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少女と奴隷とグリル鍋 23KB
虐待 制裁 自業自得 子ゆ 現代 虐待人間 かなーり久々の火鉢あきです。

「あーあ、今日はなんだか疲れたなぁ・・・・。」

夕暮れの帰り道を歩きながら、溜め息混じりにつぶやく。少女は一人だった。

「まあ別に、最悪の一日ってわけじゃないけどさ・・・・。」

紺色の制服に映える白い肌、肩まで伸ばされた栗色の髪 ― その髪に隠れがちな整った顔立ちは、不満そうにむくれている。
年のころなら15、6と言ったところだろうか。高校指定の鞄を片手に歩く姿は、いかにも学校帰りという感じだ。

「なんにもいい事がなかったというか・・・、つまんなかったというか・・・・・。」

ブツブツと少女の独り言は続く。彼女にとって、今日はお世辞にも『楽しかった』といえるような一日ではなかったらしい。
それも無理からぬことだ ― 寝坊をしたせいで寝癖を直すこともできず、芸術的な髪型のままホームルームを受けた上、
抜き打ちの小テストで0点を取り、お昼のお弁当に大嫌いなタマネギが入っていた日を楽しんで過ごせる人間など、そうはいない。

しかも、一緒に帰るはずだった友人全員に、係やら委員やら他校の彼氏に会いに行くやらの用事が入り、
一人ぼっちで帰る羽目になったとくれば、もうテンションは駄々下がりだ。

「どれも良くあることですけどぉ・・・・、別にいいんですけどぉ・・・・。」

それが全部まとめてやってこなくてもいいのではないか ― と、少女は軽く世界を呪う。

「あー、なんかいいストレス解消法ないかなあ!」

胸の中に渦巻くもやもやした感情を吹き飛ばすように、声を張り上げた。と、その時 ―

「ゆっくちしていってにぇ!」

「うわっ、何!?」

唐突に返事が返ってきた。
否、それは返事ではなかったかもしれない。厳密には、挨拶のようなものだったのだろう。
しかしいずれにしても、それは人間によるものではなかった。それは、ゆっくりの声だった。

「おねーしゃん、まりちゃはまりちゃだよ!ゆっくちしていってにぇ!」

小柄な少女よりも、はるかに低い目線から話しかけてくる黒帽子の子ゆっくり ― ゆっくりまりさだ。
最近では、街中で見かけることの珍しくないゆっくりのなかでも、とりわけ個体数の多い『基本種』の一つである。

「あぁ何だ、ゆっくりかぁ。びっくりした。」

声をかけてきたのがゆっくりであるのを確認して、ほっと胸をなでおろす。
誰かに自分の独り言を聞かれたのかと思って、少女は相当あせったが、どうやらその心配はないようだ。
普段なら無視して通り過ぎるところだが、安堵のあまりつい返事をしてしまった。

「ゆゆっ!おねーしゃんはゆっくちできるひと?まりちゃ、とってもゆっくちしてるでしょ?まりちゃはかぞくのあいどるなんだよ!」

まりさは返事が返ってきたことがよっぽど嬉しいらしく、目を輝かせながら饒舌に自分をアピールしはじめる。
実際には、『返事』といえるかどうか微妙な台詞ではあったが、
その中に『ゆっくり』という単語が含まれていたことが、無条件にまりさを喜ばせたらしい。

