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2022年グリッド編01

富寄利「最近グゥ殿の動きが怪しいに御座る」


 いつもと変わらず、週末の夜になっても客足の少ない宿屋「ひなたまご」。
そんな寂しいお店に、とある1人のお客が入ってきた。

?「お邪魔するで候、グゥ殿はお帰りになっているで御座るか~」

 和装と特徴的な極東訛りで宿屋に入ってきたオスのドラゴン、富寄利
その声に気付いて、2人の影が店の奥から出てくる。

ルクス「いらっしゃいませ、宿屋ひなたまごへようこそ…おや? 富寄利様でしたか」
  楓「とよりー、こんばんはー!ヾ(゚ヮ゚*」
富寄利ルクス殿に楓殿、こんばんはで御座る。お元気そうで何より」
ルクス「はい。この通り、『お店共々大変元気』で過ごしております。 所で今日は──」
富寄利「あ、拙者、ただ立ち寄っただけに御座候」
ルクス「…でしょうね」「n(>ヮ<*n(キャッキャッ」

 ルクスの目が遠くなる。その隣で、いつも通りと楓がコロコロしている。
富寄利にとってこの光景は“この宿屋ならでは”といった風に思えた。

  楓「じゃあ、どんなごようじでここにきたの? グリッド?(゚、゚*」
富寄利「大正解に候! 今グゥ殿はお帰りになっておいでで御座るか?」
ルクスグリッド様はまだお帰りになっておりませんね。今日は遅くなると伺っております」
富寄利「そうで御座ろうなぁ。拙者、グゥ殿と職場が一緒で御座るし」
  楓「…!n(゚ヮ゚ n しってるなら、なんできいたし!ヾ(>ヮ<*(ビシーッ」「あいたでござるーっ」
ルクス「…それで、グリッド様に何かご用事でしょうか? 宜しければ言伝を承りますが」

 コントにもならないやり取りを目の前でされて、ルクスの眼は冷ややかになっていく。
流石に遊びすぎると怒られると思ったが、富寄利も実際は…。

富寄利「実は特に用事はないので御座るよ、いつもの通りグゥ殿いぢりを」
ルクス「……(じとーっ」
富寄利「冗談は八割として、実は最近、グゥ殿のお帰りが遅いような気がしているで御座るよ」
  楓「う~~~ん………なんだかおそい、ような…?」
ルクス「ええ、最近はお忙しいようです。グリッド様の職業柄、仕方ないとは思いますが…」
富寄利「察するに、恐らくグゥ殿が何か画策している…と拙者のカンが告げているので御座る!」
ルクス「でも、宿屋の晩ご飯の支度や食材調達もしているので、単に遅くなる日も──」
  楓「それはいちだいじだね!n(゚、゚ n」
富寄利「仰る通りに御座る! グゥ殿が何か面白…ピンチになる可能性も考慮するで候!」
  楓「じゃああとでカエデにもしらせなくちゃ!n(゚ヮ゚ n」「それが良きかな!」
ルクス「言っておきますが、問題ごとを起こさないでくださいね…?」

 いぢり癖が悪化して、2人してキャイキャイする姿にルクスは溜息をつく。
とはいえ、こんな光景は割とよくあることで、深く気にする場面でもなかった、のだが。
その背後からまた1人、宿屋の入り口をくぐる姿が現れる。

   ?「あのー、申し訳御座いません、伺いたい事があるのですが…あれ?」
 ルクス「っは!申し訳ございません!こんな所で立ち話をしてしまって…おや?」
   楓「リィトラだーやっほーこんばんはー!(゚ヮ゚*ノシ」
リィトラ「皆さんこんばんは、覚えていてくれたんだね!」

 軽装の鎧とマント、赤色のハチマキが特徴的なドラゴン、リィトラが入口から顔を出す。
宿屋のある街の騎士団員を務めていて、時たま見回りに来てくれているので、楓とも顔なじみである。

 富寄利「リィ殿では御座らぬか。今日もパトロールお疲れ様に候」
リィトラ富寄利さん!よければまた今度、武器の稽古をつけてもらえますか!」
 富寄利「拙者のような武器の“をたく”でよければ」
   楓「おー、たのしそー!みにいくー!ヾ(>ヮ<*ノシ」
 ルクス「お約束が結ばれた所申し訳ないのですが、リィトラ様は何かご用事があったのでは?」
リィトラ「っと、そうだったね。実はグリッドさん宛てに、手紙を預かっていたんだ」
 富寄利「手紙…? 拙者たち配達業社の本業で御座るが、しかし何故リィ殿が…」

