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*不幸のバトルロワイヤル! 幸せを取り戻せ!! ◆LuuKRM2PEg


 暗闇に満ちた空は夜を象徴するかのように月と星々の輝きに照らされていた。
 潮の香りを乗せる海風は『H-3』エリアに位置する砂浜に冷たく吹きつけて、いる者全ての肌を刺激していただろう。
 それは彼女も例外ではなかった。159cmの背丈を桃色のシャツとデニムのホットパンツで包む桃園ラブは一人で海岸に佇んでいる。
 二つの髪留めで結ばれたオレンジ色のツインテールが風に揺れる中、彼女は悲しみに満ちた表情で瞳から涙を流していた。

「……ごめんなさい」

 ラブは力無く項垂れながら、ぽつりと呟く。

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

 そのまま砂の上に蹲って、悲痛な声で謝罪の言葉を続けて口にした。夜の冷たさに太股が突き刺さるが大して気にならない。
 彼女の中に湧き上がっているのは罪悪感と自己嫌悪だけだった。熱くなった涙腺から止め処なく溢れ出す涙は容赦なく砂浜に落ちていき、染み込んでいく。

「あたしが行かなかったから……あたしのせいで……ごめんなさいっ!」

 幾ら謝っても許されるわけがないし、許されるとは彼女自身も思っていない。プリキュアでありながら人の命を守れなかったのだから。
 この力はみんなの幸せを守るために得たのに、ただ見ているしか出来ていない。自分にも巻かれた首輪が突然爆発し、男の人達が三人も死んでしまう。
 犠牲にされたあの人達はもう、幸せを感じる事が出来ない。あの人達はもう二度と笑う事が出来ない。帰りを待っている人達と永遠に会う事が出来ない。
 あたしが目の前にいながらこの手でみんなを救う事が出来なかった。つまり、あの人達の未来を奪ったのはあたし自身だ。
 加頭順と名乗った男が殺したから助けられなかったなんてのは、責任逃れの言い訳でしかない。かつてのラビリンスから全てのパラレルワールドに生きるみんなを守り、フュージョンやボトムのような闇を倒した以上、何としてでも助けなければならなかった。
 それが彼女を罪悪感で苦しめ、涙を流させるには充分な理由である。

「本当に、ごめんなさい……!」

 悲しみで声が震えてまともに出ないが、それでも謝らずにはいられない。それが誰にも届かなくて、何の贖罪にもならない事を分かっていても。 
 もしもあの人達を助けられるのなら、何でもするのに。後悔のあまりに叶うはずもない願いすらも芽生えていく。

『優勝された方にはどんな報酬でもお渡しする用意がございます。金銭や物品、名声や社会的地位、或いは人の命を蘇らすことなども可能です』

 そんな中、唐突に蘇るのは加頭の言葉。まるで吹雪のように冷たくて冷酷な物言いの意味は、みんなを犠牲にする事。
 彼は殺し合いで最後の一人になれば、何でもすると言っていた。でも、それを信用していい訳がない。

『奇跡も魔法も、我々が実現して差し上げます』
「違うよ……そんなのは奇跡なんて言わない」

 流れ続ける涙を拭う事はせず、加頭の言葉を否定しながらゆっくりと立ち上がる。

「こんな事で何かを手に入れたり、どんな願いを叶えても……絶対に幸せになんてなれない!」

 それがラブの自論だった。幸せとは自分の手で掴んでこそ価値があって、独り占めをせずにみんなに分け合うことでより大きくなるもの。せっかくプリキュアが守った人達が集められてこんな悲しいことをしても、その果てに本当の幸せなどない。
 こんな訳の分からない事させる為に人々を集めて、戦いを強要するような相手が本当の事を言うとは全く思えなかった。
 だからラブは戦いへの反逆を決意する。決して誰かの命を奪うことはせずに、加頭やノーザのような奴らから巻き込まれたみんなを守らなければならない。みんなの幸せを守るのがプリキュアであって、それで誰かを傷つけることなんてあってはならないから。
 もしもここに美希がいたら、へこたれたあたしを引っぱたいてでもそうさせるはず。おもちゃの国の時みたいに。

