anko1919 とってもゆっくりできるはずの群れ

・過去作品の登場人物が出ますが読んでなくても大丈夫です。
・いいゆっくり、死なないゆっくりがでます。
・まあ、ありがちのバカらしい話です。余裕のあるときにでもどうぞ。





 とある森の小さなゆっくりの群れ。
 そこで三匹のゆっくりが食料を抱えながら移動している。どうやら狩りの帰りのようだ。

「ゆゆっ!きょうもたいりょうだね!」
「ふふ!そうね!ちぇんのおかげね!とってもとかいはだわ!」
「わかるよー!みんなでしょくりょうのあるばしょを、おしえあったからだよー!」

 お互いの健闘を讃えながら、それぞれのおうちへと移動する三匹。
 一見平和そうに見えるこの群れのゆっくりたち。だが自然界のゆっくりの群れで、無問題などということはほとんどない。一見平和に見えても、知らず知らずの内にゆっくりと問題が表面界していくものなのだ。そう、この群れでもそれは例外ではない。




「ゆう!とうちゃくだわ!ゆふふ!われながらいつみてもとかいはなおうちね!」

 自分のおうちの前へとたどり着くありす。
 このありすは、自身の器用さを生かして、自らのおうち内に様々な家具やベットなどをこしらえることによりゆっくりしていた。
 今日も狩りで疲れたから、とかいはなおうちで存分にゆっくりしよう。
 そう思いながら、笑顔でおうちに入ったありすの顔が凍りつく。

「な、な、な、なんなのおおおおおお!これはああああああああああああ!」

 中の惨状を見て思わず叫び声を上げるありす。
 とかいはにコーディネイトされているはずのありす自慢のおうちが、めちゃくちゃに荒らされていたのだ。
 薄く草を地面に引いたとかいはなカーペットは泥で汚され、丁度いい大きさの石などを組み合わせて作られた、とかいはなテーブルとイスはになぎ倒され、薄い石などを削って作られた食器は叩き割られている。
 そして一番のお気に入りである柔らかい草などを器用に編んで作られ、たふかふかの特性ベットの上では、
 このおうちを荒らした張本人であろうれいむが、大量のよだれをたらしながらグースカと眠りこけていた。
 よだれまみれになったあのベットはもう汚くてとても使い物にならないだろう。

「れ、れ、れ、れいむううううううう!なにやってるのおおおおおおおおおおお!」

 幸せそうなアホ顔で眠っているれいむに向かって、怒りの形相で詰め寄るありす。

「……んあ?…ふあああああああ!」
 れいむは大あくびをしながら目をさますと、いかにも不快といった感じでありすのほうに向き直った。
「ゆ?なんなのありす?れいむはいますーぱーおひるねたいむのとちゅうなんだよ!
 はなしならあとにしてね!まったくありすはゆっくりしてないね!」
 目覚めるなり、訳のわからないことを口走るれいむ。
「ふざけないで!どうしてれいむがありすのおうちで、ゆっくりねているわけ!
 それにこのちらかったおうちのありさまはどういこと!しっかりせつめいしてちょうだい!」
「ゆうなんなの?さっきからうるさいねえ!れいむはねむくなったから、ゆっくりできそうなおうちで、ただゆっくりしたただけだよ!
 わかったらさっさとでていってね!いいかげにしないとれいむおこるよ!」
 さも迷惑そうな口調で言うれいむ。
「ふざけるなああああああああああ!このいなかものがあああああああああ!
 とっととでていけえええええええええええええええ!」
「ゆがべし!」

 怒りの限界を超えたのか、れいむに体当たりをし、無理やり外に追い出すありす。
 普段温厚なこのありすが暴力を振るうなどめったに見ない光景であった。
 つまりそれほど腹に据えかねた事態ということだ。

「ゆううう!なんなのこのゆっくりしてないありすは!ふん!もうにどとここにはこないよ!せいぜいこうかいしてね!」

 無理やり外に追い出されたれいむは見当違いの捨て台詞を吐き、いずこかへ去っていった。
 後に残されたのは、めちゃくちゃに荒らされたおうちと、がっくりとうなだれるありすのみ。
 ありすはすっかり意気消沈してしまい、れいむをこれ以上どうこうする気力が湧かなかった。

「ゆうううう。おうちが…。いっしょうけんめいこーでぃねいとしたありすのおうちが……ゆううう」

 自身の苦労の結晶であるおうちをめちゃくちゃにされたありすは一人涙した。





「ゆゆ?あのれいむたちはなにやってるんだろう?わからないよー!」

 ちぇんが自分のおうちの前にまでやってくると、数匹のれいむたちが集まっているのが目に入った。

「がーつ!がーつ!」
「む~ちゃむ~ちゃ、うっめ!これめっちゃうっめ!」
「ゆふう!みんなでごはんをむしゃむしゃするのは、とってもゆっくりできるね!」

 どうやら集団でごはんを食べているようだ。
 すでに結構な量を食した後のようで、どのれいむも口元に汚らしくごはんのあとが付いており、みな丸々と膨れ上がっている。
 その憎らしい表情で「しあわせー!しあわせー!」を連発する様は、見る人が見ればきっとそれだけでぐちゃぐちゃに叩き潰したくなる欲求へと駆られることだろう。
 もちろんちぇんは同じゆっくりなので、れいむたちの幸せそうな様子を見ただけで殺意が湧いたりしない。
 まあ、一度に大量の食料を食してしまう愚かさと、あの緩みきったマヌケ顔はどうかとも思ったが、それはそれ。
 同じ群れとはいえ自分とは直接係わり合いのないゆっくりのことである。あえてどうこう言うこともないだろうとちぇんは思った。

