「生きる」ということは即ち、「恐怖」というハードルの連続だ。
苦痛への恐怖。失敗への恐怖。未知なる事象への恐怖。分かり合えない他人への恐怖。
人生という道の途上には、そういった高低様々なハードルが常に聳え立って、走者の行く手を阻んでいる。

当然のことだが、現実の競技のように跳び越さなければ失格、退場などという掟は何処にも無い。。
誰と競っているわけでもないのだ、そのハードルを乗り越えられないと感じたのなら、別の道を探せばいい。
陸上トラックと違い、人生は一本道ではない。

だが、それは、紛れも無く恐怖からの逃避だ。
人生という退路なき道の途上で、人が唯一取り得る惨めな逃避手段だ。
障害を拒み、安全なルートを選び続ける限り、心身の成長など望むべくもない。
曲がりくねった歪な迂回路を進み続けた先に、満足の行くゴールが待ち受けている筈がない。

このハードルの性質の悪い所は、乗り越えなかった以上、いつか必ず、再び目の前に立ち塞がってくることにある。
走り続けている限り何度でも、何度でも。徐々にその足を天高く伸ばしていきながら。
逃げれば逃げるほどに人は悪循環に陥り、真っ直ぐな道筋への軌道修正を困難としていく。

負の連鎖から解き放たれるには、もはや、恐怖と向き合って、対決するよりほかない。
心が完全に諦観し、「避けて当然」という思考で凝り固まってしまうその前に。

目を瞑り、猪突猛進にハードルに向かっていくのでは駄目だ。
思考を止め、ただ目標に向けて走るだけならば、本能と反射のみに生きる虫にでも出来ること。
ハードルの高さを認識し、受け入れ、その上で突き進む覚悟を決めてようやく、対決と呼べる境地に至るのだ。

その覚悟を、過酷な道を往く者に与えられた唯一無二の武器を、人は「勇気」と呼ぶ。
「勇気とは恐怖を我が物にすること」とは、誰の言葉だったか――。


「では、貴方は聖杯を求めない、と。そう仰るのですね、マスター」

問いを投げ掛けたその人物は、まさしく超人であった。
優に2メートルを越す体躯は、雄大な山脈を思わせる隆々たる筋肉によって、見事な逆三角に造り上げられている。
逞しい腹筋を曝けだした無骨な意匠の銀鎧が、その肉体美を一層引き立てていた。
顔を包む、フルフェイスの西洋兜めいた覆面(マスク)が眩いばかりに煌き、額には光色を顕示するように刻まれた「銀」の一文字。
深く彫り込まれた、威厳と慈愛を兼ね揃えた表情の尊貴は、古代のアルカイック彫像も及ばぬであろう。

その銀の巨影の威容を、たった一言で示すとするなら、やはり超人という形容がよく似合う。
ヒトの形でありながら、人の条理を凌駕する領域に立つ超人(スーパーヒューマン)。
或いは、テレビの向こう側から飛び出て来た超人(スーパーマン)か。
事実として彼は、読んで字の如く「超人」と呼ばれる種族として生まれついた存在であり、人類とはその本質を決定的に異にしていた。

「ああ。僕に、聖杯に託す願いは無い」

問いに応える者は、一見すれば常人である。襟までしっかりと閉じた学生服に身を包んだ青年だった。
学生服の濃緑に覆われた細く引き締まった身体は、長く伸ばした前髪を枝垂れさせたヘアスタイルも相俟って、彼に植物のような雰囲気を与えている。
さながら夜の寒さに耐えて立つ柳のような、静かな力強さがその五体には秘められていた。柳のようではあるが、蒲柳の質は微塵も感じさせない。
超人の巨体を、両瞼に2本の傷跡走る切れ長の双眸で見上げ、言葉を続ける。

「いや、願いと呼べるものは、かつて僕にもあったのだと思う」

そこまで言って、自身の右手、その甲へと目を向ける。刻まれた紋様が、神秘的な輝きを湛えていた。
この途方もない魔力によって形成された刺青こそ、願望実現を賭けた血戦への参加証明。
万能謳う聖遺物に見出されし者、マスターであることの証左にして、目の前に立つ銀の超人――サーヴァントとの契約の印。
青年にとっては戦地たるこの街、冬木行きの片道切符でもあった。

