『出会い』
D.O
その出会いは、町の中心から少し離れた、とある並木道でのことだった。
「ゆぁ~ん。あんよしゃん、ゆっくちしちぇ~。」
秋に入り空気も涼しくなり、人通りの少ない並木道は心地よい静けさに包まれていた。
そんな心地よい静寂を破ったのは、幼い生き物の悲痛な叫び声。
耳に飛び込んできた叫びの方向に視線を向けた私は、そこで一匹の幼い赤れいむを見つけた。
「ゆぴぃ、ゆぅ、いちゃいぃぃ~。」
おそらく、側に転がっている尖った小石を踏んで、あんよを傷つけてしまったのだろう。
「おにぇーしゃん、たしゅけちぇ、いちゃいよぉ。」
本来ならば、片時も目を離さずに見守っているだろう両親はどうしたのだろうか?
はぐれたのか、死に別れたのか、それともおうちから、勝手に外に出てしまったのであろうか?
一つ確かな事は、私が助けでもしなければ、この赤れいむは長く生きられないだろうことであった。
・・・これが、私と赤れいむの出会いだった。
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「おにぇーしゃん・・・」
ぐちゃっ。
目障りだったので、私はその赤れいむを踏みつぶした。
まったく。せっかくの風情が台無しというものだ。
家に帰って見てみると、靴底が餡子でベッタリ汚れていた。
私は少しだけ後悔した。
最終更新:2010年10月15日 21:41