ようこそSCP Foundation「SCP財団」へ。

SRC財団は異常な物品、存在、現象を封じ抑え込むことを任務として、
秘密裏かつ世界規模での活動を行っています。
それらの異常存在は世界の安全に対する重大な脅威であり、
財団の活動は主要各国の政府から委任され、管轄権を越える権限を認められたものです。

財団の活動は正常性を維持するためのものであり、
世界中の一般市民が異常に対する恐怖や疑念を抱くことなく日常を生きることができるよう、
地球外、異次元、その他の超常的存在が及ぼす影響からの人類の独立を維持します。

我々の任務は3つの要素から成ります。

確保(Secure)
財団は異常存在が一般市民や対抗組織の手に落ちることを防ぐため、
広域に渡る監視活動と通信傍受を通じ、可能な限り早期に異常存在を確保します。

収容(Contain)
財団は異常存在の影響が拡散することを防ぐため、
あるいはそれらに関する知識が公衆に流布されるのを防ぎもみ消すため、
移送、隠蔽、分解などにより異常存在を収容します。

保護(Protect)
財団は異常存在の影響から人類を保護するとともに、それら異常存在の性質と挙動を完全に理解する、
あるいはそれらに基づいた新しい科学的理論が考案される時が来るまで、そうした異常存在を保護します。
財団が異常存在の無力化・破壊を行うのは最後の手段であり、
その異常存在を収容し続けることがあまりに危険すぎると判断した場合に限られた選択肢です。

我々は任務を遂行するべく、財団は世界中に渡り秘密裏に活動を行っています。

特別収容プロトコル(Special Containment Procedures)を必要とする全ての異常な物品・存在・現象には、
研究の優先順位付け、予算編成、その他の考慮事項のためにオブジェクトクラスが割り当てられます。
割り当てられるオブジェクトクラスは一般に複数の要素から決定されますが、
特に重要な要素は対象のもつ収容の困難性および財団職員や人類全体に対する危険性から成ります。

以下は異常存在に割り当てられる最も一般的なオブジェクトクラスであり、財団のデータベースの大多数を占めています。

Safe(セーフ):安全な扱い方が完全にわかっており、その扱い方に従えば危険なく収容を継続できます。
Euclid(ユークリッド):危険で解明されていない部分もありますが、安全に収容し続けられます。
Keter(ケテル):人類全体にとっての脅威となりうる上に、安全に収容し続けることが困難です。


㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹

SRC財団本部。
アメリカのとある州にあるとされる刑務所と研究所を混ぜたようなその巨大施設の地下深く。
厳重な管理の元、捕獲した二体のKeterクラスの戦闘実験が始まろうとしていた。
古代の戦士風の男、SCP-076"Able" (アベル)は目の前で佇むトカゲの様な恐ろしい獣、
財団が保管する生物型のSCPで最強と噂されるSCP-682 " Hard-to-Destroy Reptile" (不死身の爬虫類)
の頭上に向けて語りかけた。

「君のような生き物の物語を聞いた事があるよ。栄誉ある獣なんだ。
 うろこと肉と、かぎ爪と牙でできている。凶暴な目付きに隠れて、
 実はとんでもなく賢いんだが、それにも増して勇敢に戦うんだ。
 君の一族はかつてはこの世界を支配したと聞いている。
 数の力と持って生まれた才能で、君たちを怒らせたものは残らず殺すか喰うかして。
 だが、君たちは王座から一匹ずつ蹴落とされた、
 もう地上にはいない偉大な戦士達によって一匹残らず、
 そして君はただ神話の生き残りに過ぎない」

