anko2229 シュガースナッフ・メロウスイート

シュガースナッフ・メロウスイート 38KB
虐待 都会 虐待人間 嬉々として虐待です



シュガースナッフ・メロウスイート





 セットするのは大変だけれど、出来上がった物を見るのはやっぱり楽しい。
ショーウインドーに映る結いあげてシニヨン風にまとめた自分の髪を見ながら少女は思った。
季節は初夏、のどかな休日の午後。柔和な笑顔を浮かべる少女の腕には、
散歩の途中で立ち寄った花屋で購入したネメシアメロウの鉢植えが抱えられている。
スイートシフォンと呼ばれるごくごく薄く色づく紫の花色が、少女のチュニックに良く映えていた。
気持ちよさそうに風を受ける少女は目を閉じて、スイートシフォンの名前通り甘い香りを吸い込む。
そして幸せそうな笑みを浮かべると、足の向くままに歩きだした。

 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」
少女がしばらくのんびりと散策していると、いきなり足元から声をかけられた。
視線を下に向けると、そこにはゆっくりの一家がいた。ゆっくりしていってね、という言葉とは裏腹に、
4つの饅頭はこの機を逃したらもうおしまいだと言わんばかりに必死だ。
少女は小首を傾げると、とりあえず挨拶を返すことにした。
 「ゆっくりしていってね」
 「「「「ゆゆっ!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!!」」」」
その言葉を聞いた瞬間、家族の顔がはじけるように咲く。ぴょんぴょんとその場でジャンプを繰り返し、
子供2匹などは涙さえ浮かべている。
 「どうしたの?私に何か用?」
しゃがみこんで親ゆっくりの頭を撫でてやると、黒帽子の親ゆっくりがゆんゆん泣きながら喋り出した。
 「にんげんさんはゆっくりできるひとだよね!?まりさたちをたすけてほしいよ!」
 「助けてって、どう言う事?あなたたち野良ゆっくりなの?」
 「まりさたちがおやまさんでいっぱいゆっくりしてゆっくりしてたら、ゆっくりしてないにんげんさんが
きて、まりさたちをくらいくらいしたんだよ!」
まりさがそこまで言った所で、紅白リボンを付けた黒髪のゆっくりが言葉を引き継ぐ。
 「にんげんさんはれいむたちにぺっとになれっていったんだよ!ゆっくりできないことを
いっぱいいってきて、いやだよっていったらいたいいたいしたんだよ!!
れいむたちはゆっくりできないから、にんげんさんからがんばってにげたんだよ!!」
 「そう・・・・・・。大変だったのね」
いたわりと少しの同情をこめて頭を順番に撫でてやると、ゆっくりの家族は猫のように目を細めた。
なるほど。この子たちはどうやら、ペット用に山から連れてこられた野生のゆっくりのようだ。
ペットショップの管理がずさんだったか、もしくは売られた後で逃げ出したかどちらかなのだろう。
少女はそう当りを付けた。

 「にんげんさんにおねがいがあるよ!」
しばらくの間家族は少女に撫でられるがままだったが、つと親まりさが顔を上げ、
眉毛をきりっとさせて言ってきた。
 「ん?何?」
 「にんげんさんのもってるおはなさんをたべさせてほしいんだよ!まりさたちおなかが
ぺーこぺーこなんだよ!!」
涎をだらだらとこぼしながらキラキラした目で要求を伝えるまりさ。
どうやら少女に話しかけたのは、ネメシアメロウの香りにつられてのことだったらしい。
 「でもこれは私が今買ったお花で、とても気に入っているのよ」
少女は少し困ったように鉢植えを抱え直す。
 「おねがいだよ!れいむたちとってもこまってるよ!きさんがないからかりもできないし、
あついあついでみんなのどもかーらかーらなんだよ!!」
親れいむもぴょんぴょん飛び跳ねながら必死におねだりしてくる。
 「「おにゃかすいちゃよー!ゆっくりしゃせちぇー!!!」」
まりさとれいむ一匹ずつの赤ゆっくりは、感極まったように叫びだす。
 「うーん・・・・・・。じゃあとりあえず、私の家に来ない?」
 「「「「ゆゆっ!?」」」」
 「あなたたちが困ってることは良く分かったわ。でも、今このお花をあなたたちに
上げても結局何の解決にもならないでしょう?だから、私のお家に来たら良いわ。
今後のことはそれから考えましょう?」
その言葉を聞いたゆっくりたちは、家族全員泣きだしてしまった。ただし、喜びで。
 「ありがとうね!ありがとうね!!」
 「やっぱりにんげんさんはゆっくりできるにんげんさんだったんだね!!」
 「「ゆっくりしちぇいってね!ゆっくりしちぇいっちぇにぇ!!」」
 「じゃあ私についてきてね。お家に着いたらおもてなしするわ」
天使のように笑った少女は、ゆっくりがついてくることができる程度の速度で、軽やかに歩き始めた。

 ゆっくりの足に合わせたため、結構な時間をかけて少女たちは家にたどり着いた。
少女の家は、いっそ屋敷と言って良いぐらいの立派な一軒家だった。
 「いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
ミュールから室内履きに履き変えた少女は、全員のあんよを濡れタオルで拭いてやった後、
家族を一階の一室に案内した。全員が入った後、少女は扉を閉める。
がくんっ、と、普通のドアを閉めるより重い音がした。
 少女がゆっくりを招き入れたのは、10人以上が入っても狭苦しさを感じさせることは無いだろう
広々としたフローリングの部屋だ。壁には琥珀色をした前面ガラス張りの木製キャビネットが
置かれており、そこには楽譜やクラシックのCDなどが収められている。
部屋の一角は一段高くなっており、そこにはグランドピアノが鎮座していた。
 ここは少女のピアノレッスン室なのだろう。室内には暖かな色の間接照明に満ちており、
長時間居続けてもストレスを感じさせない作りになっている。

