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anko2064 狭間に見た夢

「狭間に見た夢」

羽付きあき

・理不尽物です
・第三者視点です
・いくつかの独自設定を盛り込んでありますご注意を
・視点がコロコロ変わります。ご注意を


・・・子れいむの眼下には煌びやかな街の光が映し出されていた。
イルミネーションが星の様にキラキラと輝き、車のライトが流れる光の河を形作っている。
「ゆゆーんちょっちぇもきらきらしちぇきれいぢゃね!」

感嘆の声を上げる子れいむ。
後ろを振り向けば、フカフカの毛布のベッド、より取り見取りのあまあまの数々。
おうたを歌うステージ。底部に履く「おようふくさん」は子れいむのお気に入りばかりを何十着も用意されていた。
そう、自分は金バッジゆっくりなのだ。
子れいむはクッキーやチョコレート、ケーキなどのあまあまを夢中になって食べた。
「む~しゃむ~しゃ!ちあわちぇー!」
口の周りはチョコやクリームだらけ、幸せだった。はじける様な笑顔を浮かべ、次はステージの上で体をくーねくーねと動かして「おうた」を歌う。

「ゆ~ん♪ゆゆ~ん♪ゆっきゅり~♪ゆっきゅりしちぇいっちぇ~ね~♪」

子れいむは今、幸せだった。
快適な「おうち」頬っぺたが落ちるほどの甘い「あまあま」ふわふわの「べっど」
そして飾りに輝く金バッジ。

「ゆふふ!おちびちゃんとってもゆっくりしてるね!」
「ゆゆ!おきゃあしゃん!ゆっくりしちぇいっちぇね!」
「ゆっくりしていってね!」

親れいむが声をかける。モチモチの小麦粉の肌にしっとりとした砂糖細工の髪、そして皺ひとつない飾りに輝く金バッジ。
子れいむ自慢の母親だ。

「おきゃあしゃんしゅーりしゅーり!」
「すーりすーり!おちびちゃんはこれからずっとゆっくりしたまいにちをおくるんだよ!」
「れいみゅちょっちぇもしあわちぇぢゃよ!」
「れいむもとってもしあわせだよ!」

・・・子れいむはこれから、親れいむに見守られ育ち、同じ金バッジの番いのまりさと「ずっといっしょにゆっくり」して、かわいいかわいい子ゆっくり達を育み、笑顔いっぱいの「家族」と永遠にゆっくりするのだ。ずっと・・・きっとずっと・・・

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・・・不気味な音を立てた風がビュービューと流れていく。
風はまだあまり強くないが、空は鉛色に染まっており、夏のはずなのに不気味なほどの静寂さを醸し出していた。
そう、台風が近づいてきている。
と言っても、明後日やそこらの話だ。まだ雨も降っていないし、ただ曇っているだけである。
この街には曇り空がお似合いではないかと思う。
そう考えるのは私が街ゆっくりに焦点を当てているからだろうか・・・?
いずれにせよ、街は相も変わらず寂しい、荒涼とした感じを醸し出している様に思えた。
羽付きが横を跳ねて追いついてきた。

「羽付き、もうすぐ台風だけど"おうち"に居なくていいのかい?」
「まだほんかくてきになるのはさきのはなしだぜ。それに」
「それに?」
「たいふうやふぶきみたいなひのまえは、まりさのおうちによくくるんだぜ。あぶれたゆっくりが・・・」
「じゃあ尚更戻った方がいいんじゃないか?」
「いまもどってるところなんだぜ」
「え?」
「このさきのろじうらにまりさのおうちがあるんだぜ」

私と羽付きは今にも落ちてきそうな曇天の下を歩く。
風はただ不気味に、そして寂しく音を立てて流れていくだけだった。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

こじんまりとした路地裏に、ひと際立派なダンボール箱がある。
ビニールシートをかぶせ、大きさがバスケットボールサイズのゆっくりなら3~4体は入れそうな程の大きさだ。

「ここが羽付きの?」
「いつつめのおうちだぜ」
「五つ目?」
「そうだぜ。このきせつとつぜんあめとかがふってきたりとか、いらいをうけたところがとおかったりしたときになんこかおうちをてんざいさせてあるんだぜ」
「でも、勝手に住み着かれたりしないのか?」
「かってにすみついてもらったほうがけっこうなんだぜ。かってにおそうじをしたりしてくれるからわりかしべんりなんだぜ」

