『電車を待ちながら』 30KB
制裁 いたづら 自業自得 野良ゆ 現代 13作目ましてこんにちわ、キャンセルあきです。
「いやあ、ありがとうございました」
「本当にまあ、危うく出発時間が遅れてしまうところだったね。ありがたいね。これ、お礼ね」
猛烈な残暑も過ぎた九月の終わり、人気の少ない田舎の駅の、そのホーム。
お兄さんと駅員のおじさんは、甘い珈琲を差し出して、ゆっくり対策課の駆除係に心から、
お礼の言葉を述べていた。
電車の待ち時間、線路上にたむろしている野良ゆっくりに気付いたお兄さんが
連絡を入れると、その駆除係は取るものも取り敢えず飛んできてくれたのだ。
線路の上に陣取って、電車を相手に「つうこうりょう」を要求していたまりさの親子は今、
ホームの喫煙コーナーで黒いシミにジョブチェンジしている。
「それじゃあ、野良ゆっくりどもの後始末はお兄さん達に御願いしますよ」
「私はゆっくり対策課じゃないんですが……まあいいです、承りました」
お兄さんは再び電話を掛けて、対策課の応援を頼む事となった。
そして、ホームのベンチに落ち着き、ホットのブラックコーヒーを啜っていた時の事だ。
「おにいさん、ちょっとれいむのはなしをきいてほしいよ!」
ベンチの下から、バスケットボール並みのサイズがある薄汚れたれいむと、そのおちびちゃんらしき
子れいむ、子まりさが合わせて1ダースほど、こーろこーろと現れた。
「ゆーんゆーん!」「おかあしゃーん、あみゃあみゃまだにゃにょ?」「ゆっくちしないではやきゅしちぇね!」
「おかあさん、このにんげんさんはゆっくりできるのぜ?」
中には、赤ゆ言葉もすっかり抜けた成体に近い子まりさまでいる。
どこをどう見ても、野良のしんぐるまざー一家であった。
電車を待ちながら
キャンセルあき
■HR 議題:あいさつはだいじだよ!
お兄さんの隣に座っている駆除係が、「処理しましょうか?」という目を向けてきたが、
お兄さんは軽く断ってれいむの相手をする事にした。
「どうかおにいさん、れいむたちをかい――」
「まあまあ話を聞く前に、まずは駆けつけ一坏からどうぞ」
じょぼじょぼ、と手にした「クソ苦いコーヒー」を親れいむに垂らすお兄さん。
「ゆ……?」
一瞬、何をされたかも分からずに固まる親れいむの表面に、ぞわりと血管のようなシワが浮く。
待つこと三秒。
「――ゆっぎぇえええええええええええっ!」
びったんびったんびったんびったん。
「お、おきゃあしゃんどうちたにょ!?」
「おかあしゃん、ゆっくちちてね! れいみゅがぺーろぺーろしてあげりゅからねええ!」
饅頭肌におぞましい浮腫を作ってのたうつれいむに、子ゆっくり達が駆け寄ったが、お兄さんの
飲んでいた「クソ苦いコーヒー」は、成体のれいむですら瀕死になる程のにがにがだ。
「ぺーろぺー……ゆぎゃ!」
「ゆ……れいみゅ? にゃんでれいみゅがえいえんにゆっくちしちゃってるのおおお!?」
コーヒーの染みた親れいむの肌をぺーろぺーろした赤れいむは、餡子を吐いて即死した。
「ゆっげ! おじびじゃ! おにいざん! どぼじでごんなごどをずるの!」
「挨拶も無しにいきなり要求から入るなんて、ゆっくりしていないゆっくりですから」
「ゆ、ゆがーん!」
ゆっくりしていないゆっくり――それはゆっくりにとって最大級の侮蔑の言葉である。
多大なショックを受けたれいむは、しばしの間、体を冒すにがにがの事も、最愛の
おちびちゃんが永遠にゆっくりしたことも忘れて激昂した。
「れいむはれいむだよ、ゆっくりしていってね! ほらほら、れいむはゆっくりしてるでしょ!
