ある場所に、長年誰にも使われていないであろう廃校舎があった。
誰にも手入れされていないのか、校舎を形作る木材はところどころ腐り始めているようであった。
中の廊下にもたくさんの埃が積もっているようであった。
そんな廊下の上を一人の男が歩いていた。
その男性は気弱そうな雰囲気を醸し出すスーツ姿の老人であった。
彼はしばらく廊下を歩くと、やがて一つの教室の前にたどり着いた。
そしてを開き、その教室の中に入っていった。
「よく来てくれたわね。的場先生」
その言葉は男――的場勇一郎よりも先に教室の中にいた人物から発せられた。
その人物は高校の制服を着た女学生であった。
彼女は机や椅子の無い広々とした教室の奥の辺りに立っていた。
的場勇一郎とその女学生は教師と生徒の関係にあるようであった。
「君かね?私にこの手紙を送ったのは。こんないたずらは止めて、時間ももう遅いからすぐに帰りなさい」
的場は片手に紙を持ちながら女学生に対してそう言った。
その言葉は、あくまで教師として生徒に注意を促すための、優しい言葉遣いであった。
そして、彼が持つ手紙に書かれた内容は、要約すれば以下の通りであった。
『私は聖杯戦争のマスターとして、あなたに決闘を申し込みます』
また、その手紙には時間と場所についても指定されていた。
そして、彼らがいるこの廃校舎こそがその手紙で指定されたとおりの場所であった。
的場はその手紙の内容に従ってこの場所を訪れていた。
◇◆
「いたずらなんかじゃありませんよ。私は本気であなたと戦うつもりです」
『!?』
女学生がそう言い終わると同時に彼女の隣に先ほどまで存在していなかった人影が現れる。
それは身体を武者鎧に包み、手には太刀を持った大男であった。
その男こそが女学生のサーヴァントであった。
「な、何だねその人は!?どこから現れたんだ!?」
的場は鎧武者を見てうろたえたような様子を見せる。
「まだとぼけるつもりですか?嘘をついたって無駄ですよ。あなたがマスターであることくらい、もう調べはついているんです。……ていうか、私、あなたがサーヴァントと一緒にいるところを見ているんですよね」
「なっ!?」
「そもそも先生、魔術師じゃないのでしょう?こそこそ動き回っていたつもりだったんでしょうけど、まあまあバレバレって感じでしたよ」
「そ、そんな……」
「それからその右手に巻いた包帯、令呪を隠しているんでしょ?怪我とか言ってごまかすつもりだったんでしょうけど、普通に動かしていましたし不自然だったと思いますよ」
「ぐっ…」
女学生は的場がマスターであることに確信を持っていた。
それに対し、的場の方は女学生の追及に言い返せず、ただ尻込みしている状態となっていた。
「い、いや!私は何も知らないぞ!君の妄想に付き合っている暇はない!」
だが、的場はまだ自分は聖杯戦争に関係ないと言い張るつもりでいた。
「そこの彼が何者かは分からないが、どうせ雇ったマジシャンか何かなんだろう!こんなふざけた真似なんかに付き合わせず、早く帰ってもらいなさい!」
そして、的場はあくまでも自分はただの教師としての発言をするようにしていた。
聖杯戦争なんてものには一切関係の無い、どこにでもいる良心的な教師として振舞おうとしていた。
しかし、彼の言動には確かに焦った様子も見受けられた。
◆◇
「はあ…。同じ学校の生徒と教師のよしみで誰にも邪魔されずにささっと終わらせるつもりだったし、何ならサーヴァントだけ殺して先生は見逃すつもりだったんだけどなー。バーサーカー、やっちゃって」
女学生がそう言うと同時にこれまで動きを見せなかった鎧武者のサーヴァント――バーサーカーがついに動きを見せる。
「■■■■■■■!!!!」
バーサーカーは雄叫びを上げる。
大きな咆哮による振動で、教室は全体的に揺らされ、周囲で木がきしむような音も聞こえた。
バーサーカーは今にでも的場の方へと襲いかかりそうであった。
「ア、アサシン!出てくるんだ!!」
バーサーカーが今にも突進しそうな状態になった時、的場は遂に自らのサーヴァントを呼んだ。
先ほど的場が入ってきた教室のドアが再び開かれ、そこから何かが入ってきた。
「ヒィイイイイ…」
『!?』
新たに教室に入ってきた存在は、ひたいに大きなこぶを持つ老人の姿をした鬼であった。
この鬼を目撃した時、女学生はほんの一瞬だが驚かされることとなった。
確かに彼女は的場勇一郎が聖杯戦争のマスターであることを確信していたし、そのサーヴァントの存在にも注意を払っていた。
だけど、こんな近くに居ながらもその存在にこれまで全く気付いてはいなかった。
けれども、それはそのサーヴァントのクラス名を聞けば納得できることではあった。
アサシンクラスのサーヴァントが持つ気配遮断のクラススキル、その効果によりこれまで存在を察知させずに隠れていたのだろう。
しかし、彼女がアサシンに対して驚いた要素はもう一つあった。
(私は一瞬、こいつをサーヴァントだと認識できなかった。それに、前に見た時と姿が違う!?)
