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答えが、まったくわからない(後編) - (2012/06/21 (木) 10:31:21) のソース

*答えが、まったくわからない(後編) ◆LuuKRM2PEg



 戦場からそこまで距離が離れていなかったおかげか、町に到着するのにそこまでの時間はかからない。市街地の何処を目的地にしているかなんて考えてないし、怪人から少しでも離れる為に走るしかなかった。
 この腕の中で眠り続けている左翔太郎はまだ目覚めないが、考えてみればその方が都合はいい。もしもこんな時に彼が起きたりしたら、それはそれで面倒だ。
 ただ、ユーノの事をどう伝えればいいか。新たなる悩みが生まれた杏子の前に、突如としてフェイトが回り込んできた。

「杏子」
「何だよ、フェイト!?」
「私はユーノを連れてくるから、あなたは先に行って」
「はぁ!?」

 フェイトの言葉は、先程のユーノのように信じられる内容ではなかった。

「あんた、何考えてるんだよ!?」
「やっぱり、これからの事を考えると三人よりも四人の方がいいかもしれないから……それに杏子だって、くたばったりしたら許さないって言ってたでしょ」
「あれは……咄嗟に出た言葉って言うか……とにかく、今更戻ったところでどうなるんだ!」
「大丈夫、逃げたりしないから心配しないで」
「そういう問題じゃねえ! フェイトは母親の為に殺し合いに乗ったんじゃなかったのかよ! ここでお前が死んだりしたら、あんたの母親はどうなるんだ!?」
「……ごめんなさい。でも、やっぱりユーノがいた方が杏子も私も助かるかもしれないから」
「てめぇ……何だよそれ、答えになってねえだろ! ユーノみたいに正義の味方を気取って死ぬつもりか!?」
「そうじゃない! そういう訳じゃないよ……私でも、よくわからない……!」
「じゃあ、何で……!?」
「……とにかく、私は行くから。ありがとう、杏子」

 悲しげな表情を浮かべるフェイトは、納得のいく答えを返さないまま背を向ける。それに怒りを覚えて杏子は怒鳴ろうとするが、フェイトは一瞬で空の彼方へと飛び去ってしまった。
 杏子は止めようと思ったが、そのスピードによって少女の姿はすぐに見えなくなってしまう。例え翔太郎を放置して追おうとしても追いつけるわけがないし、何よりそんな事をしては今度こそ怪人に殺されるだけだ。

「何だよ、どいつもこいつも……ああいいよ! それなら勝手にしろ!」

 そう叫びながら、杏子はフェイトから背を向けて再び走り出す。どうせフェイトを追ったとしても何にもならないし、わざわざ殺されるリスクを犯す気はないからだ。
 生きる為ならそれが正しいのはわかってるし、今はこの選択を取るしかない。だけど、どういう訳か怪人から逃げ出した時から心の中に変なモヤモヤが溜まっていく。自分から選んだ判断なのに、まるでスッキリしなかった。

(何で、何であたしは……この兄ちゃんを切り捨てないんだ? 何で、あいつらはあたしに『ありがとう』なんて言ったんだ? 何で、あたしの気持ちは晴れないんだ? 優勝するって決めたんだろ? なのに、何で……!?)

 その答えを杏子は渇望するが、当然の事ながら得られない。
 どうしてみんな、そこまでして誰かの為に動こうとするのか? 他人の都合を考えないで何かをあげようとしても、その分の不幸が広がってしまうだけなのに。
 何一つの疑問も晴れないまま、杏子は力任せに走り続けていた。今の彼女は何処を目指しているかなんて全く考えていない。ただ、佐倉杏子は答えが知りたかった。
 どうして、フェイト・テスタロッサとユーノ・スクライアの二人を見捨てる事で、こんなに胸が苦しくなってしまうのかを。



◆


(やっぱり、駄目だ……どう考えても逃げられない。みんな、ごめん……)