 ルクスに促され、リィトラが懐から大事に取りだしたものは、手紙というには少々仰々しく、
あちこちに丁寧な装飾の施された煌びやかな封書で、特に周囲からの眼も引いた。

   楓「うおー!?めっちゃきれー!n(゚、゚*」
 ルクス「確かに、この見た目からも格調高いのが伺い知れますね。すごいです…」
リィトラ「僕も騎士団長から、ここに居るだろうグリッドさんに渡せと託って。何故だろう」
 富寄利「ふむ、然らば拙者が預かりに候。 どうやら今回の謎にも一枚噛んで──」
   ?「待ったぁ!」

 じゃあ富寄利さんに任せるよ、とリィトラ富寄利へ手渡しかけた、その時。
少し大きいけど控え目な制止の声と共に、一陣の風が宿屋の入り口から内部へビュウと吹き抜ける。
「きゃー!(>ヮ< ノノ」やら「きゃあ!?」やら「おろっ?!」などの声が過ぎ去る頃には、
その手紙は入口近くに現れた大きな影の元へと舞い戻っていた。

グリッド「全く…富寄利には油断も隙もあったもんじゃないんですから…」
 富寄利「グゥ殿!この帰りの遅い理由やら、その面白そうな手紙やら、詳しくは署に御座る!」
   楓「グリッドもおかえりー!ねーねーそれなに?おしえておしえて!n(゚ヮ゚*n」
グリッド「楓さん、今日のご飯はハンバーグですよ。配膳準備お願いしても?」
   楓「(>ヮ<*ゞ(ビシッ」
グリッド富寄利、所長さんが君のミスについて聴きたい事があるって──」
 富寄利「拙者急用を思い出し候、これにてどろんっ」
リィトラ「あっ、富寄利さん!? …と、とりあえず僕もこれで失礼しますね!」
グリッド「……ふぅ、やれやれ」

 手紙の内容について問いただそうとする2人組は、グリッドの手練手管であっという間に霧散。
リィトラも用事も済んだのか、富寄利の後を追って帰宅の路へと戻っていった。
安堵と疲れの溜息をつきながらも、彼はその手紙を大切そうに懐へとしまい込む。
ルクスも、いつもの風景に巻き込まれて少し唖然としてしまったが、少し苦笑いしつつも、

 ルクスグリッド様、今日も一日お疲れ様でございました。帰ってきて早々大変でしたね…」
グリッド「ただいまルクス、ありがとうね。まあ、あれくらいは慣れっこだから(^◇^;」
 ルクス「あははは…。 では私も配膳のお手伝い…の前に、その…」
グリッド「この手紙のことが気になる? あはは、詳しくはまだ言えない、けど…」
 ルクス「けど…?」
グリッド「ある意味で悪戯というか、悩みの種というか…ともかく、ハンバーグを作らないとね!」

 言い淀んだ先に、まだこちらへ答えられない何がある事を悟ったルクスは、
そのまま何も言わずに頷いて、グリッドの晩ご飯支度の手伝いに向かったのだった。
その晩、皆に振る舞われたハンバーグは大層美味しいものだったとか。



 その日の深夜。グリッドは宿屋に用意してもらった自室で、独り質素な紙質の手紙を読んでいた。

グリッドちゃんへ
 元気にしてますか? 風邪を引いてはいませんか?
 不自由にしていませんか? またいつこちらへ顔を出せますか?

 …なんて、あまりわがままを言ってはあなたを困らせてしまいますね。
 無理にとはいいません、だからもし都合が合えば、また顔を見せてください。
 私たちはいつでも、あなたの帰省を待っていますよ。 北国のおじおばより』

グリッド「…」

『追伸 あなたの彼女さん、今度こそ紹介してくださいね』

グリッド「………本当に、“どうしよう”……(=◇=;」

 追伸の書かれた手紙を視界の隅に置き、グリッドは独りごちて頭を抱えてしまう。
近くに燈したランタンの光が寂しげに揺れ、豪華な封筒と質素な手紙を淡く照らす。
こうして彼の長い夜は、今日もちょっぴり遅くまで更けていくのだった…。


最終更新:2022年02月02日 23:57