 ごつり、ごつり。
靴を鳴らしながら少女は家族を残してグランドピアノに近づくと、ネメシアメロウの鉢植えを
段差の上に置いた。鈍い足音がする原因は、少女が履いている靴だ。
不可思議な事に、少女が履いている靴は、室内履きと言うにはあまりに無骨な安全靴だった。
 「少し、ゲームをしましょう」
少女がゆっくりに向かって微笑むと、家族は少し困惑したような顔になった。
 「にんげんさん!まりさたちおなかがぺーこぺーこなんだよ?」
 「あそんでくれるのは、ごはんさんのあとにしてね!」
 「ゲームって言うほどのものじゃないわ。軽い食前の運動みたいなものよ」
少女は鉢植えの横に優雅に腰かけると、
 「ほら、ここにあなた達が欲しがってたお花さんがあるでしょう?
あなたたちはここの段差を越えて、お花さんを食べてくれたら良いの。簡単でしょう?」
そう言って鉢植えを指差した。
 「ゆっ!それならいいよ!かんたんだよ!!」
 「そう?それは良かった」
少女は鉢植えを手のひらで示すと、どうぞ、と言った。

 家族は一斉に鉢植えに群がって行った。あまあまな匂いのおいしそうなお花さんを
ゆっくりたべるよ!!そんな思いで懸命に走るが、少女と鉢植えに近づいていくにつれて、鉢植えは
視界から消えてしまう。その代わりに現れたのは、高い高い障害物。30cm弱の段差は人間には
一足だが、体高が30cmのゆっくりにとっては。ましてやピンポン玉サイズの赤ゆっくりにとっては
それは断崖絶壁にも等しいものなのだった。
 「ゆっ!ゆっ!おはなさん!まりさにたべられてね!!」
 「れいむもたべるよ!おはなさんはそこでゆっくりしていってね!!」
 「「たべられちぇね!おはなしゃんはゆっくちたべられちぇね!!」」
お花さんをむーしゃむーしゃできる。その思いだけでただただ盲目的に段差の前でジャンプし続ける
家族と、それを楽しげに眺める少女。二、三分の間それが続いた。
 「おねーさん!ここたかすぎるよ!!」
最初に根を上げたのは親まりさだった。自分では届かないということに最初に気付いたという点では
頭が良いのかもしれない。事実、残りの家族は無意味なジャンプを繰り返しており、
赤まりさは断崖を登ろうとしているのか、壁にかりかりと歯を立てている。
 「えー、これぐらい登れるでしょう?」
 「のぼれるにきまってるでしょ!でももうまりさはつかれたよ!いいからにんげんさんがとってね!!」
からかうように少女が言うと、まりさは反論する。花は食べたいが、出来ないと言う事を認めるのは
嫌らしい。
 「頑張れば取れる高さなんだから頑張ってよ。ほら、もうちょっとで届きそうじゃない?」
少女は親まりさの頭をくしゃりと撫でると、
 「ワックスが剥げると困るから、齧るのは止めてね」
そう言って、かりかりと壁を齧り続ける赤まりさにでこぴんを見舞った。かん高い鳴き声を上げて
ころころと転がっていくその時に、赤まりさの帽子が脱げた。
 「おぼいちいいぃぃ!!!まりしゃのおぼうししゃんぬげにゃいでねええぇぇぇ!!」
赤まりさは狂気のような勢いで帽子を追いかけ、食らいつく。ものすごい執着心だ。
 いきなり聞こえてきた赤まりさの声に我に返ったのか、それとも跳ぶことに飽きたか。親れいむも
少女に文句を言い始めた。赤れいむはでこぴんにも負けずに再び無駄な跳躍を繰り返し始める。
 「にんげんさん!かわいいおちびちゃんになんてことするの!?」
 「ゆっくりあやまってね!!あやまったらまりさたちにおはなさんむーしゃむーしゃさせてね!!」
やいのやいのと自分を糾弾してくる親ゆっくりを無視し、少女はお帽子との劇的な再開を喜ぶ
赤まりさに声をかけた。
 「おぼうししゃんすーりすーり!ゆっ!まりさのきれいですてきなおぼうししゃんなんだじぇ!!
よかったのじぇ!!」
 「まりさはそのお帽子がとっても大事なんだね」
 「おりぼんしゃんがまっちろでかっこいいおぼうししゃん!ゆっくりまりさにかぶられてね!」
赤まりさは全く聞いていない。
 「そんなに大事なら、私が脱げないようにしてあげるね」
無視された少女は髪に手をやると、シニヨンを留めている黒いヘアピンを一本抜き出した。
 「ゆんっ!これでまりさのおぼうしもとどおりなんだじぇ!」
そして満足そうに帽子の被り心地を確かめる赤まりさの脳天に、そのヘアピンを
帽子の上から突き刺した。

 「・・・・・・ぴぃ?」
いきなり頭部に現れた灼熱感。あまりに強い感覚を許容しきれないまりさは、きょとんとした顔で、
小首をかしげるように体を傾けた。
そしてきっちり三秒後。咆哮を上げる激烈な痛覚が爆発する。
 「あ・・・・・・い・・・ちゃい・・・・・・?まりちゃ・・・・・・いちゃいのじぇ・・・・・・?」
目からは勝手に砂糖水の涙がこぼれ、下からはしーしーが零れだす。
 「いちゃいいいぃぃぃぃぃぃいいいぃぃぃぃ!!!!いっちゃあああああぁぁぁぃいぃぃぃい!!!」
思い切り天を仰ぎ、絶叫。
体の中でヘアピンがよじれ、さらに体内を掻き回す。
 「ぴいぃぃぃー!!いちゃいぃいいーー!!だじゅげでぇ!!ばりじゃをだじゅげでえぇぇぇ!!」
 「「おちびちゃん!?」」
いきなり叫び出した我が子に血相を変えて走り寄る両親。だが、両親が赤まりさにたどり着くことは
無かった。少女が赤まりさを摘み上げ、段差の上に乗せてしまったからだ。
 「おちびちゃああぁぁぁぁぁん!!」
 「かえすんだぜ!おちびちゃんをかえすんだぜえええぇぇぇぇ!!」
必死の形相でジャンプを繰り返す親ゆっくりたち。その姿を見下ろす少女の笑みが深くなっていく。
 「大丈夫だよ。まりさはただ、驚いちゃっただけだから」
 「なにいってるのおおおぉぉぉ!!おちびちゃんいたがってるでしょおおおぉぉ!?」
 「かえしてね!おちびちゃんをかえしてねええぇぇぇぇぇ!!」
 「それはだめ。ほら、頑張って登ってくればおちびちゃんに会えるよ?」
 「あああぁぁぁぁぁぁ!!!ばっででねおちびぢゃん!!いますぐいぐがらねえぇぇぇぇ!!」
 「すぐにだずげであげるからねえぇぇぇぇ!!!」
親ゆっくりはたちは目の前の壁を睨みつけると、自分の体高と同じ高さの段差に身を押し付け、
にじり、飛び跳ね始めた。

