食物連鎖 (グロ注意)


村を出てもう3時間が過ぎた。
あたりは橙色に染まり、目に映る太陽もその半分が遠くの峰に隠れている。
既に足取りは重く、出発したときの2/3程度のペースに落ちてしまった。
…あと15分程で宿泊できる山小屋が見えてくるはずだ。
背負った大量の荷物が肩を締め付ける。痛い。
私は修道女だ。山間の小さな修道院修道院に勤めている。
修道院といっても道理を説くだけではない。
術式が使える者が集まり、それを駆使して人を苦から解放する集団だ。
のどかな場所だが度々モンスターが出るのが大きな問題となっており、
ある程度のいわゆる「術式」が使える私はその駆除要因として派遣されたわけだ。
若いのに大変ねえ、と人々はいうが私は余りそれを感じない。
むしろ私にうってつけの最高の仕事だと思っている。
無力な人間を助けることができる。そして実力があれば認めてもらえるなんて。
人同士きり付け合う軍とはまた違った「戦士」なのだ。
人を殺めるのは最終手段だ。だがいわゆる官僚は最終手段しか知らない。
自分の手を汚さずにとっとと邪魔者を排除する。その最たるが「戦争」だ。
…人を力で守るには軍に入る以外の道もあることを教えてくれた、そんな仕事だ。
まぁ不満を言うとすればそれは教えの中にある「家畜を食べるな」という項目かな。
おかげで私は人前でベジタリアンで居なければならない訳だが…まぁ我慢できる範囲だ。
修道院のない隣の村へ遠征する事も多い。
基本一人で行き、半日程度で全てを片付ける。
今日は人狼駆除の依頼を受けたのだが思ったより手を焼き、
予定を大幅にオーバーしてこんな夕暮れ時になってしまったわけだ。
人狼は人間と耳と尻尾をつけたぐらいの違いしかない連中なのだが、
彼らは好んで「人を食う」為にモンスターに分類されている。
少し話せば交流ぐらいはできそうなものだが人さらいは完全にアウトだ。
結局捕まえたのは5匹の群の中の4匹で、残り1匹は取り逃がしてしまった。
だが連中は基本群で行動するために1匹で行動することはまず無い。
万一襲われた時のためのトラップと駆除道具も置いてきた。
その後早足で山を越えれば今日中に修道院へ帰れるだろうと踏んだのだが、
それが大きな誤算だった。結構疲れが出てペースが上がらない。
仕方が無いので今日はあきらめて山小屋で寝ればいい、と思って…
そして今に至る。
人一人がやっと通れる程度の山道を踏みしめる。
日が暮れるまでには山小屋の中に居たい、野菜で何作ろうかな。
そんなことを考えながら遠くに目をやると、誰かが先で立っているのが見えた。
ん、誰だろう。自然と足が速くなる。そして段々と影がはっきりしてきて…
「…あ、人狼…」
そこに立っていたのは今日取り逃がした人狼だった。彼女は一歩前へでる。
「よくも…よくも私の仲間を殺したわね!」
金色に輝く瞳が私をまっすぐにらみつけていた。
「何を言ってるの?人を食べる畜生に言われたくありませんね。」
私はニヤと笑うと一歩前へ出る。
今日散々相手にした連中だ。やろうと思えば15秒で始末できるだろう。
それにコイツがここで出てきてくれたことは私にとって色々と好都合だ。
「うるさい!あたしたちが人を食べるのはあんたたちが牛や豚を食べるのと一緒なの!」
「あら、だからこそ畜生なのですよ?」
彼女の顔が赤くなる。あらあら、怒ると冷静な判断ができなくなるというのに。
しかし勢いに任せて攻撃することは無い様だ。
仕方が無い。私はずいずいと前に進んでいく。15m、14m…あと少しで射程範囲だ。
だが次の瞬間、私は右足をとられ前に大きく倒れこんだ。
…しまった。仕掛けがあったのかっ!
