『大人のゆ学』 11KB
いじめ 小ネタ 透明な箱 思いつきの小ネタです。
本屋で一冊の本を買ってきた。
これは実際のところ、本というより付録メインのものだ。
月に大体2度くらいのペースで発行されている科学雑誌、「大人のゆ学」という本である。
早速家に帰って中をあけてみる。
中にはCDケースが少し厚くなった様な物と、真空パックの中で眠っている小降りの赤ゆっくり。
それから幾つかの付属品が入っていた。
今回のテーマは、「ゆっくりの可能性」だそうだ。
まずはCDケースの様な物を開ける。
空け方はCDケースと大して変わらない。
違う点を上げるとすれば、本来ならCDを収納出来るようになっている、中身のトレイが無い事だろう。
透明なこのケースの中に、真空パックから取り出した一匹の赤れいむを中に入れる。
真空パックは全部で4個付属されていて、赤れいむと赤まりさが2匹ずつ用意されいる。
まずは試しに一匹、赤れいむが目を覚ます前にケースを閉じて、付属さてている固定用の器具で、ケースを密封する。
ケースを立たせる様に専用ラックに固定して観察開始だ。
しばらくすると、赤れいむが目を覚ます。
「れーみゅがゆっくちおきりゅよ!………にゃんにゃのここはぁぁぁぁ?!せみゃいよぉぉぉ!!」
赤れいむは小ぶりなものの、ケースの壁に若干圧迫される形で収まっているため、
それが居心地が悪いのか、不機嫌そうな顔をしている。
それでも動けない程ではないらしく、体を伸ばしながらケースの中を移動しはじめた。
「ゆゆ?!にんげんしゃん!!どーしちぇにんげんしゃんが、れーみゅのおうちにいりゅの?おとーしゃんとおかーしゃんはどこ?」
どうやられいむは私の存在に気がついたらしく、私に向かって話しかけてくる。
私はこのれいむと会話をする気はないので、そのまま様子を見守る。
「にゃんでだまっちぇるの?れーみゅのいっちぇることがわきゃらないの?ばきゃなの?」
何も答えない私に腹を立てたのか、れいむは不機嫌そうな顔で私を見る。
私は次にれいむがするであろう行動を想像して、笑いそうになるのを堪える。
れいむはそんな私に気がついたのか、さらに不機嫌になる。
「にゃにがおかしーの?!れーみゅおきょるよ!れーみゅがおこるちょ、きょわいんだよ!!」
舌足らずながらも、強い口調で私を睨むれいむ。
だが、相変わらずの私を見て、ついにれいむが怒り出す。
「もうおこちゃよ!ぷきゅーしゅるよ!」
そう言うと、れいむは大きく息を吸い込んで膨れ上がろうとする。
しかしこの狭い空間でそんな事をすればどうなるのか。
れいむはそこまで考えていなかったらしい。
「ぷきゅぅぅぅ………びゅびぃぃ!くるちぃよぉぉぉぉ!!」
膨らみかけたところで、突然の圧迫感に涙を流すれいむ。
どうして苦しいのか理解出来ずに、以前膨れ上がったままだ。
膨れ上がった頬が透明な壁に押し当てられた状態の間抜けな顔で、こちらを見ながら叫び続けるれいむ。
この状態で喋れると言うのも不思議なのだがそれよりも、どうやら膨れたときに口とあにゃるが壁に押し当てられ、吸い込んだ空気が抜けないらしい。
そんな間抜けな姿に、私は思わず噴出した。
れいむは大笑いする私を、悔しそうに眉を歪めて見ている。
本を開けて数分しか経っていないにも拘らず、ゆっくりの不思議を体験してしまった。
れいむが「くるちぃぃぃぃ!おにゃかがすいちゃぁぁぁ!!」と騒ぐので、私は付属品の中からスポイトを取り出した。
さらに付属品の固形の錠剤を、空のペットボトル500mlの中に入れて水を入れる。
これは濃縮タイプの栄養剤だそうで、錠剤は全部で10個ほど入っていた。
これを水で溶かしてスポイトで吸い上げ、ケースの上部に空いている穴から流し込み、餌として与えるようだ。
無くなったら、オレンジジュースと蜂蜜を混ぜたもので代用出来ると本に書いてあるが、
付属のゆっくりがそこまで持つかどうかは解らない。
栄養剤をケースの中に流し込むと、れいむの皮がそれを吸収していく。
幸せそうにピコピコ動かすれいむ、少しばかり表情も嬉しそうにしている。
「ゆわわ?!きょれ、あまあましゃんだよぉぉぉぉ!!」
れいむがそう叫ぶと、膨らんでいたれいむの体が萎んで元の大きさに戻る。
おそらく、栄養剤で滑りやすくなり、空気が抜けたのだろう。
幸せそうに透明な壁を舐めるれいむ。
だがその幸せも一時のもの。
すぐに自分の置かれた環境に不満の声をあげるのだった。
それから数日後。
赤れいむは大分大きくなっていた。
