『いのちはたいせつ 前篇』 36KB
虐待 日常模様 妊娠 家出 共食い 番い 飼いゆ 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ ゲス ペットショップ 現代 愛護人間 虐待人間 独自設定 うんしー なかとそとの人です
はじめに
この作品は・・・
人間が迷惑行為に及ぶシーンがあります
通常種のみ登場します
三部構成のため非常に長いです
虐待が行われるのは中編の終盤からです
以上の点に注意してお読みになるようお願いします
1
家賃月四万五千円
キッチンとユニットバスつきの賃貸マンション
居住スペースとなる場所には柵やゆっくりハウスなどが置かれ手狭になっている
その中で一人の女性が腰に手を当て「よし」とつぶやいた
彼女はこれからゆっくりブリーダーとしての第一歩を歩もうとしているのだ
この世界に突如として現れた不思議生物ゆっくり
我が国にしか存在しないこの奇想天外な生き物は世界中が注目している
いまやゆっくりペット業界の需要はウナギ登り
その勢いはとどまることを知らない
そんな状況なら一攫千金あてようと新規参入する人がいるわけで
おねーさんもそんな中の一人だった
彼女は人語を喋り、中身がお菓子でできたゆっくりが大好きだった
笑顔が素敵なれいむ、元気なまりさ、都会派なありす、森の賢者ぱちゅりー・・・
ゆっくりたちの微笑む顔を思い出すだけで小一時間は夢想にふけることができる
ゆっくりの一家が駅前の広場などでお歌を歌っていると、ついコンビニで買ったお菓子を差し出してしまう
あまり褒められた行動ではないとわかってはいるが本能で動いてしまうのだ
もし、ゆっくり達と共に暮らしておかねが稼げればこんなに幸せなことはない
こつこつとアルバイトをしてためたお金で飼育設備を整え
図書館やネットで必要な情報を集めた
やることはすべてやった。 準備は万端。
何か不穏なフラグが立っているような気がするが
これから始まるのは悲劇や喜劇なのではなく、偉大なサクセスストーリーなのだ
と、少なくとも彼女はそう思っている
「さぁてっと・・・ さっそくれいむとまりさに起きてもらうかな」
おねーさんが目をやった先には、密封されたプラスチックケース
中にはコールドスリープさせられているれいむ種とまりさ種が一匹ずつ入っている
これから繁殖させるために加工所で買ってきた物だ
「じゃあ・・・ れいむ、まりさ・・・ゆっくり『ピンポーン!』・・・はぁ・・・なんなのよ、もう」
箱を開けようとした途端、チャイムがけたたましく鳴り響いた
軽く出鼻をくじかれたような気分だ
『ピーンポン!ピンポン!ピーンポーン!』
「はいはい、いまでますよ~」
何度もしつこく鳴らされる呼び出し音に若干イライラしながら、一抹の不安が頭をもたげる
せっかくこんな大切な時に一体何の用だろう
宗教や新聞の勧誘だったらいやだな
重い気持ちで扉を開けた
「よぉ! おっす、おらお兄さん! 元気にや『バタン!』・・・」
あの黒ぶち眼鏡・・・間違いない、兄だ
最悪だ、せっかくの船出が台無しだ
自転車で日本一周しようと出かけた瞬間、家の目の前でトラックに轢かれたような気分だ
ドンドンドンドン! ドンドンドンドン!
奴はしつこく扉をノックする
近隣の住民に迷惑がかかる前にさっさと追い返そう
毅然とした態度で臨めば追い返せるはずだ、多分
「さっさとかえれや! このうじむしげじげじまだらうんこ野郎!」
「むきゅん、 なんてげひんなにんげんさんなのかしら・・・」
「こんなんでも俺の妹なんだ。 勘弁してやってくれ」
へらへらと笑っている兄の腕の中には、憮然とした表情でこちらを見ている金バッチをつけた一匹のパチュリーがいた
2
「せっかく可愛い妹を心配して実の兄が訪ねてきたというのに、お前ってやつは・・・」
「余計なお世話です。 さっさと帰ってください」
「おいおい、兄弟なのに敬語はよそうぜ。 まるで他人みたいじゃないか」
「ええ、他人ですのでなるべく早くお引き取りお願いします」
「ははは、こやつめ。 ツンデレというものがまるで分かっておらぬ」
「むきゅん・・・なんなのかしら、このちゃばん」
飼育設備で狭くなった部屋の隅っこで小さくまとまり紅茶をすする二人と一匹
彼女にとって最も忌むべき存在であり、唯一の家族である兄は一向に帰る気配はない
長々と下らなことを喋って居座る気満々である
「お願いですから帰ってください。 帰らないのなら私が出て行きます」
「まぁまぁ、そう熱くなるなって。 これからブリーダーとしての人生を歩もうとするお前に素敵なプレゼントを持って来たんだからよ」
「要りません。 帰ってください」
「いや、帰らないね。 お前がプレゼントを受け取るまで帰らないね」
「・・・はぁ。 そのプレゼントっていうのはなんなんですか?」
「そこのぱちゅりーだよ」
「・・・え?」
眉間にしわを寄せてパチュリーの方を向く
ぱちゅりーは二人のやり取りなど全く意に介せずとでも言うかのように、紅茶の香りを楽しんでいる
「だから、そのぱちゅりーをお前にやるって言ったんだよ」
「・・・要りま『だまれ』・・・はぁ!?」
「このまま放っておいたらお前は絶対に失敗する。 そうならないための保険だ、保険」
「ふざけんなっ!!! なんでやるまえから失敗するとか決めつけてんの!?」
「まぁ、だてにお前の兄貴やってるわけじゃないけんね。 どうなるかくらい解るわボケ」
「帰ってよ! もうあんたの顔なんて見たくないんだよ!」
兄からの心ない言葉に思わず声を荒げる
胸の奥が何かで締め付けられるように苦しい
「勘違いしてるみたいだから一つ言っておく
これはお前の為じゃなくてこれから生まれてくる赤ゆっくりの為だ」
「・・・・・何が言いたいの?」
「早い話、お前に育てられた赤ゆっくりは直ぐにゲス化して売り物にならなくなるってことだ
売り物にならなくなったゆっくりの末路はお前もしってるだろ?
