anko1903 えっとうっするよ!

・最初に
 このお話は独自設定が爆発しています。
 首を傾げるような設定があっても「この話ではそういうものなのか」と言う事で流してください。

では、ゆっくりしていってね!!!

                                                小五ロリあき




「ゆゆぅぅぅん♪こんなにたくさんのごはんさん、れいむみたことないよぉ!!」
「きっとこれだけあればだいじょうぶだよ!…それじゃあ」



「「えっとうっするよ!!!」」



《越冬開始~一日目~》

ここは自然豊かな山に一角に存在する、ゆっくりの群れ。
更にその中の、群れに属するれいむとまりさのつがいが住処にしている小さな小さな洞穴である。

ここで今回登場するゆっくり一家の基本スペックを紹介。
まず母親役になるであろうれいむ。
「これならきっとおちびちゃんもあんっしんっしてうまれてこれるよ!
 まっててねおちびちゃん。おかーさんがきっとさびしいおもいをさせないからね!!」
頭に蔓が生えていて、れいむ種が一匹なっているのが視認できるところからすると、誕生もそう遠くないだろう。
ちなみにこのれいむ。昨年越冬した、とあるゆっくり一家の唯一の生き残りで、長に色々叩き込まれたため割と賢い。
特にこれといった取り得はないが、逆に言えば何に関しても足手まといにはならないので案外群れの中でも評判はいいらしい。

次に、一家の大黒柱(笑)を気取るまりさ。
こちらは純粋にまりさ種としての特徴を強めたもので、
流されやすく、勉強嫌いで思い込みも強いが自分の役割は把握し、己の長所を伸ばす努力も怠らない。
そのためゆっくりとしての食料を集める等の能力は標準以上で、群れでも上から数えた方が早いくらいだ。
つがいのれいむとの馴れ初めは心底どうでもいいことなので省くが、相性は良いらしく毎日仲睦まじく暮らしている。

ともあれこの二匹にとっては、夫婦揃って且つ生まれて始めて挑む越冬である。
れいむが基本的な知識で計画を立て、まりさが準備にいそしむという形で念入りに備えてきた。
おかげでなんとか冬を越せるであろう程度の食料は確保できたようだ。

自分達だけでなく群れ全体が食料を欲しているため用意すら簡単ではなかったが、比較的ここはスムーズに済んだと言える。
他のゆっくり一家で越冬に足りない分しか集まらなかった所は全滅覚悟で悲壮な決意をしながら挑まなければならない。
一応群れ自体が管理している備蓄もあるにはあるのだが、必要な分を皆に分けて与えていると流石に足りない。
よっていくら騒ごうとも、結局雀の涙ほどの補助を受けただけで絶望的な戦いに赴かなければならないのだ。
ちなみに、この時点で群れの三割のゆっくりは勝負を投げたような感じになっている。生存競争とはかくも厳しいものなのか。

しかしそんな事などこの二匹には関係ない。なにせ餌はもう十分溜まっているのだ。
今まさに時は来たれり。れいむとまりさは、越冬の準備に間に合わなかった他のゆっくり達を哀れに思いながらも、
自分たちはしっかり準備を済ませられた、いわば優秀なゆっくりなのだという誇りを胸に、巣の入り口を閉じた。
入り口を塞ぐ壁もれいむが持てる知識を総動員して、綿密に計算した上で組み立てた特殊な『けっかい』だ。
やがて降るであろう雪はおろか簡単な防水まで出来る優れもの。実際、これが作れないゆっくりは寒さに凍えて死ぬ事になる。
その点でもこの二匹は完璧だといえるだろう。自慢げに胸(?)を張るのも仕方がないというものだ。

「ゆーしょっと。…もうだいじょうぶだね。あとはたのしくはるまでとうっみんっするよ!」
「そのうちおちびちゃんもいっしょになるからきっといっぱいゆっくりできるね!ゆっゆぅ~ん♪たのしみだよぉ~!」
「じゃあまりさ…あたまのうえのおちびちゃんも」