ケースの1/3ほどに成長したれいむ。
大きさから、子ゆっくりになりかけといった所だろうが、このケースには奥行きが無いため、実際の大きさは解らない。
このれいむは、ケースの形に合わせて、横に広がるようにして成長しているだけなのだから。
すでにこの大きさでは、ケースの中で動き回る事が出来ないれいむは、常に不機嫌そうにしている。
最初の内は不満を漏らしたり、私に罵声を浴びせたりもしていたが、
私が一切取り合わない事が解ったのか、最近ではただ私の方を睨むように見つめるだけだ。
普通ならストレスで死んでしまってもおかしくない状態なのだが、栄養剤の甘味のおかげでそれもない。
元気に動かしていたぴこぴこも、今では殆ど動かせずにいる。
それにも拘らず、なぜか目と眉だけは動かせるようで、それで感情の変化がわかる。
口もへの字に曲がった状態で閉じてはいるが、声を出すのには問題ないようだ。
一日二回の栄養剤の与えるたびに、「しあわせー!」と元気良く叫ぶ。
だがその幸せも一瞬で、すぐに狭い空間に押し込められている事に気がつき、眉を歪める。
それから更に一週間ほどったった。
れいむはケースいっぱいに育った。
顔はケースの壁に押しつぶされたような格好になり、不細工極まりない。
ピコピコもりぼんも体にめり込んでいて、これがゆっくりだと言われなければ解らないほどの変わり果てた生き物になっていた。
一時期大人しくなったれいむだったが、最近では私の顔を見るたびに「くそじじい」だの「ゆっくりさせろー!」だのと騒ぐようになった。
私に対する不満も爆発寸前なのだろう。
私はそろそろこのケースから、れいむを出してやろうと思っている。
もっとも、このケース内で飼うのもそろそろ限界。
本にも、このケースでこれ以上の成長は望めないと書いてある。
私はケースかられいむを取り出してみる事にした。
れいむは外に出られるのが解ったのか、目を輝かせて早く出せとせがむ。
そしてれいむは、ようやくケースの外に出る事になった。
「ゆわーい!おしょとだよ!………ゆ?」
そこには柔らかくて四角い、変な物があった。
ケースから出られたとはいえ、れいむの形がゆっくり本来の饅頭体系になる事も無く、
れいむは分厚いマウスパットの様な姿のままそこにあった。
せっかくだからと私は思い、れいむのあんよをテーブルにつける形で立たせてみる。
「ゆ?………ゆっくちあるくよ!」
まだ赤ゆ言葉の抜け切らない口調でそう言うと、れいむは起用に歩き出す。
だが…
「ゆぶっ!………いだいぃぃぃぃぃ!!まっくらだよぉぉぉぉ!どうなっちぇるのぉぉぉぉ?!」
立たせたCDケースが風に吹かれて倒れるがごとく、数ミリ動いた所でれいむは顔面からテーブルに倒れた。
本来のれいむ種なら、この状態でピコピコを激しく動かしているのだろうが、体にめり込んだピコピコは動かない。
私はそんなれいむの顔を、天井に向ける形でひっくり返した。
「ゆぴぃ!………しゃすがだねぇ、じじいはれーみゅがかわいいからたすたんだねぇ!
わかっちゃよ!じじいをれーみゅのどれいにしちぇあげるよ!」
私が助けたと勘違いしたれいむは、勝手に奴隷宣言をして勝ち誇ったように笑う。
虐待派の人間なら、今の一言で間違いなくこのれいむを殴っていただろう。
そんな事を考えていると、れいむが必死に何かをしようと動いている。
もっとも、動いているといっても、うねうねと蠢くだけで何も出来ていない。
「ゆ?………ゆゆ?……ゆぅ…?………………ゆっがぁぁぁぁぁ?!どぼしておきあがれにゃいのぉぉぉぉぉ?!」
どうやられいむは、起き上がろうとしていららしい。
だが、その体系では無理な話、れいむは力の限り喚き散らしていた。
―このようにゆっくりは、実ゆっくりや赤ゆっくりの頃から狭い場所で飼育すると、
ケースに沿った形で成長していきます。
四角い箱に入れれば箱と形に、円錐、円柱のケースで育てれば同じ形になります。
変わった形の喋るお洒落なインテリア、お部屋のスペースに合わせたゴミ箱やコンポスト、
変形ゆっくりの可能性は無限に広がります。―
「ゆんやー!せみゃいのじぇー!くるちいのじぇー!」
ケースの中で赤まりさが叫ぶ。
この赤まりさは昨日ケースに入れたばかりのもので、最後の4匹目になる。
一番初めのれいむは、口をガマ口状に改造してを友人に渡した。
密閉された空間で育ったれいむは、いつの間にかしーしー穴とあにゃるが塞がっていた。
それに気がついた私は携帯用の灰皿に使えないかと思い、れいむを改造した。
