anko2216 真夏のオアシス

真夏のオアシス 15KB
不運 誤解 野良ゆ 子ゆ 都会 人間なし 割と見ると思います、どうぞ


『真夏のオアシス』


真夏。
人間さえうだる様な暑さが日中続く、そんな季節だ。
そんな日々が続けば、並の動物以下のモノはどうなるだろうか。
寧ろそんなものは存在するのだろうか。
そんな存在が実はいた。

ゆっくりという喋る饅頭だ。

最近では都市部にも表れるようになり、カラス以上、ネズミ以上に嫌われるようになった。
その嫌われっぷりは蛇蝎の如く嫌われるという言葉が悲しくなるほどだ。

そんなゆっくりが暑い外にいた。

「ゆひぃ…… ゆひぃ……」
「……のぢょきゃわいたよぉ、あちゅいよぉ……」

都市部に生息するゆっくりは野良ゆっくりと呼ばれている。
その野良ゆっくりの親子が熱い道路を動いていた。

ヘドロでも固めた様な汚い黒い髪、元の色が赤だと信じたくない様なリボン。
ゆっくりれいむと呼ばれるゆっくりだ。
大きいほうの大きさはバスケットボールほど、成体と呼ばれる大きさのれいむだ。
小さいゆっくり、人の拳ほどの大きさのゆっくりは、子ゆっくりになり立てなのだろう、赤ゆっくり言葉が抜けない子れいむ。
その姿はまだ親れいむ程汚くはなかったが汚らしかった。

二匹とも不衛生の極まりの様な薄汚い姿をしている。

そんな暑い日中にもかかわらず、このゆっくりの親子は外に出ていた。
夏は涼しい朝、餌をとりに行く行為、狩りを行い、暑い日中は家か日陰でゆっくりしているものである。

「おちびちゃん、がんばろうね…… もうすぐおみずさんがみつかるはずだよ……」
「あぢゅいよぉ…… ぎょーくぎょーくしちゃいよぉ……」

しかしこの親子は外に出ている。
餌が取れなかった、それもある。
番がいない、それもある。
なにより、水がなかった。

よく見ると、親れいむと子れいむにはひび割れと皺が幾つもある。
水分が足りていない証拠だろう。

番のまりさはもう何日も帰っていない。
雀の涙ほど、というか食べカスほどの餌の備蓄も既に尽きた。
公園の噴水から出ていた水も今は少しもない。

ゆっくり達のあずかり知らないところだが、断水をしているため、公園の噴水からは水が出てこなくなっていた。

公園に住んでいたこのゆっくり親子は、公園から出て、水を探すことにしたのだ。

水分とは生きるモノにとって重要なモノである。
水がなければ死ぬ、それは饅頭である、生き物ですらないゆっくりに水なんて思い込みで喉が渇いたとか言って飲む嗜好品だろうなんて思うかもしれないが。
実際、ゆっくりに水分がなければ動かなくなる。
底部が口が目が、乾燥し固まってしまう。
そして最後には、中枢餡と呼ばれる餡子が乾燥し死ぬ。

中枢餡が潰れるか、餡子が流失しなければ大抵死なないゆっくりにとって、かなりの苦痛になる死だろう。

そんな死がこのゆっくり親子の目の前に前で迫っていた。


「もうすぐだからね…… もうすぐだからね……」

親れいむはもう何度も、たくさん、3回以上は言ったであろう言葉を自分に言い聞かせるように呟く。
その声はもうガラガラである。

「ゆひぃ…… ゆひぃ……」

黒髪を持つれいむ種である、その黒い髪は熱を溜め、普通以上に熱くなる。
できるだけ影があるところを移動しているが、それも限界がある。
もう何度も焼ける様なアスファルトを通り、親れいむの底部も限界に近い。

