ぼくには、希望を見出した人物がいた。


その人はあまりに強大な組織を敵に回し、安息の地などなくなってしまうというのに敢えて苦難を選んだ。


ぼくはその人を信じていたのに…ぼくには彼についていくことができなかった。


それは突然の出来事で、チームの仲間はボートに乗って行ってしまった。


―――ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャ。かつての仲間の殆どを見たのはあれで最後になった。


ブチャラティのチームとしての日々は、紫の煙となって消えていった。


見捨てたのはぼくの筈なのに。どうして見捨てられた感覚が胸の裡に湧くのだろう。


裏切り者は彼らではなく、ぼくが裏切り者だったからなのか…?


もしそうなら、僕は―――


◆ ◆ ◆


私には忠義を誓った人物がおりました。


その人は女性でありながら王となり、自国の民を思い、国に心身を捧げておりました。自分の犠牲をも厭わない程に。


しかし私は…あろうことか王の妻ギネヴィア様と恋に落ちてしまったのです。


その関係は円卓の騎士の分裂、その人が自身を捧げた国の崩壊を招きました。


騎士としての在り方とギネヴィア様への思い――私はそれらによる苦悩に打ち勝つことができなかった。


王を裏切ったばかりか、同じ円卓の友をこの手にかけ、ギネヴィア様の心すら救うこともできませんでした。


自分の裏切りに罰を願おうにも、王は家臣を罰するにはあまりにも優しすぎた。


私に騎士を名乗る資格はない…私は―――



◆ ◆ ◆



――なんて『恥知らず』なのだろう。



◆ ◆ ◆



―――朝。

パンナコッタ・フーゴは起床した。

(もうこんな時間か…)

時刻は7時半をとうに過ぎている。
遅刻するといろいろと面倒なので、急ぎ気味に制服に身を纏い、朝食を抜いて自宅を出る。
通学にいつも使っていることになっている道を無言で進む。
その道を追うにつれ同じ道を歩く同校の生徒が数を増す。
かなり急いで家を出たので、寝癖が出ていないか、自身のブロンドの髪を他人に気づかれないように触る。
当然だが、他の学生はフーゴの髪のことなど見ていない。
彼を一目見るとすぐに目を逸らすからだ。
彼を見た学生は、必ず歩くスピードを速めるか、逆に遅くする。
フーゴと隣り合って歩いていては、いつキレて暴力を振るわれるかわかったものではない。
フーゴは学校で"そういう"扱いをされていた。

校門をくぐる。なんとか登校時間には間に合ったようだ。教室の席に座り、一息つくために校舎へ歩を進める。
廊下で学校の教師とすれ違うと、その教師はフーゴに道を譲るかのように廊下の端へ身を寄せる。
教室の戸を開けて入ると、中でガヤガヤとしていた空気が一度静まり返り、また活気を取り戻す。

「学校……」

フーゴは若くしてギャングとして活動していたため、あまり学校というものに馴染みがない。
特にジャポーネの学校には行ったことがないので、新鮮味を感じていた。
それと同時に、『学校』という単語はギャングになる前のボローニャ大学までの日々を思い出させるため、奇妙な懐かしさも感じていた。

(聖杯…それを巡って殺し合う…か)



◆ ◆ ◆



フーゴはブローノ・ブチャラティと決別した後、バーでピアノを弾きながら過ごしていた。
ボスの娘を守るために組織を敵に回す…それは危険な選択肢だとあの場にいた全員が分かっていたはずだ。
本当にぼくの方が"正しい"のか?
果たしてあの時、"裏切る"ことは間違っていたのだろうか?
そんな疑問を胸に半年間を過ごした。

そして、フーゴの精神をスタンガンで焼かれたような衝撃が走ったのはつい最近のことだ。
パッショーネのボスが突然姿を現したという噂がフーゴの耳に入った。その者の名は――


――ジョルノ・ジョバァーナ。


チームの新入りの少年だった。
聞いた話によると、ボスがまだ若いことに要らぬ反感を買わないために正体を隠してきたが、
無関係の娘が巻き込まれる抗争にまで発展しかけたために、姿を現したらしい。
現在は、裏社会の清浄化に乗り出しているらしい。きっとブチャラティの嫌悪していた麻薬もその煽りを受けていることだろう。
それを聞いてから間もなく、フーゴは組織から呼び出され、決別したチームの結末を知ることになる。