「「ゆっくりしていってね!!!」」

お互いに顔をあわせて、これから来るであろう辛い季節を恐れずに笑うまりさとれいむ。
二匹にとって、この暗く殺風景な穴の中はとても明るく、ぽかぽかしているように思えた。








――――――――――



《一気に飛んで、越冬開始から五十九日~》

「ど、ど、ど、どぼじでぇぇぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」
「おなかすいたよ…おそとにもでられないよ…まりさのあんこが…あんこがぁ……」
「ゆぅぅぅぅ!おにゃかしゅいちゃよぉぉぉぉ!!にゃんでごはんしゃんがちゃりにゃいにょぉぉぉ!!?」
「れーみゅはゆっくちだまっちぇね…まりちゃやおかーしゃんやおちょーしゃんだっちぇがまんしちぇりゅんだよ…」
「しょんなこといっちゃだめだよ。まりしゃたちはおねーしゃんなんだよ。いもーちょにはやしゃしく…」
「ゆんやぁぁぁぁ!!だれきゃきゃわいいれーみゅにあみゃあみゃしゃんもっちぇきちぇにぇぇぇぇぇ!!」

冬眠開始から早二ヶ月。れいむとまりさの目論見は見事に外れて、一家全滅の危機に陥っていた。
山のように積み上げられていたごはんは今や見る影もなく、親ゆっくりの全長よりも低くなっている。
食糧不足による空腹は更なる寒さを呼び、冬の風を遮っているにもかかわらず母れいむ達はガタガタ震えていた。
こうなった理由は一つ。あれだけ必死こいてかき集めていた餌が、残念ながら必要な量には全然足りなかったからだ。

そもそも冬眠とは運動を中止して、代謝活動を最低限に抑制した状態で冬季をやり過ごす方法である。
断じてゆっくりのように、巣の中で普通に寝て、普通に起きて、歌をうたったりしながら暢気にすごす事ではない。
少なくとも、いくら加減しているといってもいつも通りに餌を食べたり、
ましてや食い扶持を増やす上に大量のエネルギーを使う筈の出産を行うなど論外なのだ。
「れいぶは…れいぶがかんがえたとうみんのけいかくはかんっぺきっだったはずなのに……
 う゛ぅ゛…しゃぶいよ、ゆっぐりでぎないよ、だれがだずげでぇ……」
要するに冬眠の意味を穿き違えていたところから失敗していたという事だ。辞書でも引いて出直してください。えっとう(笑)

「おとーしゃんはどうちておしょとにかりにいきゃないの!?ばきゃなの?ちぬの?こんじょーなちなの!?
 しゃむいかりゃっちぇあまえちぇないでしゃっしゃとでかけちぇね!このやくたたじゅ!!」
「ごめんねおちびちゃん…。おとうさんもできればそうしたいんだけど、おそとにでられないんだよ。
 それにおそとにはきっとごはんさんもないし、おとうさんにはどうしようもないんだよぉ…」
「ちがうよまりさ…わるいのはれいむなんだよ。れいむがとうっみんっのけいさんをまちがったから。だから……」
「しょんなこちょいわないでね。ふたりががんばってたのは、あれだけたくしゃんあったごはんをみればわかるよ…」
「しょうだよ。まりしゃたちもがまんしゅるから、はるしゃんがくるまでみんなでがんばろうよ」
「ゆきぃぃぃ!!しょんなことどーでもいいよ!れーみゅはおにゃかがしゅいたっちぇいっちぇりゅんだよ!
 れーみゅはおこっちぇりゅんだよぉ!やくたたじゅのおやはしゃっしゃちょゆっくちしゃしぇろ!ぷっきゅぅぅぅぅ!!!」
「「「「・・・・・・」」」」

しかも、計算し尽くした末に張られた『けっかい』に雪が積もって外にも出られない。まあ考えてみれば当然の事なのだが。
もっとも外に出られたとしても何も見つけられず全くの無駄足になるどころか、巣に帰る前に力尽きるのがオチだろう。
当たり前だ。この季節に食料がないからこそ、あれだけ躍起になって冬眠用のごはんを集めたのだから。
勿論そんなことは親となった二匹は解っているし、つい数十日前に生まれた子供たちも理解している。…一匹を除いて。

