『ピーンポーンパーンポーン♪
参加者の皆様方こんにちは。
定時放送の時間が参りました。
只今の脱落者は、
以上の18名です。
この実験もいよいよラストスパートです。皆様のご健闘をお祈りいたします。
ピーンポーンパーンポーン♪』
(ふぅ、やれやれ。といっても、もはやこの実験に何の意味があるのかよく判らんがな……)
定時放送を淡々とこなしたシバさんは心ここにあらずといった雰囲気でため息をついた。
(そんなことより今はヒグマ提督と『かの者』が心配だ。即急に手を打たねば……ん?)
マイクを切って持ち場に戻ろうとした、その時だった。
ばんっ!
『グォオオオオオオオオオオーーーー!!!!!!!!』
突然、3匹のヒグマが放送室の扉を破って部屋の中へと侵入してきた。
『な、なんだ貴様ら!?ぐわぁあああああああああああああ!!!??』
グシャ!バキッ!ゴキャ!
急な襲撃に不意を突かれたシバさんは全身を切り刻まれそのまま絶命する。
『イヤッホーーーー!!!!穴持たず48シバさん討ち獲ったりぃぃぃぃぃ!!!!』
『ヒャハハーーーー!!!!いくら支配階級でも背後から襲えばチョロいもんだなぁ!!』
『オッシャーーーー!!!!この調子でどんどん行くぞぉっっっ!!』
『聞こえてるかぁ!?地上に居る我が同士ヒグマ提督よぉぉぉぉぉ!!』
『この革命!必ず成功するぞ!!ヒグマ帝国は俺達と艦むすのモノだぁぁぁぁ!!』
言いたいことを終えた3匹のヒグマは全員でマイクを破壊し、放送は終了した。
【自己修復術式/オートスタート】
「――――――で?誰を殺したって?」
「「「え?」」」
3匹の艦これ中毒ヒグマが振り向くと、そこにはたった今殺したばかりのシバさんが無傷で立っていた。
「シバさん!?馬鹿な!!貴様はさっき殺した筈!?」
「悪いな、どんな方法を使っても、最終的に俺を傷つけることは不可能なんだよ」
シバさんは右手にシルバーホーンを構えて3匹に警告する。
「ヒグマ提督に影響されたか?馬鹿な真似はやめてさっさと投降しろ。
貴様らでも俺にとっては家族だ。同胞を分解魔法で消し去りたくはない」
「くっ!何を言ってやがる無能が!俺らにまともな食料もロクに艦これを遊ぶ設備も配給しねぇ癖によぉ!」
「そうだそうだ!」
「今はまだ余裕がないんだ。もう少し待て。それに、面白いものも用意してあるぞ」
シバさんはポケットからスマートフォンを取り出し、電源を入れる。
「ほら、お前らが艦これを愛しているのは分かるが他にもこういうものが――――」
画面をヒグマに見せようとしたその時、激しい爆発が部屋の中を包み込み、
その場にいるすべての者を焼き尽くしながら放送室を吹き飛ばした。
「ヒャッハーーーー!!直撃ぃぃぃぃーーーー!!!!」
「それひょっとして疑似メルトダウナーってヤツ?」
「ああ!格納庫に捨てて遭ったのを拾って来たんだ。これで確実に死んだだろ!」
「隙の生じぬ二段構えよ!!」
「プレーンヒグマの俺らでも支配者に勝てるんだな!」
「ああ、そういえば俺らって一匹一匹が範馬勇次郎より強いって設定だったんだよな、すっかり忘れてたけど」
「みんな!
グリズリーマザー達が逃げた穴から丸太が沢山落ちてきたぞーーー!!!」
「おお!!でかした!!」
「みんな!!丸太を持て!!突撃じゃぁぁぁ!!!!」
「おい、さっきの放送事故聞いたか?」
「シバさんがやられただって!?あの超強いヒグマが!?」
「誤報の知らせとか全然ないし、なんかマジっぽいよな」
「もう彼らの時代は終わりなのか……?」
「俺らも始めようかな、艦これ」
「食糧庫を見つけたぞーーー!!」
「ああっ!!200匹解体した時の肉が全然回ってこねぇと思ったらこんな所に隠してやがったな!」
「どうせ俺らの処には回って来ねーんだ!乗り込めーーー!!」
「げほっ……お前ら俺達まで殺す気か?」
「あ!放送室強襲部隊じゃないか!生きてたのか?」
「……疲れたから俺らは寝るぞ、後は任せた……」
【自己修復術式/オートスタート】
「シバさん!目を覚ましてください!!シバさーーーん!!」
再生が終わったシバさんが目を覚ますと、
一匹のヒグマが半泣きになりながら肩を揺さぶっていた。
「ん?穴持たず543か?」
「あ、良かった!生き返った!」
「一体何が起こっているんだこの惨状は?」
「
艦これ勢です!ヒグマ提督の一派が暴走してるんです!