「・・・・・あんた、子ゆっくりよね?一人でなにしてんの?親はどこにいるの?」

ともあれ、返事をしてしまったものは仕方ないので、少女は観念してまりさと話してみることにした。
どうせ、今日は一人なのだ。

「ゆゆん?『おや』しゃん・・・・?おやさいしゃんのこと?」

「お野菜じゃなくて、親!お母さんやお父さんはどうしたのって聞いてるの。」

「ゆ!おかーしゃんとおとーしゃんなら、いまは『かり』にでかけてるよ!おかーしゃんとおとーしゃんは『かりのめいじん』なんだよ!」

「いや、狩りの名人とかはいいから・・・・・。」

どうでもいい情報ばかり積極的に提供してくれるまりさに、少女は若干うんざりする。

「何で一人で出歩いてるの?親が狩りに出てるなら、巣で待ってなきゃいけないんじゃないの?」

「ゆー!まりちゃひとりじゃないよ!みんないっしょにいるよ!」

「どう見ても一人なんですけど・・・・・。」

一人ではない、と主張するまりさ。しかし、少女がどこを見回しても他にゆっくりは見当たらない。
少女の怪訝な表情を読み取ったのか、まりさは唐突に背を向け、呼びかけるように声を張り上げた。

「ゆーん、みんなー!ゆっくちあつまっちぇね!」

「「「「ゆーん!ゆっくちりかいしたよ!!!」」」」

しっかりそろった返事と共に、ガサガサと茂みから飛び出してくる4匹の子ゆっくり達。いずれも、まりさやれいむだ。
どの子ゆっくりもまりさと同じくらいの大きさなので、多分みんな同時に生まれた兄弟なのだろう。

「「「「「おねーしゃん、ゆっくちしていっちぇね!!!」」」」」

「あっ・・・・・そう・・・。」

5匹そろったところで改めて挨拶してくる子ゆっくり達 ― 少女はあっけに取られた。
ゆっくりという生き物は、何故こんなにも『ゆっくりゆっくり』とうるさいのだろう。

「まあ、一人じゃないのは分かったけどさ・・・。そのみんなで何をしているの?」

「ゆっくちしてるんだよ?れいむをみてわきゃらないの?」

「にんげんしゃんはゆっくちしてないから、わからないんだよ。ゆぷぷぷ!」

「「「「ゲーラゲラゲラゲラ!!!」」」」

否、うるさいだけではない。ゆっくりという存在は、とにかく人をイラつかせるものだ。
物分りは悪く、人の話を聞かず、 ― そして何より、人間のことを『ゆっくりしてない存在』として見下している。
食べ物を餡子に変える以外に何の能もない、ただの饅頭の分際でだ。

「っ!この―」

もう踏み潰してしまおう。何を言っても無駄だ。いや、そもそもゆっくりと話が通じると思ったのが間違いだったのだ。
そう思って、足を振り上げようとしたまさにその時、一匹のまりさが返事を返してきた。最初に話しかけてきた、あのまりさだ。

「まりちゃたちは、『たんっけんっ』しちぇるんだよ!」

「・・・・・探検?」

どうやらこのまりさだけは、人間と会話をする意思が ―能力はともかく― あるようだ。
先ほど、他の兄弟達が『ゆっくりしてない人間さん』を嘲笑していた時にも生意気な態度を見せることなく、まりさはただ一匹
少女の質問を真剣に聞いていた。

「そうだよ!おうちにいても、まりちゃつまらないよ!だから、みんなでゆっくちぷれいすをさがすんだよ!」

「ああ、そういう事ね。」

ようやく成功したまりさとの意思疎通のおかげで、少女はやっと納得することができた。
このまま会話が成立しなければ、本気で全員踏み潰すつもりだったが、このまりさに免じて見逃してやることにする。

「でも、子供だけで危なくないの?森の中じゃあるまいし、ゆっくりプレイスどころか、むしろ危険がいっぱいでしょ?」

「ゆーん!だいじょうぶだよ!まりちゃはもう、とってもゆっくちできるものをみつけたから!」

質問されること自体が嬉しいかのように、まりさが満面の笑みで少女に答える。
それが回答として適切であるかどうかは怪しいところだったが、今回は気にならない範囲だ。少女は続けて質問する。

「へー何なに?なにを見つけたの?」

少女の顔に今日初めて笑顔がともる。
自分にはいいニュースなど一つもない一日だったが、この子ゆっくりからいいニュースが聞ければ、
和むことぐらいはできるかもしれないと思ったのだ。

