anko0694 静かにゆっくりできないよ!!(後編)

『ふたば系ゆっくりいじめ 581 静かにゆっくりできないよ!!(前編)』の続きです
独自設定と世界観にご留意ください






『静かにゆっくりできないよ!!(後編)』





一大ブームを巻き起こした無声ゆっくりであったが、人の心は移ろいやすいもの。
元々需要があった事はあったのだが、それは少数に限った話である。
本当に必要だった層を除き、人々の関心は薄れていった・・・。



「はあ・・・。お前達、もういいや。やっぱ俺、普通の行儀がいいゆっくりを飼いなおすよ」
「・・・!・・・!!」
「・・・っ!?・・・!?」

大慌てで抗議する親ゆっくり達だが聞こえる訳もなく、飼い主は振り向きもせずその場を立ち去っていく。
無言で蠢く両親とは対照的に仔ゆっくり達は大騒ぎを始める。

「ちょっとまつんだじぇ!!なにわけわかんないこといってんだじぇ!?」
「ふざけたこといってるとせいっさいするよ、このじじい!!」
「かわいいれいみゅのところにとっとともどってきてね!いまならしゅーくりーむでゆるしてあげるにぇ!」

無声ゆっくりから生まれる子供は両親とは違い中枢餡に対する人為的な調整はされていない。
両親の特徴である無声は遺伝されず通常のゆっくりと変わらないのだ。
ぴょんぴょんと後を追うが、所詮ゆっくり。人間の足に追いつく訳もない。
次第と視界から遠ざかっていく人間の背に、揃ってゲス特有の飼いゆっくりらしからぬ罵声を吐きかける。
普通、飼いゆっくりは人間に暴言を吐いた時点で躾を受けて教育されていくものだ。
そして、その教育を受けた親ゆっくりを見て子供は自然と教育されていく。
言葉が通じないのをいい事に今まで生活してきた中で矯正されず横柄になっていた親ゆっくり達。
自然とその姿を見て育つ子供も横柄になる傾向が強かったし、そうなると人間が躾をしても並大抵の努力では矯正できない。
いくら飼い主が躾けようとしても、実の親がゲスな限り、親を信頼している仔が態度を改める事は少ないからだ。
結果、この一家は全員揃って仲良くゲスになってしまっていた。
全ての無声ゆっくり一家がそうとは言わないが、大量に出回っていた安価な無声ゆっくりは大体上記のケースが多い。
餡統がかなり良いか、最初からきちんと教育を受けた金バッジ級のゆっくりならば上記の様な悲劇は少なかったが、甘やかされて育った普通ランクの飼いゆっくりなどそんなものだろう。
結局、流行に乗って飼っただけの人に残されたのはゲスなゆっくり家族だけ。
アッサリと捨てられるのは目に見えた問題と言える。

「ゆびゃあ!おなかすいたぁー!はやぐあまあまたくしゃんもっでごいいいぃ!」
「せっかくせわをさせてあげてたのに!あのくそじじいなめたまねしてくれやがるのじぇ!」
「まりしゃたちのおうちにかえったらせいさいしてやろうね!まりしゃうんうんたべさせてやるじぇ!」

両親達は憤った。
まったく、おちびちゃん達の言うとおりだよ!
こんなに可愛いれいむやおちびちゃん達を捨てるなんてあの糞ジジイは死んだほうがいいね!
今すぐ家に帰って制裁してやろう!まりさの手に掛かればイチコロだから、死なない程度に手加減して殺してやる!
今日という今日は、立場の違いってものを分からせないといけないね!!
・・・いや、待てよ。
良く考えたらこんなに可愛く賢い自分達だ。
人通りの多い所に出たら自分達飼いたがる人間など大勢いるだろう。
今から近くの大通りに行って、可愛いおちびちゃんとれいむ達の綺麗な踊りを見せてあまあまを貰おう。
そうして、一番おいしいあまあまを沢山くれた人間に飼われてあげよう。
・・・いや、よく考えたら飼われてあげるなんて考え自体、そもそも馬鹿らしい。
一番自分達に貢いで来た人間を家来にしてあげよう!
そうだ、そもそもこんなにゆっくりしている素晴らしい自分達が飼われるなんて事自体が間違いだったのだ。
あんな冴えないジジイに飼われてやってたなんて、今思えば寛容すぎたのではなかろうか。
ああ、なんて優しくてゆっくりしたゆっくりなんだろう、自分達は!
よし、そうと決まれば行動だ。
キリッ!と通りのある方角を見据えると、どちらともなく移動し始めた。
先程まで騒いでた仔ゆっくり達は、