加工場で食品やゆっくりフードに加工されてぐしゃぐしゃにされちゃうんだぞ!
命はたいs『ばちゃ!』あっっっっっっづううううううう!!!」
おねーさんは紅茶の入ったティーカップを投げつけた
茶色い半透明の液体が顔面にぶちまけられ、兄は両目を抑えてのた打ち回った
「おめめが! おめめがあじゅいいいいいいいいいいいい!」
「もういいでしょ!? さっさと帰ってよこのバカ兄貴!!!」
「うわあああああん! もうこねえよおおおおおお!」
泣きながら逃げてゆく兄を見送るおねーさん
上がっていたテンションは急降下し暗くどんよりとした気分になってしまった
「まったくすなおじゃないのね」
紅茶を飲み終えたぱちゅりーがぼそりと呟いた
3
「いい? あなたはそこでじっとしててね」
「・・・ゆっくりりかいしたわ」
「あのバカになに吹き込まれたかしらないけど、勝手なことしないでね」
「・・・むきゅん。 まるでしんようされていない」
兄の置いて行ったぱちゅりーに念を押してれいむとまりさの入っているケースに手をかける
思わぬ邪魔が入ったが、これでようやく出発することが出きる
深呼吸して気持ちを落ち着けて、プラスチックケースの封をといた
プシューーーーーーー!!!
中から勢いよく冷気が噴出して冷たい空気が両手に降り注ぐ
「ゆっくりしていってね!」
おねーさんは蓋をあけると不自然に微笑みながら言った
返事はない
「おねーさん・・・いいにくいのだけれど、こーるどすりーぷしてたゆっくりはすぐにはあいさつできないのよ」
「・・・そ、それくらしってるもん。 ちょっとふざけただけだもん」
ぱちゅりーに指摘されそっぽを向くおねーさん
前途は多難である
「ねぇ、この子たちどれくらいで目が覚めるの?」
「しばらくようすをみるひつようがあるわね。 って、ちょっとそのはこみせてもらってもいいかしら?」
「え? ・・・別にいいけど」
不意にぱちゅりーに尋ねられ、言われるがまま空になった箱を差し出す
ぱちゅりーは箱に書いてあるロゴや説明文を目を細めて読んでいく
「むきゅ・・・ こ、これはひどい・・・」
「・・・え? どうしたの?」
「これにわがいようゆっくりじゃない! なんでこんなのえらんじゃったの!?」
「ええ!? 駄目だったの?」
「だめにきまってるでしょ!
こんなせまいおうちのなかでにわがいようなんてそだてたら
じゅっちゅうはっく、すとれすさんでげすかするわ!」
「ウソでしょ!?」
「ぱちぇはうそなんてついてないわ! それにしてもどうしてにわがいようなんてえらんだの!?」
「だって・・・ 元気そうで育てがいがあると思ったから・・・」
「むきゅぅ・・・ あたまがいたいわ・・・ まさかここまであんこのうなんてそうていのはんいがいよ・・・」
おねーさんは室内飼い用ではなく庭飼い用ゆっくりを選んでしまっていた
理由は先ほど自分の口で述べたとおり
庭飼い用は気温や天候の変化に耐性があり、外での環境に適応している
しかし、自由に駆け回ることのできない室内ではストレスが溜まりゲス化しやすいのだ
おねーさんは準備を始めているその時点ですでにフラグを立ててしまっていたのである
「ぱちぇがいなかったらこのことにきづきもしなかったでしょうね・・・」
「・・・はい。 すみません」
おねーさんは正座をしてぱちゅりーの小言を聞く
二人の間の力関係はすっかり逆転してしまっていた
4
「「ゆっくりしていってね!!!」」
「私が飼い主のおねーさんよ! ゆっくりしていってね!」
「むきゅん、ぱちぇはぱちぇよ。 ゆっくりしていってね」
目を覚ましたれいむとまりさがお決まりの挨拶をした
笑顔で挨拶を返すおねーさん
とりあえず形だけの挨拶で済ますぱちゅりー
既に二人の間には温度差が生じていた
れいむとまりさは挨拶をすますと辺りをきょーろきょろと見渡しはじめた
しばらくして探しているものが見つからないのか、不安な顔でおねーさんに尋ねた
「ゆぅ・・・ ここはどこなの? くささんもはなさんもはえてないよ?」
「なんだかゆっくりできないよぉ・・・ れいむたちはどこにいればいいの?」
先ほどぱちゅりーが指摘したとおり、二匹は早速この住環境に不安を抱き始めたようだ
おねーさんはあわてて説明する
「ご、ごめんね! おねーさんのお家は狭くて二人にはここで生活してもらうことになるの・・・」
「ゆうううう!? じゃあくささんのうえでおひるねも、ぴょんぴょんもできないのぉ!?」
「ゆんやあああああ! こんなせまいところじゃゆっくりできないよおおおおお!!」
「ああ、もぅ・・・ ほんとに、ごめんね・・・ ごめんね」
「・・・むきゅん。 ちょっといいかしら」
泣き出しそうな二匹を前にうろたえてばかりで何もできないおねーさん
その間にぱちゅりーが割って入った
「れいむ、まりさ。 よくきいてね。
さいきんれみりゃがひんっぱん!にもくげきされるようになったわ
もしおそとでせいかつしてたられみりゃにみつかって、すぐにむーしゃむしゃされてしまうの
だからこれはしかたのないそちなのよ。 ゆっくりりかいしてね」
「ゆぅ・・・ れみりゃのせいならしかたないね・・・」
「ゆっくりりかいしたよ・・・ れいむもしにたくないからぱちゅりーのいうとおりにするよ」
なんということでしょう・・・
ぱちゅりーのでまかせをすっかり信じ込んでしまったではありませんか
これにはおねーさんも大喜び
「よかったぁー! これで一安心だね!