 二人にはああ言ったけど、正直な話この状況を一人だけで打破する方法なんてまるで思いつかなかった。フェイトのようなスピードはないし、Wや杏子のように強力な攻撃技を持っていない。あくまでもバインドや治癒のような補助魔法がメインだから、前衛に立つべきではなかった。
 ユーノ・スクライアはそれを強く理解している。四人でも勝てなかったのに、たった一人で立ち向かってもただ殺される未来しかない。しかしそれでも、ここで自分が囮にならなければみんなを守る事なんて出来なかった。
 こんな意味の分からない殺し合いを打ち破ってみんなを守ってくれるであろう翔太郎達こそが、生きなければいけない。彼らならばなのは達の力になってくれると信じているから。

「オオオオオオォォォォッ!」

 そして、ユーノの前で怪人は咆吼と共に三重の拘束を打ち破った。化け物じみた怪力を前にユーノは戦慄するが、今更怖がっていても仕方がない。

「その小さな身体で、たった一人俺に立ち向かうとは……見事だ」

 称賛するような言葉だが、誰かを傷つけるような相手から言われても全く嬉しくなかった。それどころか、嫌悪感すら湧き上がる。
 しかしユーノはそれを振り払って、今は一秒でも多く時間稼ぎをしなければならないと自分に言い聞かせた。三人の姿はもう見えなくなっているが、少しでも遠ざけなければならない。
 心の中で意気込むユーノの前で怪人は拳を振り上げながら、獲物を猛獣の如く凄まじき勢いで突貫してきた。それを前にユーノは生存本能が一気に働いたのか、反射的に腕を前に突き出していく。

「ラウンド……シールドッ!」

 そして、残り少ない魔力を搾り取りながら息も絶え絶えに詠唱した。彼の目前に眩い輝きを放つバリアが展開されて、怪人の拳と激突する。
 轟音と共に腕が強く痺れるが、まだラウンドシールドは破られていない。だが、怪人はそれをお構いなしに反対側の拳をぶつけてくる。元々防御力に一番優れた魔法だが、相手の怪力はそれだけでは防げない程に凄まじかった。
 案の定、怪人の拳はユーノのラウンドシールドを硝子のように甲高い音を鳴らしながら、あっさりと砕く。しかしそれで勢いが止まるわけが無く、そのまま一瞬でユーノの右腕全てを容赦なく潰していった。

「――ッ!」

 灼熱で地肌を直接炙られるような激痛と共に大量の血が流れ出し、ユーノは声にならない悲鳴をあげる。並のグロンギすらも一撃で殺せてもおかしくない拳は、ただの人間でしかも少年である彼には耐えられる攻撃ではない。
 そのままユーノから流れ出る血飛沫は地面に容赦なく散らばり、体温を奪い取っていく。一瞬で地面に倒れるが、それでも彼は意識を保っていた。
 例え少年であっても魔導師として数多もの戦いを乗り越えてきた結果、強い精神力を得られるようになっている。尤も、皮肉にもそれが彼を余計に苦しめる事になっているのだが、既に痛みの感覚すら無くなっていた。

(ごめん、みんなを悲しませるような事になっちゃって……でも、お願いだからどうか生きて。僕は、みんなを信じているから)

 自分はもうすぐ死ぬ。極寒の地に放り込まれたかのように寒気が全身を蹂躙する中、ユーノはそう思うようになった。
 しかし彼の胸中を満たしているのは死への恐怖ではなく、残された仲間達の事。もしも自分が死んだ事を知ったら、みんな悲しむだろうか。フェイトも、杏子も、翔太郎も、そしてなのはも。

(フェイト、お願いだからどうかみんなの力になって……君なら出来るはずだから)

