- 駄文長文詰め込みすぎ注意。
- 愛で&希少種優遇&独自設定だらけ。
- 希少種は胴付きでかつ能力がチートです。厨二です。あたま悪いです。
- そしてガチのHENTAIです。どうしようもないです。
- 前編に虐待要素はまったくありません。
- それでも構わないという方はゆっくりどうぞ。
*
暑い日が続いていた。
窓の外では、煩いくらいに蝉が鳴いている。
日差しもいよいよ本格的に強くなる正午少し前、俺と姉ちゃん達はリビングでぐったりと横になっていた。
「暑いわ~。弟ちゃん、なにか涼しくなるようなもの無いの~?」
ソファに横になり、手にした団扇で自分をあおぎながらゆかりん姉ちゃんがいつものように無茶振りしてくる。
「そんなものがあったら俺がまず使ってるよ……で、ひじり姉」
「なむさん~。暑いです~……心頭滅却しても気温は下がりませんね~」
さくっとスルーし、ひじり姉に水を向ける。
俺の言葉を聞いているのかいないのか、俺に後ろから抱きついて姉妹一の巨乳を躊躇なく押しつけながら、ひじり姉はぼやいた。
「ならさ、俺にひっつくのやめない? ひじり姉も暑いでしょ?」
「弟さんを感じていると暑さも忘れられるんですよ~」
「俺はクーラーかよ」
「私達にとってはクーラー以上ですよ?」
そう言って、ひじり姉が更に密着してくる。
ゆっくり特有の、もちっとしながらもサラサラして肌理の細かい肌が俺の身体を優しく擦って、何とも言えず心地いい。
「こぼね~。弟様の身体を抱いていると、暑さも寒さも気にならなくなるのよ~」
そして、そんなひじり姉に同意するように頷き……俺の恩師たるゆゆ先生は正面から俺に抱きついてきた。
ひじり姉よりふたサイズ上というたっぷりとした膨らみが、俺の胸板とゆゆ先生の間で柔らかく潰れる。
「ゆゆ先生まで……」
「でも、私達がこうしていると、弟様も少しは楽になるでしょう?」
「それは……」
その通りだった。
ゆゆ先生、ゆっくりゆゆこ。ひじり姉、ゆっくりびゃくれん。
捕食種と希少種、しかも胴付きゆっくりという俺の恩師と姉さんの体温は、人間である俺よりもほんの少しだけ低い。
理屈は俺も詳しく知らないが、ゆっくりというのはサイズが大きくなるほど体温は下がるらしいのだ。
赤ゆっくりは手に取ると明らかに人間より暖かいし、胴なしの成体ゆっくりで大体人間と同じくらい。
胴付きやドスは平熱の低い人間くらいになる。
まあ、と言っても36度5分が36度になる程度なのだが、これが以外と体感的には馬鹿にならなかったりするのだ。
「弟さん、涼しくないですか?」
「弟様、気持ちよくない?」
「いやそれは気持ちいいし涼しいけどさ……」
もっとも、ひじり姉とゆゆ先生に抱きつかれている時点で俺の体温が若干上昇しているからプラマイゼロな気もするが。
特に身体の一部はなんか脈打ってるし。
「で、でもこの状況はあんまり良くないと思うんだ。ね、ゆかりん姉ちゃん?」
「そう? 私には、弟ちゃんもひじりもゆゆも、すごく幸せそうに見えるんだけど? 止めると私が悪役になりそう」
自分で自分を扇ぎながら、ゆかりん姉ちゃんが寝言をゆった。
いや止めようよ姉として。
「いや止めてもいいと思うよっ? 特に今日は俺が昼食当番だから、このままじゃ飯の準備出来なくなっちゃうしさっ」
「お昼ご飯なら、お素麺でもゆがけばすぐですよ?」
「こぼね~。そうよ弟様、せっかくこうしているんだから、涼しくなるまでゆっくりしましょ?」
「ゆゆ先生……涼しくなるまでゆっくりしてたら昼食用意出来ないよ? お腹空くよ?」