じゃあれいむちゃんとまりさちゃん! さっそくすっきりーしようか!」
「・・・・・・・は?」
「お、おねーさん?なにいってるの? まりさはりかいふのうだよ?」
「ゆぅ? ねえねぇぱちゅりー・・・このにんげんさんあんこのうなの?」
目が点になる三匹
ゆっくり達とは対照的におねーさんは自信満々だ
「だってすっきりーしたらおちびちゃんができるんだよ!?
おちびちゃんはゆっくりできるんだよ! 皆知ってるでしょ?」
「むぎゅぅ・・・だめだわこのひと、はやくなんとかしないと・・・」
まるでどこぞのしんぐるまざーのような言い分に呆れかえるぱちゅりー
れいむもまりさもドン引きである
「まりさはまだれいむとはしりあったばかりだからすっきりーするつもりはないよ」
「れいむもだよ。 しらないゆっくりとすっきりするなんてやりまむびっちさんだよ」
「・・・え? 二人とも初対面なの?」
「・・・そういうもんだいじゃねーから」
ぱちゅりーはゆっくりらしからぬ物言いで突っ込みを入れた
5
それから数日後
ぱちゅりーの助言もあり何とかれいむとまりさを仲良くさせることに成功したおねーさん
れいむの額に生えた茎には五匹の実ゆっくりが安らかな笑みを浮かべて鈴なりになっている
まるまると大きく肥えた実ゆは、ふるふると震え今まさに生まれようとしているのだ
「ゆーん! とってもゆっくりしたおちびちゃんだねー! まりさはまちきれないよぉ!」
「おちびちゃんたちゆっくりしないではやくうまれてね! うまれたられいむがおうたをうたってあげるよ!」
「うふふふふ、そんなに急かさないの!」
和気あいあいと盛り上がるれいむとまりさとおねーさん
ぱちゅりーは少し離れておねーさんのことを冷めた目で見ていた
「ねぇ、おねえさん。 ちょっといいかしら」
「ん? なぁにぱちゅりー?」
「ひとつちゅうこくしておくわ。
このままいったらあのにひきもうまれてきたおちびちゃんもまちがいなくげすになるわ」
「なんでわかるの? まだ生まれてもいないじゃない」
ぱちゅりーは真剣に話したが、有頂天になっているおねーさんは聞く耳を持たない
「うまれてなくてもわかるわ! おねーさんもあのふたゆもきっとおちびちゃんをあまやかすわ!」
「そんなこと言われても・・・ どうしてそんな自信満々に断定できるの?」
「おねーさんをみてたらだんってい!できるわ! いままでしてきたことをおもいだしてみなさい!」
「そんな怒らないでよォ・・・」
今までおねーさんがしてきたこと・・・
ご飯が足りないと言われればゆっくりフードを山のように盛って与え
柵が邪魔だと言われれば部屋を自由に行き来できるように撤去し
お家が狭いと言われれば新しいお家を買って与える・・・
「なにも間違ったことはしてないとおもうけど・・・」
「むぎゅうううううう! あたまがわれそうにいたいわ・・・
と・に・か・く!!! あたらしくうまれたおちびちゃんはぱちぇがきょうっいく!するからそのつもりで」
「ええええ! ぱちゅりーが先生してくれるのぉ!?」
「そのつもりよ。 おねーさんじゃまともなことなにひとつおしえられそうにないからね」
「ありがとおおおお! ぱちゅりーって実はとってもいい子だったんだね!」
「・・・・・・」
「ゆぅぅぅぅ! うまれるよ! おちびちゃんたちうまれるよ!」
「はやくうううう! れいむのかわいいおちびちゃん!」
話をしているといつの間にか出産の時を迎えたおちびちゃん達
茎の一番先に実っていた赤まりさがぶるるっと震えると、床に敷いていたまりさのお帽子の上にぽとりと落ちた
「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!」
「「ゆっくりしていってね!」」
「ゆっくりしていってね! ほらほら、ぱちゅりー! とっても可愛いよ!」
「むきゅ? はいはい、ゆっくりゆっくり」
「にゃんぢゃかこにょぱちゅりーゆっくちしちぇにゃいにぇ!」
「・・・・・・」
こんな調子で次々と順調に生まれ、まりさ種三匹れいむ種二匹の計五匹が無事に誕生した
「おにゃかしゅいちゃよおお! むーちゃむちゃしちゃいよおお!」
「おちびちゃんたちはこれをたべてね!」
れいむが額に生えていた茎を引き抜いておちびちゃん達に与える
茎を前にした赤ゆっくり達は大きく口を開けて茎を食べ始めた
「「「「「むーちゃ!むーちゃ! ちあわちぇー!!!」」」」」
食べながらしあわせーと叫び食べかすをまき散らしている
そんな赤ゆ達をぱちゅりーはすかさず注意した
「おちびちゃんたち・・・ ごはんをたべるときはのみこんでからしあわせーするのよ
じゃないとたべっかすがおっこちてにんげんさんがゆっくりできなくなるわ」
「ゆゆ!? なにいってるの!? しあわせーはゆっくりできるんだよ! そんなこともしらないの!?」
「ぱちゅりーはだまっててね! れいむのおちびちゃんたちはゆっくりしてるんだよ!」
ぱちゅりーの指摘に食ってかかる両親達
ここで譲歩してしまったらずるずるとよくない方向へと向かって行ってしまう
二対一にもかかわらず、ぱちゅりーは負けじと両親達を睨みるつけた
お互いににらみ合ったまま動かず一触即発の空気が張り詰める
「ぱちゅりー・・・ 今日は生まれたばっかりだから大目に見てあげてね」
「そう・・・ おねえさんはそれでいいのね」
おねーさんが優しく語りかけると、ぱちゅりーはため息をついて両親達から視線をそらした
6
「それじゃあいまいったことをふくっしょう!してみてちょうだい」
「まりしゃはにんげんしゃんをゆっくちさせましゅ!」
「れいみゅはおちょくじちゅうにしあわせーしません!」
「まりちゃはかっちぇにおしょちょにでましぇん!」
