anko2057 夏のゆっくり先生

・駄文長文詰め込みすぎ注意。
・愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。
・希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。あたま悪いです。
・そしてガチのHENTAIです。どうしようもないです。
・それでもいいという方はゆっくりどうぞ。


 妙な寝心地のよさに目を覚ますと、そこは見慣れた天井だった。
 カーテンの隙間からは朝の光が入り込み、部屋を照らしている。

「ん……ゆぴぃ……すぴぃ……」

 そして横からくる規則正しい寝息が、俺の耳をくすぐっていた。
 ついでに、わき腹の辺りに感じる柔らかな弾力。
 押しつけられてちょっと潰れているのか、ぷにぷにと押し返してくる感じがまた気持ちいい。

「いや、そうじゃなくてだな」

 自分に突っ込みつつ、ため息をつく。
 まただ。また侵入を許してしまった。
 しかもこの感触は明らかに……。
 まあ、済んでしまったことは仕方ない。
 ここは毅然と注意しなくちゃな。

「……ゆかりん姉ちゃん?」
「ん~……? なに、弟ちゃん……?」

 俺の声に、ゆかりん姉ちゃんが眠そうに瞼をあげる。

「なんで俺の布団に入っているのかな? 俺言ったよね、一緒に寝るのは構わないから、ちゃんと承諾は取ってくれって」
「承諾は取ったわよ……『お姉ちゃん添い寝するけどいい?』って言ったら、弟ちゃん頷いてくれたもの」
「普通寝ている時の反応はノーカンだと思いませんか?」
「なによぉ……? そんなこと言って、弟ちゃんも悦んでるクセに……」

 ゆかりん姉ちゃんの手が、いきなり俺のオンバシラを握った。

「ぶはっ!? 待て姉ちゃん、そこ握っちゃ駄目だろっ!?」
「ほら、こんなに大きくなってる……弟ちゃんは素直じゃないわねー」
「それは朝の生理的な反応だよ姉ちゃんっ!?」

 八割くらいは姉ちゃんからの刺激だけどそれはそれだ。

「だいたい、なんで潜り込んでるんだよ……俺、部屋の鍵かえてたはずだぞ?」
「夜中トイレに起きたら、弟ちゃんどうしてるかなーって気になって……スキマ移動してきちゃった」

 てへ、と上目遣いに微笑むゆかりん姉ちゃん。
 いや可愛いんだけど、そしてそんな姿でそんな顔されると注意しなきゃって気勢もそがれるんだけどっ。

「だ、だったらせめて服は着ろよっ! なんで全裸なんだよ!?」
「私が裸にならなきゃ用を足せないの、弟ちゃんも知ってるでしょ?」
「ここに来るまでに! 服を着ろと! 言ってるんだよ!」
「うまれたままのお姉ちゃんを感じてもらいたかったんだもの」
「姉ちゃん産まれた時から服着てるでしょおおおおお!」

 胴付きゆっくりにとって服はお飾りみたいなもの。
 だから産まれた時から身に付けているし、破れたり奪われたりしても時間が経てばまた生成されるとえーりん姉さんは言っていた。
 ちなみに胴なしも、お飾りは再生すると教えてやれば、時間はかかるが再生成されることがあるそうだ。
 もっとも、大抵は再生成する前に『ゆっくり出来ないゆっくり』として制裁されてしまうのだが。

「それはそれ、これはこれよ」

 きっぱり言い切って、ゆかりん姉ちゃんは微笑みつつ俺に身体を押しつけてきた。
 姉ちゃん達の中では一番控えめとは言え、十二分なボリュームの胸が柔らかく潰れる。

「いや言ってる意味わかんねえから」
「とにかく、こんなになってたら苦しいでしょ? 弟ちゃんさえ良ければ、私がすっきりーさせてあげるけど……?」

 オンバシラにぎにぎ。
 うぅ……いつものことながら、ゆかりん姉ちゃんの指めっちゃ気持ちいい……。
 そりゃそうだよな、ゆっくりなんだから。
 あのもちもち感触の皮に包まれた手指は、それだけで下手な人間と本番するより気持ちいい『甘手』らしいし。
 ソースはネットなんで本当なのかは知らないが、少なくとも俺の五人組よりは気持ちいいからな。
 とはいえ、このまま流される訳にはいかない。
 俺達は姉弟なのだから。

「朝からそんな爛れた関係になるのは良くないと思います!」
「なによ……嫌なの?」
「嫌じゃないけど! それはそれとして自重しようよ姉ちゃんっ!」

 こういう流れでいっちゃうのはあんまり宜しくないと思うんだ、これからの姉弟関係的に考えて!
 姉ちゃん達オカズにしてる俺が言う事じゃないの判ってるけど!

