「もう少しくらい活躍出来ると思ったのに……強さは愛じゃ補えないものね」
ああ、またあの時の夢だ。
遠い幼い日の、淡い色の夢。
日差しの中に隠された、あの時のマスターの声。
周りの景色が明るすぎて、マスターの顔が見えない。
あんなに好きだったマスターの声が、暖かい空気の中で刺すように冷たい。
手を伸ばしても、届かない。
「すがってきても無駄。もう貴方の代わりは見つけたの。
貴方より強くて、とっても逞しい子なのよ」
なんでボクの代わりがいるの?
ボクはボクだよ。
ボクだけだよ。
強くはない。
逞しくもない。
でも頑張ったよ。
これからも頑張るよ。
ドレインパンチも覚えたもん。
なんでも言うことを聞くから。
そばにいさせて。
ねぇ、お願い。
お願いだよ。
「あ、ついて来ないでね。野生に帰るの、いいね?」
違う。違うよ。
そんな命令を聞かせて欲しいんじゃない。
命令なんていらない。
戦いになんて出してもらえなくていい。
ただそばに。
そばに、いさせて――。
□□□□□□□□□□
「……暑ちぃなぁ、さすがに」
真昼の日差しが降り注ぐ百貨店の屋上で、緑色のボディースーツとフルフェイスヘルメットを纏う男が、うだったような声を上げた。
フェンスの隙間から固定砲台のように巨大なランチャー砲を突き出しつつ窺う店外の景色に、ヘルメットの下で汗が垂れ落ちてくる。
目元に溜まる汗を拭おうとしても、マスクの上からでは拭えない。
バイザー部も自分の息でどんどんと曇ってきている。
双眼鏡の先の風景など見えたものではない。
「ああもうクソッ……! 蒸れて髪までかゆくなってきた……!!」
「……北岡さん、そのマスク脱いだらどうなんですか? 仮面ライダーじゃあるまいし」
「仮面ライダーなんだよ俺は!!」
ヘルメットの男は、背後からかかる少女の声に苛立ち混じりに振り向いた。
屋上のエレベーターホール脇に設えられたパラソルの陰で、満開の花飾りで髪を留めた少女が顎を掻く。
「まぁそれは……、仮面をつけてバイクに乗れば仮面ライダーでしょうけど。北岡さん、バイク持ってないじゃないですか」
「俺のバイクは、ミラーワールドとの行き来に使うの。このランチャーとかの力の源の世界ね。バッタに改造されたわけじゃない」
「鏡の世界ですか……? ぷふっ、北岡さん、ユーモアがお上手ですね」
「熱力学の法則を捻じ曲げる女子中学生どもには言われたく無いんだけどな!?」
憤慨する仮面ライダー北岡にくすくすと笑いかけている彼女を、その隣の壮年男性がたしなめる。
「まぁ初春くん。ヒーローを目指す男とは概してああいうものだ。スパンデックスの全身タイツとマスクなんて、コミックヒーローの姿そのものだろう」
「ああ、なるほどですね」
「ウィルソンさんさぁ……!! そりゃむしろあんたのことだろうが……!!」
「銃の喰われたわしはもう変身できんよ。かろうじて必殺技は撃てるようだがね」
「ウィルソンさんも仮面ライダー志望なんですか?」
「いいや、わしのこれは、戦隊ヒーロー・キョウリュウジャーだ。北岡くんのより、もうちょっと格好いいだろう?」
「……俺にばっか見張り押し付けて言いたい放題……。いい加減にしろよ」
「ハハハ、悪かった悪かった。そうムキになるな北岡くん」
「全部冗談に決まってるじゃないですか北岡さん。弁護士なのに子供っぽいですね」
「……」
ガキにガキと言われた
北岡秀一は、仮面ライダーゾルダのマスクの下で、ひたすらに青筋を立てるのみだった。
彼ら三人は、
佐天涙子とアニラを待っている。
二人が共にこの百貨店へと、行き先で出会った参加者を連れて帰ってくるのを、待っていた。
もうすぐに昼になる。
その
第二回放送までの束の間に、彼らは少しでも仲間を、同志を集めようとしていた。
アニラと佐天が持って行った物資は、そこそこの量がある食料や救急物品。そして、連絡用の発煙筒が2本ずつ。
打ち合わせでは、無事、目的とするD-6エリアで参加者に出会い、帰還してくる時は1本。
何らかの問題が発生し、北岡による遠距離狙撃の援護が必要な時は、2本の発煙筒を焚く。という手筈だった。
アニラの滑空・跳躍速度であれば、もうそろそろ目標地点には着いているころだろう。
連絡もすぐだ。
すぐにまた、旅立つ時が来る。
待機組である初春、ウィルソン、北岡には束の間の休息だった。