 「あひいいぃぃぃぃ!!いちゃいいいぃぃぃぃ!!!」
少女と同じ高さに連れてこられた赤まりさ。少し跳ねれば甘い香りのする花を思う存分
むーしゃむーしゃできる位置にいるにも関わらず、まりさはそんなものには一顧だにしない。
 「とっちぇえええぇぇぇ!!いちゃいいいいぃぃ!!まりしゃのあたまがいちゃいよおおぉぉ!!!」
ひたすらに泣きわめき転がり回り、それによって生まれる痛みにまた涙を流している。
 「そんなに元気に動き回るんじゃ、一本じゃ足りなかったかなぁ?」
そんなまりさを熱っぽい目で見ていた少女が、呟くように言った。もう一度髪に手をやり、
ヘアピンを抜きだす。
 「ほら、もう一本プレゼントだよ」
横になって転がるまりさの即頭部から、垂直に差し込んだ。
 「あっぴいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
体を十文字に貫かれたまりさが魂を抜かれるような叫びを上げる。目を剥いて、舌を突き出して。
 「やめちぇ・・・・・・まりしゃにいちゃいいちゃいしにゃいでぇ・・・・・・」
過呼吸を起こしているように浅い呼吸を繰り返しながら、まりさはずりずりと這ってこの場から
逃げ出そうとする。しかし、少女がそんなことを許すはずもない。

 少女の編み込まれた髪が、少しずつ解けて行く。
少女の髪が解けるたびに、赤まりさの肌に黒い墓標が突き立てられて行った。
 「やべろおおおぉぉぉぉ!!!!」
 「おぢびじゃあああああぁぁぁぁぁぁん!!」
壁を超えることを諦めた親ゆっくりたちは体をのーびのーびさせ、
なんとかして攫われた赤ゆっくりの姿だけでも見ようとしていた。
 「ねぇれいむ、まりさ」
少女がそんな親ゆっくりに話しかける。
 「自分だけで登ろうとするから駄目なんじゃないかな?協力して、例えば片方が下で
踏み台になって、もう片方がその上に乗る。そんな風にすれば、登れるんじゃないかな?」
 「「!!!」」
目を剥いてその素晴らしい思い付きに感動する親ゆっくり。しかしそれも一瞬のことで、
即座にその思い付きを実行に移す。
 「まりさ!したになってね!!れいむがおちびちゃんをたすけにいくよ!!」
 「まりさがいきたいよ!!れいむがしたになってね!!!」
・・・・・・かと思いきや、どちらが下になるかで喧嘩を始めてしまった。
少女はその姿を見ながら、さらに赤まりさを貫き続ける。 

 「これだけ刺せばもう、どれだけ動き回っても帽子は脱げないよ」
ウェーブのかかった髪を肩に垂らした少女がいとけなく笑う。
何度となくやったように、髪からヘアピンを引き抜いた。
 「これが最後の一本。どこに刺してあげようか?」
もはやまともに動くこともできなくなったまりさの顔を正面から見ながら優しく聞いた。
 「あ・・・・・・ひ・・・・・・?」
段差の隅に追いつめられた赤まりさはもう、それに答えることもできない。
 「あああぁぁぁぁぁ!!!もうやぢゃあああぁぁぁぁぁ!!!おうちきゃえりゅううぅぅぅぅ!!!」
逃げたい。ただただその一心でまりさは少女に背を向け、力を振り絞って跳ねる。
着地するはずの地面は、どこにもなかった。

 「「・・・・・・ゆ?」」
二段重ねの饅頭が、自分たちの真横を落下していく何かをぽかんと見つめる。
助ける?どうやって?受け止めようか?この体勢から?無理かな?無理じゃないかな?
じゃあ舌を伸ばせば?そうだ舌を伸ばせば届くかもしれない舌を伸ばしておちびちゃんを助け

かつん。

 やわらかい饅頭のはずのまりさ。それなのに、響いたその音はとても硬く、高く響いた。
 「ゆっ!ゆぷっ。えっぷぇ・・・・・・」
落下の衝撃で、全身に埋まるヘアピンが体を抉った。皮のあちこちからヘアピンを覗かせた
まりさは、死に至る痙攣を始める。
 「「おちびぢゃああぁぁぁぁぁぁん!!」」
両親はもみくちゃになりながらこけつまろびつまりさに跳ね寄り、必死にぺーろぺーろする。
しかし献身的な看護も甲斐は無く、まりさの痙攣は止まらなかった。
ぺーろぺーろは確かに外傷にはある程度の効果がある。しかし今の場合、体内の異物を取り除く
こともせずにただ舐めればそれは、体外に露出したヘアピンを通してまりさの体内を滅茶苦茶に
掻き回しているだけのこと。
両親の必死の看護は、かえってまりさを苦しめる結果になっていた。

 「ひきっ・・・・・・もっちょ・・・・・・ゆっくりしちゃかっちゃぁ・・・・・・・・」
最後に一度、引き攣るように体を震わせると、赤まりさはその短いゆん生を終えた。
 
 「「あ゛あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!!!」」
喉が破けるような慟哭。
 「「どぼじでごんなごどずるのおおおぉぉぉぉぉーーーーーーー!!!!!」」
炎のような激情を宿した瞳で少女を糾弾する親ゆっくり。
叩きつけられる感情の熱量を冷然と受け流すと、少女は片手で解けた髪を掻きあげた。
柔らかな髪をしどけなく体の前に垂らした少女は、透徹した青色の笑みを浮かべて言った。
 「何故かって?何故かと言えばそれは、私があなた達を泣かせたり虐めたり殺したりして遊ぶのが、
とっても大好きだからだよ」
 「「なにいっでるのおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」」
 「あなたたちは、ネメシアメロウの香りに釣られて私に誘拐されたの。これから全員痛い思いをして
信じられないぐらい痛い思いをして、ボロ雑巾みたいになるまで痛い思いをした後私に殺されるんだよ」
 「「おうぢがえるうううぅぅぅぅぅぅ!!!!!??」」
 「一緒に楽しく遊ぼう?ゆっくりしていってね!」
 「「ゆっぐりじでいっでねえええぇぇぇぇぇ!!」」
こんな時でも挨拶をされたら挨拶を返さずにはいられないゆっくり。少女はその「ゆっくりしていってね!」に
満足げに笑うと、家族を置いてキャビネットに向かった。