「……しょうがないわね」

 ため息ついて、ゆかりん姉ちゃんがスキマを開く。
 とりあえず今日は引いてくれるみたいだ。

「それじゃ、お姉ちゃん部屋に戻るけど……弟ちゃんはそろそろ起きなさいよ? 母さんが朝ご飯用意してるみたいだし」
「判ってる……ゆかりん姉ちゃんは部屋で寝直しなよ」

 ゆっくりゆかり種は寝ることでゆっくりする。
 ゆかりん姉ちゃんは胴付きになったことで多少の無理はきくようになっているけど、それでも一日最低八時間、出来れば十二時間は睡眠を取らないと調子が出ない。
 まあ、だから小さい頃は昼寝の時とかによく添い寝してもらったし、そのせいで今でもゆかりん姉ちゃんと一緒に寝ると落ち着けはするんだけど。

「そうするわ……っと、弟ちゃん?」
「ん? なに、ゆかりん姉ちゃ……んんっ!?」
「ん……っ、んく……っ、ちゅ……ちゅぷっ……」
「……っぷあぁっ!? な、ななななななっ!?」
「ふふっ……目、覚めたでしょ? じゃーねー」

 目を回す俺を尻目に、ゆかりん姉ちゃんがスキマに消える。

(確かに目は覚めたけど……)

 別のところも、ちょっとリビングに行くには問題あるくらい起きちゃったんだがどうすんだよ?
 ため息つきつつ、俺はもそもそと服を着替えた。
 今日も一日が始まる。


 そして、数時間後。

「……あづい……」

 俺は噴き出る汗をタオルで拭いつつ、林道を歩いていた。
 木々の間から降り注ぐ夏の日差しが気温を上昇させる。
 煩いくらいの蝉の声が、さらに体感温度を増していく。

「ったく……母ちゃんも人使い荒いよなー」

 思わず愚痴もでる。
 右手に提げた魚籠が重い。
 ちなみに中身は親父が昨日釣ってきた鰻。
 ご近所さんへのお裾分けってやつだ。

「ひじり姉は母ちゃんと畑仕事、えーりん姉さんは診療所。ゆかりん姉ちゃんは家事させるからって、俺に押しつけなくてもなー」

 ちなみにひじり姉は俺より力があるので(というかエア巻物まで使うと熊とガチで相撲取れるので)肉体労働になると真っ先にかり出される。
 えーりん姉さんは仕事持ちだから仕方ない。
 そして、こういう時こそ役に立ちそうなゆかりん姉ちゃんのスキマは、無生物とゆっくりしか通さないという制限ゆえに使用不可。
 収穫した野菜や果物ならギリ大丈夫なのだが、生きた魚はスキマに送れないのだ。
 そして、どちらがお裾分けにいくかを決めるじゃんけんで俺はゆかりん姉ちゃんに負け、ゆかりん姉ちゃんは家事を、俺は暑い中魚籠を持ってご近所回りとなったのだ。

「それにしても暑い……ゆっくりも熱で融けるぞ、こりゃ」

 この辺には大きな群れはないが、家族単位でなら野生ゆっくりが結構生息している。
 普段ならこの時間は狩りで木々の間を跳ねるゆっくりや、畑に向かうゆっくりを見かけたりするのだけども、さすがにこれだけ暑いと姿も見えない……。

「そこのじじい! とまるんだぜ!」
「とまりゅんだじぇ!」
「とみゃれ! くしょじじい!」
「あー……」

 前言撤回。
 どうやら暑さで餡子が茹だってゲスになってただけらしい。
『とおせんぼ』
 いきなり道に飛び出し、ぷくーで威嚇しつつ人間に通りたければあまあま寄越せと通行料を要求する。
 山に済むゲスゆっくりの定番にして、成功率は1%以下という死亡フラグだ。

「なにしてるの? ここを通りたかったらはやくあまあまよこしてねくそじじい!」
「あみゃあみゃよこしぇ! でにゃいとれいみゅおきょりゅよ!」
「こーろこーろしゅるよっ!」

 俺の前にいるのはバスケットボールサイズのまりさとれいむのつがい。
 そして、その子供らしいハンドボールサイズのまりさとれいむがそれぞれ二匹ずつ。
 総勢六匹のゲス饅頭共だ。