ゆっくりしてないゆっくりだなんていわないで、ゆっくりていせいしてね、ぷんぷん!」
「お兄さんはお兄さんです。ゆっくりしていって下さいね。本当にゆっくりしたゆっくりなら、
私に向って"のーびのーび"してくれますか?」
「ゆゆん! そんなことあさめしまえっ! だよ!」
れいむは体をうねらせてのーびのーびをした。
その間に、お兄さんは餡子を吐いてた赤れいむの残骸をナマモノ用のゴミ箱に放り込み、
代わりに甘いゆっくりフードを幾らか、子ゆっくり達に向ってばらまいた。
たちまち、ゆっくりできる匂いに群がる赤ゆっくり達。
「ほら、れいむはゆっくりしたゆっくりでしょおおぉ? おにいさんはていせいしてね!」
「……それなりにゆっくりしたゆっくりですね。認めますよ」
「それから、えいえんにゆっくりしちゃったおちびちゃんの、"しゃざい"と"ばいしょう"を
ようっきゅっするよ!」
「その前によく見て下さい。おちびちゃん達はみんな、ゆっくりしてるじゃないですか」
「ゆ……? おちびちゃんたち?」
後を振り返ると、
「どうしたのおかあさん? まりさゆっくりしてるよ?」
「おそらからあまあまがふってきたのぜ! みーんな、まりしゃのものなのぜ!」
「むーちゃむーちゃ、ちあわしぇええええ!」
殆ど成体の長女まりさを筆頭に、れいむの子ゆっくり達はみなゆっくりフードへと群がって、
幸せにむーしゃむーしゃしている。
「ゆゆーん、みんなゆっくりしてるよおお!」
「そうですね、どなたか、大変な目にあったおちびちゃんは残っていますか?」
「いち、にい…………たくさん! おちびちゃんたちはみーんなそろってるね!
みんなゆっくりしてるよ! おにいさんもゆっくりしたにんげんさんだね! ゆんゆゆーん」
思い込みの激しさが体調にまで表れるゆっくりのことである。
れいむはいつの間にか、クソ苦いコーヒーが体にしみこんだ事すら忘れて、ゆっくりし始めた。
「それで、私に何か用事があったんではないですか?」
「ゆゆ――! そうだよ! おにいさんにおねがいがあったんだよ!」
危うくそのままひなたぼっこを始めてしまう所だったれいむは、慌ててお兄さんに向き直った。
「どうか、れいむたちを――「勿論駄目ですよ」――"かいゆっくり"に!?」
「……」
「……れいむをかいゆっくりに――「お断りします」――どぼじでぞんなごどいうのおおおおっ!?」
■道徳:うそつきはどろぼうのはじまりだよ!
「貴方を飼いゆっくりにした所で、私はゆっくりできそうもないです。ゆっくり理解して下さい」
「なんで!? どぼじで!? りゆうをゆっくりおしえてね、おにいさん!」
「うしろを見て下さい」
「ゆん?」
振り向けば、おちびちゃんたちが、
「はやくまりしゃをゆっくちしゃせるのじぇ!」「じじいはあみゃあみゃもっとよこちてにぇ!」
などと言っていた。
「飼いゆっくりは、"人間にゆっくりさせてもらう"ゆっくりではなくて、
"人間をゆっくりさせる"ゆっくりで有ることくらいは分かりますよね?」
「あれはおちびちゃんのいうことでしょおおおお!?」
「子は親の鏡ですよ。そもそも、どうして飼いゆっくりになりたいんですか?」
「それは……れいむは"かり"がへただから、おちびちゃんたちをゆっくりさせてあげられないんだよ。
だから"かいゆっくり"に――」
「だったらなおさら駄目ですね……」
「どぼじでえええええ!? れいむが"のら"だから? "しんぐるまざー"だからあああ!?」
「どちらも違います」
"飼いゆっくり"としてやっていけるぐらい人間と付き合えて、価値観を共有できるならば、
"野良ゆっくり"でも食い詰める事は無いからである。
人間が捨てるゴミでも、ゆっくりならば食べたり利用できたりする物は多々あるので、
人間と"交渉"する概念を身につけた野良ならば、地域によっては快適に暮らせるのだ。
「しんぐるまざーでも、ゴミ拾いと草刈り、物乞いで、立派に子育てするれいむは居ますからね」
「はああああああっ!?」
そうしたゆっくり達は、人間との力関係を理解しているので、時には人間に拾われる事もある。
しかし、人間と親しい野良ゆは決して、「かいゆっくりにしてください」とは言わない。
「自分は人間と交流する能力ないよ!」という宣言に等しいからである。
「かいゆっくりにしてください」は死亡フラグ。懸命に野良をやって、人間の目に止まるのを
期待するしかない――それは今や、野良ゆにとってすら常識であった。
しかるに、このれいむはどうだろう?
「いやだあああああ! もうなまごみさんも、にがにがなくささんもたべたくないんだよ!