アベルは息もつかずにささやいた。

「私ですら君達をただのおとぎ話だと思っていた、
 だけど君は目の前にいる、生きたドラゴンがここに…」

獣はうなり声を漏らした。
ゆっくりとひび割れが開くように、彫像が突然命を吹き込まれたかのように、獣の口は動きはじめた。

「哀れな…」

獣は不満げにうなり、その声は太く重く、山が1000回以上も崩れたようだった。

「ドラゴンだと?この腐った塵のかたまりめ。
 お前は何もわかっていない。私が躾のいい飼い犬を想像できないように」
「自分で選んだことだ」

アベルは固く答えた。彼はSCPでありながら機動部隊Ω-7という特殊部隊を結成して
財団に協力している数少ない話の分かる存在なのだ。

「選ぼうが選ぶまいが、おまえは連中の犬に過ぎん。
 お前は連中の手から餌を喰う。犬は鉢から喰う。それだけの違いよ」

獣は冷笑した。人ならざるものの顔に表情が見えさえした。
アベルの顔が引きつる。武器を握る手に力を増し、回転する刃はもはや目に見えないほどのスピードで、
抗議するかのように鈍い金属音をたてた。

「少なくとも自分の運命を選ぶことはできる」

アベルは怒りをこめて怒鳴り、刀を獣の頭へと振り下ろした。

「運命?おまえに運命の何がわかる。運命は生だ。
 そしておまえは…おまえと、ここにあるものすべては、死だ」

化け物は咆哮し、アベルに向かって突撃した。
アベルは10メートル以上も投げ出され、障害物を破壊しながら吹っ飛んだ。

「どうした、もう終わりか?」

ぐしゃぐしゃに潰れた肉体を再生させながらアベルはくっくと笑った。

「うん、そこは反論の余地なしだ」

アベルはぼろぼろになった外套の影から、柄だけでゆうに6フィートはある巨大な棍棒を引っ張りだした。
棍棒の先は回転するとげで覆われ、邪悪なうなりをあげて、複雑怪奇な死の模様を紡いでいる。
怪物は持ち前の攻撃性でたったひとつの事だけを考えていた。その目に浮かぶ目的はただひとつ。

「殺す」
「行くぞドラゴン!」

「―――つまらんな」

「「誰だ?」」

二体の超存在が同時に振り向くと、そこに銀髪のサムライ風の男が立っていた。

「いけませんブレイドさん、実験の途中です」
「不死身の肉体だが互いに攻撃力不足。このまま観戦しても
 戦闘が膠着するだけの退屈な試合にしかならんだろう。私が終わらせる」

リングの外で慌てふためく研究員の制止も聞かずにKeterクラスのサムライ風の男、
SCP-777-J "Darkblade" ("漆黒の刃"<ダークブレイド>)は二体に歩み寄る。

「おいおい、どうするよアベルとやら」
「やれやれ、命知らずも居たものだな」
「仕方がない、ここは一時休戦と行こうか」
「そうだな、終わったら二人でピザでも用意して宴会しようか」

こうして意気投合した二体の超存在は無防備なブレイドに向かって同時に飛びかかった。
だが、その瞬間ブレイドは右手に持った日本刀を振り抜き、

「フッ……抜刀」
「何ぃ!?」
「ぐわぁぁぁぁぁ!!!!」

アベルと不死身の爬虫類を二体同時に両断して始末した。

「おお、SCP-076とSCP-682を瞬く間に!」
「レーザー切断、核弾頭、更にはどんなSCPをぶつけても
 殺せなかったあのトカゲがピクリとも動かないぞ!」
「流石ですブレイドさん!」
「またつまらぬものを斬ってしまった。早く帰ってギターの練習をする」

「はっはっは。流石だね」

眼鏡を掛けた日系人の青年がブレイドに話しかける。

「誰だ?財団の職員ではないようだが」
「日本から施設の見学に来たDr.アリトミという男です」
「ほう、日本か」

「悪いんだけど、ちょっと彼を借りて行っていいかな?
 日本の北海道という地域に強力なSCP?みたいなのが現れてね」
「馬鹿をいうな、ブレイドさんは財団にとって極めて重要な人材だぞ」
「いいだろう」
「え!?」
「日本へ行け……定めがそう告げるのだ。」
「話が分かるじゃないか!じゃあ、行こうか!」
「ちょ、ブレイドさん!」
「貴様らには理解らぬだろうな。世界を救うべき天命<定め>など……」


――――こうして、漆黒の刃<ダークブレイド>の来日が決定したのだった。


㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹


「『血の神』は手に余る……誰か他の奴が相手をしてくれ」

枯れた森を抜けた先にある巨大温泉の麓。
ヒグマードを仕留め損ねて撤退を決め込んだヒグマン子爵はゴクウコロシが転生した
妖刀「羆殺し」で爪を注ぎながら次の行動方針を考えていた。