 この地で最初に再会したかけがえのない友人の一人であるフェイトは、翠屋の事を知らないと言っただけでなく、バリアジャケットの形状やカードリッジシステムの搭載されていないバルディッシュを持っているなど、不審な点がいくつもあった。
 もしかしたら主催者によって記憶操作をされている。または偽者なのではないかと戦いの最中で疑ってしまう。現に戦闘スタイルなど、自分の知るフェイトのそれとは全く違っていた。
 だけど、自分が囮になると知った時の表情は、決して真似や演技なんかで出来る訳がない。それに彼女は戦いの最中で、怪人の攻撃から自分を庇っている。その時の姿は、自分がよく知るフェイト・テスタロッサ・ハラオウンと同じ。
 だから、何か理由があるはずだった。本当なら直接聞いて、フェイトに何かがあったのなら一緒に解決したかったが、もう叶いそうにない。ユーノに出来るのはフェイトの無事を祈り、元に戻ってくれるのを信じるしかなかった。
 無念を感じる一方で意識がどんどん薄くなっていき、視界がどんどん闇に覆われていく。それでも何とかして抗おうとユーノは全身に力を込めた……その時だった。

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 闇の中より少女の叫び声が発せられ、金属同士が衝突するような甲高い音が響く。ユーノがそれを察した瞬間、身体が一気に浮かび上がるのを感じた。
 天国からのお迎えが来たのか? 誰かに抱えられる感触によって一瞬だけそう思うも、薄れゆく視界の中でぼんやりと映る少女の姿を見て、即座に否定する。

「フェ、フェイト……?」

 そこには、つい先程この身を犠牲にさせる覚悟で逃がしたフェイトがいた。心配そうな表情で見つめてくる彼女は夢や幻かと思ったが、ツインテールから放たれる金色の輝きは異様なまでに現実味を放っている。
 つまり、ここにいるフェイトは偽者なんかではない。正真正銘、本物のフェイト・テスタロッサだった。


◆


 愛する母の為ならどんなに苦しい事でもやってみせるし、この手がどれだけ汚れようとも躊躇う訳にはいかない。その為なら利用できるものは何だって利用するし、どれだけの犠牲が出ようが止まっていられなかった。
 それはわかっていたはずなのに、フェイト・テスタロッサはその心にいつだって痛みを感じている。誰かを騙している度に後ろめたさを感じていて、時には涙も流していた。
 そして今も、自分達を助ける為にその身を犠牲にしたユーノを抱えて怪人の元から離れながら、フェイトは声を荒げている。

「ユーノ……しっかりして、ユーノ!」

 自分よりも少し大きな身体を揺する度に、腕を無くした右肩から流れ出る血の勢いは激しくなっていた。ユーノの身体は時間と共にどんどん冷たくなっていくが、回復魔法を会得していないフェイトにはどうする事も出来ない。
 ユーノの運命は、ただ死を待つだけ。優勝を目指すならば、杏子の言うようにそんな相手など早く切り捨てなければいけないのに、今のフェイトにはそれが出来なかった。

「フェ、イト……なんで……?」
「どうして! ねえ、どうして!? どうしてユーノは私達を逃がす為に、そこまでしてくれたの!?」
「どうしてって……決まってるじゃないか」

 青白くなった唇から発せられる息は震えているが、それでもユーノはにっこりと笑っている。

「君は、僕を助けてくれたからだよ……」
「えっ!?」
「君はあいつの攻撃から、僕を庇ってくれた……それも一度だけじゃなく、何度も……だから僕は君を信じる事が出来た」

 一言紡がれる度に、フェイトは心が締め付けられていくような感覚に襲われた。
 確かに怪人の攻撃からユーノを助けたが、その真相はあくまでも今後の戦力を失いたくなかっただけ。しかしユーノはそれだけで、自分を信頼していた。
 しかし自分はその好意を冷酷に裏切ろうとしている。それによってどんな罵りでも受ける覚悟を決めていたはずなのに、心が痛んだ。

「……たった、それだけで?」
「ごめん、君に何があったのかをわかってあげられないだけじゃなくて、わざわざこんな危険な所に戻らせて……だから、一刻も早く……逃げ、て」
「それよりもユーノは……このままじゃ、ユーノは……!」
「ありが、とう……心配して、くれて……やっぱり、君を信じて……本当に、よかった……!」