「弟様とこうしていられるだけで、私はお腹いっぱいになれるから平気よ~?」
「なにそれこわい」
健啖家なゆゆ先生を満腹にさせるって俺どんだけだよ。
と言うか、俺どこか喰われてるのかひょっとして。
「私も、弟さんとこうしていられるならお昼抜きでも構いませんよっ、南無三っ」
「ひじり姉は本当に抜いても平気だもんなあ」
肉体的な欲求に弱いゆっくりの中で、ひじり姉のびゃくれん種は割とその手の欲望に対して耐性がある。
絶食や不眠はもちろん、虐待などの肉体的苦痛にもかなりのところまで耐えられるのだ。
ひじり姉曰く、びゃくれん種には餡子の中に『苦行スイッチ』なる心理スイッチ的なものがあって、それをオンにすると色々無茶が利くらしい。
ゆっくりてんこ種のように痛み苦しみを快楽に変換するわけではないが、なんだか我慢出来るようになるのだそうだ。
「で、でもさ、ゆかりん姉ちゃんはご飯食べなきゃ……」
「私は涼しくなるまで眠ればいいんだから気にしないでいいわよ?」
「寝るのかよ!?」
さすが一日の半分は眠って過ごせるゆかり種。
「ええ。その時は、折角だから弟ちゃんに添い寝お願いするけどね」
「えっと、前と後ろはもう埋まってるぞ?」
「それじゃあ……私は上で我慢してあげるわ」
「俺の上ってそれ我慢じゃないよね? むしろマウントポジションって絶対優位だよね?」
「いいじゃないの~。どうせもう、ひじりとゆゆを侍らせているんだから……お姉ちゃんも侍らせなさい」
「それ日本語的におかしいよねっ!?」
ソファから降り、ゆかりん姉ちゃんが近づいてきた。
長い金色の髪の毛が、白い肌の上で揺れる。
やばい。
このままゆかりん姉ちゃんにまで密着されたら、本当に動けなくなる。
肉体的な意味でも、オンバシラ的な意味でも。
「ゆゆ、ひじり、ちょっと体勢変えて。私達で弟ちゃんを涼しくしてあげましょう」
「判りました、ゆかりん姉さんっ」
「こぼね~。はい、ゆかり様」
「ふたりとも素直すぎでしょおおぉぉ!?」
俺の抗議も空しく、ひじり姉とゆゆ先生が俺の腕を取って優しく仰向けに寝かせてくれる。
もちろん、ふたりとも左右から俺に密着したままだ。
ゆゆ先生とひじり姉の髪の毛が腕をくすぐる。
わき腹にふたりの胸が押しつけられる。
その柔らかな感触に思わず動きを止めた俺の胸を、ゆかりん姉ちゃんの金髪がそっとくすぐった。
「ゆ、ゆかりん姉ちゃんっ……」
「さあ弟ちゃん、お姉ちゃん達のゆっくり抱き枕でゆっかりお昼寝しましょうねっ」
「無理! 子供の頃じゃないんだからこの状況で昼寝は無理!」
確かに小学校上がる前は昼寝の時にゆかりん姉ちゃんやひじり姉やえーりん姉さんに添い寝してもらってたけど!
つかほとんど抱き枕になってもらってたけどっ!
でも今は無理! 眠ろうにも下半身の一部がぼるけいのしてるから! 眠気とか吹き飛ぶから!
「大丈夫。ちゃんとすっきりして、眠らせてあげるから……ね?」
「容疑を否認する気まるでないよねっ!?」
ゆかりん姉ちゃんの身体が、俺の上に重なってくる。
微かな重みと、すべすべでもっちりした肌の感触が全身に伝わってくる。
普段より肌の接触面積が広いから、心地よさもドキドキ感も倍増だ。
「弟さん……お姉ちゃんも、してあげますよ?」
「先生も……弟様なら、個人授業はいつでも歓迎よ……?」
「小中通してほとんど個人授業だったよねゆゆ先生っ」
いやHENTAI的な意味での個人授業なのは判るけど! むしろ受けたいけど!