先ほどの発言通り、以前彼女は的場がサーヴァントと一緒にいる姿を使い魔ごしに目撃していた。
見つけられた理由は、どうも彼らは戦闘を行っていたらしくその騒ぎを聞きつけて様子を見に行ったのであった。
だがその時、的場のサーヴァントは子供の姿をしていた。
女学生が見た時戦闘は既に終わっていた。
一応、木を操る術を使うところはギリギリ目撃できていた。
そして、鬼のサーヴァントが敵マスターと思しき人間を食べていたところも、的場がそれを見て気分を悪そうにしていたところを彼女は確認していた。
だからこそ、鬼のサーヴァントが老人の姿をしていたことに彼女は驚かされることとなった。
(……でも、私のバーサーカーには敵わない!)
女学生は的場を魔術も知らない一般人であると判断している。
実際その通りであり、魔術師である彼女が的場と1対1で戦えば簡単に勝てるだろう。
例えサーヴァントを手に入れていたとしても、使い魔の運用方法の知識が無ければ力を十全に発揮させることもできないだろう。
それに加え彼女が引いたサーヴァントは凄まじい力を持つバーサーカー。
狂化されているため意思疎通はできないが、その分他のクラスのサーヴァントより高い性能を持つ。
より多くの量が必要となる消費魔力についても、優秀な魔術師の自分ならば問題ない。
そのため、彼女は的場に真正面から勝つことができると判断し、この場におびき寄せることとした。
そして今、最初の目論見通りにサーヴァント同士の戦いが可能な状態へともつれ込んだ。
「バーサーカー!アサシンを狙いなさい!」
女学生がそう叫ぶと同時にバーサーカーはアサシンの方へと向きを変える。
バーサーカーはそのままスピードを付け、太刀を振りかぶったまま突進を仕掛ける。
「ヒィィィ!」
しかしアサシンはその突進を跳び上がることで避け、その勢いのまま天井に到達しそこに張り付いた。
「ヒィィ!痛い!痛いいいぃぃぃ!やめてくれええぇぇ!いじめないでくれええぇぇ!」
だがアサシンは避けたとはいえ無傷では済まず、足に深い傷が刻まれてそこから血が滴り落ちる。
対しバーサーカーは猛り狂ったままその場で先ほどよりも更に足を踏み込む。
そして今度こそ逃がさないと、よりスピードを上げてアサシンへと襲いかかる。
「ギャアアアッ!!」
アサシンはその攻撃に対しても避けようとしたがギリギリで間に合わず、その胴体に太刀の刃が超高速で振るわれる。
そして刃はアサシンの首はまるで豆腐のように天井ごと切断された。
「やった!」
女学生は勝利を確信した。
例え鬼種のサーヴァントだとしても首を斬られては生きていけない。
所詮一般人の的場先生がマスターならばこの程度のもの、魔術師の自分に勝ち目はなかったのだと。
そんなことを考えながら女学生は次に的場の様子を確認する。
しかし、ここで彼女はある違和感を抱くことになる。
(……落ち着いている?)
的場勇一郎は彼女が知る限りでもとても気弱な人物である。
自分を守るサーヴァントが敗北したのならば、もっと慌てふためいてもいいはずだ。
一応うろたえている表情をしているが、女学生が思っていたよりは大きな変化が無かった。
だが、的場にそのような様子は見られなかった。
(……しまった!)
