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「あなた、見違えたわね、佐倉杏子……。まるで、『究極生命体』とでも言った方が良いような力を感じるわ」
「……どうだかね。そういうアンタも、まるで『神様』みたいなとんでもない魔力してんじゃん。
 あとマミさんも。どしたんそのでっかいハサミ。武器とか衣装まで変わるような事態って、そうコロコロあるもんか?」
「……この島にいたら、嫌でもそういう事態ばかりだったわよ。そう思うでしょう? あなたも」

 ラマッタクペを斃し、刺し違えたフェルナンドを悼む佐倉杏子たちと、暁美ほむらの一行はぽつぽつと情報交換を始めていた。
 この島での出会いと別れの数々、戦いに継ぐ戦いの数々をざっくりと伝えあい、これからの方針を練ろうとする。

「皆さん、良かったらこのお茶を飲んで。魔力をたっぷり含んでるから、体力も回復できるはずだわ」
「よし、ジブリール、一緒に患者さんに配って!」
「は、はい、レムちゃん!」
「凛も手伝うにゃ!」
「ああ、だったらアタシのデイパックから適当に茶菓子出してくれ。アタシのもだいぶ魔力を込めてる」
「本当か……! 助かる!」
「マタ合流できて本当に良かっタデス……。ナイトたちまで死んダのハとても辛いデスガ……」

 その最中、四元数環の世界で球磨から託された熱い緑茶を、ゴーレム提督とジブリールと星空凛と手分けし、巴マミが一向に振る舞う。
 杏子のアルター能力で生成したたい焼きやクッキーとは、最高の取り合わせだった。
 雪が降り始め、一気に冷え込みだした夜に、活力を取り戻させるとてもありがたい小休止だ。
 中でも、常時魔力の枯渇しがちな魔術師である間桐雁夜や、その雁夜に魔力を渡して疲弊したビショップヒグマには、そのお茶はこの上ない補給だった。
 布束砥信も、傷ついていたヤイコを抱いてお茶を飲ませながら早急に移動を提案する。

「遺体を回収しておきましょう。この事態を引き起こした元凶、江ノ島盾子が活動しているなら、HIGUMAの死体を放置しておくと利用される可能性が高いわ。
 A-5を拠点にしているらしい御坂美琴とすぐに合流して、彼女に対する対策を立てましょう。
 彼女の企みが発動する前に、この島の生存者を、彼女の手から早急に逃がす必要があるわ」

 こんな戦いはまさに世界の終わり。外来語じゃハルマゲドンだ。
 ――私たち主催者側の人類なら、遥かな昔に堕落したし、天罰が下ったとしても甘んじて受け入れよう。
 だが、ただ実験で生み出されただけのヒグマたちや、連れてこられただけの参加者たちは違う。
 そんな心持ちで、布束は焦り語る。

「……黒幕がこの島に核兵器を打ち込んでくるから、それを止めるだけの力を我々に身に着けて欲しい、と、こちらのヒグマさんはそうおっしゃっていたのですよね?」

 その言葉に一番に反応したのは、アイちゃんとデデンネを抱えたまま思案していた、円亜久里だった。

「先ほどの私たちの魂を直接揺さぶるような攻撃も、きっとその力を目覚めさせるための彼なりの試練だったのでしょう」

 彼女は、潰れたラマッタクペの遺体を一瞥し、決意したように声を張った。

「皆様、私は円亜久里と申します。私と、ここにいるアイちゃんは、トランプ王国……、現在のトランプ共和国の、アン王女の存在の分け身ですわ。
 私は一度この島で死に、こちらにいる佐倉杏子さんの力で再び肉体を取り戻しましたの。
 島の外には、私と魂を分けた姉妹のような存在がおります。……もしかすると、私はこの島の事態を外に伝えられるかもしれませんわ」
「そんなことが本当にできるの?」
「ええ、この島の戦いは、もはや島内だけで解決できる問題ではないのでしょう。
 あの子……レジーナに話が伝われば、もう一度日本国の中枢部に掛け合い、更なる救援要請や核兵器の発射中止に持ち込むこともできると思いますわ」
「それが可能デシたら、ヒグマ帝国側としマシても是非お願いしたいデス……」
「本当、ヒグマとしても頼むわ」

 毅然とした態度の円亜久里の言葉に、ビショップとゴーレムも、軟体の体で頭を下げる。
 彼女の体を再構成した本人である佐倉杏子は、心配そうに言葉をかけた。

「亜久里……、良いのか? また魂だけになって」
「ええ。でもこのアイちゃんや……、デデンネさんは連れていけませんので、ギリギリまで残りたいとは思いますが。
 その時になりましたらどなたかにお願いしたいですわ」
「デネ……」
「きゅぴ~……」

 父親のようなヒグマだったフェルナンドを亡くしたばかりで、泣き疲れるデデンネとアイちゃんを、切ない表情で亜久里はあやす。
 子供らしからぬその様子が身につまされた布束は、進んで彼女の願いを聞き入れた。

「OK, I agree.いざとなったら、私が責任をもって引き受けるわ」
「わかりましたわ。よろしくお願いしますね、布束さん」

 腕にアイちゃんとデデンネを抱えた亜久里が、同じように腕にヤイコを抱える布束に、同様の母性を感じて顔をほころばせた。
 体が温まり、体力の戻ってきたヤイコが口を開く。

「……ヤイコはもう大丈夫です。ヒグマ帝国事務班として、ヤイコも先輩風をびゅーびゅー吹かせたいと思います」

 ヤイコはそうして布束の腕から降り、円亜久里から、同じ電気使いの動物としてシンパシーを感じるデデンネを受け取った。
 デデンネもその雰囲気を感じたのか、ほっぺをすり寄らせて懐く。
 デデンネをだっこしたヤイコが、アイちゃんをだっこする円亜久里の隣でふんぞり返る。
 『妹達(シスターズ)』の成長を見るようなその微笑ましい姿に、布束の目には涙が潤んだ。

「……先ほどの制裁さん方も、江ノ島盾子に改造されたのだと、ヤイコは推測します。モノクマという機械と、同質の素材でした」
「それを言うなら、どなたかを襲い殺したと放送された、『黒ずくめの衣服を纏った赤毛の少女』というのも気になりますわ。
 行方不明の相田マナさんも赤毛ですから。まさかあのキュアハートが、とは思いますが、彼女も黒幕になにかされた可能性もゼロじゃありません……」
「……そうね、佐倉杏子と夢原のぞみを除くなら、特徴に合致する参加者はもういないわ」
灰色熊さん、シーナーさんと、ヤイコが向かった、ここの地下の工房はダミーでした。
 もう、『彼の者』は別の本拠地で肉体を得て復活し、計画の準備を万全にしていることでしょう、とヤイコは確信します」