本来ならばそれでも、不意に百貨店周囲にヒグマが現れる可能性もなくはないので、ある程度気は張り詰めさせておかねばならない。
だからこそ今は、パラソルの蔭に足を休めるのか。
だからこそ今は、予断なく見回りを徹底するのか。
その按配が、初春とウィルソンおよび、北岡の間で、相応にずれがあったということだ。
「まぁ北岡くん。今は正体を隠す必要も、頭部を特に保護する必要もないだろう。暑いのはよく分かるからマスクを外したらどうかね」
ウィルソンの言葉に、北岡はかなぐり捨てるようにヘルメットを外してデイパックに入れた。
つかつかと歩み寄ってくる彼の滝のような汗と張り付く髪の下から、恨みがましく据わった目が覗いている。
「冬場はコスチュームが暖かいと思われるかも知れんが、むしろ汗が中で冷え切って風邪を引く。辛いよなぁ北岡くん」
「コスプレでやってんじゃねぇよ」
肩を怒らせ、汗を拭いつつパラソルの元に座り込んだ彼は、手近な清涼飲料水のペットボトルを掴み取り、がぶがぶと呷る。
そんな北岡の様子に軽く微笑みつつ、初春飾利は彼へタオルを手渡していた。
「なんだかんだ言っても、私達は北岡さんを頼りにしていますから。ありがとうございますね」
「あのね、頼りにしてるなら煽らないでくれる?」
「北岡さんも笑い飛ばすくらいしてくださいよ。折角、仲間なんですから和気藹々とさせようと思ったのに」
「……飾利ちゃんとかウィルソンさんとは、協力関係なだけ。仕事でもないし、こんな環境でもなかったら俺はここにいないって」
「それは仲間って言わないんですかね……?」
受け取ったタオルで顔と髪を拭いつつ、北岡は溜息をついてドリンクを飲み込むのみだ。
初春は隣のウィルソンと顔を見合わせ、抱きかかえる小動物を、今一度抱え直した。
「……仕事っておっしゃるなら。じゃあ一つ、北岡さんにご依頼したいことがあるんですが」
「……なんだよ。この黒も白に変えるスーパー弁護士にか?」
「佐天さんのことです」
初春の口調は、一転して浮付きを潜めた。
茶化そうとしていた北岡は、ペットボトルを干すのをやめ、彼女の瞳を見つめていた。
「……佐天さん、ここで私たちと出会う前に、ヒトを、殺してしまったそうです。
それは、ヒグマとして改造された人で。襲われた以上、自分の身を守るために戦わなきゃいけなかったのは確かだと思うんですが……。
やっぱりこれって、殺人罪ですよね?」
「……ああそうだな。日本本土に『帰れたら』、『平和に』、『有罪』になるだろうな」
「弁護してあげてください」
口先に盛大な皮肉を捏ね入れて投げた北岡の言葉は、初春のまっすぐな視線で叩き落された。
「……何よりもその罪で悩んでいるのは、今の佐天さんなんだと思います。
帰った後の裁判の席でも勿論ですが。今のうちから。どうか、佐天さんが自分を情状酌量できるように、弁護して欲しいんです」
「……ハッ」
初春の切々とした言葉に、北岡は呆れたように鼻を鳴らし、ペットボトルの中の最後の一滴を飲み込んだ。
「それで俺に、涙子ちゃん始めとしたみんなに仲間意識を持って欲しいってか? 飾利ちゃん、ちょっと思惑見え見えなんだよなぁ」
「……そうとは言ってないじゃないですか」
「言っとくけど、俺の弁護は高いよ?」
「……おいくらぐらい?」
「ま、そうだな。まずは着手金で、これくらいかな」
ペットボトルを潰し、北岡は人差し指を1本立てて見せる。
初春は首を傾げた。
まず、高いと自分で言っているのだから、千円とか、一万円では流石にないだろう。
弁護士費用の相場はわからないが、ならば自分の仕送り2か月分はゆうにあると見て……。
「10万円ですか……!」
「バーカ。ケタ2つ上だよ」
「ふた……ッ、ええっ――!?」
100万円ならばまだわからなくもなかった。まがりなりにも殺人事件であるし。
だが、北岡の言うのは1000万円である。
とても、中学1年生である初春の金銭感覚では想像できない額だった。
北岡は心底愉快そうに笑う。
「はっはっは、子供には払えないでしょこんな金額。成功報酬はもっともらうよ? 悪いことは言わないからよしとくんだな」
「い、いいえ……! 払いますよ! 働いたりしますもん! 佐天さんのためならなんでもしますから!」
「ほー、その年で風呂に沈む気か。見上げた心意気だねぇ飾利ちゃん」
「……おふろ?」
