302 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 06:21:05.73 ID:bxmleOcd0
お昼ぐらいまで書けたら
「ふぅ……」
頭上に燦々と輝く太陽が、ひたすら私の体力を奪っていく。脇にある木々は涼しげだが、コンクリートの道はゆらゆらと揺れていた。
それでも眼前にずっと伸びていくこの坂道が短くなるわけでもなし。私はガラガラとスーツケースを引っ張りながら歩き続ける。
割の良いバイトだった。二ヶ月住み込みでの家事手伝い。花も恥らう大学生にしては不毛な夏休みだけれど、お金の魅力には負けるわけで。
「頑張れぇ、私……」
見えてきた目的の建物に、私は根性を振り絞った。
テレビの中でしかお目にかかれない豪邸へと着くと、既に迎えが待っていてくれた。
「時間通りですね。この調子でお願いします」
懐中時計をしまいながら老紳士は、さっさと門をくぐり先へ先へと歩いていってしまう。本当に執事なんて生き物なんているんだ、なんて的外れなことを
思いながら私も慌ててついていく。その背中はまるで一本の針金が入っているかのように綺麗に伸びていた。
「まずは着替えていただき、主に挨拶をしていただきます。失礼のないようにお願いいたします」
淀みのないセリフはまるで機械のように正確で、少し人間離れしていた。
そして、この執事さんはさらに人間離れなことを話し始める。
「それと、主はこの屋敷そのものでございます。けしてご無礼のないように」
「は? や、屋敷……?」
どうしたおじーさん、遂にボケたか? なんて思っちゃったけど、振り返って私を見る目はとても真剣だった。
「信じ難いことだとは思います。ですがこの屋敷の主は、この屋敷なのです」
「……は、はあ」
本当に給料出るのかなあ。私はそんなことばかり考えていた。
303 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 06:31:34.66 ID:bxmleOcd0
「うわ、これはまた……」
使用人の更衣室に通されると、執事さんからよく秋葉原とかで見るメイド服を渡される。また何かの冗談かと思ったのだが、私に手渡すと
執事さんはさっさと出て行ってしまう。ここじゃあ常識なんてものはどっかに吹っ飛んじゃうらしい。
「着るか……」
誰に言ったわけでもなく言ったわけだけれど、その間、ずっと誰かに見られている気がした。
メイド服と言っても、テレビとかで見るゴテゴテとしたコスプレ紛いのものではなく、すぐ着れるものらしい。私は姿見の前に立ち、頭につけるメイド
のアレも装着する。これでメイドの完成。冷房の効いた部屋でも、なぜか妙な汗が止まらなかった。
部屋を出ると執事さんはドアの傍で待っていて、私の格好を一瞥すると「似合っていますよ」と言う。この人のことだから別にやましい意味はないのだ
ろうけど、気分は複雑だった。
長い廊下を抜け、ここのご主人様のいる部屋の前へと着く。「よろしいですか?」と、確認する執事さんはやはり優しい。私もまた返事をすると、観音
開きの扉がゆっくりと開いた。
一体、どんな姿をしているのか。早鐘を打つ心臓が、次の瞬間には停止寸前まで追い込まれた。
「ふむ。そのチンチクリンが次の使用人か。馬鹿そうじゃが良く言うことは聞きそうじゃな」
私以上のチンチクリンが、ソファにふんぞり返っていた。
304 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 06:34:04.14 ID:bxmleOcd0
プロローグ的なものは終了。作家様(笑)
メ「……」
嬢「ん? なんじゃ?」
メ「あの、本当にこ、この方がご主……」
執「はい。そのお方がこの屋敷の主、嬢様でございます」
嬢「ふんっ。思っていた以上の馬鹿じゃな」
メ「なっ……」
執「オホン」
メ「う……これからよ、よろしくお願いいたします」
嬢「うむ」
307 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 06:43:24.84 ID:bxmleOcd0
メ「あの……それと」
嬢「ん? ああ、執事からもう聞いておるのか。そうじゃ、私はこの屋敷の主であり屋敷そのもの。たとえば……」
パチン
ガタン! フワ
メ「ふぇ!? つ、壷がう、浮いて!?」
嬢「普通の家には出来んが、この屋敷は代々受け継がれた由緒あるもの。力も相応にある」
メ「あわわ……」