 話を聞いていた暁美ほむらが、ぱん、と手を打ち合わせ、ここまでの議論を総合する。

「わかった。懸念事項は多いけど、まずはここのご遺体たちを回収し、急いで生存者を集めて、放送のあったA-5に向かいましょう。
 黒幕……江ノ島盾子という奴が襲ってきたり、核ミサイルを撃ってくるかもしれないということに関しての対策は、行動しながら随時練る。
 時間もあまりないから。異論はないわね?」

 ラマッタクペとフェルナンドの遺体をマントの裏の結界の中に回収しながら語られるその方針に、その場の皆が頷く。
 おおよそそれがこの場で考えられる最善手に思えた。
 一行の様子を見回し、ほむらは杏子と目を合わせる。

「本当に、放送を聴いてすぐに来て良かった。これだけの人員が揃えば、四宮ひまわりを救い出せるかもしれないわ」
「ああ、アタシにもぜひ協力させてくれ。さっきの放送で言ってた黒騎れいって子の友達みたいだから」

 四宮ひまわりが埋まる総合病院跡は、A-5に向かう道すがらであった。
 この場の一行のほぼ全員の関心事である彼女の救出は、生存者集めの一番最初にすべきことだった。
 会話を静観していた龍田が、自分が最も適している人材であろうということを察し、その救出作戦に立候補する。

「ひまわりちゃんが生き埋めのままなのよね~? 場所がわかりさえすれば、サーヴァントとして力を得た私の宝具で、地下の岩盤まで一気に切り裂けるわ~」
「オーケー。龍田さんって言ったよな。探査なら任せな。アタシの感覚への魔法は相当強くなったんだぜ?」

 ランサーのサーヴァントとして間桐雁夜と契約した龍田には今、剪断力と狙撃性に優れた風の斬撃を放つ宝具、『勤此花乎、風尓莫落(ゆめこのはなを、かぜになちらし) 』がある。
 魔法少女たちの魔力も、先の総合病院での戦闘時とは比べ物にならない強化を受けている。
 佐倉杏子の感覚魔法で、四宮ひまわりの正確な位置座標さえ探知できれば、彼女を救助できるはずだった。

「皆さん、どうかひまわりちゃんをよろしくお願いします!」

 四宮ひまわりの友人として気が気でなかった田所恵が、深々と頭を下げる。
 めいめいが移動の準備をして動き始めた時、ふと気づいた間桐雁夜がほむらに尋ねる。

「そうだ、さっきの放送では、南の温泉にいる人たちがこっちに来てくれるみたいだったが、どうするんだ?」
キュゥべえが同行してるなら私たちの魔力を追ってこれるはずだわ。先に総合病院の方に行って作業しておきましょう」

 この暁美分隊の迅速な決断と行動は後に、『江ノ島盾子に、ラマッタクペの遺体を回収されなかった』という快挙を成し遂げた。
 だがそれは同時に、『武田観柳たちの一行が合流叶わずに壊滅する』という結末をもたらしたことを、彼女たちは知る由もなかった。


    ××××××××××


 そんなやり取りを経て、大集団となった一行は雪の降る月明かりの中、総合病院跡に急いでやってきた。

「ここの下よ。どうなってるかわかる?」
「もちろん!」

 崩れた病院の瓦礫の上で、佐倉杏子の裾から、赤い炎のようなイメージで魔力が周囲に噴き出る。
 一帯に浸透するその魔力は、彼女の周囲数十メートルの範囲の状況を克明に彼女の五感へフィードバックさせる。
 ――あの幻覚を使うヒグマがやっていたのも、こういうことなんだろうな。
 と、杏子はシーナーとの戦いを思い出した。

 杏子のスキャンするこの地の構造が、彼女の魔力を介して、一行の脳裏にも幻覚として浮かぶ。
 このエリア一帯を埋め尽くすほどに木の枝か根のようなものが張り巡らされている。
 その中心部に、確かに人間の心臓の鼓動を感じた。

「生きてる! だいぶその童子斬り? ってやつの根が張っちゃいるが、20m下でまだ生きてるぞ!」

 杏子がそう叫んだ瞬間、地面から勢い良く木の根が突き出した。
 回避が間に合わず、腕にパンチ穴のような傷が穿たれる。

「ゲッ――、逆探された!?」

 傷を修復しながら飛び退り、杏子は周囲の探査のために放出していた魔力を引っ込める。
 童子斬りだ。
 展開していた杏子の魔力に引き寄せられたのだろう。
 周囲のエネルギーを探って吸い上げようとしているらしいこの木の根に対処しながら四宮ひまわりを救助するのは、なかなか骨が折れそうに思えた。
 高いエネルギーを垂れ流してしまえば、この木の格好の的だろう。

「どうしましょう、私が宝具を準備している短時間だけでもこの木を防いでもらえれば、一気に切り払えるのだけれど~」
「そうね……、龍田さんが構えている間、私が結界を展開してこの木を『時間降頻(クロックダウン)』させましょうか」
「寄ってきた木を私の『フォルビチ・インシデーレ(断ち斬りバサミ)』と佐倉さんで落としていく感じで良いかしら?」

 龍田と魔法少女たちが救出作戦を練っている間、総合病院の瓦礫の上で、一番前にいたのは、田所恵だった。
 このヒグマ島の短くも長い生活で、数少ない同年代の友人だった四宮ひまわりの安否を一番心配しているのが、恵だった。
 ひまわりとの別れ際、彼女が恵に向けて言った言葉が思い出される。

『ふわぁ……、諦めたわけじゃないよ……。大丈夫……。
 どうしても先が見えなくなった時、私を呼んで……。きっと、私は、聞こえる』
『むしろ私は、明らめにいくんだ……。
 私は、あの子を探す……。あの赤いジャムの中で……』

「ひまわりちゃん……、聞こえるかな、私の声……。今助けるから、待っててね……!」

 足元で埋まっているはずの見えない友に向けて、恵は必死に祈る。
 顔を伏せていた彼女は、気づかなかった。

 ――もう少し長い間、佐倉杏子が魔力を展開していれば、その襲撃には気づけたのかもしれない。

 田所恵は突如、胸のど真ん中に、衝撃と強い熱を感じた。
 見れば恵の胸には、深く大きな穴が開いていた。
 傷口から流れ落ちる液体を見つめ、田所恵は呟く。

「あ、赤い……ジャム……」

 そのまま彼女は力なく、総合病院の瓦礫の前に崩れ落ちる。
 動かなくなった彼女の周りには、真っ赤なジャムのように、じわじわと血だまりが広がっていった。


    ××××××××××


「なっ――!?」

 突如総合病院の瓦礫の上に轟いた砲撃音に、一行は驚いてその方向を振り仰いだ。
 そこでは田所恵が、胸から血を吹き出して倒れるところだった。
 彼女のさらに先に、下水道のマンホールから上がってきた、異形の襲撃者の姿があった。

