anko2054 むしさんのあまあまをよこしてね!クワガタver

恐る恐る感想掲示板を覗いたら「れいむの死があっさりしてる」とのご指摘があったので、
れいむ側の水槽の出来事の補完を描いてみました。
色々内容水増ししてみましたが、死因以外はほぼまりさと同じ流れなのであんまり面白くないかもしれません。


















「むーちゃ!むーちゃ!」

まりさに与えられたゆっくりプレイスのほうから幸せそうな声が聞こえてくる。
ケースの壁は透明なので、れいむからも色とりどりのゼリーを頬張る幸せそうなまりさの顔をはっきりと見ることが出来た。

れいむも負けじと、目の前にある橙色のゼリーを口いっぱいに詰め込み、一緒にむーちゃむーちゃする。
オレンジ味だ。そのじんわりとした甘味が舌の上に広がり、ぷるんとした魅惑の食感に思わず震える。
しかもただ美味しいだけではなく、体の内側の傷まで治してくれそうな至高の逸品である。

向こう側でまりさが幸せのあまりのけぞってお決まりの台詞を言おうとしているのが見えた。

ようし、れいむも。

すかさずれいむものけぞり、自分のしあわせーを再確認できるゆっくりワードを叫ぶ。


「「ちあわしぇえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」」

他に音を立てるものもいない、静かな部屋の中に赤ゆ二人の声が騒がしく響いた。

ああ、なんてしあわせーなんだろう。

ゲス親を見捨ててお外を彷徨っているとき、
街のあちこちで人間さんにこれでもかと痛めつけられるゆっくりを見てきた。

いやはや、どいつもこいつもまったくゆっくりできていない無様なゆっくりばかり。
なぜ人間さんごときにあそこまでいいようにされてしまうのか。

その点自分は違う。
今ではあの奴隷は屈服し、ゆっくりプレイスを明け渡した上あまあままで献上している。

おお、おろかおろか。

れいむには、人間さんも、ほかのゆっくり達も、全て自分より劣っているように感じられた。
思い返せば、あのゲスな両親もとことん腰抜けだった。
















ある日、公園さんを散歩していると、白くて冷たそうなあまあまをぺーろぺーろしている人間さんを見つけた。
あまあまはれいむのものなのに、独り占めなんて許せない。

「しょきょにょ、くしょどれい!どうちてれいみゅのあみゃあみゃをかっちぇにたべちぇりゅにょ!?
 ゆっくちしちぇないでしゃっしゃっとしょにょあみゃあみゃをおいてちんでね!いましゅぐでいいょ!」

ああ?、と奴隷が反抗的な眼で見下ろしてくる。

来いよ、糞奴隷。
そのあまあまを捨ててさっさとかかってこいよ!

「おちびちゃぁぁぁぁぁあん!?にんげんさんになにいってるのおおおおおおおおお!?!?」

その様子を見て、血相を変えて親まりさが全力で駆けてきた。

「おちびちゃん、あのあまあまさんはにんげんさんがゆっくりするのをがまんして
 はたらいてもらったおかねさんとひきかえにたべてるんだよ!おちびちゃんのものなんかじゃないよ!
 はやくにんげんさんにごめんなさいしてね!」