「ゆっ?どっかにいきゅの?あのじじいにせいさいするにょ?」
「たまにはしゅーくりーむしゃんたくさんたべちゃいよ!」
「ゆゆっ!?おかしたべにいくにょ!?まりしゃいくのじぇ!!」
「れいみゅもあまあまたくさんたべてゆっくちしゅるよ!」

等と好き勝手ほざきながらついて行く。
背後に自分達一家の様子を見つめる影があるとも知らずに・・・。



「「ゆっゆっゆ」」
「もうれいみゅつかれちゃったよ!!」
「ゆぅ・・・あんよがいちゃいいちゃいよ!」

どれだけ歩いたろう。
いい加減疲れて不満を漏らしまくっている子供。
おちびちゃん、後少しだよ。ここの裏路地を抜けたら大通りだからね!
元気付けようと両親が振り返ると、そこには薄汚い野良ゆっくり達の姿があった。
3匹はヒソヒソと会話すると、無声ゆっくり達の帽子・・・バッジが毟り取られた跡を確認する。

「ゆっ?おかあしゃん、どうしたの?」
「ゆゆ!なんかきたないのらがいるのじぇ!きちゃないきちゃない!!」
「きたないのらはかいゆっくりのかわいいれいみゅのまえからきえてね!ぷくぅ!」
「ぷぷぷー!きちゃないのらはしーしーしながらにげまわるのじぇ!ぷくぅーーー!」

まったくだよ!れいむたちに臭い匂いが移るでしょお!?野良風情はそんな事もわからないの?死ぬの?
汚くてゲスな野良は、寛大なまりさ様が制裁する前にとっとと尻尾巻いて消えるのぜ!!
とか思いつつ、無音ゆっくり一家は日頃馬鹿にしていた野良ゆっくり達に対しぷくぅーをして威嚇する。
野良ゆっくり達は家族を憎悪の込もった目で睨み付けると、笑い始めた。

「ゆげっへっへ。ばかでむのうなこえなしどものぷくーなんてぜんぜんこわくないのぜ」
「わかるよー。まわりをかこんだからくずなこえなしたちはにげられないんだねー」

その言葉に気付き周りを見回すと、ぷくぅーするのに必死だった隙を突かれ、周囲を3匹どころではない無数のゆっくりに囲まれている。

「「「ゆゆゆーーーー!!?」」」

うろたえる無声一家に対して、囲んだ野良達が一斉にぷくうぅぅーーー!!!をお見舞いする。
甘えて育ってきた無声一家のぷくぅーに比べ、今まで厳しい生活を生き抜いてきた野良ゆっくり達のぷくぅーは目を見張るものがあった。

「ゆびいぃぃぃ!!!?」
「きょわいよおおおおお!!?」
「もうまりしゃおうちかえりゅ!!」

ゆひいい!!!っ!こ、こわすぎるよおおおお!!?
と親ゆっくり達は心の中で絶叫してがたがた震えだす。
家族全員でおそろしーしーを垂れ流し、それを見た野良達が笑い出した。

「きたないね!しーしーたれながしだよ!なさけないくずだね!」
「ゆふふふ!くずをゆるすわけないでしょ!ばかなの?あほなの?しぬの?」
「ぜったいにがさないよー。いまからりんちだよー。ゆっくりりかいしてねー!!」
「これだからのらになりたてのいなかものはこまるわ!」
「げすなこえなしはゆっくりくるしんでね!!」

一匹の野良れいむが飛び掛り、親れいむが悲鳴もあげる事が出来ず餡子を吐いて苦しむ。
それが合図とばかりに、囲んでいた野良達が一斉に群がった。

「ゆわああああ!!いぢゃいよお!!」
「ゆぎっ!?や、やべでね!?れいびゅのかわいいあんよをかじらないでね!?ひぎゅい!?」
「やじゃあ!いちゃい!いちゃい!」
「えぎゅっ!えぎゅっ!」
「おとうしゃんたちゅけて!」
「・・・・・・・・・っ!」
「・・・っ!・・・!!」
「ゆぎゃっ!ゆぎゃっ!ゆぎゃっ!」
「やべでくだじゃいぃ!あやまりまちゅ!やめ!やめ!」