 その襲撃者は、スクール水着を着てヒグマの手足をしたピンク色の長髪の少女の、『右半身』だった。
 車の片輪走行のような体勢で、片足隻腕の身をひょこひょこと動かしながら、単眼になった瞳を怒りに燃やし、彼女は半分だけの大顎で唸りを上げる。
 ゴーヤイムヤ提督を構成していた存在の片割れ、穴持たず158・苺屋だった。
 彼女は病院の瓦礫の上から、勢いよく魚雷の束を一行に向けて投射する。

「このゴーヤイムヤたちの、イチゴヤたちの深き力で、皆殺しでちィィィィィ!!」

 それは、彼女がこの時まで、下水道を辿って同胞の潜水勢全員の死体から回収してきた、ありったけの『起源魚雷』だった。
 衛宮切嗣の肉体全てを分散して作られたその魚雷群は、未だに数十発も残っていた。

「させるかよっ!」
「あっ――」

 次々と投射される魚雷に向けて、佐倉杏子が走る。
 魔力の高い自分が、いの一番に迎撃・防御すべきだと、そう思っての行動だった。
 その姿に、暁美ほむらが焦って叫んだ。

「ダメ!! その魚雷に、魔力で干渉しちゃいけない!!」

 誰かが、身を挺してその『起源魚雷』の危険性を示していたはずだ。
 もう存在を思い出せない誰かは、その魚雷を『なかったこと』にした結果、全身の魔術回路をズタズタにされてしまった。
 マミとほむらは、佐倉杏子にその情報を共有できていなかった。
 もはやする必要もないと思っていたからだ。

 炎を纏った槍の一撃でその魚雷群を撃ち落とした杏子は、直後、強烈なめまいに襲われ吐血した。

「ぐ、あ、あ……!?」

 エイジャの赤石と融合し、アルター能力すら得て魔力を極限まで高めていた佐倉杏子は、だからこそ致命的なダメージを負った。
 炎が揺らいで消える。彼女の吐いた血も、地面に落ちる前に消える。
 魔法少女衣装が、そして能力で構成していた自身の肉体すらも、ノイズのように存在を乱れさせ消えていく。
 それは、もう一人のある人物についても同様だった。

「布束さん! アイちゃんをお願いします!」
「亜久里――!?」
「私は島外へ往きます! トランプ共和国のレジーナを……、『キュアジョーカー』をお尋ねください!!」

 佐倉杏子の力で肉体を構成されていた円亜久里も、見る間に消滅していく。
 消え去る直前、かろうじて彼女は布束砥信にアイちゃんを投げ渡す。
 ――カツ……ン。
 後には、わずかな音をたてて、エイジャの赤石と融合した佐倉杏子のソウルジェムが地面に落ちるだけだった。
 マミが喉を引きつらせる。

「そんな、佐倉さん――!?」

 その攻撃は、強い魔力を得て強化されたはずの、今の彼女たちに対する天敵であった。
 魔法少女たちだけでなく、間桐雁夜、龍田、ビショップ、ゴーレム、ヤイコといった、魔力・特殊能力を使う面々も対応に迷い動けなくなる。
 起源弾、および起源魚雷に対抗する魔力の使い方は、あるにはある。
 令呪などの外部装置による魔力供給だ。
 現段階で、暁美ほむらと間桐雁夜ならば所持しているその令呪での対抗であれば、起源弾の魔力破壊効果は不発に終わる。
 だがこの場の誰も、衛宮切嗣の歯を利用していた暁美ほむらですら、そのメカニズムの正確な理解には至っていない。
 目の前で一瞬にして佐倉杏子が消滅させられた場面を見て、冷静になれるわけもない。
 もちろん対抗策を考える余裕など、ゴーヤイムヤ提督の襲撃は与えてはくれなかった。

「やめろ苺屋!! アンタもさっきの放送聞いてたでしょ!? それどころじゃないのよ! 全員死ぬわよ!?」
「水上艦は、全員沈めぇぇぇぇ!! 深き力は、負けないぃぃぃぃぃ!!」

 ゴーレム提督が叫ぶ。
 その制止も聞かず、次々と投射される起源魚雷。
 合間に、炸裂する歯の散弾と、胃石の砲弾が逃げ惑う人々を襲う。

「『侵食する黒き翼』――!!」

 暁美ほむらが、一帯を防御するために、翼を広げ結界を展開しようとする。
 だが、起源魚雷の爆風を浴びるや、そのたびに結界は霧散し、消えてしまう。
 島の龍脈から得た令呪で形成されたその魔法は、起源魚雷を受けても暁美ほむらに影響を及ぼさなかったが、それでも、一行を守るという目的を果たすには、到底足りなかった。

 リボンを伸ばして杏子のソウルジェムをかろうじて回収した巴マミの右脚が胃石に吹き飛ばされる。
 その巴マミを庇って逃げようとした星空凛の背中に、歯の散弾が赤いミシン目を刻む。
 どれだけ翼を伸ばそうとしても届かず、仲間を守れなかった暁美ほむらが悲鳴を上げる。
 続出する負傷者にうろたえ、訳も分からなくなったジブリールが、凛たちに走り寄ろうとして魚雷の爆発で吹き飛ぶ。
 マスターである間桐雁夜の前で薙刀を揮う龍田の守りを抜けた散弾が、デデンネとヤイコを穿つ。
 かろうじて託されたアイちゃんだけを抱えて転がった布束砥信の目に、抱えられなかったその二匹が赤く吹き飛ぶ姿が嫌にゆっくりと映った。

 ゴーヤイムヤ提督を構成していた右半身、穴持たず158・苺屋の強襲は、地下の時と同様にあまりにも秀逸であった。
 相手に反撃や思考の隙を与えず、奇襲の最初から最大火力による飽和攻撃で完膚なきまでに相手を叩きのめす。

「「うおおぉォォォォ――!!」」

 その光景に、ゴーレムとビショップが猛った。
 魚雷の爆発だけを躱し、その身に歯の散弾や胃石の砲撃が触れることをいとわず、泥と水の流体の姿でゴーヤイムヤ提督に迫った。