「おちびちゃん、ちょっとここでやすもうね……」
「ゆぅ…… ゆっくちわきゃったよ……」

影の端まで来ると、また辛いアスファルトの上を歩くことになる。
そう思うと気が遠くなり、少しばかり休むことにしたようだ。

「すこしだけ、すーやすーやするよ……」

水もなく、餌もなく、休む場所もなく。
ほんの少しだけできた木陰に安息を見出し、寝ることにした。







「すーや、す…… ゆ? ゆゆゆ? ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! あづいぃぃぃぃぃぃ!!!!」

しかし、その安息は30分と持たなかった。
影は太陽の当たり具合で当たり前の様に動く。
今まで影が差していた場所はすぐに日が照らした。
頭のあまりの熱さの為に、前方に跳びはねる、その先は日が照りに照らしたアスファルトである。
ジッと、焼ける音が親れいむの底部から聞こえる。

「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

予期せぬ二度目の熱に、更に大声を出す。
今度は影に避難することができた。

子れいむはというと親れいむにしては幸いにも、日は当たっていなかったようだ。

馬鹿面を晒して親れいむが叫んだ声にもピクリとも反応せず、寝ている。

「よかったよぉ…… ゆぅ…… あんよさんがあついよ…… ゆっくりさめてね! ふーふー」

親れいむはタコ口を作り、底部に届くことない風を送ろうとしている。


底部に風を送っているつもりになって数分、ようやく痛みが気にならない程度になってきた。
痛みに耐性がないゆっくりだが、野良として都市部を成体まで生き抜いてきた親れいむはある程度我慢できるようだ。

「ゆぅ…… ゆっくりできないよ……」

子れいむが寝ているせいか、ついつい弱音が親れいむの口からもれた。
一度、吐き出したら止まらない。
俯きながら呟き始める。

「たくさんむーしゃむーしゃしたいよ、たくさんすーやすーやしたいよ、たくさんごーくごーくしたいよ……
 たくさん、たくさん……」

俯いていた顔を上げ、空を見て叫ぶ。
その目は砂糖水の涙が溜まっていた、口は戦慄き、喉の奥からは、ひっくひっくと泣く直前の兆候を見せる。
そして数秒も持たず、それは決壊する。

「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉおっぉおぉぉぉっぉ!!!!!」

ゆっくりすることしか考えていないようだ。
子供を持って、頑張っていても、所詮はゆっくりのようだ。

「どぼじでごんなごどにぃぃぃぃぃぃ!!」

バタバタと駄々をこねるように体を動かす。
溜まった鬱憤はまだまだ吐き終えない。
工事の騒音の以下の音が空気を響かせる。

「でいぶゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!! ゆっぐりじだいだげなんだよぉぉぉぉぉ!! どぼじでぇぇぇぇぇ!!」

親れいむの目から砂糖水の涙がこぼれる。
大粒の涙はアスファルトに落ち、染みを作るがすぐに蒸発する。

「なんでぇぇぇぇ!! なにがわるがっだのぉぉぉぉぉおおお!!!!」

締まりの悪い口から涎が垂れ、唾を撒き散らす。
今まで水分が足りなくて顔に罅や皺が刻まれていたその体の何処から絞り出されるのか、汚らしい体液が垂れる。

「ゆがぁぁぁぁぁぁ!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」





「ゆぅ、ゆぅ」

ひとしきり叫び終えると、親れいむは荒い息を付き、空しさに気付いた。
今まで以上に喉が渇き、空虚だけが残った。
もう、少しも声を出したくない、喉が裂ける様な引きつる様な痛みを親れいむは感じた。

「……」

横目でチラリと子れいむを見ると、まだ呑気に馬鹿面のままで寝ていた。
見ればいつもゆっくりできるはずの我が子を見ても何の感慨もわかなかった。

「……」

子れいむをゆっくりさせるためにぺーろぺーろをしても、さっき以上に水分を使った舌はカラカラで罅の痛みを増やすだけだろう。
すーりすーりをしても、ちょっと前にやったら「あちゅいきゃらやめちぇね!」と拒否された。