「おねーしゃんはとってもゆっくちしてるね!まりちゃたちの『どれい』にしてあげるよ!」

「・・・・・・はい?」

にっこり笑った顔のまま、反射的に上ずった声を出す少女。その姿は、いっそ間抜けだったかもしれない。
しかし、それも無理のないことだ。それくらいまりさの言葉は意味不明だった。

「ごめんね、よく聞こえなかったから、もう一回言ってくれる?」

「おねーしゃんを、まりちゃたちの『どれい』にしてあげるね!ゆっくちかんしゃしてね!」

意味が分からない。本当に意味が分からない。
どれいにしてあげる、とはどういうことだろう。『どれい』とは、奴隷のことだろうか。『かんしゃ』とは、感謝のことだろうか。

「・・・あんたが見つけた、ゆっくりできるものって私のこと?」

「そうだよ!おねーしゃんはゆっくちしてるね!」

「私が見つかったから、探検は大成功ってわけ?」

「そうだよ!おねーしゃんゆっくちありがとう!」

「・・・・・・それで、私を奴隷にしてくれるって?」

「そうだよ!うれしいでしょ?まりちゃにかんしゃしてね!ゆっくち!」

互いに微笑みあいながら、言葉を交わす少女とまりさ ― その会話の中で、少女はやっと理解した。
ゆっくりに話が通じるわけなかったんだ。まりさに会話をする意思なんてなかったんだ。
このまりさを含む全てのゆっくりにとって人間とは、ゆっくりしてない格下の存在なんだ。

「それじゃあ、さっそく『めいっれいっ』してあげるよ!まりちゃたちにあまあまもってきちぇね!」

「たくさんでいいよ!いますぐでいいよ!ゆっくちしないでね!」

「3びょうまってあげるね!いーち、にーい・・・・・なにぐずぐずしてるのぉー!?」

あくまで楽しそうに話すまりさと、それに続いて声を張り上げるまりさの兄弟達 ―
その5匹の姿を見て、さっき踏み潰さなくて本当に良かった、と少女は思った。

もちろん、この5匹は死ぬことになるだろう。しかし、彼らを一思いに殺すなんて勿体無いことはできない。
今日を正真正銘の最悪な一日にしてくれたお礼に、思う存分苦しませてあげなくては。
少女はそう決めると、たまたま通学鞄に入っていたビニール袋に、首尾よく子ゆっくり全員を捕らえたのだった。


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「だしぇー!だしぇー!せまくてゆっくちできないぃ!」

「くるしいぃー!ちゅぶれりゅぅぅー!」

まりさ達を袋詰めにしてからわずか数分後 ― 少女は自分の家に帰り着いていた。
もともと帰り道の途中でまりさに声をかけられたので、家までの距離はほとんどなかったし、
誰かに見咎められないよう早歩きで来たこともあって、時間はほとんどかからかった。

「ただいまー。・・・・っても、誰もいないんだけどね。」

少女の独り言がむなしく響く。家には誰もいなかった。
少女がいつもよりも早く帰ったからというわけではなく、ただ単に両親が共働きなので昼間は家を空けているのだ。
さらに少女には兄弟も姉妹もおらず、結果として彼女に「おかえりなさい」を言ってくれる人はいないのだった。

「ま、今日はその方が都合がいいか。」

一人ぼっちは寂しくもあるが、人目を気にしなくていいと言うのは確かに好都合である。
特に、これからゆっくりに制裁をくわえてストレスを解消しようとする人間には、うってつけの環境だろう。

「さて、まずは着替えようっと!」

その言葉を掛け声に、ビニール袋 ―中で子ゆっくり達が喚いている― をソファーに放り投げると、
ドサッと言う音と共に「ゆぎぇ!」という複数の悲鳴が重なって聞こえた。