「あまあまねぇ……渡さなかったらどうするんだ?」

 見ゆん必殺で潰してやってもよかったが、一応聞いてみる。
 時々、こういう事をやって成功した1%のゆっくりを見て模倣しただけの『バカだが善良』な個体がいたりするからだ。
 俺は害獣としてのゆっくりは嫌いだが、野生ゆっくり全てを潰そうとまでは思わない。
 バカなだけなら教えてやれば静かに山で生きていく可能性はあるし、なにより山の甘味としてのゆっくりは好物なのだ。
 全て潰してしまったら、折角の甘味が戴けなくなる。
 晩秋、冬ごもりに入ったゆっくりを姉達と一緒に捕まえて作る干しゆっくりは子供の頃からの楽しみだし。
 というわけで温情一割、暑くてもうゆっくりとかスルーしたいでござる九割な気分で尋ねたのだが。

「ゆがあああああ! まりささまにあまあまをけんっじょうっ! しないゲスじじいはせいっさいっ! するのぜええ!」
「かわいいれいむにあまあまをわたさないとかばかなの? しぬの?」
「はやきゅあみゃあみゃもっちぇきょいくしょじじい!」
「まりしゃちゃまはぷきゅーしゅるのじぇ! ぷきゅー!」
「れいみゅもぷきゅーしゅるよ! ぷきゅー!」
「ゆわああああっ! きょわいよおおおおおぉ!」
「「どぼぢでいみょーとぎゃきょわぎゃっちぇるのおおおぉ!?」」

 あー、ゲス確定で言質取れましたー。
 制裁とか言い出すのは善良バカにはいないからな。
 さて、それじゃ面倒だし一気に潰すかー。
 バランスのために魚籠を肩にからって足を振り上げ……。

「こっぼね、こぼね、こーぼね~」

 ……ようとして、俺は後ろから近づいてくるおっとりとした声に振り返った。

「こぼね~……あら? 弟様、こんにちは」
「ゆゆ先生、こんにちは」
「はい、ゆゆこですよ~」

 俺に気付いて、ピンクの髪にふわふわとした服を着たゆゆ先生が微笑みながら手を振る。
 その小さな動作で、ふんわりした服越しにも判る程のサイズの膨らみがゆさっ、と揺れた。

「ゆゆ先生は何をしてるんです?」
「夏休みで学校もないから、お散歩よ……ゆかり様達はご健勝かしら?」
「それはもう、象が踏んでも壊れないくらいに」
「こぼね~。それはよかったわ。今度またお訪ねするから、よろしくとお伝えしてね」
「判りました。ゆっくり料理山ほど用意して待ってますよ」
「それはいいわね~。弟様の母上は、ゆっくり料理の名人だし……こぼね~」

 嬉しそうに微笑むゆゆ先生。
 その可愛らしい顔も姿も、俺の担任をしてくれていた小学校の頃から変わっていない。
 まあ、胴付きゆっくりゆゆこ種なんだから当然なんだけども。
 ゆっくりってナマモノは、見た目上老化したかどうかなんて、ほとんど判らないものなのだ。
 特に胴付きは1年ほどで成長を終えると、それからは容姿は殆ど変化せず、寿命まで若々しいままでいることが多いらしい。
 全体の肉付きというか、スタイルは変わったりすることもあるけれど。
 ゆゆ先生も身体の一部は前より豊かになってるし。

「……ところで~、弟様はどうして、こんなところで立ち止まっていたの?」
「ああ、ご近所に鰻をお裾分けに行く途中で、ゆっくりに『とおせんぼ』されてたんですよ」

 小首を傾げるゆゆ先生に告げ、改めて野生ゆっくり達を振り返る。

「「「「「「………………」」」」」」

 見事なまでに親子揃って固まっていた。
 どいつもこいつも、ゆゆ先生を見上げた状態のまま顔に恐怖を貼りつかせている。

「なんだ、お前ら? なに固まって……」
「こーぼね~。これは、なかなか美味しそうな野生ゆっくりね~」

 嬉しそうにそう言って、ゆゆ先生がゆっくり共を一瞥する。

「……あー……」

 そうか、そうだった。
 ゆゆ先生……ゆっくりゆゆこって……。

「ゆわああああああぁぁっ!? ゆ、ゆゆこだああぁ!!」
「なんでだぜえぇ!? なんでぐぞじじいがゆゆこどいっじょにいるんだぜええぇぇ!?」
「きょわいよおおおおおぉ!!」
「にげりゅんだじぇえええええええ!!」
「かぞくのあいどりゅすえっこれいみゅはれいみゅがまもりゅよ!」
「ゆわーん! ゆわーん!」