彼女はここで自分が油断していたことに気づいた。
「バーサーカー!私を守
最後まで言い切る前に、彼女の体は棒状の何かで突き刺された。
そして、彼女の体には電流が流れ、そのままその場で倒れてしまった。
◇◆◇
その時、一瞬で起きた出来事はアサシンのマスターである的場勇一郎自身にも視認できなかった。
だが、彼らの特性から一体何が起こっていたのかについては理解していた。
「カカカッ!"さあばんと"とやらも楽しいのう。あんなでかぶつを儂の団扇であっという間に飛ばせた」
「……儂は腹立たしいぞ、可楽。再びお前とこのような状況になったことが、ではない。我らが"ますたあ"の不甲斐なさに腹を立てているのだ」
「カカッ!それもそうじゃな、積怒」
そこに居たのは、先ほどの老人の姿をしたアサシンではなかった。
若い姿をした二匹の、それぞれ可楽と呼ばれた団扇を持つ鬼と錫杖を手に持つ積怒と呼ばれた鬼であった。
その二匹の鬼の舌には、可楽には「楽」、積怒には「怒」とそれぞれ文字が刻まれていた。
女学生は積怒により体に錫杖を突き立てられ、体をピクピクとさせながら床に倒れこんでいた。
もう、この女学生の命は風前の灯火であった。
先ほどの一瞬で起きた出来事をまとめるとこうだ。
首をバーサーカーに斬られたアサシンはそれぞれ、首だけの方からは体が、体だけの方からは首が新しく生えてきたのだ。
そうやって姿を変えて新しく現れた鬼こそが可楽と積怒であった。
可楽は一瞬の隙を付き、バーサーカーに向けて団扇をあおいだ。
その瞬間、バーサーカーは教室の壁を壊しながら何処かに吹っ飛んで行った。
それと同時に積怒が錫杖を女学生に突き刺し、雷を流した。
「さて、ますたあよ。こうして儂らが出てきたからいいものの、下手したらお前さんはここで死んでいたぞ?」
「貴様のような人間でも守らねばさあばんとの身である儂らは消滅してしまう。儂はその事実がなんとも腹立たしい」
「そうじゃそうじゃ。今回のことは令呪の一画でももらわねば釣りに合わんぞ」
「わ、私の行動が軽率だったことは認める!だけど令呪は待ってくれ!これはまだ切り札として温存するべきだ!」
可楽と積怒はマスターである的場の行動を糾弾する。
怪しい手紙にほいほい従ってしまい、危うくバーサーカーに殺される可能性もあった。
アサシンが助けたのも、ただ単に彼にとっても死んだら困るだけのことだ。
はっきり言ってしまえば、アサシンのサーヴァント――真名『半天狗』にはマスターに対する忠誠心が全く無い。
彼にとって自らの主とは生前の自分を鬼にした
鬼舞辻無惨ただ1人だけである。
マスターのために戦うのもあくまで自分が死なないためと聖杯戦争に勝利するためだけ。
もしそういった事情が無ければこのアサシンはすぐにでもマスターを見捨てるつもりだ。
そのため、自分を行動を縛ることになる令呪というものも気に入っていない。
「ハッ、儂は玉壺とは違うが…それもまたよしとしてやろう」
「…今はまだ予選期間だから見逃すが、儂はまだ信用したわけではないぞ。もし貴様が裏切るようなそぶりを見せれば…」
「令呪をもって命じる!バーサーカー!こっちに来なさい!」
『!?』
瞬間、積怒に串刺しされた状態であった女学生が息を吹き返し、右手を掲げながら叫んだ。
その手に刻まれた令呪の紋様から一部分が消失し、それと同時に可楽に吹き飛ばされたはずのバーサーカーが再び教室の中に現れる。
そして、可楽と積怒はそれに対し驚く暇もなくバーサーカーによる太刀の一閃で二匹ともその体を一気に切断されることとなった。
だが…
「……ああ、無駄な抵抗とは何と哀しいことか。儂らがこの程度で殺せぬことは先ほども見ただろうに」
「カカカッ!儂は喜ばしいぞ!こうして儂の出番ができたのだからな!」
切断された二匹の鬼の体は最初の老人姿の時と同じようにそれぞれの切り口から体が新しく生え、更に二匹の鬼に分裂、合計四匹の鬼となった。