・・・羽付きはどうやら全部で10個近くの「おうち」を持っていると言う。
街の各所に点在しているそれらを使って長丁場の依頼や地域ゆっくりの一時的な避難場所の提供等に羽付きは使っていると言う。
重要な所は普段は地域ゆっくりの住まいとして提供しており、それ以外の所は勝手に街ゆっくりに住み着かせていると言う。
街ゆっくりの最重要物資である食料等はおいていないので勝手に食い荒らされる心配は無いと言う。
また、羽付きがよく使用している「おうち」は食料も相当数貯めているが、南京錠を使った簡易的かつ堅牢な「きんこ」を作っており、破られる心配は無いと言う。

・・・羽付きの「おうち」の前に二体のゆっくりがいる。
先客だろうか?パッと見た限り地域ゆっくりと言った感じではなさそうだ。
「先客がいるね」
「れいむのおやこかぜ・・・」

羽付きと私は少し近づいて様子を伺う。
バスケットボール大のれいむと、ソフトボールほどの子れいむ。合わせて二体の様だ。
風貌は汚く、ボロボロの飾りと砂糖細工の髪、いくつか擦り切れて駆けているリボンは街ゆっくりと言う事を否応なしに現していた。
煤や泥にまみれた小麦粉の皮は生傷だらけで、底部に近づくにつれ多くなっていく。底部も真っ黒くカチカチになっているようだ。

「ゆゆー!ちょっちぇもすてきなおうちがありゅよ!おきゃあしゃん!ここをおうちにしちゃいよ!」
「・・・ここはほかにすんでるゆっくりがいるよ。でもたいふうさんがどこかへいくまでちょっとだけやすませてもらおうね」

どうやら先ほどここを見つけたようだ。
恐らく食料も住処も持っていないれいむなのだろう。
こんな天気にまで外に出ていると言う事は「おうち」を探しながら食料をあてどなく探して街をふらついていたのだろう。

「じゃあ、なかでゆっくりやすもうね」
「ゆっくりわかっちゃよ!」

親れいむがビニールシートを捲った時に、羽付きが飛び出した。
「かってにはいってもらっちゃこまるんだぜ」
「「ゆゆ!?」」
驚くれいむ親子をしり目に羽付きが意にも介さず淡々としゃべる。
「ここはまりさのおうちなんだぜ。あまやどりならおうちのなかにまではいらなくてもこのろじうらならあめもかぜもはいらないんだぜ」

「ゆ!?れいみゅゆっくりやしゅみちゃいよ!いじわりゅしにゃいぢぇいれちぇね!」
「ゆゆう・・・しかたないよ・・・おちびちゃん・・・」
食らい下がる子れいむを宥める親れいむ。
グズっていた子れいむも親れいむが粘り強く宥めてようやく落ち着いた様だ。

「そこにすきまがあるからねるときはそこにすればいいぜ。あとこれからにんげんさんがくるけどべつにまりさやれいむたちにはなにもしないからほっといてもらってけっこうなんだぜ」
「ゆっくりわかったよ」

私が近付いて行くと、少しおびえた表情をした物の、そこまでの事だった。
ビールケースなどが積まれたその隙間に、すっぽりと体を押し込め、じっとしているれいむ親子を見ずに、羽付きは帽子の中から一口ゼリーやアーモンドチョコ等を取り出すと、黙々と食べ始めた。
「む~しゃむ~しゃ・・・」
「ゆうう・・・」
「おいししょうぢゃよ・・・」

それを見ていた親れいむが恐る恐る羽付きに話しかける。
「ま、まりさ!」
「なにかぜ?」
・・・羽付きが目玉だけを動かしてれいむを見据える。

「その・・・ち、ちょっとだけでいいかられいむたちにもわけてほしいよ!」
羽付きの動きがとまった。それをYESと見たのか親れいむが捲し立てるように話す。
「れいむたちはゆっくりできないにんげんさんにおうちをこわされてからずっとゆっくりできないせいかつをしていえるんだよ!」
「だからなんだぜ?」
「ご、ごはんさんもあんまりたべられないでおちびちゃんもおなかをすかせてるよ!れいむがだめならせめておちびちゃんにごはんさんをちょうだいね!」
「いやにきまってるんだぜ」
「ゆ・・・ほんのちょっとでいいから・・・ち、ちょうだいね!」
「いやっていってるのがきこえないのかぜ!!」
「ゆぅ!?」