どうすればいいか分からなくなった。

とにかく、ゆっくりしたかった。


「……」


虚ろな目で親れいむはまだ続く道を見る。

「……ゆ?」

思わず、信じられないモノを見たかのような声を出してしまう。
親れいむの目に映ったモノ、それは水だった。
喉から手が出るほど、今欲しかったもの、水。
それが水である証拠の様に、鏡の様に辺りを写しだし、水面が揺れいている。
そう、アスファルトに水溜りがあった。

「ゆゆゆゆ!!」

ただそれだけで親れいむの目に一気に希望の光が宿る。

「おちびちゃんおちびちゃん、おみずさんだよ! おみずさんがあるよ!」

少しも大きな声を出したくなかった声は自然と大きくなっていた。

「ゆ! おみじゅしゃん! おみじゅしゃんどきょ!」

子れいむも現金なもので今まで親れいむの叫び声を少しも聞いていたなかったその聴力は自分の都合に良いことを拾った。
寝ぼけ眼でキョロキョロと辺りを見渡す。

「あっちだよ! あそこにあるよ!」

親れいむはもみあげで水溜りがあったほうを指す。
子れいむの目にも水溜りが確認できた。

「おみじゅしゃんじゃあっぁぁぁぁぁあ!!!」

親れいむと同様に、希望に目を光らせ、さっきまでの今にも死にそうですっと言いたげな顔が無くなった。
まあ、根性が足りなかっただけだろう。

「ゆっくちいしょいでいきょう! しゃっしゃとゆっくちいきょう!!」

もはや定番の矛盾した言葉で子れいむは親れいむを促す。
今にも飛び出しそうな勢いだ。

「そうだね、おみずさんがなくならないうちに、ゆっくりいそいでいこうね! でもじめんさんがあついあついだからちゃんとかげさんをとおっていこうね!」

親れいむは流石に考えたようだ。
勢いでその場から飛び出したら、数十秒もたたずに自然焼き饅頭が出来上がっていただろう。

「ゆっくちいしょぐよ!」
「ゆー!」

影から影へ、少しずつ確実にれいむ親子は水溜りへと近づいていった。
少しづつ少しづつ……





「どびょじでおみじゅじゃんがなぎゅなっでりゅにょぉぉぉぉぉぉっぉぉ!!!!」

近づき近づき。
頑張った結果、水溜りはなくなってしまった。
あたかもそんなもの無かったかのように。

「ゆぅ……」

親れいむも一応、水が蒸発してしまう事を予想していたが、本当にそうなってしまうとは、できるだけ考えたくなったことであった。
もうすぐ手に入るはずだったものがなくなってしまったことに流石に堪えたようだ。
今にも倒れそうに体をふらつかせる。

「ゆゆ! おきゃあしゃん、あしょきょにおみじゅしゃんぎゃ!」

子れいむがもみあげで指したところ。
そこには水溜りがあった、先ほどと同じような水溜りだ。

「ゆゆ!」
「おきゃあしゃん、ありぇでゆっくちできりゅよね!」
「できるよ! きっとゆっくりできるよ!」

れいむ親子は一度失った希望をもう一度心に、跳びはね始めた。








「「どびょ゛じでお゛み゛じゅ゛じゃ゛ん゛がな゛ぎゅ゛な゛っ゛でり゛ゅ゛に゛ょ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!!」」

二度目の水溜りの消失。
親れいむも赤ゆっくり言葉に戻るほど衝撃的だったようだ。

「もうやぢゃ! れいみゅうぎょきたきゅにゃい!」
「そんなこといわないでね! こんなところにいたらゆっくりできなくなっちゃうよ!」
「やぢゃやぢゃ!!」

もう一歩も動かないと言わんばかりに、子れいむはぐずり始める。

親れいむだって駄々をこねたい、しかし今ここで駄々をこねても少しも状況が良くならないことはわかっている。
もういっそ引っ叩いて、動かそうかと思った。

「ゆゆ!」

親れいむは目を見張る。

「おみずさんがあるよ!」

またまた水溜りを見つけたからだ。

「もううぎょきたくにゃい! おきゃあしゃんとってきちぇね!」
「ゆ……ぅ」

もう動きたくないのはわかる、親れいむだってもう一歩たりとも動きたくないのだから。
一匹で行くのは、子れいむが危険になってしまう、でも水がなければゆっくりできなくなってしまう。
二匹で行くべきか、一匹で行くべきか。
しかし、水を取りに行くときに、子れいむが親れいむの足を引っ張っていた。