 ……捕食種、だったっけ。

「あらあら、みんなそんなに怖がることはないですよ~? 先生は痛いことはしませんからね~」

 笑顔を浮かべたまま、ゆゆ先生がゆっくり一家に近づいていく。

「ゆ? いたいことはしないのぜ?」

 ゆゆ先生の言葉に、真っ先に立ち直った親まりさがおそるおそる尋ねる。

「ええ。先生がゆっくり虐待なんてしたら、教え子に示しがつかないもの」

 その答えに、まりさ達は一斉に破顔した。

「そうなのかぜ! それならあんしんなのぜ!」
「よかったねまりさ! これであんっしんっ! してあまあまもらえるね!」
「ゆ! そうなのぜ! ここを通りたかったらあまあまよこすのぜ!」
「あまあまがないならゆゆこはゆっくりしんでね!」
「あみゃあみゃもらえるのじぇー!」
「あみゃあみゃ! あみゃあみゃ!」
「はやきゅまりちゃしゃまにあみゃあみゃもっちぇくりゅのじぇ! わきゃってるのじぇ、くちょびゃびゃあ!」
「ゆっきゅりー! あみゃあみゃ-!」

 うん、潰そう。
 俺の恩師であるゆゆ先生をばばあ呼ばわりとはいい度胸だこの糞饅頭ども。
 水泳の授業で一緒に川で泳いだ時の水着姿は未だに俺のオカズ常連もといスイートメモリーなんだぞ?

「ゆゆ先生、こいつら潰しますから離れて下さい。餡子で汚れるんで」
「こぼね~。それは駄目よ? ゆっくりも山の恵み、ただ潰すなんて勿体ないことをしてはいけません」

 足を上げかけた俺を、ゆゆ先生が優しくたしなめる。

「ゆっ! そうだぜ、どれいはゆっくりしてないのぜ! だからはやくあまあまもってくるのぜ!」
「そうだよ! そしてゆっくりしてないゆゆこははやく死んでね! すぐでいいよ!」
「はやくしゅるのじぇ! でなきゃまりしゃがぷきゅー! するのじぇ!」
「まりちゃもちゅるのじぇ! ぷきゅー!」
「すえっこれいみゅもいっちょにぷきゅーちようね! ぷきゅー!」
「ゆー! ぷきゅー!」

 それを見てますます調子に乗る野生ゲス一家。
 得意げにぷくーをしている子ゆっくりを即潰したい衝動に駆られるのを、俺は辛うじて抑え込んだ。
 俺が潰さなくても、ゆゆ先生がこいつらへの制裁はしてくれる。
 ゆゆ先生は優しいから、確かに虐待はしないだろうが……ゆっくりゆゆこは捕食種なのだ。
 つまり、虐待はしなくても……。

「それじゃみんな、ゆっくりご馳走になるわね~」

「「「「「「………………ゆ?」」」」」」

 不思議そうに鳴くゆっくり親子の頭を、ゆゆ先生が優しく撫でていく。

「こ~ぼね~」

 それだけで、まりさ達は呆けたような恍惚の表情を浮かべ……動きを、止めた。
 そんなまりさ一家を、ゆゆ先生はスカートを持ち上げて一匹ずつ乗せていく。

「ゆうぅ~……」
「ゆぴっ、ゆぴい」
「ゆゆ~ん……」
「みゅー、みゅー」

 そんな事をされてもゆっくり達は抵抗せず、ゆゆ先生のされるがままだ。
 やがて全部のゆっくりをスカートで包むと、ゆゆ先生は俺を見てにっこりと笑った。

「ねえ、折角だからいっしょに食べない? もちろん、弟様には一番新鮮なものをご馳走するから……」

 もちろん俺に不服はなかった。
 少し遅くはなるけど、このくらいの道草ならいいだろう。
 何より、久しぶりに逢ったゆゆ先生ともう少し話したい。
 そう思い、俺は森に入っていくゆゆ先生の後を追った。



 ざあざあと水の流れる音がする。
 岩にぶつかった流れが水飛沫をあげ、それが気化して涼しげな風になる。
 林道から少しおりたところにある渓流。
 そこの小さな河原に座って涼みつつ、俺とゆゆ先生はゆっくりに舌鼓を打っていた。