「……助けられなくて本当にごめんなさい。でも、こんな悲しいことは絶対に終わらせてみせますから」

 ラブは涙を拭いながら果てしなく広がる海をぼんやりと見続ける。夜空の輝きが鏡写しのようになっていて、宝石のような美しさを放っていた。 
 この光景に見覚えがある。いつだったかクラスの修学旅行で沖縄に行ったとき、大輔と一緒に眺めた景色だ。いつもだったら懐かしさに耽っているか海から放たれる美しさに目を奪われていたかもしれないが、そんな事を出来るわけがない。
 彼女に出来ることは犠牲にされた男達を、忘れない事だけだった。

「そこのあなた」
「えっ?」

 突然発せられた聞き覚えのない声に、ラブは思わず振り向く。そこにはいつの間にか見覚えのない制服を身に纏った少女が立っていた。
 眩いばかりの金髪は左右でカールを作るように整っていて、表情は優しく穏やかな笑みで満ちている。

「あなたは……?」
「驚かせてごめんなさい……でも、私がいるからにはもう大丈夫だから」

 突然の来訪者にラブがぽかんと口を開ける中、少女は何かに気づいたかのように「あっ」と呟いた。

「申し遅れたわ。私の名前は巴マミ……あなたは?」
「あ……桃園ラブです」
「そう……こちらこそ、よろしくね」


◆ 


青乃美希の表情は憂いに満ちている。突然の出来事への不安もあったが、犠牲にされた男達の事を思うとやりきれない気持ちが溢れていた。
事前の連絡も無しにこんな場所に連れてくる相手に憤りを感じているが、今は落ち着いて行動しなければならない。
殺し合い……あの加頭順と名乗った男は、六六人全員に首輪を巻き付けてそれを強制した。しかも拒否権はない。

「あたし達がこんな馬鹿な事に乗ると思わないでよね……」

 美希は加頭への怒りを込めた溜息を吐きながら、名簿と地図を確認する。
まず自分がいる場所はB―10の灯台付近だ。目の前で堂々と立っている塔こそが、その証拠。周りを含めて、ここから人気は感じられないが油断は出来ない。同じプリキュアならばいいが、こんな状況で物事はそこまで都合良く進むとは思えない。
何よりも、殺し合いに乗った危険人物と出会う可能性だってあった。

「ラブ、ブッキー、せつな……お願いだから、みんな無茶をしないでよね。特にラブ、あなたはね」

 名簿には大切な友達の名前が書かれていたから、こんな馬鹿げた事に付き合わされたプリキュアは自分だけではない。志を同じくする彼女達も命の危険にある。
 特に心配なのが桃園ラブだ。彼女は常に誰かのために行動している反面、一度落ち込んだらとことん気持ちを沈ませてしまう。先程の悲劇があった以上、罪悪感に沈んでいてもおかしくなかった。
 出来る事なら全てが悪い夢であって欲しいが、そんな願いが叶うわけがないのは分かっている。現実逃避など以ての外だ。今はみんなとの合流を目指して、こんな馬鹿げた戦いを終わらせる事が何よりも最優先だ。あのノーザも島の何処かにいる以上、あまりのんびりはしていられない。
 希望の妖精であるブルンが眠っているリンクルン、そして名簿と地図をデイバッグにしまって美希は足を進めようとする。
 次の瞬間、茂みの揺れる音が聞こえて思わずそちらに振り向いた。

「誰ッ!?」
「待ってくれ、僕は敵じゃない!」

 美希がリンクルンを手にしながら身構えた先に現れたのは、見慣れない服を纏った一人の青年。
 青と黒を基調とした制服は、まるで自衛隊を始めとした防衛組織を彷彿とさせる。
 そして、その顔には見覚えがあった。始まりの場所で加頭に殺し合いの意義を問おうとした男。

「もしかしてあなたは孤門一輝さん……ですか? さっき、あの加頭って男からあたし達をここに集めた理由を聞き出そうとした」
「そうだ、僕は君に危害を加えるつもりなんてこれっぽっちもないし、こんな殺し合いに乗るつもりもない」
「そうですか……それはあたしも同じです。誰も犠牲にしたくなんてありません」

