『処分品の愛玩用まりさ』 2KB
不運 ペットショップ 加工場 よろしくおねがいします
初めまして。お手にとって頂きありがとうございます。
絵師さん方のショップ物の作品を見て書いてみたくなりました。
拙い所が多いですが、どうぞ宜しくお願い致します。
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『処分品の愛玩用まりさ』
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まりさは愛玩用のゆっくりとして工場で生まれた。
見た目・性格ともに優れたゆっくりしたゆっくりであった。
工場で育てられたまりさは、親のことを知らないけれども、
自分を店で買ってもらって、人間さんとゆっくりする事は、
大変ゆっくりできる事だと教えられていた。
バレーボールほどの大きさになったまりさは、
いよいよ今日、お店へと出荷される事になっていた。
まりさが詰められた箱には、優れた個体であることを示す、優の文字が書かれていた。
愛玩用のゆっくりは、一体ずつ丁寧に箱に入れて出荷され、
工場からペットショップへと直接配送される。
季節の台風に見舞われて、まりさを積んだトラックは大きく揺れていたが、
一緒に出荷されたゆっくり達の誰もが、自分たちの明るい未来を信じて疑わなかった。
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不幸は荷降ろしの直後に起こった。
お店の倉庫にて、まりさの箱は一番に開封されたのだが、
そのとき、ふいに倉庫のガレージが開かれて、
吹き込んできた強風にお帽子がさらわれてしまったのである。
あっという間に、まりさのお帽子はガレージの向こうへと吸い込まれてしまった。
まりさは慌ててお帽子を追って、暴風雨の吹きすさぶ倉庫の外へと飛び出したが、
すぐに店員に掴まれて、連れ戻されてしまった。
翌日、まりさは「訳あり品・半額」というシールの張られたショーケースに入れられた。
お帽子を失って泥水にまみれたまりさは酷く気落ちしていたが、
それでも人間さんとゆっくりできれば幸せになれると信じていた。
「まりさはまりさだよ!ゆっくりしていってね!!!」
毎日、まりさは自分とゆっくりしてくれる人間さんに振り向いてもらおうと、
出来る限りの満面の笑みを浮かべながら客を迎え続けた。
しかし、半額の値引き品とはいえ、
愛玩用としての飼いゆっくりを買い求めにきた客の中に、
見た目が悪い上にお帽子も無いまりさに目を向ける者はいなかった。
やがて、新しいゆっくりが入荷される折に、
まりさは処分品用のワゴンへと移された。
どんなに声を掛けても見向きもされなかったまりさは、
最初のうちこそ元気があったものの、次第に覇気を失って、衰弱しきってしまっていた。
空になったショーケースには、新しく綺麗なまりさが入れられた。
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ワゴンでは、売れ残ったゆっくり達やがひしめき合っており、
与えられる食事もそれなりの粗末な物になった。
定価の2~3割で売られており、仲間は次々と買われていったが、
1週間ほど経ってもまりさが売れる気配は一向に無かった。
そんなある晩の食事の時間、まりさはワゴンから取り出され、
初めてお店にやってきたときの倉庫に連れてこられた。
倉庫で与えられた特別な夕食は、久しく食べていなかったあまあまで、
まりさは久々に味わうしあわせーの中で、ゆっくりとまどろみの中へと落ちていった。
処分品とはいえ売り場のスペースにも限りがある。
投げ売りの値段でも売れなかった個体は、処分される事になっていた。
実際のところ、汚れているだけでなく、元気もないまりさは、
愛玩用としても、それ以外の用途としても価値がなかったのである。
店員は幸せそうな顔で眠っているまりさを無造作に掴むと、
ミキサーに放り込み、電源を入れた。
最終更新:2010年10月12日 16:19