親達は袋叩きにされ、子供達も死なない程度にいたぶられる。

「・・・よし、とりあえずここまでにしてやるのぜ!」

1匹のまりさの合図と共に、ようやく一家に対する暴行は終わった。
家族全員ボロボロだったが、不思議と死者は出ていない。

「じゃあこいつらぜんいんむれまでつれていくのぜ!」
「とっととあるいてね!にげようとしたらようしゃなくころすからね!」
「いまからありすたちのむれにきてもらうから、いなかものはゆっくりしないでついてきてね!」

抵抗できる体力も気力も残ってなかった。
家族全員泣きながら無理やり連れて行かれる。
そして暫く歩いてこの野良達の群れに着くと、無音家族達は信じられない光景を目の当たりにする事となったのである。





少し話を戻そう。
ブームが去った後、今度は大量に捨てられた無声ゆっくりが街に溢れかえったが、彼らの境遇は悲惨を極めた。
都会のほぼ底辺にいる通常の野良ゆっくり達は無声ゆっくりを『声無し』と蔑み自分達の下の階級と位置付け差別し、迫害した。
叫び声しか出せないという理由でめーりん種でさえ馬鹿にし攻撃する彼らだ。
叫び声さえ出ない声無しを迎え入れる訳が無かった。
否、むしろ必要以上に積極的に攻撃していた。
何故ならば今、街にいる捨て野良の大半は、一連のブームにより捨てられていた先住飼いゆっくりの成れの果てだったからである。
彼らは自分達が捨てられる原因となった声無しを憎悪していた。
同じ野良に落ちてきた声無し達を狂喜と死で持って歓迎したのは至極当然といえるだろう。
無音ゆっくりの子供は通常種と変わらず発音可能だったにも関わらず、同じクズの餡子を引いているからという理由で、親子と分かると共々に迫害された。
そんなこんなで普通の群れにも集落にも入れず、人間はおろか同じゆっくりからも虐待を受けて、捨てられた無声ゆっくり達は全員例外なく嬲り殺されていった。
しかし、途中から無音ゆっくりがゆっくりにそのまま殺される事は減っていった。
勿論、通常の野良ゆっくりが無音ゆっくり達を許した訳では決して無い。
徐々に野良の群れの中で、ある制度が作られ全国的に広まっていったからである。
その制度は人間でもよくあった制度。
否、現在でも存在する制度・・・。





「おまえたちは、いまからむれのどれいだよ!しぬまではたらいてもらうからゆっくりりかいしてね!!」

こうして、無音ゆっくり一家は晴れて群れの奴隷の一員となる事が出来たのである。
群れについた無音一家が見たのは、群れの隅で生活している無音ゆっくり達。
ある者は気分次第で蹴られ怒鳴られ馬鹿にされて、それでも卑屈な笑みを浮かべてゴキゲンを窺っている。
子供の1匹がサッカーボールの代わりに蹴られて遊ばれているが何も文句言えずに黙って見ている家族達。
もう1匹の子供はありすにレイプされて黒ずんでいくが、それも見てみぬ振りをされている。
向こうでは家族同士を戦わせて見世物にされている。

奴隷の食事は群れのみんなのうんうんだ。
雑草と砂を混ぜ、吐きそうになりながらも食らいつく。
皆、一様に傷だらけで痩せこけ、どう見てもしあわせーには見えない。
呆然としながら立っていると、群れに大声が響き渡った。

「いまから、じゅうだいなつみをおかしたどれいをせいさいするよ!みんなひまつぶしにみにきてね!!」

見ると広場に1匹のまりさが引きずり出されている。
まりさはあんよをぐちゃぐちゃに傷つけられて身動きが取れないようだ。

「・・・・・・っ!!?・・・・・・!!!!」

必死に口をパクつかせながら命乞いをするまりさを見下ろすのは、1匹の少し大きめのまりさ。

「こいつのつみは・・・あー、なんだったかな。・・・ああ、まりさのきぶんがわるいときたまたまめにはいったつみなのぜ!!」
「むきゅう!おさのしかいに!それはきょうあくなはんざいね!!」
「とんだげすだね!せいさいされてとうぜんだね!!」
「「「せいさい!せいさい!」」」

無音まりさは目に涙を浮かべて首を振るが、群れの皆からは一斉に制裁コールが起きる。
この場合の制裁は、当然極刑の事だろう。

「ゆっへっへ。きもちのわるいこえなしはゆっくりしぬのぜ!」

長と呼ばれたまりさが合図すると、棒切れやら石ころを持ったゆっくり達が一斉に殴りかかる。
帽子は破かれ、眼球が潰れ、皮膚が破れ餡子がはみ出る。
ぼろ雑巾の様になりながら痙攣している無音まりさに、ゆっくりと近づく長まりさ。
口に咥えた木の枝をズブリと刺し、止めをさす。