ブローノ・ブチャラティ、レオーネ・アバッキオ、ナランチャ・ギルガが死んだ。
苦楽を共にしたはずの殆どの仲間が死んだ。
――心臓に見えない穴を穿たれた気分だった。
絶望と共に自問自答を繰り返した。

――あの時、引き返していれば。
――あの時、ぼくがしっかりとブチャラティを説得していれば。
――3人は死なずに済んだんじゃないか?
――あの瞬間に戻れるなら。
――いずれ起こることを知っていて、もう一つのあり得た結果を手にできるのなら。




そう考えているうちに、視界がぼやけてきた。
辛いことを考えすぎたから眠くなってしまったのだろうか?
えも言えぬ感情に蝕まれていく精神に耐えかねたのか、フーゴは暗転していく意識に全てをゆだねた。




明日はジュゼッペ・メアッツァに行かなければならないのに、フーゴはどこにもいなかった。



◆ ◆ ◆



聖杯戦争。どうやら、ぼくはそんな殺し合いに参加しているらしい。
ここは冬木という地らしいが、ジャポーネには来たことがないから馴染みが薄く、過ごしづらい。
しかも年代は1980年。フーゴの過ごしていた年代より前と来た。
誰がこんなところに呼んだのかはよくわからないが、ご丁寧に学生という身分まで用意してくれた。
どうやらぼくは『学年断トツトップの成績を持ちながらも教師を4kgの百科事典でボコボコにした前科のある不良優等生』という役回りらしい。
他の生徒がぼくを避けるのもそのせいだろう。

―――ある意味、ぼくに相応しい役回りだな。

教室の隅で、フーゴは自嘲気味に呟いた。

『…まだ、お気持ちの整理がついていないようですね』

そんなフーゴに話しかける存在がいた。
それも他人――NPC――に聞こえない念話で。

『……』

フーゴは何も答えない。ただぼんやりと窓の外を眺めている。
セイバーのサーヴァント、ランスロット。それがフーゴのサーヴァントの真名であった。
アーサー王物語の円卓の騎士ランスロットその人である。

『焦る必要はありませぬ。此度の戦は、まだ本格的に始まってはいおりません』
『……』
『聖杯を勝ち取るおつもりならば、私はあなたの剣となりましょう。聖杯戦争から逃れたいのであれば、私はあなたの盾となりましょう』
『……わからないんだ』
『わからない、とは?』

フーゴはランスロットに合わせ、念話で返す。
頭から言葉をなんとか絞り出しながら文を紡ぐ。

『聖杯の力でぼくの思うようにしていいのか。これからどうすればいいのか。――それすらも』

確かにフーゴは心のどこかでやり直したいと願ったかもしれない。
だが、仮に聖杯でチーム全員が生き残る結果を手に入れたとして、
それはジョルノ達が手に入れた『真実』を、それに向かおうとする意志を否定することに繋がるのではないか?
それをジョルノは、ブチャラティは、皆は良しとするのだろうか?
もしブチャラティだったら、どんな決断を下したのだろうか?

数多の参加者を敵に回して聖杯を取るか。手がかりも何もないのにあるのかすらわからない殺し合いから離脱する方法を探るか。

『セイバー…教えてくれ。あのアーサー王伝説の裏切りの騎士とも呼ばれた君ならば…どうする?』

パンナコッタ・フーゴ。彼は聖杯戦争の場でも、一歩を踏み出せずにいた。
彼にできることは前に進むことも戻ることもままならず、事実から目を背けて他のNPCと同じくジャポーネでの生活を続けることだけだった。