「わかるよー!たしかにおなかいっぱいたべるのはゆっくりできるんだねー!でもちぇんはもしものときのために、しょくりょうをとっておくよー!」

 そう。確かに沢山食べればそれだけ「しあわせー」になれるかもしれないが、目先のゆっくりに捕らわれて、
 もし何か困ったことが起きたにゆっくりできなくなってしまっては元も子もないのだ。
 ちぇんはもしもの自体を想定して、しっかり食料を備蓄できる優秀なゆっくりだった。

「わかるよー!きょうも、とってきたごはんは、はんぶんはとっておくよー!
 ゆ!!!」

 おうちに入ったちぇんは思わず息を飲む。
 何だろう?荒らされている!?まさか食料は?
 ちぇんは急いで奥にある食料庫を覗き込む。

「ゆああああああああああ!ちぇんがためたしょくりょうがあああああああ!わからないよおおおおおおおおおおおおおお!」

 食料庫に詰まれてあるはずの食料は見事なまでにすっからかんになっていた。
 どうして!いったい誰がこんなことを!
 すぐさまちぇんの脳裏に浮かんだのは外で食料を食いあさっていた、れいむたちのことであった。
 ……まさか!いや、だがしかしそんな非常識なことがありえるのだろうか!?
 ちぇんはおうちを飛び出し、残り僅かとなっている食料を貪っているれいむたちに己の本能のままの疑問をぶつけた。

「れ、れ、れいむ!ひょ、ひょとしてそのしょくりょは、ちぇんのおうちにあったものなの?」

 震える声で尋ねるちぇん。
 しかし質問したはずのちぇんは気づいていた。もしこのれいむたちが、自分のおうちから食料を盗んだ犯人だったとしても、それを認めるはずがなどないということに。
 自分で自分が盗人の犯人だと言う者はいない。
 だがそれでも尋ねずにはいられない。それくらいちぇんは混乱していたのだ。
 そしてれいむからの答えはさらにちぇんを混乱させることになる。

「ゆゆ!そうだよ!とってもおいしかったよ!またたべさせてね!」

 まるで何でもないことかのようにあっさりとそれを認めるれいむたち。
 その顔にはまるで悪びた様子はなく、さも当然といった感じだ。
 
「ゆうううううううう!わからないよおおおおおおおおおお!
 どうして?なんで?ちぇんのためたしょくりょうをおおおおおおおおおおお!」

 何がなんだがわからないちぇんは大声で叫ぶ。
 その様子を見て、眉をしかめるれいむたち。

「ゆ?なんなの?いきなりおおごえだして!
 しょくりょうはまたとってくればいいでしょ!まったくゆっくりしてないちぇんだねえ!」
「ほんとちぇんは、いちにちじゅう、うごきまわっててゆっくりしてないよ!」
「ゆゆ!いこういこう!ゆっくりしてないゆっくりをみてると、こっちまでゆっくりできなくなっちゃうよ!」
 そう言い、そろぞろと移動をはじめるれいむたち。
 
 あまりのことに放心状態のちぇんはそれを追うことはできなかった。
 後に残ったのは、僅かに残されたれいむたちの食いカスと、がっくりとうなだれるちぇんのみ。

「ちぇんが……、ちぇんがいっつしょうけんめいあつめたしょうくりょうが……ゆああああああああああん
 わからないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ちぇんの悲しげな嗚咽が辺りに響き渡った。






「ただいまなんだぜ!」
「ゆゆ!おそいよ!なにしてたの!れいむはおなかぺこぺこだったんだよ!まったくまりさはゆっくりしてないねえ!」

 狩りから帰ってきたばかりのまりさに早速文句を言うつがいのれいむ。
 その様子を見てため息をつくまりさ。れいむが文句を言うことは今にはじまったことではないのでそれはいい。
 今、まりさの頭を悩ましているのは、このつがいのれいむではなく……。

「ゆゆ!まったくだね!おとうさんのとってくるしょくりょうのりょうがすくなくて、れいむははずかしいよ!」
「まったくなさけないね!れいむはゆっくりしてないって、ともだちのれいむにわらわれちゃうよ!」

 親れいむに同調してまりさに文句を垂れているのは、二匹の子ゆっくりであった。
 この子れいむたちは、子ゆっくりとは言ったものの実はほとんど成体に近い体格をしており、実際時期的にはもう巣立ってもいい年頃のゆっくりである。
 それが証拠に、同時期に姉妹として生まれたもう二匹の子まりさたちは、とっくに巣立ちをしており、そのうち一方はもうつがいまでいるのである。
 それなのに一向にこのれいむたちは、独立する気配を見せず、ゆっくりできるからと言っておうちに引きこもりっぱなしだ。
 
「ゆー!おちびちゃん……、もういいかげんおちびちゃんたちもすだちのときなんだよ!いつまでもおうちにこもってないで、
 ゆっくりどくりつしていってね!」

 まりさはもう何度目になるかわからない台詞を子ども達に向かって述べる。

「ゆゆ!なにいってるの!おそとはゆっくりできないよ!」
「そうだよ!それにおそとではねまわるなんてゆっくりできないことしてたら、ともだちのれいむにわらわれちゃうよ!」
「ゆゆーん!おちびちゃんのいうとおりだよ!なんてゆっくりしたおちびちゃんなんでしょう!
 それにくらべてまりさときたら、いちにちじゅうそとをかけずりまわって、まったくゆっくりしてないねえ!
 れいむはとってもはずかしいよ!きんじょのれいむにばかにされちゃうよ!まりさもれいむたちをみならってもっとゆっくりしてね!」
「………ふう」

