――きゅうしゅうのおへそ くまもと
――おへその上でピタッと新幹線
――くすぐったいけど うれしいな
――北へ南へ ひとっとび
――だもん♪ だもん♪

 歌に合わせて真っ赤なものが、そこここあたりに飛び散った。

――東にぶらっと あそで あそんで
――西のあまくさ みちくさドライブ
――ど~かい? ど~かい?
――まうごつ スゴかけ~ん!

――サプライズ!!

 高岳、中岳、根子岳、烏帽子岳、杵島岳。
 天門橋、大矢野橋、中の橋、前島橋、松島橋。
 山が砕く。橋が砕く。


――モン! モン! モン! くまモン
――くまもとサプライズ
――モン! モン! モン! くまモン
――くまもとサプライズ
――くまもとがだいすきでヨカッタ!


 驚く敵を熊が砕く。


――きゅうしゅうのおへそ くまもと
――おへその上でピタッと新幹線
――じまんしたいこと たくさん
――だからあそびに きてほしい~ん
――だもん♪ だもん♪

 歌に合わせておののく敵に、熊の爪牙は鋭さを増す。

――はちべえトマトに ひなぐのちくわ
――ガメがまいおどる みょうげんまつり
――ど~ぎゃん やっちろ
――ごろっと スゴかば~い!

――サプライズ!!

 ぼした、ぼした、滅ぼした。どうかいどうかい追うたった。
 龍亀が舞えば炎が踊る、弥栄さっさと馬が蹴る。
 敵みな祭りの舌の上。


――ファイヤー ファイヤー
――くまもとファイヤー
――火の国肥後もっこす
――もっこす もっこす 肥後もっこす
――ファイヤー ファイヤー
――くまもとファイヤー
――ダイスキ くまもと!!
――もっと もっと もっともっと
――ダイスキ くまもと!!
――ドーカイ ドーカイ
――追うたー 追うたー
――ドーカイ ドーカイ
――さぁーっ さぁーっ さぁーっ
――さぁーっ さぁーっ さぁーっ
――いやっさー!!

――くまもとがだいすきでヨカッタ!


 工場覆う炎の渦は、熊に隈々行き狂い、敵の叢々舐め尽す。
 離合の隙も与えずに、残す敵ならあと一人。


――はい おしまい
――あとぜき


【101人の二代目浅倉威@仮面ライダー龍騎 全滅】


    卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍


「待て待て待て待て! 私だくまモン! キリカだ!!」


 くまモンの拳は、悲鳴と共に一人の少女に受け止められていた。
 彼女の声に、くまモンはハッと意識を取り戻す。
 彼が咄嗟にその拳の勢いを緩めなければ、彼女は受け止めていた両腕ごと砕け散っていただろう。


「いや、凄かったね。獅子奮迅? 一騎当千?
 あれだけ苦戦してた男どもを一瞬で抹殺するんだから。ゆるキャラってみんなそんなに強いのか?」


 キリカ。呉キリカ
 その名前は、確かに同行していた少女のものだ。
 彼女は魂だけの状態となっており、今はただ指輪の中にいるだけの存在だったはずだ。
 しかしくまモンの前には今、裸の幼い少女が不敵な表情を浮かべて立っている。

 長くクセのある茶髪、鋭い眼光。幼女ながら筋肉質の体躯。
 本当にこの幼女が呉キリカだと言うのか?
 それよりも、今までくまモンが殺してきた浅倉威という男にはるかに良く似ている――。

「おっと、疑問に思うのは当然だ。だが今は那珂の手当てをしよう。気をしっかり持て! まだ生きてるんだぞキミは!」
「う、うう……、お腹痛い……。のど乾いた……」


 瞠目するくまモンの前で幼女は、地面に倒れている艦娘の那珂ちゃんを助け起こし、彼女の汗を拭う。
 那珂ちゃんは頬もこけ、下腹部が大きく張り裂け、子宮や腸管が外に飛び出している酸鼻な状態ではあったが、確かに息があった。
 慌ててくまモンは支給品から水のボトルを取り出して彼女に差し出す。


 ――どういうことだモン、これは……!?
「今の私は、ここで死んでる男どもと那珂の間に生まれた娘だ。
 魂だけの私が、こいつの精をのっとったのさ。それで、成長しきる前に外に出てきて那珂へのダメージが最小限になるようにした。
 内側からの帝王切開みたいなものさ。出てくるときも内臓を傷つけないように気を遣ったんだよ?
 それに、染色体がXXになるようにいじくってやったしな。ざまあみろだ」