ランスロットは一段落置いてから、

『騎士として、正しき道を進む――』

と霊体の状態でフーゴの問いに答えた。

――何が「騎士として正しき道」か。

内心で、自らを嘲りながら。

確かに、フーゴにかけた言葉は本心だ。
ランスロットが自らの意志で動けるのであれば、高潔な騎士に違わぬ行いを為したであろう。
だが、先ほどフーゴの言ったように、ランスロットは「裏切りの騎士」だ。
たとえランスロットが「理想の騎士」に近い姿で召喚されようと、その事実と記憶は消えることはない。
自分は、バーサーカーの姿の方が相応しい。
そうであるはずなのに、今、ランスロットはセイバーとして現界している。なんという皮肉だろう。

『…理想の騎士らしい答えだな。ブチャラティも似たようなことを言っていた』
『――と言うのは、今のマスターにはあまりにも酷でしょうな』

それでも、ランスロットはあくまで「理想の騎士」であり続ける。
過去の自分を引きづりながらも、剣士である己を呪いながらも。

『もう一度言いましょう、焦る必要などありません。今はご自分の気持ちを整理されるのが先決です』
『セイバー…』
『私はこうして、マスターのサーヴァントとなった身。我が宝剣にかけて、どこまでもお供致します』

目の前で苦悩するマスターの救いになろうとする。
主君がために剣を振るう忠実な騎士として。


【クラス】
セイバー

【真名】
ランスロット@Fate/Grand Order

【パラメータ】
筋力B 耐久A 敏捷B 魔力C 幸運B+ 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔力に対する守り。
魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

【保有スキル】
湖の騎士:A
ランスロットの異名。湖の乙女こと妖精ニミュエに育てられたことに由来する。
湖の乙女の加護により、危機的な局面で優先的に幸運を呼び寄せる能力。
戦場以外においても効力を発揮する上、ランスロットは様々な者の危機を救ってきたことから、目前の救うべき人物にも幸運を呼び寄せることができる。
精霊からも祝福されたことを示す「湖の騎士」という名は、ランスロットにとっては誉れであると同時に呪いでもある。

無窮の武練:A+
ひとつの時代で無双を誇るまでに到達した武芸の手練。
心技体の完全な合一により、いかなる精神的制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。

【宝具】
『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:30人
相手の策によって丸腰で戦う羽目になったとき、楡の枝で相手を倒したエピソードからくる宝具。
手にしたものに「自分の宝具」として属性を与え扱う宝具能力。
どんな武器、どのような兵器であろうとも、手にし魔力を巡らせることでDランク相当の擬似宝具となる
宝具を手に取った場合は元からDランク以上のランクならば従来のランクのまま彼の支配下に置かれる。
この能力の適用範囲は、原則として彼が『武器』として認識できるものに限られる。
また他の英霊の宝具を奪って使うことも可能だが、真名解放まで行えるのかは不明。

『己が栄光の為でなく(フォー・サムワンズ・グロウリー)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人
友人の名誉のために変装で正体を隠したまま馬上試合で勝利したエピソードからくる宝具。
他者に変装し、自分の正体を隠蔽する能力。
敵を欺くことも可能だが、あくまで外見を装うだけで能力や性格までも模倣することはできない。
マスターは本来、サーヴァントの姿を視認すればそのステータス数値を看破できるが、彼はこの能力によりそれすら隠蔽することが可能。

『無毀なる湖光(アロンダイト)』
ランク:A++ 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
上記二つの宝具を封印することによって解放できる、ランスロットの使用していた剣であり、絶対に刃が毀れることのない名剣。
「約束された勝利の剣」と起源を同じくする神造兵装。
セイバーの全てのパラメーターを1ランク上昇させ、また、全てのST判定で成功率を2倍にする。
更に、竜退治の逸話を持つため、竜属性を持つ者に対しては追加ダメージを負わせる。
バーサーカーで召喚された際は魔剣の属性を得ていたが、セイバーとして召喚された場合は「理想の騎士」本来の姿にもっとも近い状態で召喚されているため、
彼の剣もその在り様に応じて聖剣の属性を維持したままとなっている。

『縛鎖全断・過重湖光(アロンダイト・オーバーロード)』
ランク:A++ 種別:対軍宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人
『無毀なる湖光』に過負荷を与え、籠められた魔力を漏出させ攻撃に転用する。
他の聖剣とは異なる、剣技に優れたランスロットだからこそ本領を発揮できる使用法。
本来であれば光の斬撃となる魔力をあえて放出せず、対象を斬りつけた際に解放する剣技に寄った宝具。
膨大な魔力は切断面から溢れ、その青い光はまさに湖のようだと称された。