 最後にそう言い残して、ユーノ・スクライアの瞳は完全に閉じてしまう。その顔に、心の底から安堵したような笑顔を保ったまま。

「ユーノ……? ユーノ、ユーノ、ユーノッ!?」

 フェイトはひたすら呼びかけるが、ユーノがその声に答える事は無い。何故なら、彼の命はもう燃え尽きてしまったのだから。
 ユーノの死を前にして、フェイトの瞳から涙がポロポロと零れ落ちていく。そのまま泣き喚きそうになったが、直後に彼女の耳は足音を捉えた。思わず振り向いた先では、あの怪人が凄まじい威圧感と殺気を放ちながら、近づいてくるのが見える。

「見つけたぞ……」
「まだ、あなたがいたんだったね……」

 怪人から感じられるオーラが肌に突き刺さるが、それに怯まずフェイトは涙を拭ってバルディッシュを構えた。

「ごめんなさい、ユーノ……私はあなた達の事を騙してた。母さんの為に、この殺し合いに乗った……でも、今だけはあなたの願いを叶える為に……杏子と翔太郎さんの二人を守る為に戦うよ。償いになんて、なるわけないけど」

 無意識の内にフェイトはそう呟くようになる。
 プレシアの為、殺し合いに乗る気持ちは変えるつもりはない。やっぱり、何があっても母の笑顔を取り戻す為に戦わなければならないのだから。だけど、今だけはユーノの為に戦いたいと思っている。
 勝ち目なんてあるわけないのは、フェイト自身理解している。これからやろうとしている戦いは無謀の言葉で収まるものではない。そもそもどうして逃げずにこんな事をしていて、ユーノの死に涙を流したのかは彼女自身わかっていない。
 それでも、どういう訳か迷いや躊躇いはなかった。それにどうせ今から逃げ出そうとしても、あの怪人ならば動く前に仕留めることだって簡単に出来るはず。ならば、勝つ以外に道はない。

(母さん、リニス、アルフ、杏子、翔太郎さん、ユーノ……みんな、お願いだから力を貸して!)

 この世界に連れてこられる前に大切と願っていた人達と、殺し合いの中で出会った仲間達の顔を思い浮かべながらフェイトは疾走する。相手も相当戦って消耗しているだろうから、もしかしたら勝機があるかもしれないと信じて。
 結局の所、彼女もユーノと同類だった。いくら非常に徹すると決めていても、その心の奥底には優しさが残っている。だからこそ、誰かの為に戦うことが出来た。
 それに、本来の未来に生きる彼女は贖罪として多くの命を助けている。無論、ここにいるフェイトにそれを知る由などないが。
 彼女は全ての力を振り絞ってバルディッシュを横薙ぎに振るって、魔法で輝く刃を怪人の傷口にぶつけていく。だが、結末はあまりにも無常で、金属音が空しく響くだけだったが、それでもフェイトは諦めずに必死にバルディッシュを押し込もうとした。

「見事だったぞ、リントの戦士」

 そんな中、聞こえてきた怪人の言葉。
 次の瞬間には怪人の拳はフェイトの腹部をあっさりと貫いていた。しかしすぐさま引き抜かれた事で、今度は噴水のように鮮血が飛び散っていく。彼女はスピードを特化しているが、その分杏子に比べて防御力は落ちている。
 そのまま力無く倒れていくフェイトは、この光景にデジャブを覚えていた。数時間前、フォトンランサーファランクスシフトを放つ為の時間稼ぎとして杏子は自分自身を囮にしている。あの時の彼女は、こんな痛みを感じていたのかとフェイトはぼんやりと考えた。
 しかしそれももう関係ない。何故なら、すぐにユーノの後を追うのだから。

(……ごめんなさい)

 思わずフェイトは心の中で謝罪したが、それが誰に向けられた物なのかはわからない。
 最愛の母プレシア・テスタロッサなのか、色々な事を教えてくれたリニスやアルフなのか、こんな自分を信じて力を貸してくれた佐倉杏子や左翔太郎なのか、最後の願いを裏切ったユーノ・スクライアなのか。
 それとも、特定の誰かではなく全員に向けられたのか。その答えを知っているのは、フェイト・テスタロッサただ一人だけだった。