羽付きが声を荒げてどなりつけた。
ビクリと小麦粉の体を震わせてれいむがひるむ。

「まりさはじぶんがかわいそうとかいってだれかからなにかをもらおうとするゆっくりがだいっきらいなんだぜ!かわいそうなのはおまえのせいだぜ!じごうじとくのぐずになさけをかけてやるほどまりさもよゆうはないんだぜ!」
「ゆびぇえええん!きょわいよぉぉ!」
・・・羽付きの声に驚いた子れいむが泣きだしている。
親れいむそれを見て子れいむに寄り添い、すーりすーりで宥めている。
「おちびちゃんだいじょうだよ!こわくないよ!すーりすーり!」
「ゆぇええええん!ゆびぇぇええええん!!」

羽付きはその光景を冷めた目で見ながら、帽子をかぶり直している。

「言いすぎじゃないか?」
「にんげんさんはあまいんだぜ。どこかのゆっくりのえさばをしらずにかりをしてるとかならまりさだってごはんさんはあげるけど、こんなやつらにやってたらきりがないんだぜ」
「悪いゆっくりには見えないけどなぁ」
「ゆっくりにいいわるいがあるとすればそれはかいゆっくりだけだぜ。まりさたちはまちゆっくり、そもそもがわるいというぜんていにいるんだぜ」
「しかし泣きやまなかったらうるさくって仕方がないんじゃないかい?」

私がれいむ親子に目を向ける。火がついた様に泣き喚く子れいむを必死になだめるれいむであったがあまり意味は無い様だ。

「ゆびぇええええん!おなかすいちゃよぉぉおおお!どぼじぢぇえええ!?れいみゅたちにゃにもわりゅきょちょしちぇにゃいにょにいいいい!きょんなにょっちぇないよおおおおお!」
「おちびちゃんゆっくりなきやんでね!すーりすーり!」
「どぼじじぇきんばっじのれいみゅちょおきゃあしゃんぎゃきょんなゆっきゅりきにゃいにょおおおおおお!?」
「おちびちゃん!きんばっじでもゆっくりできないときがあるんだよ!?」
「ゆえええええん!きんばっじさんはいつになっちゃらもらえりゅにょおおおお!?」
「おちびちゃんがゆっくりしたゆっくりになったらだよ!だからなきやんでね!ゆっくりしていってね!」
「ゆびえええええええええん!」

・・・ダメだ。キリがない。
私はバッグの中から板チョコレートを取り出し、小さく割るとれいむ親子の方に投げつけた。

「ゆ?」
「ゆっく・・・ひっく・・・ゆゆぅ・・・?」
「お腹がすいてるから泣くんだよ。それ食べていいよ」

・・・途端に親子れいむの顔が明るくなる。
何度も親れいむがお礼を言って、子れいむが貪る様に食べている。

「ゆっくりありがとうね!おにーさん!」
「はふっ!むしゃむしゃ!はぐっ!しあわしぇええええ!!おにーさんゆっきゅりありがちょう!」
「でも、あげるのはこれっきりだからね?」
「「ゆっくりわかったよ!」」

先ほどとは打って変わって明るくなったれいむ親子を見ると、私は再び羽付きの方へと歩んでいった。
「いただけないんだぜ。にんげんさん」
「いいじゃないか、うるくなくなっただけでもさ」
「・・・ゆぅ」
「それにしても金バッジとか言ってたね。あのれいむ親子」
「ふいてるだけだぜ。きっとほんとうのきんばっじならまちゆっくりになるはずないんだぜ・・・ほんとうにゆっくりしていれば・・・」
羽付きの表情が曇った。すぐに帽子の唾を下げたため表情が隠れてしまったが、何か嫌な事でも思い出したかのように私は見えた。