「れいみゅはにんげんしゃんがゆるちちぇくれりゅまぢぇ、しゅっきりーしましぇん!」
「・・・まりしゃはにんげんしゃんのいうこちょをきくのじぇ」
ぱちゅりーの授業を受ける赤ゆ達は何度も同じことを復唱させられていた
こうすることで、餡子に人間さんとの付き合い方やルールを記憶させて行くのだ
やる気のない子にはぱちゅりーから厳しい喝が入れられる
「まりさ! やるきないの!? ちゃんとおおきなこえでいいなさい」
「ゆぅ!? まりしゃはにんげんしゃんのいうこちょをきくのじぇ!」
「それでいいのよ。 さぁ、おちびちゃんたちあとじゅっかいふくっしょう!するわよ」
「「「「「ゆえええええええ!?」」」」」
多少厳しすぎるような気もするが、こうでもしないと社会性というものは身につかない
経験上ぱちゅりーはそのことを知っていた
「ゆうううううう! どうしてまりさのおちびちゃんたちがこんなことしなくちゃいけないのおおおおお!?」
「もっとゆっくりさせてあげてよおおおお! おちびちゃんがかわいそうだよおおおおおおお!!」
柵の中に入れられた両親達はそのやり取りを見て文句を言っている
庭飼い用だったため、お家の中での生活の仕方を教わって来なかった親ゆっくりは
赤ゆ達が受けさせられているぱちゅりーの授業が心底不満でしょうがなかった
どうしてこんなにゆっくりできないことを可愛いおちびちゃんにさせるのだろう
ぱちゅりーへの不満は直接本ゆんには向かわず、おねーさんへと向けられる
「おねーざん! どぼじでごんなごどずるのおおおおおお!?」
「ごごがらだじでね! おじびじゃんだじどあぞばぜでねえええ!!」
「で、でもぉ・・・ 今はお勉強の時間だから・・・」
授業の邪魔になるからといって両親を柵の中に閉じ込めたのはぱちゅりーの指示によるものだ
こうでもしないと授業に乱入して赤ゆ達に好き勝手させてしまうので仕方なくおねーさんはその指示に従っていた
「ごんなのぜんぜんゆっぐじでぎないよおおおおお!」
「おねえざんはれいむだじのごどがぎらいなの!? だがらごんないじわるずるの!?」
「ご、ごめんねぇ・・・ だめなおねーさんでごめんねぇ・・・」
半泣きになりながら必死に訴える親ゆっくり
そんな親ゆっくりに、おねーさんはその場しのぎの謝罪を繰り返していた
一方、授業を受けている赤ゆ達にも変化が表れ始める
「やぢゃやぢゃもうやぢゃ! まりしゃ、おべんきょうにゃんきゃしちゃくにゃのじぇ!
こんにゃこちょしちぇにゃいぢぇ、おきゃあしゃんにしゅーりしゅりしちぇもりゃうのじぇ!!」
先ほどやる気のなかった赤まりさが駄々をこねて授業を完全に放棄してしまったのだ
しかし、ぱちゅりーも甘くはない
毅然とした態度でこう言い放った
「それじゃあ、おちびちゃんはおべんきょうのあとのあまあまはぬきね。 ゆっくりりかいしてね」
「どびょじぢぇじょんにゃごぢょいうにょおおおおおおおおおおおおお!?」
授業の後にはほんのわずかではあるがあまーいお菓子がもらえることになっている
これもぱちゅりーの提案で飴と鞭で授業に集中させようと言うのだ
パサパサしたゆっくりふーどでは味わうことのないびっくりするようなしあわせー
それを一度味わった赤ゆ達は我慢して授業を受けるようになる
「まりしゃもあみゃあみゃしゃんほしいのじぇえええええ!!!」
「それならきちんとおべんきょうすることね。 つぎにわがままいったらあしたもあまあまはおあずけよ」
「ゆぴいいいいいいいいい!? しょんにゃにょないのじぇえええええええ!!」
大慌てで授業に復帰する赤まりさ
何度も何度も狂ったように復唱する
「まりしゃはにんげんしゃんにょいうこちょきくのじぇ!
いうこちょきくのじぇ! きくのじぇえええええええ!!!」
「おちびちゃんおちついてね。 ちゃんとしゅうっちゅう!するのよ」
「まりしゃはまりしゃは・・・あばばばばばばばばばばば!!!」
「これではじゅぎょうにならないわね・・・ おねえさん、このこをちょっとあずかっててもらえないかしら・・・」
「う?うん・・・ わかったよ・・・」
赤まりさをクールダウンさせるために、いったんおねーさんに預かってもらい
ぱちゅりーは残りの赤ゆっくりに授業を続行する
「ゆわああああああああん! おねえしゃああああああああん!
まりしゃはおべんきょうにゃんかしちゃくにゃいにょじぇえええええ!!!」
「でも、そんなこと言ってたら立派な飼いゆっくりになれないよ?」
「しょれにゃりゃあんっしん!しゅりゅのじぇ!
まりしゃはいじゅれびっぐになっちぇおねーしゃんをちあわしぇーにしちぇあげりゅのじぇ!」
「へー・・・ 頼もしいじゃん。 期待してるよー」
「おおいにきたいしちぇるちょいいのじぇ! おねーしゃんしゅーりしゅり」
調子に乗った赤まりさはおねーさんの指にすーりすりをした
その表情はとてもゆっくりしており、他の赤ゆ達はじっとおねーさんを見つめて授業どころではなくなってしまった
「む、むきゅん! おねーさん・・・
そのことあそんでたらほかのこまでしゅうちゅうできなくなってしまうわ
あそぶんだったらどこかみえないばしょでしてちょーだい」
「あ、ごめんねー! 可愛いかったからつい・・・」
「つい、じゃないでしょおおおおおおおお! やるきあるのおおおおおおお!?」
「そんなに怒らないでよ。 私だって悪気があってやったわけじゃないし・・・」
「おねーしゃんをこまりゃせりゅなあああ! ぷきゅー!!!」
おねーさんの手のひらの上でぷきゅーをしてぱちゅりーを威嚇する赤まりさ
ぱちゅりーはやれやれとかぶりを振って残りの赤ゆに宣言した
「きょうのおべんきょうはおしまいにしましょう。 いまからあまあまさんをくばるわ!