嬢「フフ、それとこの屋敷の中ならば私はどこにでも目が届く。サボっていようものなら、執事に言うてキツイ仕置
きをさせる。覚悟しておくんじゃな」
メ「し、仕置き……?」
執「ブルマ姿でうさぎ跳びです」
メ「……」
執「嬢様はスポ根好きでございます」
嬢「フフ……応援団も良いな……」
メ「(や、辞めたい……)」
308 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 06:55:25.13 ID:bxmleOcd0
執「それでは、貴方の指導を担当する者を紹介いたします」
メ「執事さんがするのではないんですか?」
執「私は嬢様の身の回りのお世話が中心でございます。他にも掃除、洗濯、庭の管理がありますので、まずはそこから覚えていただきます」
メ「はい」
執「まずは貴方たち、メイドの責任者であるメイド長からですね」
メイド長「そちらが新しく入った子ですか?」
メ「よ、よろしくお願いします」
執「しばらくはこの方に指導して頂いてください。一番、ここでのことを知っていますので」
メ長「あらあら、なんか私が年増みたいな言い方ですね」
執「貴方への期待と思ってください」
メ長「はい。それじゃ、よろしくね。貴方を立派なゴンド、メイドにしてあげちゃいます」
メ「は、はあ……」
310 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:09:50.12 ID:bxmleOcd0
メ長「それじゃあまずはお掃除からやりましょうか」
メ「はい」
メ長「他のメイドにも途中、会うと思うけど、その度に紹介するわね」
メ「分かりましたっ」
先輩メイド「おっ、ソイツが新しく入ったって奴か」
メ長「ええ。色々よろしくね」
メ「お、お願いしますっ」
先メ「おう、バシバシいかせてもらうぜー?」
メ長「ふふ、お手柔らかにね。あら? 新人メイドちゃんは?」
先メ「ああ、バケツひっくり返したからな。今頃、チアガ-ルの格好で踊ってるぜ」
メ長「あらあら」
メ「……」
311 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:14:28.66 ID:bxmleOcd0
こんな時間帯だけど、誰か見てる?
313 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:18:46.33 ID:bxmleOcd0
掃除中
メ「……あ、チアガール」
新人メイド「ふ、ふれぇっ、ふれぇぇ」
嬢「応援が足りん。 そんなもので球児達が甲子園に行けると思ってるおるのかっ」
新メ「ふ、ふぇぇぇっ」
メ「……見なかったことにしよう」
314 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:24:43.72 ID:bxmleOcd0
あ、いたんだ。どう?
メ長「メイドちゃん。ちょっと、これ、持って貰って良いかしら?」
メ「はい。……よいしょ、っと。あの、これって」
メ長「ええ。夕食の食材ね。なにぶん、使用人の数だけでも結構いるから」
メ「はあ」
メ長「ちょうど良いし、シェフにも挨拶しておきましょうか」
メ「しぇ、シェフ……」
シェフ「HAHAHAー! よく来たなオマエラー! 旨いもんでも欲しいノカー!?」
メ「い、インド人?」
メ長「この方がうちお抱えのシェフさんね。アメリカのペンシルバニア州出身よ」
メ「(イ、インドじゃねえ!?)」
シェ「HAHAHA-! 良かったなー! 今日はオレの得意料理のカレーダザマアミロー!」
メ「は、はあ」
メ長「これ、ここで良いですか」
シェ「OK! あ、でも馬鈴薯はそっちネ」
メ「……」
315 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:26:47.19 ID:bxmleOcd0
結局、料理を手伝うことに
メ「あの、ジャガイモの皮むき終わりました」
シェ「OK! オマエ手際イイナー! 気に入った! 新人メイドを厨房裏でファックしてイイゾ!」
新メ「ふ、ふぇぇ」
メ「あはは……」
316 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:31:20.95 ID:bxmleOcd0
シェ『カレー出来たからお嬢呼んでコイヨー!』
コンコン
ガチャ
メ「あの、お夕食の準備が」
メ長「あら? メイドちゃんは?」