「お前のような人間は…せめて即死できるよう儂が殺してやろう」
「カカッ!ならば儂はこっちの相手か!」
「哀」の文字を持つ鬼、哀絶はその手に十文字槍を持ち、それを女学生に向けて構える。
「喜」の文字を持つ鬼、空喜はバーサーカーの方へと顔を向けながら翼を広げ、口を大きく開けた状態となる。
「■■■■■!!」
バーサーカーはせめてマスターを助けようと四匹の鬼たちに襲い掛かる。
だが、その太刀が彼らに届く前に女学生とバーサーカー主従の聖杯戦争は終わる時を迎える。
その最期はあっけないものであった。
空喜の口からは超音波が発せられ、それを浴びたバーサーカーは太刀を振るうこと能わずその場から動くことを止められる。
その間に哀絶は十文字槍を女学生の首元へと突き刺した。
既に瀕死の状態であった女学生はこの哀絶の攻撃により即死、言葉を遺す間もなく息を引き取った。
バーサーカーはマスターの死により一気に魔力供給が追い付かなくなり、少しの間は耐えていたがやがて超音波を浴びている状態のまま現界維持もできない状態となった。
これにより、バーサーカーは教室の中から完全に消滅、後には一人の男と四匹の鬼、そして胴体と首に穴の開いた女子高校生の死体が残されることとなった。
◆◇◆
「全く…余計な抵抗で儂らの手を煩わせるとは、何と腹立たしいことか」
「儂はおもしろそうだと思ったぞ。この状況で諦めず戦おうとするとはなあ」
「儂は哀しい…。結局積怒は止めを刺しきれていなかったということだからな」
「哀絶、儂を責めるつもりか?」
「そんなことはどうでもよいではないか。それよりも儂はまた若い女の肉が食べられることが喜ばしいぞ」
「………」
四匹の鬼たちは戦いが終わった後にそれぞれ先ほど殺害した女学生の死体を囲んで談笑している。
そして彼らはその女の骸を喰らい、自らの糧にするつもりでいた。
的場はそんな自分のサーヴァントの様子を教室の隅の方で黙って見ていた。
◆
(くそっ…!一体いつまでこんな日が続くんだ…)
的場勇一郎は自らの現状を嘆いていた。
的場勇一郎は殺人犯である。
不動高校という学校で起こる学園七不思議になぞらえた殺人事件の犯人『放課後の魔術師』の正体だ。
※とは言っても、的場自身が本物の魔術師というわけではない。
彼が殺人を犯した動機を端的に言えば、過去の犯罪を暴かれないようにするためである。
30年前、勤めていた高畑製薬が治験の失敗により死亡させてしまった被験者の死体の隠蔽に関わった。
10年前、高畑製薬の犯罪と学園六不思議の関係の真実に気付いた女生徒を死なせてしまい、その死体を隠すために新たに不思議を一つ増やし、学園七不思議を生み出した。
そして彼はいずれ、死体の存在を隠すために自分の生徒を2人殺害、1人に重傷を負わせることになる。
このような表現となっているのは、彼がこの聖杯戦争に連れてこられた時間軸がその『学園七不思議殺人事件』が本格的に始まる前の時のためである。
この世界において、彼は元と同じく高校の物理教師のロールを与えられた。
この世界で暮らしていく中、彼は自分の罪の記憶を取り戻し、同時に聖杯戦争についての知識も与えられた。
そして、そんな彼の下に聖杯戦争で戦っていくためのサーヴァントとして召喚されたのが、アサシン『半天狗』であった。
(どうして私が聖杯戦争を、殺し合いをしなくてはならないんだ…!私はただ、教師として平穏に過ごしたかったのに…!)
だが、的場はどうも自分が聖杯戦争に参加することに対して乗り気ではないようであった。
そして、彼がそのようになっている理由はいたって単純なものである。
彼の心の大部分を満たしているのは、いわゆる死の恐怖というものである。
(アサシンはいつ私に牙をむくかも分からない。そしてまた、さっきの子みたいに聖杯戦争を理由に私を狙う者もきっと現れる。いやだ…死ぬのはいやだ!)