「こぼねー。このまりさ、餡がしっとりしていて美味しいわ~」

 幸せそうに子まりさ(妹)の頬をかじるゆゆ先生。
 ゆっくりと餡と皮を咀嚼し、味わいながら飲み込んでいる。
 ひと口が小さいし仕草も上品なので一見あまり食べてなさそうに見えるが、これで子ゆっくりは四匹目だ。

 ここに座ってまだ十分くらいなのに、ハンドボールサイズだった子ゆっくりをさくっと三匹完食するとは。

「……ゆゆ先生、相変わらず健啖家ですね」
「夏はエネルギーを使うのよ~。弟様も遠慮しないで食べてね?」
「ええ、戴いてます」

 とはいえ、ゆゆ先生の食べっぷりを見ているとそれだけで割と満腹になるんだけど。
 そんな事を考えつつ、掌で転がしていた実ゆっくりを口に放り込む。

「ゆぎゅっ……!」

 口のなかで微かに悲鳴をあげるのを舌で転がしつつ、奥歯で一気にかみしめる。

(ゆぎゃっ! も、もっぢょ……ゆっぐぢ……)

 断末魔もみなまで言わせず、一気に咀嚼し飲み込む。
 すっと解ける甘さと、きめ細やかな餡と皮の食感をのど越しに味わって、俺は次の実ゆっくりに手を伸ばした。

「……あ、もうないや」
「こぼね? あら、本当」

 子まりさから唇を離し、ゆゆ先生が呟く。

「弟様、おかわりはいる?」
「そうですね……もうちょっと欲しいかな」
「こぼね~。判ったわ、じゃあまりさ、れいむ。またすっきりー! して赤ちゃん作りましょうね」

 ゆゆ先生の言葉に、恍惚に呆けた表情のまま、まりさとれいむはぬちょぬちょと身体をこすりはじめた。

「ゆっ、ゆゆっ……れいむううぅ……」
「まりさぁ……ゆゆっ、ゆーっ……」

 幸せそうにすーりすーりを繰り返す二匹。

「「すっきりー」」

 やがて同時に叫ぶと、まりさとれいむの額から蔓がにょきにょきと生え、実ゆっくりが膨らみはじめた。

「相変わらず見事ですね、ゆゆ先生の実ゆっくり饅頭作り」

 思わず感嘆の声が漏れた。

 ゆゆ先生のこれを見るのは卒業以来だが、その時よりもさらに実ゆっくりの成る速度は上がっているようだ。

「こぼねー。当然よ……みんなのおやつを用意するのも、私のお仕事だもの」

 子まりさを片手に微笑むゆゆ先生。
 ちなみに子まりさは、もう3分の1ほどしか残っていない。

「そうでしたねぇ……俺がゆっくり好物になったのも、ゆゆ先生のおやつからですし」
「ふふっ、そうだったわね」

 ゆゆ先生は、俺が産まれる少し前の山狩りで、ゆかりん姉ちゃんが保護したゆっくりだった。
 その頃は胴なしだったらしいが、捕食種なのを生かして畑番にしようと、えーりん姉さん達が躾けた結果胴付きに成長したらしい。
 そしてゆゆ先生は、村の学校の先生をしていた叔母さんのところに引き取られた。
 畑番としてゆっくりを捕食しつつ、飼い主である叔母さんの手伝いをしていくうちに、だんだんと人手の少なかった学校の手伝いをすることが多くなり……。
 俺が村の学校に入学した時、叔母さんが体調を崩したのもあって、その年度唯一の生徒だった俺の担任になってくれたのだ。
 もちろんこれは非公式なもので、書類上はずっと叔母さんが俺の担任だったのだが……俺がゆゆ先生に懐いてしまったのもあって、なんだかんだで村の学校を卒業するまでの9年間、俺はゆゆ先生のもと勉学に励んだ。
 俺が志望校に入れたのは姉さん達とゆゆ先生の熱心な指導のお陰だと、今でも感謝しているくらいだ。

「勉強のあとにご褒美だって食べさせてくれた、ゆゆ先生お手製の実ゆっくり……甘くて柔らかいあれ欲しさに、勉強頑張ったようなものでしたから」

 まりさの茎から実ゆっくりれいむをひとつ千切り、口に放り込む。
 舌と口腔で静かに潰すと、プチプチとした感触と一緒にトロリとした餡が口内に広がり……淡く、解けていく。
 懐かしい味と食感。
 他のゆっくりでは味わえない、ゆゆ先生だけの味だ。