「北岡くん北岡くん、ローティーンの子によしたまえそんな発言」
にわかに北岡の笑みが怪しげなものに変容したのを見て取って、ウィルソン議員が即座に二人の間に割って入った。
なんとかアイデアロールに失敗したらしい初春の様子に胸を撫で下ろし、彼は北岡に強い視線を向ける。
「……初春くんが払わずとも、その程度の金額、わしが払ってやろう。なんならその3倍出してもいいぞ」
「さんば……ッ、ええっ――!?」
サンバといっても、ウィルソン議員が変身する時にかかるような陽気な音楽のことではない。
今度は北岡が、直前の初春と同じ驚愕に見舞われる番だった。
そもそもが1000万円という法外な着手金の額も、北岡が単にめんどくさがって初春をあしらおうと吹っかけただけのでまかせだ。
北岡は確かに高額な弁護料をせしめる、悪徳にして敏腕の弁護士ではあるのだが、流石にここまで吊り上げることはほとんどない。
しかもこれは企業訴訟とかではなく、未成年の初犯たった一人についての事案だ。裁判になるかすら怪しい。
こんな案件で、平然と3倍額がポンと提示されるなど、とても北岡には想像できないことだった。
「なに、佐天くんの無罪が勝ち取れるというなら大した額じゃなかろう。君が自信と実績ある弁護士だともわかったよ。頼もしいな」
「……しまった。ウィルソンさんの職業を、忘れてたよ……」
「うん、そうだ。わしが君を雇おう北岡くん。君が顧問弁護士になってくれればこれほど心強いことはない。
『袖振り合うも多生の縁(Even a chance meetings are preordained)』だ」
今でこそ、こんなヒグマ島に拉致された小汚いヒーローかぶれの中年に過ぎないが、彼はかの米国の上院議員だ。
豪邸もあるだろうし、資産も相当なものだろう。
袖振り合うも多生の縁。
とはいうものの、彼が行きずりの一学生に過ぎない佐天涙子をそこまで気にかけるとは、北岡は全く思っていなかった。
「わしからも、佐天くんのことはねんごろに頼むよ、北岡くん」
「……うへぇ」
いや、上院議員の度量からすればこの程度の喜捨は、『そこまで』などという程のものですら、ないのかも知れなかった。
□□□□□□□□□□
「……何にしてもね。ちょっと気を緩めるのもそこそこにしといたほうがいい。いつヒグマが襲ってくるかわかったもんじゃないんだから」
「それはそうなんですけど……。この子がいるので、あんまり気を張っておくと伝わっちゃうかなと……」
話題を切り、改めて気合を入れなおそうとする北岡に、初春は自分の胸元に抱えているものを見せた。
そこには、
パッチールと呼ばれる、小さなぶちパンダポケモンが眠っていた。
傷ついたその小動物を津波の中から救い上げてきた本人である北岡は、その渦巻きのような文様が目となっている寝顔に、でれ、と相好を崩していた。
「いや~、かわいい。うん、そういうことなら許す。良かったな飾利ちゃん。俺がきみを侮辱罪で訴える計画は立ち消えになったぞ」
「ええ。北岡さんがそんな馬鹿みたいなことする人じゃなくて良かったです」
初春が自然に口に出した毒舌もさらっと流して、北岡は耳の長いパッチールの頭を撫でている。
「あのな初春ちゃん。可愛い生き物ってのはこういう奴のことをいうんだぞ。
あんたらはスメラギをカワイイカワイイ言ってたが、クリーチャー萌えになんか走っちゃダメだ」
「はい? 皇さんをカワイイって言ってたのは佐天さんですよ? 私じゃありません。
……それに、萌えとかいう表層の話じゃないです。『可愛い』っていう単語は、そんな見下したように使っちゃいけない言葉だと思います」
「……ん?」
『スメラギ』という単語を耳にして、にわかに態度を硬化させた初春の語調は、北岡を叱責するかのようなものに変わっていた。
「外面の有様だけで『可愛い』と断じて思考を停止させてしまったら、もうそれ以上、その子の内面を理解してあげることはできませんよ。
一度『可愛くない』要素が露呈してしまったらその瞬間、あなたがその子に抱いていた『可愛い』の幻想は即座に崩壊し、もう二度と元に戻せなくなっちゃいますからね」
「……何を言ってるんだ飾利ちゃん」
「北岡さんが未だに、皇さんを『クリーチャー』だと、『バケモノ』だと思っていることに怒っているんです!! あの人はちゃんとした人間です!!