 これで何度目になるかわからないため息をつくまりさ。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。子どもたちの教育に失敗してしまったのだろうか?
 まりさは別段子れいむと子まりさを差別して育てた覚えはない。
 実際、幼いときにしっかりまりさが運動させたからこそ子れいむたちはかろうじてナスビ型体系になっていないのだ。
 だが次第に成長するにつれ、子まりさはしっかりと現実を見つめ独り立ちしていったのに対して、
 子れいむたちはゆっくりすることのみに重きを置くようになっていってしまった。

 この原因の一つは親れいむが、まりさがいないあいだに子れいむたちだけを甘やかして、ゆっくりすることがいかに重要かを説いていたのが理由である。
 さらに悪いことに、れいむたちのまわりに自分たちと同じような価値観、いわゆるゆっくり至上主義のれいむたちが複数いたことも大きな要因だった。
 さて、このゆっくり至上主義のゆっくりとはなんなのか?それは、好きなときに食べ、好きなときに眠り、好きなだけゆっくりするという
 その名の通り何をおいてもゆっくりすることのみを優先するゆっくりのことである。
 反対に、ゆっくりせずに一日中狩りなどをしたり、目の前の食料をむしゃむしゃせずに保存しておいたりするようなゆっくりは、ゆっくりしてないとして、軽蔑の対象となる。
 今やこの群れのほとんどのれいむは、このゆっくり至上主義に基づく思考をするようになっていた。




「ゆー!おさー!ありすのとかいはなおうちがああああああああ!」
「わからないよおおおおおおおおお!ちぇんのごはんがれいむにいいいいいいいいいい!」
「ゆう、まりさのおちびちゃんがひとりだちしなくてこまってるよ、なんとかならないのおさ!」
「ゆー!れいむのおうたがうるさくて、ろくにねむれないみょん!」
「ゆーん!ありすがいっしょうけんめいつくったべっとさんが、れいむにもってかれちゃったよー!」
「れいむが、すっきりせいげんを、むしして、すっきりしようとしてこまってるんだぜ!もうむれのおちびちゃんのかずもげんかいなのぜ!」
「むっきゅー!れいむたちにはこまったわねえ!どうしたものかしら!」

 泣き付いてくる群れの面々を見て、途方に暮れる長ぱちゅりー。
 冒頭の三匹以外にもさまざまなゆっくりがれいむの被害に合い、長のおうちに詰め掛けていたのだ。
 
 そもそも何故こんな非常識なれいむばかりがこの群れにたくさんいるのだろうか?
 実は別段深い理由はなかったりする。そもそもゆっくりとは基本ゆっくりすることを至上とする生物なのだ。
 おうちをコーディネイトするのも、食料を溜め込むのも、その延長上にゆっくりがあるからこそ苦労してまで行う行為である。
 しかしそれらが何の苦労もせずに手に入るのならば?無論そんな努力や苦労などは行わないだろう。
 初めはちょっとしたことだった。
ちょっと食料を分けてもらう、ちょっと疲れたから他のおうちで休ませてもらう…。
 この群れのゆっくりは、温厚で善良な個体が多かったため、それらを対して気にせず許した…。
 だが、そのことが、もともとあまりできのよくないれいむたちの行為の増長に拍車をかけていってしまった。
 そして結果はごらんのありさまである。

 もはやれいむたちには完全にゆっくり至上主義の観念が根付いてしまっており、ちょっとやそっとのことでは矯正不可能なところまできていた。
 いかにこのゆっくり至上主義が異常な価値観といえども、それを共有するものが複数集まり、お互いを認め合えば、それはもはや異常ではなく常識となる。
 れいむたちにとっての常識はもはやゆっくり至上主義となっていたのだ。
 ときに日常における当たり前の考えをひっくり返すのはとんでもなく困難である。人間ですら地動説と天動説でどれほど揉めたことか…。
 ましてや相手はゆっくりである、もはや説得による相互理解は不可能と思ってよいだろう。

 ならばいっそのこと群れの皆で、力を合わせてれいむたちを無理やり追い出すか?
 長ぱちゅりーはできるならばそれはしたくないと考えていた。
 荒事になれば、いかに能天気なれいむたちでも抵抗するだろう。そうすれば当然こちらにも大量の被害が出る。今やれいむの個体数はこの群れの半数にも及んでいるのだ。
 それになにより、群れの皆だってそんなことはしたくないだろう、上記のようにこの群れのゆっくりたちは基本温厚で善良な個体が多いのだ。
 まあ優柔不断で気弱なだけとも言えるが…。
 だがしかし、れいむたちの被害は日に日に酷くなり、そんな悠長なことを言ってられない状況になりつつある。
 さらにまずいことに、れいむたちがゆっくりできるとして、スッキリ制限を無視し、半ば無理やりスッキリして子作りしまくったために人間との協定の条件である群れのゆっくり数の期定数がオーバーしてしまっているのだ。
 この群れはゆっくりの数を一定数以下に保つことで、人間に自治権と生存権を認められている群れなので、もうすぐやってくる人間の視察までにゆっくりの数を何とかして減らさないと、群れの存亡がヤバイのだ。
 これはいよいよ長として、れいむたちを力ずくで追い出す覚悟を決めるしかないのだろうか?そうぱちゅりーが考えていたそのとき、