「ゆへへへ、たまにはうんどうしておかないと、うでがなまるのぜ」

そこまで言うと、先程戻ってきた一行が捕らえた無音一家に気付く。

「・・・そいつらは、あたらしいどれいなのかぜ?」
「そうだよ、おさ。きょうのらになったばかりのこえなしどもだよ!」
「きょうからしぬまでこきつかうから、くるしんでいってね!」
「「ゆびぇぇぇ!いやじゃああ!!!」」

泣き喚く子供、恐怖と痛みで震える子供。
長まりさは咥えられて捕捉されている子供達を一瞥すると、次に涙を流す親ゆっくり達に視線を這わせる。

「みるからににくたらしいくずなこえなしどもなのぜ」
「ゆゆー、こえなしはみんなそうだよね。はやくぜつめつすればいいのに!」
「まあ、こころのひろいまりささまはおまえらごみくずでもがまんしてどれいにしてやるからかんしゃするのぜ!
 そいつらにはあすからはたらいてもらうから、とっととどれいべやにおしこんどくのぜ!!」

長の見せた凶悪な笑みに震えながらも、一家は案内された隅の空いたスペースに辿り着いた。

「ゆきゅ?どこにおうちありゅの?」
「れいみゅかよわいから、おふとんさんにゃいとねれにゃいよ!」

まだ立場が理解できない子供を突き飛ばすと、案内役のゆっくりは汚れたコンビニのビニール袋を投げてよこした。

「そのふくろさんのなかが、おまえらのへやなんだぜ!かぞくぜんいんそのなかにはいってねてね!」

最悪だった。
毛布どころか草すら敷かれていない剥き出しの地面の上に放られたビニール袋が一家を嘲るかのようにヒラヒラと揺れている。
一家は泣きながらもそもそとビニール袋の中に入っていく。
元々生ゴミでも入っていたのか、嫌な匂いで充満しており、まったくゆっくり出来ない。

「ゆぐうぅぅ・・・からだがいちゃいよ」
「ゆっぐりねれにゃいよぉ」

昨日まで快適な飼育ケースのお布団の中で寝ていた一家にとって、固く冷たい土の上はゆっくりできない寝床だった。
一家全員泣きながらす~りす~りしあう。
しかし、それでもそのうちどうにか浅い眠りに入り、そして翌日の朝。

「いつまでねてるの!?どれいははやくはたらきにでかけてね!!」

怒号と共に文字通り叩き起こされる。
震えながらビニール袋の中から這い出す一家。
働きに出かける?どういう事だろう。

「しんいりはぐずだねー。いまからまちにでかけてむれのみんなのごはんをあつめてくるんだよー。ゆっくりしないでりかいしてねー」
「あつめてこなかったらせいさいするよ。すくなかったらごはんぬきだからね!」
「なにももってこなかったら、おまえたちがみんなのごはんになるからね!」
「わかるよー。こえなしは、ゆっくりいかのむしさんなみのそんざいだからたべていいきまりになってるからねー」
「おかざりはおいていってね!にげたらやぶいてすてるからゆっくりりかいしてね!」

嫌がって暴れる両親を大勢で囲むとお飾りを取り上げてしまう。
これは奴隷が家族を見捨てて逃亡する事を防ぐ為だ。

「ちびどもはのこしてもいいけど、そのまえにせんれいをうけてもらうよ!」

言うが早いか駆け寄ると、嫌がる子供達を押さえつけてお飾りと髪の毛を食いちぎり始めた。

「ゆびゃぁぁぁん!!おかざりがあああああ!!!」
「いじゃい!いじゃっ!がみさ゛んだべないで!!」
「ゆっぐりできないいいいいいぃぃ!!!!」

どうやら喋れる子供達は通常のゆっくりと区別する為、敢えてお飾りと髪の毛を右半分食い破いてゆっくりさせなくしているらしい。
可愛いかった子供達は全員、みっともないゆっくり出来ない姿になってしまった。
せいぜい個体の認識が出来る程度だ。
もうこんな醜い姿になっては、無事ここから脱出出来たとしても、人間に拾ってもらえる事はないだろう。