「おにーさん!ゆっくりしていってね!」
「ゆっくちしちぇいっちぇね!」
私が振り返るとそこにはれいむ親子が近付いていた。
「ああ、別にいいよ」
「おにーさんはとってもゆっくりできるね!」
「れいみゅきょんにゃおいしいあみゃあみゃをたべちゃのはじめちぇぢゃよ!」
「所で、さっき金バッジがどうのこうのって言ってたけど、れいむ達は金バッジだったのかい?」
「ゆぅ・・・」
・・・れいむが口をもごもごとさせている。
半面、子れいむの方は明朗快活に答えている。
「そうぢゃよ!おきゃあしゃんはきんばっじのゆっきゅりだっちゃっちぇいっちぇちゃよ!だきゃられいみゅもきんばっじのゆっくりになりゅんぢゃよ!」
「ゆ・・・おちびちゃん・・・」
「きんばっじになればとっちぇもゆっきゅりできりゅんぢゃよ!れいみゅがあとちょっとおおきくなっちゃらおきゃあしゃんもきんばっじになっちぇゆっきゅりできりゅっちぇいっちぇちゃよ」
「へぇ・・・金バッジにねぇ」
「おにーさん・・・」

れいむの顔が焦りに陰る。
・・・都合の良い方便に金バッジを使ったと言う事はありありとわかった。
羽付きもウンザリと言った顔をしている。
目をキラキラと輝かせて輝かしい未来を信じている子れいむに、私はこう言った。

「凄いね。きっと金バッジになれるよ・・・ゆっくりしたね」
「ゆ!おにーしゃんありがちょうね!」
「・・・おちびちゃん。ごはんさんをたべたらあんまりうごかないようにしようね。きょうはもうねようね」
「ゆ!?でみょ・・・」
「寝た方がいいよ、疲れてるんだろう?」
「ゆゆ!しょうじゃね!ゆっきゅりちゅーやちゅーやしゅりゅよ!」
「・・・じゃあ、しっかりれいむにくっついてね」
「ゆゆ!わかっちゃよ!」

・・・この子れいむの信じている未来が来る事は、おそらく永遠にないだろう。
羽付きも怒りを込めて目でれいむを見ていた。
私も正直言ってkのれいむのしている事に感心しない。
何時かウソもばれる日が来るだろう。その時はどうするのだろうか・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「すーやすーや・・・」
「ちゅーやちゅーや・・・」

15分もするとすぐにれいむ親子は小麦粉の皮を寄せ合って眠り始めた。
・・・寝顔だけは金バッジ級だ。

「このれいむ親子はどうなるんだろうな・・・」
「さあ・・・まりさにはかんけいないことだぜ」
「この子れいむは金バッジを何かよく知らないで信じ込んでる節があるなぁ・・・かわいそうに」
「・・・きんばっじなんてあのれいむがおもってるほどいいものじゃないんだぜ」
「だろうね」

・・・羽付きの顔が曇る。
きっと何かを思い出しているのだろう。
だがそれを聞く勇気は私には無かった。
そう考えていると、微かに遠くでゆっくりの悲鳴が聞こえた。「ゆんやあ」と
それを聞いて羽付きが急いで「おうち」から飛び出す。

「すぐにここをはなれるんだぜ!」
「なんでだい?」
「かこうじょだぜ。いっせいほかくにきたんだぜ!」
「何だって!?」
「はやく!はやくいくんだぜ!」
「でももう表には・・・」

そう、私と一緒に居ても羽付きは「街ゆっくり」
見つかればつかまってしまうだろう。しかも、すぐそこまで来ている。
そう考えた私の考えを見抜く様に、羽付きが帽子の中から、ほんの少しだけ鈍く光る金色の丸い何かを取り出した。

「まりさはだいじょうぶだぜ!きんばっじをこうやってつけたら・・・」
「よかった!じゃあ・・・」
「はやくいくんだぜ!」
「ちょっとまって!れいむ達は!?」
「・・・ざんねんだけどおいていくんだぜ。それに、もうばっじのよびはないんだぜ」
「・・・!・・・しょうがないか」

・・・私と羽付きは路地裏を一気に飛び出した。
表では袋に詰められて泣き叫び、苦しむ街ゆっくりがそこらかしこに現れている。

わがらないよぉぉぉ!!らんじゃまああああ!」
「むぎゅううう・・・!ぐるじぃぃ・・・えれえれ・・・!」
「どがいばっ!どがいばあああ!までぃざあああああ!」
「でいぶうううう!おぢびぢゃああああん!にげっ!にげるんだぜえええええ!」

棒の先にフックを付けた物を持ってゆっくりを引っかけて捕まえる加工所職員達。
路地裏から飛び出した、私と羽付きを一瞥するが、すぐに路地裏へと通り過ぎて行った。
あのれいむ達は・・・私と羽付きが振り返り、れいむ親子のいた場所を眺める。
未だすーやすーやと眠り続けていたれいむ親子だったが、表の騒音にようやく目覚めたようだ。