でも今は駄目なんだ!
だって、俺はまだ……っ!
「姉ちゃん……!」
迫り来るゆかりん姉ちゃんに向かって口を開きかけ。
同時に、リビングの扉が開いた。
「……何してるの、あなた達」
赤と青に塗り分けされたナースキャップが俺達を見下ろしている。
その口調は普段のクールを通り越して氷点下だ。
「え、えーりん姉さんっ?」
「えーりん様っ!?」
「ちょ、なんで姉さん帰ってきてるのよっ!?」
「往診で村を回っていたから、家でお昼を済まそうと思ったのよ」
慌てるゆかりん姉ちゃん達に、冷たく告げるえーりん姉さん。
「そうしたら、リビングであなた達が弟君と半裸で絡みあっているなんて……ねえ、これって一体どういう事なのかしら?」
「あー……その、ゆかりん姉ちゃんがあんまり暑いから水着になろうって言い出してさ……」
「そ、そうそうっ。半裸じゃなくて水着なのよ、水着っ。健全健全っ!」
「そうですよっえーりん姉さんっ、ちょっとビキニなだけです!」
「私もゆっかりブラジルなだけよっ!」
「今年はみんなで海に行きたいねと弟様が言われたので、それならと水着を見てもらっていたんです~!」
「待ってゆゆ先生、それじゃ俺が水着見たがったからこうなったみたいなんだけどっ!?」
「こぼねっ? 弟様、私の水着見たくなかったのっ?」
「ごめんなさい超見たかったです! だからそんな悲しそうな顔しないで!」
やいのやいの。
水着姿のままじゃれ合う俺達に、結果的にのけ者状態になったえーりん姉さんが、青筋浮かべて静かに告げた。
「あなた達……正座」
「「「「はいいぃっ!」」」」
*
1時間後。
「弟君、午後は時間ある?」
正座説教のあと、俺の茹でた素麺(薬味は葱と生姜、それに姉ちゃん達用に缶詰みかん)をみんなで手繰っていると、えーりん姉さんが尋ねてきた。
「んぐ……特に予定はないけど……なに?」
口の中の素麺を呑み込み、答える。
姉さん達の指導のお陰で、夏の課題を順調に消化している俺に時間はたっぷりあるのだが、使い途はあんまりない。
この村ではぶらりと遊びに出るという事も出来ない。
なんせ最寄り駅まで自転車で30分、街までは更に電車で1時間かかるのだ。
道路は整備されているので自動車があればアクセスは悪くないのだが、残念ながら俺は無免許。
となれば、学校の友人と遊ぶのも思いつきでは難しい。
夏休みの空いた時間は山に入るか畑に出るか、さもなきゃ家で姉ちゃん達に振り回されるくらいしか使い道がないのだ。
……彼女がいればまた少しは変わるんだろうけど、うちの村に俺の同年代の女の子いないし、学校は男子校で出逢いもない。
合コンに誘われたりはするけれど……正直、姉ちゃん達の相手で今は手一杯なんだよなー。
ともかく。
農業と林業と加工場くらいしか産業のないこの村で若者の娯楽は枯渇しており、夏休みの俺は常に暇を持て余しているのだった。
ネットは光なんだけどね。
「御祖母様が人手を欲しいと仰ってるのよ」
えーりん姉さんの言葉に、全員の箸が止まった。
お互いに視線を交わし……そして同時に口を開く。
「ばあちゃんが?」
「ええ、そうよ」
「南無三っ……ということは、またドスでも出たのでしょうか?」
「それは不明。そうかも知れないけど、単に孫の顔が見たくなっただけかもね」
「待ってよ姉さん。もし害ゆっくり絡みなら弟ちゃんじゃなく、まず母さんかその部下が出向くべきじゃない?」
「御祖母様は弟君を指名してるの。母さんならまだしも、部下を寄越して機嫌損ねたら大変でしょ」
「こぼね~……弟様の御祖母様って、この辺りの山林の半分を所有されてるんでしたっけ?」
「ここの裏山と向こうの山の半分をね。随分前に法人化しているから、厳密には御祖母様個人のものではないけれど」
俺達の言葉にひとつひとつ返していくえーりん姉さん。
言葉の洪水をワッと浴びせられたのにまったく動じてないあたり、流石この村一番の天才ゆっくりだ。
いやまあ、実は頭の回転自体はゆかりん姉ちゃんも相当なものなんだけど……姉ちゃんはその使い方が偏ってるからなあ。
