?「はぁ……。結局、あれから特に何も無し、か」
ある事を切っ掛けに浮上した、
グリッドの手紙事件から数日が経過した、ある昼下がり。
宿屋『ひなたまご』のエントランスルームで、気だるげに寛ぐ姿があった。
その名前は
カエデ。常に愉快を求めている彼女は、今まさに暇を持て余しているのだった。
カエデ「つまらん、多少なりと愉快な展開になると思っていたんだがな」
先の事件の経緯を楓から聞き及び、ここ数日はその事をダシに、
グリッドのことを弄んでやろうとウキウキ画策していたカエデも、
進展が無いままとなっている現状を前に、退屈そうにしているのであった。
カエデ「ふぁ……全く、平和だと退屈で死んでしまいそうだ。──新聞でも読むか」
客の1人も居ないこのエントランスで、彼女は大あくびをかましながら、右腕を軽く広げる。
するとその腕が向いた先にあった新聞が、ふわりと浮かびあがり、その手へ吸い寄せられた。
とある理由で彼女に宿った『超能力』は、カエデの雑な性格にはピッタリだったようだ。
…それはさておきと、広げた新聞には世界各地の主なニュースが書きこまれているが、
どれも彼女を満足させるような代物でもなく、唯一目に留まったものも一面に書かれたもので、
カエデ「『極北大陸首都で今年も開催される祭りにて、国の大臣が重大発表!』ねぇ」
紙面に踊るように書きだされた見出しを読みあげつつ、カエデは思い出そうとしていた。
極北大陸というのは、世界地図の北に位置する極寒の地『オルフェイン極北大陸』の事で、
その首都である『ノースファレス』では、毎年春が近づくこの季節に、特別大きな祭りを開催する。
…だっただろうかと、正直何ら関わり合いのない彼女が覚えているのはこの程度だ。
カエデ「確かこの重大発表とかいうのも、しょうもない事ばかりだった気がするが」
重大発表!と大きく新聞で公告されるのもこの祭りが持つ特徴の一つで、
開催するノースファレス国が、自国民や世界に向けて情報を発信する方法の一つだからである。
ただ、その内容と来たら、≪王室ペットの猫に二世がたくさん誕生!≫だの、
≪王室イチオシ!今年のラッキーカラー≫だの、どうでも良い事ばかりだった。
カエデも、初めてこの記事を眼にした時の衝撃は忘れられず、多少は覚えてしまった程。
カエデ「ま、そうやって『自国は平和ですよ』ってアピールなんだろうな」
小癪なやり方だが、この世界ではそれで大丈夫なのだから、退屈なのだ。
彼女は以降の内容を読むのも面倒になって、新聞を雑に放り投げる。
しかし放り投げられたとて、カエデの超能力により、新聞は元の位置へと戻──らず、
?「カエデカエデ!!なんか、なんかきた!!n(゚ヮ゚n」
宿屋の入り口から宙に浮く新聞を意外にも華麗なジャンプで鷲掴み、
その勢いでカエデの元へと駆け寄ってきたのは、宿屋の看板娘である楓であった。
同じ見た目で、自分とは正反対とも思えるようなやかましい、もとい天真爛漫な奴に、
カエデは思わずしかめっ面で対応するも、楓自身は歯牙にもかけずにワチャワチャ纏わりつく。
楓「とりあえず、そとにきて、そと! すげーよ!nn(>ヮ<*」
