『本日午後六時ごろ、都内の一軒家にて火災が発生しました。
 その火災で住人である会社員、野崎和夫氏と、妻の主婦、花菜氏が死亡。
 次女の小学生祥子ちゃんが、火傷による重傷を負い、都内の病院へと緊急搬送されました』

 聖杯戦争の舞台である模倣東京にて、TVからニュースが流れる。
 それは内容こそ痛ましいものの、被害者の名前に覚えがなければ聞き流してしまいそうな程ありふれた話だ。

『近隣の住人曰く、火がいきなりついたとの証言がいくつもあり、
 更に取材の結果、火元は家の外壁であることが判明しました。
 警察はこれらの証言と火元から、放火とみて捜査を進める模様です』

 だが続きが流れれば、住人は恐れをなす。
 もしや次は我が身ではないかと、いつの間にか知人の誰かが被害に遭うのではないかと。

『また、火事の際外出していたことで難を逃れた長女、春花氏には、警察が被害者に何らかのトラブルが無かったかなどを――』




 野崎家放火のニュースから数日後。
 時は深夜、都内の病院。
 ここには、ニュースにて名前が知れ渡った野崎祥子が入院している。
 病室は個室で、彼女の意識はなく、予断を許さない為に面会謝絶となっている。

「ふん」 

 だがここに祥子以外に、一人の男がいた。
 顔は端正であるものの、祥子とは似ても似つかない。
 冷酷で鋭い眼つきにペイズリー柄のシャツと黒いジャケットが、医療従事者とも思わせない。
 彼女の親族ではない。病院の関係者でもない。では何者か。

「私のマスターは、今日も生き長らえているようだな」

 彼は、この東京で行われている聖杯戦争のサーヴァントである。
 クラスはアサシン。真名は鬼舞辻無惨
 とある世界において、平安時代から大正時代までの千年間、日本の裏側において数多の被害を出し続けた鬼と呼ばれる怪物の始祖だ。

 そしてマスターは、ここで重傷患者として入院している野崎祥子である。
 彼女は本来の世界において、今の状態になってから聖杯戦争に巻き込まれた。
 その辻褄合わせの為にNPCである彼女の両親は本来と同じように死亡した。
 ここで何の因果か、彼女の姉である春花だけは助かったが、これは本来の世界と合わせた結果なのか、それとも単なる偶然なのか、それを知るものはいない。
 そして祥子は知ろうと考えることもできず、彼女のサーヴァントであるアサシンは興味すらない。

 それどころか、アサシンは祥子の生死すらどうでも良かった。

 アサシン、鬼舞辻無惨には人間を自身と同じ鬼に変える力がある。
 彼の血を人間に与えることで、人間は鬼へと変化するのだ。
 そして鬼になれば、どれほどの傷であろうと、あっという間に治ってしまう。
 つまり祥子の傷を治すこと自体は容易いのだ。
 しかしアサシンはそれをしない。

 なぜなら、鬼になれば目立つからだ。
 鬼はごく一部の例外を除き、人間に対し強烈な食欲を覚える。
 祥子がその例外になる保証などなく、仮になったとしても、一夜で重傷が治ればたちまち取材が殺到するだろう。

 サーヴァントには召喚された際、聖杯から現代知識が与えられる。
 これにより、日本人以外のサーヴァントであっても日本語が使えたり、生前との違いを理解できたりするのだ。
 その現代知識の中にはインターネットに関するものもあり、アサシンは何か目立つようなことがあれば、あっと言う間に自分達の情報が拡散されると認識していた。
 そしてアサシンは、自身の情報が拡散されることを酷く恐れている。
 故に、彼は祥子を助けない。

 仮に祥子が死亡しても、アサシンは単独行動というスキルを所持している。
 本来、サーヴァントはマスターなくして現界できない。
 だがこのスキルがあれば、ランクによって期間は異なれどマスターなしで現世に留まれる。
 なので、最悪はマスターを見殺しにして違うマスターを見繕うという手も取れる。
 今の所、代わりになりそうなマスターは見つかっていないので、あまり切り捨てるつもりはないが。

 それに、アサシンは今のマスターを悪く思ってはいなかった。
 彼は目的の為なら頭を下げることも、弱者とみられることにも抵抗はない。
 だがその実酷く感情的で独善的で、よほどのことがない限り自身を省みないタイプだ。
 故に、余計なことが一切できないマスターはアサシンとしては悪くない。仮に存在が足を引っ張るなら、その時は切り捨てればいいだけのこと。

「無惨様」

 そこに、病室の窓から一人の男が入ってきた。
 彼は、アサシンが鬼に変えたNPCの内一人である。
 アサシンは祥子を鬼にするつもりは一切ないが、だからといって他の誰かを鬼にしないつもりもない。