スルスルと、少女が制服を脱いでいく。
慣れた手つきで胸元の赤いリボンを解いて外し、背中のファスナーをおろして上着を脱ぐ。
最後にスカートが床にストンと落ちて、少女はあっという間に下着姿になった。

白い上下の下着に包まれた体は、細く、滑らかで、瑞々しく ― 透き通るように白い。
もし誰かがその姿を見ていたら、「儚い」という感想を持ったかもしれなかった。

「今日は何を着ようかな・・・。」

脱ぎ散らかした制服を、律儀に拾い集めて片付けながら思案する。少女にとって、衣装選びは重要なことだった。

「やっぱ服って大事よねー。雰囲気って服で決まるし。」

「今日はなんとなく、清楚なイメージがいいかな・・・・。うん、白がいいな。よし、これに決めた!」

手に取ったのは、ロングスカートの真っ白なワンピース。
胸元に細かな刺繍が施されたそれは、季節を問わず着まわしのきく定番アイテムであり、少女のお気に入りだ。
ワンピースの白さが、色素の薄い白い肌と栗色の髪によく似合う。

「じゃ、準備に入るとしますかー。」

着替えが済むや否や、ソファーからビニール袋を拾い上げ、キッチンに向かう少女。
ビニール袋の中では、まだゆっくりどもが「だしぇー!」だの「くるしいー!」だのと叫んでいる。
時折、「めいれいだよ!はやくだしてね!」というような声も聞こえたが、おそらくあのまりさのものだろう。

「まずは、軽く水洗いしなきゃね。」

ビニール袋の中身を、シンクの中でザルに空ける。どのゆっくりも若干潰れてはいたが、皮が破れたり傷を負ったりはしていないようだ。
むしろ、声だけ聞けば元気そうと思えるくらいである。

「ゆぴゃー!いちゃいよー!おうちかえるー!」

「れいみゅ、もうせまいのやじゃー!」

「まりさになにするの!?ゆっくりできないよ!?」

それらの声を無視して、少女は蛇口をひねる。子ゆっくり達の上に、チョロチョロと水道水が控えめに降り注いだ。

「ゆんやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「おみずさんはゆっくちできにゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

5匹の子ゆっくりたちに満遍なく水が滴り落ちていく ― その勢いは極めて緩やかだ。
いくら脆弱な子ゆっくりといえども、この程度の水ではふやけるのが精々なのだが、本ゆん達にとっては死ぬほど辛い拷問らしい。
何とか水から逃れようとザルの内壁を這い登っては、コロコロと転がり落ちることを繰り返す。

「ゆぴぃー!なんでそとにでられないにょぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

「かべしゃんいじわるしないでね!まりしゃをゆっくちそとにだしてね!」

狭いザルの中で押し合いへし合い、時にぶつかり合いながら叫び続ける子ゆっくり達。
少女が特に何を手を下さなくても、5匹全員が『全自動水洗い』されるのにそう時間はかからなかった。

「全員綺麗になったみたいね。ま、下ごしらえはこんなもんでいいかな。」

少女はそうつぶやいて水を止めると、棚の奥からホットプレートを引っ張り出す作業に入った。
このホットプレートは鍋のように底が深く作られており、『焼く』以外にも『煮る』『蒸す』といった調理が可能なタイプだった。

「こういうのをグリル鍋っていうのよね。それにしても・・・・・うー、重たい。」

ザルの中でまだ喚いている5匹を放置したまま、ホットプレートをテーブルまで運んでいく少女。
どうせ子ゆっくりにザルの内壁を登りきることなど出来はしないのだ。特に監視などしなくても、脱走の心配はない。
テーブルに置いたホットプレートの中に、水を少なめに張る。スイッチはまだ入れない。熱するのは『材料』を入れてからだ。