カエデ「ええいうるさい、分かったから引っ張るな!」
どうせまた道端でアリの行列がエサを運んでいるだの何だのと、
先程のニュースよろしくどうでもいい事だろう。毎回そんな事ばかりだ。
だがこの勢いは鎮めきれず、半ば強制的にカエデは宿屋の外へと引っ張り出される。
出た途端に、眩しい太陽光が彼女の顔をよりしかめさせるが、
?「こんにちは、お譲さん。…えっと、その子のお姉さんかな」
おおよそ想像だにしない状況が、目の前に立っていたのである。
多くの見物客と、見知らぬ様式の軽装鎧を着た兵士数名と、その中心に1人。
明らかに場違いな雰囲気を醸し出すそれは、まさに『一国の王子』その人だった。
*
楓がカエデを呼び出す数刻前。
楓「n(=ヮ=*n」ゴロゴロ
客足遠のく「宿屋ひなたまご」の入り口で、楓がのんきに日向ぼっこ。
時折通り過ぎてゆく顔見知りに手を振って挨拶したりしなかったり、
時々体を伸ばしたり、寝そべってあくびをしたり、ちょっと毛づくろいをしたり……。
喧騒と似ても似つかぬ平穏な時間が過ぎてゆく。と、思いきや──、
楓「……む?(゚、= n」ピクッ
その大きな耳が、遠くから微かに聞こえてくる異音を察知してピョコッと跳ねる。
最初こそ集中しないと聞こえないぐらいの微かなものであったが、
徐々にその音は大きくなっていくと同時に、その正体が目視できるようになってきた。
それは、賑やかな大勢の見物人からなる喧騒と、その中央にある『ヒトの塊』に見える何か。
やがてそのヒトの塊が、見慣れない格好の兵士が隊列を組んだものだと楓にも理解できた。
楓「なんだなんだー?」
くあーっと再びあくびをかましながら上体を直すと同時に、
兵士の塊が楓の前に立ち止まる。その動きは機敏で規則正しく、煌びやかに見える。
そして素早い動きで隊列が組み替わり、その中からより豪奢な見た目の何者かが現れた。
?「失礼、看板娘のお譲さん。『宿屋ひなたまご』と呼ぶ民宿は、此処で相違ないかい?」
楓「おー…。ひなたまごへようこそ、だんたいのおきゃくさまですかー?ヽ(゚ヮ゚*」
?「残念だけど団体の宿泊客ではないんだ。更に言えば、客人でもないのだけれども」
楓「おとまりじゃないのか、ざんねーん n(-、- n」
?「然らば、いずれこの宿に泊めさせて貰おうかな。約束だよ、看板娘さん」ユビキリ
楓「おー、やくそくな!」ユビキリ \きゃーっ!♡♡♡/
兵士達の中から現れた者の物腰は柔らかく、それでいて気品もあった。
楓のへちょい対応にも真摯的に応え、その様子を見物客達は黄色い歓声をあげて大はしゃぎ。
楓にはこの優雅さだとか、何故歓声が上がったのかが理解できなかったが、
とりあえずこの人物が悪い奴ではないと素直に理解できた。
?「さて、それじゃあ要件を話そうかな──」
楓「まった!」「?」
一通りの流れも収まり、この人物が本題を切り出そうかとした途端、
楓がその流れをスパッと断ち切る。相手は不思議そうな顔をしているが、楓は知っている。
たぶん、おそらく、大切なことをはなされても、自分にはさっぱりなことを!