呆れました。許せません。訂正してください」
迂遠な主張の果てに初春が叩き付けた文意は、心の内実を軽んじているかのような北岡の思考をなじるものだった。
何度も命を救われ、風紀委員(ジャッジメント)としての姿勢をもアニラに学ぼうとしていた初春からすれば、北岡のこの不用意な失言は逆鱗に触れるものであった。
正直、北岡としてはそこまで深い考えもなしに、見た目そのままを評してそう口に出しただけのことである。
彼女の思考は、北岡には理解不能だった。
「……それにですね。この子にしたって、ヒグマの子供かも知れないんですよね。
『いつヒグマが襲ってくるかわかったもんじゃない』と言うんでしたら、この子に気を許すことが、一番危険なことだと思います」
「え、そ、そんな……。確かにそうだけどさ……。さすがに、この見た目でこの小ささで、襲ってくるのはありえないと思うんだが……」
「確かに、襲ってこない可能性の方が、遥かに高いです。でもまだ、私にはこの子の内面がわかりません。
だからまだ、私はこの子そのものを『可愛い』とは言いません。内面がわかっても、言うかどうかわかりません。
そんな単語一つで、この子の理解をストップさせたくはありません」
初春が怒っている理由にはもう一つあった。
北岡が、自分からこの小動物を『ヒグマの子供って可能性が一番高いと思う』と言っておきながら、その対応を、その他もろもろのヒグマとは、その外見だけで明らかに変えてしまっている点だ。
もしこの子が醜い声で鳴いたらどうするのだ。
もしこの子があなたに楯突いたらどうするのだ。
もしこの子が人食いだったらどうするのだ。
外見だけで勝手にイメージしていた幻想が崩壊したとき、きっと、今まで愛玩していたその態度は掌を返すだろう。
それは、他者に対しての明確な裏切りだ。
「……私の友達に、婚后光子さんという方がいます。彼女は、エカテリーナちゃんというおっきなニシキヘビを飼っててるんですよ。
一緒に全身に絡んで遊んだりしていて、とっても仲がいいんです。
そりゃ確かに、かわいいリボンとか、かわいい仕草とか、そういうものはありますよ?
でも見た目だけで、その総体を『可愛い』と『可愛くない』に分断してはいけないと思います。
そういう内面からにじみ出る信頼関係とかを見て初めて、そのもの自体を『可愛い』と言っていいんだと思います」
「ニ、ニシキヘビ……!?」
「絡める大きさのパイソン……。それは確かに、凄まじい信頼関係だろうな」
力説する初春の思惑に反して、男性二人の意識は、その2メートルは越すだろう巨大ニシキヘビと平気でくんずほぐれつ絡み合うらしい女子中学生というものの存在にまず驚愕していた。
そして同時に、ウィルソンと北岡の二名は、だから初春が初対面のアニラに平気で接していられたのだな。と、その理由に激しく納得していた。
「あ……うん、わかった。あの、うん。皇さんを見た目クリーチャーって言ったのは別に深い意味は無くて。
彼のことは普通に人間だと思ってるから。悪かった。その、ヒトも動物も、見た目だけで判断はしないようにするから」
「わかって下さればいいんです。北岡さん、過ちをすぐに認めて謝罪して下さるところは格好いいと思いますよ」
これ以上話に付き合うのがめんどくさいだけなんだよな……。とは思いつつ、北岡は初春の満足げな言葉を、神妙な頷きで受け止めた。
対してウィルソン・フィリップス上院議員は、初春の話から何か感慨を得たように、懐手で髭を撫で付けている。
「うん、うん……。『守護動物(パワーアニマル)』がパイソンの少女か……。きっと心身ともに強いのだろうなぁ」
「?」
「ときに北岡くん。きみの『守護動物(パワーアニマル)』はそのバックルのバッファローだとみていいのかね?」
「はい?」
聞きなれない単語とともに話を振られ、北岡は困惑する。
ウィルソンは説明の言葉を捜しているかのように左手の指を振る。
「きみのその『仮面ライダー』という力の源は、そのバッファローの力なのだろう?」
「……まぁ。確かにマグナギガは雄牛だろうけども。それが何? 『守護動物(パワーアニマル)』って?」
「『ハイヤーセルフ(高次元の自己)』だよ。『アルターエゴ(もう一人の自我)』と言ってもいい。
自分の生命力の源だ。恐らく、アメリカにおける仙道のクンダリニー(進化力)の概念だと、わしは思っておる。
よくよく演繹してみれば、アニラくんの有様もわしらの有様も、恐らく近いものだ」
ウィルソンが語り始めたところによると、それはかのイタリアでの波紋法との出会いから端を発していたらしい。
波紋および仙道というものの概念は、中国やチベット、日本などには伝播していると伝え聞いたものの、果たしてアメリカ国内にもないものかと彼は職務の合間に探していた。
すると意外にもそれは、すぐに見つかった。
『守護動物(パワーアニマル)』。
それは、北米インディアンの間に共有されていた概念であり、中南米では『守護獣(ウァイ)』という形で伝わっていたものだ。
