anko2053 ゆっくり地獄鍋

『ゆっくり地獄鍋』


「ドジョウ地獄って知ってるか、れいむ?」
「ゆゆ? どじょうじごく? なんだかゆっくりしてないかんじだよ……」

額に赤実ゆっくりを実らせたれいむに青年は問う。
リボンには銀色のバッチが輝く、れいむだ。

「おや、銀バッチのれいむちゃんはドジョウ地獄も知らないのか?」

青年はワザと馬鹿にするように、いや実際に馬鹿にしているのだが、それを思い切り強調する様にれいむに再度問いかける。

「ゆ!? しってるよ! れいむしってるもん、れいむはぎんばっちなんだよ!」

もちろん、れいむは知らない、しかし馬鹿にされるのはゆっくりできない。
そう浅はかな考えは、すぐに嘘という形で返された。

「そうかー、いやー、お兄さん実のところはこのドジョウ地獄って一度もやったこと無いんだ、知ってるれいむなら体験したことあるよな?」
「ゆ、ゆ、あ、あたりまえだよ! なにいってるのおにいさん! ぎんばっちのれいむなんだから!」

更なる問にれいむは更に嘘を固める。
もちろん、そんな事体験したこと無いことは青年は知っている。

「そうかそうか、れいむは凄いなー、で、どんな感じだった?」
「ゆ、ゆ、す、すごかったよ!」

れいむは目を泳がせながら更に嘘をつく。

「何が?」
「ゆ、ゆ、それは…… あれはほんとうにじごくさんだったよ! それはもうすごかったんだよ! どれくらいすごいかって、すごくすごかったんだよ! それくらいわかってね!」

れいむは貧相な語彙を集めて必死に嘘を並べたてる。
そして、その嘘はれいむ自身に降りかかる。
思い込みの激しいゆっくりである、れいむは、自分の言っている嘘と現実が曖昧になり、遂には自身の嘘を本当だと思いこむに至る。

「ほうほう、凄いなぁ」
「そうだよすごかったんだよ! いままでたいけんしたことがないおにいさんがかわいそうだね!」
「何回ぐらい体験したんだ?」
「たくさんだよ!」
「ああ、じゃあ、もう一度くらい体験するか?」
「いいよ! あのすごさはたいけんしないとわからないからね! なんどだっていいよ!」
「そうかそうか……」






ドジョウ豆腐、ドジョウ地獄という豆腐料理を知っているだろうか。
お湯に冷たい豆腐とドジョウを入れると、熱いお湯から逃げる為に冷たい豆腐の中にドジョウが逃げ込むが、結局豆腐にも熱が通り豆腐の中に居るドジョウも煮えてしまう。
そのドジョウ入りの豆腐を頂くという料理なのだが。

現実ではうまくいかないらしい。
お湯に入れても、熱湯を撒き散らし踊るモノの、豆腐には入らず、煮える。
水から煮始めても、あっさりと煮えてしまう。

ドジョウ豆腐なんてものは実は都市伝説の様な料理なのであるようだ。



それを青年は試すことにした、ゆっくりで。

あの銀バッチのれいむは、青年が貰ったれいむだった。
お隣さんが引っ越す折に引っ越し先はゆっくりは禁止させていたため、隣に住む彼がかわりに飼うことになったのだ。
最初はバッチ持ちだしどうにかなるかなと思っていた。

しかし既に最初から、れいむはゲスの片鱗を見せていた。
何かと言えば、飼いゆっくりなんだよ! と騒ぎたて。
少しでも嫌なことがあれば、銀バッチなんだよ! と吠える。

挙句の果てに、野良のまりさを部屋の中に勝手に呼び込み荒らしてお家宣言までかました。
さらに額には実ゆっくり。
ダンボールで囲ってやろうと思ったその日にだ、つくづくタイミングが悪い饅頭である。
野良のまりさはすでに青年の手で二階級特進させた。