「なにいっちぇりゅにょ!?あみゃあみゃはれいみゅのもにょにゃんだよ!びゃきゃにゃにょ!?ちぬの!?」

親の説教に全く耳を貸さず、なおも赤れいむの暴言は止まらない。

「きゃわいいれいみゅはおにゃかがへっちぇりゅんだょ?
 むにょーなくしょおやはしゃっしゃっとしょこのぐじゅをしぇいしゃいしてあみゃあみゃをとりあげちぇね!」

ぴこぴこを振り回すクルクルパーのジェスチャーで執拗に挑発を繰り返している。

これ以上言っても無駄だと判断したのか、親まりさは力を加減して上から赤れいむを抑えつけた。

ゅっぐ!?と赤れいむ喉が低く唸る。これでもう余計なことは言えまい。

慌てて親まりさはいつ我が子を踏み潰そうとしてもおかしくないほどに気分を害した人間さんに謝罪を始める。

「にんげんさんごめんなさい!まりさがおちびちゃんのしつけをしっかりできなかったのがわるいんです!
 おちびちゃんにはしっかりはんせいさせます!いらいらさんがおさまらなかったらまりさがかわりにいたいいたいされます!
 だからどうかおちびちゃんだけはたすけてあげてください!まりさにできることならなんでもします!」

額を地面に擦り付けて懸命に許しを請う親まりさ。

「ゆぅ…!?」

ふいに親まりさのお帽子が宙に浮き、頭上でビッ、ビリビリ、ビリッとゆっくりできない音が響いた。


ぎゅっと眼を瞑り、悲しみを堪える。

いったい何が起きているのか、親まりさはすぐに理解した。


薄目を開けた親まりさの視界をひらひらと舞う黒い布切れが埋め尽くし、
登録情報が削り取られ、すっかり褪色した金バッヂがカチャリと地面に乾いた音を立てた。

「お前の謝りに免じて今回はそれで許してやるよ」

そう言うと、親まりさ達に関心を失くしたのか、その場で軽く伸びをしてアイスを舐めながら人間さんは去っていった。

ただの薄汚い布切れと化した大切なお帽子を涙目になって見つめる親まりさ。
にわかに吹いた風に運ばれ、お帽子は空に散らばっていった。

感傷に浸っている場合ではない。
お帽子と引き換えに守った大切なおちびちゃんをゆっくりさせてあげようと力を緩める。





「ゆぅぅぅぅぅぅ!!くしょじじいのしぇいであみゃあみゃたべられなきゃったでちょぉぉぉぉぉお!!
 ぷきゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううう!!!!!かじゃりのにゃいくしょまんじゅうはしゃっしゃとちねぇぇえええええ!!!」

ホッと胸?を撫で下ろした親まりさに開放された赤れいむは開口一番そうのたまった。



そしてまたある日、赤れいむは公園のベンチに座って弁当を食べているサラリーマンを見つけた。
美味しそうな唐揚げの匂いに思わず涎が出る。
どうして人間さんはごはんさんを独り占めするのか。

ちっともゆっくりできない。

この前の親まりさの説教など全く覚えていないらしく、姉のまりさと一緒にぽいんぽいんと男の前に跳ねていく。


「じじぃぃぃぃいぃい!!はやくしょにょからあげしゃんをおいちぇどっかにいくんだじぇええええ!!」
「きゃわいいれいみゅはとっちぇもおにゃかがへっちぇりゅんだよ?びょーっちょしちぇにゃいでけんっじょうっ!しちぇね!
 いみゃにゃりゃはんぎょりょしでゆりゅちてあげりゅょ!!!」



こめかみにピクピクと怒りじわを寄せた食事中の男は箸を置き、周りを見回す。

座りながら気だるげに足を振り上げたが、
ピカピカの革靴と目の前の不快な餡子玉を交互に見て、うーん…と、悩み始めた。

「ひゃやくしゅりゅんだじぇ、じじい!! おんこうにゃまりしゃしゃまにもげんきゃいがありゅんだじぇ!?」

「まっちゃきゅ、ちゅきゃえにゃいどれいぢゃね!ぐじゅはきりゃいだよ!!」

「なにやってるのおおおおおおおおおおお!?!?!?おちびちゃんたちぃぃぃぃいい!!!!」

親まりさと一緒に公園の草むらでむしさんを探していた親れいむが慌てて跳んで来た。

「にんげんさんにめいわくかけちゃだめだってなんどもいってるでしょおおおおおおおお!!!!
 どうしてそんなにいじきたないことをしちゃうのおおおおおおおお!?!?!?!?」

親れいむは、命の危機に晒されていることに気づかない子供達を大声で叱りつけた。

「うりゅちゃいよびゃびゃあ!!ほきゃのおうちのきょはもっちょおいしいみょにょたべちぇりゅんだじぇ!」

「しょうぢゃよ!にがにがのくさしゃんやむししゃんにゃんてまじゅくちぇたべられにゃいよ!!」

「ちかくのおうちにょありしゅのおきゃあしゃんはさんどいっちさんをさがしてくりゅんだよ!