 キャビネットの中には様々な音楽関連の物品に加えて一つ、一抱えほどもある大きな箱が入っていた。
少女がそれを開けると、その中身が露わになる。
 ホッチキス。ガムテープ。チャッカマン。割りばし。鉛筆。ビニール紐。下敷き。栓抜き。絵具。
雑多な・・・・・・統一性のない雑多な物の数々。ひたひたと這い寄るような悪意の波動を放つ
それらの中から、少女は全長30cmほどのナイフを掴み取った。
 「これにしようかな」
うっとりとナイフを眺める少女は、呟きと共に刃に指を滑らせた。 
 少女の指は落ちない。良く見ればナイフのように見えたそれは、実際には料理用の木べらだった。
ただし少しばかり加工が施してある。木べらを彫刻刀か何かで削り、片刃のナイフのようにしてあるのだ。
小学生の工作の方がマシといった風情の、玩具にしか見えないそれを二、三度確かめるように振ると、
少女は上機嫌に家族の元に戻って行った。

 「おちびちゃん!?ここからにげないといけないんだよ!?」
 「おはなしゃん!れいむおはなしゃんたべちゃいぃぃぃー!!!」
 「ゆぅーん!いまはそれどころじゃないんだよ!こわいこわいにんげんさんがきちゃうんだよ!!」
両親の叫び声も兄弟の死すらも、赤れいむの白痴のような集中力を乱すことは無かったらしい。
ひたすらにひたすらに壁の前でジャンプを繰り返していた赤れいむを、両親が説得しようとしている。
 「ただいま。最初に虐められたいのは誰かな?」
少女のその言葉に親ゆっくりたちはびくりと全身を震わせた。しかし一瞬で目くばせを済ませると、
まりさがれいむを庇うように前に進み、れいむは赤れいむを舌で絡め取った。
 「かぞくにはてだしさせないんだぜ!まりさのぷくーでこわがっていってね!!!」
 「おちびちゃんはこれであんっぜんっだよ!!にんげんさんはどこかにいってね!!!」
まりさが前でぷくーをし、れいむが後ろで赤ゆっくりを口の中に隠す。ゆっくりにできる最大の攻撃と防御。
少女はそれを見ると、まりさの前で膝立ちになった。
 「わぁ、怖い。ぷくーってするのを止めてよまりさ」
 「ぷくーーーーっ!!!」
 「止めてくれたらあまあまあげるよ?」
 「ぷくぷくーーーーっ!!!」
 「止めてくれないの?れいむと赤ちゃんが大事なんだねまりさ」
 「ぷくぷくぷくーーーーっ!!!」
 「じゃあ、この帽子とならどっちが大事なのかな?」
 「ぷくぷくぷくぷっ・・・・・・ぷしゅるるおぼうしいぃぃ!!!まりさのおぼうしいぃぃぃぃ!!!!」
帽子を取りあげられた途端、一瞬でぷくーを止めたまりさ。少女は間髪いれずにそれを、部屋の隅に放った。
 「おぼうしさん!まりさのおぼうしさんゆっくりまってねええぇぇぇぇぇ!!!」
まりさは脇目もふらずに帽子を追いかけて行き、少女の眼前には口をつぐんで膨れた親れいむが残された。
 「まりさ、行っちゃったね?」
 「・・・・・・・・・・・・・っ!!」
口を開ければ子供が危険に晒される。それを理解している親れいむは何一つ喋らない。
不甲斐ないまりさへの呪詛や少女への反論、百万語を呑み込みながら少女を睨みつけるだけ。
 「これからあなたの皮を斬っていきます」
れいむの前で正座した少女が、突然宣告した。
 「私が持っているこのナイフで、あなたの皮を斬っていきます。すごく痛いよ。でも口の中の赤ちゃんを
助けたいんなら、絶対に口を開けたらいけません。分かった?分かったらお返事してね」
 「・・・・・・・・・・・・」
親れいむは答えない。少女を睨み続けている。
 「偉い偉い。ちゃんと私の言うことが分かってるんだね」
少女は膝立ちになってれいむににじり寄ると、左手でれいむの頭を撫でる。
 「じゃあ、始めるね」
そのまま撫でていた髪を掴み、そして右手に持った木べらをれいむの唇の端に当て、引き切った。
 「~~~~~っ!!!!!」
 金属で無い、石器ですらない木製のナイフは、れいむの皮を斬ることは出来なかった。
表現にすれば削る、が一番近いだろうか。凹凸の激しいナイフの表面はれいむの皮を抉り、
抉れた部分が刃に巻き込まれ、巻き込まれた部分がさらに回りを巻き込んでいく。
結局少女の一太刀は、れいむの皮に醜い傷跡を付けるにとどまった。
 「っ!!!っ!!!!」
だがそれは、れいむにとって決して幸せな事では無いだろう。
切れ味の良い日本刀より、切れ味の鈍い鋸で切られた方が痛覚はより刺激されるに決まっている。
そして少女の持つ刃は、まさしく木製の鋸と言った風情なのだから。
 「このナイフはね、私が自分で作ったんだ」
少女はヴァイオリンの弦を操るように優雅に、木べらをれいむの肌に滑らせる。
二往復させた所で、れいむの餡子が露出した。
 「よく斬れるように、でも斬れないように。わざと木の棘が残るようにしたり、凸凹をつけたりね。
刃にぎざぎざを付ける時にちょっと手を怪我しちゃったもしたなぁ。それでも君たちに楽しんで
もらうために、頑張って作ったんだよ?」
露出した餡子に木べらの先端を突き込み、そこから傷を真横に切り広げていく。
れいむは涙を零しながら痛みに耐え続けている。
 「このままぐるり一周切り裂いてあげる。痛かったらいつでも声を上げていいんだよ?」
少女はれいむの髪を掴んで目を合わせると、穏やかに言った。
 「まりさのおぼうしさん!すーりすーり!!しんっぱいっしたんだよ!!よかったよー!」
そして部屋の片隅で、まりさが帽子を取り戻していた。