「「・・・っ!!!」

親ゆっくり達は悔しさに震えるが、どうする事も出来ない。
泣き叫ぶ子供達を後に、他の奴隷達と一緒に街に出掛けた。
その日は初めての食料探しという事もあり、散々だった。
元々、ゆっくりふーどやら人間の食べ物を与えられるだけで、狩りをする事はおろか、餌を集める術など知らないし、全く思いつかなかったのだ。



途中、何度も人間や野良猫の被害にあいかけながらも2匹はなんとか生き延びていた。
収穫は道に落ちていた潰れたパンの切れ端と吐き出されたガムだけ。
昨日受けた傷も含め、身体中切り傷だらけ。
髪はぼさぼさで、ゴミ箱を漁った時についた汚物の液体がこびり付いている。
2匹の無声ゆっくりは鬱々と心の中で呟く。
一体、何故・・・一昨日までは家族仲良く快適な部屋の中でしあわせーに暮らしていたのに。
これも全部、あのくそじじいのせいだ。
今までまりさやれいむたちの可愛さでゆっくりさせてあげていたのに、よくも!よくも!

「おにいしゃん、このあめしゃんとってもおいちいね!ゆっくりありがちょー!」
「ありしゅたちこんなにゆっくちできて、ちあわせね!ときゃいはなおにいしゃんありがちょう!」
「でも甘いのは1日1回だけだぞ。舌が肥えすぎたらゆっくりできなくなるからな?」
「ゆっ!ゆっくちりかいしゅるね!」

慣れ親しんでいたその声の方を振り向き、2匹の身体が固まった。
今さっきまで憎んでいた人間がそこにいた。
両腕には買ったばかりの仔まりさとありす。
ぶら下げた買い物袋の中には1冊の本。
もし2匹に文字が読めるのであれば題名がこう読めただろう。

『楽しくゆっくりと暮らそう!正しい飼い方教えます』

お兄さんなりに一連のゆっくり達との生活で何か思うところがあったのだろうか。
と、小さい2匹が自分達を見つめている無音ゆっくり達に気付いた。

「ゆゆ?へんなゆっくちがこっちみてりゅよ?」
「・・・おかざりさんがにゃいなんて、かわいしょうね」
「ん?ああ、あれは野良だな。確かに可哀想だけど、野良は凶暴なの多いし近づいちゃ駄目だぞ」

2匹の無声ゆっくりは慌てて駆け寄る。
そのちび達を捨ててまりさたちを飼い直せ!
そんなちびよりもれいむ達のおちびちゃん達の方がゆっくりできるでしょ!?
ゆっくりさせろ!はやく自分達をゆっくりさせろ!

「なんだ?気持ち悪いな・・・纏わり付いてくるなよ。それにしても汚いやつらだなあ」

お兄さんは演技ではなく本当にこの2匹が昨日捨てた自分の元飼いゆっくりと気付かなかった。
まさか昨日の今日でここまで汚れるとは思っていなかったし、2匹は気付いてなかったがストレスで人相ならぬゆん相も変わり果てていた。
さて、このまま踏み潰しても良いのだが、両腕にいるちび達の教育に悪そうだし怖がるかもしれない。
そう思ったお兄さんは纏わり付く2匹を死なない程度に蹴り飛ばす。
2匹が集めていた残飯が辺りに散らばる。

「野良なんて普通なら殺されても文句言えないからもう来るんじゃないぞ」
「のらさん、ゆっくちさようなら!」
「よし、そんじゃまた寄ってこない内にさっさと帰るか。今日の晩御飯はゆっくりふーどに蒸かし芋刻んで混ぜてやるぞ」
「ゆわぁー!まりしゃおいもしゃんだいちゅき!」
「ありしゅもだいしゅき!」
「その代わり!ご飯の後はマナーのお勉強だぞ」
「ゆうっ!おべんきょうはにがてだけど、ゆっくりがんばる!」

やはりお兄さんは今度はきちんと躾をして育てようと決めたらしい。
新たに飼われたこの2匹はちゃんと躾けられ、幸せなゆん生を過ごしていくだろう。
和やかな雰囲気で去っていく1人と2匹。
蹴り飛ばされた2匹は散らばった残飯を拾い集めるのに必死でそれどころではなかった。



群れに帰り着いたのは夕方。
元飼い主に恨み事を吐きつつ、群れに入っていくと、まず、収穫の少なさに文句がぶちけられた。
やはりクズな声無しは使えない。この無能め。奴隷として使って貰われている恩を忘れるな。でいぶはしんぐ(ry・・・。
暴れだしたい衝動をなんとか堪えていると、突然、口調が柔らかくなる。