俺へのセクハラに中枢餡の8割使ってるって公言してるくらいだし。
「それで、どう? 弟君が動けるようなら、午後から御祖母様のところにお手伝いに行って欲しいのだけど」
「それって母さんからの伝言?」
「プラス、父さんよ。最初の連絡は父さんのところに来たらしいから」
「……親父、ばあちゃんには逆らえないもんなー」
婿養子の親父が母さんに泣きつくところがありありと想像出来る。
ばあちゃん相変わらず容赦ないな。
「で、俺名指しなんだよね……姉さん達は呼ばれてないの?」
素麺を一口啜る。
うん、やっぱつゆには生姜だ。
「特に来てくれとは言われてないわ。まあ……」
俺に合わせて、えーりん姉さんも素麺を口に運ぶ。
ちなみに姉さん達のめんつゆは俺特製のみりん多め甘口だ。
「来るなとも言われていないから、弟君についていくのは問題ないと思うけど?」
「はいっ! じゃあ私は一緒に行きます!」
「こぼね~。えーりん様、私もご一緒して良いのですか?」
「ゆゆこなら御祖母様もよくご存じだし、大丈夫だと思うわ」
えーりん姉さんの言葉に、ひじり姉が元気に手をあげた。
ゆゆ先生も主張は控えめながら行く気満々だ。
「ん~……御祖母様のところねえ……」
ただ、ゆかりん姉ちゃんだけは微妙な表情を浮かべる。
「ゆかりは行かないの?」
「まさか。弟ちゃんと一緒にいられる機会を逃すわけないでしょ。ただ……御祖母様のところだと、道中は一緒にいられないから」
「「あ~……」」
ぼそりと呟くゆかりん姉ちゃんに、ひじり姉とゆゆ先生が同時に頷いた。
「もちろん迎えに来ちゃいますよね」
「そうしたら、私達では追いかけるの無理ですからね~」
「そう言うこと。私達はここで弟ちゃん見送って、御祖母様の小屋に着いた辺りでスキマ移動することになるから、それはちょっと残念かなって」
素麺をちゅるんとのみ込み、ゆかりん姉さんが俺を見る。
「……なんだよ?」
「弟ちゃんが私達と一緒に歩いていってくれるなら、お姉ちゃん嬉しいんだけどなー?」
「やだよ。姉ちゃんすぐに歩くの面倒がってスキマ移動するか、俺におんぶや抱っこさせるじゃないか」
「判ってないわねぇ……そうやって道中弟ちゃんにセクハラするのが楽しいんじゃないの」
「ゆかりん姉さんは少し自重した方がいいと思いますっ。南無三っ」
「そうですよゆかり様、いくら弟様が野良仕事で鍛えていても、私達三人を交代で抱っこして山道登っていたら倒れちゃいます」
「ゆゆ先生って以外に容赦ないですよね?」
ぷちスパルタ教育なのは小学校の頃から変わらないのかー。
だけどまあ、ゆかりん姉ちゃんの言うことも判らないではない。
ばあちゃんからお呼びがかかったと言うことは、十中八九俺には迎えが来るからだ。
「それで弟君、御祖母様のところには行くの?」
「あ、うん。昼飯片付け終わったらすぐに出るよ」
「判ったわ。それじゃあ、そう御祖母様に伝えておくから」
そう言って携帯を取り出すえーりん姉さん。
どうやらばあちゃんにメールを送るらしい。
山中に住んではいるが、ばあちゃんの家の側にはばあちゃん自ら携帯会社に掛け合って建てた基地局があるからなあ。
アレのお陰でこの辺り一帯は山中でも携帯が通じるんで村のみんなもかなり助かってるんだ。
ちゃっかり基地局の保全役を携帯会社から引き受け、報酬貰っている辺りは孫として見てもどうかと思うが。
「ところで、姉さんは一緒に行かないの?」
メールを打ち終えたえーりん姉さんに、ゆかりん姉ちゃんが声をかける。
「そうね……往診は終わったし、急患が入らなければ余裕はあるけど……ゆかり、何かあったら送ってくれる?」
「その位お安い御用よ」
そう言うと、姉ちゃんはにやりと笑った。
「それじゃあ……えーりん姉さんも水着用意しなきゃね」
「水着? なんでそんなもの……」
「御祖母様のところには池があるの忘れた? 昔は夏になるたびに遊びに行って、弟ちゃんと一緒に水浴びしてたじゃない……裸で」
「ぶふっ!?」
はっ、鼻に素麺がっ!?