 呉キリカの説明によれば、那珂ちゃんの肉体から抜けた彼女の魂は、那珂ちゃんの胎内に侵入した浅倉威の精にその意思を乗り移らせたのだと言う。
 そして数ある精の中からX染色体を持つものを選んで受胎させ、那珂ちゃんの生命力を奪い尽す前に、幼い状態で子宮を綺麗に裂いて出てきた。
 このために、那珂ちゃんは最悪の事態に陥らずに済み、キリカは新たな肉体を確保することもできた。

 あえてキリカが那珂への助力を放棄したのも、始めからこうした計算があってのことだったのだ。


「まあ、こういう経験も、無限の中の有限にすぎない。ここが崩れる前に傷口を塞いで抜け出そう」
「苦しかったけど、産んだのがキリカ先生で良かった……」


 水を飲んで多少人心地を取り戻した那珂ちゃんの様子に安堵すると、くまモンには、途端に周囲の光景が迫ってくるように見えた。

 ――ボクは、一体……。

 崩壊しかけている擬似メルトダウナー工場は、壁面や天井を含め、もはや全てが炎に巻かれていたはずだった。
 しかしその炎はほとんど下火となり、黒く焼け焦げた壁がそこここでくすぶっているのみとなっている。
 そしてそこに散在しているのは、無惨にもミディアムレアのハンバーグのような肉塊と化した十数人の男たちの死体だった。

 ことの顛末は明らかだった。
 これはくまモンが、工場を覆っていた炎すら逆巻くほどの勢いで、この浅倉威という男たちを鏖殺したという明らかな証拠だった。
 くまモンは、背中に大きな穴を開けたメロン熊の死体の前で崩れ落ちた。

 ――ボクは、ゆるキャラだった、はずなのに……。

 キリカと那珂ちゃんの無事を喜ぶよりも、くまモンには、自分が怒りに任せ行なった殺戮劇を信じられず、呆然とするほかなかった。


    卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍


 だが事態は、彼に鬱屈としている時間も与えてはくれなかった。
 その時、那珂ちゃんの治療をしていたキリカの様子がにわかにおかしくなる。
 彼女は突然、頭を抱えて呻きだしていた。


「こ、こいつ、どういう魂してるんだ……!? だ、ダメだ、追い出される! 那珂、ソウルジェム頼む!!」
「え……!? あう……!?」

 キリカは苦悶の表情を浮かべながら指輪を外し、辛うじて内臓が収まって傷が薄皮で塞がれただけの那珂に放り投げる。
 如何な魂だけの魔法少女といえど、他人の肉体に入って操縦するには、その力は弱い。
 だがキリカは、あえて意識を持つ前の胎児から自分の魂を入れておくことで、その肉体の操縦権を完全に得たつもりだった。

 それでもなお、そこには誤算があった。
 当然、肉体の操縦権が最も強いのは、その肉体の『本人』の魂に他ならなかった。

 彼女の腹部には、虚空からカードケースのようなものが生じていた。
 そして見る間にそれはベルトのバックルとして固定され、彼女は紫色のライダースーツに包まれる。
 顔を上げた彼女の、茶髪の奥に覗く瞳には、既にあの男の狂気が宿っていた。


「グッハッハッハッハァ――!!」


 立ち上がった幼女が、弾けるように雄たけびを上げた。

「アッハ、可笑しいぜ、まさか俺が女になるなんてな!」

 鈴を振るような可愛らしい声で、その幼女――となった浅倉威――は非常に下卑た口調の嘲りを振り撒く。


「だが、女は生物学的に男よりも強いなんて話も聞くじゃねえか。寿命も長げえしよ……。
 つまり俺は、生物としてより完璧なものに……、『穴持たず』に近付いたってことじゃねえのかァ!?」

 事態を飲み込み切れずに呆然としたままのくまモンと那珂ちゃんを睥睨し、幼女の彼は高らかに叫ぶ。


「ありがとよテメェら! 今までにないくらい清々しい気分だぜ!」


 幼女は、工場の入り口の方へ跳び退りながら、ベルトのバックルから一枚のカードを取り出して噛みついていた。
 ――ユナイトベント。
 そんな機械音声がどこからともなく響くと同時に、上空から何か轟音が響き渡ってくる。