「ゆゆ!みんな!いい考えがあるよ!」
 一匹のゆっくりが発言した。
「「「「ゆゆゆ!」」」」
 一斉にそちらに注目する一同。
 そこに居たのは………。






「ゆー!まったく!むれのみんなはちっともゆっくりしてないよ!すこしはれいむたちをみならってほしいよ!」
「まったくだね!おなじゆっくりとしてはずかしいよ!」
「むーちゃ!むーちゃ!しあわせー!」

 群れ内の森の中にて、数匹のれいむが食事をしなが雑談をしている。
 ちなみにこの食料は、近くのおうちの中に落ちていたものを拾ってきたものだ。
 こんなに沢山ある食料を食べずにそのままにしておくなんて、まったくゆっくりしてない。
 だかられいむたちが食べてあげているのだ。

「ほんとうに、むれのゆっくりたちにはこまったものだね!このままじゃれいむたちまでゆっくりできなくなっちゃうよ!」
「そうだね!いちにちじゅうはたらいてばかりで、ちっともゆっくりしてないね!」
「ゆー!これいじょうれいむは、ゆっくりできないれんちゅうといっしょにいるのはいやだよ!」

 れいむたちは、群れのゆっくりたちに対して不満があった。
 
 ふかふかのベッドさんがあったから、ただそこでお昼ねしてゆっくりしてただけなのに、突然起こされてゆっくりできない。
 大量の食料があったから、ただみんなでむしゃむしゃしてゆっくりしてただけなのに、突然怒鳴れらてゆっくりできない。
 親子でお歌を歌ってゆっくりしてただけなのに、うるさいだのおちびちゃんを独立させろなど言われてゆっくりできない。
 すっきりして、かわいいおちびちゃんを作ってゆっくりしようとすれば、人間との協定とかすっきり制限とか言い出してゆっくりできない。
 まったくこの群れの連中と来たらまったくゆっくりできてなくて恥ずかしいったらない。
 うんざりとしているれいむたち。
と、そこへまた新たにれいむがやって来たようだ。

「ゆっくりしていってね!」
「「「ゆっくりしていってね!」」」

 挨拶され、勢いよく返事を返す一同。ゆっくりしていってねの挨拶は、ゆっくりの基本中の基本だ。

「ゆう?どうしたの?なんだがゆっくりしてない顔だね?」
 新たにやってきたれいむが、たむろしていたれいむ達に尋ねる
「ゆう、そうなんだよ!むれのみんながぜんぜんゆっくりしてなくて、れいむたちもおもうぞんぶんゆっくりできないんだよ!」
「まったくだよ!れいむたちは、ただゆっくりしたいだけなのに……」

 さも自分達は被害者です、困ってます、と言った感じでれいむたちが言う。
 というか、れいむたちの中では事実その通りなのだが。
 
「ゆゆ!れいむもそう思ってたんだよ!それでね!とってもゆっくりできるいい考えがあるんだよ!」
「ゆゆ!ほんと!ゆっくりできるの!はやくきかせてね!」

 新たにやってきたれいむの発言に耳を傾ける一同。
 ゆっくりできると聞いては、その話しに反応しないわけにはいかない。
 みなの注目が集まったところで、れいむはおもむろに自分の提案を話し始めた。

「ゆゆっ!あのね、れいむたちのようなゆっくりできるゆっくりだけを集めてこの近くに新しい群れを作るんだよ!
 ゆっくりしているれいむしか居ないんだから、きっととってもゆっくりできるよ!
 それにれいむしか居ないから、れいむたちがゆっくりしているのに文句を言うゆっくりもいなくなるよ!
 ねっ!いい考えでしょ!」

 れいむたちのみで新しく群れを作る。
 それがこのれいむの提案の内容だった。

「ゆー!それはすごくいいかんがえだね!」
「とってもゆっくりできそうだよ!」
「ゆっくり!ゆっくり!」
「そんなすごいことかんがえつくなんて、れいむはてんっさいだね!」

 次々にこの提案に賛同するれいむたち。
 なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろう。
 優秀でゆっくりしている自分たちのみで群れを作れば誰にも邪魔されずゆっくりできるじゃないか。

「ゆゆ!気に入ってもらえたみたいだね!実はもう移住先の群れの場所も見つけてあるんだよ!
 それじゃあ善は急げだよ!みんなにもこのことを知らせてきてね!」
「「「「ゆっくりりかいしたよ!」」」」

 れいむの提案を受け入れ、それぞれ散っていくれいむたち。

 一見すると無謀とすら言えるこの提案を何故あっさりとれいむたちは受け入れたのだろうか?
 れいむたちは、普段自分達が享受しているゆっくりの恩恵が、他のゆっくりあってのものと理解していないのだろうか?
 結論から言うと、まったく理解してなかった。
 れいむたちはあくまで、ゆっくり至上主義のゆっくりであって、他のゆっくりを踏み台にして、
 自身のみが得をしようと考える、いわゆるゲスと呼ばれるタイプのゆっくりとはちょっと毛色が違う。
 れいむたちには、ほかのゆっくりを利用しているという自覚はなかった。
 だから自分たちのみで群れを構成すると、どういう結果になるか想像できないのである。
 まあ、つまり、ありきたりに言えば、このれいむたちの存在はゲスよりも劣るということである。