「ぷひゅりゅりゅりゅりゅ。…どぼぢぢぇごはんしゃんもっちぇこにゃいにょぉぉぉ!?
 れーみゅがぷきゅーしたんだきゃりゃこわがっちぇしーしーもらしながりゃぜっぴんのあまあましゃんもっちぇくりゅのがふちゅーでしょ!
 ゆんやぁぁぁぁ!!のうなちのくしょおやもおねーしゃんのくしょまりしゃもちね!ちね!ちねぇぇぇぇ!!!」
今、知能の低さ丸出しの発言をしているのは、末っ子であり生まれた子供ではただ一匹のれいむ種であるれーみゅだ。
上には二匹のまりしゃがいてどれもどこかに障害があるわけでもなく、立派なゆっくりとして生まれてきた。

ただ…出来の良さには残念ながら月とミジンコほどの差があった。
上のまりしゃ二匹が十年に一匹の天才だとすれば、末っ子れーみゅは世にも珍しい姉たちの絞りカスだ。
察しが良く知識も豊富で物覚えも良いまりしゃ達に対して、れーみゅは傲岸不遜で唯我独尊な役立たず。
長所など欠片も無く、強いて言うなら心優しく大甘なゆっくりばかりの一家で最後に生まれたという事だけ。
おかげでどれだけ我侭放題で罵詈雑言を吐きまくっても『末っ子にとって今は辛い時期だから仕方ない』で済まされた。
しかも一家全員で食事を切り詰めている中でも、れーみゅだけ明らかに特別とわかる程の量を食べている。
しかしそこは流石の穀潰し。感謝の念など全く、これっぽっちも出しやしない。
それどころか不必要な程旺盛な食欲に任せて、ひもじさに耐える家族に対して残り少ない食料をたかっていた。

「じゃあそろそろごはんにしようね。まりさとれいむのぶんはこれだけ。
 それからおちびちゃんたちのぶんは…ごめんね……これだけだよ」
「ゆぅぅぅぅ!!?なにいっちぇりゅのぉぉぉ!これっぽっちでたりりゅわけないでちょぉぉぉ!!」
「まってねれーみゅ。まりしゃのぶんをあげるかりゃ、なかないでね…」
「まりちゃのぶんもあげりゅよ。だからきょうはこれだけでがまんしちぇね……」
「ふん!しかちゃないにぇ!れーみゅはやしゃしいかりゃしょれでゆるちてあげりゅよ!
 じぇんぶもっちぇいかなかっちゃだけでもありがちゃくおもっちぇよにぇ!こにょぐじゅ!!」
「ごめんね、おちびちゃんたち…まりさがだめゆっくりのせいで、ごべんねぇ……」
親二匹の分は一口程度。子供たちの分はそれに比べればかなり多い。
しかしそれすらも、末っ子れーみゅに七割方奪われた。
「む~ちゃむ~ちゃ!しょれなりぃ~!!うみゃくにぇ!がちゅがちゅ!これじぇんじぇんうみゃくにぇえ!!」
しかもれーみゅは、涙目になりながらも必死に空腹を我慢する二匹のまりしゃに、全く悪びれる事なく餌を貪る。
「…おちびちゃん。おちびちゃんががまんすることなんかないんだよ。おかあさんのごはんをたべてね」
「な、なにいっちぇるの!?ただでさえおかーしゃんのごはんはちょっとなんだよ!」
「しょうだよ!ほんとならまりしゃたちよりもたくさんたべなきゃいけないのに…そんなのもらえないよ!」
「いいから!!おとうさんたちはまだそんなにたべなくてもだいじょうぶなんだよ。
 やさしいおちびちゃんたちはそれでもきにしちゃうだろうけど…
 いちばんちいさいおちびちゃんのことにはめをつむってむ~しゃむ~しゃしてね」
「「ゆぅぅぅぅ……」」
それを不憫に思ったれいむとまりさが、結局自分の餌を分けるというのがお決まりのパターンだ。
まあそんなこと、末っ子れいむは歯牙にもかけないどころか鼻で笑いながら餌にがっついているのだが。


只でさえ絶望的な状況で、とんでもない爆弾を抱えてしまったゆっくり一家の明日はどっちだ!