「静かだな。刀から分離して再び目覚めるといったことは無いのかゴクウコロシよ?」

先ほど放った一撃によってしばらく奥義を使うことが出来ない羆殺しは何も答えない。
彼はカッコいいエムシ(刀)にハヨクペ(魂)を乗り換えたことで人生に満足してしまったのだろう。

「他の奴、か。穴持たず34だったような気がするヒグマカッコカリのヤツはもはや戦力外。
 ゴクウゴロシが目覚めぬ以上、今や実験を遂行できる個体は俺一人……どうしてこうなった」

生物的に穴がないから「穴持たず」。
だがいくら欠点がなくとも生物である以上死ぬ時は死ぬのだ。

「まあ、仕方があるまい。俺はやるべきことをやるだけだ。
 しかし吸引能力は生きてるとはいえ、しばらく戦力不足は否めんな。
 あとはあのサムライ風の男から奪ったこの刀だけか。
 そういえば、何だったんだアイツ?首輪には7が三つ並んだ外人とか書いてあったが……」

地面に置いている、羆殺しを手に入れたおかげでイマイチ影が薄い物干し竿の様に長大な刀、
「正宗」(仮)を見つめて当時の様子を回想する。


㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹㈹


「……余を謀ったつもりか?愚かなり日本人よ」

温泉の麓で座禅を組んでいる首輪を嵌められたSCP-777-J漆黒の刃<ダークブレイド>は
湖の様な美しい温泉を眺めながら不敵な笑みを浮かべた。
あの男、Dr.アリトミが何かの実験に利用する為に自分を連れてきたのは
話しかけられた時点で既に分かっていたことだった。
水を操る能力と超常的な剣術を誇るため完全に無敵のブレイドが実験を潰すことなど
容易い事だがあえてこの茶番に付き合っているのは<定め>に従っているからに過ぎない。

「――――グルルルッッッ」
「ん?早速誰か来たようだな」

地の臭いを漂わせながら、一匹のヒグマがブレイドの傍に近づいてきた。
そのヒグマはヒグマと呼ぶには余りに細身でまるで人間の様に漆黒のスーツを身に付けている。
ブレイドは立ち上がって刀を構えた。

「―――SCP-2875 The Town That Got Fucked By Bears (熊に侵された町)。
 ウィスコンシン州の町、×××××でのみ発生している現象。
 3日おきの正午ごとに、50~100頭の成熟したUrsus arctos horribilis(ハイイログマ)の成獣が、
 町の至る所に出現。これらの個体は異常な耐久力・移動速度・敵対心を持つわけではないが
 累積し無限に増殖することから、放置すると世界が滅亡する恐れがあるSCP、Keterクラスに
 カテゴライズされている。そうか、あれはあの男の仕業か。そしてこれが完成形というわけか」

ブレイドは温泉から水を吸出しアタックシールドを全身に纏う。
3.4ギガトンの核爆発に耐え、通常ダメージはおろか同調的マインドコントロール精神子ダメージ
(幸福ダメージ、別名幸福へのダメージ)をも逸らせる最強の盾を壊せる者はいない。
そして財団の捕獲したSCP中でも絶大な耐久力を誇っていたアベルと不死身の爬虫類を
一撃で切り捨てた最強の矛である漆黒の刀から繰り出される超絶剣技の前に敵はいない。

「グルルルルッッッ!!!」
「ふっ……抜刀!」

ブレイドが刀を振り抜いた瞬間、スーツを着たヒグマが突然視界から消滅した。


「え?」
「―――――グルルルル」

いつの間にかブレイドの目と鼻の先まで肉薄していたヒグマはブレイドの右腕を
水の盾ごと握っており、そのまま力を込めてぐしゃりと鈍い音と共にブレイドの
上腕を強靭な握力で握り潰して引き千切った。漆黒の刀が腕ごと地面に堕ちる。