◆


 未だに炎が燃え上がっている【I―7】エリアで繰り広げられた激闘の勝者となった怪人、ゴ・ガドル・バは無言で佇んでいた。
 彼は決してこの勝利に酔いしれていない。最初の戦いで自分を打ち破った少女の一人を倒したが、それに浮かれていてはあのズ・ゴオマ・グと何も変わらなかった。何よりも自身の雪辱を与えたもう一人の少女、佐倉杏子はまだ生きている。
 戦いの最中に逃げ出すようなゴオマと同じ軟弱者だが、それでも倒すべき相手である事に変わりはない。また現れたならば、今度こそこの手で打ち破れば良いだけだ。

「この俺を前に一歩も退かなかったとは……誇りに思うが良い、リントの戦士達よ」

 そしてガドルは、たった今倒した少年と少女に目を向ける。
 その身体はあまりにも小さかったが、放たれる気迫は一流の戦士と呼んでも過言ではなかった。恐らく、並のグロンギであれば歯が立たなかったかもしれない。故にガドルはそんな二人を称えた。
 辺りに散らばった全ての支給品を回収して、最後にフェイトという少女の相棒だったバルディッシュに目を向ける。しかし次の瞬間、刀身はピキピキと音を鳴らしながら亀裂を走らせていき、そのまま欠片となって崩れ落ちていった。恐らく、主人と同じ世界に旅立ったのだろうとガドルは考える。

(ゲゲルはまだまだ続くな……)

 しかしいつまでも敗者にばかり拘るわけにもいかない。もうこの世界にいない以上、次なる強者を捜すしかなかった。
 杏子達はこの先にある街に逃げている。そこならば、あの二人以外にも新たなる強者がいるかもしれない。もしかしたら、あのン・ダグバ・ゼバすらも訪れている可能性だってあった。
 それならば、いつまでもこんな場所にいるわけにはいかないと思って、破壊のカリスマの名を背負うゴ・ガドル・バは歩き続ける。自身が最強のグロンギとして、君臨する為にも。


【1日目/早朝】 
【I-7 草原】


【ゴ・ガドル・バ@仮面ライダークウガ】 
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(大)(回復中)
[装備]:なし 
[道具]:基本支給品一式×2、ガドルのランダム支給品1~3(本人確認済み、グリーフシードはない) 、フェイトのランダム支給品1~3、ユーノのランダム支給品1~2個 、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2
[思考] 
基本:ダグバを倒し殺し合いに優勝する 
0:市街地に向かい、強者を探す。 
1:クウガ(五代)と再び戦い、雪辱を果たす。 
2:強者との戦いで自分の力を高める。 
※死亡後からの参戦です 
※フォトンランサーファランクスシフトにより大量の電撃を受けた事で身体がある程度強化されています。 
※フォトンランサーファランクスシフトをもう一度受けたので、身体に何らかの変化が起こっている可能性があります。(実際にどうなっているかは、後続の書き手さんにお任せします)


【備考】
※バルディッシュ@魔法少女リリカルなのはシリーズは破壊されました。


◆


 ようやく昇り始めた朝日によって名も知らぬ街に光が照らされ、それに伴って電灯の輝きが消えていく。朝になれば見滝原のように人通りが盛んになるのかもしれないが、それにしては生活の気配が一切感じられず、ゴーストタウンのようだった。
 しかし佐倉杏子にとってそんな異質さなど、まるでどうでもよかった。少しでも遠くに行きたいと思いながら無茶苦茶に走っていたので、ここがどのエリアなのか全くわからない。今更地図を確認した所で、具体的な場所がわかるとも思えなかった。
 彼女は地べたに座って、体を休めていた。いくら魔法少女として凄まじい体力を誇っていたとしても、戦いの直後にデイバッグ二つと男一人を抱えながら全力疾走したのでは、流石に疲れてしまう。
 とにかく今は体を休めて今後の事を考えたかったが……どうするべきなのかまるで考えが纏まらない。