「こぼね~。そう言ってくれると、毎日作った甲斐があるわ」
「中枢餡だけを壊しただけの植物ゆっくりを操るのって大変なんでしょう?」
「コツはいるわね。弟様のために毎日作っていたら覚えちゃったけど」
「この実ゆっくり、ゆゆ先生がオリジナルですもんね……」

 ゆっくりは餡子で形質や言語、知識などを子に伝える。
 そして、その中枢となるのは琥珀色の餡子の塊……中枢餡だ。
 ゆゆ先生は、ひと撫でしただけでそのゆっくりの中枢餡だけを破壊することが出来る。
 しかも、そうして中枢餡が破壊されたゆっくりを自在に操ることが出来るのだ。
 中枢餡を破壊されると言うことは、ゆっくりにとって死を意味する。
 他の餡子は残っているので外傷がなければ生きているように見えるし反射なども残っているが、自ら動くことはなくなる。
 そして、そのまま放置していれば次第に餡子を消耗し、衰弱死していく。
 だが、そうやって中枢餡だけを破壊されたゆっくりの餡は程よく甘く、なにより口内の体温で淡く消える口溶けの良さをもつ。
 特に元々餡が柔らかく口溶けのいい実ゆっくりがその形質を受け継ぐと、これが独特の触感を持つ逸品になるのだ。
 このゆっくりの製法はえーりん姉さんによってまとめられ、加工所によって商品化されている。
 しかし、加工所の実ゆっくり饅頭など、ゆゆ先生手製のものに比べれば月とスッポン、ゆうかにゃんとでいぶだ。
 こうして目の前で、ゆゆ先生によって操られ、幸福な表情のまますっきりーをして実ゆっくりを生やすゆっくりを眺めつつ、新鮮な実ゆっくりを堪能する。
 えーりん姉さんと加工所には悪いが、この贅沢を味わってしまったら、大量生産品なんかで満足出来るわけがない。

「いやー、それにしても、今の生徒達が羨ましいですよ。ゆゆ先生のこの特製饅頭を食べられるんですから」

 久しぶりの実ゆっくり饅頭に舌鼓を打ちつつ、俺は思わずそんなことを口走っていた。
 嘘ではない。
 俺の時は上と下二学年に子供がいなかったこともあり、学校にいる時はゆゆ先生をほぼ独占していたのだ。
 人間さんでも多感でかつド阿呆な義務教育の9年間を共に過ごし、指導されてきたゆゆ先生はぶっちゃけ俺の初オカズさんだったりする。

「こぼね~……」

 ちなみに姉さん達は小学校に上がるまでガチで血の繋がった姉だと思っていたし、その上で初恋の相手だったりするのだが、その辺は黒歴史なので是非記憶ごと封印したい。

『ぼくおねーちゃんたちみんなをおよめさんにするね!』

 だから封印したいつってんだろ俺!
 誰か俺の黒歴史を消しされ! すぐでいいよ!

「ゆゆ先生との学校生活は楽しかったですからねー。出来ることなら、またお願いしたいくらいですよ」

 黒歴史を頭から追い出そうと、俺は話を続けた。
 今の学校も楽しいけど、田舎からひとりだけ通っているというのはそれなりに大変だからな。
 通学に片道二時間じゃ学校の友達ともろくに遊べないし。

「この特製饅頭を、村のガキ達と一緒に食べて……」

 渓流の音のなか。

「……今の子達には、そのお饅頭は食べさせてないわ。普通の実ゆっくりだけ」

 微かに。
 ゆゆ先生の唇が動いたような……気がした。

「……え? なにか言いました、ゆゆ先生?」
「ううん、なにも? それより弟様、お饅頭もうひとついかが?」
「あ、いただきます」
「判ったわ。それじゃ……」

 ゆゆ先生のしなやかな指が、実ゆっくり饅頭を摘み取る。

「先生が、食べさせてあげる……んっ」

 そしてそれを唇で挟み。
 ゆゆ先生は身を乗り出し、実ゆっくり饅頭を俺に差し出してきた。

「……ふぇ?」

 あれ? 俺、今なにしてるの? ナニサレテルノ?
 なんでゆゆ先生が饅頭そっと咥えて俺に顔を寄せてるの?