あいつら各地に分散して徐々に勢力を増やしながら帝国の主要施設を襲ってるみたいなんですよ!
どうしたらいいんですかシバさん!何とかしてください!」
「―――はぁ、あの下衆どもがここまで馬鹿だったなんて」
二匹のもとへ、白い体毛の大柄なホッキョクグマが近づいてきた。
「シロクマさん」
「悪い知らせです。目を離した隙に工廠を艦これ勢押さえられてしまいました。
奴ら、下手すれば新しい艦むすを造り始めるかもしれません」
「工廠を?ヒ級はどうしたんだ?」
「さあ、目撃したものの証言によると完成前に逃げ出したとか」
「なん……だと……そんな馬鹿な!?」
「はぁ、やっぱり大和のパーツを使ったのが不味かったのですかね?」
「そういえば大和も未完成だったとはいえヒグマ提督の艦むすだったからな……」
静かな怒りを燃やしながらシバさんは立ち上がった。
「恐ろしい男だヒグマ提督。俺をここまで追い詰めた奴は居なかったんじゃないか?」
「どうやら大規模な粛清を敢行せねばならないようですね。行きましょうか、シバさん」
「……粛清、か……」
シバさんと一緒にクーデターを鎮圧しに行こうとするシロクマさんだが、
彼は余り乗り気ではないようだ。
「シバさん?」
「確かに俺とシロクマさんが全力を出せば鎮圧は容易いだろう。問題はその後だ。
力で民衆を屈服させても、ヒグマに艦むすを求める心がある限り第二第三のクーデターが巻き起こる。
今の我々の最大の敵はヒグマ提督でも『かの者』でもない、艦隊これくしょんというコンテンツそのものなんだ」」
シバさんは遠い目をしながらかつて艦これ勢が集まっていた地底湖方角を見る。
「我々が艦これがヒグマ間に広まるのを止めなかったのは地下生活には娯楽も必要だと判断したからだ。
だが誤算だったのは艦これが非課金コンテンツだったとうことだ。課金しなくても遊べる使用ゆえ
賃金を得る必要がなくなり、労働への意欲を失ったヒグマ達は次々とニートと化して地底湖周辺の
集落へ隔離せざるを得なくなった。艦むすを造りたいと言い出した穴持たず678――ヒグマ提督は
ニート常態から脱出した唯一の廃人ヒグマだった。だから状況の改善の切っ掛けになればいいと思い、
クッキー工場を工廠に改造して彼に与えたのだ」
「その結果がこれですか……愚か者は何処まだいっても愚かなままですのね。
あ、そうだ。ヒグマクーデターの他にももう一つ問題が発生しまして」
シロクマさんはメモを取り出して読み上げる。
「キングからの電報です。参加者の一部が首輪を外して帝国内に侵入しているみたいです」
「なに!?」
「
侵入者は、暁美ほむら、ジャン・キルシュタイン、球磨、巴マミ、
球磨川禊、碇シンジ、纏流子、星空凛の8人と初期ナンバーのヒグマが一匹。
どうやって外したか知りませんが先ほどの放送は間違いのようですね」
「……そうか!生きていたのか彼女は!」
「は?」
シバさんは右手に持っていたままだったシルバーホーンをホルスターにしまった。
「シバさん?」
「すまないシロクマさん。暴徒鎮圧は任せた。
俺の能力は殺傷力が高すぎてそういう仕事は向いてないんでな。
君の氷の能力なら半分くらいは生き残れるかもしれん」
「え?」
「今から精霊の眼(エレメンタル・サイト)を駆使して
侵入者の位置を割り出し――星空凛を全力で保護する」
「へ?なんで?」
「簡単だよ、艦これに勝つためさ!」
シバさんはポケットからスマートフォンを取り出し、シロクマさんに画面を見せた。
「これは星空凛のSR!?スクフェスじゃないですか!?」
「ああ、この騒動が終わったら艦これを総力を挙げて排除し、代わりにラブライブを普及させる」
「確かに国民的アイドルアニメのラブライブならコンテンツとして見劣りしないでしょうが、