もちろん、おねーさんとあそんでたわるいこはあまあまさんはおあずけよ!」
「「「「ゆわーい!」」」」
「ゆぴいいいいいいいいいい! まりしゃにょあみゃあみゃあああああああ!」
ぱちゅりーは被っていたお帽子から金平糖を取り出すと、それを二粒づつ赤ゆ達に配っていく
金平糖を口に入れた赤ゆは小さな瞳を輝かせてもみあげやおさげをピコピコさせて喜んでいる
お預けを食らった赤まりさは大声で泣きわめきながら右へ左へとのた打ち回って悲しーしーをばら撒いていた
「ゆんやああああああ! まりしゃもあみゃあみゃたべちゃいのじぇええええ!!
おねええええしゃああああああああん! あみゃあみゃちょうだいなのじぇええええ!」
赤まりさに同情の視線を向けるおねーさん
ぱちゅりーはキッとおねーさんを睨みつけて牽制した
「そんな目で見ないでよォ・・・ 別にお菓子あげたりしないから・・・」
そう言いながらも、おねーさんは泣き喚く赤まりさが気になって仕方なかった
7
「ゆぴいいいいいいい! おねえしゃあああああああん!」
授業放棄であまあまをおあぜけされた赤まりさがおねーさんに泣きつく
あれからこの赤まりさは度々授業放棄を繰り返し、その都度ぱちゅりーからお仕置きを受けている
お仕置きといっても、貧弱なぱちゅりーのもみあげであんよをペンペンするくらいだったのでそれほど痛い訳ではないのだが・・・
無論、あまあまもおあずけされ毎日のように姉妹たちがおいしそうにあまあまを口にする様子をおさげを咥えて見ていた
ストレスでいーらいらした赤まりさは勉強に集中できずに癇癪を起すという悪循環に陥っている
そんな赤まりさが逃げ場所に選んだのはやさしいおねーさんだった
「おねーしゃあああん! まりしゃちょしゅーりしゅりしてほしいのじぇええええ!」
「だ、だめだよ・・・ 今は勉強のお時間でしょ?」
「やぢゃやぢゃ!
まりしゃはあんにゃちゅまらにゃいこちょしちゃくにゃいのじぇ!
しょれよりおねーしゃん、きいてほしいのじぇ!
まりしゃはぱちゅりーにいじわりゅしゃれちぇ
あみゃあみゃがたべられにゃいにょじぇ・・・」
「うん、でもそれはまりさちゃんがちゃんとお勉強しないからでしょ?」
「まりしゃはがんばっちぇるのじぇ!
じぇも・・・まりしゃはおちゅむがよきゅないのじぇ・・・」
「そんなことないと思うよ? まりさちゃんも頑張ればきっと立派な飼いゆっくりになれるよ」
「がんばっちぇるけじょだめなにょじぇ!
まりしゃにはむりなのじぇ! ぢゃかりゃおねーしゃん・・・
まりしゃにすこちでいいかりゃあみゃあみゃをわけちぇほしいのじぇ・・・」
「ごめんね、そんなことしたらおねーさんがぱちゅりーに怒られちゃうよ・・・」
「おねーじゃんばばじゅりーのがいぬじでぢょおおおおお!?
ぢゃっぢゃりゃにゃんじょがでぎるでじょおおおおお!!
はやぎゅあにょげしゅばじゅりーをぜいっざい!するのじぇ!!!」
「なんでそんなこというのよぉ! そんなこと言ってたら立派な飼いゆっくりになれないよ!」
「ゆんやあああああああ! まりしゃもあみゃあみゃたべちゃいいいい! ゆっぐりじだいいいいいい!」
頼りのおねーさんにも見放されヒステリックに喚く赤まりさ
涙をぼろぼろと零しながら失禁して、足元には水たまりができた
そんな赤まりさをみて気が気でない親ゆっくりのれいむとまりさ
柵に身体を食いこましてなんとか赤まりさを助けるよう懇願している
「おねーさん! おねがいだからおちびちゃんをゆっくりさせてあげてね!」
「おちびちゃんはとってもゆっくりしたおちびちゃんなんです! だからあまあまをたべさせてあげてね!」
「そんなこといわれてもぉ・・・」
ぱちゅりーの方をちらりと見るおねーさん
視線が合わなくても睨みつけられているような気がしてならない
「ごめんね、皆我慢してお勉強してるからそれはできないんだ・・・」
「「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」」
「ゆんやああああああああ! ゆんやああああああああ!」
「いいかげんにしなさい!!! ほかのこがじゅぎょうにしゅうちゅうできないでしょ!」
しびれを切らしたぱちゅりーが大声で一同を怒鳴りつけた
授業を受けていた他の赤ゆ達は、一連の騒動で集中力がとぎれ好き勝手に遊び始めている
「おねーさん、おねがいだからぱちゅりーのあしをひっぱるようなまねはしないでちょーだい」
「ごめんなさい・・・」
「まったく・・・ ぱちぇがひっしにがんばってるのに・・・
それと、こんどからじゅぎょうをうけられないこはかんっぜん!にかくりしてね
じゃないとほかのこまでそのこのようになってしまうわ」
「ちょ!? それはちょっと可哀そうだよ!
いくらなんでも一人ぼっちにしたらそれこそゲスになっちゃわない!?」
「ほんとうにゆっくりのことなんてひとつもりかいしていないのね・・・
なんでもいうとうりにしてゆっくりさせるのがゆっくりのためになるとおもったらおおまちがいよ」
ぱちゅりーの言葉にカチンときたおねーさん
それまで素直に小言を聞いていたが声を荒げて反論する
「何も知らない!? なんでそんなこと解るの!?
これでも私だって色々調べて頑張って来たつもりだよ!
何も知らないのはそっちじゃない! 偉そうな口きかないでよ!」
「むきゅううう? がんばってしらべた? いったいなにを!?
わらわせるわね! がんばったけっかがこれだよ!!!