――――――――――


《越冬開始から六十六日~》

「おぢびぢゃ…ごべんね……ぜめで、ざぁ…おだべなざ……ぃ………」
「ゆわぁぁぁぁぁん!!おとーしゃぁぁぁぁぁん!!」
「ごべんにぇ…まりしゃのためにこんな……ごべんにぇ゛……」
「やっちゃー!!きょれでごはんしゃんがふえりゅよ!やっちゃにぇれーみゅ!」
「「・・・・・・」」

それから一週間。とうとう食料も底を尽き、進退窮まったまりさは最後の手段に出た。
さあ、おたべなさいで自らを犠牲にした父親を見て、二匹のまりしゃは嘆き悲しみ、れーみゅは喜びまわっている。
そんな姿を見てもまりしゃ達はもう何も言わない。おそらく極限状態で頭が麻痺しているのだろう。

そして、つがいに先立たれたれいむはというと―――
(ごめんねまりさ…。れいむはいいおくさんじゃなかったよ。
 でもこのこたちだけはちゃんといかしてみせるから、だから……)
まりさの後を追おうとしていた。
理由は今の状況を見ればすぐにわかる。
あまり恵まれた生活は送ってないものの、すくすくと大きくなってきている我が子たち。
一方、そのために食事を削ってガリガリになったれいむと、同じく痩せ細ったまま真っ二つに割れたまりさ。
殆ど皮だけしか残っていないあの程度では、残念ながら春まで持たせる事は出来ないだろう。
ましてやあの穀潰しがいるのだ。春はもうすぐだといっても何日もつかわかったものではない。
だが、その量が二倍になれば?もしかしたら……つまりそういうことである。

(おちびちゃんたちも、ごめんね。
 れいむがいいおかあさんだったら、こんなつらいこともさせずにすんだのに……おかあさん、かぁ……)
死に際にれいむの頭を巡るのは幼き日の思い出。
まだ群れの長に引き取られる事など考えもしなかった、生まれてすぐの頃の両親の思い出。
(おかあさん…?なにいってるの?れいむはそんな……
 やだ…。やだ!だめだよおかあさん!おとうさんも……!
 やめてね!れいむはおとうさんやおかあさんをたべてまで………?……あぁ、そっかぁ)
薄れ行く意識の中、れいむはようやく思い出した。
自分がいかにしてあの辛い冬を乗り切ったのかを。何故自分しか生き残りがいなかったのかを。
それはあまりに辛い思い出で、思わず無意識のうちに忘れて頭の片隅に封じ込めたくなるような物だった事も。
そしてあの時どうして自分の両親があのような暴挙に踏み切ったのかも、今ならわかるような気がした。

(おかあさんもおとうさんもきっと、いまのれいむとおんなじだったんだね。
 だったらきっとだいじょうぶ。だってれいむはいきのこれたんだもの。おちびちゃんたちもがんばってね…)
だから、れいむは若干の申し訳なさと大きな安堵感に包まれたままこう呟くのだ。



さあ、おたべなさい









――――――――――



《越冬終了~春到来~》


「ゆーしょ、ゆーしょ…。
 いじわりゅなかべしゃんはちょっちょちょどいちぇにぇ!きゃわいいれーみゅのおちょおりだよ!」

辛く長い冬が過ぎ、とうとう全ての生命が待ちわびた春が来た。
雪が解け、軽くなったけっかいの壁に出来た隙間をくぐって一匹のゆっくりが命溢れる大地に顔を出す。
「ゆぅぅぅぅ!!やっちゃよー!れーみゅいきのこっちゃんだよぉぉぉ!!」
言わずもがな、最も遅く生まれてきた、最も役立たずの、最も生き残るに相応しくない末っ子れーみゅだ。

