信号機が赤になる。
進行不可の印を認めたディートハルトは、横断歩道の前に黒塗りの国産車を停めた。

1980年代も半ばになると、安定成長を迎えた日本では単純労働が敬遠されるようになる。バブル景気が日本で起こると外国人労働者が合法、違法問わず大量に流入した。
しかし昭和五十五年、10年後に比べると在留外国人はさほどその数を増やしていない。


窓ガラスから通りに目を向ける。
立ち並ぶ街灯に照らされる通行人は髪や瞳が黒い者が多く、顔も奥行きが少なく平ったい。日本人だ。
エリア11とは印象がまるで違う。ブリタニア占領下のトウキョウ租界に慣れた彼からすれば違和感はあったが、これが極東事変前の日本。これこそが黒の騎士団の目指すもの。

信号が青になった。宛がわれた愛車を走らせる。一般的なブリタニア人なら苦々しく顔を歪めるのだろうが、ディートハルトからすればどうでもよかった。
彼はブリタニア繁栄にもニッポン再建にも関心が薄い。黒の騎士団に加わったのは決して理想や大義のためではなく、日に日に渇いていく心に清水をたっぷりと注いだ「ゼロ」に魅せられたからに過ぎない。

その「ゼロ」も黒の騎士団から追放されてしまった。不本意ではあるが、彼はあれで完成したのだろう。
宙ぶらりんの気持ちを切り替えて、シュナイゼルを新たな撮影対象に据えた矢先、此度の戦いに招かれてしまった。


流れていく景色を視界の端に捉えつつ、ディートハルトは冬木市に来てからの日々を回想する。
無断で連行された形ではあるが見るもの全てが新鮮で、こちらに来てからふとした拍子に、景色をぼうっと眺めることが度々あった。
多忙の合間を縫って情報を集めてみたが、調べれば調べる程に過去へタイムスリップしたという確信は強まり、そもそもディートハルトのいた世界とは歴史の歩み方が違っている。

―なんて貴重な経験なんだ!

宝くじを一枚だけ買って、それが一等に当選したような歓喜。初めての海外旅行でもここまで興奮しなかった。
抑えていないと身体が勝手に踊り出す。
未知との遭遇が、主催者への怒りを和らげていく。

≪ディートハルト…≫

TV局から自宅に向かう道を辿るディートハルトに声が浴びせられた。車内に彼以外の姿はない。
契約したサーヴァントの帰還を知った彼は、緩んだ口元を引き締める。

≪ああ、戻りましたか。ライダー≫

彼に宛がわれた英霊は奇しくも日本人の王だった。教えられた真名を調べたところ、ぶっちぎりで知名度のある英霊だった。
能力の高さはそのせいらしいが、名前が知られている事は弱点が露見する危険性、発覚までの速度も高くなることを意味する。
ヘラクレスの毒、ジークフリートの背中、アキレスの踵。逸話や伝説の再現であるサーヴァントにとってそれは致命的だ。
自身のマスター適性の低さも相まって、ディートハルトも素直には喜べない。

≪アサシンを一人仕留めた。マスターの方は喰らった≫

上々です、と返すと顎を引いて小さく頷く。
ハンドルを切り、自宅マンションの駐車場に入った。
まもなく適当なスペースに愛車を停めたディートハルトは、自宅に向かって歩き始める。

≪如何ほど回復できました?≫

≪魔術師だったらしいのでな、消耗を取り戻して余るが……あれを動かすには数が足りぬ≫

階段を昇るディートハルトの表情が渋くなる。
とはいえ予想は出来ていた。ライダーが言っているのは『賛美せよ、偉大なる名を(黄金魔神像)』の事だ。
敗れた際に人格を移す事で、現世に少しの間留まる事が出来る宝具。
本来想定された機能は発揮できないらしいが、並のサーヴァントならマスターもろとも踏み潰せる圧倒的な巨体と数々の内蔵兵器は魅力的だ。
保険として用意しておいてもよかったが……。

(だが、欠点も多い……)

高層ビルを上回るという巨大さも隠密性に欠けると言い換える事もできるし、何より発動できるのはライダーが倒れた後。
あくまでも溜めておいた魔力を燃やして、消滅を先延ばしにするだけ。展開してしまえば魔力を継ぎ足す事すらできない。

魂喰いの回復量次第では戦力に数えても良かったが、こうなると旨味もいよいよ薄く感じる。
黄金魔神像を無視するなら、宝具は二つ。それも片方は単体で展開できないので実質宝具は一つ。
一組の宝具はシンプル故に強力だが、コストは安くない。

魔術や異能に縁が無いディートハルトでは、ライダーを思うさま暴れさせることができない。
供給できる魔力が乏しい以上、魂喰いは勿論行っていくが、ルーラーに目をつけられるような振る舞いは避ける。


ディートハルト自身に聖杯に託すような願いはない。
カメラを向けるだけの被写体があればそれでいい。聖杯戦争はきっとそれに値する。
多くの願い、歓喜、慟哭、謀略が交錯する混沌の大嵐がこれから街を包むだろう。本格的に始まっていないこの段階で脱落するなど。

(……首尾よく勝ち残ったならば)

元いた世界に彼を放り込んでもいい。
ゼロ――ルルーシュとシュナイゼルが争うブリタニアに。
ライダーはどう動くだろう。人ならぬ幻魔の王はあっさり死ぬか、それとも世界を握るだろうか?