 切り裂く、突き刺さる、削る、押し潰す、破る、引き裂く、抉る。
一本の木べらはその悪夢のような性能を十全に発揮し、万華鏡のような痛みをれいむに与え続けた。
 「大丈夫だよ、ちゃんと皮だけを切ってるから。れいむが声を上げない限り、
私はあなたのおちびちゃんには何も出来ないからね?」
少女はれいむに労るように声をかけ、髪に絡ませた手指を酷薄に引き絞る。
 「気が紛れるように、他のゆっくりを虐めた時のお話をしてあげようか?ゆっくり聞いてね」
歌うように少女が言ったその瞬間。まりさが今自分の置かれている状況を思い出した。
きょろきょろと周りを見渡し、少女と少女に甚振られているれいむを発見する。
 「でいぶううぅぅぅぅぅ!!!いまだずげるがらねえぇぇぇぇぇ!!!」
半狂乱になりながら走り寄るまりさ。しかし少女は一顧だにしない。正確さと繊細さを併せ持った
手つきでれいむを開封しながら、鈴を転がすような声で凄惨な物語を語り始める。
 「そうだなぁ。じゃあこのナイフを初めて使った時のお話にしようかな?」
 「ばりざゆっくりじないでいそぐよ!?いとしのはにーをゆっくりしないでたすけるよ!!」
 「あなたたちと同じまりさとれいむのつがいだったんだけど、あの時は、れいむの方が植物型の
にんっしんっをしてたんだよね。私はにんっしんっしてるれいむの額から生えてる茎の、周りだけを
切り取ってあげたの。それから『動いたら赤ちゃん落ちちゃうよ』って言って、れいむの目の前で
つがいを虐めて虐めて虐めてあげたんだ。あの時のれいむも我慢強かったなぁ。
まりさの髪を毟っても、飾りを破いても、斬っても突いても踏みつけても叩いても叩いても叩いても
何をしても、れいむは動かなかったんだよ」
れいむと同じで、子供のことがよっぽど大事だったんだね。
そう言うと少女はれいむの髪から手を放し、少女の傍らにたどり着いたまりさの帽子を取りあげると、
先程とは反対の方向に放った。
 「ばりざのおぼうじいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
泣き声をあげて帽子を追うまりさには目もくれず、少女はれいむの開封を再開する。
 「結局れいむは、まりさが死ぬまでその場を動くことは無かったな。立派なお母さんだね。
私はれいむを放してあげることにしたよ」
口の横から始まった開封は半分が終わり、今はちょうど後頭部を切っている所だ。
れいむはそれでも口を開かない。
 「良かったねって言って頭を撫でてあげて、最後に御挨拶をしたんだ。もちろんれいむは元気に
御挨拶を返してくれたよ。ゆっくりだからね。でもね、元気に挨拶したせいで、あんなに頑張って
守った子供が落ちちゃったんだ」
声を落とし悲しそうに・・・・・・表情は穏やかな笑顔のままに、少女は続ける。
 「返せ戻せってうるさかったから、れいむのリボンを取って、れいむの餡子をリボンで包んでそこに
茎を挿してあげたの。ほら、木の苗とか買ったらそんな風じゃない?これで大丈夫だよって言って、
まだ何か言ってきたからナイフで喉を滅茶苦茶に突いてあんよを削ぎ落して、赤ちゃんの苗と一緒に
庭の隅に置いておいたの」
四分の三が終わった開封。少女は慎重に木べらを動かしながら、れいむを押さえつける。
 「三日ほどたったかな?見に行ってみたのね。そうしたら、残念。れいむも子供も死んじゃってたよ」
可哀そうだね。そう言って少女は口を閉じると、れいむの口に最後の一太刀を入れ、切り開いた。

 「上手に出来ました♪」
あはは、と笑うと少女は、持っていた木べらを無造作に放り投げた。そして熱の籠った視線を
れいむに向ける。少女に見つめられる眼前のれいむの姿は、悲惨の一語に尽きるだろう。
口裂け女のように頬まで裂けた口は、れいむの姿をとんでもなく醜悪に見せている。
その裂け目はぐるり後頭部にまで達し、言うなればれいむの皮はカプセルトイのカプセルのように、
二つに分かれてしまっているのだ。
 「最後まで頑張れたね。えらいえらい」
少女はれいむを視点を合わせ、その目を覗きこんだ。
 「良く頑張ったからご褒美上げるね。もう口を開けてもおちびちゃんには何もしないよ」
そう言って少女は、敵意が無いことを示すように両手を上げた。

 「っ!?」
二、三度体を動かそうとした後、れいむは絶望的な顔をした。
 「あぁ、なんだ。やっぱり皮を一周切っちゃったら口、開けられないんだ。ゆっくりって餡子が
本体だと思ってたけど、皮も無いと駄目なんだ。面白いね」
両手を上げたままの少女が手を下し、れいむの切り口を覗きこんだ。
 れいむは声を出そうと、上顎部より上を動かそうとしているのだろう。だが実際に動いたのは
下の部分、あんよや下膨れだけ。
 「声も出せない?ほら、喋っても良いんだよ?」
 「~~っ!!??」
かくんかくんと頷くように伸びをするれいむ。だが声を発することは一切なく、顎部より上は
下半身の動きに合わせぐらぐらと揺れるだけ。きょときょとと動く目が困惑に揺れている。
 「あ、あんまり激しく動かない方がいいよ。だって今動いたら多分、ぱっかり割れちゃうからね」
少女はそう言うとなだめるようにれいむの頭に手を置き・・・・・・揺すった。
 「ほら、こんなに脆い。抜けかけの乳歯を触ってるみたいだよ」
ゆらゆらと揺らされるたびに、れいむが目を剥く。人間で言うなら内臓をまとめて捩られ
引き延ばされるような、そんな感覚なのだろうか。
 「ぐちゅぐちゅ言ってる。中のおちびちゃんをうっかり噛んじゃったりしないようにほら、しっかり
踏ん張ってみなよ。皮が無いとそれも出来ないかなぁ?」
 「っ~~!!!!」