倒れると同時に後頭部に強い衝撃を感じた。
それっきり私の意識は暗闇の中に吸い込まれた。悔しさ、憎さを強く、色濃く表したまま。
―やったか?青い修道着に身を包んだ若い女が足元に倒れた。
一応一発殴っておいた。髪をひっぱり頭を無理やり上げるとある樹液を流し込んだ。
これでしばらくはおきないはずだ。誰が畜生だ。お前こそがまさに畜生だ!
女を背負うと道を元着た方向へ走り出した。
さっき途中で山小屋があった。そこでコイツを切り刻んでやろう。
仲間の分まで、たっぷり、そして骨の髄まで。
山小屋に到着すると私は床に女を放り出した。
さて、コイツはどうやって食べようか。やっぱり踊り食いがいいよね。
「その前にちょっと休憩…」
床に座り込むとしばらくじっと前を見つめていた。
そして気が抜けたのか、いつの間にかうとうとと目を閉じた。



目を覚ますと木目のある天井が視界に飛び込んできた。
起き上がると辺りを見回した。ずいぶん時間がたったのか、もうすでに夜だ。
奥に竈があり、その横に食器や調理道具が並んでいるのが見えた。
近寄って桶に突っ込んである大包丁を手に取った。
…さぁ、これから料理してやろう。
この憎たらしい女を。…いや、畜生を。
大きく右手を振り上げ、一気に女の方に叩きつけた。
狼女は痛みで飛び起きようとしたようだが私が包丁で押さえつけていることもあり
体をビクン、と震わせる程度に収まった。
「…なっ、な…!」
狼女はなぜお前がここに居るんだとばかりに目を大きく見開いている。
「あの程度でイカれる私じゃありません。
 あなたたち畜生を相手にしてる分普通の人よりよっぽど強靭ですからね。」
ぎりぎりと包丁を肩に押し込む。こっ、という固い感触とともに包丁は進みを止めた。
「うぁ、うああぁぁぁ、痛い、痛いって!」
じたばたと暴れる狼女の腹部に一発鎮静剤を叩き込んだ。
「ぐふぁ…あぁうぅ…」
おとなしくなった隙に台所まで引きずると、壁にかかっていたロープで胴、手足をそれぞれしばりつける。
狼女の口から一筋の血液が流れる。私はそれをなめとると彼女の頭をなでた。
「なっ、なにするの!?気持ち悪いからあっち行って!」
「あら、お元気なんですね。まぁ生きのいいほうがなおよしですし。
 これから貴方には人間の気持ちをわかってもらおうと思いまして。」
一瞬理解できなかったのか動きが止まったが、すぐに顔をゆがませ私を凝視した。
「同じ気持ちって…も、もしかして…?」
「ご想像の通りですね。そう、私の食料になってもらいます。」
「ふ、ふんっ!そんなことできるわけ無いわ!気持ち悪いってバラすだけでしょ!?」
「あら、殺されることには抵抗がないんですね。」
彼女は牙をむいて私に襲い掛かろうと必死に体をひねる。
「それにそんなことはありません。ヒントは私の職業柄です。」
狼女はなおも何かをわめいていたが、突然彼女の血の気がさぁと引いてゆくのが分かった。
「私は職業柄牛、豚、鳥…まぁあんまり食べる人いないですけど犬、猫も。
 いわゆる家畜が食べられない生活をしているんです。
 でもですね、実はこの教えには大きな穴があってですね…」

「肉を食べてはいけないとはどこにもかいてない。」
狼女は何かをいいたそうにパクパクと口を開いたり閉じたりしている。
「そこでですね、私たちは食べるわけですよ。そう。家畜、じゃなくて鬼畜を、です。」
私は彼女が律儀に一緒に背負ってきてくれた鞄から金属製の棒を取り出した。
「鬼畜は私たちならすぐに手に入りますし、処理後のことは誰も気にしませんから。」
彼女の腕におもいっきり棒を突き刺した。
棒は彼女の肉を裂き、骨を砕き、そのまま机に突き刺さり振動した。
「あぁ…い、いや、いやだぁぁぁぁ!」
「本当はこのままちぎって焼いて食べてもおいしいんですけど、
 先ほど行ったようにちょっと貴方には人間の気持ちを分かってもらうためにも、
 今日は踊り食いで行きましょう。」
私は腕から流れ出る血を吸い上げた。
狼女の口から叫びとも喘ぎともない声が漏れる。
傷口に先ほどの包丁をあてがい肉を切り裂き、肉片をテーブルに放る。
「痛いよ!いや!やめてよ、私の腕食べないでぇ…!」
「あら、貴方と同じようにこれは私にとって当然の行為ですから?