「しかし、それはおそらく、既に成就しているんだ。
あの旅の終わりに。僕の命が尽きた、あの瞬間に」


青年――「花京院典明」は元の世界において既に落命したはずの人間である。
「スタンド(側に立つ者)」と呼ばれる異能力に目覚めた者――「スタンド使い」であるが故に彼が巻き込まれた戦いの運命。
現代に蘇りし邪悪なる吸血鬼「DIO」と、百年の昔よりDIOを討つ宿命を受け継いだ血統「ジョースター」を巡る奇妙な冒険。
その終着地、エジプトはカイロにて、DIOの未知なるスタンド「世界」に一騎打ちを挑み、彼の命の灯は掻き消えた。
決して美しい最期ではない。「世界」の拳に腹部を打ち抜かれ、鮮血と臓物を撒き散らしながら迎えたその死に際は、無惨とさえ呼べるものだろう。
しかし今、昭和五十五年の時代にて再び生を得た彼の表情に、悔恨の念は無かった。

花京院典明という青年は、その静謐な気質の裏に激情を秘めた人間である。滅多に表には出さないが。
何者であろうと自身を侮辱し、誇りを汚す者を許しはしない。如何なる恐怖が立ち塞がろうと、必ず克服し、乗り越える。
エジプトを目指すジョースターの子孫たちに協力を申し出たことも、その精神性に起因していた。

かつて「DIO」という絶対的な恐怖の前に膝を付き、甘美なる逃避――唾棄すべき屈服を受け入れてしまったあの瞬間より、彼の覚悟は完了していた。
もしも、あの己の人生において最高、最大、最恐のハードルを乗り越えることが出来たなら。そこが、自分のゴールとなっても構わない。
その決意を胸に抱き、五十日余りの旅路を駆け抜けてきたのだ。
命ある限り恐怖に抗い続けること。それこそが、花京院典明の願い。

「だからこそ、あの旅に、後悔は無かった」

敗れ去りはしたが、それは恐怖に立ち向かった末に辿り着いたゴールだ。
最後の最後まで己の信念を貫いたと、胸を張ることのできる結末だ。
仲間たちにはメッセージを遺した。死の間際に看破した「世界」の未知の能力、その正体を。
彼らならば、必ずDIOを破ってくれると確信している。

故に花京院典明は、現世への未練も、聖杯にかける願いも、持ち合わせてはいない。



「僕はこの戦いを止めたい。どうか、手を貸してくれないか」

花京院は、真っ直ぐにその巨躯を見据え、己のサーヴァントに請う。
理不尽に犠牲を強いる殺し合いを、彼は認めない。
再び与えられた命は、聖杯戦争の打破のために燃やし尽くす。

「あなたがそれを望むのならば、このシールダー、微力を尽くしましょう」

マスターの言葉を静かに聞いていた白銀の英霊、盾の騎士「シールダー」が、ようやく彫刻の口――覆面のように見えるそれは、どうやら彼の地顔であるらしい――を開いた。
シールダーの願望もまた、聖杯を打ち砕くことにある。

「我が真名はシルバーマン。始まりの正義と謳われながら、真の正義に至ることのなかったこの身なれど」

シールダーが、その巨木の幹のような右腕を差し出して言った。
人々の平和を脅かす悪に日々立ち向かう、善の超人勢力「正義超人」。
その開祖たる、原初の正義超人――それこそが、彼の真名だ。
白銀の如き高潔な心を宿した彼が、幾人もの犠牲の上に成り立つ、蠱毒めいた聖戦の存在を許すはずもない。

「エメラルドのように気高く輝く正義を秘めた、我が主。御身を護る盾となり、その生き様を見届けましょう」

サーヴァントとマスター。超人と人間。白銀と緑玉。
何もかもが異なる二人が手を握り合う。
だが、互いの掌を駆け巡る血潮だけは、どちらも同じほどに熱かった。




【クラス】
シールダー

【真名】
シルバーマン@キン肉マン

【属性】
秩序・善

【ステータス】

筋力A 耐久A+(A+++) 敏捷C 魔力D 幸運A 宝具A

【クラススキル】

対魔力:A(A+)
A以下の魔術は全てキャンセル。
事実上、現代の魔術師ではシールダーを傷付けられない。

騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、
魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。

保有スキル】

戦闘続行:B(A+)
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

正義超人:EX
超常的な力を持つ人非ざる種族「超人」。
複数の派閥に分かれた超人勢力の中でも、正義と友情を重んじる一派「正義超人」に所属することを示す。
平和を脅かす悪なる者と対峙した時、或いは絆を結ぶ友と肩を並べた時、その力は真価を発揮する。
原初の正義超人であるシールダーは、EXランクを有する。
後年には超人界の平和の神として信仰を集めた彼が持つこのスキルには、Aランク相当の「カリスマ」及び「神性」スキルの効果が含まれている。