「獣艇・ジェノドレッドサバイバー!」
「うわ、あああああああぁぁぁぁ――!?」


 崩落した工場の天井を仰いだ那珂ちゃんとくまモンの視野は、夜闇の迫り来る空から落下してくる異形の怪物の姿で埋まる。
 それは今まで浅倉威に捕食された数多のヒグマや機械が、粘土細工のように捏ね合わされ融合し巨大な艦艇のようになった化物だった。
 呻きと慟哭に蠢く巨大戦艦に押し潰され、くまモンたちのいた工場は一瞬にして瓦礫と化した。


    卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍


「ホルモンとかいうヤツの違いなのか……。よく解らんが、この体はイイ。全然イライラしねぇ。気分スッキリだぜ」


 浅倉威は、壊滅した工場を振り返ることも無く、砕け飛んだガラス片に己を映して、虚空から大型のバイクを取り出して跨っていた。

 一度は100を越える意識に分裂した浅倉威の存在も、もはやここにいる女体化した自分一人であることを、彼は認識していた。
 ミズクマの性質を用いて、精を飛び道具のように攻撃に用いる手法ももはや使えまい。
 体力も、成人男性だった以前から比べると大きく劣っている。
 しかし彼は、そんなデメリットを埋めて余りある充足感を覚えていた。


「食欲も大して湧かねえ。睡眠欲もまだ出ねえ。あとあるのは闘争欲と、アレくらいなもんだ……!」


 紫色の魔法少女衣装をたなびかせ、幼い顔が映すのは獣の笑顔だ。


「ククク、この体で武田のところに行ってみるか。まさかあの弓矢女との戦いで死んじゃいねぇだろう。
 反応が楽しみだぜ!」


 肉体年齢相応のイタズラ心と、三つ子の魂からの凶暴性を抱えて、幼女の彼はフルスロットルでバイクを走らせるのだった。


【D-6 街/夕方】


【浅倉威子(三代目浅倉威)@仮面ライダー龍騎、艦隊これくしょん、魔法少女おりこ☆マギカ、ヒグマ・ロワイアル
状態:ヒグマモンスター、女性、艦娘、魔法少女
装備:ソウルジェム(濁り:極小)@魔法少女おりこ☆マギカ
道具:なし
基本思考:本能を満たす
0:女の体になってイライラがなくなったぜ! 今までで最高の気分かも知れねぇ!
1:とりあえず、一番ウマの合った武田観柳を探すとするか。
[備考]
※ミズクマの力を手にいれた浅倉威が分裂して出来た複製が単為生殖した二代目浅倉威と那珂ちゃんから生まれた三代目です。
※呉キリカの干渉により染色体がXXとなり、成熟も中断されたために、幼女の肉体です。
※呉キリカと那珂ちゃんの性質を受けたために、魔法少女・艦娘になりました。
※固有武器はカード、固有魔法は『ミラーモンスターの使役』です。
※ソウルジェムはカードデッキ型。魔法少女衣装のベルトのバックルとなっています。
※その性質上、本来の仮面ライダーの状態と遜色ない戦闘が可能です。
※契約モンスターは、今まで捕食したヒグマや艦娘関連の兵器が融合した『獣艇・ジェノドレッドサバイバー』とされる存在のようです。


    卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍


 ――前島……、橋……。

 崩壊した工場から、獣艇・ジェノドレッドサバイバーの巨体が消失した時、その瓦礫の縁ギリギリのところに、くまモンの黒い体があった。
 両腕に、メロン熊と那珂ちゃんの体を抱えて、彼は工場が大破する寸前に、その下を全速力で駆け抜けていたのだった。

 だが彼には、それだけで精一杯だった。
 肩で息をするくまモンは、メロン熊と那珂ちゃんを地に横たえると、そのままバタリと倒れ込む。
 疲労と絶望で、もはや動けなかった。


「ありがとう……、くまモンさん……」
 ――いや、ボクは、何もできなかったモン……。バッテリーも回収できず、ただヒトを殺してしまっただけ……。


 見晴らせば、辺りには彼ら以外、動く生物などいない。
 ただ入り口付近にあった業務用巨大ブロアのプロペラが、彼らと同じように衝撃で飛ばされ、からからと虚無的に風を受けて回っているのみだ。