「な、なんだと!?」
「―――――グルルル!!!!」

精神状態に呼応したアタックシールドがただの水に戻ってしまう程の
衝撃を受けたブレイドは叫んだ。

「貴様!?並のSCPではないな!もしや収納が無意味とされるApollyonクラス―――」
「―――――グルルル?」

コークスクリュー気味に放ったボディブローが決まって胴体を貫かれたブレイドが
盛大に血を吐いたと同時に横なぎに振り払われたヒグマの鍵爪が頭部を吹き飛ばし、
SCP-777-J漆黒の刃<ダークブレイド>は<定め>を果たすことなくその生涯に幕を閉じた。

「――――――グロォォォォォォォォ――――――。」


全身がさらに血まみれになった穴持たず№13、通称ヒグマン子爵は足元に転がる
銀髪のイケメン剣士のバラバラになった惨殺死体を食い散らかし始めた。


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「……うーん、酒で酔っぱらっててあんまし覚えてないけど印象が薄いなぁ。
 まぁ、あいつに比べたらまだ巴マミの方が強かったんじゃないかな?」

大体、人間が日本刀でヒグマに挑むなど不可能に近いのだ。
獣相手に銃を使うのは卑怯ではない。人間は銃を手にして始めて獣と対等になれるのだから。
そう考えると巴マミの全方位にライフルを張り巡らせた結界はなかなかいい線行ってた気がする。

「仕方がない、相手が悪かったな。さて、せっかくだからコイツも洗ってやるか」

そう言いながらサムライ風の男から奪った刀を温泉に浸からせて血糊を洗うことにしたヒグマン子爵。
漆黒に輝く刀身を温泉に浸らせたその時、奇妙な現象が起こった

「………おや?」

湖の様な温泉の水位が見る見るうちに下がっていく。漆黒の刀身に吸い寄せられているのだ。

「こいつ、水を飲むのか?始めて知ったぞ」

気が付くと、温泉は全てのお湯を吸い尽くされ、目の前に広大な岩盤の空き地が出来上がっていた。
ヒグマン子爵は煌めく刀を手にし、何を思ったか乾いた森に向けて刀身を振り抜く。
しばらくの間を置いた後、森の樹木が次々と倒れ始めた。
刀の先からウォーターカッターの様に発射された温水が広範囲に破壊を招いたのだ。


「………こんな力があったのか?うーむ、実は結構強かったのかもしれんなあの男。
 もう殺してしまったし、名前も分からんから今更どうでもいいことなんだが」

灯台下暗しというか思わぬ戦力が手に入ったヒグマン子爵は漆黒の刀を右手、羆殺しを左手に
配置した攻撃と防御同時に行える二刀流の構えを取って立ち上がり、その場を後にした。


【H-5 かつて温泉があった空き地 午後】


【ヒグマン子爵(穴持たず13)】
状態:健康、それなりに満腹
装備:羆殺し、正宗@SCP Foundation
道具:無し
基本思考:獲物を探しつつ、第四勢力を中心に敵を各個撃破する
0:撤退だ。
1:狙いやすい新たな獲物を探す
2:どう考えても、最も狩りに邪魔なのは、機械を操っている勢力なのだが……。
3:黒騎れいを襲っていた最中に現れたあの男は一体……。
4:この自失奴を助けてやったのはいいが、足手まといになるようなら見捨てねばならんな。
5:『血の神』は手に余る。誰か他の奴が相手してくれ。
[備考]
※細身で白眼の凶暴なヒグマです
※宝具「羆殺し」の切っ先は全てを喰らう
※何らかの能力を有していますが、積極的に使いたくはないようです。


【SCP-777-J-2「正宗」@SCP Foundation】

アメリカのSCP財団に著作権料を支払うのを嫌がった有冨春樹が「7を三つ並べた外人」といった
適当な名称で参加者登録していたSCP-777-J(漆黒の剣)が所有していた伝説の名刀です。
水分を吸い取ることでアタックシールドを攻撃に転じたウォーターカッター「水の矛」を
刀から発射できるようになります。核攻撃でも死なない不死身のトカゲを両断する程の切れ味ですが
大量の水を消費する仕様上、連発出来る回数は限られてるので使いどころに注意しましょう。

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最終更新:2016年02月02日 12:38