 「なにやっでるのおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」
そうやって少女がれいむと遊んでいると、ようやくにしてまりさが戻ってきた。
大事な大事なお帽子はツバがぴんと張り、位置もばっちり決まっている。
 「まりさのはにーにひどいことしないでね!!ゆっくりできないにんげんさんはせいっさいっだよ!!」
まりさは少女に何を言う暇も与えず、いきなり体ごとぶつかっていった。
 「ゆんっ!」
ぽむん、と少女の腰にぶつかるまりさ。
 「いたいでしょ!?まりさのたいあたりはすごいんだよ!!
どんなゆっくりもいちっげきっでごめんなさいするんだよ!」
 「全然痛くないよ」
得意顔で体当たりを続けるまりさの髪をつかみ、少女が立ち上がった。
 「ごめんなさいなんかしてあげないよ、まりさ。人間はそんなことじゃ、倒せないんだよ」
立ち上がった少女はそのまま、持ち上げたまりさを放り投げた。
 「おぞらをとんでるみだゆぎぃっ!?」
テンプレートな台詞の途中で頬から着地したまりさは、したたかに打ち付けた頬の痛みに涙を流す。
 「人間はね、あなたたちゆっくりよりとっても強いの。だから、そのままじゃ勝てないんだ」
 「ぞんなごどないよ!?ばりざはどっでもづよいんだよ!!いまのはまぐれで」
ごん!
 「ぴぃ!?」
少女が安全靴を履いた足を、強く床に打ち付けた。
 「まぐれだと思うなら、かかってくると良いよまりさ。硬そうな音がしたよね?痛そうな音がしたよね?
この音がまぐれだと思うなら、遠慮なくかかってくるといいよまりさ」
反撃するけどね。少女はそう言うと手を後ろで組み、体を揺らしながら楽しそうに笑った。

 ちょろろろろ・・・・・・・・・
かたかたと震えながらしーしーを漏し始めたまりさに向かって少女はさらに言葉を重ねる。
 「あ、でも勘違いしないでね、まりさ。そのままじゃ勝てないとは言ったけど、でもそれは、
ゆっくりが人間に絶対に勝てないってことじゃないんだよ?」
 「・・・・・・ゆ?」
 「人間も非力だからね。私はれいむの皮を切るために、道具を使わないといけなかったの。
まりさもちゃんとした道具があれば、私に勝てるかもね」
そういえばあのナイフ、どこにやったかな?今気付いたかのように言うと、少女はきょときょとと
周りを見回し始めた。
 恐怖に体を痺れさせているまりさは、逃亡のタイミングをひたすらに計っていた。だが、ふと
自分のすぐ横に、棒のような何かがあることに気付いた。
これは、ひょっとすると・・・・・・?
 「ゆゆっ!?これはもしかして、にんげんさんのつかってたないふさんなんだぜ!?」
まりさはその棒に全力で飛び付いた。
 「あ!それは!!」
血相を変えて叫ぶ少女。その姿を見たまりさは、この棒こそがないふさんで、人間を打倒しうる
凶器なのだと確信する。
 「このないふさんはまりさのものにするんだぜ!これさえあれば、にんげんさんもいちっころっなんだぜ!!」
さっきまでしーしーを漏らして震えていたとは思えない自信満々な表情を浮かべるまりさは、
木べらを口に咥えながらゆっへっへ、とふてぶてしく笑った。
 「そんな危ないものは仕舞いましょう?それをこっちに渡して?」
 「だまるんだぜ!!!」
少女が伸ばしてきた手を拒絶するように強く木べらを薙ぐと、まりさは少女に突進していった。
 「おちびちゃんをずっとゆっくりさせてはにーにもひどいことをしたにんげんさんは、ぜったいに
ゆるさないんだぜ!!まりさのないふさんのさびになるんだぜええぇぇぇぇぇ!!!!」
体を低くひしゃげさせ力を貯める。伸びあがる力をゆんっと推進力に変えて、
まりさは乾坤一擲の一撃を繰り出した。
 「口に物を咥えて喋るなんて、器用なんだねー」
そんなまりさの渾身の一突きを、少女は危なげもなく横に動いて躱した。
 「・・・・・・ゆ?」
驚いたのはまりさだ。ひっさつっの一撃を喰らっていちっげきっでやられてしまうはずの少女が、
いきなり見えなくなってしまったのだから。
まりさのいちっげきっがすごすぎて、跡形も残らずに吹き飛んでしまったのだろうか・・・・・・?
きょろきょろと周りを見渡しながらお花畑な結論を導き出しそうになった時、真後ろから声をかけられた。
 「こっちだよまりさ。まりさの攻撃、とっても遅くて避けやすかったよ」
 「ゆゆっ!!??」
慌てて振り向くとそこには、まりさのいちっげきっでそくししたはずの人間さんが、
変わらぬ姿で立っているのだった。
 「ばりざのざいっぎょうっのこうげきどぼじでよげられでるのおおおおぉぉぉぉぉ!!??」
 「まりさ。強い武器を持ってても、それを使いこなさなきゃダメだよ。
ただ振りまわすだけじゃ、人間は倒せないよ」
 「うるざいうるざあああぁぁぁぁぁぁい!!ばりざのこうげきはひっさつっなんだああぁぁぁぁぁ!!!!」
 「まりさの悪い所をアドバイスしてあげるからさ、だからほら、元気を出してもう一回かかっておいで?
れいむとおちびちゃんのために、頑張って私を倒しちゃおうよ」
 「いまのはまぐれだあああぁぁぁぁぁ!!!ゆっぐりじねええぇぇぇぇぇ!!!」
少女の言葉を聞いているのかいないのか。まりさはぎりりと木べらを噛みしめると、
目を見開きものすごい形相で、再び少女に飛びかかる。

 「ほら、飛びかかる前にタメを作ったらタイミングがばれちゃうでしょ?」
軽く一歩下がる。
 「ちゃんと相手を見ないと駄目だよ。飛ぶ瞬間に目をつぶっちゃってるじゃない」
足を交差させ、半身になる。
 「武器は真っすぐ咥えないとだめだよ。そうそう、目は開けたままでね」
片足を上げ、手を後ろに組んだままピルエット。
そうやって少女は、踊るようにまりさの攻撃を避け続けた。
 「ゆひー・・・ひぃ、ぴぃぃ・・・・・・」
数分後。そこには変わらず無傷の少女と、疲労困憊で全身を上下させるまりさがいた。
 「んー、ちょっとは良くなってきたけど、まだまだかな」
 「どぼじで・・・どぼじであだらないのぉ・・・・・・」
積み重なった疲労に押しつぶされるように平べったくなったまりさが、
少女を恨みのこもった視線で見上げ、睨みつける。
 「なんでかって言われたらそれは、まりさが弱くてナイフの使い方が下手くそでお馬鹿さんで
存在そのものがちっぽけだからじゃない?」
 「うっがああぁぁぁぁぁぁ!!!ばりざはよわぐないいいいぃぃぃぃぃ!!!!」
少女の言葉に激昂したまりさ。体を饅頭型に戻すと木べらをぎちりと噛み締め直し、
猛烈な勢いで少女に吶喊していった。
 「んー、じゃあそろそろ、最後のレッスンにしようか」
最初より僅かにに切れ味の増したまりさの攻撃を満足げに眺めると、
少女は右の爪先でごつんと一つ床を叩いた。
 「武器は真っすぐ咥える。相手を見る。タイミングを読む。良い感じだよまりさ」
嬉しそうに言うと少女は、まりさの攻撃に向かって真っすぐに立ち、ぐんと一歩踏み出す。
 「あだれええええぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 「でも私だったら、そもそも口に棒を咥えたまま何かに突進するなんて馬鹿なことはしないかな♪」
そして右足を大きく振ると、安全靴の質量と硬度を、ハンマーのようにまりさに叩きつけた。
 「だって噛む力が足りないと、逆に自分に刺さっちゃうでしょ?」
あはは、と、少女は楽しそうに笑った。