 アサシンはインターネットの情報拡散を警戒しつつ、自身もそれを使えないかと考えていた。
 しかし彼はサーヴァントであるが故ネットに繋がるものは所持しておらず、マスターである祥子は家が焼けたせいか同様に所持していなかった。
 そこで、彼は町を歩いている適当なNPCの男達を鬼に変え、ネットに繋がるスマホを奪い取ったついでに、鬼にした男達に情報収集を命じていた。

「聖杯戦争のマスターを一人、発見いたしました」
「そうか。ならばさっさと、ネットで情報をばらまいて他のサーヴァント達に始末させろ。
 無論、我らが聖杯戦争に関わる存在だと分からないようにな」
「はっ」

 敵を一人発見した報告をする部下に対し、アサシンは次の指示を下す。

 アサシンはよほどのことがない限り表に出たがらない。
 臆病者と言われようと、卑怯者と憎まれようとも。


 日向には出られない二人の聖杯戦争は、まだ始まったばかり。



【クラス】
アサシン

【真名】
鬼舞辻無惨@鬼滅の刃

【パラメーター】
筋力B+ 耐久A 敏捷C 魔力D 幸運C 宝具A

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
気配遮断:A
本来は自身の気配を消すスキル。
だが無惨の場合は攻撃態勢に移らない限り自身がサーヴァントであることと、鬼であることを隠すスキルとなっている。

【保有スキル】
鬼:A+
平安時代に一人の医者によって生まれた、人喰いの怪物。
強靭な肉体や特殊な能力を持つが、日光に弱く、浴びると消滅する。
また、同ランクの戦闘続行と、Dランクの怪力の効果も有する。
彼は鬼の始祖なので最高峰のランクだが、上には日光を克服した二匹の鬼が控えているので頂点ではない。

仕切り直し:A++
戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。機を捉え、あるいは作り出す。
また、不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。
自身より圧倒的に格上の、神仏の寵愛を一身に受けた日輪の剣士から逃走を成功させた逸話が昇華されたもの。

単独行動:B
マスターとの繋がりを解除しても長時間現界していられる能力。Bランクなら2日は現界可能。
無惨の心に他人は必要ない。

カリスマ:E
カリスマ性の高さを示す能力。
無惨は心が歪んでいる、もしくは空っぽの相手にのみカリスマ性を発揮する。

【宝具】
『鬼の始祖。鬼舞辻無惨
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:0 最大補足:1
アサシン、鬼舞辻無惨自身の肉体。
鬼の始祖である彼は1000年の時を生きたため、彼自身が神秘を持ち宝具と化している。
彼は鬼の中でも特に多彩な能力を持つ。
気配から変えるレベルの変身を長時間保つ、自身の血を人間に与えることで鬼へと変化させる、
九千年無補給でも戦い続けられる、自身の部下と距離に関係なく連絡が取れる、など。
また、彼が作り出した鬼は須らく彼の呪いを受け、彼の名前を人間の前で口に出すと死亡する。

『受け継いでくれ。私の想いを』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:??? 最大捕捉:1
無惨の消滅時、彼から一番近くにいるマスターもしくはサーヴァントが対象となる宝具。
この宝具の対象となった者は無条件でBランク以上の鬼となり、同時にBランクの狂化スキルも無条件で与えられ周囲にいる存在を襲い始める。
なお、鬼のBランク以上というのは対象の鬼としての素質によって変わり、最低でBランクであり、最高峰ならA+++ランクの場合も存在する。

無惨が生前、死亡する前に鬼としての力と自身の想いを、敵である一人の少年に無理矢理託した逸話から生まれた宝具。
その少年は人の想いによって人間に戻れたが、この聖杯戦争内でどうなるかは誰にも分からない。

【weapon】
『鬼の始祖。鬼舞辻無惨

【人物背景】
平安時代、とある医者によって鬼にされた男。
生きることにのみ固執する生命体。
最後には受け継がれた人の想いによってその命を絶たれた。

【サーヴァントとしての願い】
太陽を克服し、現世に蘇る。

【基本戦術、方針、運用法】
マスターの意識がないため、無惨主導で聖杯戦争に臨んでいる。
基本的には、他のサーヴァントを潰し合わせたり、アサシンらしく不意討ちやだまし討ちなど、手段を選ぶつもりはない。

【備考】
NPCが数人ほど鬼@鬼滅の刃 となっています。
鬼になったNPCからスマホを一台奪い、所有しています。使い方も覚えました。


【マスター】
野崎祥子@ミスミソウ

【マスターとしての願い】
???

【weapon】
なし

【能力・技能】
なし

【人物背景】
父親の転勤で田舎に引っ越してきた、東京出身の小学生。
だが姉の受けているイジメの余波で家が放火され、大火傷を負い現在は意識不明の重体。

【方針】
なし。そもそも意識不明なため、聖杯戦争自体を把握していない。

【備考】
参戦時期は1巻、放火された家から助け出された後。
現在は大火傷に意識不明の状態で、会場内の病院に入院しています。

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最終更新:2021年05月28日 21:18