友人はゆ虐愛好家で、この灰皿を大変気に入った。
今では灰や吸殻以外にも、ちょっとしたゴミを餌として与えられている。
餌を大量に与えられているせいか、少し太り気味になっているようだが、未だに体は平らなままだ。
ただ、リボンやピコピコは本来の形に戻ったようで、餌を与えられたれいむは、泣きながら元気にピコピコを動かす。
二番目に育てたまりさは、私の家で元気に暮らしている。
まりさもれいむと同じ様にケースから取り出した直後は、自慢の帽子は得体の知れない黒い塊になっていた。
おさげも体にめり込んで動かせなくなっていて、顔はれいむ以上に潰れた不細工なものになっていた。
このまりさも、ケースから出してもまともに歩くや、飛び跳ねる事が出来ず、絶望に打ちひしがれていた。
そこで私はまりさにある仕事を与える事にした。
「ゆびぃぃ!いだいぃぃぃぃぃ!!お、おがえりなざいぃぃぃぃ!」
「ゆぎゃっ!い、いらっじゃいまぜぇぇぇぇ!!」
私の家に訪れたものは、こんな声を聞く事になるだろう。
このまりさ型玄関マットは、踏まれると元気良く挨拶をして客や私を和ませている。
灰皿れいむと同じように、帽子やお下げは元の形に戻ったが、体は平たいままである。
歯は、うっかり踏んで足に刺さったら危ないと思い、私が全部抜いておいた。
強く踏まれたりして弱った時に、多めに栄養剤を与えているせいか、大分大きく伸びたまりさ。
踏まれているせいなのかも知れないが、その体系のせいで歩く事も這いずる事も出来ないでいる。
一番私が驚いたことは、このまりさは目玉を踏んでも潰れたりしないのだ。
もっとも、潰れるほどの厚みが無いだけかもしれないが。
3番目の平面れいむは、円筒状に加工した。
底にもゆっくりの皮を使い丁寧に塞いでおいた。
その状態で円筒の内部の皮を底部に近い方だけ剥いで、最後に円筒れいむの中1/2程に餌用子ゆっくりの餡をいれた。
餌用子ゆは中枢餡を取り除いてから使ったので、発狂の心配も無い。
こうして完成したゴミ箱型コンポストれいむは、今日も元気に生ゴミを餡に変えている。
念のため底部も焼いてはいるが、動かせるのは両目とピコピコのみだ。
剥き出しになった餡にゴミを放り込まれるのはかなり痛いのか、その度に泣きながら大声を上げている。
「ゆぎぃぃぃぃ!!いだいぃぃぃぃ!!もうやだぁぁぁぁぁ!!ゆっくちさせてよぉぉぉぉ!!」
私はその言葉に従い、蜂蜜入りのオレンジジュースを少量与えると、れいむはしばらくの間だけ幸せを堪能する。
この処置のおかげか、れいむは病気やストレスで死ぬことも無く、円筒状のまま少しずつ成長している。
このれいむは仮初の幸せしか知らず、ゴミ箱コンポストとして一生を終えるだろう。
「ゆゆ?!………きょれはあみゃあみゃ?!ゆわーい!ゆっくちできるのじぇー!」
4代目の赤まりさが幸せそうに叫ぶ。
このまりさは、ケースから出したら壁に掛けて、ダーツの的に使う予定だ。
これは友人に教えてもらった事で、結構楽しめるものだ。
目に刺さると当然失明するようではあるが、話によれば、
中枢餡と思われる付近にダーツの矢を10本以上刺したが、適切に治療すれば死ななかったらしい。
調子に乗って爪楊枝を40本以上刺したら絶命したそうだが、
刺さったダーツの矢を抜いてすぐに治療すれば死ぬことは無いそうだ。
私も友人の家で、的になったれいむで遊んだが、中枢餡にヒットすると叫び声が変わるのが面白かった。
通常の場所では、
「ゆぎゃん!いだいぃぃぃぃ!!ぷすぷすはいやぁぁぁぁ!!」
といった感じだったのだが、
中枢餡に当たると、
「ゆぎびぃぃ!!びびびびびびびび…ぎぎぎぎぎぎ…がががが…」
と何を言っているのか解らないのが特徴だ。
中枢餡も押し潰れた形になったせいか、簡単に破壊出来なくなったようだ。
友人のれいむは、もう両目が見えなくなってはいたが、「ダーツするぞ!!」と言った瞬間の怯えっぷりや、
いつ刺さるとも知れない矢の恐怖に震える姿は堪らないものがある。
このまりさもそんな姿で私を楽しませてくれるかと思うと、今からワクワクしてくる。
ちなみにこの科学雑誌、「大人のゆ学」はゆっくりの生態やその不思議饅頭っぷりを毎号堪能出来る内容になってはいるが、
ほぼ毎号、ゆっくりを生き物として扱っていないような内容の実験ばかりをする鬼畜振りから、「大人のゆ虐」の裏の名前で親しまれている。
完
温めで書いたつもりですが………
どうしてこうなったのやら?
徒然あき
最終更新:2010年10月12日 15:59