 銃を思い浮かべてほしい。弾丸が発射されるプロセスを思い浮かべてほしい。
と言っても、専門的な知識が欲しいのではない。極々単純な、初歩のもので十分。すなわち、
撃鉄が雷芯を叩く。
着火された火薬は爆発的な圧力で弾丸を押す。
そして押された弾丸は、銃身の導きに従って飛ぶ。たったこれだけだ。
 少女のハンマーのような蹴りは、火薬とのハンマー(撃鉄)の役割を同時に果たした。
爆発的な圧力を受けた弾丸・・・・・・木べらは、まりさの口を銃身として、一直線に吹き飛ぶ。
弾丸は強度の足りない銃身を破壊しながら、まりさの喉に思い切り突き刺さった。
 「おぼええぇぇっぇええっふぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
大口を開けて叫ぶまりさ。前歯が上下共にごっそりとヘシ折れていた。
 「あびいいぃぃぃいいひいいっひいいいぃぃぃぃ!!!」
錯乱してその場でぐるぐると回りだすと、貫通した木べらの柄が尻尾のように踊った。
 「ふいでええぇぇぇぇぇぇぇ!!ごれぬいでええええっぇぇぇぇぇっぇ!!!!」
叫び声を上げ続ける口内に見えるへらの部分。まるで、舌が二枚に増えたようだった。
 銃身を口に咥えて引き金を引いたに等しい今のまりさ。
端的に言えばそれは自殺行為で、しかしゆっくりはそんなことでは死なない。
その代わりにまりさは、涙も出ないほどの痛みを味わう羽目になるのだった。

 「おっげええぇぇぇぇぇ!!!!うげぇぇぇぇ!!いぢゃい!!ぬいでで!!ででいっでね!!!
ばりざのおぐちがらででいっでねえぇぇぇぇぇ!!!」
自分の尾を見ようとするかのように回り、飛び跳ね、えづき、体を揺らし、また飛び跳ね。
まりさは刺さった木べらを抜くためにあらゆる動きを試した。が、それらは全て無駄骨に終わった。
 「無理だよまりさ。まりさ一人じゃそれは抜けないよ」
少女はしばらくまりさの一人上手を鑑賞していたが、まりさの動きが鈍った所でひょい、と
持ち上げると、れいむの方を向けて置き直した。
 「ゆっくりには人間みたいに手も足も無いんだから、助け合わないとね」
 「でいぶううううぅぅぅぅぅぅ!!!!!」
この痛みから逃れたい。何でも良いから助かりたい!!ただその一心でまりさは走った。
 「でいぶううぅぅぅぅ!ごれぬいでええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
れいむの元にたどり着いたまりさはれいむに体当たりのようなすーりすーりをする。
 「!!」
しかしやられた方のれいむにはたまったものではない。今のれいむは少しの刺激でも餡子に
響き、吐き気がするほどの痛みが走るのだから。
 「ねぇでいぶうぅぅぅ!!ごれぬいでよおおぉぉぉ!!!どぼじでうごいでぐれないのおおぉ!!
かわいいかわいいでいぶのばりざがいだがっでるんだよおおおおぉぉぉぉぉ!?」
れいむの事情を知らないまりさはれいむにすーりすーりし続ける。力を込めたすーりすーりは、
見る者にはれいむを転がそうと体当たりしているのと、ほとんど区別がつかない。
 「ゆびえぇぇん!!おへんじじでえぇぇ!!どぼじでばりざをだずげでぐれないのおおぉぉ!!」
 「~ぃ!!」
押されるれいむが、ズレ始めた。
 「ごんなにばりざぐるじんでるんだよおおおぉぉぉ!?でいぶとおちびぢゃんをだずげるだべに
がんばっだめいよのふしょうなんだよおおおおぉぉぉぉぉ!!??」
 みり、みり、みり、みり。
 「げずなのおおぉぉぉ!?でいぶはげすだったのおおおぉぉ!?なにがいええぇぇぇぇ!!」
ぶち切れたまりさがれいむにまごうこと無き体当たりを喰らわせた瞬間。
ぱかり、と、れいむがまっ二つに割れた。
 「!!!!!!!!!!!!!!!!」
分かれて落ちたれいむの上半分。うにうにと蠢きながら何か探すように動き回るがもう、
自力で向きを変える力もない。びくびくと震えながら、逆さまになった目から涙を排泄し続けるばかり。
 「・・・・・・・・・・・・でいぶ?」
これはまりさ。軽く。そう本当に軽く、親愛の挨拶ぐらいの強さですーりすーりしただけなのに?
どうして?これれいむはどうなっちゃってるの?え?死んじゃうの?れいむ死んじゃうのなんで
どぼじでいとしのはにーいたいこれぬいてくれないのまりさはなにもしてない
 「ゆみゅぅん・・・・・・。ゆ?れいみゅもうおそとにでちぇもいいにょ?」
錯乱し始めたまりさに、ずっと親れいむの口の中にいた・・・・・・今は親れいむの下半分をベッドにした
赤れいむの、暢気な寝起きの声が届いた。どうやら眠ってしまっていたらしい。

