昔々ある所に、それはそれは愛くるしい少女がいました。
赤い頭巾をいつも被っていたので、赤ずきんちゃんという愛称で呼ばれていました。
ある日、その少女はおばあちゃんの家に遊びに行くことにしました。
呼び鈴を鳴らしても返事が無いので、家に入るとおばあちゃんはベッドで寝ていました。
「おばあちゃん、どうしてベッドで寝ているの?」
「それはね、風邪をひいたからなんだよ」
「おばあちゃん、どうしてそんなに声が低いの?」
「それはね、風邪をひいたからなんだよ」
「おばあちゃん、どうしてそんなに布団が膨れているの?」
「それはね、風邪をひいたからなんだよ」
「おばあちゃん、どうしてそんなに耳が大きいの?」
「それはね、風邪をひいたからなんだよ」

………
……………
このような問答が108回ほど繰り返されました。そして、先に折れたのは“おばあちゃん”でした。
「それはね……ってああああああああああああ!!」
布団に丸まっていた“おばあちゃん”が跳ね起きました。
ベッドの上に立ち上がったその姿は、おばあちゃんではなく、そして人間ですら無かったのです。
そう、布団の中にいたのは世にも恐ろしい人食いオオカミだったのです!
「って、ちょっと待てやぁ!気づけよ!おかしいだろどう考えても!部屋の暗さとかこのメスガキの目の悪さとか
さっ引いても気づくだろ!なんで100回以上もの質問の最中に気づかないんだよ!」
オオカミが至極真っ当なことをどこかの誰かに叫びますが、そんなことはどうでもよいのです。
おばあちゃんだと思っていたのが恐ろしいオオカミだと気づいて少女は必死で逃げようとします。
「おっと」
オオカミはそれに気づくと、その鋭い爪を少女の背中に向けて思い切り振り下ろしました。
「あっ…がっ…ああああああああああああああ!!」
来ていた服が背中の肉ごと抉り取られ、さらにその反動で勢いのついた体が壁に叩きつけられました。
壁によりかかったまま、少女はずるずると崩れ落ちました。壁に崩れ落ちた痕が赤い色で描かれます。
「ガハハ、まぁいい。こんな上質なエサは見たことが無い、存分に愉しませてもらうぞ。
 さて、どんな喰われ方がいい?足の先から喰い千切ってやろうか?腹を食い破ってやろうか?
 それともこの爪で食べやすいようにバラバラにしてから喰ってやろうか?好きなのを選べ!ガハハハ!」
オオカミの上機嫌な声が狭い部屋に響き渡ります。
オオカミとは対照的に痛みと恐怖に涙を浮かべていた少女はその言葉に目を見開くと―

「ちょっと待ってよ!こういうのって丸呑みにして後から猟師が助けに来るパターンじゃないの!?」
「…へ?」
上機嫌な声から一転、ぽかんとした表情で疑問符つきの声をあげるオオカミがそこに居ました。
「………」
「ぐっ・・・うぅぅぅぅぅ…あぁぁぁぁ…」
オオカミは無言。少女は抉られた背中の痛みに喘ぎながらポロポロと涙をこぼします。
しばらく少女の苦痛の喘ぎが部屋の中を木霊した後、オオカミはポツリと言いました。
「いや…丸呑みって言っても…俺そんなに大きくないし…大体丸呑みしたら味がわかんなくなるんだけど…」
ポリポリと爪で頬を掻きながら言った直後、なんの前触れも無く雷が近くの木に落ちました。
一瞬だけ明るく照らされた部屋の壁や天井には、赤い模様がベットリと―
それはおそらく、この部屋の“元”持ち主である少女のおばあちゃんの―
「いっ・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
少女はそれを見て、悲鳴を上げます…が、オオカミはその演出過剰ぎみの状況にすっかり萎えていました。
正直全然食事の気分ではありません。ですが、こんな極上のエサを放置しておくのももったいない気がします。
とりあえずオオカミは気分が乗るまで、待つことにしました。

(――――――――オオカミが待機しています、しばらくお待ち下さ…あっ!飛ばしすぎた!――――――――)

手足をもがれた少女が絶望の表情でずらりと並んだ牙を見つめます。
「ひぐっ…やめ…もう…いやぁ…」
もはや悲鳴はあがらず、うわ言の様に拒絶の言葉を繰り返しますが、オオカミの心には届きません。
オオカミは存分に絶望の表情を堪能してから少女の肢体を持ち上げると、その大きな口で少女の腹を食い破りました。
「ひぎゃあっ!…ごふっ!」
少女の口から絶叫と、血が大量に噴出しました。
オオカミは止まらず、続けざまに胸、腹、胸、腹と連続で食い千切っていきます。
それは例えるなら少女の踊り食いとでも言えるでしょうか。
いや、びくびくと体を震えさせている少女に喰らいつく様は暴れ喰いと言ってもいいかもしれません。
やがて、少女の中身が空っぽになったとき、オオカミはようやく一息つきました。
少女―もはやまともに残っているのは頭部だけ―を乱暴に床に放り投げます。
苦悶の表情のまま絶命した少女、その体からは内臓や肉は綺麗に喰い取られ、
残っているのは綺麗に残っている頭部から伸びた背骨とその周りの皮が少々。
歪な姿となった少女を置き去りにオオカミは家を出て行きます。
次の獲物を探し、喰らうため、その狩りは延々と、延々と―
物語の夢想を鮮血の現実に変えるため、猟師に撃ち殺されるまで、延々と、延々と―

                                                    ― BAD END ―

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最終更新:2008年08月07日 20:11