 孤門一輝の事を完全に信じる事はまだ出来ないが、こんな状況で疑心暗鬼になっても主催者達の思う壺だ。
 ブッキーがいつも誰かの事を信じていたように、戦いを止めようとするのならまず誰かを信じる事からを始めなければならない。
 そう思いながら彼女は、孤門と対話するために足を進めた。 


◆


「そう……色々と教えてくれてありがとう、桃園さん」
「マミさんこそありがとうございます!」

 巴マミは桃園ラブと出会ってから、互いの知人について話し合っていた。彼女の友人がこの孤島に何人も連れてこられているという。
 青乃美希、山吹祈里、東せつな、花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの7人だ。そして、彼女はノーザという人物が危険であると教えてくれる。
 その見返りとしてこちらも知人の事を教えた。後輩である鹿目まどかと美樹さやかと佐倉杏子、そして内面の読めない後輩である暁美ほむらについて。

「それにしても青乃美希さんか……何だか、凄い偶然ね」
「美希たんと同じ名前のさやかちゃんか……あたしも、会ってみたいですね」
「彼女や鹿目さんはとても真面目でいい子だから、あなたとはいい友達になれると思うわ」
「本当ですか!」

 青乃美希と美樹さやか。一人は名字で一人は名前という奇妙な偶然にマミは思わず微笑んでしまう。同じようにラブも笑っているが、マミにはそれが心からの笑顔には見えなかった。
 まるで少しでも悲しみを抑えつけているかのような、無理に作った表情。
 もっとも、それはマミにも理解出来た。この孤島に飛ばされてからマミは殺し合いを止めるために行動し、海岸に出て悲しみに暮れた様子のラブを見つける。
 彼女が涙を流している理由は殺し合いに対する恐怖ではなく、あそこで死んでしまった男性達への罪悪感だ。
 でも、それは人間らしい感情なのかもしれない。自分ではない誰かの為に涙を流せるのは、心からの優しさがなければ出来ないはずだ。
 しかし同時に、自己犠牲のあまりに無茶をしかねない危うさも感じられる。

「桃園さん、ちょっといい?」
「はい、何ですか?」
「あまり無理をしないで」

 だからこそ釘を刺しておく必要があった。そう思うマミの表情は先程とは違い、ほんの少しだけ真摯に染まっている。

「えっ?」
「人を助けようとするのは確かに素晴らしいわ。でも、だからって自分の事を蔑ろにしないで」
「やだなぁ、そんな事わかってますよ……」
「そう……でも、忘れないで。もしもあなたが無理をしてしまって何かあったら、残された友達のみんなは悲しむでしょうから」

 一歩間違えたら、罪悪感のあまりにラブはどんな無茶でもやりかねない。マミはそんな懸念を感じていた。
 もしも恐れていた事態が起こったら、残された彼女の友達みんなが悲しむ。魔法少女として、それだけは起こすわけにはいかなかった。
 マミの問いにラブは面食らったような様子を見せたが、すぐに真剣な顔付きを向ける。 

「わかりました……それじゃあ、マミさんも約束してください」
「えっ?」
「マミさんも、絶対に無理をしないって!」

 真顔で詰め寄りながらラブは両手を握り締めてきて、予想外の出来事でマミはぽかんとした表情を浮かべた。

「あたしも無理はしません! だから、マミさんも無理をしそうになったらあたしに言ってください! 出来る事なら何だって手伝いますから!」

 力強く握り締められた手の平から彼女の熱が伝わってくる。その感触にマミは驚くも、思わず微笑んでしまった。

「そう、わかったわ……私も、無茶をしないって約束するわ」
「本当ですか、ありがとうございます!」
「こっちこそありがとう……桃園さんも辛いはずなのに、こんな私の長話を聞いてくれて」
「大丈夫ですよ! だって、マミさんはあたしの事を心配してくれているんですから! だから、どんどん話しましょうよ!」
「それはとっても嬉しいわね」

 マミの言葉に答えるようにラブも柔らかい笑みを見せてくる。この時ばかりはマミも、殺し合いという現状の中で希望を見出した。彼女のような人が一人でも増えてくれれば、犠牲者が出る事はないと。
 しかしノーザという女のような危険な輩もいるので油断は許されなかった。桃園さんに偉そうな事を言った以上、自分がしっかりしなければいけない。
 ラブの手が離れた頃、マミにそんな思いが芽生えた。