 体に刺さりっぱなしのないふさん、真っ二つに割れたれいむ。れいむの上に乗ったおちびちゃん。
状況は二次曲線のようにカオスの度合いを増大させていく。まりさの小さな処理回路が
破裂しそうになった瞬間、まりさの後ろに回った少女が、まりさの後頭部から尻尾のように
生えている木べらの柄を掴んだ。
 「おはよう、れいむ。ゆっくりしていってね」
 「ゆぅ~ん、ゆっくりしちぇいっちぇね!!」
 「ひぎぃっぐりじでいっでね!!」
 「起きてすぐこんなことを言って悪いとは思うんだけど、大切なことだからゆっくり聞いてね?」
掴んだ柄を掻き回すように動かしながら赤れいむに向かって少女は言う。
 「あなたのお父さん、まりさは狂った・・・・・・ゆっくりできないゆっくりになっちゃったの。
まりさはあなたのお母さんを殺して、今度はあなたを食べようとしてるんだ」
 「だにいっでるの、ばりざはおげえぇぇうえげえぇえへええぇぇぇぇ」
 「ほら見て、どう見てもまともじゃないでしょう?早く逃げないとれいむ、食べられちゃうよ?」
そう言うと少女は、木べらの柄を掴んだまま木べらの開けた穴を押し広げ、
めりめりと拳をまりさの体内に侵入させた。
 「ぎゃおー、たーべちゃうぞー・・・・・・ってね」
押し出されるようにまりさの口から飛び出した木べらは、見ようによっては舌のようにも見えて。
 「ゆっぴいいぃぃぃぃぃぃ!!!おとうしゃんがれいみゅをたべようちょしゅるううぅぅぅぅぅ!!!!
たしゅけちぇおきゃあしゃああああああぁぁぁぁぁん!!!!」
 「お母さんはもう死んじゃってるよ。ほら、下を見てごらん?れいむは今、まりさに真っ二つに
されちゃったお母さんの上に乗ってるんだから」
 「ゆわああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
認識した途端地面から立ち上る、濃密な死臭。れいむは、少女の言葉が真実だと認識する。
 「泣いてる時間はないよ。早く逃げないと、本当にお父さんに食べられちゃうよ」
 「れいみゅおうちきゃえりゅうううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!」
弾かれたように跳ね始める赤れいむ。それを満足げに見下ろすと、
 「狂っちゃったまりさ。おちびちゃんを殺したくなかったら、お口はちゃーんと、閉じておこうね?
ひょっとしたら、まりさの噛む力の方が、私の腕の力より強いかもしれないし、ね」
そう言って、手首をまりさの体内で一回転させた。

 「ゆぴいいぃぃぃぃ!!こっちこにゃいでええぇぇぇぇ!!」
ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。
 「どぼじちぇきょんなこちょしゅりゅにょおおおおぉぉぉ!?」
ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。
 「ゆるちてええぇぇぇぇ!!!れいみゅいいこににゃるきゃらああぁぁぁぁ!!!」
ぺたん、ぺたん、ぺきぱきん、かつん。
 赤ゆっくりがあちらこちらに逃げるたびに、追いかける舌・・・・・・木べらでまりさの歯が折れる。
少女は赤ゆっくりが逃げられる程度の早さで、しかし決して余裕は与えない。そんな意地の悪い
速度を維持しながら、赤ゆっくりの周りの床を叩き続けた。

 「ゆぴいいいぃぃぃぃ・・・・・・ちゅかれちゃよおおおぉぉぉ・・・・・・」
 「おひぃひひゃんは・・・・・・はりはは・・・・・・・・・・・・」
そうしてしばらくの時間が過ぎ、限界が訪れた。
赤ゆっくりはその柔らかい皮と少ない餡子を限界まで酷使した所為でもう、何をされるまでもなく
倒れそうで。
白目を剥いた親まりさは歯の半分以上を抉られている上に、体には少女の腕が二本は入って
しまいそうな大穴が開いて、こちらももう長くは無いと一目で分かるようで。
 「そろそろかな」
糖蜜のような背徳遊戯の終わりを締めくくるように、少女はまりさの体から木べらを引き抜くと
腕を大上段に上げ、赤れいむに向けて一気に振り下ろした。
 「どしゅうううううううううううううううううぅぅぅぅぅぅぅぅ」
がちん。
赤ゆっくりが潰れる音はとてもちっぽけで儚く、少女の耳にそんなものは届かない。
 「・・・・・・ドス?」
その耳に届くのは、興味深い赤れいむの末期の台詞だけ。
 「ねぇまりさ。もしかして、あなた達が住んでいた山にはドスがいたの?」
少女は木べらを再び無造作に放り出すと、親まりさに詰め寄った。
 「ね、ね、教えてよまりさ。あなた達はドスを知ってるの?ドスの群れにいたの?答えて?」
ぽんぽん、と頭を叩くと、穴があいて浮き輪のようになっていたまりさは、凹の形にべっこりとへこんだ。
 「あ・・・・・・やりすぎちゃったかな。まりさ、生きてる?」
揺らしてみたり突いてみたり、少女は少しの間まりさが痛がるような事を色々と試したが、
まりさはついにぴくりとも動かず、一声すらも上げなかった。
 「ちぇ、死んじゃってるか」
詰まらなさそうに言うと少女は立ち上がる。上機嫌に部屋の真ん中に歩くと爪先立ちになり、
両手を広げてくるくると回り始めた。
 
 「ドスまりさかぁ。私より大きくて、重くて、強いんだろうなぁ」
くるくると、くるくると、
 「人間より強い本物のゆっくりの『武器』。武器を持ったゆっくりは、どんな風になるんだろうなぁ」
くるくると、くるくると、
 「私がこうやって手を広げて回るよりきっとまだ大きいんだよ。ドスの頭を切り開いて、
その上で踊ってみたいなぁ」
くるくると、くるくると。
 「今年の夏休みは楽しくなりそう」
くるくると回りながらくすくすと少女は笑い、とりあえず練習として、次のゆっくりを虐める時には
本物のナイフを使おうことにしようと考えるのだった。















END















あとがき
 ゆっくりを虐めるだけSS第二弾でございます。
今回は虐待派の人間による純粋な虐待です。実はこれまでに虐待をホビーとして楽しむ人間
と言う物を書いたことが無かったため、今作は結構な難産になりました。いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
 次のSSの予定はまだ未定です。何が出るのか自分でも分かりません。一番文章量的に
進んでいるのは希少種が出る物語なんですけど・・・・・・予定は未定。
投稿頻度は相変わらず低いと思いますが、次のSSでお会いできたら嬉しいです。

それではここまで読んでくださったあなたに感謝をささげつつ、今日はさようなら。

by ゆンテリアあき
最終更新:2010年10月10日 15:26
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