「なっ……ゆ、ゆかりっ! この歳で弟君がそんな事応じてくれるわけないでしょ!」
狼狽してるのか、微妙にずれたことを咎めるえーりん姉さん。
というか姉さん、俺がOKなら今でも裸でいいのか。
「だから水着を用意するんでしょ? それなら弟ちゃんも一緒に遊んでくれるし」
「俺に拒否権ないの?」
「弟ちゃん、拒否するの?」
「……そりゃまあ、水着なら拒む理由はないけどさ……」
えーりん姉さんも一緒なら、さっきみたいなことはないだろうし。
野外では常識的だからな、えーりん姉さんは。
屋内で他の人の目がない時はゆかりん姉ちゃん並にリミッター外れたりもするけれど。
「ね? だからえーりん姉さんも水着選びましょう。弟ちゃんが向こうに着くまで時間はあるんだし」
「……ま、まあ……弟君と一緒に水浴びできるのなら……仕方ないわね」
うんうんと、えーりん姉さんが自分を納得させるように頷く。
何が仕方ないのか若干判らないけど、そういうことらしい。
俺としては1年ぶりにえーりん姉さんの水着姿を見られるわけで、普通に嬉しいのだけど。
えーりん姉さん目茶苦茶スタイルいいし。
まあ、これはゆかりん姉ちゃんやひじり姉やゆゆ先生にも言えることだけど。
母さんの育成の賜なのか、それともチェンジリングという出自のせいか、姉さん達の身体は普通の胴付きと比べてもなお人間に近い。
流石に顔はゆっくりらしい丸みを帯びているから人間と見間違われることはあまりないけど、体つきは人間と変わらない。
むしろ胸とかはお尻とかは、ゆっくり特有の弾力ある皮のお陰で人間以上に綺麗な形をしていたりする。
ゆゆ先生なんて、ロケットおっぱいってきっとこういうのを言うんだろーなーって感じだしな。
さっき水着を見た限りじゃ、ひじり姉とかまた成長してたようだし……えーりん姉さんも……。
「弟君、御祖母様から返信がきたわ」
えーりん姉さんの言葉で、俺は楽しい妄想タイムから現実に引き戻された。
「え? あっ、う、うん……それで、ばあちゃんなんて?」
「かなこを迎えに寄越したから、一緒に来るようにだそうよ」
「やっぱり来るのね」
「かなこさんと会うのも久しぶりですねっ」
「こぼね~。元気なんでしょうか、かなこ様」
「この間お使いに行った時は元気だったわよ? 四代目のさなえとすわこは覚えが良いって喜んでたわ」
そう言って、ゆかりん姉ちゃんはみかんを一切れ摘み、口に運ぶ。
みかんの房を唇で挟み、少しずつ飲み込んでいく仕草が妙にエロティックだ。
「ま、それ以上に弟ちゃんは元気かとか、次はいつ遊びに来るのかとか煩かったから、そんなに気になるなら逢いに来ればと言ったんだけど」
「「「「…………」」」」
俺達の視線が、ゆかりん姉ちゃんに集まった。
「……なに?」
「いや、ゆかりん姉ちゃん……ばあちゃんが俺を名指しで呼びつけたのって……」
「多分かなこに頼まれたからね」
「あら?」
「御祖母様、かなこさんには甘いですから」
「弟様を呼びつける口実にもなりますし、渡りに船だったんでしょうね~」
「あ~……あはは、これはゆっかりしちゃったわね」
「はぁ……ま、どうせ休み中に一度は顔出すつもりだったからいいけどさ。姉ちゃん、またかなこさんを焚きつけるようなこと言ってないだろうな?」