 ゆるキャラとしての矜持が、くまモンの中では根こそぎ瓦解していた。
 那珂ちゃんが出産後の疲弊を押して紡ぐ感謝も、ただ彼の耳を上滑りするだけだった。


 ――ゆるキャラとして、何も人助けできなかった。仲間さえ、助けられなかった! ボクが、ヒグマでさえなければ――!
「やめて……! くまモンさんが、強いヒグマだったからこそ、那珂ちゃんたちは生きてる……!」


 自責に悶える彼の手を、那珂ちゃんは必死に掴んだ。
 その思わぬ強い力に、くまモンはハッとする。

「全てをこの手に掴むことなんてできない。でも、掴める手は、みんな連れていけるでしょ……?
 出来るだけを、持って帰れば良い。きっと高級技官殿が、策を見つけてくれる……!
 帰ろう。みんなで帰ろう、くまモンさん……! 電信の空に、きっと明星は輝くはずだから……!」
 ――帰、る……。


 それから、那珂ちゃんが一縷の望みを託して、再び『ヒグマ島希望放送(HHH)』に電信を繋ぎ始めるまで、くまモンの瞳はずっと、虚空をかき混ぜるプロペラの回転を見ていた。


【D-6 擬似メルトダウナー工場/夕方】


【くまモン@ゆるキャラ、穴持たず】
状態:疲労(大)、頬に傷、胸に裂傷(布で巻いている)、絶望感
装備:なし
道具:基本支給品、ランダム支給品0~1、スレッジハンマー@現実 、メロン熊の遺体
基本思考:この会場にいる自分以外の全ての『ヒグマ』、特に『穴持たず』を全て殺す
0:――ボクは、人間を、殺してしまった……。
1:メロン熊……!!
2:クマー……、キミの死を無駄にはしないモン。
3:他の生きている参加者と合流したいモン。
4:ニンゲンを殺している者は、とりあえず発見し次第殺す
5:会場のニンゲン、引いてはこの国に、生き残ってほしい。
6:なぜか自分にも参加者と同じく支給品が渡されたので、参加者に紛れてみる
7:ボクも結局『ヒグマ』ではあるんだモンなぁ……。どぎゃんしよう……。
8:あの少女、黒木智子ちゃんは無事かな……。放送で呼ばれてたけど。
9:敵の機械の性能は半端ではないモン……。
[備考]
※ヒグマです。
※左の頬に、ヒグマ細胞破壊プログラムの爪で癒えない傷をつけられました。


【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
状態:ソウルジェムのみ
装備:ソウルジェム(濁り:大)@魔法少女おりこ☆マギカ
道具:なし
基本思考:今は恩人である夢原のぞみに恩返しをする。
0:すまない……、まさかあの体が奪い返されるとは……。
1:この那珂ちゃんって女含め、ここらへんのヤツはみんな素晴らしくバカだな。思わず見習いたくなるよ。
2:恩返しをする為にものぞみと一緒に戦い、ちびクマ達ともども参加者を確保する。
3:ただし、もしも織莉子がこの殺し合いの場にいたら織莉子の為だけに戦う。
4:戦力が揃わないことにはヒグマ帝国に向かうのは自殺行為だな……。
5:ヒグマの上位連中や敵の黒幕は、魔女か化け物かなんかだろ!?
[備考]
※参戦時期は不明です。


【那珂・改(自己改造)@艦隊これくしょん】
状態:全身の養分を吸われている、自己改造、額に裂傷、全身に細かな切り傷、左の内股に裂傷(布で巻いている)、呉式牙号型舞踏術研修中、帝王切開(応急処置済み)
装備:呉キリカのソウルジェム
道具:探照灯マイク(鏡像)@那珂・改二、白い貝殻の小さなイヤリング@ヒグマ帝国、白い貝殻の小さなイヤリング(鏡像)@ヒグマ帝国
基本思考:アイドルであり、アイドルとなる
0:きつい、つらい、くるしい、のどかわいた……。
1:艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ!
2:お仕事がないなら、自分で取ってくるもの!
3:ヒグマ提督やイソマちゃんやクマーさんたちが信じてくれた私の『アイドル』に、応えるんだ!
[備考]
※白い貝殻の小さなイヤリング@ヒグマ帝国は、ただの貝殻で作られていますが、あまりに完全なフラクタル構造を成しているため、黄金・無限の回転を簡単に発生させることができます。
※生産資材にヒグマを使ってるためかどうか定かではありませんが、『運』が途轍もない値になっているようです。
※新たなダンスステップ:『呉式牙号型鬼瞰砲』を習得しました。
※呉キリカの精神が乗艦している際は、通常の装備ステータスとは別に『九八式水上偵察機(夜偵)』相当のステータス補正を得るようです。
御坂美琴の精神が乗艦している際は、通常の装備ステータスとは別に『熟練見張員』相当のステータス補正を得るようです。