「アンタの歯と石だけなら恐れる必要はないのよ!!」
「それはどうでちかな?」

 迫る泥と水の奔流を前にしてしかし、穴持たず158・苺屋は、右半身だけの口元をニタリと歪ませる。
 直後、ゴーレムとビショップを強烈なめまいが襲った。

 自分の歯を炸裂させる弾幕である贋炸艦艇歯の中に、ゴーヤイムヤ提督は、起源魚雷の素材にもなっていた、衛宮切嗣の歯を混入させていた。
 未精製の歯による魔力の断裂効果は、当然起源弾にも起源魚雷にも遠く及ばない。
 だがそれは、ゴーレム提督とビショップヒグマの魔力を一時的にでも乱し、その能力を解除させるには十分だった。
 呻きと共に泥が剥がれ、ヒグマとしての肉体が露呈するゴーレム。
 嘔吐と共に水が流れ、びしょ濡れのヒト型の姿になってしまうビショップ。

「沈めぇぇぇぇ――!!」
「ぐ、お、お……!」

 振り上げられる苺屋の爪を前に、ゴーレムは苦悶しながらビショップを突き飛ばした。かろうじて応戦の構えを取った。
 だが、ゴーレムと苺屋では、あまりにも生身での戦闘スキルに差がありすぎた。
 防御のために掲げた前脚もろとも、ゴーレム提督はゴーヤイムヤ提督の鉤爪に深々と切り裂かれ、跳ね飛ばされていた。


    ××××××××××


 赤いジャムの中で、泳ぐ夢を見ていた。
 赤く大きな火の玉の上で、煮詰められていく暖かな感情の渦。
 遠く、周りにも、何人も気持ちよさそうに揺蕩っているのを感じる。
 そんな夢の中でふと、私の魂を掴む者がいた。

「おい、しっかりしろ、田所恵!」

 力強い女の子の声に、私はハッとした。
 全身が炎で出来たようなポニーテールの少女――、確か佐倉杏子さん。その人が、私の魂のイメージを、両手で掴み留めていた。

「見えるか? 感じるか? ここはなんつうか、魂の根源というか、たぶんそんな場所だ。
 ヘマしちまったが、逆にそのおかげで、アタシはアンタとここに来れた。
 アイツだろ? 四宮ひまわりっていう、アンタの友達は」

 私たちの浮かぶ空間の遥か下方。
 赤い火のようなジャムの中心部にかなり近い位置。
 太い木の根を、鳴らない目覚ましのように抱きしめた少女が、そこにいた。

「アイツに届くのは、友達の声だけみたいだ。頼む。アンタしかいない」

 私は、頷いた。
 体という冑を脱いだからこそ、わかる。
 今こそ必要なのが、あのヒグマさんたちの言っていた『ピルマ・イレ(己の名を告げる)』なのだ。

「魂だけの今なら、どこにいたって聴こえる! アタシが届かせてやる!」
「……目を覚まして! 私だよ! 田所恵だよ!!」

 炎のような杏子さんの声に、私は心を奮い立たせる。
 まるで卓球の決勝戦。
 マッチポイントのスマッシュ。
 そんな全身全霊で、私は魂を震わせた。

「――呼べ!」
「ひまわりちゃぁぁぁぁーーん!!」

 私の声が、赤いジャムの中に響く。
 佐倉杏子さんの魔法に乗って、眠るひまわりちゃんの元へ届く。
 私の遥か下、大輪の華のように回る炎の渦の上で、彼女はゆっくりと、目を開けた。


    ××××××××××


 佐倉杏子のソウルジェムを回収した直後に、ゴーヤイムヤ提督の弾幕の餌食になった巴マミと星空凛は、なんとか暁美ほむらの守りの後方に退避していた。
 星空凛を抱えながら、リボン一本をワイヤーアクションのように伸縮させての立体機動だった。

 この奇襲は、ゴーヤイムヤ提督と一度戦ったことのある巴マミにも、予想できないほどの苛烈な攻撃だった。
 纏流子と共に戦った先の戦闘では、ゴーヤイムヤ提督は流子を暴走させるための舐めプレイをしていたとしか考えられず、事実そうであった。
 半身を失い、恨みだけでなりふり構わぬ攻撃をしかけている今の姿こそが、彼女の本気なのだろう。

「ダメよ星空さん! しっかり! しっかりして!」
「う、う……」

 片足を飛ばされた自分を庇って重傷を負った星空凛を、巴マミは急いで治療しようとした。
 リボンで止血するも、背中から体内深くに突き刺さった複数の歯の弾丸をすぐには摘出することができず、決定的な損傷の治癒ができない。
 起源魚雷が爆発し続ける環境では、令呪ではなく自前の魔力で魔法を行使する巴マミは、対抗するための『フィラーレ・アグッツォ(鋭利な糸)』や『レガーレ・メ・ステッソ(自浄自縛)』といった強力な攻防手段も使えなかった。
 まごつく彼女たちの元に、魚雷の爆発でジブリールが吹き飛ばされてくる。
 能力を乱され、深々と体を切り裂かれたゴーレム提督が、泥になれぬ生身で転がってくる。

「ゴーレムさん――!!」
「クソ……、あんなのでも、やっぱ私たち潜水勢のトップなだけあった……」

 暁美分隊に最後に参加したメンバーであるゴーレム提督は、かすみゆく眼に、その金髪の魔法少女の姿を見た。
 彼女――巴マミは、沈んだ深海棲艦となっていた仲間を、目の前で、身一つで救い出した、真の奇跡の体現者だった。

 あり得ないことだと、始めからそう思っていた。望みを諦めていた。
 だが轟沈した艦娘が、仲間が、本当にそれでも戻ってきてくれるなら、一体どれほど幸せなことなのか。
 ゴーレム提督は、暁美ほむら率いる分隊に、誰も描けなかった夢の展望を見た。
 未来につながっていく希望は、自分たちヒグマではなく、彼女たち人間にあるべきだった。

 暁美ほむら、巴マミ、星空凛――。
 短い付き合いではあったが、そんな彼女たちとわずかの間でも仲間であれたことが、ゴーレム提督には嬉しかった。
 潜水勢でも、医療班でも、味わえたことのない感覚であった。
 診療所の水面で死んでいたデーモン提督の笑みの理由が、わかった気がした。

「……やって、ジブリール……。少しでも、未来に、想いが、繋げるなら……」
「レム……ちゃん……」

 至近距離の爆発を受けて血まみれになったジブリールは、そんな同僚のつぶやきに、顔を上げる。
 ゴーレム提督はジブリールの元ににじり寄り、そして星空凛を傍に寄せるよう、巴マミを招いた。
 意を決して、ゴーレムは同僚のテンシに、命じた。