「失礼ねっ? それじゃ私がいつもかなこをからかってるみたいじゃない」
「あんまり間違ってないと思うけど?」
「えーりん姉さんまでっ? もうっ、別に大したことは言ってないわよ? この間一緒にお風呂に入ったとか、宴会したとか、そのくらいで……」
「それどっちも俺の貞操大ピンチだった時だよねっ!?」
思わず叫ぶ。
ゆかりん姉ちゃんソレ絶対わざとやってるよねっ!?
焚きつけてるというか挑発しまくってるよね!?
いくらかなこさんと同い年でライバル視してるからってそういう方向の弟自慢はよくないと思うんだ俺っ!
「南無三っ……それはかなこさんも来ますね」
「かなこ様、お仕事の都合で弟様にはなかなか逢えませんものね……こぼね~」
気持ちは判るとうんうん頷くゆゆ先生。
まあ、姉ちゃん達と違ってゆゆ先生は学校があるから、俺とはそう頻繁に逢える訳じゃないもんな。
「あは、あはははは……」
ばあちゃんのところに手伝いに行くだけの筈が、どうしてこうなった。
いや、まだなにか起こるって決まった訳じゃないけどさ。
でも……なんだろう。
嫌な予感しかしないんだが。
パインサラダを食いかけで出撃するような気分になって、俺は自棄気味に素麺を啜り込む。
その耳に。
「弟殿~~っ!」
久しぶりに聞く、かなこさんの声が届いた。
「うわ、もう来たの!?」
「これは……私がメール出す前に出てるわね」
ゆかりん姉ちゃんが呆れたように声をあげ、えーりん姉さんが携帯片手に呟く。
「あわわ……とにかく俺、迎えに出てくるよ!」
残りの素麺を一気に呑み込み、玄関に走る。
とりあえずサンダルに足を突っ込んで外に飛び出し、俺は空を見上げた。
山向こうに入道雲がある以外は澄み渡った青い空。
そこを飛んでくる人影があった。
「かなこさーん!」
「おお、弟殿っ! そこか!」
赤い上着に黒のロングスカート。
そして背中にしょった一抱えもある円形の注連縄と、宙に浮かぶ四本のオンバシラ。
正直言って死ぬほど目立つその姿に、農作業をしていたご近所さんも手を止めて空を見上げている。
まあ、この村でかなこさんを知らない人間はいないので、騒ぎ立てられる事がないのがせてもか。
第一種危険ゆっくり、胴付きゆっくりかなこ。
特別な許可を受けた者か公共機関でなければ飼育が許されず、人間の保護を受け入れない野生の個体は優先駆除対象になる……。
うちの姉ちゃん達やゆゆ先生に並ぶ『特別』なゆっくりだからな、かなこさんは。
「いま行くぞ、弟殿っ!」
「お手柔らかにねー!」
大きく手を振りながら、かなこさんが俺に向かって飛んでくる。
注連縄とオンバシラが微妙に動いて角度を調整し、高度を下げていく。
どんどん大きくなっていくかなこさんの姿を見上げ、俺は両手を拡げた。
「注連縄セイル、タッキング!」
勢いよく俺に突っ込んで来ていたかなこさんの身体が、一瞬浮き上がる。
同時にスピードが殺され……そのままふわりと落ちながら、かなこさんは俺に抱きついてきた。
「おわっ!?」
勢いを殺されていたとはいえ、えーりん姉さんよりも背の高いかなこさんに抱きつかれて一瞬バランスを崩しかける。
「弟殿っ! 久しいな、弟殿~っ!」
「ととっ、たっ、はっ……! は、はは……久しぶりだね、かなこさん……梅雨前のゆっくり狩り以来かな?」