残ったのは馬鹿とそのサラブレット達だ、ゆっくりを虐待することに趣味がなかった青年だが、まりさを潰した時が中々楽しく、れいむは甚振ることに決めたのだ。




「鍋に水を張ってと」

用意した土鍋に水を張った。
大体親れいむの底部を浸すくらい。
赤ゆっくりだったら体の半分くらいか。

「れいむにさっさとあまあまさんよういしてね! たくさんでいいよ!」
「たくしゃんでいいよ!」
「しゃっしゃとしゅるんだじぇ、くしょどりぇい!」
「あみゃあまやしゃん、あみゃあみゃしゃん!」
「ゆっきゅりしにゃいでしゃっしゃとよういしゅるんだじぇ、くしょじじぃ!」
「ゆっきゅり~」

そして前回のやり取りから少し。
れいむは子供を産みおとし、赤ゆっくりを作っていた。
親譲りの馬鹿面は見ているだけで虫唾が走るほど似ている。
それ以上に、その無駄に壮大な言動とゆっくりしたいという姿は確実に馬鹿どもの餡子を120%受け継いでいることが分かる。

青年は取り合わない、聞いているだけで血管が浮き出そうなほどなのだ。
対話なんてやり取りをしたら、潰してしまう自信があった。

先に赤ゆっくり達を水の張った土鍋に入れた。

「おみじゅしゃんはゆっくちできにゃいよぉ!」

とその場で一匹の赤れいむが跳ねた。
水は赤まりさにかかる。

「ゆぶぃ! おみじゅしゃんきゃけるんじゃにゃんじぇ! ゆっくちできにゃくにゃるんだじぇ!」

と逃げる、逃げた先には別の赤れいむがいて赤れいむは跳ね飛ばされる。

「かぼぼぼがぼぼぼ!!!」

顔から水に突っ込んだ赤れいむはいきなりの出来事に混乱して、その場でおぼれ始めた。

「……」

青年はなんも言えねぇと言った風にそれを呆然と見た。
ちょっと水に入れただけでこれだ、馬鹿すぎる。
準備している間に死なれても困るので、ボールを用意し、その中に入れた。
既に全て息も絶え絶えである。

気を取り直して、青年は親れいむを持ち上げる。

「ゆゆ! さいしょはおふろさんにはいるんだね! くそどれいにいしてはきがきくね!」

と水を張った土鍋をみて言い始める。
少し前は青年のことをお兄さんと言っていたのに、子供が生まれた途端このざまである。
生まれて気が大きくなっているのだろうか。

青年は取り合わず親れいむをテーブルに頭から置いた。
底部をが上になり、それを上から片手で押さえつける。

「やめてね! れいむ、そこははずかしいからみないでね! くそどれいがみていいばしょじゃないんだよ!」

存在自体が恥である饅頭が何を言う。
思わず叫びそうになるのを堪える。
気持ちを整えるために深呼吸する、その間にも抑え込んでいる手にはブリンブリンと蠢く親れいむが居る。

気を取り直し、包丁を片手に持つ。

「ゆ、なんだかゆっくりできないよ、そんなものれいむにむけないでね!」

サクッと親れいむの皮を切った。

「!!!」

そして、包丁をサクリサクリと数回。
ピンポン玉程の切れ目が幾つもできた。

「ぃ゛ぎ、、、、ゆ゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛っ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!!」

今まで家育ちだった親れいむには耐えがたい痛みだった。
あまりの痛さに体中から汗の様に砂糖水がこぼれ出し、目から大粒砂糖水がボロボロこぼれる。
締まりの悪いところからしーしー出てきた。
親れいむが叫び終わった頃には何か所にも及ぶ包丁で刺した線とそこから少しばかり洩れる餡子ができた。

「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ……」

あまりの痛みに痙攣がおきる。
無意識のうちに引きつった声が漏れる。
それでも口は痛さどうにかするために食いしばり、その口の端からは涎が溢れて止まらない。
目はグルングルンといろんな方向を向きながら、白黒させている。
親れいむを乗せたテーブルは砂糖水で溢れている。