「――誦め(よめ)!」


    ××××××××××


 瓦礫の上に、泣き叫ぶアイちゃんの声が響く。

「あぁぁぁぁーーん! あぁぁぁぁーーん!」
「うわぁぁぁぁぁあぁぁ――!」

 その泣き声をさらに上書きするような悲痛な声で、暁美ほむらも叫んでいる。
 翼を展開し、球磨の砲塔を召喚し、魔力の膿を投射してゴーヤイムヤ提督の弾幕に対抗しようとしている。
 だが、起源魚雷が爆発するたびにリセットされてしまうその弾幕では、とても後方の人々を守り切れなかった。
 残る龍田も、ほむらの守りの手薄な側の散弾や魚雷を捌くのに手いっぱいで、攻撃に回れない。
 それどころか、ゆっくりと歩み来る穴持たず158・苺屋に、どんどんと二人は押されている。
 背後に、間桐雁夜や傷ついた人々を守りながらの応戦では、もはや手詰まりにも思えた。

「ヤイコ! デデンネ! ビショップ――! Are you okay!?」
「私よりも、ヤイコさんガ……!」

 歯の散弾を受けて倒れたヤイコとデデンネの元に、液状化を解除されゴーレムに突き飛ばされたビショップも転がってくる。
 布束砥信が、泣きわめくアイちゃんを抱えたまま駆け寄る。
 全身に深々と弾痕のミシン目を刻まれ、血を流し呻くヤイコとデデンネは、体が小さい分、一見して致命傷だった。
 だが、身を起こすビショップヒグマも魔力を乱され、ずぶ濡れの少女の姿となり、魔法少女たちも、こちらの治癒には回れない。
 いったいどうすれば――。

「『Golos v e'toy ruke(声はこの手に)』――。
 『Krov' spokoyno nad vami(血は静かにキミを巡る)』!!」

 その時、ヤイコとデデンネの元に駆け寄り、ロシア語の呪文を唱えたのは、間桐雁夜だった。
 彼は、何も無くとも既にボロボロの魔術回路を酷使し、自分も口から血を零しながら、二人の小動物を止血する。

「俺の魔術じゃ応急処置にしかならん! 誰か、早く龍田たちを援護できないか!?」

 一帯を見回し、戦う前衛たちの支援を要請した彼の目は、布束砥信が抱える、アイちゃんの前で止まった。
 ぐずるアイちゃんの前には、彼らが見つめる間にも光が集い、何かを形成していた。

 アイちゃんは、その場の状況に適した変身アイテムを生み出すことのできる能力を持っていた。
 円亜久里や相田マナなどのプリキュアであればキュアラビーズ。
 そして今この場にいる者であれば――。

「電池……――」

 雁夜が、ビショップが、新たに生み出されたそのアイテムを見て呟く。
 布束砥信には、見覚えがあった。
 腰のガブリボルバーを手に取る。
 間違いない。
 それはDr.ウルシェードが遺したガブリボルバーにも装填されているのと同型の、『獣電池』だった。

「アナタたち、ここに、力を込めてくだサイ! 電解液は私が補充しマス!」

 その布束のしぐさを見るや、ビショップが生成された獣電池を手に取り、ヤイコとデデンネに語り掛けた。
 この窮地を乗り切るには、それしかないと誰もが思っていた。

「布束特任部長……、ヤイコは、あなたと一緒に働けたことを誇りに思います」

 雁夜の手当てで、わずかに動くことができるようになったヤイコとデデンネが、その電池に前脚を伸ばしていた。

「ヤイコたちを、役立てて、ください……」
「デ、ネ……」

 眩い電気がスパークする。
 ジリジリと、力強い勇気が、その電池に込められたのが傍目にも分かった。

『――踊れ!』

 ガブリボルバーを手にする布束には、力強く耳打ちする、そんな研究者の声が聞こえた気がした。
 古から伝わってきた想いが、愛しいあなたに囁く。
 一緒に踊ろう、といざなう。

「……I, got, this――!!(任せなさい)」

 アイちゃんを、ビショップヒグマに預ける。
 Dr.ウルシェードから託された電池と、たった今ヤイコとデデンネの電気が込められた電池を掴む。
 片手で二つのスイッチを押し、布束はそのままガブリボルバーの上下のスロットに、獣電池を差し込んだ。

「ブレイブ、イン!」
<ガブリンチョ! プレェェェズオン!!>
<ガブリンチョ! ヤイコデデンネェェェ!!>

 場違いにやかましい声が、リボルバーから響く。
 顔を伏せ、涙を零しながら布束がシリンダーを回す。

「――キョウリュウチェンジ」

 一帯に唐突にサンバのリズムが流れる。
 布束の脚が軽やかなステップを踏む。

「……Fire――!!」

 天高くガブリボルバーを掲げ引き金を引いた彼女のもとに、銃口から射出された輝くエネルギーたちが集う。
 それらは、小柄なヒグマと、丸々としたネズミと、腰に手を当てて朗らかに笑う胡散臭いサングラスの研究者の姿をしていた。

「海の勇者――、もとい、神経精神医学の勇者。キョウリュウバイオレット!」

 鮮やかな紫のバトルスーツに身を包んで佇む彼女の姿は、Dr.ウルシェードが変身するキョウリュウジャーのものだった。
 奇しくも彼の遺志とブレイブを受け継いだ形になった布束砥信は今、二代目キョウリュウバイオレットとして、今この地に降り立っていた。
 彼女の涙は、もうヘルメットの下で見えない。
 両手に、紫の電気がスパークする。
 ヤイコとデデンネのブレイブが、確かにそこにあった。

 耳目を奪う突然の事態に、戦闘していたゴーヤイムヤ提督も暁美ほむらも龍田も、皆一様にその変身の様子に見入った。
 ゴーヤイムヤ提督は、右半身だけの口元をニヤリと歪ませ、標的を変えた。
 走り寄る布束砥信――キョウリュウバイオレットに向け、ほほを膨らませる。
 大量の歯の散弾を、撃ち出す準備だった。

「やってみろ……! その瞬間に、お前は終わりでち!!」

 穴持たず158・苺屋の射出する歯の散弾をしかし、キョウリュウバイオレットは迎撃しなかった。
 彼女の脳内に、紫のブレイブが奔る。
 空間を埋め尽くす死の弾幕を、彼女は強化された反応速度で全て弾道予測し、稲妻のようなフットワークで躱しきった。
 一瞬でその穴持たずの懐に入り込んだ彼女の姿は、まさに紫電であった。