「ゆゆ!?」
「ゆぅ・・・おきゃあしゃんどうしちゃの・・・?」
「・・・そとのようすがおかしいよ!おちびちゃん!いますぐいどうするよ!」
「ゆ・・・ゆっくりかわっちゃよ!」

・・・親れいむの只ならぬ様子に感ずいたのか、素直に言う事を聞いて隙間から飛び出すれいむ親子、だがその目前に、加工所職員がいた。
「ゆううううう!おちびちゃん!いそいでにげてねっ!」
「ゆ!ゆ!」

足元を掻い潜って逃げようと跳ねた親れいむの小麦粉の顔がゆがんだ。
その瞬間、凄まじい勢いで蹴っ飛ばされ、壁面に叩きつけられる。

「ゆげぇっ!」
「おぎゃあじゃああああああああん!?」
「おぢびぢゃ・・・にげ・・・ゆぐぇっ!」

跳ね寄る子れいむに逃げろと言う親れいむ、だが言葉半ばに加工所職員がれいむの底部辺りを思いっきり踏みつけた。
ゴボリと口か餡子が吐き出される。

「ゆげぼっ!ゆごぼっ!おぢびぢゃん・・・!おでがい・・・にげっ・・・ゆぐぉおっ!」
「おぎゃあじゃん!おぎゃあじゃああああん!ゆっぎゅりじじぇええええええ!」

親れいむが再び踏みつけを食らう。
勢いよく転がって、地面に這いつくばりながら、せき込み、餡子を吐き出した。
「ゆぐっ・・・!ゆげぇぇぇぇええええ…!ゆげぼっ・・・!ゆご・・・お”ぅ”げえ”え”え”え”え”・・・!」
ビチャビチャと餡子と砂糖水が吐瀉物のごとく口からダラダラと流れ出る。

「おきゃあしゃんをゆっきゅちいじめにゃいぢぇね!れいみゅおきょりゅよ!」
「ゆげっ・・・!げぇっ・・・!お、おぢびぢゃん・・・!」
・・・加工所職員の目の前に立ち、大きく膨らみピコピコを激しくふって威嚇する子れいむ。
加工所職員がひきつった笑みを浮かべると、棒の柄で、子れいむを突こうとした。
その刹那、親れいむが背中を向けて子れいむをかばい、柄の棒での突きを受けた。
ゴチッと音がしてれいむの後部に棒の柄がめり込む。

「ゆぐっ・・・ゆぐぅぅぅっ!」
「おぎゃあじゃん!?」
「おぢびぢゃん・・・は・・・れいむ・・・が・・・まも・・・まもるよ・・・!」

加工所職員が棒の柄で何度も何度もれいむを突き続ける。
そのたびにれいむは屈んで子れいむを守り続けた。

「ゆぐっ!ゆがっ!ゆぎっ!」
「おぎゃあじゃんぼうやべぢぇ!おぎゃあじゃんすっぎょきゅいちゃがっちぇりゅよ!?」
「ゆっぐぅ!べいぎ・・・!だよ・・・!おぢびぢゃん・・・は・・・!れいぶが・・・れいぶが・・・!まもるがらねっ・・・!ゆぐぇっ!」

・・何度突いても屈んで耐え続けるれいむに業を煮やしたのか、フックで引っかけると、こちらに引っ張ってこようとする。
「おぢびぢゃんっ・・・!れいぶのおぐぢのながにばいっでね・・・!ゆぎっ・・・!」
「ゆ!ゆっくりわかっちゃよ!」

・・・ここからではそこまでしか見えなかった。
恐らくフックで引っ掛けられて袋に詰め込まれてしまったのだろう。
加工所職員が路地裏から出てきた時には、れいむ親子が入っていたであろう袋がグネグネと蠢いているのを私は見た。
あっという間に加工所の捕獲は終わった。
後に残ったのは隠れて無事だった子ゆっくり達や赤ゆっくり達の親ゆっくりを呼ぶ慟哭。
そして破壊された「おうち」の数々。
まだこの子ゆっくり達はまだマシな方だろう。
捕まったゆっくり達は明日までのゆん生なのだから・・・
羽付きと私は、ただその光景を眺めている事しかできなかった。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「ゆうー!」
「ゆゆ!」