楓「そのようけんは、よりたちばのえらいひとにおまかせ!ちょっとまってて!」
そして楓は、自分より頼りになるヒトが宿屋のエントランスに居る事を知っている。
体を翻して中へと飛び込み、目の前を浮かぶ新聞を軽やかにキャッチしながら、
より頼りになるであろうカエデにしがみつき、引っ張り出してきて、今に至るのだった。
*
?「それじゃあお姉さん達に改めて自己紹介を。僕の名前は──」
カエデ「ロンク。次期ノースファレス国王王子『ロンク・N・オルフェイン』だな」
ロンク「正解! ふふ、どうやらお姉さんは僕が誰かは知っているんだね」
楓「おうじのおきゃく…おうじさま!?Σ(゚ヮ゚;ノノ」「うん、僕がその王子だよ」
朗らかに笑う笑顔に楓は顔を白黒させて心底驚いているが、
その隣で表情を変えずに正体を言い当てたカエデもまた、内心驚きを隠せなかった。
自分の言った通り、このロンクという青年は正真正銘、ノースファレス国の王子その人で、
こんな客足も殆どない寂れた宿屋には、まるで一切似つかわしくない存在である。
周囲の、彼を見物して黄色い声援を上げる女性たちや、彼を守る兵士達がそれを一層際立たせている。
だが、だからこそ、何故そのような存在が目の前にいるのか。カエデの思考は静かに回転を始める。
カエデ「んじゃ、その王子がわざわざこんなボロ宿に来たのには、相応の理由があるんだろ?」
兵士「貴様!黙って見ていれば、王子に対しその態度は──」「良いんだ、下がって」
カエデ「クク……話が分かる奴だな。話して貰おうじゃないか」
尊大な態度が彼を守る兵士達を刺激し、それが制止される間にもカエデの思考は巡る。
この宿屋に来たのは何故か。この平和な世の中において、次期国王となる人物が訪ねてくる意味。
仮にもよほど重要な要件を持っているのだとしたら、それは如何なるものか。
そんな思考を気取られないようとった不躾な態度であっても、ロンクは怯まず返す。
ロンク「僕の要件は一つだけ。ここによく訪れるグリッドに、伝えたいことがあるんだ」
カエデ「……──クク」
瞬間。カエデの中で、ほつれ絡まっていた謎が一つの仮説へと辿りついた。
グリッドが慌ててまで
富寄利の手から奪い去った手紙の封筒は、とても豪奢だったという。
そしてこのタイミングで、ある一国の王子が彼を訪ねて、わざわざこんな場所にまで足を運んだ。
偶然にしては出来過ぎたもので、例え邪推であったとしても、結びつかない訳がない。
何より……グリッドが絡むこんな事態、『面白くならない』訳もない。大好物だ。
カエデ「ならば、その伝言は私が一字一句間違えず彼に伝えようではないか」
ロンク「気持ちは大変ありがたいけど、別に貴女の手を煩わせる訳にはいかないよ。
何より、重要な事だからグリッド本人に直接伝えたいことなんだ──」
じゃあ尚の事、そんな楽しいことは私を通してもらわなくては。
カエデ「グリッドは私に厚い信頼を寄せている。安心して話してくれて問題ない」
ロンク「だ、だけど」
楓「たぶんカエデのいうことはほんとだぞ!あんしんするといい!Σd(゚ヮ゚*」ビシーッ
カエデ「何より、当のグリッドは今ここに居ない。伝言をしなければならないのだろう?」
ロンク「それは確かに、そうなのだけど……」
嘘は言っていない。信頼を寄せるまでのプロセスも故意的に伏せただけだ。
そして楓の絶妙で良く分からないカエデへの信頼とフォローも、今のロンクには十分に刺さった。
何故ならば、戸惑うロンクを囲んでいる兵士たちが、揃ってソワソワしている。
中には陰ながら彼へ直接「王子、そろそろ…」と声を掛ける者すらいるのだ。
王子ともあれば、例えどういう状況であれ様々な公務に追われる身であり、
こんな所で無用に長居できるほど、悠長な時間までは取れていないはず。
カエデの予想は見事に的中し、この場にグリッドが居ない事も悟ったロンクも諦めがつき、
ロンク「分かったよ。それじゃあ貴女に、グリッドへの伝言をお願いさせてもらおうかな」
カエデ「ああ、任せてくれ」
ロンク「それにしても……そっか、貴女が『噂の』グリッドの彼女さんなんだね」「それは違う」
突然何故かグリッドの彼女扱いをされてしまった。カエデは咄嗟に違うと断言してしまったが、
このまま放置していた方が面白かったかも知れないと、内心選択肢をしくじった事を悔いる。
まあ、それをやると実際の彼女に迷惑がかかるので、最後にあれは冗談だ、と言うべきだろう、
なんて悠長にカエデがニヤニヤしているのを知ってか知らずか、王子は深く息を吐き、頷いた。
ロンク「ふぅ…それじゃあ改めて、伝言をお願いするよ」
楓「まかせたまへー!ヾ(>ヮ<*ノシ」キャッキャッ
カエデ「ああ、任されよう」ニヤニヤニヤ
ロンク「『グリッド、君には次期国王の座と、それに相応しい王妃となる婚約相手が決まった。
今年も開催されるノースファレスの祭りで、それが大々的に発表になる。
より詳しい内容は、追って報告するから、必ずノースファレスに来てほしい』」
カエデ「………──は?」
ロンク「驚いてるよね。今年の祭りで発表される内容だから、当然かもしれないけど」
それを伝えるロンク王子の声は、あくまで淡々としていた。
だが裏腹に、その内容は明らかにカエデの仮定からなる想像を超えていった。
グリッドが次期国王になる? おまけに王妃との婚約も決定?