「……わかったよ、おちびちゃん、そこをうごかないでね!」

親れいむは決意した。
一直線で水溜りまで行き、底部を冷やして戻ってくると。
熱いアスファルトの上の水がお湯になっているということが微塵も頭に入っていない辺りゆっくりだった。

「ゆっくりいそいでいってくるよ!」

親れいむは子れいむを木陰に残し。
水溜りに向けて跳びはねた。
底部が文字通り、焼けるように熱い、痛みを堪える為に歯ぐきをむき出しにゆっくりとは思えない形相でピョンピョンと熱いアスファルトの上を跳びはねる。

「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

もはや一刻の猶予も残されていない。
ラストスパートだと更に底部に力を込めた時。
水溜りが消失した。
まるで幻の様に。

「ゆえええええええええ!!! なんでぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

思わず、底部を止め叫ぶ。
底部を止めてしまったせいで底部がジュっと焼ける音をたてた。

「ゆぎゃぁぁぁぁぁっぁぁ!! あづぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

何度も熱いアスファルトの上を飛んだ底部は既に固かった。
そして、親れいむの底部は完全に水分を消失させ、動かなくさせた。

「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!! れいむのあんよさんうごいてぇぇぇぇぇえぇ!! れいむゆっくりできなくなっちゃうよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ついに道路のど真ん中で動けなくなってしまった親れいむ。

「うごいて! うごいて! うごいて! うごいて! うごいて! いまうごかなきゃ、いまやらなくちゃ! れいむゆっくりできなくなっちゃよぉぉぉ!!
 そんなのやだよぉぉぉ!! だからうごいてよぉっぉぉ!!!」

体をグネングネンと動かし、それでも底部は動かない。
両方に垂れるもみあげも無意味に上下に動かし、それでも底部は動かない。

木陰でしのいできた日光は、今までにない長時間、直接親れいむの頭を照りつけた。

「おひさまさんがあついままこんなやかれるなんてれいむのあたまさんがふっとーしちゃうよぉぉおぉぉ!!!」

既にわいた様な頭で親れいむは叫ぶ。
太陽はそれでもサンサンと輝き照り続け、親れいむの水分を飛ばし続けた。








「……ゅ゛っ゛……ゅ゛っ゛」

遂に親れいむは動かなくなる。
目はミミズの様にカピカピになり、皮は皺だらけのまま固まり、所々に罅が走っている。
口は何かに耐えるように食いしばられている。
もみあげもピクリとも動かない、体内の餡子の水分も随分と飛んでしまったのだろう。

しかし、死んではいない。
まだ、中枢餡には傷一つないからだ。
野良生活で無駄に鍛えられたゆっくりできないことへの耐性は、自身が死ぬことすら許さない。
食いしばったまま固まった口では餡子を吐くことはできない。
そもそも水分がほとんどないため、死ぬほどの量がでるかも怪しい。

もう親れいむ死ぬためには時間が経つか、他者に殺されるかだけだろう。









子れいむは憤慨していた。
親れいむが水溜りに着いたと思ったら、いきなり水浴びを始めたからだ。
楽しそうにもみあげを振りあげて全身に水を被るように、まるで子れいむへの当てつけの様だ。
そして、何時までも水溜りから帰ってこない。
ゆっくりしすぎて、寝てしまったのだろうか。
だとしたら、絶対に許さないと子れいむは思う。