「ゆゆ!それじゃ出発するよ!みんなれいむの後についてきてね!」
「「「「「ゆー!」」」」」

 それから数日後、れいむたちはゆっくりらしからぬスピードで準備を進め、全てのゆっくり至上主義れいむたちを束ねての大移動がついにはじまった。
 ちなみに群れの他のゆっくりたちは、誰もれいむたちの移動を止めるようには言わなかったそうな。まあ当然であるが。

「ゆひい!ゆひい!つかれたよおう!」
「ゆっくりできないいいいいいい!」
「もうやだ!おうちかえる!」
「みんな頑張って!新天地はすぐそこだよ!そこまで行けば、思う存分ゆっくりできるよ!」

 道中、先頭を進むれいむ以外のれいむは、すぐにへばったり泣き言をいったりしていた所為で、その歩みはとんでもなくゆっくりだった。
 だがしかし、新たなるゆっくりプレイスの存在を糧に、みんななんとか脱落せずに進むことができた。
 そしてついに、森の開けた場所へと到達したのだった。
 実はこの場所、群れからちょっと離れただけの距離にある広場なのだが、そんなことは、めったに狩りをしないれいむたちが気づくはずもない。

「ゆゆ!到着だよ!これからここが新しいゆっくりプレイスだよ!みんなゆっくりしていってね!」
「「「「「ゆっくりしていってね!」」」」」

 新たなゆっくりプレイスを前に、今までだれたり、文句を言っていたれいむたちは、目を希望に輝かせながら勢いよく周囲に散ってく。そして一通り見て回り、満足したれいむたちは、

「「「「「ここをれいむたちのゆっくりぷれいすにするよ!」」」」」

 と、示し合わせたように一斉に宣言した。

 出来た!ついに出来たのだ!とってもゆっくりしているゆっくりれいむだけの群れが!
 この群れには、ゆっくりできないゆっくりなど一匹として存在しない!
 何故なら、全てのゆっくりがゆっくり至上主義であるれいむ種しか存在しないのだ!これほどの好条件が揃っていてゆっくりできなかったら嘘だ!
 そう!この群れはとってもゆっくりできるに違いないのだ!

 ここはまさに地上の楽園!
 この場所にやってきたれいむたちは、自分たちの輝かしいゆっくりした未来を信じて疑っていなかった。



 ……三日後。
 
「どうしてどこにもごはんさんがおいてないのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「どじでどこにもゆっくりできるおうちや、ふかふかなべっどさんがないのおおおおおおおおおおおお!」
「ゆがあああああああ!すっきりするあいてがいないいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 れいむはまったくゆっくりできていなかった。
 お腹が空いたので、お腹一杯むしゃむしゃしようとしたら、どこにもごはんさんが落ちてなくてぜんぜんゆっくりできなかった。
 当たり前である。
 今までれいむたちの周りに大量にあった食料は、群れのゆっくりが必死になって集めていたものだからである。
 一気にバカ食いできるほどの食料が、固まって自然界に落ちているはずがない。

 仕方がないので快適なおうちの快適なベッドさんでお昼ねしようとしたら、おうちはごつごつとしたぜんぜんゆっくりできない洞窟しかなくて、
 当然そこにはベッドや家具の類もなく、ぜんぜんゆっくりできなかった。
 当たり前である。
 今までれいむが勝手に入り込んだり、奪ったりしてきたおうちや、草で編んだベットなどは、全て器用なゆっくりが丁寧に作り上げてきたものである。
 自然界にそんなものが存在するわけがない。

 仕方がないのですっきりしておちびちゃんをつくろうとしたら、つがいがいなくてぜんぜんゆっくりできなかった。
 当たり前である。
 だってこの群れにはれいむしかいないのだから!

「どうなってるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 れいむはここに来てからというもの、まったくゆっくりできていなかった。
 何もかもが上手く行かない。今まで当たり前のように得られていたゆっくりすら得ることができない。
 では他のゆっくりはどうなのか?
 れいむはふとあたりを見回す。その目に飛び込んできたのは自分と同じようにまったくゆっくりできてないゆっくりれいむばかり。
 何なんだこの群れは!ぜんぜんゆっくりできないじゃないか!もうやだ!おうち帰る!

「れいむううううううううううううううう!どこにいるのおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
 れいむをもとのむれまでつれていってねえええええええええ!おねがいだよおおおおおおおおおおおおお!」

 大声で懇願するれいむ。しかしその声に応えるゆっくりはいない。
 れいむたちをここまで先導してきたあのれいむの姿がどこにもいないのだ。

「「「「「うああああああああああああ!ゆっくりできないいいいいいいいいいいいいい!」」」」」

 れいむたちによるとってもゆっくりできるはずの群れにて、れいむたちによるとってもゆっくりできない叫びが虚しくこだました。








「むっきゅう!ありがとうねれいむ!これでにんげんさんとのきょうていをやぶらずにすむわ!」
「わかるよー!れいむはすごいんだねー!」
「これでもうおうちをあらされることもなくなるのね!」
「ゆう!ようやくおちびちゃんたちもひとりだちできたことになるよ!」

 長ぱちゅりーのおうちにて、群れのゆっくりたちが一匹のれいむを囲んでお礼をいっている。

「ゆゆ!みんなやめてね!れいむは大したことはしてないよ!」
 そのれいむとは、もちろんれいむたちを率いて群れまで先導したあのれいむだ。
「むきゅ!そんなことないわ!ほんと、いちじはどうなるかとおもったもの
 あのときのれいむのていあんがなかったらほんとどうなっていたか……」