ぱちぇがいなかったらなにもできないくせに、かたはらいたいわ!」
「もういい!! 私はあんたなんかの力なんて借りない! 私は私一人でやっていく!」
「そう、ならそうすればいいわ・・・ あとでないてこうかいしてもしらないわよ」
「後悔なんてしないもん! あんたみたいな兄貴の言いなりのゲロ饅頭の言うことなんかもう聞きたくない!」
「むぎゃ! ・・・いまのひとことはぱちぇをほんきでおこらせてしまったわ」
ついに仲たがいを起こしてしまった二人
ぱちぇは愛想を尽かしたのかさっさと専用のゆっくりハウスへはいって行ってしまう
残されたおねーさんは肩で息をして顔を真っ赤に染めていた
「しゃっしゅがおねーしゃんなのじぇ! まりしゃはみなおちたのじぇ!
これでやっちょゆっくちできるのじぇ! ゆっくちありがちょー!」
傍らでは騒動の引き金になった赤まりさが嬉しそうにはしゃいでいた
8
次の日から赤ゆ達のお勉強はおねーさんがすることになった
徹夜で授業で使う小道具を作っていたので眼もとにはクッキリとクマが浮いている
朝ごはんが終わりゆっくりの一家が一通りゆっくりした後いつものように赤ゆ達を集める
「みんな! 今日からおねーさんがお勉強を教えてあげるから皆あつまってね!」
「・・・ゆぅ? なにいってるの? ばかなの?しぬの?」
「おねーさん、ごはんをむーしゃむしゃしたあとはうんうんたいそうのおじかんだよ?」
「・・・・・・え?」
うんうん体操
それはゆっくり達が溜まった餡子を排泄するためのストレッチ体操のようなものだ
ゆっくりは古くなった餡子を排泄して常に新しい餡子で身体を満たすようにしている
便秘などでうんうんができなくなってしまった場合、体調不良を引き起こし場合によっては死に至る
特に赤ゆっくりは身体が小さく餡子の入れ替わるサイクルが早いため便秘の解消は死活問題だ
そのため、親ゆっくりは毎日食事をとったあと必ず子供にうんうん体操をさせるのだ
おねーさんはこのことは知っていた
しかし、親ゆっくりがおちびちゃんにうんうん体操などさせているところを見たことが無い
ぱちゅりーが強制的に勉強を始めてうんうん体操をさせなかったためだ
「えっと・・・ じゃあうんうん体操しようか・・・」
「ゆーん! おねーさんははなしがわかるね! ゆっくりできるね!」
「ばかぱちゅりーとはおおちがいだね! あたまがおとうふさんみたいにじゅうっなん!だね!」
そもそもうんうん体操は気温差の激しい野生の環境で行われるもので、室内飼いには必要ない
れいむもまりさも庭飼い用だったためにうんうん体操をやりたがっているのだ
「それじゃあおちびちゃんたち! いまからみんなでれいむのまねをしてね!」
「「「「「ゆっくちりかいしちゃよ!!!」」」」」
「あんよをおおきくふ~りふり~ みぎへひだりへふ~りふり~」
「「「「「ふ~りふり~」」」」」
「ちからいっぱいの~びのび~ たか~くたか~くの~びのび~」
「「「「「にょ~びにょび~」」」」」
「あにゃりゅにちからをこ~めこめ~ うんうんさんすっきりー!!!」
「「「「「しゅっきりー!!!」」」」」
もりょりょりょりょブリブリブリん!!!
「ちょ!だめだよ! こんなところでうんうんしないで!」
一斉にうんうんを垂れ流す赤ゆ達
そもそもうんうんを出すための体操なのだから出るものが出るのは当然なわけで・・・
あわててティッシュで排泄物を拾うおねーさんをよそに、赤ゆ達は嬉しそうにはしゃいでいる
「にゃんぢゃかちょっちぇもゆっくちできちゃよ!」
「れいみゅ、うんうんちゃいしょうぢゃーいしゅき!」
「おべんきょうにゃんかよりこっちにょほうがゆっくちできりゅのじぇ!」
「ゆぴぃ・・・ にゃんじゃかまりしゃにぇむくにゃっちぇきちゃよ・・・」
「れいみゅはおなきゃがしゅいちゃよ! あまあまちょうらいにぇ!」
好き勝手騒ぐ赤ゆっくり達
その様子を見て、親ゆっくりのれいむとまりさは満足そうに微笑んでいた
「やっぱりおちびちゃんはこうでなくっちゃ! これでこそゆっくりだよ!」
「つぎはおねーさんにあまあまをもらってむーしゃむしゃしたら、おひるねしてゆっくりしようね」
「待って! まってまって! すとーっぷ!」
既に次の予定を勝手に立てている親におねーさんは必死の思いで待ったをかけた
「あまあまを食べた後お昼寝してゆっくりするって・・・ お勉強はどうするの?」
「ゆゆ!? おねーさんはまりさたちのおちびちゃんをゆっくりさせてくれるんでしょ!?」
「そうだよ! れいむはおねーさんがゆっくりさせてくれるっていうから、おちびちゃんたちをおねーさんいまかせたんだよ!」
「・・・はぁ。 あのね、ゆっくりさせてあげたいけどお勉強はちゃんとやらないとだめなんだよ。 それは理解して頂戴」
「はああああああああ!? おべんきょうはゆっくりできないっていったよね! まりさはなんどもいったよね!?」
「いくらなんでもかんっだい!なれいむもおこるよ! おねーさんはゆっくりはんせいしてね!!!」
勝手にあまあまをもらうだのお昼寝するだののたまいた次は逆切れである
これには流石のおねーさんもイラッっときた
しかし、ぱちゅりーと喧嘩したてまえ不用意に怒鳴ったりできない
「でもね、このままじゃ飼いゆっくりになれなくなってゆっくりできなくなるんだよ? それでもいいの?」
「なにいってるの? おねーさんがゆっくりさせてくれるんでしょ?」
「れいむのおちびちゃんはおねーさんがせきっにん!をもってゆっくりさせてね。 これはぎむだよ」
「そうだよ、義務だよ。 だからお勉強をして飼いゆっくりになる訓練をするんだよ。 じゃないと・・・」