 仕方がありませんねぇ。自分で行っちゃったんだから仕方が無いですね。」
最高に皮肉っぽくいってやった。悔しそうな顔が最高だ。
肉片をつまむと口の中に放る。脂分が豊富で結構まろやかな味わいだ。
人間にそっくりのコイツを食べるのは最初はどうかと思われたが結構おいしい。
そのまま彼女の叫び声をBGMに腕の肉を一枚、また一枚と切り出しては口に入れる。
今の私をみたら一般人はきっと度肝を抜かして逃げてゆくに違いない。
青い修道着も返り血を相当あびてくろずんでしまった。
だんだん筋に当たることが多くなってきた。骨も露出してきたし、もう硬くておいしくないな。
「はい左腕は終わりです。筋肉のついてる鬼畜は組織の間に脂が乗るんでおいしいんですよ。」
彼女は歯を食いしばったまま自分の腕を見つめる。
時々動かそうとするのか血の出方が激しくなる。でももう動くことはない。
「あぁ、そうだ。後で自分の腕がどれだけおいしいか試食してみますか?
 ま、生きていたらの話ですけどね。」
「動かない…動かないよぅ…あたしの腕…いやぁ…」
それもそもはず、もう彼女の右腕の70%は私のおなかの中だ。
「あら、腕はいやですか?…それもそうですね。
 腕が無いと自分の腕を食べるときに苦労しますね。
 じゃぁ次は乳房いってみましょう。アレ、脂肪の乗り具合が最高なんですよね!」
私は勢いのまま首元に手を突っ込むと思いっきり服を引き裂いた。
豊かな乳房がその勢いでふるふるとゆれた。
また彼女がひぃっ、と小さく叫ぶのが聞こえる。
「人型だと少ししか取れないから結構これは貴重ですね。
 貴方の胸にボリュームがあってよかったです。」
包丁の先端を乳首にあてがい、小刻みに震わせ胸全体を揺らす。
そしてそのまま力をいれて刃を押し込み乳房を二つに切り裂く。
「い、いぎやぁぁあああぁ!ふぁ、うああぁぁぁん!」
狼女の叫び声がいっそうボリュームを増した。
「うーん、このやわらかさ、超一級品ですね。
 他の鬼畜のはもう少し硬いんですけどこれなら申し分ない。」
再び乳首に刃の真ん中を当てると今度は下に向かってすーっと刃を落としてゆく。
スライスされた白みがかった肉をくるくるっと丸めて口に入れる。
うーん…ここまでやわらかいと焼いたほうがいいかもしれない。
それにそのほうが脂がもっとにじみだしていい引き立て役になる。
「これはちょっともったいないですけど、後で焼くことにしました。
 何枚か焼けると思うんでそのときにはおすそ分けしてあげますよ。」
もう既に彼女は気がどこかに飛んでしまったかのように見えた。
目の輝きは無く、その唇が唱える言葉はいや、と助けて、と食べないで、の繰り返し。
うーん…やっぱりバラす前にトサツする理由が少し分かったかもしれない。

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最終更新:2008年08月07日 20:08