それが国の重大発表として大々的に公表される?
自分が予想していたよりも事が重大に動いていくさまに、彼女の思考は停止したままで。
ロンク「もし忘れても大丈夫なように、この封書にさっきの内容を書きとめたんだ。
よかったら、グリッドにこれを渡してくれてもいいよ」
楓「お、おお、あずかるぞー nn(゚ヮ゚」
ロンク「それじゃあ、必ずグリッドには伝えておいてね。必ずだよ」
念を押すように、豪奢な封筒の手紙を楓に渡したロンクは、そのまま踵を返し立ち去った。
カエデはあまりの事態に、柄にもなく呆然と立ち尽くしてしまい気付かなかったが、
楓は何となく、ロンクの去り際に見えた横顔に、ただならぬ『何か』を感じ取っていた。
そして兵士達とその取り巻きの女性たちも一緒に立ち去り、気付けば宿屋前は再び静かになっていた。
楓「…ねえねえ、カエデ」
カエデ「──あ、ああ、なんだ」
楓「……もしかして、すごいたいへんなことになっちゃう?(゚、゚;」
カエデ「……ああ」
カエデは心配そうにこちらを見上げる楓に対し、上手い切り返しも出来ないままその場に佇む。
楓の手に握られた豪奢な手紙、そしてロンクがカエデ達に伝えた伝言。
それでもなお、宿屋前にはいつも通りの平穏が訪れ、夜になっていくのであった…。
*
宿屋の夜は静かかと思えば、意外ににぎやかしい。
留守にしていた面々が帰ってきて、各自それぞれの場所に居座ってくつろぐからである。
特に夕食時ともなれば、グリッドの手料理を味わえるということで大変にぎわうのだが、
どうやら今日に限って彼は仕事が忙しいらしく、別の者が夕飯を振る舞っていた。
ファラ「みんなー!お夕飯ができたよーっ☆」タプンッ
グリッドが仕事の都合上、宿屋の夕飯時にも不在になること自体はさほど珍しくなかったが、
ここ最近はそれが顕著なのは皆も何となく察していたようで、彼の話題が良く上がった。
そんな中、カエデと楓は今後関係者になりうるであろう富寄利と
ルクスの二人を集め、
周囲にバレないよう話を通すため、4人でグループを組んで食卓を囲むのだった。
カエデ「実は、先に二人に話しておきたい事があるんだが──」
グリッドに伝えてほしいとは言われたが、『秘密にしてほしい』とは言われていない。
なにより、何故かロンクがその気もなさそうだった事に後から気付いたカエデが、
昼間起こった出来事のあらましを二人に話し、四人で手紙を開封し、内容も確認してしまう。
確かに手紙の内容もまたその通りの内容で、何一つ間違いがないと皆の認識が一致した。
富寄利「ま…まさか…グゥ殿が……!?」ガタガタガタ
ルクス「そそそそそんな、王族の方だったのですか……?今までとんだ粗相を…!」ガタガタガタ
楓「や、やばいよね、どうしよう…?n(>ヮ<;n」プルプルプル
グリッドが国王になるなどのトンデモビックリニュースは、
最初からこの件に関わっていた富寄利とルクスに電撃が走るような衝撃を与えたようだった。
特にルクスは、余程驚いたのだろうか自らの角に触れて、何か呟いているように見える。
そういえば、ルクスは少し特殊な身体の構造をしていて…とカエデがふと気付くや否や、
ルクス『って、こういう事があって……』
カエデ「ま、待てルクス、この情報は私たち以外に漏らす訳には──!」