「まあ、やさしいれいむはこのへんでゆるしてあげるよ!」
「しんいりのどれいにかんげいのいみできょうだけ、とくべつにあまあまさんをよういしたよ!」
「へやにおいてるからなかよくゆっくりむ~しゃむ~しゃしてね!」

あまあまという言葉に疲れも忘れてぴょんぴょん走り出す2匹。
飼い主が時々くれたあの味を思い出す。
捨てられてたった2日しか経っていないのに、遥か昔の事のように感じた。
ようやく昨日渡されたビニール袋まで辿り着き、ゴソゴソと中に潜り込む。

ゆっ!おかあしゃんたちかえってきたのじぇ!
まりしゃたちちゃんといい子にしていたのじぇ!
一緒にあまあまさんをむ~ちゃむ~ちゃしようね!
む~ちゃむ~ちゃ、しあわちぇ~!!

そんな幸せな光景を想像していた2匹の目に飛び込んできたのは、苦悶の表情を浮かべ死んでいる汚れた我が子達の姿であった。
レイプされて死んでいる1匹は千切られたぺにぺにを無理やり口の中に押し込まれいる。
1匹は炎で炙られたのだろう、全身焼け焦げ香ばしい匂いを漂わせている。
最後の1匹はあにゃるから小石を沢山詰め込まれ、体積が元の3倍ほどに膨らんでいる。

「ーーーーーーー!!!?」

顔の間近で変わり果てた我が子と対面した両親は、何が起きたのか分からず両目からぼろぼろと涙を流しながら全身で悲しみを表現しているのだろうか。
狂ったように身体を地面にバタつかせ続ける。
なんで!?なんで!?なんで!?
そんな混乱しきってる両親の目の前に、ゆっくりと長まりさが現れた。
側近のゆっくり達が両親達を地面に押さえつけ、動けなくする。

「ゆっへへへ・・・まりささまからのぷれぜんとはきにいったみたいなのぜ」

2匹は涙を流して長まりさを睨み付ける。
襲い掛かって殺したいが、数匹がかりで押さえつけられてどうしようもない。

「ゆあーん?まだきづかないの?まったく、こえなしはほんとうにあたまがわるくてこまるのぜ」

長まりさは2匹の目と鼻の先まで顔を近づけると、途轍もない凶相を浮かべた。

「まりさは、おまえたちのまえにあのいえでかわれていたまりさなのぜ?」

そう。この長まりさはお兄さんに番のありすを殺され、小学生におちびちゃん達を惨殺されたあのまりさだ。
あの後、野良として生き残り、頭角を現した後、急激に増えていた一帯の野良を纏め上げると大きな群れを形成し、長と呼ばれるまでになっていた。
今は新しい妻、新しい子供も出来ている。
野良ながらも幸せな方だろう。
だが、まりさは片時も忘れなかった。忘れる事が出来なかったのだ。
自分達家族の崩壊の元凶となったあの憎らしい無音ゆっくりどもを。
お兄さんに捨てられる時、ケースから掴み出されて行く自分達を見送ったあのにやけ顔を。
奴等さえいなければ、自分達はあのまま飼いゆっくりとして順風満帆なゆん生を送れたに違いないのだ。
この無音ゆっくりの家族が群れに運ばれたあの時、顔を見て長まりさはすぐ気付いた。
だが、どうやらこいつ等は今の今までまったく気付かなかったようだ。
こいつ等にとって自分や死んでいった家族など、覚える価値もなかったという事か。
まあいい。この群れに来てくれた以上、苦しんで苦しんで死んでいってもらおう。
番を狩りに出した後、長まりさは残された子供達の所に訪れ、仔ゆっくり達を虐待し始めた。



まりさは無声ゆっくり達に受けた仕打ちと屈辱をその子供達に話した。
お前らがこんな痛い思いをするのも全部、お前らの両親が悪いからだよ。
ゆっくり理解して死んでね!と。
延々と続く暴行の中、子供達は泣き叫んだ。
いやだ。いやだ。そんな親のゲスな行いのせいで死にたくない。痛い。苦しい。助けて。気持ち悪い。
そうだ。れいむ達もあんな言葉も喋れない親はゆっくり出来なくて嫌いだったんだよ。
お願いしますお願いしますあんなクズな親はどうなったっていいですからまりさだけは助けてください。
長まりさは勿論、そんな懇願にまったく耳を貸さなかった。
お前達には、自分の子供達が合ったのと同じ地獄を味わってもらおう。
手下が小石、拾ったライター等を次々と運び込んでくる。
いやだ!まだ死にたくない死にたくない!自分達はもっとゆっくり出来るはずだ。間違っている。
あんな口が聞けない出来損ないの親の元に生まれたせいでこんな目にあうなんて。
死ね。死ね死ね。可愛い子供達をゆっくりさせられない原因になったゲスな親はゆっくりしないで死ね。
子供達は全員、両親に対して呪詛を唱えて死んでいった。