的場がこのような思考に陥っているのは、まず彼がアサシンとあまり良い関係を築けていないことが挙げられる。
「ヒィィ…ますたあ…食事は終わりましたぞ。ああ、だけど儂は恐ろしい…このようなことを続けていたら聖杯戦争には勝ち残れませぬ。このままでは儂はますたあを殺し、新たな主を見つけなければなりませぬ」
的場がうずくまっている間に、いつの間にか女学生の死体を平らげていたアサシンは元の老人の姿に戻っていた。
「前回だってそうじゃ。憎珀天がいなければどうなっていたか…」
「うるさい!そんなこと私だって分かっている!これ以上しつこくするなら令呪を使って黙らせるぞ!」
「ヒィィィ…!そんなことはお止めくだされ…!」
このように、的場とアサシンはマスターとサーヴァントとしての信頼関係を築くことはできていない。
これまで生き残れていたのはアサシンが持つ実力や特性、そして運が良かったとしか言いようがないのが実情だ。
アサシンは人間というものを格下に見ているきらいがある。
普段は低姿勢で口では自分が弱者でだと言ってはいるが、その実態は人間のことは全て餌だと思っているように感じられる。
さらに言えば自らの責任をマスターである自分や敵対している相手に押し付けようとする節もある。
的場はそのことに対し自分のことを棚に上げて呆れ、アサシンに対してあまり良い印象を持っていない。
(こんなことはもうたくさんだ…!さっきの子だって、前に戦った奴等だって、私に戦う気がないと分かればもう放っておいてほしかった…!)
的場は心の中でさらに恨み言を呟く。
そもそも彼が持つ願いとは、過去の犯罪が暴かれずに教師として平穏に暮らすこと、
彼にとってはただそれだけの事である。
そしてこの願いは、命をかけて戦うことで叶えたい願いではない。
しかし、マスターとなって聖杯戦争という舞台の上に立っている以上、聖杯を狙うマスター達は積極的に戦いを挑んでくる。
この事実が的場の恐怖を更に増大させる。
そしてこの状況下で唯一頼れるものはいまいち信頼することができていない、常に怯えた態度をとっている鬼のアサシンだけである。
アサシンの強さについてはもう既に分かったことだが、それが何らかの拍子に自分に牙をむくのではないかと思うと不安はより募る。
的場の中にはアサシンが常に表に出しているものと同じ感情、『怯え』が本来の世界に居た時よりもずっと色濃く渦巻いていた。
◇
だが、界聖杯によって選ばれた彼は、その運命から簡単に解放されることは決してない。
元の世界に残してきた自分の罪の証が見つかるかもしれないことも、
他の聖杯に選ばれた主従が命を狙ってくるかもしれないことも、
自分のサーヴァントが突然裏切るのではないかという予感も、
彼が抱える不安や恐怖からはこの東京にいる限り決して逃れることはできない。
できることと言えば、ただ怯え続けることか、それとも願いのために自分から行動することか、
いずれ放課後の魔術師となるはずであったその男は、どのような道を辿るのであろうか。
【クラス】
アサシン
【真名】
半天狗@鬼滅の刃
【ステータス】
筋力:C+ 耐久:A 敏捷:A 魔力:B 幸運:C 宝具:C
【属性】
中立・悪
【クラススキル】
気配遮断:A+
自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。
このアサシンの場合、角の生えた異形の姿を見られてもサーヴァントもしくは鬼だとすぐに気づかれないほどの隠密性を有する。
【保有スキル】
虚言癖:A
このアサシンは常に怯えたような態度をとり、自分は弱者だと主張するが、これは彼が生前から繰り返してきた嘘偽りにまみれたものである。
しかしこのアサシンは自分の方が被害者であると思い込んでおり、その主張を言葉だけで崩すことは不可能である。
スキルとしては、精神汚染スキルのように精神的な攻撃に対する耐性を得るものとなっている。
鬼種の魔:A
鬼の異能および魔性を表すスキル。鬼やその混血以外は取得できない。
天性の魔、怪力、カリスマ、魔力放出、等との混合スキル。
捕食行動:A
人間を捕食する鬼の性質がスキルに昇華されたもの。
魂喰いを行う際に肉体も同時に喰らうことで、魔力の供給量を飛躍的に伸ばすことができる。
【宝具】
『上弦の肆』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~20 最大補足:10人
多くの人間を喰らい、命尽きるその瞬間まで人に恐怖を与え続けた"上弦の肆"の肉体そのもの。
