本編B-6

放課後、生田の元に集ったのは飯窪、工藤、中西の3人だけだった。
あ、勝田もいた。4人だけだった。
「あれ宮崎さんとあーりーはどうしたと?」
「宮崎さんはバイトがあるそうです。あーりーはトジファーの世話をしなくちゃいけないって。」
事情通の飯窪が応える。
「トジファーってペット?犬?猫?」
「…トマトだそうです。」
「…あ、そ、そう。まあいいっちゃね。ってあれ、はるなんもバイトやっとんじゃなかったと?無理せんでええよ。」
「はい、そうなんですけど今日はお休みいただきました。ちょっと道重先生のお話に興味があったものですから。」
「なんだーはるなん、道重先生に取り行って良い大学推薦してもらおうとか思ってんじゃないの〜」
「うるさいな、どぅ。そういうことじゃないの!ただ、道重先生の話を私も聞いてみたいななんて思っただけ。」
「そんなこと言っちゃって〜、下心みえみえだし〜」
「ばくわら」
「うっさいどぅ!」
またも喧々諤々と始まりそうなところを中西が抑える。
「まぁまぁええやないですか。とりあえず行ってみましょ。道重先生のところ。」
「そうっちゃね、よし行こう!」

「失礼しま〜す。」
生田を先頭に職員室へと入る。中を見渡すが道重の姿は見えない。
皆がきょろきょろと道重を探していると、ダンス部でコーチをしている中島が声をかけてきた。
「あら、どうしたの。え〜っと、生田ちゃんに飯窪ちゃん、それとこっちは工藤ちゃんと、中西ちゃん!
そうよね!そうよね!よかったー当たってたー!」
「ばくわら」
「あ、勝田ちゃんだっけ?ごめんね、ごめんね。」
「中島先生、道重先生はおらんとですか?」
「道重先生?道重先生なら今日は大事な用事があるって授業が終わって直ぐに帰られたわよ。」
「え〜まじっすか〜、まじですかスカ〜!」
「どぅ、そんな言葉遣いしないの、先生に向かって。」
「だって〜。」
飯窪が丁寧に中島に尋ねる。
「道重先生がどこに行かれたかなんて、おわかりにならないですよね?」
「飯窪ちゃ〜ん。さすがの中島でもそれは無理よ〜。もはや道重先生に行き先を聞くなんて、それは無理よ〜。」
「そうですよね。ありがとうございました。行きましょうか生田さん、みんなも。」
「う、うん。」
飯窪に促されるまま職員室を後にした。



その頃、とある喫茶店で道重は2杯目の紅茶をオーダーしていた。
「おっそいなあ。何やってんのよ全く。。。」
思わずそんな独り言が出掛かった時、道重を呼び出した人物がようやく現れた。
「みっしげさ〜ん、お久しぶりですぅ!」
「お久しぶりじゃないわよ桃子ちゃん。大事な話なんて言うから急いできたのにどれだけ待たせるつもりよ。」
「えへ〜許してにゃ〜ん。まあまあそんなに怒らないでください。しわが増えますよ。それにほら、今日はみやも来てますから。」
「お久しぶりです、道重さん。」
「みやびちゃん、久しぶり。相変わらず綺麗ね。」
「いやいや何言ってんですか、道重さんにはかないませんよ。」
ぱっと見だけでは中学生かとも思える愛くるしい容姿の嗣永桃子。
そして思わず誰しもが見とれてしまう美貌とオーラを兼ね備えた夏焼雅。
一見何の共通点もないようにみえる二人だが、いずれも葉廊高校OG、そして清水の同級生であり親友。
道重自身とも切っても切れない縁のある人物である。
「で、どうしたの。大事な話って何?」
「そうなんですよみっしげさん。」
嗣永の話によると、最近清水がどうも悩んでいるらしい。
原因がダンス部にあることはわかっているのだが、二人にも多くを語ってくれない。
みんなでぱーっと騒いで忘れようなんて話をしても乗ってこない。
「水くさいっすよねー、キャプテンも。もう何年の仲だと思ってるんだか。」
ふてくされた表情の嗣永。
「弱いところを見せたくないんだよきっと。ももだってわかってるでしょ。」
夏焼が嗣永を諭す。
「わかるけどさー、なんか寂しいじゃん、そういうの言ってくれないって。
…まあ、それで、みっしげさんに聞いてみようということになったわけですよ。
ほら、キャプテンみっしげさんのこと尊敬してるし、いつも近くにいるし、なんか知ってるでしょなんて。」
手持ちぶさたで時折紅茶に手をかけながら二人の話を聞いていた道重だったが、しばし考え込んだ後、ぽつぽつと話し始めた。
「昨日ね、清水先生…キャプテンとちょうどそんな話をしてたの。ダンス部はどう?って。
確かにあなた達の言うように凄く悩んでるみたい。思いつめた顔しちゃってね、昔話なんて話し出しちゃってね。」
「昔話って?」
「ハロプロヘッポコ部。」
「あ〜、あれですか〜。楽しかったですね〜、みっしげさん可愛かったし。あ、ももの次にですけどね。」
「はいはい、そうね。もう帰ろっかな。」
「許してにゃん許してにゃん。続けてください。」
「ハロプロヘッポコ部のお陰で私たちは輝けたとか言っちゃって。そんなこと無いのにね。」
「なるほど、そんなこと言ってましたか。…重症だなこりゃ。」
「どういうこと?」
重症という言葉に夏焼が反応する。
「キャプテンの事になると反応早いね、みやは。ももにももっと優しくしてね。」
「いいから、どういうこと?」
「つまりね…。」





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最終更新:2014年07月12日 02:03