出来れば持って帰りたいと、鋼牙は思った。 『黒い炎と黄金の風』──その最後の一ページを、鋼牙は思い出す。 カオルという女が望んだあの未来を掴む為に、自らも生きていたい。 そう、強く願った。 未来を築く──それも魔戒騎士の立派な使命だ。 黄金の風は黒い炎を消し去るために歩いていく。 新たな協力者とともに。 【1日目/未明 G-5 森】 【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】 [状態]:健康 [装備]:魔戒剣、魔導火のライター [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考] 基本:護りし者としての使命を果たす 1:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する 2:再びバラゴを倒す 3:一条と共に行動し、彼を保護する 4:魔戒騎士について話すつもりはないが、隠すつもりもない 5:零ともできれば合流したい [備考] ※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。 ※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。 ※バラゴが生存している事について大きな疑問を抱いてはいません。 【一条薫@仮面ライダークウガ】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、警察手帳 [思考] 基本:民間人の保護 1:警察として、人々を護る 2:鋼牙を保護する 3:他に保護するべき人間を捜す 4:銃刀法違反については、今は黙認しておく *時系列順で読む Back:[[オープニング]]Next:[[セイギノミカタ]] *投下順で読む Back:[[オープニング]]Next:[[セイギノミカタ]] |[[冴島鋼牙]]|Next:[[守りし者たち]]| |[[一条薫]]|Next:[[守りし者たち]]| ----