このままでは死んでしまうだろう、このままでは。

ゆっくりは餡子を多量に失うか、中枢餡と呼ばれるゆっくりが持つ特殊な餡が潰されなければ死ぬことはほとんどない。
この親れいむは痛さのあまり外的ダメージで死ぬ直前のゆっくりが発する痙攣を始めている。
しかし餡子の流失量は少なく、中枢餡が傷ついているわけでもない。

なのになぜ死んでしまうのか。
それは、ただただ単純に、ゆっくりしていないから。

赤ゆっくりなどが苦いモノを食べ、餡子を吐いてしまうと同様に。
ゆっくりは瞬間的にも持続的にも、極限にゆっくりできなくなると、体は生きることを放棄する。
それは何故か、生きてこの感覚を味わうなら死んだ方がゆっくりできるからだと無意識のうちに思ってしまうからだ。

少しずつゆっくりできないことを経験したゆっくりは、拷問にかけても死にはしない。
ゆっくりしたことしかないゆっくりに、同レベルの拷問をかければすぐに死んでくれるだろう。

話はだいぶ脱線したが、今までゆっくりしたことしかしてこなかった親れいむはちょっと皮を裂かれただけで、死にかけているのだ。

「ん、不味いか」

流石にそこまでゆっくりに詳しくない青年でもこの状態が死の一歩直前だということに気付いたのだろう。
しかし声はあまり焦っていない。
何故なら彼には。

「じゃーん、オレンジジュース」

ゆっくりの万能薬、治療から虐待まで幅広く貢献する、伝家の宝刀があるのだから。
青年はペットボトルのオレンジジュースの蓋をあけ、親れいむに突き刺した。

「ゆ゛っ!」

突き刺さった痛みにビクンと体を跳ねるが、すぐに収まる。
見る見るうちに、親れいむの体調がよくなってくのがわかる。
適当な部分で青年はオレンジジュースを外した。

「むっ、オレンジジュースのせいで包丁傷も塞がってしまった」

万能薬オレンジジュースは青年の目的の為の傷すらもふさいでしまった。

「まあ、いいや、ワンモアセッ」
「ゆぎゃぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

少しは慣れたのか、今度の声は先ほどよりは死にそうではなった。




「ゆびぃ、ゆびぃ……」

ベソベソと親れいむは涙を垂れ流す。
こんな筈ではなかったのに、と。
可愛い子供に囲まれて、カッコいいまりさを番にして、後はもう奴隷の家を奪って、ゆっくりするだけだった。
奴隷の家を奪ったまでは良かった。
しかし、それからゆっくりできなくなった。
番のまりさは何処かにいなくなり。
自分はダンボールに閉じ込められた。
自分の子供達は元気よく生まれた、そして、今。

自慢のゆっくりできるあんよは動けないほど切り裂かれ、全てを魅了する綺麗な肌はゆっくりできないもので穴をあけられた。

どうしてこうなった……

何処をどう思えば、そう思えるのか親れいむは現状に至る意味がわからなかった。
そして、自分のこの悲劇に酔っていた。
この期に及んでこの親れいむは自分がゆっくりできると信じて疑っていなかった。
今も虎視眈々と自分を助ける白馬の王子様が自分を探していると思っているほどに。




「さあ、準備は整いましたっと」

このゆっくりできない青年を倒して親れいむをずっとゆっくりさせてくれる、ゆっくりが居ることを。

青年は親れいむを水を張った土鍋に入れた。

「ゆ゛ぎぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛」

冷たい水が親れいむの傷に染みて、不細工な面が気味悪く歪む。

「次は赤ゆっくり共をいれますよー」

ボールに入った赤ゆっくり達が次々と水の張った土鍋に入れられる。

「ゆゆっ! れいむのかわいいおちびちゃんたち!」
「ゆっ! おかーしゃんだ!」
「しゅーりしゅーりしゅるんだじぇぇぇぇぇ!!」
「ごわがったよぉぉぉぉ」
「ゆっくちできにゃかったんだじぇぇぇえ!!」
「ゆっくちぃ!」

ほんの数分ぶりの再開に親子は涙を流して喜んだ。
辛かった、とてもゆっくりできなかった、けれど今は自分の可愛い子供たちが居る。
先ほどのゆっくりできない体験を経験したせいもあってか、自分の子供たちが何倍にも愛おしく感じた。