「ゆわーん!れいみゅゆっくちできないよぉー!もうおうちかえるー!」

言うまでもないことだろうが、今回の『材料』とはつまり、この子ゆっくり達のことだ。
少女はザルをシンクからテーブルまで持ってくると、それをホットプレートの真上で逆さまにひっくり返した。
薄く張られた水の中に、『材料』が悲鳴と共に投入される。

「いちゃいぃぃぃぃ!・・・ゆうぅ!?なんでまたおみずしゃんがあるのぉぉぉ!?」

「くそどれいぃ!はやくまりしゃさまをたすけるんだぜ!じゃないと『せいっさいっ』するのぜ!」

「ゆっくりしないであまあまもってきちぇね!たくさんでいいよ!」

自分達の置かれている状況を理解しているのかいないのか ―否、理解していないからこそだろう― 5匹が好き勝手に悪態をつく。
しかし少女はそれを相手にせず、子ゆっくりの数を確認する。

「いち、にー、さん、しー、ご。うん、全員いるね。残念、脱走できてる奴がいたら、そいつは見逃してやろうと思ってたのになぁ。」

少女は白々しくそう言うと、パチン!とホットプレートのスイッチを入れた。

「それじゃあ、制裁スタート☆」


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「ゆゆぅ!ここはどきょなの!?」

まだ幼い子ゆっくりのまりさにとって、そこは今までに見たことも無いような場所だった。
足元に黒く広がる鉄製の地面。まりさの体が半分つかる程度に張られた水。― その水を囲っている壁は、やはり黒い鉄でできていた。

「おみずしゃんはゆっくちできないよ!まりしゃ、ゆっくちぷーかぷーかするよ!」

このままでは体が溶けてしまう ― まりさは慌てて帽子を脱ぎ、逆さまにひっくり返して水面に浮かべ、その上に飛び乗った。
しかし、直後にバランスを崩し、「ゆべしっ」と声を上げて水面に顔を突っ込んでしまう。

それは必然の結果だった ― 帽子の高さに対し、水かさが低すぎるのだ。
これでは、帽子の先端が地面についてしまい、どうやっても帽子を水平に浮かべることができない。

「ゆう~~~!?なんでぷーかぷーかできないにょ~~~~~!?まりしゃのすてきなおぼうししゃん、いじわるしないでね!」

泣きたくなる気持ちをこらえ、何とかぷーかぷーかしようと傾いた帽子に再び飛び乗る。
ギリギリのところでバランスを取り、懸命に浮き続けようとするまりさ ― それを邪魔したのは、兄弟のれいむ達だった。

「れいみゅたちものせてね!ひとりじめはよくないよ!」

「このおぼうしにはおねーしゃんがのってあげるよ!かんしゃちてね!」

「ゆあぁぁぁぁ!なにしゅるのぉぉおお!?」

我先に水から逃れようと、2匹のれいむがまりさの帽子へと殺到してくる。当然、まりさの帽子はその重さに耐えられない。
まりさは再び水面に突き落とされ、帽子はれいむ達の足元でクシャクシャになってしまった。

「ゆ!このおぼーししゃんぜんぜんぷーかぷーかできないよ!やくにたたないね!」

「あっちにもまりしゃがいるよ!かわいいれいみゅは、あっちのまりしゃにおぼーししゃんをかしてもらうよ!」

嵐のように去っていく2匹 ― その後に残った帽子を、まりさは必死に直そうと舐め始める。
潰れて水を吸ったそれは、いつもよりずっと重かった。

「ぺーろぺーろ!おぼうししゃん!まりしゃのすてきなおぼうししゃん!!ゆっくちしてね!ゆっくちしてね!!ぺーろぺーろ!」

刻まれた皺を、泣きながら舌で伸ばし続けるまりさ。その甲斐あって、帽子はある程度もとの形に近づいた。
しかし、それも「かぶることはできる」程度に戻っただけに過ぎず、とても元通りになったとはいえない。
帽子のつばにいつもの張りはなく、ツンと尖っていた先端部分もグニャグニャに折れ曲がっている ― とてもゆっくりしていない姿だった。