扉に手を掛けると、ディートハルトは思考を打ち消した。
それは今考えることではない。しばらくは身を潜めねばならないし、それに…。

(記録映像は冬木から持ち出せるのでしょうか……)

今回の戦いは後世まで残しておかねばならない。


【クラス】ライダー

【真名】織田信長

【出典作品】鬼武者2

【性別】男

【ステータス】筋力A 耐久B 敏捷C 魔力B+ 幸運B 宝具A+

 幻魔王   筋力A(=60) 耐久A 敏捷B 魔力A+ 幸運B 宝具A+


【属性】
混沌・悪


【クラススキル】
対魔力:C(B)
 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
 宝具を発動する事でカッコ内のランクに修正。展開中は魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。


騎乗:C(EX)
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせる。
 宝具に魂を移した時点でカッコ内のランクに修正。魔神像を手足のように自由に操る事が出来る。


【保有スキル】
カリスマ:B+
 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
 カリスマは稀有な才能で、一国の王としてはBランクで十分と言える。
 幻魔王となったライダーは、魔物や魔獣の性質を持つ相手から特に人望を集めやすい。


軍略:B
 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。
 自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。


飛行:-(B)
 幻魔王に変身している間、翼で空を飛ぶ。
 飛行中の敏捷値はスキルランクで計算する。


人間狩り:A
 同胞を人食いの幻魔に差し出した外道の証。
 半神や魔物、サイボーグなどでない「純粋な人間」との戦闘において、有利な判定を取れる。


【宝具】
『冥府を踏破せし人界の王(幻魔王)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1人(自身)
 完全な怪物と化したライダーの肉体。
 展開中はステータス、対魔力スキル、飛行スキルをカッコ内のランクに修正する。
 消費が増大する代わりに大きく戦闘力が向上するほか、下記宝具が解禁される。


『幻魔五星剣(げんまごせいけん)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~30 最大捕捉:1人(追尾対象)
 森羅万象を操る大剣。
 上記宝具を展開したライダーが魔力を込める事で火炎、冷気、暴風、岩石、稲妻を発生させて、標的にぶつけることができる。
 最大補足の1人というのは一度にロックできるのは1人という意味であり、レンジ内に複数の敵がいた場合は巻き添えを喰らわせることが可能。

 また地面に五星剣を突き入れる事で、ライダーは回復行動を取る事が出来る。
 回復行動中は地脈に流れる力を自身の負傷治癒や疲労回復にあてることができるが、その場から一歩でも動くと回復行動は解除される。


『賛美せよ、偉大なる名を(黄金魔神像)』
ランク:A+ 種別:対軍宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:100人
 髑髏の顔と四本脚を持つ巨大な黄金の像。
 ライダーが注いだ魔力を内部に貯蓄し、展開中の動力源とする。
 本来なら魔神像が放つ負のエネルギーによって民衆を洗脳、信長を神と崇めさせる仕掛けがあったが逸話として確認されていない為に使用不可。

 霊核が損傷した時点でこちらに魂を移して戦闘を再開できる。ライダーの人格を得た魔神像は、一個の機動兵器として活動を開始。
 巨体による押し潰し、火炎放射、無数の能面型の飛び道具、足元から隆起する骨柱、能面から吐き出される毒ガスなどで敵陣を蹂躙する。

 ただし宝具によって現世に留まっているだけに過ぎないので、この状態で聖杯戦争を続けることはできない。
 発動した時点でマスターからの供給を受けることはできなくなり、内蔵魔力を使い果たした時点でライダーの魂ごと魔神像は消滅する。


【weapon】
無銘:長剣

無銘:軍馬


【人物背景】
尾張地方を治めていた大名。日本一有名な戦国の革命児……の何処かの世界線の話。
桶狭間の戦いで討ち死にした彼は、高等幻魔ギルデンスタンの施術によって復活を遂げる。

このときに幻魔の血と人間の血が混じり合った結果、信長は突然変異的に強大な力を獲得する。
初代幻魔王である創造神フォーティンブラスが左馬介に倒された後、混乱する幻魔界を天性のカリスマと絶大な魔力をもって束ね、新たな幻魔王の座に就いた。


【聖杯にかける願い】
完全な状態で復活する。


【マスター名】ディートハルト・リート

【出典】コードギアス 反逆のルルーシュR2

【性別】男

【Weapon】
なし。

【能力・技能】
「諜報」
マスコミ関係者だったからか、情報の扱いに長ける。
黒の騎士団においては情報全般・広報・諜報・渉外の総責任者に任命されていた。


【ロール】
TVプロデューサー。


【人物背景】
Hi-TVエリア11トウキョウ租界支局報道局に勤務するブリタニア人。
高い判断力と推察力、強い好奇心を備えた人物だが「完成された素材」であるブリタニアには興味が薄く、クロヴィス治世下では淡々とした仕事状況に辟易していた。

枢木スザク強奪事件を機にゼロに撮影対象として一目惚れし、彼が起こす世界の変化を特等席から撮影する為にテロ組織「黒の騎士団」に加わる。
ゼロが窮地に陥った際も必死にフォローに回ったが、挽回不可能とみると遂に匙を投げ、彼の名声に傷をつけない形で「ゼロの最後」を記録しようとした。

TURN22「皇帝 ルルーシュ」終了後から参戦。


【聖杯にかける願い】
ライダーを受肉させる。それ以上に聖杯戦争を記録したい。



【把握媒体】
ライダー(織田信長):
 カプコンから発売されたPS2用ソフト。戦国サバイバルアクションゲームの第2作目。
 本編での登場はOPと最終盤のみ。動画での把握も可能。


ディートハルト・リート:
 テレビシリーズ第1期が全25話と総集編2話+第2期が全25話。
 DVD、Blu-rayなどで視聴可能。

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最終更新:2016年07月13日 18:07