※駄文、稚拙な表現注意
※俺設定注意
※グロテスクな描写注意
※あっさり小話第4弾です。
まりさは幸せだった。
金バッジも、あまあまも、おもちゃもふかふかのクッションもこの路地裏にはないけれど。
ダンボールハウスにいる優しいつがいのれいむ。自分とれいむに似た3匹のかわいいおちびちゃん達。
それさえあれば後はなにもいらない。
それがまりさのゆっくり。それがまりさの全てだ。
「ゆーゆー、みんなゆっくりしてってねー・・・」
しとしとと雨が降り続ける路地裏にまりさの幸せそうな声が響いた。
幸せまりさ一家
作、長月
まりさは元々金バッジを持つ飼いゆっくりだった。裕福な広い家をもつ飼い主に飼われ、ゆっくりとしては十分勝ち組と言えるゆん生だっただろう。
しかしまりさはゆっくりできなかった。
「ねぇ、おにいさん、いっしょに・・・」
「ああ、悪いが、今忙しいんでな、後にしてくれ。」
「ゆぅ・・・」
理由は唯ひとつ。飼い主のお兄さんが構ってくれなかったからだ。
お兄さんは朝早くから夜遅くまでお仕事をしており、帰るのはいつもまりさが寝た後。たまの休みの日もパソコンで書類やレポートを作っており、まりさは全く相手にされない。
元々、お兄さんはまりさを部屋のインテリア程度にしか考えていなかったのである。
寂しいからつがいが欲しいといっても「ゆっくりはつがいを作るとゲスになる」とあっさり却下。まりさの孤独を充たしてくれるものは誰もいない。
まりさはゆっくりには広すぎる家でいつも一人ぼっち。
どんなに美味しいあまあまを食べても、どんなに立派なおうちに住んでいてもそれを誰かと共有しなければゆっくりできない。
ゆっくりとはそういうものだ。だからこそゆっくりは群れを作り、つがいや子供を欲しがるのである。
寂しがり屋のまりさには寂しくつらい毎日だった。
そんなゆっくりできない日々を送っていたまりさだったが、庭で行倒れていた野良れいむを介抱したことががまりさのゆん生を変えた。
身なりこそ汚いが誰よりも優しく気立てのいい野良れいむ。
寂しさも手伝ってまりさはれいむを好きになり、れいむのほうも行倒れていた自分を救ってくれたまりさに悪い感情を持つはずもなかった。
しかし2匹は野良ゆっくりと金バッジ。そう簡単に結ばれるはずもない。
ある日、飼い主に野良れいむと会っていたことがばれてしまった。
お兄さんは折角、高い金はたいて買った金ゆっくりが汚らしい野良と仲良くしているのを知り大激怒。野良れいむと今後一切会ってはいけない、でなければ捨てるとまりさに厳重注意した。
まりさは迷った。
まりさとて馬鹿ではない。野良ゆっくりがどれだけ大変なのかは知っているし、苦労して取った金バッジや飼いゆとしての恵まれた暮らしに未練がないと言えば嘘になる。
しかしまりさは優しすぎた。賢く上手く生きていくにはあまりにも。
「いいんだよ、まりさ。れいむはひとりでもいきていけるよ。まりさまでのらでゆっくりできなくならなくていいよ。」
そう言って寂しく笑うれいむの顔を思い出すとどうしても踏ん切りがつかない。
結局まりさはれいむを見捨てることができなかった。
こうして飼いゆっくりとしての全てを失ったまりさ。
しかしまりさは後悔はしていない。もう一人ではないのだから。念願だった家族が出来たのだから。
お兄さんに捨てられた後、まりさはれいむに正式にプロポーズし、れいむもこれを受け入れた。あまり良い場所ではないがマイホームも手に入れ、今では3匹のおちびちゃんに囲まれ幸せ一杯である。
まりさは思う。
例えどれほどたくさんのあまあまを手に入れようと、どんなに立派なおうちに住んでいようとそれを一緒に喜んでくれる誰かがいなければ何の意味もない。不味い残飯や雑草も家族みんなで食べればゆっくりできるし、どんな場所でも家族が一緒ならそこが一番のゆっくりプレイスだ。
だからまりさは幸せ・・・幸せなゆっくりなのだ・・・と。
「まりさはれいむとおちびちゃんがいれば、きんばっじさんもあまあまもいらないよ・・」
そう言ってまりさは子供たちにすーりすりをする。愛する家族にすーりすりするこの時こそがまりさの至福のゆっくりタイムだ。
ボトッ・・・
その時子まりさの顔から巣の中に何かがこぼれ落ちた。
「もーおちびちゃんたら・・・・おめめがとびだしてるよ。」
そう言って飛び出たおちびちゃんの眼窩に目をはめ込むまりさ。
「ふふふー・・・こんなかわいいおちびちゃんがいてまりさはほんとにしあわせーだよー・・・」
そう笑うまりさの頬には、一筋の涙がつたっていた。
本当はわかっていた。
もう愛する家族はこの世にいないことを。
数日前から降り続く雨により、この路地裏にはカビが繁殖し、成す術もなくみんな死んでいったことを。
そしてまりさ自身もすでにカビが発症しており、もう長くないことも。
ただ認めたくなかった。
認めてしまえば世界が壊れてしまいそうで。まりさ自身も壊れてしまいそうで。
「ゆーゆーみんなゆっくりしてってねー・・・」
まりさの一人ぼっちの家族団らんが小雨の降る路地裏にいつまでもいつまでも響き続けていた。
後書き
季節ネタ、梅雨をテーマにした本作。よく考えてみたらカビってゆっくりからしてみたら中世ヨーロッパのペスト並に怖い病気ですよね・・・
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追伸
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最終更新:2010年10月15日 21:42