「よいしょ、よいしょ。」
とある野道に家の使いで荷を運ぶ少女の姿があった。
歳の程は十になったところ。しかし、若さのわりには妙にその足取りは重たげである。
「はぁぁ、お腹すいたぁ。」
少女の名前は"ミツ"、彼女の家は家計が苦しく、一日三度の食事もままならない程であった。
「あ、桃・・。」
そのとき、空きっ腹を抱えたミツの視界に入ってきたのは傍らの社に供えられた一顆の桃だった。
ミツは半ば無意識にふらふらと社に近づいていくと、桃へ手を伸ばした。
(・・・はっ!)
が、手に取ろうとした寸前その手を止める。
「あたしったら、なんてことを。」
我に返り道を進もうとする。
ぐぅぅ。無情に腹の虫が鳴く。
「・・・。」
再び桃へ目を向けるミツ。そして・・。
「お社の神様、ごめんなさい。あたし、とてもお腹が空いているんです。
このお供物いただきます。」
頭を下げるとミツは桃を手に取り、食し始めた。
「ご馳走様でした。」
食べ終え再び辞儀をすると、少し活力を得たミツは足早に帰路を急いだ。
その晩、皆が寝静まったころ、ミツの家に不穏な空気が流れた。
ミツが床について寝ていると枕元に誰かの声がかかっった。
「おい、娘。」
「ん・・。」
声に気がつきミツが薄目を開けると顔を黒い影が覆っていた。
「・・誰ぇ?」
「俺はお前が今日通りかかった社の神様だよ。
お前、よくも俺の桃を食ってくれたな。」
「えっ、神様ですか?さっきはごめんなさ・・」
そう言いながら起き上がろうとしたミツを、社の神は仰向けにし押さえ付けた。
「罰として、お前には"木"になってもらう。」
社の神はミツの口へ何かを押し込み飲み込ませた。
「ん!ぐぐっ!」
「くくく。今お前に飲んでもらったのは果物を実らせる妙薬の肥料だ。
俺は明日の晩また来る。待っていろよ。」
(ひりょう・・?)
ミツはそのまま気を失った。
翌日、目を覚ましたミツは昨晩のことを思い返していた。
「神様、あたしに木になってもらうって言ってたな・・。」
ミツは自分の身体を見回してみた。
小さく可愛らしい手。細くしなやかな腕。張りのあるピチピチした脚。
最近少しだけ膨らんできた胸。柔らかくまあるい腰。
いつも通りの自分の姿だった。
「やっぱり夢だよね・・。お供え物を取ったりしたからあんな怖い夢みちゃったのかな。
もうしないようにしよ。」
ミツは気を取り直し床を起った。
そのとき何処からか桃の香りがした気がした。
夜になり、昨晩のことも記憶の隅に追いやられた頃、
すやすや寝息をたてるミツに再び"あの声"がかかった。
「おい、娘。」
スー、スー。
反応を示さぬミツ。声の主は彼女の頬を叩いた。
パシンッ!「こら、起きろよ。」
「いたい・・なにぃ?」
意識を取り戻しゆっくり目を開けるミツ。
「俺だ、社の神様だよ。約束どおり来たぞ。」
「え・・神様?昨夜会ったのは夢じゃなかったの?」
「当たり前だ。今晩はお前の果実をいただきに来たんだからな。」
「???」
ミツには、社の神が何を言っているのか分からなかった。
「お前には木になってもらうと言っただろう。実はとうに生っていたはずだぞ。」
「でも神様、あたしは木になんてなってません。」
ミツは起き上がり、自分の肢体を社の神に見せた。
その体はいつもと変わらない・・否、変わらないはずだった。
「お前、気づかなかったのか。」
社の神の手がミツに伸びる。
ビリッ、ビリビリ!
手は下半身の服を引きちぎり、その腰をさらけ出させた。
「きゃ!神様なにを!?」
「ほうら、旨そうに実ってるじゃないか、瑞々しい桃が。」
神はミツの尻を指差してそう言うと、よだれを垂らした。
「これは桃なんかじゃありません。」
ミツは小さな尻を小さな手で隠すように覆う。
「さっきから旨そうな桃の香りがしているのに気が付かないか?」
社の神の言う通り、辺りに芳しい甘美な香りが漂っていた。
そしてどうやらそれはミツの腰から発せられているようだった。
「え、なんで・・?」
「だから、言っただろ?お前は桃を実らせる木になったんだよ。
そして俺はその桃を食う。」
社の神は舌なめずりするとミツを四つん這いにし、腰をつかんだ。
「いただきまーす。」
「え、ちょっと、や、いや、待っ・・。」
そしてミツの臀部に食らい付いた。
ガブリ。
「ひいっ!」
むしゃり、むしゃり。
「怖い、怖いよお。」自分のやわらかい二つの膨らみから食いちぎられる音がする。
ミツは恐怖にうち震えた。
「旨い、旨いぞ。喜べ娘、お前の果実は上出来だぞ。うへへへ。」
シャクシャク。むしゃむしゃ。
ミツの桃は桃と少女の尻の味を併せもち、絶妙な美味さを醸し出していた。
「ひいぃ・・うわぁーん!」
ミツは怖さと尻肉を失う焦燥感から泣き出した。
食われた箇所からは血の代わりに新鮮な果汁がジュクジュクと溢れてくる。
むしゃむしゃ、ゴックン。「ふう~。ご馳走様。」
社の神はミツの桃を粗方食い終えた。
「ひぐ、えぐっ・・。」ミツの目には大量の涙があふれている。
「よう、娘。お前の桃は本当に最高だ。明日の晩も食いに来てやるからな。」
「え・・・?」
ミツは不思議に思う。もう自分のお尻は食べ終えられたのではないか。
ミツは見ないようにしていたが、その腰回りは、肉をすっかり失い骨盤がむき出しになっていた。
「言い忘れたが、お前に飲ませた肥料の効能で毎日一つ、果実は実る。
俺は毎日お前の桃を食えるってわけだ。」
「そんな・・・。」
今後毎日こんな怖い思いをさせられると知り、ミツは絶望感を抱いた。
「そんな顔をするな。食った桃は朝にはまた実を付ける。お前の生活に支障はねえよ。
ただ、今日みたいに夜ちょこっと食わせてくれればいい・・・お前の果肉をな。」
社の神はほくそ笑みながらその場を立ち去った。
そのときミツはあることに気がついた。食われた腰には痛みが無い。
これも例の肥料の効能だろうか。
さっきまでは怖さのあまり気が付かなかった。
ミツは恐る恐る自分の腰を見た。そのあられもないすがたを目にし彼女は気を失った。
その晩ミツは寝言でしきりに「ごめんなさい」を繰り返していた。
翌朝ミツは目を覚ますと自分の腰を確認した。
社の神の言った通り腰回りは元の姿に戻っていた。
ただよく見ると白桃のような色をしていた。
社の神は宣言通り毎晩ミツの元へやって来るようになった。
自分の果実を食べにやってくるその者を毎度ミツはおびえた目で迎える。
ある日は、包丁で果肉を削がれてから食べられた。
またある日は、まんぐり返しをさせられ、秘所から食べられた。
そのまたある日は、大きな皿を持ってこられ、その上に乗らされて食べられた。
毎日の晩餐にミツは気が狂いそうであった。
毎晩とても美味しそうに自分の尻を食べる神を見ているうち、ミツにある思考が芽生えた。
(あたしのお尻って、そんなに美味しいのかな・・。)
ミツは自身の味に興味を持っていった。
「ううぅ、おなか減ったぁ・・。」
ある日の
昼下がり、ミツはひどい空腹に襲われていた。
例により、その日の食事をまともに摂ることができなかったのである。
その時、不意に桃の香りがミツの鼻をかすめた。
ぐうぅぅ。腹の音が響く。
「・・・食べちゃおうかな。」
呟くと、ミツは服を脱ぎ下半身を裸にした。
(だって、元に戻るんだもんね。)
手に包丁を握ると股間にあてがい、ゆっくりと刃を進めた。
ぐちゅり。
切り口からトロトロの中身が覗く。
果実の香りはいっそう強くなり、さらに食欲をそそる。
ぷちゅん。ミツは膣の回りの肉を切り取った。
「いただきまーす。」自らの果肉を口へ運ぶ。
「むちゃむちゃ。ん!」
その時、ミツの思考は飛びそうになった。
「美味しい~!なにこれとっても美味しい♪お腹へって無くても幾らでも食べれちゃいそう!」
ミツはその美味に酔いしれ、切り取っては食べ、切り取っては食べ、欲望のまま貪った。
「ふぅー。美味しかったぁ。」
ミツの腰は骨だけになっている。
ミツは果実を食べつくしてしまった。
そしてその直後に気付く。
「あっ・・・。」
今晩、社の神に振舞うべき供物を失ってしまったのだ。
「どうしよぅ・・。朝にならないと、お尻元に戻らないよね・・。」
自身の稚拙さを疎んだ。これが今回のいざこざを招いた原因とも言える、若干十歳の少女の幼さだった。
「でも、しかたないよね。事情を言って許してもらおう。」
その後、腰を失い動けなくなったミツは、自分の桃の味を思い出しながら食べた跡を愛おしそうに見つめていた。
夜になり、いつも通りその者はミツの元へやってきた。
「よう娘ぇ。今晩も馳走になるぞぅ。」
呼びかけには答えずミツは布団を頭から被っている。
「こら、起きろっ。」
社の神はバッとその布団を剥いだ。
「!!」
社の神はミツの姿に違和感を覚える。ミツの腰に肉が全く付いていなかったからだ。
「おい娘、その腰はどうした?」
ミツは上半身を起こすと頭を下げた。
「ごめんなさい。神様。とてもお腹が空いて、お昼にいただいてしまいました。」
しばしの間。
バシンッ!!
何かを叩く激しい音がした。
「!!!」
刹那、ミツの頬に激痛が走った。あまりの痛みに声も出ない。
社の神の張り手を食っていたのだ。
「この糞餓鬼ぃ!よくも俺の楽しみを奪いやがったなぁ!!」
社の神は鬼の形相でミツをにらむ。
「ご、ごご、ごめんなさい!ごめんなさい!許してください。」
必死に詫びを入れるミツ。
「いいや、許さん!こうなれば、代償にお前の残りの部分をいただく!」
「え?・・え!?」
社の神はミツの着ている服を破りさると、徐に彼女の上半身を持ち上げた。
「いただきまぁす。」
むしゃり。
「いやああああああああああああああ!!」
神はミツの小さな胸を噛み千切った。
泣きじゃくるミツ。
「むしゃむしゃ・・・。うむ、この未発達の胸はしこりの噛み応えが最高だな。くちゃくちゃ。」
神はこれをまたなんとも美味そうに咀嚼する。
「そんな・・ひっく・・神様が、人間を・・食べる・・なんて・・・ぐずっ。」
「ああ?そのことか。俺が社の神様っていうの、嘘だから。」
「え・・・?」
「社に供えられてた桃を拝借しようとしたらお前が今みたいに横取りしやがってさあ。
俺って本当はただの桃好きの化け物だから。だた、最近はもう一つ好物が増えたけどな・・
若い娘の肉っていう好物が。」
言うと、化け物は食事を再開した。
がぶり。
「きゃあああああ!!いぎいいいいい!!痛あぁいいい!!わああああああ!!」
腰のときと違い激痛を伴う捕食に、ミツは激しく泣き喚く。
「やかましいぞ!」
化け物は口でミツの口を覆い舌を入れた。
「うぐぅ!」
そしてミツの舌を引きだし、思い切り噛み付いた。
「おごごう!」
噛み付かれた反動でミツの舌は喉に詰まった。
「これで静かになった。ゆっくり食事を楽しむとしよう。」
むしゃり、むしゃり。
ミツはじたばたしたが間もなく窒息し、息絶えた。
やがてミツの身体は化け物によって食べつくされ、骨だけを残した姿になった。
「ふー、美味かったぁ。しかし、娘の肉ってこんなに美味いんだなぁ。またどっかの娘でも食いに行こうかな♪」
化け物は満足そうにその場を後にした。
翌日、朝日に照らされたミツの骨が一顆の桃を実らせていた。
―完―
最終更新:2010年05月06日 03:44