「せっかくだから、あなたの事をもっと教えてもらってもいい? 私も、私の事を出来る限り話すから」
「わかりました……あたしも出来る限りあたしの事を話します。もしかしたら、信じられないかもしれませんけど」
「ありがとう」 


◆


 孤門一輝はこの状況がアンノウンハンドの仕業ではないかと、一瞬だけ疑惑を持つ。何の前触れもなく、自分を含めたナイトレイダーの隊員を孤島に放り込み首輪を付けた。それも意図のわからない殺し合いをさせる為に。
 無論、孤門はそんな事に乗るつもりは微塵もなかった。スペースビーストの脅威から人類を守るためにナイトレイダーの隊員となったのに、無意味に人を傷つけては自分を否定する事になる。
 だがあの加頭順という男の差し金か、そんな自分を嘲笑うかのように支給品にディバイドランチャーが混ざっていた。恐らく奴はナイトレイダーの意義を知った上で、このような真似をしたに違いない。
 しかし今は青乃美希やその友人を守るためにナイトレイダーの力を使う。そして副隊長の西条凪や先輩の石堀光彦との合流を目指さなければならなかった。

(それにしても……姫矢さんや溝呂木眞也までいるなんて)

 孤門の知る名前があと二つ。ウルトラマンとして人々を守ってきた姫矢准や、かつて闇の力に操られてリコを始めとした多くの人を弄んだが、最後に人の心を取り戻した溝呂木眞也までいる。
 姫矢はまだしも、何故死んでしまった溝呂木がいるのか理解出来なかった。だとすると加頭の言葉通りに死人を蘇らせたのか? その結論に至った瞬間、孤門は人の命を弄ぶ主催者への吐き気が更に強くなる。
 どんなに辛くても死人が蘇るなんてありえないしあってはならない。命は限りあるものだからこそ、人は優しくなれる。それを冒涜するような輩に従うわけにはいかなかった。

「孤門さん、どうかしましたか?」
「いや、何でもない……急ごう、君の友達を捜すために」

 怪訝な表情を浮かべる美希を不安にさせないため、孤門は穏やかな笑みを見せる。あまり思案に耽ってばかりもいられないと彼は反省した。



【1日目/未明】 
【H-3/砂浜】 
【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】 
[状態]:健康、罪悪感と自己嫌悪(少しは和らいでいる)
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
1:マミさんと一緒に行動し、話をする。
2:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
3:マミさんの知り合いと会って協力したい。ほむらには少し気を付ける。
4:犠牲にされた人達(堂本剛三、フリッツ、クモジャキー)への罪悪感。
[備考] 
※本編終了後からの参戦です。
※花咲つぼみ、来海えりか、明堂院いつき、月影ゆりの存在を知っています。
(ただし、クモジャキーとダークプリキュアに関しては後続の書き手さんにお任せします)

【巴マミ@魔法少女まどかマギカ】 
[状態]:健康
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどかマギカ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考] 
基本:殺し合いには乗らず、魔法少女として犠牲を出さない。
1:桃園さんともっと情報を交換する。
2:ノーザは危険人物として注意する。ほむらに関しては本人に出会うまで保留。
3:もしも桃園さんが無茶をしそうになったら、何としてでも止める。
[備考] 
※具体的な参戦時期に関しては後続の書き手さんにお任せします。
※ラブの知り合いについての情報を得ました。


【1日目/未明】 
【B-10/灯台付近】 
【青乃美希@フレッシュプリキュア!】 
[状態]:健康
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考] 
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
1:今は孤門と行動し、みんなを捜す。
2:プリキュアのみんなが心配(特にラブが)
3:ノーザには気を付ける。
[備考] 
※本編後半以降(少なくともノーザの事は知っている時期)からの参戦です。
※ハートキャッチプリキュア!からの参加者について知っているかどうかは、後続の書き手さんにお任せします。

【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】 
[状態]:健康、ナイトレイダーの制服を着ている
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考] 
基本:殺し合いには乗らない
1:美希ちゃんを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
3:姫矢さんに溝呂木眞也……
[備考] 
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。 


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