【weapon】
『無毀なる湖光』、あるいは『騎士は徒手にて死せず』で支配した疑似宝具

【人物背景】
円卓の騎士の一人、「湖の騎士」にして「裏切りの騎士」と呼ばれたランスロット。
アーサー王の妻ギネヴィアと恋に落ちた彼は、
「完璧なる騎士」であるが故に愛する女を救うことも王を裏切ることもできず、
ギネヴィアの不貞が暴露されたことで円卓の騎士の座を追われ、ブリテン崩壊の一端を担ったという汚名を受けた。
本来のクラスであるセイバーとして現界した場合、正義を愛し、女性を敬い、邪悪を憎む「理想の騎士」本来の姿にもっとも近い状態で召喚される。
だが、ランスロット自身は誰より、「セイバー」であることを皮肉に考え、バーサーカーとして召喚されることを何よりも自分にふさわしいと確信している。
自分こそ、ブリテンの滅びに加担したのだから――――。

【サーヴァントとしての願い】
セイバーであることを皮肉に考えているが、それでもあくまで騎士としてマスターに仕える。


【マスター】
パンナコッタ・フーゴ@恥知らずのパープルヘイズ -ジョジョの奇妙な冒険より-

【マスターとしての願い】
分からない。

【weapon】
  • 「パープル・ヘイズ」のスタンドビジョン
スタンドで格闘戦ができる。
単純な力も非常に強く、自身の体をかなり遠くへ投げられる。

【能力・技能】
  • スタンド「パープル・ヘイズ」
破壊力:A スピード:B 射程距離:C
持続力:E 精密動作性:E 成長性:B

能力は『殺人ウィルスをばら撒く』。
パープル・ヘイズの両手拳に付いているカプセルに入っており、そのカプセルが割れると周囲にウィルスが撒き散らされる。
そのウィルスを呼吸で吸い込むか皮膚から体内に侵入すると約30秒という短い時間で『どう猛に』体内で増殖し、
生物を内側から腐らせるようにして殺してしまう。
一旦殺人ウイルスに感染したらスタンドを解除しても増殖は止まらず、
スタンドの本体であるフーゴ自身もウイルスに感染すれば死ぬ。
しかし、太陽光や照明等といった光で殺菌されてしまう。

【人物背景】
かつてのブチャラティチームの一員だったイタリアンギャング。
普段は落ち着きのある紳士的な性格をしている反面、とても短気でキレやすい。
元は下級貴族の出身で、あらゆる分野で光る才能を持っていたため、幼いころから徹底的な英才教育を施されてきた。
家からの金による補助もあるものの、頭はよく、13歳でボローニャ大学に入学できるほど。

しかし、祖父による強制と最悪な家庭環境、クラスでのいじめ、そして彼の心の支えであった祖母の死に目にも会わせてもらえず、限界に達したフーゴは自らを叱りつけた教授を殴り倒してしまう。
その後、警察に拘留されていたところをブチャラティに拾われてギャングとなる。

ところがボスの方針に反抗し組織を裏切る道を選んだチームメンバーに賛同することができず、一人チームから離脱した。
結果的に生き残ることができたが、このことはフーゴにとって大きなわだかまりとなっている。

この聖杯戦争では、ジョルノ達がディアボロに勝利し、ブチャラティ、アバッキオ、ナランチャが死んだことを知った時点からの参戦。

【方針】
分からない。



【把握媒体】
ランスロット:かなり新しい方のサーヴァントですが、Fate/GOのwikiの個別ページで台詞一覧が閲覧可能。
セイバーランスロットはメインシナリオ第六章でも登場するのでそちらでの把握を推奨。某動画サイトで把握可能。

パンナコッタ・フーゴ:ジョジョ5部全巻読破した上で恥知らずのパープルヘイズを読むのが望ましい。
なお、参戦時期としては恥パのかなり序盤に当たるので、場合によってはミスタとの会話まででも一応の把握は可能。

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最終更新:2016年08月05日 22:08