非常に高い再生能力を持ち、急所である頸を切り落とす以外の手段で滅ぼすのは非常に困難。
本来であれば"日輪刀"で頸を落とす必要があるが、英霊の座に登録されたことにより弱点が広範化。
宝具級の神秘を持つ武装であれば何であれ、頸を落として鬼を滅ぼせるようになっている。
しかし欠点として日光を浴びると肉体が焼け焦げ、浴び続ければ灰になって消滅してしまう。
このため太陽の属性を持つ宝具、それどころかただの太陽光でさえ致命傷になり得る。
また、"血鬼術"と呼ばれる独自の異能を行使することができ、アサシンの場合は自分を攻撃させることで様々な分身を生み出す。
基本となる分身は喜怒哀楽の感情から生まれた『空喜』『積怒』『哀絶』『可楽』の四体。
他に生み出せる分身には、積怒が他の三体を吸収することで誕生する「憎」の字を持つ『憎珀天』、本体である小さな「怯」の鬼をそのまま大きくしたような「恨」の鬼が存在する。
生み出した分身のステータスはどれも本体より、筋力に関してはランクがB+にまで上がるが、耐久・敏捷はBにまで下がる。
分身が持つ能力はそれぞれ、
- 空喜:高速で飛行し、超音波を発する
- 積怒:雷を放つ錫杖を使う
- 哀絶:体術に優れる十文字槍の使い手
- 可楽:突風を放つ団扇を持つ
- 憎珀天:雷や超音波など喜怒哀楽が持っていた力だけでなく、さらに木の竜を生み出し操る力を持つ
- 恨の鬼:巨大化したように見せかける擬態で、日光から身を守る肉の鎧の役割も持つ
といった様になっている。
喜怒哀楽の四体の分身たちは本体と違い頸を斬られても滅ぼされたりせず、攻撃されることでさらに分身できるが、分身の数が増えるにつれ一体一体の力は弱くなっていく。
また、本体と同じく再生能力も持つが、舌を傷つけられた場合は再生能力は落ちてしまう。
ちなみに、本体はとても小さく野ネズミ程の大きさしかない。その分、隠れられると発見は困難なもととなる。
【weapon】
血鬼術により生み出す分身
【人物背景】
鬼舞辻無惨配下の精鋭、十二鬼月の一人。
常に何かに怯え、か細い悲鳴をあげて周囲には無害な老人のような印象を植え付けようとする。
人間だった頃は目が見えないと嘘をつくことで周りの人間を自分に対して親切にさせ、盗みや殺しといった悪事を繰り返してきた。
やがて奉行所に捕まり、罪を暴かれ、打ち首が決まったところで鬼舞辻無惨により血を与えられ鬼と化した。
鬼となってからは、何度も窮地に追い込まれるたびに己の身を守る感情を具現化・分裂する血鬼術を用いて勝ってきた。
このため、追い込まれれば追い込まれる程強くなる鬼だとも称されている。
【サーヴァントとしての願い】
自らの蘇生、及び自分が弱者であり絶対的な被害者であることを示したい。
521: 的場勇一郎&アサシン ◆5IjCIYVjCc :2021/07/13(火) 19:24:40 ID:.BYa7PMg0
【マスター】
的場勇一郎@金田一少年の事件簿 学園七不思議殺人事件
【マスターとしての願い】
自分の罪が暴かれないままで平穏な教師としての日常に戻りたい。
【能力・技能】
自らの突発的な犯罪を隠し通すためのトリックを咄嗟に思い付くほどの発想力。
自分に都合のいい大嘘の噂を信じ込ませることができるほどの演技力。
※なお、この部分の記載は「金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿」における設定も含んでいる。
【人物背景】
不動高校に勤める物理教師。ミステリー研究部の顧問でもある。
しかしその正体は劇中時間から30年前に新薬の人体実験で被験者を六人死亡させてしまった高畑製薬の元研究員である。
被験者たちの死体は当時建設中であった研究所に死体を隠し、その研究所はやがて不動高校の校舎となる。
的場はそこに隠された死体が発見されないようにするための見張り番として教員となり、死体の場所から人を遠ざけるために学園六不思議の噂を流した。
しかし、10年前には青山ちひろという女生徒に六不思議の真相を知られてしまい、(故意ではなかったが)その青山ちひろを階段から転落させ、死亡させてしまう。
その後は青山ちひろの死体も校舎の中に隠して噂も新たに流し、学園七不思議を誕生させた。
この聖杯戦争においては学園七不思議殺人事件を起こす前の時から連れてこられている。
社会ロールには元の世界と同じく高校の物理教師の役割が与えられている。
【方針】
最後まで生き残る。なるべく戦いたくない。
最終更新:2021年07月13日 21:23