兄の言った言葉が頭をよぎる
お前の育てたゆっくりは飼いゆっくりになれないでゲス化する
ゲス化したゆっくりは加工所でぐしゃぐしゃに・・・
「じゃないとみんな加工所で潰されてぐしゃぐしゃにされちゃうよ! それでもいいの!?」
「はああああああああ?! なんでそうなるのおおおおおおお!?」
「ゆんやああああああああ! かこうじょいやあああああああああ!!」
「お・・・おちょうしゃん?」
「どうしちゃにょ・・・ ゆっくちできにゃいにょ・・・?」
“加工所”という言葉の効果は覿面だった
さっきまで勝ち誇った顔で偉そうにしていた親ゆっくりは隅っこでガタガタ震えて失禁している
彼女達はようやく観念しておちびちゃんに授業を受けさせることに同意してくれた
さっそく赤ゆっくりを集めて授業を始めるおねーさん
ぱちゅりーはそれを冷めた目でみていた
9
「こんなふうに火さんをかってにつかったりしたらゆっくりできなくなるんだよー
みんな、ゆっくり理解してね!」
「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」」」
おねーさんはスケッチブックで作った紙芝居で赤ゆ達に授業を行っていた
これは昨日徹夜で作ったもので、太いマジックペンで縁取りされたゆっくりが色鉛筆で丁寧に塗られている
内容はお家の中で暮らしていた飼いゆっくりがガスコンロを勝手にいじって大けがをしてしまうというものだ
金髪に火が点いたまりさがぽろぽろと泣いている場面で、おねーさんは繰り返し火の危険性を訴えた
赤ゆの方も、何度も繰り返し同じことを復唱させられるぱちゅりーの授業より
やさしくわかりやすいおねーさんの授業の方が気に入っているようだ
癇癪をおこして授業放棄していた赤まりさも今回はおとなしく話を聞いている
「どうかな、みんな勝手にお家の中にあるものをいじったりしたらゆっくりできなくなることがわかったかな?」
「ゆっくちりかいしちゃよ! まりしゃはいいこにしちぇゆっくちすりゅよ!」
「れいみゅ、おねーしゃんにょおべんきょうぢゃーいしゅき!」
「ゆわーい! これぢぇあみゃあみゃがたべれるのじぇ! あみゃあみゃあみゃあみゃ!」
これではだめだ・・・
ぱちゅりーは深くため息をついた
こんなやり方では赤ゆっくりを教育することはできない
一見、紙芝居を使って生活するためのルールを教えるのはよい方法に見える
事実ぱちゅりーの授業で癇癪を起していた赤まりさは最後までおとなしくしていた
しかし、餡子脳のゆっくりへの教育はそう簡単にはいかない
ゆっくりは基本的に体内の餡子に記憶を蓄積させる
楽しい思い出も、辛かった時の記憶も同じように記録されるのだが
ゆっくりは不要だと中枢餡が判断した記憶のみをうんうんと一緒に排泄してしまうことができるのだ
おねーさんの授業のように楽しく解りやすくすれば赤ゆ達は最後まで話をきくだろう
だが、餡子に蓄えられた情報は楽しかった記憶のみが残され他は淘汰されてしまう
だから赤ゆ達は『おねーさんの授業はゆっくりできる』という記憶は残るが
『ガスコンロは勝手にいじってはいけない』という肝心の部分が抜けて行ってしまうのだ
「それじゃあお勉強を頑張ったみんなにはあまあまをあげようね!」
「「「「「ゆわーい!」」」」」
楽しい授業の後にあまあま。 これもだめだ
ぱちゅりーがあまあまを与えていたのは、あくまで辛い授業の後の楽しみとしてだ
辛いことばかりさせていたらストレスで餡子を吐いてしまい餡子を記憶ごと吐いて元も子もなくなってしまう
おねーさんの授業はつらくもなんともなく、むしろ赤ゆ達は楽しんで受けている
ならばあまあまなんぞ不要である
これでは逆に甘やかしていることにしかならない
「ゆわーい! あみゃあみゃしゃんはゆっくちできりゅにぇー!」
「ハフハフ! ぺりょぺりょ! ゆっくちー!」
「あみゃあみゃしゃんおいちいにぇ! れいみゅはおべんきょーがんばりゅよ!」
「ぺーりょぺりょ! ぺーりょぺりょ!」
「ごっくん! ゆわーん!おねーさーん! あみゃあみゃしゃんのんじゃったのじぇ! もうひとちゅちょーらいなのじぇ!」
「だめだよ、あまあまは一日一人二個ずつっていったでしょ」
おいしそうにあまあまを食べる赤ゆ達
その中であのよく癇癪を起していた赤まりさは与えられた金平糖を飲み下しておねーさんにお代わりを要求した
流石にこれは我がままだと判断したおねーさんはその要求をやんわりと却下した
「おねぎゃいなのじぇ! もうひとちゅでいいのじぇ! あみゃあみゃちょうらいなのぜ!」
「れいみゅも! れいみゅもあみゃあみゃちょうらい!」
「まりしゃももういっきょちょうぢゃい! ひとちゅでいいよ!」
「れいみゅもあみゃあみゃのんじゃった! だかられいみゅにもちょーらいね!」
「まりちゃもまりちゃも! ゆわーん! あみゃあみゃほちいよー!」
一斉に赤まりさの真似をしておねーさんに群がる赤ゆ達
もはや先ほど教えられたことなど覚えていまい
餡子の中はあまあまをどうやって沢山貰うかというこで一杯になっているはずだ
「だめだよ! あまあまはそんなに沢山あげられないの! ゆっくり理解してね!」
「やぢゃやぢゃ! あみゃあみゃほしいのじぇ! あみゃあみゃ!あみゃあみゃ!」
「「「「あみゃあみゃ!あみゃあみゃ!」」」」
「おねーさん!? おちびちゃんたちぜんっぜん!ゆっくりしてないよ!? なにやってるの!?」
「みそこなったよおねーさん! れいむはおねーさんへのにんっしき!をあらためなくてはならないよ!」
いつものように駄々をこねた赤まりさにそれにならって他の赤ゆも真似をする