ルクス「えっ!? あ…ご、ごめんなさい、もう私の両親には伝えちゃいました…」
カエデ「……いや、最初から警告をしておかなかった私が悪かった、すまない」
楓「だいじょうぶだよ!きっとだいじょうぶ n(゚ヮ゚;」肩ポン
一瞬気まずい雰囲気が流れるも、楓の謎フォローにより周囲から笑みがこぼれる。
だが、衝撃的なニュースがある事には何一つ変わらず、微妙な空気感が続く。
しかし同時に告げられたグリッドの婚約話には、二人も相応に納得がいかないようで、
二人が小さく、それでも多少声を荒げて発言をする。
富寄利「そもそも!グゥ殿にはあの娘がいらっしゃるで御座るよ!?」
ルクス「そうです!このままじゃ、グリッド様とあの方が…」
カエデ「ああ。そこが問題なんだ。 だが…」
しかし、王子の来訪と手紙という決定的な証拠から出てくる、恐らく国としての決定事項。
果たしてこの大きすぎる問題を、一介の凡人である4人にどうにか出来る訳がなく。
そして当本人であるグリッドが今この場にいないのであれば、一体何が真実なのかはつかめないまま。
だが、だからと言って、これを放置すると取り返しのつかない大変な事態になるのは、火を見るより明らかだ。
カエデ「…そういえばルクス、ノースファレスで開催される祭りについてだが」
ルクス「『小春招礼祭(こはるのしょうらいさい)』ですね」
富寄利「確かその祭りの場で、国際的な発表になるという訳に御座るな……む?」
カエデ「? 富寄利、どうかしたか」
兎にも角にも、グリッドを抜きにしている以上、情報収集をするしかないと、
ルクスに頼んで祭りの概要を聞こうとすると、意外にもある事に気付いたのは富寄利だった。
そして同時に、情報を取得し終えたルクスもまた、何か気付いた顔をして彼と顔を見合わせる。
ルクス「カエデ様。この小春招礼祭ですが、祭りの中で行われる行事に特筆する部分があります。
それは『魔物狩猟祭』と呼ばれるもので、言わば祭りのメインなのですが…」
富寄利「このメインの内容が、もしかしたら上手く利用できる可能性があるに御座るよ!」
楓「???n(゚、゚ n」モグモグ
ルクスと富寄利は、その『魔物狩猟祭』と呼ばれるイベントが何なのか知っているようで、
お互い勝手に納得しあってこれなら行けるかも!と二人笑顔で頷き合っている。
カエデにとっては何の事かさっぱりだったが、富寄利はともかくルクスの反応を見て確信をした。
カエデ「それじゃあ詳しい話を聞こう。ついでに作戦会議と洒落込もうじゃないか。ククク…」
楓「おおっ、なんかかっこいいな!まぜてまぜてーっヾ(>ヮ<*ノシ」
それぞれの思惑は、実の所全く違うものだが…こうしてグリッドの居ぬ間に、
彼のピンチを救うべく、カエデ・ルクス・富寄利・楓の4人が立ち上がった。
グリッドの人生は、このまま王族になって、後世に名を残すような国王様になってしまうのか。
そして当の本人は、一体今どこで何をしていて、どこへ行ってしまったのか。
?「……急がなきゃ」
その思惑は何もあの4人だけにあるものでもなく、夜の賑やかな宿屋を傍目に、
深くローブを被った小柄な影が、街の闇にぎこちなく溶けていく。
こうして、グリッドを巡る物語は、祭りが開催される当日にまで流れていくのであった……。