「ん……さあ、弟様……」

 ゆっくりらしく、唇に実ゆっくりを挟んだまま、ゆゆ先生が誘うように囁いてくる。
 って、なんか実ゆっくり饅頭も幸せそうな寝顔してるし。

「えっと……」

 このまま実ゆっくりを食べちゃっていいの?
 でもそうすると必然的にゆゆ先生の顔が超接近だよね?
 というか普通に食べると最後は唇までいっちゃうよね?
 俺……姉ちゃん達以外とは経験ないんだけどっ?

「んっ……」

 ゆゆ先生の頬がほんのりと染まっている。
 だんだん身体が近づいて……俺の胸に、ゆゆ先生の上体が押しつけられる。
 ふわふわの服の下で、反則級のボリュームが柔らかく潰れて……うわ、これはひじり姉よりっ……!?

「ゆ、ゆゆ先生……いいの……?」

 思わず餡子脳なことを口走ってしまう。
 いいも糞も、これってどう見てもOKサインだよな?
 でも……ゆゆ先生だぞ? 姉達とは別の意味で、俺にとっては特別な存在なのに……。
 い、いいのか……?

「……こぼね~……」

 口癖とともに、ゆゆ先生が小さく頷く。
 もう、俺との距離はほとんどゼロになっていた。
 お互いに抱き合って、顔を寄せているような状態。

「そ、それじゃ……」

 覚悟を決め、俺はゆゆ先生……もとい、実ゆっくりに唇を寄せた。
 小さく口を開き、そっと――かじる。

「ゆっ……」

 ゆゆ先生の能力のせいか、実ゆっくりはそれでも穏やかな表情のままだ。
 そんな実ゆっくり饅頭を、少しずつ咀嚼していく。

「こぼね……ん……っ……」

 ゆゆ先生の顔が近づいてくる。
 桜餡の淡い匂いが鼻腔をくすぐる。

 そして、俺は……。

「……じー……」

 俺は……。

「……ふーん……ゆゆったら結構やるわねぇ」

 ……。
 なんで視線を感じるのでしょう?
 ここには俺とゆゆ先生しかいないはずなのに。
 誰か来ればすぐ判るはずなのに。

 オチを大体予想しつつ。
 微かな希望を込めて、おそるおそる視線を横に向ける。

「……じー……弟さんが、大人の階段をまた一歩登ろうとしています……南無三っ」
「やほー、弟ちゃん」

 そこには。
 スキマから顔を覗かせ、こちらをじっと見つめるゆかり姉ちゃんとひじり姉がいた。

「どぼぢで姉ちゃん達がここにいるのおおおおおおおおぉぉ!?」
「こぼねっ!? あ……ゆっゆかり様、ひじり様っ!?」

 バックダッシュでゆゆ先生が俺から離れる。
 胸に当たっていた柔らかな感触が消えて、ちょっと寂しい。

「どうしてって……ねえ?」
「畑仕事が終わったので、涼みがてら水浴びでもと思いゆかりん姉さんを誘ってスキマ移動してきたのですよ」
「そ、そうなんだ……」

 スキマ移動ファック。

「そ。そしたら河原で、ゆゆと弟ちゃんがポッキーゲームならぬ実ゆっくりゲームをしてたのよ……ねえ、私も混ざっていい?」
「駄目に決まってるでしょおおおおぉ!?」
「ゆかりん姉さんっ!? そうです、そんなの駄目ですっ……混ざるなら私も一緒ですよっ!」
「ひじり姉もナニいってるのおおぉ!? おかしいでしょおおおおぉ!?」
「こっこぼねっ……すいませんゆかり様っ! 私は教師なのに、弟様を惑わすようなことっ……!」

 スキマから出てきたゆかりん姉ちゃんに、ゆゆ先生が深々と頭を下げる。
 ゆゆ先生にとって姉ちゃんは自分を保護してくれた命の恩人であり、躾け育ててくれた恩師でもあるのだ。
 俺を『弟様』と呼ぶのも、ゆかりん姉ちゃんの弟だからだし。
 ゆゆ先生からすれば、今の行為は、ゆかりん姉ちゃんへの裏切りに近いものだったんだろう。
 しょんぼりと俯いて河原にしゃがみ込んでいるゆゆ先生は、ひどく小さく見えた。
 そんなゆゆ先生を見下ろし、ゆかりん姉ちゃんは……。

「あー、別に私はいいわよ? 弟ちゃんを独占しようってつもりなら話は別だけど、ゆゆならそんな事しないだろうし」

 あれ?