なんとかバランスを取り、かなこさんを地面におろす。
その間もかなこさんは俺に抱きつき……すりすりと、俺に頬を擦りつけ続けていた。
ぎゅっとしがみついているので、身長以上に豊かな胸が思いきり押しつけられる。
「ああ、実に二ヶ月ぶりだ! まったく、ここまで私を待たせるとは弟殿も意地が悪いぞ!」
「ごめんよかなこさん、俺も学校とかで忙しくてさ……」
「いや、判っている。判っているんだ弟殿。今のは私の我が侭……だが、こうしてまた逢えた事を何より嬉しく思うぞ!」
抱きついたまま、すりすりを止めないかなこさんの身体に手を回し、そっと抱き返した。
ぽんぽんと背中を叩いてやると、かなこさんは嬉しそうに鼻を鳴らし、更に頬を擦りつけてくる。
そこに。
背後から、悲鳴のような声がした。
「ちょっとかなこ、弟ちゃんに何やってるのっ? それもう親愛のすりすりを越えてるでしょっ!?」
「はっ破廉恥ですよっかなこさんっ! 南無三です!」
「こっこぼね~っ!? 弟様が、すっ、すーりすーりされてっ……!」
「うおっ!? ね、ねーちゃん達っ!?」
振り返ると、眉を吊り上げているゆかりん姉ちゃんに、涙目のひじり姉とゆゆ先生。
そしてその後ろに、こめかみを押さえているえーりん姉さんが立っていた。
「まったく……かなこ、いくら久しぶりに弟君に逢えたからって、表ですりすりは止めなさい。はしたないわよ」
「おお、久しいなえーりん! ひじりもゆゆこも健勝だったか?」
「さりげなく私を除外するんじゃないわよっ」
「はははっ、怒るなゆかり! お前とは逢ったばかりで、健勝なのは判っているからな! 先日の土産の赤ゆ饅頭は主殿も喜んでいたぞ!」
ようやくすりすりを止めたかなこさんが、姉さん達に笑いかける。
……助かった。
それにしても、抱きついていた事よりすりすりの方を問題視する辺り、姉さん達もゆっくりだよな。
まあ、胴付きはすりすりによって妊娠することはなくなっているとはいえ、すりすりによるすっきりーは可能だ。
だから、すりすりに過剰反応するのも頭では理解しているんだけど……俺も人間だから、感覚的にはピンと来ないんだよな。
人間でいうと、かなこさんは俺に対して逢うなりディープキスしてるようなものらしいんだが……。
それなら姉ちゃん達には騒ぎ立てる権利ないと思うんだ、俺。
「……それで? 弟ちゃんを指名した理由はなんなの、かなこ?」
肩をすくめ……不意に、真面目な表情になって、ゆかりん姉ちゃんが口を開いた。
「弟ちゃんに逢いたいって理由だけで、御祖母様の山を守るゆっくりであるあなたが、わざわざ山を下りたりはしない筈よね?」
「あら? そうだったんですか? 私は本当に、ゆかりん姉さんが焚きつけただけかと……」
「……ひじり、あんた私をなんだと思ってるのよ……」
「普段の言動が胡散臭すぎるからでしょ、自業自得よ……それでかなこ、どうなの?」
ゆかりん姉ちゃんをたしなめ、えーりん姉さんが改めて尋ねる。
それに、かなこさんは真面目な顔になって、答えた。
「ああ。最近、山にれいぱーありすが出るようになってな……弟殿には、駆除を手伝って貰いたいのだ」
最終更新:2010年10月15日 17:24