自分がこんなにゆっくりしていないのは誰のせいだ。
親のせいだ。
親は子供をゆっくりさせる義務がある。
だというのに、あの親は餌もくれない、挙句水さえくれないではないか。
今までの待遇に子れいむは更に怒りを強くする。

「あにょげしゅおや、きゃえってきたられいみゅがせいっしゃいしゅるよ!」

しかし、それでもやはりいくら待っても来ない、更に親れいむが動く気配すらなくなった。
子ゆっくりに忍耐を期待する方が無駄なことだが、子れいむの怒りは爆発した。

「もーおきょったよ! れいみゅがじきじきにせいっしゃいしゅるよ!」

そう宣言すると。
子れいむは、木陰から飛び出した。

瞬間。

「あじゅぃぃぃぃぃぃ!!」

なんで木陰に居たかすら忘れたのか、子れいむは焼ける熱さに文字通り飛び上がった。

「にゃんできょんにゃにじめんしゃんがあちゅいの! ゆ! あのげしゅおやのしぇいだにぇ! にゃんてひきょうなにょ!」

どう思考展開すれば、親れいむに行きつくのか、子れいむは親れいむを犯人とした。
親れいむの体内に何か大切なものを置き忘れたようだ。

「れいみゅとってもおきょったよ! ぷきゅー!」

精一杯の怒りを誰もいないのに主張するために子れいむはぷくーを敢行した。
子れいむはほんの少し膨れ上がった。
そして、強い風が吹く。
いままで風なんてなかったのに、まる子れいむを背後から一押しする様に。
子れいむを転がした。

木陰からコロコロと転がる子れいむ。
久しぶりに吹いた風に喜んだ子れいむは調子に乗って転がり続ける。

「こーろこーろ」

そして顔面からアスファルトにつく。

「ゆむぅぅぅぅぅ!!!」

顔面からの接触は、他の場所より分厚い底部よりもより強くその熱を子れいむに伝えた。
あまりの熱さに、子れいむは転がり続ける。
後方へ転がればいいモノを、子れいむは前転をし続ける。

そしてついに、さらに熱い場所に行きつく。

マンホールの上だ。
転がり続けた子れいむは今度は底部からマンホールの上に接触した。

「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!」

今までにない大絶叫を上げる子れいむ、ついに口と目から砂糖水を垂れ流す。
卵を落とせば目玉焼きすら作る真夏のマンホール、その温度はおして知るべきだろう。
しかし、その一瞬では焼きつけることはできない。
もう一度、子れいむは前転した。
ジュウーと液体が蒸発する音が聞こえるとともに甘い匂いが香った。

「!!!!!!!!」

子れいむの口から目から垂れ流した砂糖水である。
砂糖水はマンホールの上で一瞬で蒸発し、キャラメル色となり、瞬時に子れいむの顔面をくっつけたのである。
意思とは関係なしに更に溢れる砂糖水。
甘い匂いはすぐにたち消え、焦げくさいにおいが辺り覆う。
カラメルと化した砂糖水が炭化し始めたのだ。
焦げ臭いにおいはゆっくりできない。
顔を塞がれても子れいむは匂いを感じた。

口をふさがれた子れいむは、ビクンビクンと震えるだけだ。
マンホールと熱いちゅちゅをしている奇妙な子れいむの誕生である。

このまま、ゆっくりできなった野良根性が働き、生き続けるか、はたまた根性が足らずにすぐに死んでしまうのか。
どちらにしても死は免れないだろうが。












そんなゆっくりの親子がいるなか。
また一組のゆっくりの家族が、公園を見捨て、道路に出た。

そして、何も無いはずの道路で言うのだ。

「ゆゆ! あそこにおみずさんがあるよ!」

そんなものないはずなのに、存在しない幻の水を追い続ける。

「ゆっくりおいかけるよ!」

逃げ続ける水を。

「どぼじでなぐなっでるのぉぉぉぉぉ!!」

蜃気楼を。







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14作目です。


では、最後まで読んでいただけたら幸いです。
最終更新:2010年10月10日 15:26
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