超人レスリング:A+++
超人種に伝わる格闘技。人類の技術体系である「プロレス」に似る。
A+++ともなれば、宇宙規模で興隆する超人文明全体を見渡してもトップクラスの実力者。
防御を主体とした堅牢なファイトスタイルを得意とするが、守りだけではなく攻撃と技巧も超一流の領域。

白銀の闘志:A
その屈強な肉体よりなお堅固なシールダーの精神性。
彼は例え、肉親や同胞と決別し、殺し合うことになろうとも、自らの信念に一切の妥協を見せない。
それは言うなら、相手を殺め、自らの手を血に染めてでも己のエゴを押し通そうとする頑固さ、傲慢さ。
原初の正義である彼が秘めた、正義超人としてあまりに致命的なパーソナリティー。
あらゆる精神干渉を完全に無効化するが、このスキルが機能する限り、「闘いの中で相手と分かり合う」という正義超人の矜持はシールダーから遠ざかって行く。

【宝具】

『完璧なる盾(パーフェクト・ディフェンダー)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
如何なる攻撃も耐え凌ぐ絶対防御の構え。
この宝具を使用中は耐久値、対魔力スキル、戦闘続行スキルが括弧内のランクに上昇し、低位の宝具では傷ひとつ付けられない程の防御力を獲得する。
守り一辺倒ではなく、相手の隙を突くカウンターに転じることも可能な攻防一体の技。
生前のシールダーならば驚異的なスタミナにより、この構えを半永久的に維持することを可能としただろう。
但し、英霊として現界した現状では一定量の魔力消費を伴う。

『迸る銀閃、傲慢なる煌き(アロガント・スパーク)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1人
シールダーのかつてのフェイバリット・ホールド。
上空へ跳ね飛ばした相手の関節を複雑に極め、共に落下。相手を地表へと衝突させる。
技の工程一つ一つが致命的な威力を持ち、直撃すれば頑強に鍛え上げた肉体を持つ超人でさえ、全身が無惨に拉げた亡骸を晒すこととなる。
完全に技が極まれば相手の防御的、無敵の性質を貫通してダメージを与えるほか、戦闘続行などの一部スキルの効果を打ち消すことが可能。
技を掛ける者の絶対的な殺意によって完成に至る、まさしく「必殺技」にして、シールダーの苛烈な本性の具現。
シールダーは、正義超人の在り方と相反する欠陥技として平時にはこの宝具を封印している。
彼が、この呪わしき宝具を開帳する時が来るとすれば。
それは、和解の道を捨て、相対した者の未来を、自らの手で叩き潰すのを決意した瞬間にほかならない。

【weapon】

コスチュームの左腕に装着したバックラー(円盾)。
鈍器としての使用、スライダーのようにリングロープを滑らせての高速移動といった応用も可能。

【人物背景】
正義を見出し、正義を拓き、正義を育み。
しかし決して正義になれなかったひとりの超人。

【サーヴァントとしての願い】
マスターに助力する。

【マスター】
花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険

【マスターとしての願い】
聖杯戦争の打破。

【能力・技能】

  • スタンド使い
生命エネルギーの具現、パワーを伴ったビジョンである超能力『スタンド』に目覚めた者。
後天的に能力が覚醒するケースもあるが、彼は生まれついてのスタンド使いである。

  • 『法王の緑(ハイエロファントグリーン)』
花京院のスタンド。緑色に光輝くボディが特徴的な人型の像を持つ。
非力だが射程距離に優れる「遠距離操作型」に分類される能力。
全身を紐状に分解し、その分だけ本体の側を離れて活動することが出来る。最大射程は100m以上。
加えて、破壊エネルギーを掌に圧縮し、宝石状の弾丸として発射する攻撃技「エメラルド・スプラッシュ」を持つ。

【人物背景】
スタンド使いの高校生。
邪悪なる吸血鬼DIOに洗脳されるも空条承太郎に救い出され、彼のDIO討伐の旅へと同行する。
旅の果て、DIOのスタンド「世界」によって、命を落とす。

【方針】
悪意を持って戦いに乗る者がいるのなら、躊躇はしない。


【把握媒体】
花京院典明:
第3部「スターダストクルセイダース」
に登場。原作漫画、TVアニメ版お好みの媒体で。

シルバーマン:
「黄金のマスク編」(単行本13~17巻)及び現在連載中の新シリーズ「完璧・無量大数軍編」(単行本38巻~)。
「完璧~」にて深く設定が掘り下げられたキャラクターなので、そちらの把握は特に重要かと思います。

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最終更新:2016年09月04日 02:04