彼らインディアンは、日本やアジア圏、オセアニア周辺の民族がそうであったように、山川草木のあらゆる生命に神を見出す信仰を持っている。
特に彼らの自然信仰は祖先信仰とも繋がり、守護霊とともに、自分を守ってくれる、『自分自身』である『獣』を、自己の内に見出す慣習を有していた。
「そうなんですか。そういう自然の霊を敬うのって、日本独自のものかと思ってました」
「わしも東洋独自のものかと思っていた。だが、入植したわしら白人と一神教が征服してしまったために、片隅に追いやられていただけだったのだろうな」
北米インディアンによれば、人は『守護動物(パワーアニマル)』を持っていると心身ともに元気でいることができるらしい。
写し身である彼ら『守護動物(パワーアニマル)』はまた、さまざまな問い掛けに答え、自分を導いてくれる存在でもある。
これらは皆、かつて自分たちの先祖であった歴史上の人物が保有していた『守護動物(パワーアニマル)』であり、また、先祖そのものが『守護動物(パワーアニマル)』になっているとも考えられていた。
そしてさらに、自分たちそのものが、その先祖の生まれ変わりであるとも、信じられていた。
「恐らくそれは、過酷な自然環境で頻発する死者を悼み、子供たちを協力して育て、生き残るための、一種合理的な思考だったのだろうよ」
「……まぁ、悲しんでいる時間すらろくに取れないだろうからな。今の俺たちみたいに」
「そうだ。だから彼らの文化では時間は循環するし、死は新たな生の始まりだった」
部族全体で子供を育てる文化の中では、彼ら子供の親が誰であるかは、重視されなかった。
遺伝するのは、DNAではなく、祖先の精神だった。
歴史上の偉人が。
死に別れた英雄が。
彼らの中に、動物の形を以って繋がっていく。
その『守護動物(パワーアニマル)』には多くの種類があり、人によってどんな種類の動物を持っているかは様々だった。
「たいていは熊や鷲などの、哺乳類か鳥類であるらしいが。まれに、アナコンダや魚などを『守護動物(パワーアニマル)』に持つ者もいる。
自分の無意識の力の形として現れるものだからな。千差万別だ」
「ウィルソンさんも、その『守護動物(パワーアニマル)』を見つけたんですか?」
「ああ」
初春飾利の問いに、ウィルソンは頷く。
彼はホピ族の保留地を訪ね、『守護動物(パワーアニマル)』を探すための『ビジョン・クエスト』を行い、自分の意識下深くへと潜っていた。
トランス状態の中、自分の脊柱を下り、尾骶骨の奥から続くトンネルに入った地下世界で、彼は自分自身の姿を捕まえていた。
「イーグル(鷲)と、ダイナソー(恐竜)だったよ」
自己の中への旅で、『守護動物(パワーアニマル)』は4度、違った角度で出現する。
その『守護動物(パワーアニマル)』を見つけ、捕まえる。
自分自身は、喜んで掴まるはずだ。
地上に戻り、自分の胸から、自分の中に入れ、一体となってダンスを踊る。
それが、『守護動物(パワーアニマル)』を身につける一連の儀式であった。
「ただ、その動物が、牙を剥いた蛇だったり、クモの大群だったり、明らかに敵対的な存在として出てくることもある」
「……そういう時は、どうするんですか?」
「その時も、決して戦ってはいけない。それも、自分自身だからだ。戦ってしまえば、その無意識の力は、歪む」
通り過ぎて避けるか、さもなくば再び地上の意識に戻り、最初からクエストをやり直さねばならない。
無意識の力の象徴である『守護動物(パワーアニマル)』は本来、この時点で良好な関係を持てるほど近い存在になっていなければおかしいのだ。
そうでないということはつまり。
――意識が、無意識を拒絶しているということを意味している。
「尾骶骨の下位のチャクラである『鬼骨』を回すという行為は、このビジョン・クエストが、上手く行き過ぎた結果なのか、それとも歪み過ぎた結果なのか――。
それはわからないが。『波紋』、『チャクラ』、『守護動物』、『超能力』、『独覚兵』……。あと、北岡くんの変身やわしの変身もだ。
これらの概念は、実のところ相当に近しいものなのではないかと、わしは思ったよ」
中天に懸かる日差しが、語るウィルソンの言葉に陰を落とす。
正午を告げるチャイムが、その光に続いていた。
□□□□□□□□□□
「……江ノ島盾子ちゃんは、クソガキ中のクソガキだったみたいだな」
「……ええ。それも、とっても頭のいいクソガキですよね」
「……そうだな。ヒグマを操っての制圧というのは、上手くいってしまったようだからな」
第二回放送の内容をノートパソコンに記入していた初春たち3人は、直後の
艦これ勢の叫びに、そんな呟きを言い合った。
誰もヒグマ語のわからない彼女たちには、その叫びはただのヒグマの唸り声にしか聞こえなかったのだが、それでも、聞こえてくる戦闘音とその結果が何を意味しているのかは、明らかなことだった。
「……ほんと、どうすんだよこんな状況……。拠点防衛しても、敵陣への攻め手がさっぱりわかりゃしない。
『ハイヤーセルフ(高次元の自己)』とやらが力と答えをくれるってんなら、今すぐ欲しいよ俺は」
