人は二つに別れる。


 与える者と、奪う者だ。








□ ■ □



 高層ビルは豊かさの象徴である。
 天に迫れば迫る程、それから誇示される権力は増大する。
 地上より遥か上で酒を嗜む権力者達は、大地にひれ伏す弱者を嘲笑う。
 我こそ天に最も近き者、地を舐める貴様らを支配する王である。
 弱者達はビルの遥か下で、彼等の贅を黙って眺める事しか出来ない。

 こんな話、何もこの街に限った話ではない。
 太古の昔より、人類は権力の象徴として巨大な城を築いてきた。
 王は上方より民を見下し、民は下方から王を見上げる。
 弱肉強食の一種とも言えるそれは、創世記より続いてきたシステムだ。

 そんなシステムの一環で建てられたビルの最上階に、その男はいた。
 赤い毛髪にライオンの鬣の様な髪型。黒い総革に赤いラインのコートには染み一つ無い。
 誰の眼から見ても、彼は高層ビルの住人となるに相応しい男に映るだろう。

 そのビルの正体は、主に高所得者が利用するホテルである。
 男は自室として、このホテルの一角を借りていた。
 彼はそこかしこに気品さを感じさせるその部屋にて、窓に映る夜景を見つめている。

 夜も更けてきたというのに、街の明かりが消える気配はない。
 ペンキをぶちまけた様な黒の中に、散らばった宝石の様な光が輝く。
 それはさながら、地上が星の海と化したのかと錯覚する程だ。

「……この夜景を全ての人に見せる為に生きてきた」

 視線を動かさぬまま、男は呟いた。
 星の海を憂う様な、嘆きの含んだ声。

「貧富の差が消え、誰もがこの美しい世界を目にできるように……私は与え続けてきた」

 男は生涯の大半を、他者に与える事に費やしてきた。
 貧困こそが争いの原因と考え、その貧困を根絶やしにしようと努力してきた。
 全ては誰も争わない、平和な世界を作る為。
 やましい気持ちなど欠片も無い、純粋な願いからの行動だった。

「だが無理だった。与えられるのを当然とし、温情に胡坐を掻き続けた彼等は優しさでは救えない」

 男は当の昔に、与える人生を諦めていた。
 どれだけ弱者に施しを与えても、争いは無くならない。
 それどころか、もっと寄こせと囃し立てるばかりであった。
 弱者の欲望の醜悪さが、男の脚を止めたのである。

「故にお前は聖杯を求めた。九を殺し一を救う為に」

 男の背中から聞こえてくるのは、己が傀儡の声。
 "魔術師"として召喚された彼に向き合おうと、男は踵を返す。
 男の顔に張り付くのは、強面に似合わぬ涙であった。

「何故に泣く」
「悲しいのだ。何の罪も無く、しかし奪われる彼等が。
 だが彼等を殺さねば、明日は今日より悪くなる他ない」

 最早この世は、殺戮でしか救済できない。
 男が涙を見せる理由は、その事実に対する絶望と哀憫であった。
 彼――フラダリには、涙を流す程度の優しさがまだ燻っていた。

 与えるだけでは決して争いは無くならない。
 その事実の前に絶望した彼は、奪う為に生きると誓った。
 驕りを見せる九割の人類を抹殺し、残された一割で理想郷を造る。
 九割が奪う筈だった資源を、残りの一割だけで分け合うのだ。
 屍の上で生まれた楽園には、きっと貧困の二文字など存在しない。

「……驕り高ぶった愚民は数を増やし過ぎた。増えすぎた個は減らさねばならん」

 それこそ、殺してでもだ。
 キャスターはきっぱりと、己が主にそう告げた。
 言葉を投げられた主は、口を噤んだままである。
 反論する意味も無い、同意せざるを得ない事実だったからだ。

「老若男女一切の区別なく平等に殺す。それこそが世に平定を齎す唯一の術」

 地球に人類が誕生し、その数は鼠の如き速さで増大していった。
 今やその総数六十三億人、一目で膨大だと判断できる量である。
 それだけの個体が、この小さな星で好き放題に貪ればどうなるか?
 そんな事態が起これば、瞬く間に資源は底を尽いてしまうだろう。