子れいむ達の目の前に広がっていたのは、まさしく「ゆっくりプレイス」ともいうべきものだった。
どこかの大きなビルの上の階なのだろう。絶景が子れいむ達の眼下に広がっている。

あの後、親切な人間さんが子れいむ達を助け出してくれたのだ。
一目見て金バッジのゆっくりだとわかったと言う。
そしてけがをした親れいむを治療してくれた。
小麦粉を水で溶いた物をハケで塗ってくれて、すっかり子れいむを守るために受けた傷は治ってしまった。
すっかり元気になった親れいむを見て、何故か子れいむは涙が止まらなかった。
そんな子れいむを見て人間さんは、チョコレートをお皿一杯に持ってきてこう言ってくれた。
「お腹がすいてるから泣くんだよ・・・それ食べていいよ」
にっこりとほほ笑む人間さんを見て、お礼を言いながら、チョコレートをほおばった。今まで食べた事のない様な味だった。
・・・そして子れいむ達は汚れを洗って綺麗にしてもらった後は「おようふく」を着せてもらったのだ。

「とっても似合ってるよ」
そうほほ笑む人間さんに親れいむと子れいむはこう言った
「「にんげんさん!ゆっくりありがとうね!!」」

そう、子れいむは今、幸せだった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おぎゃあじゃああああああああああああん!!」
「おぢびぢゃんっ・・・!おぢびぢゃぁぁんっ・・・!」

・・・捕まった後、れいむ親子はトラックに載せられ、「加工所」に入れられた。
餡子脳の奥深くに刻まれているのだ。加工所はとてもゆっくりできないものだと。
戦々恐々とする親子れいむは、せまくるしい籠の中に入れられ、一夜を明かした。
怖がりながらも小麦粉の皮を寄せ合って寝た。親れいむの温もりだけが子れいむを包み込む優しい祐樹だった。
・・・それが最後の親れいむの温もりとなる事も知らずに

そして今、籠から親れいむが引っ張り出されようとしている。
何とか食らいついていたが、とうとう引っ張り出されてしまった。
加工所の職員にピコピコを掴まれて連れて行かれる時に、親れいむはひたすら子れいむに語りかけていた。
「おちびちゃんっ!れいむがいなくなってもつよくてゆっくりしたゆっくりになってねっ!まけないでっ!まけないでねっ!おちびちゃんんんんんっ…!」
「おぎゃあじゃんっ!おぎゃあじゃんっ!!おぎゃあじゃあああああん!!」
・・・そして、扉がバタンと大きく音を立てて閉められた。
子れいむは、それ以降親れいむを見ていない。

そして今子れいむは真っ暗やみの狭い狭い「箱」の中に居る。
何もない、本当に何もないところだ。
・・・餌だけはほんの少しだけ毎日小さな窓からポロリと落ちてくる。
食にこまる事は無かった。だが子れいむは「しあわせー」と叫べない。親れいむがいないから・・・
今日も子れいむは夢を見る。儚い夢だ。
あの羽根のついたまりさの横にいた人間さんが助けだしてくれる夢。
その中で、子れいむは全てを手に入れる。金バッジをくれて、あまあまも、親れいむも、「おようふく」も・・・
淀みゆく空虚な思考の「ゆっくりプレイス」の中で、子れいむは今日も夢を見る。
たとえそれが叶う事のない夢だとしても

ここには真っ暗で狭くて、冷たくて、本当に、何も、無い。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

夏の夕暮れが全てをオレンジ色に染め上げていく。
台風は去り、再び夏はうだるほどに太陽を照らしつける。
私は、夕暮れの街に居た。

あの後、羽付きは「おうち」を転々と変えて街にいる。
時にはバッジを付けて、時には「かざり」を変えて・・・
少なくとも羽付きが捕まる事は無いだろう。
私はなぜかそう確信していた。
・・・あの親子れいむの事を何故かよく思い出す。
金バッジの事を何も知らず、あるはずのない空虚な未来を信じていたあの子れいむは幸せだったのだろうか?
本当のあの親れいむは金バッジだったのだろうか・・・
全てをする術はもうどこにも無かった。

日はまた沈み、また昇っていく。
昨日もまた、明日もまた・・・
あの子れいむにも親れいむにも太陽は光を照らし続けてくれるだろう。
きっと・・・ずっと・・・
最終更新:2010年10月13日 11:33
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