「うむ……。恐らくわしや北岡くんは、『守護動物(パワーアニマル)』と一体化してこの状態だ。
これ以上の力を求めるなら、今一度時間をかけてビジョン・クエストを行い、新たな自己を見つけてくるしかないんだろうな」
「時間も余裕もないし、道具も方法もわかんないよそんなん」
「そうだな……。結局は、アニラくんと佐天くんの結果次第……、ということかな」
北岡はヘルメットを脱いだ状態で、砲台として設置するギガランチャーや、周辺の様子などを見回る。
ウィルソンも、隻腕片足のハンデで十全に戦闘を行なえるよう、水分補給から波紋の呼吸に集中している。
高まる緊張感にその時、初春の胸元で、もぞもぞとパッチールが動いていた。
「あ……、起きましたね」
「……ぱ~……」
「おう、どうだ……? なんか喋れるのか?」
「負傷していたようだからね……。その状況でもわかればいいのだが」
パッチールは、そのぐるぐると渦巻いた目で、自分に注目している3人の人間を順に見た。
そして次第に意識がはっきりしていくと、その表情には、傍目にも見てわかる、明らかな後悔と恐怖の色が口元に浮き出してきていた。
「ぱぁああああ――っ!! ぱあ、ぱああああ――ッ!!」
「あっ、ちょっと! どこに行くんですか!?」
パッチールはそのぶち模様の体を奮って、初春の胸元から跳び下りていた。
そして叫びながら、エレベーターホールの外壁に走って行き、激しく自分の頭部をそこに打ちつけ始めた。
「お、おい……、なんなんだよこいつ……! 意味わかんねぇ……!」
「ぱうるるるるるる……! ぱあっ!! るるるるるるううぅ……!!」
突然のこの小動物の奇行に、北岡はただたじろぐのみだった。
直前まで、パッチールの姿を可愛いと思っていた感情は、消し飛んでいた。
唸り声を上げながら、額から血を流し、鬼気迫る表情で自傷している意味不明なこの生命体の行為を、ただ気味の悪いものに感じていた。
『――ボクは、ボクは。人間を殺そうとした……!! マスターと同じ種族を……!! そばにいたかった彼らを……!!』
唸るパッチールのヒグマ語を聞き取れる者は、この場にいなかった。
パッチールは、混乱したかのようなこの自傷の嵐で、このまま自殺するつもりだった。
マスターに捨てられていたところを、偶然STUDYに捕らえられ、ヒグマ帝国の反乱の時に、キングヒグマと出会った。
彼は確かに、パッチールに対して、ヒグマの調整用に使われていた薬剤を下賜した。
パッチールの望んでいた、『力が欲しい』という願いに応えて、だ。
だが。
――『キングヒグマ様の命令により、ワシが間引いてやろう』?
増えすぎた参加者を間引き、人間を殺す。そんな命令。
……実のところ、キングヒグマは一切、そのような命令はしていなかった。
ただ彼は、真摯にパッチールの話を聞き、その心に潜む、無力さへの憎しみを見出し、新しく手に入れた『その力を試して見る』ことを勧めただけだ。
その試す対象に、人間を見返し、殺してやることを望んだのは、パッチール自身だった。
彼の言葉を捻じ曲げ、歪ませ、心の底の声で戦いを望んだのは、パッチール自身だ。
誰のせいでもない。
それは、パッチールが自分で招いた、罪。
『ボクは、狂っていた――。あのクスリを打ったときから。いや、それよりもっと前から――!!
マスターが育ててくれた、恩も、思い出も、みんな忘れて。ただ、あの時の、悪夢だけが、ボクに答えて――!!』
――うっふふふふ~♪ 強いしカッコイイしカワイイし、パンダだぁい好き~! さぁ、さっさと帰りましょ!
『うああああああああああああああああ――ッ!!』
涙を流しながらパッチールは、脳裏に去来する顔の見えぬ人間の声を振り払うように、その額をひたすら壁にぶつけていた。
ウィルソンと北岡は、その様子をどうすることもできず、見つめることしかできなかった。
「辛いことが……、あったんですね」
そのパッチールの体は、後ろから不意に、抱え上げられていた。
「自分を責めなくちゃ、耐えられないほどの、辛いこと……。
でも今だけは。心を縛る時を、ほどいて下さい……。いつでも、ここに、いてあげますから」
そして抱き寄せられた彼に薫ってきたのは、深い森の花畑のような、芳しい花の香りだった。
うずくまった初春飾利が、パッチールを柔らかく、包み込むように抱きしめていた。
寡黙な、自分から最も遠いような生命の声を聞き、察する――。
それは既に深夜から、彼女がアニラに対してずっと行なってきた行為だった。
それは既に普段の生活から、彼女がずっと行なってきた行為だった。
『可愛い』とか。
『可愛くない』とか。
そんな末節の様相など関係ない。
言葉も通じない。
人間でもない。
そんな動植物の声を汲み、答える。
人によっては、そんなものは妄想か自己投影に過ぎないと言う人もいるだろう。
だが学園都市には、そんな『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』を持った者もいる。