 長ぱちゅりーが重ねて礼を言う。
 ここで話しは群れのゆっくりが長ぱちゅりーのおうちに詰め寄っていたときにさかのぼる。
 






「ゆゆ!みんな!いい考えがあるよ!」
 一匹のゆっくりが発言した。
「「「「ゆゆゆ!」」」」

 一斉にそちらに注目する一同。
 そこに居たのは一匹のれいむだった。

 このれいむは群れで生まれ育ったれいむではなく、つい最近余所から流れてきたゆっくりだった。
 旅ゆっくりとでも言うのだろうか、このれいむはあっちこっちの群れから群れへと渡り歩いているらしい。
 ある日突然群れにやってきて、「何でも群れの仕事を手伝うよ!だからしばらくれいむを群れに滞在させてね!」と、
 そう言いそのまま群れに住み着いたのだった。
 
 その言葉に嘘はなくれいむはよく働いた。一匹で旅をしながら生きてきただけあって、狩りがなかなか上手く、
 またほかのゆっくりのおうち作りも手伝ったりしていた。
 そして何より子育てが上手かった。子ども達の面倒を積極的に見て、やって良いことと悪いことの区別をしっかり教え、生きるための知恵などをしっかりと叩きこんでいた。
 実際そのれいむの教育を受けた子れいむたちは、きちんと成長し、ゆっくり至上主義には陥っていないのだ。
 流石に既にゆっくり至上主義の価値観にどっぷり浸かっているれいむたちはどうしようもなかったが。
 まあとにかく、はじめは厄介者がやってきたと思っていた長ぱちゅりーも、その様子を見てすぐに考えを改め、れいむを重用するようになっていったのだ。

「れいむにいい考えがあるよ!ここはまかせてね!」

 そのれいむが自信満々に任せてくれと言っている。
 長は期待に目を輝かせながられいむに尋ねる。

「むきゅ!れいむ!なにかいいほうほうがあるの?あのれいむたちのこうどうをやめさせるようなてが?」
「ゆう!現状では残念だけどあのれいむたちを説得する方法はないよ!
 れいむも何とかしようとして、いろいろと話しをしてみたけどあれはもうれいむじゃなくて、でいぶになっているよ!」
「むきゅ!でいぶ?」
 聞きなれない言葉に首を傾げるぱちゅりー。
「でいぶは知らず知らずのうちに他のゆっくりやおちびちゃん、そして自分まで不幸にしてしまうゆっくりのことだよ。
 でも本人たちには悪いことをしている自覚はないんだ。だからどんなに説得してもでいぶには通じないんだよ」
「むきゅきゅ!それじゃどうすればいいの?」
「れいむがでいぶたちを連れて、いったん群れの外に連れ出すよ!このままにしておいたら群れがでいぶたちと一緒に崩壊ちゃうからね!
 それからしばらくそのまま放置して、苦労をさせたら、折を見てれいむが説得に行くよ!」
「むきゅ!それはいいけど、そのでいぶたちを全員連れ出せるかしら?」
 説得が無理ならば、力ずくで追い出すしかないのではないか?いったいどうやってでいぶたちを群れから追い出す気なのだろうか?
「それは任せてね!れいむはでいぶのことをよく知っているよ!
 あ、それと、でいぶたちの移住先は群れの近くにある開けた場所にするから、その場所にしばらくみんな近づかないように言っておいてね!」

 それだけ言うと、れいむは早速行動を開始するため跳ねて行ってしまった。
 そして言葉通り本当に僅か数日で、群れのでいぶたちを近くの広場へと移動させてしまったのだ。
 あれだけ言うことを聞かなかったでいぶたちを、どうやって群れから追い出したのか長ぱちゅりーには全く理解できなかった。
 だが現実として、でいぶの脅威は去り、群れには平和が訪れた。群れ中のゆっくりがもろ手をあげて喜んだのは言うまでもない。
 

 




「ゆひい!ゆひい!ゆっくじできないいいいいいいいい!」

 でいぶたちが群れを作ってから一週間後。ぼろぼろになった一匹のでいぶが森の中をずりずりと這いずり回っていた。
 森を歩くのに慣れていないでいぶは全身擦り傷だらけであり、ろくに食べ物を食べていないため以前の憎々しい丸顔も今では見る影もなく痩せ細っている。
 
「ゆううううう!どうしてでいぶがこんなめに!でいぶはただゆっくしたいだけなのに!」

 新しい群れに移住してから今までの間、でいぶはちっともゆっくりできていなかった。
 何故自分がゆっくりできないのか?それをでいぶが考えることはない。
 ただあの場所に居続けてもゆっくりできるようにはならないことだけは理解できた。
 このままではいけない!とにかくいままで自分がいたあの群れに帰還しなければ!
 そこでまた、れいむだけでもゆっくりと暮らすんだ!
 この際周りのゆっくりできない連中は我慢してやってもいい!だかられいむをゆっくりさせろおおおおおおおお!