 とっちぇみょときゃいはにゃあじだったってじまんしちぇちゃんだじぇ!」

「じじいとびゃびゃあがむにょーだきゃりゃ、きゃわりにれいむちょまりしゃがしかちゃにゃくかりをしちぇりゅんだよ!」

一向に話が通じない。
しかし、親れいむは諦めず、眼を閉じて静かに子供達に語りかける。

「いい、おちびちゃんたち。
 ほかのおうちはにんげんさんがかたづけたごみすてばさんのなかからたべものをもってきてるんだよ。
 たしかになまごみさんにはおいしいものもたくさんあるよ。
 だけど、ゆっくりがごみさんをあさるとにんげんさんがきれいにしてるごみすてばさんがめちゃめちゃになっちゃうんだよ。
 そうなるとにんげんさんのおしごとがふえるよ。ゆっくりできなくなるよ。
 ゆっくりできなくなったにんげんさんたちはいつかゆっくりをゆっくりできなくなるようにしちゃうんだよ。」

ゆっくりにしてはできた説教に、男も足を組んで聞き入る。

親れいむはなおも話を続ける。

「くささんやむしさんをむーちゃむーちゃしてもしあわせーにはなれるんだよ。
 それに、こうえんのむしさんやざっそうさんにはにんげんさんもこまってるから、
 むしさんやざっそうさんだけをたべてれば、やさしいにんげんさんなられいむたちにいじわるしたりしないんだよ。
 でもねおちびちゃん、いちどにんげんさんのたべものをたべたあと、ざっそうさんやむしさんをたべれる?」

赤ゆ二匹はぼーっと親れいむの話を聞いていた。
実際のところ、改心したわけではなく二匹の理解能力を遥かに超える説教に固まっているだけだったが。
まぁ、根本的解決にはならないが余計なことを言わなくなってるので結果オーライである。

「たべれないよね、ほんとうはれいむやまりさもおちびちゃんたちにおいしいものをたべさせてあげたいよ。
 だけど、すべてはおちびちゃんのためをおもってのことなんだよ?ゆっくりりかいしてね・・・?」

親れいむはくるりと男の方を向き、ごめんなさいごめんなさいと何度も頭を下げた。

しかし、ただ謝るのでは許してくれないだろう。

そう思った親れいむは、心を鬼にする。
もみあげに力をこめ、めっ!!ともみあげを鞭代わりに思い切り強くわが子を打ちつけた。

「「ゆぴぃぃぃぃぃいぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!!!!!」」

もちろん永遠にゆっくりしない程度に力を加減してはいたが、赤ゆの肌をこれ以上なく強烈な痛みが襲った。
人間でいえば思いっきり平手打ちされるようなものである。

「ごめんなさいにんげんさん、おちびちゃんたちにはしっかりおしおきしました。
 まだイライラさんがおさまらないなられいむがかわりになります。どうかゆるしてあげてください」