「そして加熱」

青年は淡々と準備を完成させていた。


「おかーしゃん、ゆっくちできにゃかったよぉ」

長女なのに甘えん坊な長女れいむが泣きべそをかきながら親れいむに頬を擦りつけを始める。

「ゆふふ、だいじょうぶだよおちびちゃん、れいむがゆっくりさせてあげるからね」

そう言って安心させた。

「いみゃみゃでゆっくちできにゃかったんだじぇぇぇぇ!!」

次女であり、番である親まりさにそっくりの長女まりさが泣きついてくる、何か大変なことがあったのだろう。

「ゆんゆん、だいじょうだよおちびちゃん、れいむがゆっくりさせあげるからね」

そう言って慰めた。

「おかーしゃん、れいみゅといっちょにゆっくちちよう」

三女だが、一番しっかりしている次女れいむ、しかしあまりゆっくりしていないみんなには厳しいが実は一番寂しがり屋なのを知っている。

「ぺーろぺーろ、だいじょうだよおちびちゃん、れいむといっしょにゆっくりしようね」

そう言って撫でた。

「ゆぴぃぃぃぃ、あのくしょどりぇいがゆっくちしゃしぇてくりぇにゃいんだじぇ」

四女のヤンチャな次女まりさ、快活でいつも元気だが、今は疲れているようで怒っている。

「ぽんぽん、だいじょうだよおちびちゃん、れいむがせいっさいしてあげるからね」

そう言って宥めた。

「ゆっくちぃゆっくちぃ!」

末っ子の三女れいむ、最後に生まれたため一番、成長が遅いが、それでもゆっくりしている。

「そうだね、ゆっくりしようね」

そう言ってゆっくりした。


これでもう、れいむは無敵だ。
そう、親れいむは確信する。
これほどゆっくりしているのだと。
構えて数秒、親れいむは周囲の異変に気付く。

「ゆ? なんだかあったかくなってきたよ」
「ゆゆ! あっちゃきゃいのはゆっくちできりゅよ!」
「ゆっくちできりゅんだじぇ!」
「そうだね、れいみゅゆっくちちてりゅよぉ~」
「ぱーしゃぱーしゃ、ゆっくちしてりゅんだじぇ!」
「ゆっくちぃ~」

しかしその状況もすぐに地獄と化した。

「なんだか、あつくなってきたよ……」
「あづぃよぉぉぉ……」
「あづぃ、あづぃんだじぇ……」
「ゆびぃぃ……」
「あづぃぃぃぃぃ!!」
「ゆっぐぢぃ」

暖かいはすぐに通り越し、熱くなってきた。
ぐんぐんと水は熱くなり、お湯となっていく。

「おーい、ちびたち、穴に入ればそんなに熱くないぞー」

そこで、何処からか声が聞こえてくる。
ついでに水を少しずつ足しながら。

「「「「「「ゆゆぅ?」」」」」」

目の前の穴なんてあるだろうか。
全てのゆっくりが穴を探した。
親れいむとは違い、半身をお湯につかる赤ゆっくり達はすでに意識はもうろうとしていた。

「ゆぅ? あにゃしゃん……」

長女れいむが一つの穴を見つける。

「ゆっ! そこはれいむのぉごごごごごご!!」

そこは青年がれいむに開けた包丁の切れ目だった。
長女れいむはもうろうとした意識のまま、その穴へ身を潜り込ませる。

「ゆぅ、ゆっきゅりぃ……、ゆゆ! むみゃあみゃしゃん!」

体を突っ込み、かき分けながら進むとれいむの餡子が長女れいむの口の中に入った。
それは甘かった。
ゆっくりはゆっくりできない思いをするとその餡子を甘くする。
包丁で死ぬ直前までゆっくりできない思いをさせられた親れいむの餡子は甘く、現在進行形で子供にその身を食われている親れいむは更にその身を甘くさせた。