「ゆへへへ。まりさたちもこころがいたかったけど、しかたなかったのぜ。やれやれ、おやがげすだとこどももかわいそうなのぜ」

長まりさはへらへら笑いながら子供達の最後の言葉やら、如何にして暴行を加えて殺していったのか詳細に説明をしていった。

「なにふるえてるんだぜ?ああ、こどもがいなくなったからないてるのかぜ?
 でも、あんしんしていいのぜ?かしこいまりささまはあんなうすぎたないこどもよりももっといいこどもをくれてやるんだぜ?」

長まりさが合図すると、群れの中でも1,2を争う醜いゆっくりが出てくる。
押さえつけられ動けない無音まりさ、れいむの背後に立つと無理やりすっきりーし始めた。

「「!!!!?」」

動けない2人はどうする事も出来ず、

「げはぁはぁはぁ!くずのくせにいいまむまむしてるよお!!うほおっ!」
「ぐげげ!げへげへ!ばりざの・・・ばりざのごどもをにんっしんしでねええええ!!!」

あっさりすっきりー!されてしまうと笑うほどあっけなく胎生にんっしんが完了してしまった。

「ああ、どうでもいいけどくずなこえなしのこどもはうまれたらすぐみんなのおもちゃかごはんになるんだぜ?」

呆然とする妊婦達にげらげらと笑いながら説明する。
声無しどもは家族を含め、通常のゆっくりとは見なされない。
虫以下の存在。ゆっくりの形をした物として扱われる。

「どうせすぐにんっしんさせてやるからえんりょなくうめばいいのぜ?」

にんっしんしていても日課の餌集めが免除になる事など無い。
行動の足枷になるだけで生まれたらすぐ死ぬ運命にある望まれないお腹の子供。
それを恨みながら育て、一生を過ごしていけ。
まあ狩りの最中などですぐ死んでしまうかもしれないが、それはそれでいい。
2匹の表情を覗くと、ゆっくりした幸せさの欠片もない。あるのは絶望だけ。

「それと、そのびにーるぶくろのなかのきたないものを、しっかりたべてえいようをつけるのぜ?のこすとようしゃしないのぜ?」

長まりさは満足気にわらうとその場を後にした・・・。










・・・さて、全国各地に溢れかえっていた野良ゆっくり達の群れはその規模を拡大していく。
街中を歩けば至る所に野良ゆっくりの集団が見かけられる様になっていた。
野生ならともかく、ゲスが多く個体の入れ替わりが激しい上に、人間のテリトリーである街でこれ程の規模の群れが形成されるのは今まで非常に稀であった。
一連のブームの影響で捨てゆっくりが急増していた事と、奴隷という労働力を獲得したのが要因であろう。
そして、何百何千という仲間を持った野良ゆっくり。
ろくな考えを持つ訳がなかった。

「ゆっへっへっへ。これだけのむれになったからにはにんげんさんなんかいちころなのぜ」

「こんなにつよいまりささまたちがじじいよりよわいわけないのぜ!いまからむれのみんなでふくしゅうにいくのぜ!」

「むきゅ!おにいさん、いのちがおしかったらぱちぇたちにあまあまたくさんもってきてね!」

などと、よりにもよって・・・というか、当たり前のごとく群れの皆で人間に喧嘩を売り始めるものが現れだした。
ゆっくり達は忘れていた。
何故、今まで街中で巨大な群れが存在しなかったのか。
人間のテリトリーの中で邪魔な野良が一箇所に集まったら、どうなるのか。
只でさえ急増した野良ゆっくり達による景観の破壊、衛生問題、食害等の問題に頭を痛めた人間が下した結論は早かった。















『・・・・・・と、いう事で、来週から全国一斉に開始される野良ゆっくりの駆除ですが・・・』
『でも、この駆除にかかる費用も国民の血税で賄われるんですよね?
 だから私は以前から飼いゆっくりの不法投棄の規制強化についてですね・・・』
『そもそも以前から指摘されるように国民全員のペットに対する意識が欧米先進国と比べ・・・』
『さて、一連のブームにより今までに駆除並びに捨てられたゆっくりの数は無音種と通常種をあわせ推定・・・』
『確か在庫が余ってる無声ゆっくりも処分されるんですよね・・・』