普通の人間にだって、そういう者はいるはずだ。
自分だけの思念でも、自らの枠を越え、潜った地下深くの意識が、あらゆる人と、動物と、繋がっていておかしいことがあろうか。
そこから思いのひとひらを汲み上げてきて、一緒にダンスを踊れないことが、あろうか。
「ぱぁ……っ。ぱぁ~……」
「……私は、あなたが心に懸けている子とは、たぶん違う者です。
あなたの真意がわからないまま、あんまり無責任なことも、言えません」
頬を寄せて泣きじゃくっているパッチールを抱え、初春飾利もまた、その目から涙を流していた。
「でも今は。忘れていいです。振り向かないで大丈夫です。
忘れ物は、見つかります。出会える日は、きっと来ます。私がここで、待っていてあげますから……」
雲の切れ間に霞を縫いこんだような、繊細で、曖昧に過ぎる言葉だった。
流れるようなその言葉はそれでも、初春の肩に、雨粒を降り注がせた。
初春の息は、彼女の心の意気を乗せて、パッチールの元に、確かに届いていた。
「私が、あなたの『守護動物(パワーアニマル)』になってあげます。あなたも、私の『守護動物(パワーアニマル)』になって下さい。
みんなで、一緒に踊りましょう……? みんなで、力を合わせて、答えを、出しましょう……?」
パッチールは、頷いていた。
その背中をさする初春もまた、大きく頷いていた。
彼女たちの世界に理解が及ばぬことを、北岡はどうでもいいことと思いつつ、同時に、もどかしいようにも感じていた。
物事を内面で見る――。
そんなこと、不治の病に侵されてから、久しくしてこなかったのではないだろうか。
パッチールを一瞬でも、可愛いと思えなくなってしまった自分が、悔しかった。
隣のウィルソン・フィリップスは、その北岡の心情を察したかのように、目を合わせれば深く頷くのみだった。
ウィルソンの指差す空には、その時、一筋の煙が上がっていた。
それを双眼鏡で確認し、北岡は呟く。
「……そうだな。パワー持つアニマル(人間)が、帰ってくる。俺なんかじゃもう、わかんないことばっかだ。
高次元の自己に至ってるやつと力を合わせて、答えを導き出すしか、ないんだろうさ……」
佐天涙子が、帰ってくる。
アニラと共に、帰ってくる。
顔を上げた初春は、それを示す一本の煙の彼方を瞻望した。
――佐天さんはあの時確かに、皇さんを『カワイイ』と言った。
確かに、丸くなって寝ている皇さんの仕草は、見た目『可愛い』と言えなくもなかった。
だが皇さんの本質はどうかと言われれば、その形容は明らかに不適切だと思われる。
人食いだ。
実験動物だ。
恐らく戸籍からも抹消されている。
格好良くて、憧れの人ではある。
でも皇さんは、私たちに話していない悩みも、いっぱい抱えているだろう。
話してくれている中でも、切実な問題は山のようにあった。
彼への理解を、『可愛い』という言葉一つで終止符をつけては、いけないはずだった。
――佐天さんは、それをわかっていながら、なんで『カワイイ』と連呼した?
萌えとかそういう表層の話ではない。
彼女は、私と一緒に、皇さんに助けられた身だ。
佐天さんはもっと深く、皇さんを理解してきてるところのはずだ。
それを、うわべの形容で塗り固めようとしている行動には、きっと佐天さんの内面が、にじみ出てきている。
――もう既に、佐天さんは、皇さんの奥を、理解しきっているんじゃないか?
――そこからあえて目を背けて、表層意識に逃げようと、彼女はしているんじゃないのか?
消えてゆく煙の行き先を追いながら、初春はその胸に小さな心を抱いて、友の帰りを待っていた。
【C-4 街(百貨店屋上)/日中】
【初春飾利@とある科学の超電磁砲】
状態:健康
装備:サバイバルナイフ(鞘付き)、ミルクの器と脱脂綿
道具:基本
支給品、研究所職員のノートパソコン、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]
基本思考:できる限り参加者を助けて、一緒に会場から脱出する
0:佐天さん、皇さん……、どうかご無事で……。
1:ヒグマという存在は、私たちと同質のものではないの……?
2:佐天さんの辛さは、全部受け止めますから、一緒にいてください。
3:この子も。辛さは全部受け止めます。一緒にいましょう?
4:皇さんについていき、その姿勢を見習いたい。
5:有冨さん、ご冥福をお祈りいたします。
6:布束さんとどうにか連絡をとりたいなぁ……。
[備考]
※佐天に『定温保存(サーマルハンド)』を用いることで、佐天の熱量吸収上限を引き上げることができます。
※ノートパソコンに、『行動方針メモ』、『とある
モノクマの記録映像』、『対江ノ島盾子用駆除プログラム』が保存されています。
【ウィルソン・フィリップス上院議員@ジョジョの奇妙な冒険】
状態:大学時代の身体能力、全身打撲・右手首欠損・左下腿切断(治療済)、波紋の呼吸中
装備:raveとBraveのガブリカリバー、浴衣
道具:アンキドンの獣電池(2本)
[思考・状況]
基本思考:生き延びて市民を導く、ブレイブに!