    卍卍卍卍卍卍卍卍卍卍


「瑞、鶴……。もう、後戻りができないところまで狂ってるみたいね……」
「いや、艦娘というのが彼女のような者ばかりでなくてよかった……。だが、この調子だと帝国はもうダメかもわからないね……」
「凛ちゃんのためのステージだったはずなのに……、そんな魔改造されてるのかよ……」

 その頃、島の西端、ヒグマ島希望放送の放送室では、瑞鶴の航空部隊に追われていた安室嶺が回収され、一同と情報交換を行なっていた。
 彼がすんなりとこの放送室にいた参加者たちとお互いに受け入れ合えたのは、誇張表現でなく、顔見知りであったクックロビンの存在が大きい。
 彼が同行していたという事実が、ある程度の信用をお互いに与えていたのだ。

 そこで話された話題は、現在のヒグマ帝国の状況と、安室が地上をパトロールした際の大まかな現状、および主だった戦闘についてだった。
 ここまで彼が話す気になったのは、ヒグマ帝国の裏で暗躍していたという『モノクマ』および『江ノ島盾子』という者の情報を御坂美琴たちから得られたためである。
 彼女に対抗し、島の生命を、人間・ヒグマの区別なく救おうとしているというこの放送局の理念は、安室には感じ入るものがあった。


「とにかく、こうした事態を全島に知らせるためにも、今、私達は電力を探しているんです。
 安室さんは、どこかにそうした電気のありそうな場所、知りませんか?」
「いやぁ……。乗ってた飛行機が無事だったら少しは足しになったかもしれないけどね。あいにく……」

 初春飾利が、そうしてくまモンと呉キリカ、那珂ちゃんをバッテリー探索行に送り出している事情を説明していた。
 全島放送のための電力を得る方策を安室にも問うてみるが、彼にも心当たりは無い。


「……だけど、ここって、HIGUMAの野球場の下なんだよな? ここ、電光掲示板があったんじゃなかったか? ソーラーの」


 しかし、一同が落胆しかけた刹那、彼はぽろりとそんな言葉を口にする。
 その一言で、夢原のぞみがハッと顔を上げた。


「そうだ、美琴ちゃん! 私がマナちゃんとの戦いの時、電光掲示板にぶつかったの覚えてる!?」
「あ……」


 ゴシックロリータの衣装と包帯に包まれ瞑目していた御坂美琴も、閃光のようにその記憶をフラッシュバックさせる。
 相田マナ――『H』という存在に改造されていた彼女によって、キュアドリームが電光掲示板に叩き付けられた時、確かに彼女は、ショートした電線によって感電していた。
 美琴は跳ね起きる。


「そうだ! あの掲示板はソーラー式だった! パネルと、地下に充電池があるんだわ!!」


 傷の痛みも消し飛んだかのように、彼女はガッツポーズを作って顔をほころばさせる。
 灯台下暗しとはこのことか。
 求めていたバッテリーが、電力消耗がされている可能性はあれど、こんな近くに存在しているということがわかったのだ。
 流石に今からソーラーでの充電は期待できないが、代替の手段などいくらでもある。


「それに、あとはダイナモかモーターになるものさえあれば発電ができるわ!」
「人力……、ならぬヒグマ力発電か!」
「おいおいそれ私の得意分野よ? ソロモンでやりまくったわ」
「自転車! HIGUMAに自転車の残骸ならあったはずだよ!」