 震脚と打撃の重低音が、一帯に響き渡る。

「――真・『寿命中断(クリティカル)』!!」

 布束砥信は重ねた掌を、穴持たず158・苺屋の胸部に撃ち込んでいた。

 それは、古武術で鎧大筒と呼ばれるような技であった。
 厚い防具の上からでも、心臓に直接打撃のダメージを与え、心臓振盪による心停止に陥れる技法だ。
 キョウリュウバイオレットとして身体強化され、さらにヤイコとデデンネの電気エネルギーを帯びた布束砥信の必殺の一撃は、ヒグマの心臓すら一度触れただけで停止させる、真の必殺技として昇華されていた。


    ××××××××××


「が、あ――」

 衝撃で、苺屋は大量に吐血した。
 布束砥信の真・寿命中断は、彼女の心臓を止めるのみならず、肋骨を砕き、肺葉を潰し、縦隔構造の大部分を壊滅させていた。
 それはあたかも古代の達人の、『无二打(にのうちいらず)』の技を見るかのようだった。

 その一撃で、戦闘は終了したかと思えた。
 間違いなく布束砥信は、そのヒグマを殺し、勝利した。

 だが、心臓を止められてなお、穴持たず158・苺屋はまだ止まらなかった。
 ヒグマは人間よりも虚血に対する耐性が遥かに高い。心臓を撃ち抜かれただけなら、脳に血液が残る数十秒間は活動ができる。
 中でも、半身を引き裂かれても活動できるほど潜水勢としてダメージコントロールに特化したゴーヤイムヤ提督の場合は、心臓が動かずとも、胸部臓器の大半を破壊されても、2分以上の行動が可能だった。
 道連れに、そのヒグマは目の前のキョウリュウバイオレットだけでも殺そうと腕を振り上げる。

 その腕が、すっぱりと肩口から切断されていた。

「……させないにゃ」

 伸びた泥が、大きな刀――ヒグマサムネで苺屋の腕を斬り落としていた。
 その泥は、訓練兵団の制服を纏って立ち上がる、星空凛の足もとに繋がっていた。

「ジブリールさんと、ゴーレムさんが託してくれた想い、無駄にはしないにゃ」


『誦め、「創造される御方、汝の主の御名において。彼は一凝血から、人間を創られた」と。
 誦め、「汝の主は極めて心ひろく、筆によって書くことを教えられ、人間に未知なることを教えられた御方である」と。』
(『クルアーン(コーラン)』96章1-5節より)


 ジブリールは、預言者ムハンマドに天啓を伝えた天使の名である。
 その名を冠した穴持たず104・テンシ(ジブリール)は、その身を介して他者同士の組織・能力を、全く拒絶反応も無しに完全に伝えることができた。
 HIGUMA細胞の免疫回避機構をさらに昇華させたその力は、移植医療の革命であった。
 だが、ドジでおっちょこちょいな彼女は、その力を今までうまく使いこなせなかった。
 医療事故を起こすのを恐れ、踏み出すのをためらっていた。

 彼女は今わの際に、ゴーレムの肉体を使い、星空凛の負傷を治癒させ、そしてその泥を操る能力すら完全に伝えきっていた。
 凛の背中に刻まれていたミシン目は、泥のように蠢き、内側から歯の散弾を吹き出し、癒着する。
 ジブリールは倒れ伏したまま、自分の治療を受けて完治した初めての患者の勇姿を見上げ、目を潤ませた。

「……処置、完了、です……」

 同僚と先輩の医療班たちが口にしていた、憧れのセリフを呟く。
 ナース姿の彼女はそうして、満足げな笑顔を浮かべ、命を終えた。


    ××××××××××


「ぐおおおぉぉぉぉ――!!」
「Damn――!」

 だがそれでも、ゴーヤイムヤ提督の目から光は失われなかった。
 片脚だけで、血を吐きながら、そのヒグマは身を振って布束砥信に食らいつこうとする。
 キョウリュウバイオレットはステップと残心で距離を取り躱す。

 恨みだ。
 深く暗い、深海棲艦のようなその感情だけが、ゴーヤイムヤ提督を動かしていた。
 左半身を失い、そして今、心臓を止められ右前脚も斬り落とされたそのヒグマは、残った右後脚だけで、跳ねた。

 上空から、鮫のようなその歯の残り全てを、最期の力で一帯の生存者に向けて掃射するつもりだった。
 だがその直前、穴持たず158・苺屋の体は、地面から急速に伸びた一本の木に、串刺しにされていた。
 貫かれた苺屋は、一瞬何が起きたか理解できていなかった。
 だが程なく、何かを悟ったかのように、裂けた口をフッと歪ませる。

「――そう、か、それがお前らの選んだ『深き力』でちか。龍田提督……」

 ゴーヤイムヤ提督はそう笑ってガクリと首を垂らした。
 見る間に、その体は水分を吸いつくされ、木に吸収されていく。
 人々が気づけば、地に倒れ伏していた死者たちの体が、次々とその木に纏わりつかれ、吸われていく。
 田所恵が。
 ジブリールが。
 ゴーレム提督が。
 治療が間に合わず、たった今息を引き取ったヤイコとデデンネが、木に取り込まれる――。

 足元から、地響きが聞こえてきた。
 病院の瓦礫が内側から崩れ、何かが這い出して来る。

「……童子斬り!? 四宮ひまわりなの!?」

 キョウリュウバイオレットのスーツで身構えながら、布束砥信が狼狽える。
 暁美ほむらが、巴マミが、星空凛が、龍田が、間桐雁夜が、ビショップヒグマが、動ける者たちはその全員が、目の前に聳え立つ威容を呆然と見上げることしかできなかった。
 佐倉杏子もその姿を、魂のままでしかと認識していた。


「――Uisce a'reachtail……deora' na tuillte……」


 総合病院の跡地を押しのけ、屹立した巨大な物体。
 中心のうろに人の顔が覗いている。
 右の顔面だけがわずかに見えるその人物は、四宮ひまわりだ。
 彼女は寝言のように、何かを呟いていた。
 少女の安らかな寝顔を取り込んで、世界樹(ユグドラシル)とでも形容すべき大樹が、雪の降る月明かりに照らされ、今、ヒグマの島の大地に顕現していた。


【円亜久里@ドキドキ!プリキュア 消滅】
【田所恵@食戟のソーマ 死亡・童子斬りに吸収】
【デデンネ@ポケットモンスター 死亡・童子斬りに吸収】
【穴持たず81(ヤイコ)@ヒグマ帝国 死亡・童子斬りに吸収】
【穴持たず104(ジブリール)@ヒグマ帝国 死亡・童子斬りに吸収】
穴持たず506・ゴーレム提督@ヒグマ帝国 死亡・童子斬りに吸収】
【穴持たず158・苺屋@ヒグマ帝国 死亡・童子斬りに吸収】
【第七かんこ連隊@ヒグマ帝国 死亡・童子斬りに吸収】