「ゆっゆ~ん♪あのやきゅたたじゅなまりちゃたちもしゃいごにはちょっとだけどやきゅにたったにぇ!
 みんにゃきゃわいいきゃわいいれーみゅのごはんになれちぇいまごろうれちーちーもらちてるころだよ!!」
あれから十数日の間に全ては決まった。
節約して親の死骸を食べるまりしゃに、全く自重せずにあるだけを貪ろうとするれーみゅ。
親がいない以上止めるものは無く、あっという間に食い尽くされる干からび饅頭。
後は持久戦に持ち込まれ、当然のように栄養不足のまりしゃたちは負けて勝者の胃袋に収まってしまった。
「きょれきゃられーみゅのぱーふぇくちょなゆんしぇいがまっちぇりゅんだにぇ!
 どんなどれいがれーみゅをゆっくちしゃしぇちぇくれりゅのかいまかりゃわきゅわきゅしゅりゅよ!!」
このまんまると子ゆっくりサイズに膨れ上がったれーみゅを見るだけで、世は無常という言葉が思い浮かぶ。
もし、このれーみゅの身勝手さが十分の一でもまりしゃたちにあったなら。
その代わりに、このれーみゅに思いやりの心がその分存在していたら。
まりさとれいむが甘やかさず見かねて躾けなおすなり、れーみゅを切り捨てるなりしていれば、
あるいはこんな事にならず素晴らしい長に足るゆっくりが二匹、この世に出てきたかもしれないのに。

しかし今更そんな事を言ったところで何も変わらない。
結局のところ、何を言っても生き残ったものが一番強いわけで、
「まじゅはおいちいごはんしゃんをたっくしゃんむ~ちゃむ~ちゃしちぇ…ゆっ?おしょらをちょんでりゅみちゃ~い♪」
「う~☆はじめてのかり、しぇいこうだどっ!みゃみゃにほうこくしゅるどぉ!」
それは勿論、他でもないれーみゅを含めた全ての生物に通用するわけで―――

「ゆぅぅぅん、いいながめだよぉ~♪
 だれだかしらないけぢょいいものみしぇちぇくれたおれいにれーみゅのどりぇいにしちぇあげりゅにぇ!
 とりあえじゅしょろしょろおろしちぇにぇ!しゃいしょのめーれーだよっ!(キリッ!)
 ………どぼぢぢぇおろしぢぇくれにゃいにょぉぉぉ!!?いうこちょきけ!くしょどれいぃぃぃ!!」
「うー?なんだきゃうるしゃいんだど。でも、えものはえものだど!みゃみゃにほめてもらうんだど~♪」
当たり前だが、越冬に成功するのは何もれいむやまりさといった通常種だけではない。
れみりゃなどの捕食種も冬は越すのだ。しかも、持ち前のしぶと…体力によって通常種のそれよりも数段安全に。
そして冬を越え、一回り成長したれみりゃがすることはただ一つ。美味しい栄養源の確保だ。
「それにしても、かりってみゃみゃがいってたよりもかんたんだったんだど。
 きっとれみぃのうんがよかったんだど!これからもがんばるんだど~!」
こうした獲物として真っ先に狙われるのが、このれーみゅのように一匹だけで越冬に成功した子ゆっくりだ。
ろくに身を守る知識も無く、守ってくれるものも腹の中に収めたので当然おらず、まさに格好の的だ。
中には運良く見つからずに保護されて生き残るものも居るのだが…まあ大体はこの通りだ。
「ゆんやぁぁぁぁ!!おろしちぇにぇ!おろしちぇにぇ!!
 おかーしゃん!おとーしゃん!おねーしゃん!!だれきゃれーみゅをたしゅけちぇぇぇぇぇ!!」
これかられーみゅは、口に咥えられたままれみりゃの巣に持ち帰られて生き地獄を味わうことになる。
思うままに生きてきたれーみゅが地獄に落ちた落差で生み出す甘みは、さぞれみりゃ一家を楽しませる事になるだろう。