むしさんはすぐにぴょんぴょんでにげちゃうよ! れいむはもう"かり"にいきたくないよ!」
「なつさんはあつくてゆっくりできなかったのぜ!」
「だんだんしゃむくなってきちぇ、おうちもゆっくちできないよ!」
「だからじじいは、まりしゃをゆっくちしゃせてにぇ! いましゅぐでいいよ!」
「ほらほら、おにいさん、おちびちゃんはゆっくりできるよね? おうたもうたえるんだよ?
れいむたちなら、おにいさんをたくっさんっ! ゆっくりさせてあげられるよおおおおおっ!」
「おかあさん、ゆっくりしてね、まりさがすーりすーりしてあげるよ!」
「おかあしゃんをいじみぇるな! れいみゅぷきゅーしゅるよ! ぷきゅううう!」
「"ビキィっ!"」
「すいません、ちょっとだけ落ち着いて下さいね。あくまでこの場は、私がれいむと話します」
親子の様子に"きた"駆除係が飛びかかろうとしたのを、お兄さんは優しく宥めた。
線路に入った野良まりさ達は、死臭すら出すことなく処理された。
そのため、れいむ親子は、駆除係に気付いてすら居ない。
それどころか、眼中にはいってもいないようだ。
「それでれいむ、貴方はどうやって、私をゆっくりさせてくれるんですか?」
「ゆん……れいむは……れいむはきんばっじさんになれるよ」
「ほう……金バッジですか」
「ゆ――そうだよ! きんばっじさん、きんばっじさんだよ!」
"金バッジ"という言葉が、お兄さんの興味を引いたとあって、れいむは必死で連呼した。
「れいむのおかあさんは、きんばっじのかいゆっくりだったんだよ!」
「本当ですか?」
「いまおもいだしたんだからまちがいがないよ! だかられいむも、すぐにきんばっじさんになれるよ!」
それは、餡子脳の中で発生したでたらめにすぎなかった。
が、次の瞬間には、本ゆんも気づかないうちに、れいむの中で真実にすり替わっていた。
ゆっくりの思い込みは、自身の記憶など容易くゆがめるのである。
「もしそれが本当なら、確かに私にとってはゆっくりできますね……」
「おちびちゃんたちだって、おにいさんにかいゆっくりにしてもらえれば、みんなみーんな、きんばっじさんだよ!」
「それでは、テストをしてあげましょう」
「ゆゆ!? てすと?」
「このテストに全て合格出来たら、貴方たち全部を私の飼いゆっくりにしてあげます」
「ゆ……ほんとうなの、おにいさん! れいむはてすとをするよ! ゆっくりしないではやくしてね!」
「ええ。……ただし」
と、お兄さんは優しげな笑顔に真剣な光を宿らせて、れいむを見た。
「もしもれいむが、出来もしないことを"出来る"と言い張るような嘘つきでしたら、
絶対にゆっくりできなくなります。私が保証しますよ」
「ゆ、れいむ、いたいいたいなてすとさんはゆっくりできないよ?」
「安心して下さい」
落ち着いた声が、れいむに届いた。
お兄さんの声は、とてもゆっくりできる。
「テストが終わるまでは、私はれいむを決して傷つけません」
「ゆん、とうっぜんっだね!」
「そして同時に、テストに合格するまでは決して貴方たちを手助けもしません」
「にんげんさんのてをかりなくても、れいむはりっぱにやりとげてみせるよ!」
「結果は最後に言いますが、もしも途中で不合格だったとしても、テストは最後までやりますか?」
「ゆーん……やるよ! れいむはさいごまでてすとさんをうけるんだよ!」
「おちびちゃんたちにもテストを手伝って頂きますが、それで良いですね?」
「ゆっくりりかいしたよ! いいよね、おちびちゃんたち! えいえい、ゆー!」
「「「「えいえい、ゆー!」」」」×11
「ええ、了解しました……それではテストを始めましょう」
■社会:おかざりはだいじだいじだよ!
「まずはれいむに質問です。お飾りが無くっても、自分の家族や大切なゆっくりを区別出来ますか?
これは金バッジゆっくりになるためには、とても重要な事なんです」
「ゆ……おかざりがなくっても?」
れいむは背後でゆっくりしている、沢山のおちびちゃん達を見た。
みんなゆっくりしていて個性的で、我が身にも代え難いおちびちゃん達だ。
この中の誰一人が居なくなっても、れいむは中枢餡を切られるような悲しみに駆られることだろう!
母性(笑)溢れるれいむが、例えお飾りが無くとも、おちびちゃんを見間違えるわけ無いじゃないか!