「……許して……くれるのですか……?」
「許すも許さないも……ゆゆの気持ちなんて、とっくに気付いてたわよ」
「むしろ、教師と生徒という関係の間はよく我慢してましたよね」
「そうよねー。私ならむしろそれをスパイスにしちゃうわ」
「……ゆかりん姉さんは爛れすぎです。煩悩退散、南無三っ」

 ちょっと待って。
 ふたりともなに言ってるの?
 ゆゆ先生の気持ちって……えっと、あれ?

 あれ?

「さて、と。折角だし、このまま弟ちゃんも一緒に水浴びする?」

 がしっ。
 棒立ちになっていた俺の左腕に、ゆかりん姉ちゃんが笑顔で抱きついた。

「そうですね……この間の、お風呂の続きを……」

 右腕にひじり姉が抱きついて、身体を押しつけてきた。
 姉妹の中では一番豊かな膨らみが、俺の腕を挟む。

「え? ちょっとふたりとも、ナニ言ってるの? 俺着替えとか持ってきてないし、まだお裾分けの途中だよ?」
「そんなの、日暮れまでに終わらせれば問題ないわよ……さて、ゆゆ?」
「は、はいっ!」

 ゆかりん姉ちゃんに呼ばれ、ゆゆ先生が緊張した面持ちで顔をあげる。

「あなたの師として、友として誘うわ……私達と、弟ちゃんと一緒に……『水浴び』、しない?」

 微笑みながらゆかりん姉ちゃんが告げる。
 その言葉に……ゆゆ先生は、俺も見たことのない、少女のような満面の笑みを浮かべた。 

「こぼね~! はいっゆかり様っ、喜んでっ!」
「ゆゆ先生までえええぇ~~っ!?」
「弟さん、暴れては駄目ですよ?」
「ふふっ、こうなるとえーりん姉さんも呼ばなきゃ恨まれるわね……ひじり、私ちょっと行ってくるわ」
「はい、ゆかりん姉さん」
「いっちゃ駄目でしょおおおおおおおおぉぉぉぉ!?」

 夏の渓流に、俺の絶叫がどこまでも響く。

 ……そして。

「いくらなんでも野外は羽目を外しすぎです。反省しなさい」
「うぅ、えーりん姉さんのいけずぅ……」
「南無三っ……すいませえええぇん……」
「こ、こぼね~……」

 藪をつついたゆかりん姉ちゃんは、えーりん姉さんという大蛇に襲われて三人仲良く正座説教を喰らったそうな。

 いや、俺は即行魚籠持って逃げ出したからよく判らないんだけど。

 それにしても……。
 女教師って、胸きゅんだよね?

「弟君もあとで正座」
「どぼちてっ!?」




・おまけ
「こぼね~。ゆかり様、えーりん様、ひじり様~。お邪魔します~」
「いらっしゃい、ゆゆ。今日はいっぱいご馳走用意してるからゆっかりしていってね!」
「……あの、姉ちゃん。なんで俺エア巻物で簀巻きにされてるの? しかも全裸なんですけど……」
「それはもちろん、これから弟さんにゆっくり料理を盛りつけるからです!」
「俺にとってちっとも嬉しくない展開じゃねえか! 誰得だよ!?」
「そんなことないわよ? 盛りつけたゆっくり料理は、私達がみーんな直接口をつけて食べてあげるから」
「こ、こぼね~……先生も、ゆっくり料理残さず綺麗に食べるからね? 弟様の身体も、おくちで綺麗にしてあげる……」
「ゆゆ先生リミッター外れすぎでしょおおおぉ!? 姉さん! えーりん姉さん助けて! 助けてえーりん姉さん!」
「……野外じゃないから、セーフね」
「どうみてもアウトどころか没収試合でしょおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!?」
「と、弟さんが騒いでいる間に盛りつけ完了です、南無三っ」
「どぼちてっ!? うわっ、ゆっくりがキモイ! おもにローストゆっくりがキモイ!」
「では、いただきます。ん……はむっ」
「もぐ……ん、さすが母さんの料理は美味しいですね……ぺろ」
「なんで料理だけ置いて会合いっちゃうのかあさあああああぁん!」
「ちゅ……ちゅる、ちゅぷ……ん、んっ……弟君……」
「えーりん姉さんどこ食べてるのおおおおぉ!?」
「こぼね~」

 あ?
 それでどうなったって?
 どうにもなってねえよ。
 姉と恩師になに期待してるんだよ。
 ……本当だよ?


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anko2043 夏のゆっくりお姉さん(感想・挿絵ありがとうございます)
最終更新:2010年10月15日 17:22
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