そんなことしても根本的な解決には……はっ!?」
「非課金コンテンツの艦これと違いスクフェスは課金しなければならない。
つぎ込む金を稼ぐ為には労働が必須……!ニートヒグマは帝国からいなくなるだろう」
「……でもどうやってヒグマを艦これ厨からラブライバーに切り替えさせるのです?」
「だから彼女が必要なんじゃないか」
「……星空凛!?μ'sの!?そうか!本人を用意して歌ってもらえば艦むすに勝てるっっ!!」
「ああ、生身のアイドルの素晴らしさを体感してもらう。
ラブライブに嵌ればスクフェスへ移行させるのは容易い……じゃあ、行ってくるよ」
そう言ったシバさんは地面を蹴って飛行魔法で飛び去って行った。
恍惚とした表情で彼を見送るシロクマさん。
「流石シバさんです。クーデター後の処理まで考えるなんてなかなかできることじゃありません」
「な、なんて冷静で的確な判断の出来るヒグマなんだ……的確な判断なんですよね?」
「もちろんです。さあ、お兄さまが帰ってくるまでに暴徒を鎮圧しましょう!」
「い、いや、僕はツルシインさんやシーナーさんの所へ行かないと!」
「へへへっ、見つけたぞシロクマさん」
残されたシロクマさんと穴持たず543の元へぞろぞろと丸太を持ったヒグマが集まってくる。
「あわわ、どうしましょう?」
「愚かな、身の程を弁えよ畜生ども」
シロクマさんの周囲の大気が急激に凍り始める。
「うわっ寒いっ!?」
「これが北極生まれのシロクマさんの能力!?」
容量の空気を冷却しそれを移動させることで広範囲を凍結させる領域魔法。
「私はシバさんのように慈悲深くはないぞ。喰らえ、氷の国(ニブルヘイム)―――――」
その時、遠距離から放たれたビームがシロクマさんを直撃し、激しい爆発と共に彼女を吹き飛ばした。
「シ、シロクマさーーーーん!?」
「うぷぷっ、深雪ちゃん油断し過ぎぃー!
ねーねー、クーデターにボクが関わってるのお兄様に伝えてなかったのー?
あ、嘘ついてるのバレちゃうから喋れないかぁー?
みんな、殺しちゃ駄目だよ!シロクマさんにはいっぱい聞きたいことがあるからねー!」
左右が白と黒で色分けされたロボットのような熊が疑似メルトダウナーのコックピット内ではしゃぎまくる。
「シロクマさん!しっかりしてください!シロクマさん!」
「……ふふふっ……嘗めた真似を……!」
「え?シロクマさん?」
シロクマさんの体が氷が砕けるような音と共に砕け散り、
中から頭から血を流してる黒髪ストレートの可憐で神秘的な美貌を持つ少女が出現した。
「ゲェーーー!?シロクマさんが割れて中から美少女が!?」
「なんて美しい……って、なんだそりゃ!?」
「おいおい!上層部人間まみれじゃねーかよ!どんだけ腐敗してたんだヒグマ帝国!?」
「や、やっぱりヒグマ提督は正しかったんだ……!」
動揺するヒグマ達を前に、
司波深雪は自虐気味に微笑んだ。
(……以前のお兄様なら今の状態の私をみたら烈火のごとく怒り狂ってヒグマ共を
駆逐してくださったでしょうに。でも今のお兄様は記憶がない。何も覚えていない
お兄様にとって、ここに居るヒグマ達こそが守るべき対象。かつて私だけに向けられていた
感情は全てのヒグマ住人に平等に向けられてしまっている……分解魔法で無双なんてしてくれる
筈がありませんでしたね、誤算でした。でも、いいんです。)
立ち上がった深雪の周囲の空気が再び凍りつき始める。
「氷漬けになりたい者から前に出なさい、お仕置きして差し上げますわ!」
【第二回放送 終了】
※放送室が破壊されました。
※ヒグマ革命が始まりました。
※ちなみに実際のヒグマ以外の死亡者は以下の通りです。
【参加者】
ブラキディオス
高橋幸児
タイラント
鷹取迅
最終更新:2015年02月07日 20:21