「ゆん! できるにきまってるよ! やっぱりれいむはきんばっじにふさわしいおかあさんだね!」
「本当ですね? ならばテストしましょう」
「ゆん? おにいさんまりさになにをするの!?」
「れいみゅ、おしょらをとんじぇるみちゃい!」
言うが早いかお兄さんは、れいむのおちびちゃん達の中から、一番大きな子まりさと、
一番小さな赤まりさをつかみ取った。
「おちびちゃんたち! おにいさん、いったいなにをしてるのおおぉぉぉ!?」
「すこし、お飾りを借りますね。ひょいひょい、と」
「やめてね! まりさのおかざりさんかえしてね!」
「れいみゅ、おかじゃりしゃんがにゃいとゆっくちできにゃいよ!」
そして、れいむに見えない所で二体のお飾りを奪ってしまう。れいむの前には、外されほかほかの
おぼうしとおりぼんさんが置かれた。そしてお兄さんが、れいむに向って右手を差し出す。
「それでは、はい。私の手に乗っているゆっくりを、ちゃんと区別ができますか?」
「……ゆ!?」
お兄さんの右手の上。れいむの目の前。
そこには、お飾りのない、ゆっくりしていないゆっくりが置かれていた。
「お……おちびちゃん?」
お飾りが無いため、そのゆっくりは、全く特徴のない"のっぺらぼう"に見える。
だが、お兄さんの右手に乗っているゆっくりは、たった今れいむの足下から奪われたばかりの、
最愛のおちびちゃんに違いないのだ。
「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ……」
「さあ、このゆっくりは誰でしょう? ちなみに、声を出せないように口は押えてあります」
「ゆんゆゆゆゆゆゆんゆんゆんゆんゆん……」
れいむはそのお饅頭――じゃなくてゆっくりをにらみ続ける。
子まりさはさらさらのきんぱつさんだ。でも、赤れいむの髪もさーらさーらしていて区別出来ない。
子まりさのおめめはおそらのようなあおいいろだ。でも、赤れいむの瞳もおんなじくらいきらきらだ。
今のれいむにとって、おちびちゃんを区別することは、無改造の虐待鬼威惨がヒグマとタイマンを
張るくらい難しいことだった。
せめて、れいむに似て罪な程の美ゆっくりで有ること以外に、区別出来る所があれば!
「ゆ……そうだよ! まりさちゃんはいちばんうえのおねえちゃんだよ、だかられいむとおんなじくらい
おおきいんだよ」
「ほうほう、それで?」
「れいむはいちばんあとにうまれたんだよ! だかられいむのおくちにはいるくらいちいさいよ!」
つまり、お兄さんの手に乗っているのは――れいむとおなじくらいに成長したゆっくりは、
「そのゆっくりはれいむのまりさちゃんだよおお!」
ぽふん。
れいむは、子まりさの外された帽子を、お下げで掴んで乗せた。
するとのっぺらぼうだったお饅頭はたちまち、金髪のゆっくりした"おちびちゃん"として見える。
「ゆゆーーん! やっぱりれいむのおちびちゃんはゆっくりしてるよおおお!」
「……まあ、色々と言いたいことはありますが、ひとまずこの場は正解にしておきましょう」
「おにいさん、こんないたずらはやめてほしいよ」
「我慢して下さい。テストが終わったら、特別にご褒美を上げますから」
「おちびちゃんはつらかったよね、だけどいいんだよ。れいむはおちびちゃんがもどってきて
くれただけでだいまんぞくっ! だよぉ!」
お兄さんの手から降ろされるなり、ジト目で人間を睨み付けるのをすーりすーりで宥めながら、
れいむは勝利の美酒に酔った。
だが、余韻にひたってばかりもいられない。
「さあおにいさん! れいむはみごとにせいかいしてみせたよ! これでれいむはきんばっじ――」
「では、次のテストに行きましょうか」
「ゆゆ! まだあるのおおお!?」
「テストはあと一、二、"沢山"ありますからね。……嫌なら止めても良いんですよ?」
「わかったよ! はやくつぎのてすとさんにいこうね、おにいさん!」
■算数:さんよりうえまでかぞえようね!
「それでは次の質問ですが、れいむは"二"よりも大きな数を数えられますか?
金バッジを目指すなら、二桁の足し算くらいは暗算でやってもらわないといけないのですが……」
「ゆゆ……かず?」
金バッジではなくて銀バッジであれば、"12"まで数えるのが最低ラインと言われている。
理由は時刻。
「十二時に帰る」という言葉が理解出来なければ、留守番をさせられないのだ。
「例えば、れいむは自分のおちびちゃん達の数を数えられますか?
先程から数が減ったり増えたりはしていませんか?」
「ゆん?」
言われてれいむは、おちびちゃん達を見回した。
数をかぞえる。いち、に、たくさん。
再度確認する。いち、に、たくさん。
「おちびちