お前と共に見た全てが、私にも輝いて見えた。
 いや、私にとっての輝きになり、情熱的であり続けたお前こそが……私の全てだった。
 今更になって気付くとは、私はなんて愚かだったのか。この天井努もまだまだということか。


 お前と一緒にどれだけの景色を見て、私はどれだけの喜びを分かち合っただろう。
 そして、お前の輝かしい笑顔に、私は何度も心が満たされていた。
 だが、死という裏切りによって、私の心が永遠に満たされなくなった。


 お前を失って、私はどれだけ絶望しただろう。
 お前がいなくなって、私はどれだけ泣いただろう。
 お前に裏切られて、私はどれだけ失意に溺れただろう。
 お前のいない世界が現実のはずがない。これはただの悪夢で、目が覚めたらお前が笑顔で出迎えてくれる。


 何度、私はお前の輝きを取り戻したいと願っても、世界は何も変わらない。お前という一番星が消えても、世界は何事もなかったように動き続けている。
 私は心の底から失望し、この世界に対する怒りと憎しみを抱いた。
 何故、彼を奪うのか?
 何故、私ではなく彼を犠牲にするのか?
 何故、あれだけ純粋だった彼がいなくなったにも関わらず、お前たちは今日も平穏に過ごしているのか?
 渦巻く疑問に答える者はいるはずがなく、私の憤りはマグマのように粘っていく。


 彼に捧げる為、私は街並みを燃やした。
 平穏をぶち壊す炎は豪快に広がるも、私は何も感じない。あれだけ美しかったはずの灼熱だって、今の私には色褪せて見える。
 ニュースで報道され、どれだけの人間が血と涙を流そうとも、私にとっては遠い世界の出来事に等しい。
 ただ、虚しかった。周囲に当たり散らしたところで喪失感が晴れるはずがなく、何も変わらないことはわかっていたのに。


 彼と見たすべてのものが、私の網膜を灼くほどに残っている。
 美しい自然の色と香り、光り輝く星空の下で味わった風の感触。そのすべてを、彼は綺麗だと言ってくれたし、私も綺麗だったと感じている。
 でも、今の私には何の価値もない。星など豆電球の価値すらなく、緑などただ煩わしく踊るだけ。


 あぁ、何もかもが遠かった。
 彼がいなくなっただけで、私にとってすべてが遠い過去の異物に成り下がった。
 五感全てを失ったように、何もなくなった私など、生きていると呼べるのか。
 彼との思い出だけは胸の中に残っていて、未だに私の中で輝き続けている。だが、それもすぐにくすんでもおかしくない。
 せめて、私の中の宝物だけは汚さないように、彼への手土産として持っていこう。


 そう決意した矢先だった。
 私が、聖杯戦争に巻き込まれてしまったのは。



 私の脳裏には、聞き覚えのない単語が数多く焼き付いている。
 万能の願望器である聖杯。
 聖杯を巡って殺し合う戦争と、自らの願いと生き残りを賭けて力を合わせるマスターとサーヴァント。
 最後の一組になれば、聖杯の力でどんな願いでも叶えることができる。


 聖杯の力が事実であるかわからないが、煉獄の如く灼熱が私の中で燃え上がった。
 奇跡の力で、彼を取り戻すことができる。現に、目の前にはサーヴァントが召喚されたから、魔法の如く力が関与していることは確かだ。
 聖杯さえ手に入れれば、彼を救うことができる。
 他のマスターとサーヴァントたちを皆殺しにすれば、彼は私の前に戻ってきてくれる。
 彼の笑顔と幸せを取り戻せるなら、私は地獄に堕ちようとも何一つ後悔しない。鬼や悪魔と罵られようとも、痛くも痒くもない。
 彼の存在こそが、私にとってすべてなのだから。


 私の元に召喚されたサーヴァントは、鬼と戦い続けた男だ。
 すべての人間を守るため、鬼を前にしても心を燃やし続けて、そして命を落とした。
 だが、その実力は本物だ。多くの人間から崇められ、そして今も存在感を放つ佇まいはまさに英霊と呼ぶにふさわしい。
 そんな彼の力を、私は私利私欲のために使おうとしている。
 人間の儚さと美しさを冒涜しているであろう私を前にしても、彼は決して嫌悪感を見せない。
 それどころか、私すらも守ろうとしている。


 ーー私は、私の願いのためにお前の力を使う。

 ーー私を、鬼とでも思ったらすぐにでもその刀で私を屠ればいい。

 ーー私は、お前の責務を否定するマスターだからな。


 私は念を押す。
 本当なら、令呪を使って彼の意思を奪い、強引に戦わせることができた。
 しかし、私はそれをする気にはなれなかった。このサーヴァントの実直さが、彼と被って見えてしまったからだろうか。
 そして、サーヴァント……煉獄杏寿郎は、私の意思を知ってもなお、豪快な笑みを浮かべていた。


「それでも、俺は俺の責務を全うする! 俺が斬るのは、世を乱す鬼のみ!
 マスターだけではない! 罪なきすべての人を守ると、この俺……煉獄杏寿郎は誓おう!」


 煉獄杏寿郎の叫びには微塵の淀みも見られない。
 私の願いを受け入れて、灼熱の如く威圧感を放ち続けている。
 彼が放つのは、私のように他者を飲み込む炎ではない。大空を照らす太陽のように、煉獄杏寿郎は燃え続けていた。


【クラス】
セイバー

【真名】
煉獄杏寿郎@鬼滅の刃

【パラメーター】
筋力:A+ 耐久:C+ 敏捷:B 魔力:C 幸運:A 宝具:B

【クラススキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

騎乗:E
騎乗の才能。大抵の乗り物なら何とか乗りこなせる。

【保有スキル】

戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。

魔力放出(炎):A 
武器及び全身に炎を帯びた闘気を帯びさせ、瞬間的に放出することによって能力を向上させる。
日輪刀に膨大な炎を宿らせれば、鬼に対して絶大な効果を発揮する。

全集中・炎の呼吸:B
鬼と戦う鬼狩りが用いる全集中の呼吸の一派にして、五大流派の中でも歴史が長い呼吸。
炎の如く心を燃やすことで、杏寿郎の全ステータスが格段に向上し、あらゆる奥義を使うことができる。
炎の呼吸を用いている間、灼熱を彷彿とさせる威圧感によって、並の主従では瞬時に尻もちをつくだろう。


【宝具】

『玖ノ型・煉獄』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
煉獄杏寿郎が用いる炎の呼吸から繰り出される奥義であり、標的となった相手を周囲の大地ごと両断する。
自らの心を燃やした煉獄が、爆音と共に突進して繰り出す必殺の奥義であり、上弦の参と恐れられた猗窩座すらも大ダメージを与えるほどの威力を誇る。
鬼のような人外の存在には絶大の威力を発揮し、再生または回復に関する効果を一気に低下させることが可能。

【weapon】
日輪刀

【人物背景】
人間を喰らおうとする鬼に立ち向かう鬼殺隊の"柱"にして、炎柱の称号を誇る男。
その名の通り、炎の如く熱い性格で、鬼から人間を守る使命を絶対の誇りとしている。
鬼狩りとしての実力はもちろん、状況判断力や審美眼にも優れており、また正義感も非常に強いため人望にも溢れている。もちろん、どんな衝突が起きても、笑顔を忘れることはない。
上弦の参・猗窩座との戦いでは致命傷を負い、命を散らせてしまうも……彼は誰一人の犠牲も出さず、最期まで己が責務を全うした。

【サーヴァントとしての願い】
マスターと、そしてすべての人を守るために戦う。


【マスター】

天井努(敵対ロマンス)@アイドルマスターシャイニーカラーズ

【マスターとしての願い】
聖杯を手に入れて、彼を取り戻す。

【人物背景】
283プロダクション社長・天井努のパラレルワールドの存在。
長らくいた友を失い、その喪失と絶望に苦しみ続ける男。
最愛の友に向けた鎮魂歌として、各地で爆破事件を起こすほどの行動力に溢れている。

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最終更新:2021年07月12日 20:48