「ゆごごごごごごごご!!」

ボコボコと大粒の砂糖水の涙を発生させている親れいむ。

「あついのじぇ、あにゃしゃんにはいりゅのじぇぇ……」
「ゆゆ、あにゃしゃん……」
「あじゅぃぃぃ、あにゃしゃんにはいりぇばゆっくちできゅんだじぇぇぇぇ……」
「ゆぐぢ……、ゆ゛ぐ……ぢ……」

次々と親れいむの体の中へ入っていく赤ゆっくり達。
そして気付く。

「「「ゆゆ! あみゃあみゃしゃんじゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

末っ子れいむは辿りつけず死んでいた。

「もっぢょ、ゆっぐ……」

この時点でお湯は沸点を越え、ボコボコと煮立ち始めている。
煮立ったそれは末っ子れいむ全てを溶かし、その透明なお湯を少しばかり汚した。

「あづぃだぃだぃだぃだづぃだぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

そして親れいむは叫んでいた。
体の外からは信じられないほどの暑さが、体の中からはわが子が内臓を食い破る寄生虫のように餡子を食い荒らしながら動きまわる。
もはや体の中の子供は愛しい子でも何でもない。
青年の手先だ、親れいむをゆっくりさせない悪魔だ。
自身を貪るゆっくりできないゴミどもだ。
しかし、そのことを罵倒する余裕も親れいむは残っていない。
ただ叫ぶしか、できない。
そんななか、鍋の外から声が聞こえる。

「おいれいむ、どうだ、ゆっくりしてるか?」
「あ゛ぃ゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!」

頭の中の餡子が沸騰するほど熱くなるのを感じる。
全ての元凶はこいつだ、しかし、頭の中をいじくり回され、減らされている親れいむには何も思い浮かばない。
ただ目の前の青年が悪いとしか、しかしその意識も徐々に徐々に薄れていっている。

「ははは、そんな見つめるなよ照れるな」
「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

意味のない叫びが親れいむの口から発せられる。

「それがお前さんが凄いと言った地獄鍋だ、まあゆっくりしてってくれ」
「ゆっぐ、ゆっぐさ゛う゛う゛う゛う゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!!」

思わず反射的にゆっくりしていってね! と返そうとしてしまう餡子脳に刻まれた悲しい性だ。
ニヤニヤとした笑みを浮かべたまま青年は親れいむの様を見続ける。
湯気が立ち、皮はふやけ、熱さと子供たちの無邪気なゆっくりする行為で形相は凄まじいことになり、すでに一片のゆっくりも感じられなかった。

そんな親に恨まれ、死にかけている寧ろ死にいざなっていることなんて一ミクロンも感じていない赤ゆっくり達は上の方へ登っていく。
底部のほうは熱く、上は下ほどでもない。
甘いモノを食べつつ、涼しくもなり、一石二鳥であった。

「あ゛っ゛あ゛っ゛あ゛っ゛……」

ボコボコと顔や後頭部にピンポン玉程度の物体が浮かび上がる。
皮の部分は餡子ほど美味しくなく、食べる部分は餡子だけだった、親れいむの顔は面白いほどにボコボコと変形する。
そしてそれは這いまわる。
親れいむの先ほどまでの叫びが嘘のように、その声は弱くなっている。

「ゆ゛あ゛っ゛……」

そして動きまわる赤ゆっくり達は遂に親れいむの中枢餡を食い破った。

「ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛ゆ゛っ゛……」

ゴミの様な知識も、カスの様な経験も、クソの様なそのゆん格すら。
赤ゆっくりが行ったゆっくりするための行為に全て、一瞬にして無に帰した。
今起こっている痙攣は死ぬ直前ではなく、死の痙攣。
人間が持つどんな超絶的な技巧でも万能薬であるオレンジジュースでさえ、避けらない不可避の死。