そこに親ゆっくりも加勢してもはや勉強どころではなくなっていた
「ねぇ、みんな・・・ ちゃんということきいてよ・・・ おねがいだから・・・」
涙目になりながら必死に訴えるおえんーさん
その願いが通じることはなかった
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「なにやってるの!? あなた達!?」
「それはこっちのせりふだよ! すっきりをのぞきみするなんておねーさんはとんだへんったい!さんだね!」
「れいむはずかしいよおおお! そんなにじろじろみないでねええええ!」
おねーさんがゆっくりショップに買い物に行っている間に親ゆっくりが勝手にすっきりをしていた
既にれいむの額には茎が生えていて四つの実ゆっくりが実っている
「勝手にすっきりしたらだめって教えたでしょ!?」
「おちびちゃんはゆっくりできるんだよ! ごはんもたくさんあるからだいじょーぶだよ!」
「おちびちゃんはゆっくりできるっていってたのはおねーさんでしょ! れいむおぼえてるよ!」
都合のいいことはきちんと覚えていたれいむ
おねーさんは頭が痛くなってその場にへたり込んだ
「ああ、もぅ・・・ どうして皆言うこと聞いてくれないの・・・?」
こうなってしまった原因は全ておねーさんにある
そのことに彼女は気付いていない
「いもうちょがうまれりゅよ! ゆっくちゆっくち!」
「はやきゅきゃわいいいもうちょとゆっくりしちゃいよー!」
「まりしゃがいもうちょたちがいだいにゃゆっくちになれりゅようにきたえちぇやりゅのじぇ!」
「れいみゅはおうちゃをうちゃってあげりゅよ!」
「はやきゅ~! いもうちょはゆっくちしにゃいでうみゃれちぇにぇ!」
おねーさんのことなど知ったことかと言わんばかりに赤ゆ達も大はしゃぎ
もはや飼いゆっくりになることなど全く頭に無いのか、新しい家族とゆっくりすることしか考えていないようだ
「むきゅん。 おねーさん、ぱちぇのたのんでおいたものはかっておいてくれたかしら」
「・・・え? あ、買ってきたよ・・・ でもこれ何に使うの?」
ぱちゅりーに買っておいたものを渡す
まるで対岸の火事とでも言うかのように涼しいかおをしている
買って来たものはラムネとガムシロップに空の牛乳瓶
牛乳瓶は空の状態では売っていなかったので中身はおねーさんが飲みほしておいた
「むきゅん、たすかるわ。 もうひとつおねがいがあるのだけれど、このびんのなかにおみずをいれてもらえないかしら」
「いいけど、おみずなんかいれてどうするの?」
「ぱちぇはよなかにのどがかわくからそれがあるとらくなのよ」
「ふぅん・・・ わかったよ」
おねーさんは言われたとおり空になった牛乳瓶に水を入れてぱちゅりーに渡した
「さあ、おちびちゃんたち! もうおねむのじかんだよ! ゆっくりやすんであしたもゆっくりしようね!」
「おちびちゃんたちがゆっくりできればいもうとたちもゆっくりできるよ! だからゆっくりねむねむしようね!」
「「「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」」」」」
親ゆっくりが宣言してぞろぞろとゆっくりハウスの中へ入って行く一家
そこにぱちゅりーがやって来て一家に話しかけてきた
「むきゅううう! まりさ!れいむ!おちびちゃんたち! ぱちぇのはなしをきいてちょうだい!」
「ゆぅ? なにいきなりはなしかけてるわけぇ?」
「ゆっくりできないぱちゅりーはあっちにいってね! じゃないとれいむはぷきゅーするよ!」
「ぱちぇがいままでまちがっていたわ! あなたたちはとってもゆっくりしたゆっくりよ!
だからぱちぇもなかまにいれてほしいの!」
「ゆぷぷぷぷ! いまさらなかなおりしようとしてもおそいよ! まりさはゆっくりできないぱちゅりーなんてしらないよ!」
「れいむはもうかんっぜん!にあいそをつかしてるんだよ! ゆっくりしないでさっさとどっかへいってね!」
「ええ、いままでぱちぇがしてきたことはゆっくりできないことよ・・・
だからなかなおりのしるしにこれをうけとってほしいの!」
そう言ってぱちゅりーは帽子の中からラムネを取り出してれいむとまりさに渡した
「それをおちびちゃんたちにあげてみて! きっとゆっくりできるとおもうわ!」
「ゆん? なあにこれ」
「れいむ、こんなのみたことないよ?」
「おちょうしゃん! にゃんにゃのじぇしょれ?! ゆっくちしちぇにゃいでまりしゃにちょうらいなのじぇ!」
「あ、かってにたべたらだめだよおちびちゃん!」
親まりさからラムネを奪ってむーしゃむしゃする癇癪まりさ
乱暴に噛み砕いてごっくんと飲み下すと、輝くようなとびっきりの笑顔で言った
「しあわちぇー!!! これむっちゃうめえ!!! もっちょちょーらいなのじぇ! たくしゃんでいいのじぇ!」
「なにたべちぇりゅにょ? れいみゅにもちょうらい!」
「ひとりぢめはゆっくちできにゃいよ! まりちゃにもたべしゃしちぇにぇ!」
「れいみゅもれいみゅも!」
「まりしゃもまりしゃも!」
「わ、わかったからおちびちゃんたちおちついてね!?」
「まだまだたくさんあるからゆっくりしてね!?」
ラムネにありつこうとする赤ゆっくりに慌ててラムネを配るれいむとまりさ
あんまりおちびちゃん達がおいしそうに食べるので自分達も食べてみることにした
「これめめっちゃうめえ! ハフハフ!」
「なにこれー!? しあわせがあふれてくるよー!?」
れいむとまりさが汚くラムネを食い散らかす様子を見て、ぱちゅりーは何も言わずに去って行った
中編へ続く
最終更新:2010年10月26日 15:52