ゆっくりにとって、越冬とは未知の出来事に近い。
何故なら、あれだけどうのこうのと言いながらも実際に冬を越せたのはほぼ偶然に近い連中しかいないからだ。
生き残ったゆっくりの大体は、なんと、餌が足りず不完全なけっかいしか作れなかったゆっくりたちである。
集めた餌が足りずに諦めて微妙に寒い中眠り続ける事で、体内の餡子が冷えて活動が止まる。
つまり本来の意味での冬眠に近い結果を出して、生き残る事が出来るということらしい。

が、しかし。当然この方法で生き残るのは、準備もまともにできない二流のゆっくりばかりである。
優れたゆっくりはというと……先ほど見たように、入念な準備をしたが故に死んでしまう。
一年に一度、能無ししか生き残らない。これがゆっくりがいつまでも進歩しない理由のうちの一つである。

一方、ゆっくりが無駄だというのにもかかわらず、こんな方法をとり続けるのにもちゃんとした理由がある。
正規の方法での、越冬成功者の存在だ。

ただ、見事に餌を蓄えて強固なけっかいを作り、越冬に成功したゆっくりその一家。実は母親役がぱちゅりーである。
元来ゆっくりは大食漢であるが、元々病弱で食の細いぱちゅりーなら子供を産んでも十分に餌が足りる可能性がある。
ぱちゅりーは大体つがいにまりさを選ぶので餌集めには苦労しないし、だからと言って沢山子供も産めない。
そして適度に手綱を握って無難に越冬を成功させた頃には、周囲からの羨望の眼差しで鼻高々になっているだろう。
勿論、他にも先ほど言ったように越冬に成功したゆっくりはいるが、なにぶんそちらは単なる偶然である。
『よく覚えてないけどとにかく成功した』のと、一から十まできっちり説明できるのとでは、誰だって後者を信じるだろう。

ともかく、あれよあれよと豊富な知識によって祭り上げられたぱちゅりーは群れの中心となる。
そして冬に減った分を産んで増やし、それを夏の厳しい時期にごっそり減らし、秋にまた増やし、
そして冬には普通のゆっくりにとっては無駄以外の何物でもない越冬方法を授けられては優秀なゆっくりが散る。
以下ずっと同じことの繰り返しだ。ぱちゅりーが、それが無駄だという事に気付くことはない。けんじゃ(笑)ですから。
こんな事を続けて絶滅しないのは、単にゆっくりの並外れた繁殖力の賜物だろう。


何はともあれ、いまごろ群れではれーみゅがさらわれた事など気にもせずに、
冬を生き延びたゆっくりたちが揃って喜びを噛み締めている事だろう。


・・・ドスがいる群れはどうなのかって? さあ?









~おまけ~


「た・・・たしゅ・・け・・・ごのままぢゃでいびゅぢんぢゃう・・・・・・」
「う~!こいちゅさいしょはまじゅかったけどいまはとってもおいしいんだど!れみぃ、こいちゅきにいったど!!」
「はじめてにしてはみごとなえものをとってきたんだど!ままもおはながたかいんだど!」
「もうかんにんしちぇ…れーみゅがなにしちゃっちぇ「おかわり、う~☆」ぴゃぁぁぁ!!れーみゅのあんよぉぉぉ!!」