【Cー6 総合病院跡地/夜】


【四宮ひまわり@ビビッドレッド・オペレーション】
状態:大樹に成長した童子斬りに寄生されている、昏睡
装備:半纏、帝国産二代目鬼斬り
道具:オペレーションキー
[思考・状況]
基本思考:――――――――――
0:――――――――――
[備考]
※鬼斬りにほぼ完全に寄生されました。
バーサーカーの『騎士は徒手にて死せず』を受けた上に分枝したので、鬼斬りの性質は本来のものから大きく変質している可能性があります。


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
状態:記憶から来た軍神
装備:球磨の記憶DISC@ジョジョの奇妙な冒険・艦隊これくしょん、自分の眼鏡、ダークオーブ@魔法少女まどか☆マギカ、令呪(無数)
道具:球磨のデイパック(14cm単装砲(弾薬残り極少)、61cm四連装酸素魚雷(弾薬なし)、13号対空電探、双眼鏡、基本支給品、ほむらのゴルフクラブ@魔法少女まどか☆マギカ、超高輝度ウルトラサイリウム×27本、なんず省電力トランシーバー(アイセットマイク付)、衛宮切嗣の犬歯、89式5.56mm小銃(0/0、バイポッド付き)、MkII手榴弾×6、切嗣の手帳、89式5.56mm小銃の弾倉(22/30)、球磨の遺体、碇シンジの遺体、ナイトヒグマの遺体、ジャン・キルシュタインの遺体、デデンネと仲良くなったヒグマの遺体、ラマッタクペの遺体
基本思考:まどかを、そして愛した者たちを守る自分でありたい
0:核兵器などが来る前に、必ず脱出させる……!
1:ありがとう、巴マミ、星空凛。そして、私を押してくれた全ての者たち……。
2:まどか、ありがとう……。今度こそ私は、あなたを守るわ。
3:他者を救い、指揮して、速やかに会場からの脱出を図る。
4:ゆくゆくは『円環の理』の力を食らった代行者として、全ての者が助け合い絶望せずに済むシステムを構築する。
[備考]
※ほぼ、時間遡行を行なった直後の日時からの参戦です。
※島内に充満する地脈の魔力を、衛宮切嗣の情報から吸収することに成功しました。
※『時間超頻(クロックアップ)』・『時間降頻(クロックダウン)』@魔法少女まどか☆マギカポータブルを習得しました。
※『時間超頻・周期発動(クロックアップ・サイクルエンジン)』で、自分の肉体を再生させる魔法を習得しました。
※円環の理の因果と魔力を根こそぎ喰らいましたが、現在使っている円環の理由来の魔法・魔力は、まだまだほんの一端です。
※贖罪の念から魔法少女としての衣装が喪服/軍服に変わってしまったため、武器や魔法の性質が大きく変わっています。
※固有武器は、『偽街の子供たちの持つ巨大な編み針』です。
※固有魔法は、『自分の愛(時間・世界線)を自在に濃縮・希釈し、紡ぎ、編むこと』です。
※魔女・魔法少女としての結界を、翼のように外部に展開することができます。


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカ】
状態:ずぶ濡れ、右脚を吹き飛ばされている
装備:ソウルジェム(魔力Full)、省電力トランシーバーの片割れ、令呪(残りなし)
道具:基本支給品(食料半分消費)、流子の片太刀バサミ@キルラキル、流子のデイパック(基本支給品)、人吉球磨茶白折入りの魔法瓶、佐倉杏子のソウルジェム
基本思考:正義を、信じる
0:もう、誰かが死んで悲しむ姿なんて、見たくない!
1:殺し、殺される以外の解決策を。
2:誰かと繋がっていたい。
3:みんな、私のためにありがとう。今度は、私が助ける番。
4:暁美さんにも、寄り添わせてもらいたい。
5:凛さん、あなたは見習いたいくらいすごい人だわ。
6:デビル、纏さん、球磨さん、碇くん……、あなたたちにもらった正義を、私は進みます。
※支給品の【キュウべえ@魔法少女まどか☆マギカ】はヒグマンに食われました。
※魔法少女の真実を知りました。
※『フィラーレ・アグッツォ(鋭利な糸)』(魔法少女まどか☆マギカ~The different story~)の使用を解禁しました。
※『レガーレ・メ・ステッソ(自浄自縛)』(劇場版 魔法少女まどか☆マギカ~叛逆の物語~で使用していた技法のさらに強化版)を習得しました。
※魔女化は元に戻せるのだという確信を得ました。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
状態:起源魚雷による魔力回路断裂(ソウルジェムのみの状態かつ魔力使用不可)、石と意思の共鳴による究極のアルター結晶化魔法少女(『円環の袖』)
装備:ソウルジェム化エイジャの赤石(濁り:必要なし)
道具:アルターデイパック(大量の食料、調理器具)、江田島平八のデイパック
基本思考:元の場所へ帰る――主催者(のヒグマ?)をボコってから。
0:しくじったが……、四宮ひまわりに声は届かせた!!
1:復讐を遂げるためにも、このヒグマたちのように、もっと違う心の持ち方があるはずだ。
2:カズマ、白井さん、劉さん、狛枝、れい……。あんたたちの血に、あたしは必ずや報いる。
3:神様、自分を殺してしまったあたしは、その殺戮の罪に、身を染めます。
4:たとい『死の陰の谷』を歩むとも、あたしは『災い』を恐れない。
5:これがあたしの進化の形だよ。父さん、カズマ……。
6:ほむら……、あんたに、神のご加護が、あらんことを。
[備考]
※参戦時期は本編世界改変後以降。もしかしたら叛逆の可能性も……?
※幻惑魔法の使用を解禁しました。
※自らの魂とエイジャの赤石をアルター化して再々構成し、新たなソウルジェムとしました。
※自身とカズマと劉鳳と狛枝凪斗の肉体と『円環の袖』をアルター化して再々構成し、新たな肉体としました。
※骨格:一度アルター粒子まで分解した後、魔法少女衣装や武器を含む全身を再々構成可能。
※魔力:測定不能
※知能:年齢相応
※幻覚:あらゆる感覚器官への妨害を半減できる実力になった。
※筋肉:どんな傷も短時間で再々構成できる。つまり、短時間で魔法少女に変身可能。
※好物:甘いもの。(飲まず食わずでも1年は活動可能だが、切ない)
※睡眠:必要ないが、寂しい。
※SEX:必要なし。復讐に子孫や仲間は巻き込めない。罪業を背負うのはひとりで十分。
※アルター能力:幻覚の具現化。杏子の感じる/感じさせる幻覚は、全てアルター粒子でできた実体を持つことが可能となる。杏子の想像力と共感力が及ぶ限り、そのアルターの姿は千変万化である。融合装着・自律稼動・具現・アクセス型の全ての要素を持ち得る。