「はあ!はあ!ゆ?」

 帰ろうにも帰り道がわからず森をさ迷うしかないでいぶ。しかしそこにふと懐かしい声が聞こえてきた。

「ゆゆっ!きょうもたいりょうだね!」
「そうね!たくさんとれたわね!」
「わかるよー!やっかいごとがなくなったからみんなちょうしがいいんだねー!」

 でいぶの近くを通りかかったのは紛れもなくもとの群れのゆっくりたちだった。
 その姿を見たでいぶは、やった!助かった!と、思った。
 この連中に群れまで案内させればいいのだ、まったくゆっくりできてない奴らだが、こういうときは役に立つ。

「ゆゆ!れいむだよ!ゆっくりしていってね!」

 勢いよく三匹の前に飛び出すでいぶ。
 それを、

「「「……………」」」
 冷ややかな目で見返す三匹。
「ど、どうしたのみんな!れ、れいむだよ!ゆっくりしていってね!それと、れいむをむれまでつれていってね!すぐでいいよ!」

 予想外の反応にややたじろぎながらも、自分の要求をしっかり訴えるでいぶ。

「ゆゆ?でいぶはじぶんたちでむれをつくったんじゃないのぉ?いまさらまりさたちのむれになのようかなぁ?」
 にやにやとしながら、まりさが尋ねる。
「ゆゆ!なにいってるの!れいむはあんなゆっくりできないむれはもうごめんだよ!わかったらさっさともとのむれにあんないしてね!
 そこでまた、れいむがゆっくりしてあげるよ!かんしゃしてね!」
「ふん!いったいなにをいっているのかしらこのいなかものは!ありすたちのむれにはもうでいぶたちのいばしょなんてないわ!
 ゆっくりしてあげる?ふざけないで!そんなにゆっくりしたいのならじぶんたちのむれでおもうぞんぶんゆっくりすればいいでしょ!」
 ありすが怒りの表情で言う。
「ゆゆ!どうしておこるの!れいむはただゆっくりしたいだけだよ!これだからゆっくりできないゆっくりはこまるんだよ!
 ごちゃごちゃいってないで!さっさとむれにつれていってね!れいむおこるよ!」
「わかるよー!やっぱりでいぶにはなにもいってもむだなんだねー!このままついてこられてもやっかいだから、ちょっといたいめにあわせるんだよー!」
 嘲りの表情で言うちぇん。

「な、なんなの…」
 流石に三匹の不穏な空気に気づいたのか一歩後ずさるでいぶ。
 そこへ、
「ちぇんのたべものをかってにたべるでいぶなんかを、むれにいれるわけないでしょ!それくらいわかれよー!」
 ちぇんの体当たりが炸裂した。
「ゆげが!」
 ふっとばされたでいぶに追い討ちをかけるようにありすとまりさが迫る。
「よくもありすのとかいはなおうちを!このいなかものが!いなかものが!」
「ゆげ!ぐげは!いた!どじで!」
「まったくでいぶはとんだごくつぶしなんだぜ!にどとまりさたちのむれにあらわれるんじゃないのぜ!」
「ゆげは!ぐげ!いだい!もうやべてえええええええええ!」

 周りを取り囲み、でいぶをふくろにする三匹。
 流石に殺さないように手加減はしているものの、今までろくすっぽに外にでず、群れでただゆっくりしていただけのでいぶには耐え難い苦痛だった。

「ぎょええばは!ゆぐっじでぎなじいいいいいいいいいいいいいい!」

 苦痛に耐えかね、苦悶の声を上げるでいぶ。
 何故まりさたちは今までと違い、こんなにも攻撃的なのか?
 実は、群れのゆっくりたちの間では、でいぶがいなくなったことにより自分達の暮らしが思っていた以上に快適になったことで、
 でいぶ=悪という共通認識が出来上がっていたのだ。
 そのため群れの外で、でいぶに遭遇したゆっくりたちは、群れまでついてこられないよう、このようにでいぶを痛めつけるようになったのだ。
 無論それには上記の理由のほかに、今までの恨みも多分に含まれていることであろうが…。
 
「ゆひい!ゆひい!どうじで!でいぶはただゆっくりたかっただけなのに!」

 三匹が去ったあと、ズタボロになったでいぶは一人呟く。
 結局このでいぶは、自分が今まで享受してきたゆっくりは、ほかのゆっくりの努力や苦労を横取りして得られたものと気づくことはなかった。
 そして、ボロボロの身体のまま森をさ迷い、二日後ついに空腹と疲労のため永遠にゆっくりした。





「ゆう。どうしてこんなことに…」
 長ぱちゅりーのおうちにて、がっくりとうなだれるれいむ。
「むきゅ!しかたないわ、れいむ」
 そう長ぱちゅりーが慰める。
 れいむは、でいぶたちが全滅してしまったことを気にとめていた。

 れいむは別にでいぶを全滅させる気などなかった。しかるべき期間を置いた後、説得し、群れのみんなに謝るよう言うつもりだったのだ。
 れいむの計画では、でいぶたち自身に身をもって生きるための苦労を経験させることにより、説得をしやすくする手はずだった。そのために自身の経験と照らし合わせて一月ほどでいぶたちを隔離必要があったのだ。
 だがでいぶの予想に反してたったの一週間で、でいぶの群れは崩壊してしまったのだ。
 僅かに群れを脱出したでいぶたちも、とうとう一匹もこの群れにたどり着くことはなかった。
 まあそれは、群れの他のゆっくりが妨害してたからなのだが、とにかくれいむはでいぶを救えなかったことを悔いていた。