 彼女の興奮が伝染したように、安室、天津風、クックロビンというヒグマたちもにわかに活気立つ。
 そして興奮のさなか、さらに美琴には朗報が飛び込んでくる。

「あれ……!? 那珂さん!? 那珂さんなのね!? こちら御坂美琴!
 聞こえる、聞こえるよ、ノイズじゃなく!!」


 瑞鶴に妨害されていた通信が復旧し、那珂ちゃんからの電信が脳内に届いたのだ。
 それはすなわち、屹立していた瑞鶴の牙城が、志を同じくするであろう何者かに打ち破られたことと、くまモンや那珂ちゃん、キリカたちが無事だったことを示す証拠に他ならなかった。


「大丈夫、大丈夫よ! バッテリーがなくても、あなたたちが無事だったこと以上の収穫なんかないわ……!
 持って帰ってくる物品は、本当に目につくものがあればでいいから! プロペラ……?」


 通話口で喋りながら、感涙まで流し始めた御坂美琴の表情は、それからさらに輝いた。
 くまモンたちが持って帰ってくるというその物品の存在だ、今の彼女には本当に心強く思えたのだ。


「――ああ、大丈夫よ。タービンが回るわ!!」


 その賢者のプロペラは、きっと無音の稲妻を起こすことだろう。


【A-5 滝の近く(『HIGUMA:中央部の城跡』)/夕方】


【穴持たず56(安室嶺)】
状態:健康
装備:なし
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ、行きまーす。
0:ガンダムを食らいヒグマの意志を奪うあのメスのような危険な人間は、排除しなくては……!
1:海上をパトロールし、周辺の空中を通るヒグマと研究員以外の生命体は、全て殺滅する。
2:攻撃を加えてくるようであれば、ヒグマのようであっても敵とみなす。
3:唯ちゃん……、もう君のような死者を出したくはない……!
4:墜としてしまった飛行機乗りのヒグマたちよ、君たちを惑わせたあのメスは、いつか必ず殺してあげるからな……!
5:地下で異変が起こっているのは、ある程度真実のようだな……。
[備考]
※シバから『コロポックルヒグマ』と呼ばれる程の、十数センチほどしかない体長をしています。
※オーバーボディなどの取り巻く物体を念動力で動かす能力を有しています。
※シバから『熟練搭乗員』と呼ばれるほどに、様々な機体の操作に精通しています。
※シバに干渉されていたため、第二回放送前あたりまでのヒグマ帝国の状況は認知しているでしょう。


【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】
状態:能力低下(小)、ダメージ(中)、疲労(大)、左手掌開放骨折・左肩関節部開放骨折(布で巻いている)
装備:ゴシックロリータの衣装、伊知郎のスマホ、宝具『八木・宇田アンテナ』
道具:ペットボトル、お粥
[思考・状況]
基本思考:友達を救出する
0:ありがとう! これで、放送が、できる!!
1:よかった……、初春さんを助けられて……。
2:島内放送のジャック、及び生存者の誘導を試みる
3:完全武装の放送局、発足よ……! 絶対にみんなを救い出す……!!
4:佐天さんは無事かな……?
5:相田さん……、今度は躊躇わないわよ。絶対に、『救ってあげる』。
6:黒子……無事でいなさいよね。
7:布束さんも何とかして救出しなきゃ。
[備考]
※超出力のレールガン、大気圏突入、津波内での生存、そこからの脱出で、疲労により演算能力が低下していましたが、かなり回復してきました。
※『超旋磁砲(コイルガン)』、『天網雅楽(スカイセンサー)』、『只管楽砲(チューブラ・ヘルツ)』、『山爬美振弾』などの能力運用方法を開発しています。
※『天網雅楽(スカイセンサー)』と『只管楽砲(チューブラ・ヘルツ)』の起動には、宝具『八木・宇田アンテナ』と、放送室の機材が必要です。
※『只管楽砲(チューブラ・ヘルツ)』は、美琴が起動した際の電力量と、相手への照射時間によって殺傷力が変動します。数秒分の蓄電では、相手の皮膚表面に激しい熱感を与える程度に留まりますが、『天網雅楽(スカイセンサー)』を発動している状態であっても、数分間の蓄電量を数秒間相手に照射しきれば、生体の細胞・回路の基盤などは破壊しつくされるでしょう。