0:痛みは抑えられる……。何とか足手まといにならない程度には動けるかも知れないな。
1:折れかけた勇気を振り絞り、人々を助けていこう。
2:救ってもらったこの命、今度は生き残ることで、人々の思いに応えよう。
3:北岡くんの見張りを補助し、ガブリカリバーを抜き打つタイミングを見誤らないようにする。
4:佐天くんとアニラくんが無事に戻って来れるようにするためにも、しっかりとこの拠点を守ろう。
5:わしは『守護動物』も『波紋』も持っていて、未だこれだ。さらに伸びしろのある人物は……?
[備考]
※獣電池は使いすぎるとチャージに時間を要します。エンプティの際は変身不可です。チャージ時間は後続の方にお任せします。
※ガブリボルバーは他の獣電池が会場にあれば装填可能です。
※ヒグマードの血文字の刻まれたガブリカリバーに、なにか
アーカードの特性が加わったのかは、後続の方にお任せします。
※波紋の呼吸を体得しました。
【北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
状態:仮面ライダーゾルダ(マスクは外している)、全身打撲
装備:カードデッキ@仮面ライダー龍騎、ギガランチャー、ギガキャノン、双眼鏡
道具:血糊(残り二袋)、ランダム支給品0~1、基本支給品、血糊の付いたスーツ
[思考・状況]
基本思考:殺し合いから脱出する
0:本当、どうやって解決策を見出せばいいんだか……。
1:飾利ちゃんにやりこめられたようで悔しい。
2:とりあえずこの拠点は守り抜かないと、今後の戦いが大幅に不利になるよな……。
3:皇さん……、あの子ちゃんとしつけてくれよ……。
4:佐天って子はちょいと怖いところあるけど、津波にも怪我にも対応できるアレ、どうにかもっと活かせないかねぇ……?
5:なんだこの生き物の真意は?
[備考]
※参戦時期は浅倉が
ライダーになるより以前。
※鏡及び姿を写せるものがないと変身できない制限あり。
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「私が、あなたの『守護動物(パワーアニマル)』になってあげます。あなたも、私の『守護動物(パワーアニマル)』になって下さい。
みんなで、一緒に踊りましょう……? みんなで、力を合わせて、答えを、出しましょう……?」
この子は、何にも訊かずに、そう言ってボクを抱きしめてくれた。
ボクの言葉なんて、わかってないはずなのに。
ボクが今まで何をしてきたかなんて、知らないはずなのに。
ボクがどんな生き物かなんて、理解していないだろうに。
ボクに、戦いを期待するのではなく。
ボクに、可愛さを期待するのではなく。
この子自身が、ボクの力になってくれる、と。
非力なボクそのままでも、力になってほしい、と。
そう、言ってくれた。
言葉は伝わっていないはずなのに。
ボクの今の気持ちだけは、確かに、この子は受け止めてくれていたんだと、実感できた。
わからない。
このままボクがこの子たちと一緒にいていいのかなんて。
ボクがこの子たち参加者を、殺そうとしていたのは事実だ。
マスターを恨み。
人間を恨み。
何の関係もないヒグマや参加者にやつあたりして。
全ての恩を仇で返そうとしていたのは、夢でもなんでもない。
ご破算にできないボクの罪だ。
あんなに大好きだったはずなのに。
もうマスターの顔は、古ぼけてにじんだ絵のようで、思い出せなかった。
ボクに繋がっているマスターの形はもう、一緒に特訓して過ごした日々の、ドレインパンチしか、残っていなかった。
……こんなボクが。今さら、この子たちと繋がって、いいものだろうか。
ボクへ最後に残されたもの。
ボクが最後に残していけるもの。
それはきっと、次へのバトンだ。
顔も知らない、ボクのパパやママがボクに託してくれたバトン。
マスター、ごめんなさい。
恨んでごめんなさい。
ボクだけが一人で戦おうとしていて、ごめんなさい。
『可愛い』とか、『可愛くない』とか。
そんなこと本当は、きっと関係なかった。
マスターに捨てられたあの時の理由も、もうはっきりとは思い出せないけど。
今さら、こんなことは恩返しにも何にもならなくて、やっぱりボクの身勝手なんだけど。
――どうか今だけは、ボクのこの手が繋がることを、許してください。
【C-4 街(百貨店屋上)/日中】
【パッチール@穴持たず】
状態:重傷
装備:なし
道具:なし
基本思考:ボクの罪を、償う
0:今は、この子の腕に、すがりたい。
1:ボクは今まで、なんて恐ろしいことを考え、行なってきたんだ……。
2:マスターが愛想を尽かしたのには、本当はもっと、理由があったのでは……。
[備考]
※ばかぢから、ドレインパンチ、フラフラダンス、バトンタッチを覚えています
※カラスに力を奪われてステロイドの効果が切れました
※屋上のビーチパラソルの下に、それなりの食糧、衣料品、日用雑貨などが確保してあります。
※階下に降りて探索すれば、まだ様々なものが見つかるかもしれません。
最終更新:2015年01月25日 19:45