「むきゅ!れいむ。なんどもいうけどこれはしかたのないことだとおもうわ!
 このむれにやってくるにんげんさんがぱちぇにいっていたわ!おさになって、むれをおさめるつもりなら、
 すべてのゆっくりをゆっくりさせるのはあきらめろって!
 こんかいのけんもそう!たぶんあのままほうっておいたら、このむれすべてのゆっくりがゆっくりできなくなってたとおもう!
 れいむはでいぶたちをすくえなかったけど、そのかわり、よりおおくの、むれのゆっくりたちをすくったのよ!
 かんしゃしてるわ、れいむ!」
「……そうだね、でいぶの改心は物凄く難しいんだね。それこそ奇跡でも起きない限り…」
 そう言い、出口へと向かって跳ねだすれいむ。
「れいむ!やっぱりこのむれからでていっちゃうの?」
 長ぱちゅりーが尋ねる。
「ゆう!この群れでのれいむの役割は終わったよ。れいむはまたでいぶを探す旅を続けるよ。
 長、おちびちゃんたちの教育をしっかりね!それが群れ全体のゆっくりへと繋がる秘訣だよ!
 それじゃあね!」
 去っていくれいむ。その背中に声をかける長ぱちゅりー。
「ゆっくりしていってね!れいむ!」









「………ふむ、なるほどね」

 男は辺りを見回し呟く。
 男の周りにはそこかしこにゆっくりの死体が転がっていた。
 あるゆっくりは餓死したのか苦悶の表情で干からびており、またあるゆっくりは仲間同士で食らいあったのか身体の一部がかけている。
 その大量のゆっくりの死体の数から推測するに、この場所に小規模な群れがあったことは間違いないだろう。
 寄せ集めのゆっくりたちの群れが出来上がったものの、上手く行かず半ば自爆する形で崩壊する。自然界ではよくあることだ。
 だがこの群れは自然に出来上がったものと断ずるわけにはいかなかった。何故ならば群れの死体がれいむのものしか存在しないのだ。
 れいむだけの群れなど、いや、仮に他のゆっくりだったとしても、単一種族のみで自然に群れが構成されることなど通常ありえない。
 よってこの群れは何か外的な要因によって意図的に作り出された群れと推測することができた。
 
「むきゅ!あの群れの長がいった通りね!」
 男の隣にいたぱちゅりーが周りを見回しながら言う。
「まあ、別に疑ってたわけじゃないけどね。でも一応何があったかしっかり確認しておかないとさ」

 男はここにくるまでに一連の流れを思い出す。
 まずふもとの村の話しでは、ごくごく最近協定を結んでいる群れとは別に、ゆっくりの集まりが目撃されていてた。
 目撃されているゆっくりはれいむのみ。
 次に協定を結んでいる群れの視察では、いつもはゆっくりの期定数はギリギリだったのにどういうわけか、今回に限っては随分数に余裕があった。
 さらにその群れ内にはれいむの姿はほとんど見られなかった。僅かにいるれいむは利発そうな子れいむのみ。
 まあここまでの情報が揃っていれば、何が起こったか推理するのはたやすい。
 恐らくゲス化した迷惑ゆっくりを群れ総出で追い出したのだろうと男は予想していた。

 だがしかし群れの長から聞いた話は、男の予想とは若干の違いがあった。
 なんと、迷惑行為をしていたでいぶたちをまとめて一所に移動させたのは一匹のれいむだという。
 つまり事実上この群れの抱える問題を、このれいむ一匹で解決したこということだ。
 それも一切の暴力行為なしでだ。
 
「なかなどうして、見事な手並みだね。できればそのれいむに会ってみたかったんだがな……」

 男が群れに来たときには、もうそのれいむはどこか別の場所へと旅立った後だという。
 そもそも、もしそのれいむが群れにいなければ、今だ群れはでいぶたちに苦しめられていたはずであり、
 それを男が何とかするというのが今回の話の内容になるはずであったことだろう。
 その意味で、このれいむは人間並みの活躍をしたと言えないこともない。
 
(でいぶを探すれいむか…。面白いね、ちょっとだけ。いつか会うこともあるのかな?)

 そんなことを思いながら、男とぱちゅりーはでいぶたちの墓場であるとってもゆっくりできるはずの群れを後にしたのだった。



                                    おしまい






 以下全然読む必要のない後書き。

 こんな拙い文章を最後までよんでくださってありがとうございました。
 私の話は大体何時も問題のある群れに、人間の男がやってきて事件を解決するというパターンが多かったので、
 今回はゆっくりの問題はゆっくり自身に解決してもらいました。
 たまにはこんな話しがあってもいいかも、内容も短くできましたしね。

 それとこの話しと全然関係ないくはないんですが、コンペ作品に投票してくださった方、読んでくださった方ありがとうございました。
 正直ほかに素晴らしい作品が沢山あったので、部門賞に入賞できるとは思っていませんでした。
 恐らく、二位と三位の方の作品は、他の部門にも投票できるカテゴリーを含んでいたため票が割れたのが原因でしょう。
 総合票では大きく負けていますしね。つまり何が言いたいのかというと、この結果は偶然だったということです。ごめんなさい。
 
 それではまた機会があったときはよろしくお願いします。
 ナナシ。
 



 過去作品
 anko1502 平等なルールの群れ
 anko1617 でいぶの子育て
 anko1705 北のドスさま 前編その1
 anko1706 北のドスさま 前編その2
 anko1765 北のドスさま 後編その1
 anko1766 北のドスさま 後編その2
 anko1845 お飾り殺ゆ事件 前編 事件編
 anko1846 お飾り殺ゆ事件 後編 解決編
最終更新:2010年10月13日 11:15
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。