「うぅぅ・・・・。おぼうししゃんびちょびちょだよぉ・・・・・ぜんぜんゆっくりできないよぉ・・・・・・。」

濡れた帽子をかぶる事は、水に弱いゆっくりには自殺行為といってもいい。しかしそれでも、まりさは帽子をかぶった。
まりさにとって帽子はそれだけ大事なものであったし、ゆっくりにとってお飾りを失くす事ほどゆっくりできないことはないからだ。
まりさは泣きながら、もう一つゆっくりできない事が起こっているのに気づく。

「ゆぅ・・・?なんだかじめんしゃんがあちゅいよ・・・・・・?」

水に浸かり、既に少しふやけ始めているあんよ ― この違和感はそのせいだろうか。そういえば先ほどから、暖かさは感じでいた。
まりさがそう考えている間にも、地面の温度はぐんぐん上がっていく。

「あちゅい・・・あぢゅい!あぢゅいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!なんなのこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

その熱さに耐えられず、ぴょんぴょんと跳ね回りながら逃げ惑うまりさ ― どこへ着地しても地面の熱さに変わりはない。
現に、遠くに見える他の兄弟達も、悲鳴を上げてぴょんぴょんと跳ね回っている。
逃げ場所はないかと周囲を見回すが、何も見つけられない。そこでまりさは初めて、自分を上から見下ろしている存在に気づいた。

「おねーしゃん!どれいのおねーしゃん!」

「あ、今私に気づいたのか。無視されてるのかと思ってた。」

まりさ達を囲う黒く高い壁の、さらにはるか上空からこちらを眺めている人間 ― 今日会ったばかりのあの少女だ。

「ねえねえ、さっき着替えたんだけど、この服どう思う?清楚でいい感じじゃない?」

「そんなことどうでもいいよ!はやくまりしゃをたすけてね!まりしゃゆっくちできないよ!」

少女が何をそんなに楽しそうにしているのか、まりさにはちっとも理解できなかった。
まりさが目の前で酷い目に会っている時に、何を的外れなことを言っているのか。
確かに先ほどとは服装が違うが、まりさが今苦しんでいることにくらべれば、それが一体なんだというのか。

「助ける?助けるって何のことかなぁ?何で私があんたを助けなきゃいけないのかなぁ?」

「ゆぎいいぃぃぃ!あっぢゅい!なにいってるのぉぉぉ!?さっき『どれい』にしてあげたでしょおぉぉぉぉ!?あっぢゅい!」

頬杖をついたまま白々しくとぼける少女に向かって、飛び跳ねながら叫ぶまりさ。
そうしている間にも、地面の温度は上がっていく。水面からは湯気が立ち、水底から上がってきた気泡がポツポツと弾ける。
水が、沸騰し始めていた ― もはや一刻の猶予もない。

「ふーん、奴隷ねえ・・・・・?」

それなのに、少女ときたら呑気なものだ。まりさの危機に慌てる様子もない。それどころか、この状況を楽しんでいるようにすら見える。

「ゆぎいいぃぃぃぃぃぃ!あっぢゅい!ぐずぐずするなあぁぁぁぁぁぁ!あっぢゅい!!はやくだずげろおぉぉぉぉぉぉぉ!あっぢゅい!!」

「ねえ、そんなにそこが熱いんだったら、壁を登って外に出てみれば?こっちは涼しいよ?」

「ゅんぎいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃ!!!!」

怨嗟の声を上げるまりさに、少女が優しく助言する。その声はやはり、どこか楽しげだ。
少女には、まりさを助けるつもりなどさらさらないらしい。

「ま”、まりしゃかべしゃんまでぴょんぴょんするよ!ゆっくちじないでいそいでぴょんぴょんするよ!!」

少女が助けてくれないなら、自分で外に出るしかない。意を決して、半ば泳ぐように壁へと走る。
水の沸騰は刻一刻と激しさを増し、立ち上る湯気はまりさの視界を塞いだが、黒い壁を見失うには至らない。
程なくして、まりさは壁の一歩手前までたどり着いた。