初めて味わう恐怖に泣き叫び、しーしーを漏らすれーみゅを待っていたのはやはり地獄と呼ぶに相応しいものだった。
「やべ・・・ぢぇ・・・あんご・・しゅわにゃ「うー!うるさいんだど!」いっぢゃぁぁぁぁ!!!」
まず親れみりゃが教えたとおりに子れみりゃにいたぶられてから餡子を吸われ、
「ゆい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!にゃにきょれまじゅい!やぢゃよ!こんにゃのたべちゃくにゃい!
 おかーしゃんたちがくれたごはんしゃん「つべこべいわずにはやくたべるんだど!」むぐっ…う゛う゛う゛う゛!!?」
空腹や餡子不足で死にそうになったら、今まで見たことも無いような不味い草を無理やり口に詰め込まれ、
「これでまたおいしくなるんだど!できるだけくるしめてながくたのしむのがこつだど。おぼえとくんだど!」
「わかった、うー☆みゃみゃもいっしょにたべりゅんだど!」
「ううん、いいんだど。それはおちびちゃんがはじめてかった、おちびちゃんのえものなんだど。
 ままはまたべつのやつをつかまえてくるから、おちびちゃんはきにしないでゆっくりあじわうんだど!」
「うー、わかった!みゃみゃもゆっくりしていってねだど!!!」
「もうやぢゃ…あんごじゅわれりゅのも、まじゅいくしゃしゃんも、いちゃいいちゃいももうやぢゃ……
 おかーしゃんごべんなぢゃい。おどーぢゃんごべんなじゃい…れーみゅがわりゅがっだでじゅ。
 おねーぢゃん、もうわがままいわにゃいかりゃたしゅけちぇ。れーみゅもうあんよもうごかにゃいんだよぉ……」
れみりゃ親子がゆっくりしているところを見せ付けられ、痛む体に涙を染みさせながら必死に耐える。





「それじゃ、ままはかりにいってくるんだど。おちびちゃんもあんまりたべすぎないようにするんだど!
 たべすぎて、『どうつき』なんかになっちゃったらおそらもとべないし、どんくさくなってかりどころじゃなくなっちゃうんだど!
 だから、あきたらころしちゃってもいいからおなかいっぱいになるまでたべるのだけはしちゃだめだど!」
「うー!」
「ごろじで…。もうでいびゅをごろぢで……。ゆっぐぢ、ゆっぐぢ、なんでもいいきゃらゆっぐぢじだいんだよ…」
いつしか精神が擦り切れ、それでも痛みだけはやたらとクリアに感じる生活が普通になった頃。
れーみゅは栄養不足で相変わらず成長しないまま、日々大きくなっていく子れみりゃの成長を見ながら死を願うようになった。
れみりゃには絶対に届かないとわかっていても、助けを請わずにはいられない懇願も声が擦り切れるまで言い尽くした。
今までに行った我侭放題の暴挙も反省し、今はいない家族に向かって謝り尽くした。
そして。いつか、せめていつかは振るわれるであろうれみりゃからの死神の鎌を待ち望み、やがてそれすらも無い事に絶望した。

「きょうもいっぱいくるしめて、いつかさいこうのでぃなーになるようにがんばるんだど!!」
「あ゛・・・あ゛あ゛ぁ゛・・・。ごべ・・な・・・ゆっぐぢじだ・・・い・・・」
結局れいむが、その苦しくて途方もなく長いゆん生に終止符を打ったのは数週間後、子れみりゃが成長しきった頃。
それまでにも休まず『れみりゃのくんしょう』として大事に大事に虐待の限りを尽くされたれーみゅは
子れみりゃの巣立ちの日に最高のディナーとして、また親子の絆の証として、少しずつ体を削るようにして食べられた。
二匹のれみりゃが別れを惜しんで涙を流しながら仲睦まじく最後の食事を共にするその光景は正に感動もので、
その点で言えばれみりゃ親子にとって、れーみゅはこの上ない引き立て役として貢献した事になるだろう。

そう。たとえそれが本ゆんが望まず、その頃にはもう拒否を示す意思すら無くなっていたとしても。
そのくせ少しずつ身を千切られるような痛みだけは変わらず鮮明に伝わり、声にならない声を上げていたとしても。
もうボロボロで歯は殆ど残っておらず、口は裂け、目は無くなり、飾りなど跡形も無い姿のれーみゅにはそんな事は関係が無くとも。

まるで幼い頃自分がそうしたように、ゆっくりという言葉の意味もわからなくなったれーみゅはれみりゃ達の腹の中に収まった。







・あとがき
 実際のところ越冬ってゆっくりが考えてるほど軽い物じゃないと思います。
 大層なこと言って結局巣穴で食事ケチりながらのんびり暮らすだけのつもりなら、そら死ぬわ。

 それでは最後までご覧頂いた皆様、本当にありがとうございました!
最終更新:2010年10月09日 20:58
ツールボックス

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