先メ「ああ、アイツなら嬢様が久保先輩死ぬところ読んで泣いてるとこ目撃した罰で重いコンダラ引いてるよ」
メ長「あらあら」
318 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:39:15.22 ID:bxmleOcd0
メ「お、重い……」
執「頑張っているようですね」
メ「う、うわ!? 急に出てこないでくださいよ」
執「失礼いたしました。そろそろ貴方にも食事を採ってもらえと、嬢様が」
メ「はい。はあ……何でこんなこと」
執「……何も意地悪したいからこのようなことをさせてるわけではないことはご理解いただけますか?」
メ「はあ」
執「あの方は屋敷です。人間とは違います。家族もいない、ずっと、一人きりでした」
メ「でも……家主ぐらいはいても良いと思うんですが」
執「賢明なご意見です。ですが、それはもう少ししたら、お話いたします。貴方が、ちゃんと信頼におけるか」
メ「は、はい」
執「それではお食事にしましょう」
新メ「ふ、ふぇぇぇっ」
嬢「ふふん、チアガールの応援で食べるカレーは格別じゃな」
メ「……」
319 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:48:39.58 ID:bxmleOcd0
嬢「何度も言っておるだろう。貴様らに売るものなど無い!」
「いや、ですが」
嬢「帰れ。そう言っているんじゃ」
「は、はいぃ……」
メ「あの、さっきの方たちは」
執「不動産屋。いわゆる地上げ屋ですね。一時期よりは随分と物腰は柔らかくなりましたが、相変わらずしつこさは変わりません」
メ「はあ」
執「ここ周辺の土地は全て嬢様が私有しております。そこに目をつける輩はごまんとおるようです」
メ「そうなんですか」
執「嬢様は屋敷であり、既に家としての領分を越えたものを多く、背負っているのです」
メ「……」
321 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 07:57:33.94 ID:bxmleOcd0
朝
メ「ふぁ……おはようございま」
ドンドンドン!
メ「なっ!? えっ!?」
メ長「あらあら。お早う、メイドちゃん」
メ「え? 学ラン? しかもメイド全員? な、何かとんでもない失敗をっ?」
先メ「ああ、今日は週に一度の嬢様の応援日だ。だから、今朝は学ランを着て応援だ。ついでにアタシは旗持ちな」
新メ「お、オス!」
メ「は、はは……」
執「さ、貴方もどうぞ」
メ「……」
ドンドンドン!
322 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 08:15:56.49 ID:bxmleOcd0
邸内を掃除中
メ「♪~」
パタパタ
カチャ
メ「ん? 隠し、扉……?」
その時、そこでやめておこうとなぜ思わなかったのか不思議だけど、開けてしまった。
メ「こ、ここって……?」
六畳ほどの古めかしい畳の部屋。それが隠し扉の部屋の中に納まっていた。置いてあるのは古ぼけたちゃぶ台に机、箪笥。
メ「え? え?」
嬢「そんなにここが気になるか?」
メ「ひっ!? あ、あの……」
嬢「……」
メ「し、失礼しましたっ!」
タタッ
嬢「……」
323 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/10(日) 08:17:28.30 ID:bxmleOcd0
休憩。朝はやっぱ人いないね
816 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:25:17.28 ID:qTz2bNBB0
隣で寝てる彼女が起きるまで屋敷云々
新メ「ふ、ふれぇぇ、ふぇぇっ」
嬢「もっと脚を高くっ」
メ長「お仕置きの回数、減りませんねぇ」
先メ「そうだなあ。特にクセみてえなもんは無いんだけどな。落ち着きがないっていうか」
メ長「もう少し指導、お願いできますか?」
先メ「任せろ。先輩風吹かすのは嫌いじゃねえ」
メ長「あらあら」
メ「お、重いぃぃ……!」
先メ「……ま、こっちは何とかなるだろ」
メ長「あらあら」
817 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:30:52.76 ID:qTz2bNBB0
食事の準備中
執「……」
メ「ヒソヒソ(も、物凄い集中力ですね。燭台の位置だけで五分以上も)」