 キャスターの目的は虐殺だが、それは同時に救済でもある。
 世界を巻き込んだ最終戦争を起こし、人類の大部分を殺傷する。
 そうする事で、食い潰される資源を少しでも多く減少させるのだ。
 僅かに残された生存者達には、平穏な明日が約束されるだろう。
 それこそ、フラダリの求める理想郷と同じ明日が。


「闘争こそが救済の術、秩序を齎す絶対の法だ。何を疑問に思う?」

 そう嘯いて、キャスターがほくそ笑む。
 歪む口元を目にし、フラダリは確信する。
 この男はきっと、自分より遥かに強靭な意志を持っている。
 その強固な願いを以て、人類を救済しようとしているのだ。

 彼のしでかす事象は邪悪のそれである。
 全国家を相手取った戦争を勃発させる者など、善人である訳が無い。
 しかし、その根底では人類への慈悲が蹲っているのだ。
 ただ闇雲に協力を謳う輩より、遥かに人類の為に行動しているのは間違いない。

「……そうだなキャスター、我々は人類を救わねばならない」

 軍服に白髪という、魔術師とはかけ離れた出で立ちのキャスター。
 その真名はムラクモ。秘密結社「ゲゼルシャフト」の創設者にして"現人神"。
 この男こそ、自身が共に歩むに相応しい男だ。
 彼の力があれば、聖杯の入手も夢の話ではない。

「その通りだマスター、我らは聖杯を以て人類に救済を齎すのだ」

 価値無き生命に審判を下す、それこそが使命。
 増えすぎたという事実から目を背ける人類には、最早劇薬を用いるしかないのだ。
 そうしなければ、彼等に残されるのは滅亡以外にあり得ない。

 涙こそ流せど、フラダリにも覚悟はできている。
 きっとこの先、多くの無辜の民が死ぬ。
 高級レストランでシャンパンを空ける富豪から、路地裏でゴミを漁る浮浪者まで。
 一人として例外は無い。全員に死が降り注ぐ可能性がある。

 もし聖杯を手に入れれば、更に多くの人間が死ぬだろう。
 子供も、老人も、女性も、男性も、等しく鉄槌が振り落される。
 それでいいのだ。死という厳罰でなければ、人類の罪は贖えないのだから。


□ ■ □








 皆さん、残念ですが、さようなら。


 争いのない、美しき世界の為に。


 皆平等に、殺して差し上げる。







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【クラス】
 キャスター

【真名】
 ムラクモ@アカツキ電光戦記

【属性】
 秩序・悪

【ステータス】
 筋力:C+ 耐久:D 敏捷:C+ 魔力:B 幸運:C 宝具:A

【クラススキル】
陣地製作:C
 魔術師として、自らに有利の陣地を作り上げる。
 キャスターは大型の電光機関を製造し、そこを自身の工房とする。

道具作成:C
 魔力を帯びた道具を作成出来る。
 キャスターは生前利用していた複製骸,兵器の量産を得意としている。

【保有スキル】
神性:E-
 神霊適性を持つかどうか。粛清防御と呼ばれる特殊な防御値をランク分だけ削減する効果がある。
 キャスターは生前"現人神"を自称していた事から、このスキルを与えられるに至った。

カリスマ:D-
 大軍団を指揮する天性の才能。一つの組織を纏め上げるにはDランクでも十分。
 キャスターは部下に反抗される機会が多々あった為、マイナス補正の付加を余儀なくされている。

魔力放出(雷):B
 武器・自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させるスキル。
 キャスターの場合、放出された魔力が電光機関により電力に変換、電光被服の性能を上昇させる。

軍略:B
 多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
 自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。

【宝具】
『転生の法』
ランク:A 種別:対己宝具 レンジ:1 最大補足:1
 真理を極めし者「完全者」の秘蹟。擬似的な不老不死。
 キャスターが死亡した際自動的に発動し、他者の肉体に魂を憑依させる事で文字通り"転生"する。
 その際、奪った肉体はサーヴァントのそれに変貌し、元の肉体の魂は跡形も無く消滅してしまう。
 キャスターの場合、憑依可能なのは彼自身の複製骸のみとなっているが、その複製骸をキャスターは無数に造りだせる。
 よって、彼を撃破しようとするのなら、複製骸を全滅させた上で本体を破るか、マスターを殺害するしか手段は無い。