「ゆう”ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅ・・・・あじゅいぃぃぃ・・・・・あじゅいよおぉぉぉぉおぉぉ・・・・・。」

まりさの何倍もの高さで垂直にそびえ立つ、巨大な壁。そこには足場などあるはずもない。むしろ、つるつるとして滑りやすいくらいだろう。
でも、この壁を越えればここから出られる、この壁を越えられさえすればゆっくりできるんだ ― その希望が、まりさを突き動かす。

「まりしゃかべしゃんをのぼるよ!ゆっくぢぃ!!」

そう宣言して、目の前の壁に飛び掛った。
地面と同じ鉄でできた黒い壁に、湯気でわずかに湿っただけの黒い壁に、登ることなど出来るはずのない黒い壁に、飛び掛ってしまった。

 ぴょん ― ジュッ

「ゆんぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

バシャバシャと音を立てて、沸騰する水の中をまりさがのた打ち回る ― その顔は、焼け爛れていた。
水にぬれていない壁は、水である程度冷やされていた地面よりも、何倍も熱かったのだ。
その灼熱の壁に、まりさは顔から突っ込んでしまった。

「あづいぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃ!おめめがみえないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

まりさは自分の状況が全く理解できなかった。理解できたのはただ、とにかく熱いということだけ。特に、顔が熱いということだけだった。
自分の顔が焼け爛れていることなど思いつきもしなかったし、ましてや、自分の両目が焼き潰れてしまったことなど知る由もなかった。

「あぢゅいぃぃぃ!くらいぃぃぃぃぃ!こわいぃぃぃぃぃぃ!!ゆっくりできないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

半狂乱になって暴れまわり、無意識に壁から離れていくまりさ。

「だじゅげでぇ!だれがだずげでよおぉぉぉぉ!おとーしゃん!!おかーしゃん!!まりしゃぁぁぁぁぁ!!りぇいむぅぅぅぅぅぅ!!!!」

本能的に両親や兄弟に助けを求めるが、どんなに探してもその姿を見つけることができない。
否、今のまりさには何も見ることができないのだ ― だから、気づけなかった。だから、予想できなかった。
自分が今まさに助けを呼んだ兄弟達が近くにいることも。これから自分の身に何が起こるのかも。

「あぢゅいあぢゅいあぢゅいぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!おうぢかえるうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「ゆあ”ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!あんなところにまりしゃがいるよ!あっぢゅい!」

沸騰する暗闇の中で、兄弟たちの声が聞こえる。ただただ助かりたい一心で、声のするほうへ近いづいていくまりさ。
 ― とその時、唐突にその体に衝撃が走った。

「まりしゃはゆっくりれいみゅのふみだいさんになってね!あっぢゅいぃ!」

「ゆべえぇ!!!」

地面に押し付けられるように、踏みつけられるまりさ ― 踏みつけたのは他でもない、兄弟のれいむだ。

「れいむばっかりずるいぃぃぃ!れいむものぜろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「ゆべぇ!」

「まりしゃのぶみだいになれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「ゆべぇぇ!」

「ゆぎいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!じにだぐないぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃぃぃぃ!」