先メ「ヒソヒソ(本場、英国仕込みらしいからな。アタシもああやって準備してる時は声をかけられねえ)」
メ「ヒソヒソ()
シェ「HAHAHA-! 今日のカレーが出来たぞコノヤロー! さっさと持っていけクソヤロウドモー!」
メ「本当にアメリカ人ですか? ってか人間ですか?」
先メ「多分違うと思う」
821 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:39:06.38 ID:qTz2bNBB0
掃除中
メ「(そういえば、この前見た隠し部屋のアレって……)」
嬢『そんなに気になるか?』
メ「……やめよ」
執「賢明で助かります」
メ「ひっ!? きゅ、急に出てこないでください」
執「失礼いたしました。ただ、野暮な詮索だと思っていただけたようで」
メ「別に私はただ、その……この屋敷の、信頼出来る人間になりたいんです」
執「……それで十分でございます」
メ「……」
823 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:43:47.33 ID:qTz2bNBB0
嬢「そういえば先メはどうした? 姿を見んが」
執「先メでしたら今、逃げております」
嬢「フッ、盛んな奴らじゃ」
メ「?」
庭
百合メイド「先メお姉さま~♪」
先メ「だからいちいち抱きついてくるんじゃねえー!」
百メ「そんなことおっしゃらずに~!」
先メ「うわぁぁぁ!」
メ「は、はは……って、あれ? 新メちゃん?」
新メ「……」
メ「ちょっ、どうしたの? そんな、泣い」
新メ「ごめんなさいなんでもないです」
タタッ
メ「……」
824 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:48:14.18 ID:qTz2bNBB0
>>823続き
メ長「新メちゃんね……嬢様のお気に入りのカップを割ってしまって、嬢様も虫の居所があまり良くなかったから」
メ「はあ」
メ長「あ、先メさんはまだ追いかけられてる?」
メ「あ、はい」
メ長「あらあら。大変ね」
メ「……あのっ」
メ長「新メちゃんをどうにかしたいと思うなら、見守ってあげなさい。こればかりは本人の問題よ?」
メ「……はい」
メ長「賢明で助かるわ」
825 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:52:20.06 ID:qTz2bNBB0
嬢「また、失敗したようじゃの」
メ「うぅ……重いコンダラ……」
嬢「それはもう飽きた。新しいのをする」
メ「え?」
ギギギ
メ「ぬ、おおお……!」
メ長「懐かしいわね。大リーグボール養成ギブス」
先メ「まあそれで本当に投げれるのはお前ぐらいだけだろうけどな」
メ長「あらあら」
メ「ぐぅぅ……!」
ギギギ
827 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 07:55:45.48 ID:qTz2bNBB0
嬢「ふむ。最近は巷で強盗団が暴れてるらしいの」
メ「……」
執『いかがですか?』
メ『だから急に出てこないでください!』
メ長『あらあら』
メ『黄金の左足!?』
先メ『うぉぉぉ!』
メ『応援団旗をあんな軽々と……』
メ「……」
嬢「今、うちなら大丈夫とか思ったろう?」
メ「いえいえ」
829 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 2008/02/11(月) 08:04:07.49 ID:qTz2bNBB0
>>826
金持ちの道楽は漫画も超えたみたいな感じで
厨房
シェ「相変わらず上手いなコンチクショー! 厨房裏で百合メイドをファックしていいゾー!」
メ「はは……」
百メ「ここにはもう慣れましたか?」
メ「あ、はい」
百メ「ここは何かと大変ですけど、良い人たちばかりですから」
メ「……そういえば、先メさんのこと、好きなんですね」
百メ「あら、お分かりですか?」
メ「ええ、バッチリ……」
百メ「元々、女子高出身で箱入りで育てられてきましたから。今はメイドしてますけどね」
メ「あ、なんか聞いちゃまずいような……」
百メ「いえいえ、新メちゃんとかとは違って、私はやりたくて来ただけです。旗振りの先メお姉さまに惚れて……ポッ」
メ「はは……」
百メ「そちらはどうしてか、お聞きになっても?」
メ「あ、私はただ給料につられて。家にいても楽しくないし」
百メ「そうですか」
最終更新:2008年02月12日 23:17