【星空凛@ラブライブ!】
状態:ゴーレム提督の泥操作能力を会得
装備:訓練兵団の制服、ほむらの立体機動装置(替え刃:3/4,3/4)、包帯
道具:基本支給品、メーヴェ@風の谷のナウシカ、手ぶら拡声器、ジャンのデイパック(基本支給品、超高輝度ウルトラサイリウム×15本、永沢君男の首輪、ブラスターガン@スターウォーズ(79/100))、ナイトヒグマの鎧、ヒグマサムネ
基本思考:この試練から、『アイドル』として高く飛び立つ
0:みんなの想いを、凛が背負うにゃ。
1:この島に残る人たちを救うために、もう、止まらない。
2:ジャンさんたちを忘れないために、忘れさせないために、この世界に、凛たちの存在を刻む。
3:クマっちが言ってくれた伝令だけじゃない。凛はアイドルとして、この試練に真っ向から立ち向かう。
[備考]
※首輪は取り外されました。
※穴持たず104(ジブリール)の力で、穴持たず506(ゴーレム提督)の身体泥状化操作能力を得ました。


【龍田・改@艦隊これくしょん】
状態:左腕切断(焼灼止血済)、サーヴァント化、ワンピースを脱いでいる(ブラウスとキャミソールの姿)、体液損耗防止魔術付与
装備:『夜半尓也君我、獨越良牟』、『水能秋乎婆、誰加知萬思』、『勤此花乎、風尓莫落』
道具:薙刀型固有兵装
[思考・状況]
基本思考:天龍ちゃんの安全を確保できる最善手を探す。
0:まだまだ、この島には強力な敵が居るのね……。
1:ごめんなさい、ひまわりちゃん……。
2:この帝国はなんでしっかりしてない面子が幅をきかせてたわけ!?
3:ヒグマ提督に会ったら、更生させてあげる必要があるかしら~。
4:近距離で戦闘するなら火器はむしろ邪魔よね~。ただでさえ私は拡張性低いんだし~。
[備考]
※ヒグマ提督が建造した艦むすです。
※あら~。生産資材にヒグマを使ってるから、私ま~た強くなっちゃったみたい。
※主砲や魚雷はクッキーババアの工場に置いて来ています。
※間桐雁夜をマスターとしてランサーの擬似サーヴァントとなりました。


【穴持たず203(ビショップヒグマ)】
状態:衛宮切嗣の歯を喰らったことでのめまい
装備:なし
道具:アイちゃん
基本思考:“キング”の意志に従う??????????
0:キング、さん……。シバさん……! もう、どうスレばいいんですか……!
1:スミマセンベージュさん……。アナタを救えなかった……!!
2:……どうか耐えていて下サイ、夏の虫たち!!
3:球磨さんとか、龍田さんとか見る限り、艦娘が悪い訳ではナイんでスよね……。
4:ルーク、ポーン……。アナタ方の分まで、ピースガーディアンの名誉は挽回しまス。
5:私の素顔とか……、そんな晒す意味アリマセンから……。
[備考]
※キングヒグマ親衛隊「ピースガーディアン」の一体です。
※空気中や地下の水と繋がって、半径20mに限り、操ったり取り込んで再生することができます。
※メスです。
※『ヒグマを人間に変える研究』の自然成功例でもあるようです。


【布束砥信@とある科学の超電磁砲】
状態:健康、キョウリュウバイオレット
装備:HIGUMA特異的吸収性麻酔針(残り27本)、工具入りの肩掛け鞄、買い物用のお金
道具:HIGUMA特異的致死因子(残り1㍉㍑)、白衣、Dr.ウルシェードのガブリボルバー、プレズオンの獣電池、ヤイコとデデンネの獣電池、バリキドリンクの空き瓶、制服
[思考・状況]
基本思考:ヒグマの培養槽を発見・破壊し、ヒグマにも人間にも平穏をもたらす。
0:情報が錯綜しているわ! 早く整理しましょう!
1:HHHの呉キリカ達とも合流しないと!
2:キリカとのぞみは、やったのね。今後とも成功・無事を祈る。
3:『スポンサー』は、あのクマのロボットか……。
4:やってきた参加者達と接触を試みる。あの屋台にいた者たちは?
5:帝国内での優位性を保つため、あくまで自分が超能力者であるとの演出を怠らぬようにする。
6:帝国の『実効支配者』たちに自分の目論見が露呈しないよう、細心の注意を払いたい。
7:駄目だ……。艦これ勢は一周回った危険な馬鹿が大半だった……。
8:ミズクマが完全に海上を支配した以上、外部からの介入は今後期待できないわね……。
9:救えなくてごめんなさい、四宮ひまわり……。
[備考]
※麻酔針と致死因子は、HIGUMAに経皮・経静脈的に吸収され、それぞれ昏睡状態・致死に陥れる。
※麻酔針のED50とLD50は一般的なヒグマ1体につきそれぞれ0.3本、および3本。
※致死因子は細胞表面の受容体に結合するサイトカインであり、連鎖的に細胞から致死因子を分泌させ、個体全体をアポトーシスさせる。
※二代目キョウリュウバイオレットとして覚醒し、ヒグマすら一撃で心停止させる技法、真・寿命中断(クリティカル)を身に着けました。


【間桐雁夜】
[状態]:刻印虫死滅、魔力充溢、バリキとか色々な意味で興奮、ずぶ濡れ
[装備]:令呪(残り3画)
[道具]:龍田のワンピース
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を桜ちゃんの元に持ち帰る
0:聖杯戦争どうなってるんだよおい……。
1:俺は、桜ちゃんも葵さんも、みんなを救いたいんだよ!!
2:俺のバーサーカーは最強だったんだ……ッ!!(集中線)
3:俺はまだ、桜のために生きられる!!
4:桜ちゃんやバーサーカー、助けてくれた人のためにも、聖杯を勝ち取る。
5:聖杯さえ取れれば、ひまわりちゃんだって助けられるんだ……!
[備考]
※参加者ではありません、主催陣営の一室に軟禁されていました。
※バーサーカーが消滅し、魔力の消費が止まっています。
※全身の刻印虫が死滅しました。
※龍田をランサーのサーヴァントとしてマスターの再契約をしました。

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最終更新:2026年01月15日 15:38