「ゆべえぇ!!」

煮え立つ鍋底から少しでも離れようとして、次から次へ我先にとまりさにのしかかってくる兄弟たち。
光を失ったまりさに、抵抗するすべはなかった。

「ゆべぇ!・・・や、やめ、ゆべぇ!・・・だれか、だず、ゆべぇ!・・・しにだくな、ゆべぇ!」

繰り返し襲ってくる衝撃、容赦なくしみ込んでくる水、その水を通して伝わってくる強烈な熱さ ―
そのすべてが致命的なダメージとなって命をむしばむ。

「ゆべぇ!・・・だずげで、ゆべぇ!・・・だずげでぐだざ、ゆべえぇ!・・・おでがいじま、ゆべぇぇ!」

自分の体がぐずぐずに溶けていくのを感じながら、まりさは叫び懇願する。
何でもするからここから出してもらいたい、もっとゆっくりしたい、こんなところで死にたくない ― 強く、強くそう願う。

「あははははははははははは!何それ?ひょっとして私に言ってるの?」

その願いをあざ笑うように ― 否、心の底からあざ笑う声が響いた。少女の声だ。

「ゆべぇぇ!・・・ど、どれいの、ゆべぇぇ!・・・おねえさ、ゆべぇぇ!・・・だ、だずげ、ゆべぇぇ!」

「ねえ、さっきも聞いたことだけど、」

絶えず兄弟に押しつぶされ、もがき呻くまりさを眺めながら、少女が楽しげに問いかける。

「どうして私があんたを助けなきゃいけないの?それに、奴隷ってなに?誰が誰の奴隷なの?」

その問いかけの意味を、まりさは必死に考える。今自分を救えるのはこの少女だけだ。
回答を間違えて少女の機嫌を損ねれば、待っているのは『死』なのだ。

「ゆべぇぇ!・・・ま、まりしゃ、ゆべぇぇ!・・・どれい、ゆべぇぇ!」

「うーん?よく聞こえないなあ?」

目を細める少女に向かって、必死に声を張り上げる。

「ゆべぇぇ!・・・まりしゃがどれいですぅぅ、ゆべぇぇ!・・・おねえざんのどれいでずぅ!ゆべえぇ!」

「・・・だがら、だずげて、ゆべえぇ!・・・だずげでぐだざい、ゆべぇぇ!・・・おねがいじまずぅぅぅ、ゆべえぇ!!」

体中から餡子をもらしながら、口から餡子を吐き出しながら、まりさは『回答』を口にした。
幼いながらも死の淵で、それこそ必死に考えて導き出した答え ― その答えを少女は、

「ふっ」

鼻で、笑った。

「ふっ・・・・ふふふふふ・・・・。あははははははははははははははは!」

少女の嘲笑がこだまして聞こえる。まりさを繰り返し踏みつける兄弟達の叫びも、溶けながら踏みつけられるまりさの悲鳴も、かき消すように。
何を当たり前のことを言ってるの? ― と、高らかに笑い声が響く。

「あーおっかしー!そんな決まりきったことで必死になってさ、馬鹿じゃないの?」

少女は遥かな高みからまりさを見下ろし、蔑む。
愚かで脆弱なゆっくりと、万物の霊長たる人間 ― 一体どちらが奴隷なのかなんて、考えることすら馬鹿馬鹿しいと。

「まあ、いいか・・・。ねえ、奴隷なら私の言うことなんでも聞いてくれるんだよね?」

まりさは少女の問いかけに、もう答えることができなかった。
煮えたぎる暗い絶望の底で、ゆべえ、ゆべえ、と声を漏らすことしかできなかった ― もう、何もする気にもなれないのだった。

「何だ、もう終わりなの?つまんないなあ。・・・・じゃあ、最初で最後の命令ね。」

「たっぷり苦しんで、それから死になさい。」

少女はそういうと、これまで『弱』だった火力のつまみを一気に『強』まで引き上げだ。

「「「「「ゆぎゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」」」



          少女と奴隷とグリル鍋  ―完―



めっちゃ久し振りの投稿です;ていうか春コンペ以来になってしまいました。
私は結構書くのが辛い人なのですが、皆さんのご感想と自己顕示欲を糧に頑張りますので、
応援よろしくお願いします!

火鉢あき


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最終更新:2010年10月12日 16:01
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