ひたすら平身低頭になる親れいむ。

親れいむのもみあげ鞭打でいくらか気が収まったのか、「いいよ、新品の靴汚したくなかったしな」と、
男はカバンと弁当を抱えて反対側のベンチの方へと歩いていった。

「まちぇええええええ!!れいみゅにょかりゃあげえええええええええ!!!!!」
「まつんだじぇじじいいいいいいいいいいいいい!!!」

「まだいうの、このこたちは!!」

舌をだらりと垂れて男の方へ這っていく赤れいむたちを親れいむは再び打ちつけた。



それから、何度も数え切れないぐらいのトラブルがあった。
いくらいってもわがままを繰り返す赤ゆたち。
そのたび親まりさとれいむはひたすら頭を下げた。

一体何が悪かったのか、親まりさとれいむは毎晩頭を悩ませた。

なんのことはない、生まれついてのゲスだっただけである。
犯罪者の親がみんな犯罪者かというとそんなわけはない。
親や環境に関係なく、こういった輩は必ず世に出てくるのだ。


そしてある日、決定的なことが起こった。

公園の茂みの隅に置かれた大きなダンボール。これがこの一家のお家であった。
近くには人間さんのトイレがあるので、強い雨が降っても避難できる絶好のゆっくりプレイスである。

「おちびちゃんたちおきてね!みせたいものがあるよ!」

親れいむがニコニコと子供達をゆさぶる。

「ゅう…?」
「にゃんにゃんだじぇ・・・?まりしゃはまぢゃねみゅちゃいんだじぇ…」

二匹は不愉快そうに眼をゆっくりと開き、母親を見上げる。

母親の額からは緑色の茎が伸び、三つほどの実ゆっくりがゆらゆらと気持ちよさそうに揺れていた。
お飾りはまだ未発達で判別が難しいが、紛れもなくそこに新しい命があった。

「ゆふふ、これでおちびちゃんたちはきょうからおねえさんだね!
 これからはいもうとたちにわらわれないようにしっかりしてね!がんばるんだよ!」

親まりさがにこやかに語りかける。
妹の存在によって姉達の成長を促そうとしたのだ。
幸い、この辺りのゆっくり達は舌が完全に肥えてしまって草や虫などには全く手をつけることがなく、
食糧事情はすこぶるよい。親まりさたちの判断能力は確かだった。



「「…びゃきゃにゃにょ?」」
小さな声がお家の中ではもった。

「…おちびちゃん?」

予想に反した反応に戸惑う親達。




「れいみゅたちじぇんじぇんゆっくちできちぇにゃいにょに、
 どうぢでしょんにゃものちゅくりゅにょおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」

いきなり妹たちをそんなもの呼ばわりする赤れいむ。

「しょいちゅらがいちゃら、あみゃあみゃのとりぶんがへりゅんだじぇ!げしゅないもうちょはさっさとちんでね!」

ぴょいっと先端の実ゆっくりに飛びつく赤まりさ。
茎から無理やり妹を引きちぎり、床の上に投げ出した妹の体に食らいついた。

「うみぇ!こりぇめっちゃうみぇええええええええ!!!」
「れいみゅもちゃべりゅよ!ちあわしぇええええええええええええ!!!!」

みるみるうちに減っていく妹の体。
その光景のおぞましさ、予想の斜め上をクイックターンした狂気じみたわが子の行動に親二匹の動きは止まった。

あっけに取られているうちに、新しい可愛いおちびちゃんの姿は完全に無くなった。
目の前にいるのは、げぷりと醜い音を立てる二匹の悪魔の子である。

「まぢゃまぢゃたりないよ!もうひちょちゅたべりゅね!」
悪魔が親れいむの茎めがけ跳躍した。

「いいかげんにしろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」

パァン!という轟音がお家に響いた。
親れいむがもみあげで目の前のゲスたちをなぎ払ったのだ。

ゲスはお家から二メートルほど吹き飛び、ゆげぇ…!と無様に転がった。
おしおきなどではない。
可愛いわが子を殺した悪魔の息の根を止めるつもりで放った全力の一撃であった。

親まりさと親れいむはのしのしとゆっくりと悪魔へ近づいていく。

「おかあさんたち、まちがってたよ。きっとねはいいゆっくりなんだといままでしんじてたんだよ?」

バチン!