私はTVニュースから流れてくるキャスター達のコメントに耳を傾けながら、食後のコーヒーを飲んでいた。
聞いての通り、来週から行われる野良ゆっくり一斉駆除によって、今存在しているほぼ全ての野良ゆっくり達は地上から消滅してしまう。
元々は人間達の身勝手さで捨てられた何の罪もないゆっくり達なのに・・・。
原因の一端はこちらにあるのに、いくらなんでも可哀想じゃないか!
テーブルの対面で同じくコーヒーに口をつけていた友人に、その憤りを訴える。

「・・・んー、まあ、そうな。お前がコンテストに送った企画がそもそもの始まりだからその通りかもな」

全く・・・こいつは何を的外れな事を言っているのか。
そんな事ではなく、私が言いたいのは、もっとこう、飼い側のモラルというかなんというか・・・。
私が懇々と諭すも、友人は適当に頷きながらTV画面を眺めている。

「ショップの余剰品と今までの野良を合わせて推定1000万匹以上だってさ。新記録だな」

一言呟くと、友人は空いたティーカップを片手に台所へと姿を消した。
確かに、この規模の駆除は初めてだから新記録なんだろうな。
来週から消えていくであろう1000万のゆん生に対してそっと黙祷を捧げよう。















番だったまりさは狩りの最中人間に捕まり虐待を受けてあっさりと死んでしまった。
腹を割かれ、中から赤ちゃんのなりかけを引きずり出された姿で放置されていた。
涙も乾いていない苦悶に歪んだ顔。
れいむが身重な状態でここまで生き残れただけでも奇跡といっていいだろう。
しかし、その奇跡は幸運といえるのだろうか?
れいむは残った片方の目で膨れ上がった自分のお腹を見つめる。
これで何匹目なのだろうか。
死ぬ気で生き延びて、苦労して産み出して。
『おきゃーしゃん、ゆっくちしていっちぇね!』
そんな挨拶されてもレイプされて出来たあかちゃんなんかに愛情なんて湧く筈もない。
そもそも、産んだその日に食われてしまうのだ。
そもそも、行動の枷とする為に孕まされている子供なのだ。
もう嫌だ。
もう嫌だもう嫌だもう嫌だ。
鬱々とするも、自殺という概念がないゆっくりにその選択は出来ない。
このままいずれやって来る死を待つしかないのだ。
ゆっくりしていない。
こんなゆんせいゆっくりしてないよ。
こんなあかちゃんゆっくりしていないよ…。





(おわり)












あとがきとか補足っぽいもの

自分で振ったネタながら台詞を出せない時点でSSだとなかなか話が映えないのもあり四苦八苦。世話無いなあ。
ちなみに、やはりというか作中の世界では無声ゆは鬼意山達に大不評の模様。
理由としては叫び声がないとちょっと・・・ってのと、そもそも口潰せばいいだけじゃんって話で。
金バッジ級のきちんと教育がされた無声ゆならばゲスになりにくいので、この話の後も一定の需要層が存在しています。
という訳で少数生産に絞り込まれているだけなので、前々作のゆっくり達は結局無声ゆを産み続けています。
他に思いついていたネタに、
飼ってきた無声仔ゆ達が留守番中押入れに探検して閉じ込められ発見されず色々して全滅とか、
野生のにんっしん中のゆっくりの赤ちゃん達をこっそり無声に処理してその後の一家を観察していくお兄さん等等。
今となってはそっちの方が分かりやすくてよかったかもと思ったり。
本当はさらっと何も考えずにシンプルでお馬鹿なの書きたいんですけど、どうにも冗長になるなあ。
後、処分されるゆっくりの総数が1000万という数字について。
日本全国の保健所で1年間に処分されている犬猫の総数が確か30万匹以上なのでゆっくりならそれより遥かに多いだろうって事で。





今まで書いたの

ふたば系ゆっくりいじめ 533 カマキリさんの卵でゆっくりするよ!!
ふたば系ゆっくりいじめ 540 浮浪者とゆっくり
ふたば系ゆっくりいじめ 541 静かにゆっくりするよ!!
ふたば系ゆっくりいじめ 581 静かにゆっくりできないよ!!(前編)
最終更新:2010年10月09日 21:05
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