『電光機関(ペルフェクティ・モーター)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:― 最大捕捉:1
 チベットの秘境で発掘された古代文明『アガルタ』の超科学技術を元に開発された軍事兵器。
 外見は映画用フィルムのリールに似た円盤形で、一見すると単なる発電機としか見えない。
 だが性能は驚異的であり、強力な電力で敵の装甲を溶かし、発生する電磁波は電子兵器を一切無効化してしまう程。
 その実態は、生体エネルギー源『ATP』を電気に強制変換する装置であり、乱用した者は枯れ死ぬ一種の特攻兵器である。
 此度の聖杯戦争では、ある程度ではあるが生体エネルギーを魔力で補う事が可能となっている。
 道具製作スキルで量産が可能。


【weapon】
『六〇式電光被服』
 電光機関と組み合わせる事で所持者に超人的な能力を与える服。
 キャスターの保持している電光被服はその中でも最新型のものであり、
 身体能力の増強の他、迷彩や分身など様々な能力の行使を可能としている。

『無銘・軍刀』
 キャスターが戦闘の際に得物とした刃。

『電光地雷』
 キャスターが戦闘中に多用した兵器。
 地面に設置されたそれを踏むと、黒い電撃の柱を立てながら爆発を起こす。

『エレクトロゾルダート』
 秘密結社ゲゼルシャフトの私兵。
 ゲゼルシャフトの幹部をオリジナルとして量産されたクローン兵。
 全員が量産型の電光機関を所有しており、戦闘の際もそれを利用して戦う。
 電光機関の多用は寿命の短縮を招く為、長時間の戦闘は危険であり、最悪の場合死に至る。
 基本的に突出した個性は持たないが、ふとしたきっかけで強い個性が芽生える個体も存在する。
 また、過去にはそうした個性の成長が原因で、上司に反逆を起こす個体が現れるケースもある。
 オリジナルとなった人物はいないものの、キャスターの手により量産が可能。

『電光戦車』
 秘密結社ゲゼルシャフトが使用する、電光機関を動力源とする電動戦車。
 電光機関による強力な電磁波での電子機器の無力化、光学兵器による誘導弾の撃墜が可能。
 電光戦車を動かす電光機関は、先述の通り人間の生体エネルギーが必要不可欠である。
 その為、この兵器には複数人の"生きた人間"が組み込まれている。
 キャスターの手により量産可能だが、製造には"それ相応の材料"が必須となる。
 また、自律駆動するように作られているものの、組み込まれた人間の人格が目覚め暴走する場合がある。

【人物背景】
 自らを現人神と名乗る、秘密結社『ゲゼルシャフト』の創設者にして支配者。
 「増えすぎた人類は殺してでも減らすべき」という考えの元、最終戦争勃発の為の暗躍を続けていた。
 最終戦争こそ悪鬼の所業ではあるが、本人はあくまで人類の救済を目的としている。

【サーヴァントとしての願い】
 最終戦争による人口削減。


【マスター】フラダリ@ポケットモンスターXY

【マスターとしての願い】
 人口削減による世界平和。

【weapon】
 ポケモンを数匹所有していたが、此度の聖杯戦争に持ち込んでいるかは不明。

【能力・技能】
 組織を設立,運用できる程度のカリスマを有する。

【人物背景】
 カロス地方全土で活動する秘密結社『フレア団』の創設者にして支配者。
 「争いを失くすには人類そのものを削減する他ない」という思想の元、目的の為に暗躍していた。
 元々は善人であり、「争いの無い世界を作る」という願いも紛れも無く善意からくるものであった。
 争いの原因が貧困により起こる奪い合いにあると考えた彼は、若い頃から貧しい人々の救済を続けていた。
 しかし、いくら努力しても争いはなくならず、自身に対する要求ばかりが肥大化していくばかり。
 挙句の果てに驕りさえ見せるようになった人類の姿を見て、フラダリは遂に彼等に絶望。
 危険極まりない選民思想に目覚める事となるのであった。

【方針】
 キャスターの準備が万全になるまでは慎重に行動する。

【把握資料】
ムラクモ:格闘ゲーム。wikiに台詞集あり。

フラダリ:ポケットモンスターXYより。台詞をまとめたwikiが存在。

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最終更新:2016年09月04日 02:10