―――ちいさなシグナル Rin rin Ring a bell♪

―――聞こえたーらうなずいーてお返事くださーい♪

―――不思議ーさがしだすー 才能ー目覚めてよー♪

―――毎日どきどきしたいけどー♪

―――君のーことじゃないー まったくー違から!

―――言い訳みたいで変な気分♪



マテリアルバースト(質量爆発)によって数時間前まで更地だった大地に建てられた
ヒグマ帝国住民全員が入れるであろう膨大な観客席を有した巨大なスタジアム。
その人工芝のグランドの中央に設置されたライブステージで一人の小柄な少女が歌い、踊っている。

「リハーサル、とりあえずこれで成功だな」
「ああ、なんか俺らやり遂げたって感じだよな」

その歌い手は初音ミクのライブステージで使用されたという
最新の立体ホログラムで再現した幻影の星空凛であった。
投影機を調整しながら二匹の穴持たずカーペンターズが虚構のアイドルを見守る。

「あれが日本でブームになっているアイドルユニットμ’sで一番人気がある凛ちゃんか」
「にこにーとかいうののほうが可愛くね?と俺的に思ってたけど、
 確かに小熊っぽい雰囲気の彼女の方がヒグマ住人には受けがいいかもな」
「あとはシバさんが本物を連れてくるのを待つだけか」
「おう!しかし凛ちゃんかわいいにゃー」

シバさんの画策によって、いち早く艦これにハマる前にラブライブ!スクールアイドルフェスティバルにハマり
ドルオタと化した穴持たずカーペンターズ達は猫耳を装備したホログラムの凛ちゃんを見つめて頬を緩ませる。
ちなみに凛ちゃんはこの前の人気投票で一位だったので人気No1というのは本当である。二期効果スゴイね。
すると、二頭身にデフォルメされた星空凛のオーバーボディを着た一匹のヒグマが扉を開けてスタジアムに入ってきた。

「外の作業も大体終わりましたぜ!」
「ん、そうか。おい、ちょっと出来栄えを見に行こうか?」
「おお、そうだな!」

三匹のヒグマはひとまず幻影のアイドルに別れを告げ、スタジアムを後にした。

「観覧車、ジェットコースター、コーヒーカップ、お化け屋敷……etc、etc。
 めぼしいアトラクションは大体揃えましたぜ。ヒグマが利用することを前提に
 ジェットコースターとかは並の人間が乗ったら即死する代物だぜ」
「うん、ほぼ注文通りに仕上がったな」
「後未完成なのは凛ちゃんの記念館だけか。まあもうすぐ資料を届けてくれるだろうさ」
「ヤエサワさん達が抜けたときはどうなるかと思ったけど、案外何とかなるもんだな」

二頭身の凛ちゃんに施設を案内されながら
二匹は子供の夢が詰まったような西洋風の建造物の数々とアトラクション群を感慨深そうに眺めていた。
空にはカラフルな風船が建設にかかわった穴満たずカーペンターズ達を祝福するように次々と浮かび上がっていた。


非課金コンテンツの艦これにハマったニートヒグマ達を救う為、課金コンテンツのスクフェスに乗り換えさせて
労働への意欲を取り戻させるという実効支配者シバさんのシークレットプロジェクトの切り札、
それがこの巨大スタジアムを始めとする大量のアトラクションやショップで構成された娯楽施設群、

星空凛を題材にしたテーマパーク「星空スタジオ・イン・ヒグマアイランド」である。

ファーストライブとアトラクション無料キャンペーンを実施しヒグマ住人を呼び寄せた後、
二回目からは全て有料化することでますますニートヒグマは資金稼ぎに励むようになるだろう。

「しかしそれなら最初から艦これを題材にしたテーマパーク造った方が早かったんじゃね?」
「いや、なんか艦これはなんか怪しい奴が裏で手を引いてるからダメなんだとさ」
「まあ、俺ら技術者には上層部の考えはよく判らん」
「これでいいんだよ。時代は艦これよりラブライブさ」

『ピーンポーンパーンポーン』

「お、放送の時間か。この声はシバさんだな」
「放送が終わったらいよいよプロジェクト開始か。楽しみだな」

『では、今回の死亡者を発表する―――――』

その時、突然、園内放送が途切れた。

「な、なんだ!?」

妙な事態に動揺する三匹の元へ、正面入り口の方口から慌てて駆けつけてきたヒグマが叫んだ。

「おいお前ら!大変なことになってるぞ!!」
「どうした!?――――グオォ!?」

彼らの地面が急に盛り上がり、道路の敷石を破壊しながら巨大な植物の根が
四匹を吹き飛ばしながら大地から躍り出た。
赤い文様が浮かび上がった植物の根はそのまま先端を伸ばして四匹に襲いかかる。

「グオオ!!させるかぁ!!」

二頭身凛のオーバーボディを着たヒグマは拳を連打し根を破壊しながら地面に下り立った。
だが他のヒグマは木の根に捕まり、そのまま空高く持ち上げられてしまう。
呆然としていると無数のアトラクション群に次々と木の根が絡まってその動きを封じていた。

「こ、これは一体!?立地条件が悪かったのか?」
「分からん!おい、No.96クックロビン!早く脱出して緊急事態を伝えろ!」
「し、しかし!」
「俺達は大丈夫だ!簡単には死なん!シバさんはこの企画に賭けているんだ!なんとか食い止めてみせる!」
「わ、分かった!」

ねんどろいどのような姿をした穴持たずカーペンターズの一匹、
No.96クックロビンは仲間を置いて倉庫へと駆け出して行った。


―――たしかめたくなる Ran ran rendezvous♪

―――たのしいな恋みたいじゃない?♪

―――こころはカラフル Ran ran rendezvous♪

―――熱くなるほっぺたが正直すぎるよ♪



「うわぁ、こりゃヒドイ」

星空凛のソロ代表曲、恋のシグナル Rin rin rin!が延々とリピート再生されている室内。
ステージ衣装を着た星空凛のデカールでコーティングされた飛行船に一人乗り込みテーマパークを
脱出したNo.96クックロビンは上空からバーサーカーの装備した童子切りから伸びてきている黒い根によって
次々と倒壊していくアトラクション群と根が蔦の様に絡まり昔の甲子園球場のような姿になったスタジアムを
放心しながら眺めていた。

「はぁ、あの土地はもう駄目だな。あいつらも無事逃げてりゃいいんだが……」

上空から島を見渡すと島全体を襲った津波は大分引いて来ている感じだ。

「ま、テーマパークは空き地探してまた作ったらいいか……最低でもコンサート会場は居るよな……はぁ」

シバさんの奇行が生み出した孤高のドルオタは新しい空き地を求めて上空を漂いながら寂しそうに移動を開始した。

【B-8 上空/日中】

【クックロビン(穴持たず96)@穴持たず】
状態:健康、虚無感
装備:星空凛のオーバーボディ、飛行船
道具:大工道具一式
基本思考:シバさんの立案した企画を遂行する
0:新しい土地を探す
1:シバさん達に状況を報告する
2:凛ちゃんに会いたい
[備考]
※穴持たずカーペンターズの一匹です
※B-8に新築されていた、星空凛を題材にしたテーマパーク「星空スタジオ・イン・ヒグマアイランド」は
 バーサーカーから伸びた童子斬りの根によって開園する前に崩壊しました。
※他のテーマパークに残された穴持たずカーペンターズ達の生死は不明です。

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最終更新:2015年02月07日 20:17