赤れいむのすぐ横の地面を親れいむのもみあげが叩きつけた。

「おとうさんも、じぶんのおぼうしよりもおちびちゃんたちをずっとたいせつにおもってたんだよ」

親まりさが体当たりで二匹をまとめてトイレの壁に叩きつけた。

「でもやっときづいたよ」
「おまえらはかわいいおちびちゃんなんかじゃない、ただのゲスだよ」

「「かわいいおちびちゃんをころしたゲスはゆっくりしてないでさっさとじねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」」

身重のれいむに代わって親まりさが助走を付けた渾身の突進で二匹を吹っ飛ばした。
悪魔は見えなくなるほど遠くへと吹き飛んでいく。

しばらく涙を滲ませて地面を見つめているまりさだったが、
ふいにぽつぽつと冷たい感触がまりさたちの肌にまとわりついてきた。

「ゆう…?あめさんがふってきたよ。れいむ、にんげんさんのトイレにひなんしようね」
「ゆうぅぅ…でもあのあくまたちがしんだかどうかかくにんできてないよ…?」

「あのケガでこのあめさんにあたったらもうながくはないよ!
 れいむはいきのこったおちびちゃんとじぶんのからだをしんぱいしてね!」
「ゆっ、そうだね!」

生存フラグ台詞を口にしながらおトイレへ駆けていく二匹であった。

ちなみにこの二匹と子供たちは二ヶ月ほど後、
公園をお掃除してくれるゆっくりとして近隣の住民に気にいられて拾われ、天命を全うするまでゆっくりできたそうな。















水槽の中で、目を細めて遠くを見つめ物思いにふける赤れいむであったが、ふと我に返った。

ついつい感傷に浸ってしまった。
見捨てた糞親がどこで野垂れ死のうが自分には関係ない話である。

しあわせーを満喫することで昔を振り返る余裕が出てきたのだろうと、ニヤリと口元を下品に歪めた。

「きょにょあみゃあみゃもおいししょうだにぇ!きゃわいいれいみゅがむーちゃむーちゃしちぇあげりゅにぇ!」

目の前の黄色いゼリーを前に舌なめずりをする赤れいむ。
こころなしか、命無きゼリーすら不快そうに見えた。

「むーちゃ!むーちゃ!ちあわしぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

濃厚なバナナの旨みが口に広がり、思わず餌皿の木の上で飛び跳ねてしまう。

「うみぇ!!!これ!めっちゃうめぇえええええええええ!!!」

感動に震え、何度も何度も飛び跳ねる赤れいむ。

まりさの方はお腹いっぱいになって眠ってしまったようだが、
れいむの方は完全にヘブン状態で最高にハイ!であった。


グラリ


「…ゆっ!?」

唐突に餌皿が傾いた。

グラリ、グラリとまるで地震の様な感覚をれいむが襲う。

揺れが収まると、向こう側に二本の牙のようなものが突き出ているのが見えた。
不審に思い、そろーりそろーりと近づくれいむ。

「ゆぴぃいい!!?」

目の前でジャキィ!と牙が交差した。

とっさにバックジャンプで避けるが、ガサガサと牙の持ち主が餌皿の上に這い出してきた。

10センチほどの巨大な昆虫がれいむの視界を支配した。
それは、スマトラヒラタクワガタという、外国産の巨大なヒラタクワガタだ。
「恐怖大王」と言われるほどの気性の荒さ、挟まれれば人間ですらただでは済まない強靭な大アゴを持った化け物である。
しかもペアリング中につがいを挟み殺して隔離飼育されているいわくつきの個体であった。