【夢原のぞみ@Yes! プリキュア5 GoGo!】
状態:ダメージ(中)、疲労(小)、右脚に童子斬りの貫通創・右掌に刺突創・背部に裂傷(布で巻いている)
装備:キュアモ@Yes! プリキュア5 GoGo!
道具:ドライバーセット、キリカのぬいぐるみ@魔法少女おりこ☆マギカ、首輪の設計図
基本思考:殺し合いを止めて元の世界に帰る。
0:やっぱり、電力だってなんとかなるなる! これからもうひと踏ん張り、頑張るぞ~!!
1:みんなに事実を知らせて、集めて、夢中にして、絶対に帰るんだ……! けって~い!
2:参加者の人たちを探して首輪を外し、ヒグマ帝国のことを教えて協力してもらう。
3:ヒグマさんの中にも、いい人たちはいるもん! わかりあえるよ!
4:マナちゃんの心、絶対諦めないよ!!
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3 終了後からの参戦です。(New Stageシリーズの出来事も経験しているかもしれません)


【クックロビン(穴持たず96)@穴持たず】
状態:四肢全ての爪を折られている、牙をへし折られている
装備:なし
道具:なし
基本思考:アイドルのファンになる
0:アイドルを応援する。
1:御坂美琴主催の放送局を支援し、その時ついでにできたらシバさん達に状況報告する。
2:凛ちゃんに、面と向かって会えるような自分になった上で、会いたい。
3:クマーさん、コシミズさん、見ていてくれ……。
4:くまモンさんの拷問コワイ。実際コワイ。
[備考]
※穴持たずカーペンターズの最後の一匹です
※B-8に新築されていた、星空凛を題材にしたテーマパーク「星空スタジオ・イン・ヒグマアイランド」は
 バーサーカーから伸びた童子斬りの根によって開園する前に崩壊しました。


【天津風・改(自己改造)@艦隊これくしょん】
状態:下半身轢断(自分の服とガーターベルトで留めている)、キラキラ
装備:連装砲くん、強化型艦本式缶、ゴシックロリータの衣装
道具:百貨店のデイパック(ペットボトル飲料(500ml)×2本、救急セット、タオル、血糊、41cm連装砲×2、九一式徹甲弾、零式水上観測機、MG34機関銃(ドラムマガジンに50/50発、予備弾薬なし))
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ提督を守る
0:風は吹いているわよ。この先にも進めるはずだわ。
1:あなたも狂ったか瑞鶴。しょうがないわ。こういう縁もあるのよね。
2:ヒグマ提督は、きっとこれで、矯正される……。
3:風を吹かせてやるわよ……金剛……。
4:佐天さん、皇さん……、みんなきちんと目的地に辿り着きなさい……!!
5:大和、あんたに一体何が……!? 地下も思った以上にやばくなってそうね……。
6:あの女が初春さんをこれだけ危険視する理由は何だ……?
[備考]
※ヒグマ帝国が建造した艦娘です
※生産資材にヒグマを使った為、耐久・装甲・最大消費量(燃費)が大きく向上しているようです。
※史実通り、胴体が半分に捻じ切れたままでも一週間以上は問題なく活動可能です。


【初春飾利@とある科学の超電磁砲】
状態:鼻軟骨骨折、血塗れ、こうげき6段階上昇、ぼうぎょ6段階上昇
装備:叉鬼山刀『フクロナガサ8寸』、腕章
道具:デイパック(飲料水、地図、洗髪剤、石鹸、タオル)、研究所職員のノートパソコン
[思考・状況]
基本思考:できる限り参加者を助け、思いを継ぎ、江ノ島盾子を消却し尽した上で会場から脱出する
0:那珂さん、呉さん、くまモンさん、無事だったんですね……!
1:……必ず。こんなひどい戦争は、終わらせてやります。江ノ島盾子さん……!!
2:ヒグマという存在は、私たちと同質のものではないの……?
3:佐天さんの辛さは、全部受け止めますから、一緒にいてください。
4:パッチールさん……、みんな、どうか……。
5:皇さんについていき、その姿勢を見習いたい。
6:有冨さん、ご冥福をお祈りいたします。
7:布束さんとどうにか連絡をとりたいなぁ……。
[備考]
※佐天に『定温保存(サーマルハンド)』を用いることで、佐天の熱量吸収上限を引き上げることができます。
※ノートパソコンに、『行動方針メモ』、『とあるモノクマの記録映像』、『対江ノ島盾子用駆除プログラム』が保存されています。

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最終更新:2017年10月15日 13:36