「ちくしょう……何で、何であいつらは……!」

 頭の中に溜まるモヤモヤを晴らすために拳を地面に叩き付けるが、無意味な痛みを感じるだけで何も解決しなかった。
 あれから大分時間が経ったのに、フェイト・テスタロッサもユーノ・スクライアも一向に現れる気配がない。それが意味するのは、あの怪人に二人が殺されてしまった。
 合流場所を決めてないから二人が姿を見せていないと一瞬だけ考えたが、それはあまりにも楽観的な解釈だった。

「何でだよ、何でなんだよ……何で、何で、何で!?」

 杏子は感情任せに叫び続けるが、空しく木霊するだけだった。

「何で……何であんたらは勝手に死ぬんだよ!? そんなの、あたしが許さないって言ったよな!? 何でなんだよ!? 何で、あんたらが死んで……あたしなんかが生きてるんだよ!? 教えろよ!」

 その問いに対する答えを何よりも見つけたかったが、当然の事ながら疑問は晴れずに葛藤が続く。
 好き勝手にやって優勝を目指し、その為ならば何でも利用するつもりだった。だが実際はフェイトとユーノを見捨てた事でこんなにも苦しくなり、今が絶好のチャンスであるにも関わらずして左翔太郎の命を奪えない。
 フェイトとユーノが殺されたのは、勝てるわけがないのに特攻した彼らの責任だ。そんな馬鹿な奴らの事はとっとと忘れて先に進まなければならないのに、忘れることができない。
 それに、命を捨てて自分達を逃がしてくれた彼らを侮辱する事が杏子にはできなかった。

(みんな、誰かの為に戦ったんだよな……フェイトもユーノもこの兄ちゃんも。でも、それに引き替えあたしは何だ? あたしは、あたしだけの為にしか戦ってないよな……?)

 詳しいことは知らないが、フェイトは母親の為に殺し合いに乗った。翔太郎とユーノは、この殺し合いに巻き込まれたみんなを救う為に戦っている。手段こそは正反対だが、三人とも誰かの為に一生懸命戦っていたのは同じだった。
 でも自分は彼らと違って、自分の為だけにしかこの力を使っていない。昔は彼らのように意気込んでいたが、今はこの有様だ。

(もしかしたら、あたしもあの胡散臭いおっさんと同じ……いやそれ以下なのかも。ハハッ、笑えねえな……まあこれも自業自得なのかな)

 どうして今更こんな事を考えてしまうようになったのかもわからないし、本当は何がしたいのかもまるでわからない。
 全身から全ての力を失ってしまったかのように、脱力感に支配された杏子はただぼんやりと考えるしかできなかった。
 ただ今は休むしかない。左翔太郎も目覚めないし誰の気配も感じられない以上、佐倉杏子にはこうしているしかなかった。


【1日目/早朝】 
【H-8 市街地】

【左翔太郎@仮面ライダーW】 
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、気絶中
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW (腰に装着中) 
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1~3個(本人確認済み) 
[思考] 
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する 
0:…………(気絶中)。
1:この怪人(ガドル)を倒す。 
2:まずはこの三人を守りながら、市街地に向かう 
3:仲間を集める 
4:出来るなら杏子を救いたい 
[備考] 
※参戦時期はTV本編終了後です 
※他世界の情報についてある程度知りました。 
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます) 
※魔法少女についての情報を知りました。 


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】 
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(中)、脱力感、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ 
[道具]:基本支給品一式
[思考] 
基本:????????????
0:????????????
1:自分の感情と行動が理解できない。
2:翔太郎に対して……?
[備考] 
※魔法少女まどか☆マギカ6話終了後からの参戦です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※魔法少女の身体の特性により、少なくともこの負傷で死に至ることはありません。 
※ユーノ・スクライアのフィジカルヒールによって身体に開いた穴が塞がれました。(ただし、それによってソウルジェムの濁りは治っていません)
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。


&color(red){【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】}
&color(red){【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは 死亡確認】}
&color(red){【残り52人】}


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*投下順で読む
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|Back:[[答えが、まったくわからない]]|フェイト・テスタロッサ|COLOR(RED):GAME OVER|
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