昼寝を邪魔されて興奮中にあるスマトラヒラタは、さっそく目の前の目障りな物体に攻撃を仕掛けた。

「ゆあああああああああああ!!!!!!」

慌てて餌皿から飛び降りるれいむ。

スマトラヒラタの攻撃は、さっきまでれいむが食べていたゼリーのカップに命中した。

バチンとプラスチックが貫かれる音が水槽に響く。
スマトラヒラタはゼリーカップをぶんぶんと振り回し、壁に向けて放り投げた。

ドッとゆっくりできない衝撃が水槽に伝わる。

スマトラヒラタは、体を持ち上げ、ガチガチと大アゴを交差してれいむに威嚇を続けた。


突然目の前に現れた破壊の権化に震え上がるれいむ。
恐怖のあまり、うんうんとしーしーが同時に漏れ出していた。

振り向くことなく水槽の反対側の餌皿へと一直線に逃亡する。
息も絶え絶えである。
幸い、追撃はなかった。スマトラヒラタはチロチロと筆のような口を出して食事を始めている。

「ゆぅ…ちぬきゃちょおもっちゃよ…」

一息ついたれいむは、新たなゆっくりプレイスで食事を再開した。
木の上には橙色と緑色のゼリーが乗っている。
初めて食べる緑のゼリーはメロン味。そのしあわせーな味に一気にれいむの緊張が緩んだ。

「きょれみょおいちいけど、さっきのきいろいあみゃあみゃはもっちょおいちかったよ…」

好みにあっていたのか、それとも未練があったのか、どうしてもさっきの黄色いゼリーが気になるれいむであった。

しかし、向こうの餌皿の上にはゆっくり出来ないやつが居座り続けていた。

食欲と恐怖、二つの感情がれいむの中で衝突する。

「ゆっ!しょしぇんはむししゃんだよ!れいむがしぇいっしゃいしてあみゃあみゃをむーちゃむーちゃしゅるよ!」

喉もと過ぎればなんとやら。

「しょりょーり!しょりょーり!」

迂回して向こうの餌皿へと接近する。
大胆にもぴょいっと餌皿に飛び乗り、背を向けて食事中のスマトラヒラタにむかって叫んだ。

「しょきょまでだよ!しょにょあみゃあみゃをよこち…ゆびぃいいいいいいいいいいい!?!?!?!?」

驚くほど機敏な動きでスマトラヒラタは反転した。

れいむ聞いてない。

「りぇ、りぇいみゅほんちょうにおこっちゃよ! ぷきゅうううううううううううう!!!!」

必死に威嚇するれいむ。

だがスマトラヒラタはすかさず大アゴを広げた。

「ゆんやあああああああああああああああ!!!いぢゃいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!?
 きゃわいいれいみゅをはなぢでぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」

眼にも止まらぬ動きで間合いを詰め、スマトラヒラタはれいむを挟みあげた。
こめかみの辺りにがっちりと大アゴが食い込む。


「まりしゃあああああああああああ!!!たぢゅけぢぇええええええええええええええ!!!!」
ぶりんぶりんとお尻をふって抵抗するれいむ。
一方でまりさはのんきにすーやすーやしていた。
助けは来ない。現実は非常である。


ちっ、まだ生きてやがったか。

スマトラヒラタは一気に大アゴに力を込めた。





ギッ


キチン質の大アゴが交差して擦れたことで耳障りな音が響いた。
大アゴはれいむの中枢餡の中で劇的な再会を果たしていた。

即死である。

皮一枚で繋がったれいむの下半身が自重でボトリと下に転がり落ち、
土の上でビクンビクンとしばらくの間痙攣し続けていた。

アゴの上に乗っかった不細工なオブジェをうざそうに放り投げるスマトラヒラタ。


ビチャリと水槽の壁にぶつかったそれは、餡子の中に消化中の色とりどりのゼリー片がきらめき、
まるで夜空の花火のような模様を作り上げた。













「ゆう…もうたべらりぇにゃいんだじぇ…」




再び静寂が訪れた部屋の中に、のんきなまりさの寝言が響いた。























過去作

anko2038 むしさんのあまあまをよこしてね!
最終更新:2010年10月06日 19:31
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。