既に何も残っていない親れいむはただその事実を文字通り空になった頭で感じることなく。
ただその死を受け入れるしかなかった。


「ゆゆ~、ゆっくちちてりゅよぉ~」
「げぴゅ、しょうだじぇ~」
「あみょああみょしゃんおいちきゃったね!」
「まっちゃくにゃんだじぇ!」

四匹は自身達がまさか自分の親を喰らったことすら気付かない。
ただひたすらにゆっくりを求めた結果その体は醜く肥え太っていた。

「ゆゆ! またあちゅくにゃってきたよ!」
「まちゃあみゃあみゃしゃんをたべりぇばいいんだじぇ!」
「しょうだね、ゆっくちできりゅもんにぇ!」
「ゆっへっへ、まりちゃもっちょたべりゅんだじぇ!」

しかし残っているのは熱い下の方の餡子とこびりついた餡子すら舐めた皮しかない。

そして、親れいむの底部には穴が開いていた。

「ゆっ! おみじゅしゃんがでてきちゃよ!」
「ちょうどいいんだじぇ! きょれきゃらまりちゃのしゅーぱぎょーきゅぎょーきゅたいみゅがはじみゃるんだじぇ!」
「れいみゅもおみじゅしゃんぎょーくぎょーくしゅりゅよ!」
「まりちゃしゃまがしゃきにゃんだじぇ!」

次女まりさが勢いよく飛び出し、滲むように出てきた水を飲もうと下を伸ばす。

「ぎょーきゅぎょーあじゅいんだじぇえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

しかしそれは熱かった。
赤ゆっくり程度の舌ではそれこそ灼熱に感じるほどに。

「ゆゆ! あちゅいのはゆっきゅりできにゃいよ! まりしゃこっちきてにぇ!」
「しゃっしゃとにげりゅんだじぇ!」
「ゆっくちにぎぇりゅよ!」
「あじゅぃー! もういりゃじゃーおふちぎゃえりゅー!」

しかし次から次へとこんこんと熱湯は沸く、熱湯は止まらない。

「やめちぇね! ゆっくりできにゃいみじゅしゃんはこっちこにゃいでね!」
「それいじょうこっちきゅるちょ、ぷきゅ~しゅんだじぇ!」
「れいみゅもぷきゅ~しゅるよ!」
「ゆわーん、ゆっくちできにゃいのじぇ! きゃたきをとるんだじぇ!」

もちろん熱湯はその意を返すことは無い。
熱湯は更に溢れだし、赤ゆっくり達の底部を浸すほどににじみ出てきた。

「あじゅい! あじゅい!」
「ぷ、ぷぎゃあぁぁぁぁぁ!! あじゅぃぃぃぃ!! どぼじでぷぎゅーがごわぐないんだじぇえぇえぇぇぇ!!!」
「あ゛づぃ゛ぃぃぃぃぃ!!」
「やべべぇぇぇぇぇ!!」

そして、熱湯から逃げるように跳びはねていたが、すぐに底部は熱湯を吸い取りその底部を動かないほどにふやかす。
最初から逃げ場はなかった。
熱湯は増え続け、底部を、口を目を髪を飾りをどんどん溶かしていった
親ほど耐久力のない赤ゆっくり達はすぐにとはいかないが、そのまま死んでいった。

熱湯につかり末期の言葉も上げられないままに。


「はい、ゆっくり地獄鍋でしたー、とガキどもの声も聞こえなくなったし、中はどうなってんだろう」

親れいむだったものはは、皮を支える餡子と水蒸気によってふやけ切り、奇妙な死に顔を晒していた。
それはとてもゆっくりしているモノではなく、全てを恨むような形相だ。
青年は気にせず、箸を使ってその皮を割いた。

「む、何も無いじゃないか」

そこには何もなく、ただ餡子色に汚れた水と、まりさ種の少しばかり耐水性が高い帽子が半分ほど溶けて残っていただけだった。
やはり水に弱いゆっくりでも、地獄鍋は成立しなかったようだ。








今まで書いたモノ


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anko1097 暗く湿った穴の中
anko1308 すろーりぃな作戦
anko1394 投げた!
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anko1879 飼い(仮)ゆっくり 子れいむ
anko1890 一緒に遊ぼう


13作目です。


暑いです。
ちょっと地獄鍋について調べてみたら、始め知った事実に驚きつつ書きました。

では、最後まで読んでいただけたら幸いです。
最終更新:2010年10月12日 16:09
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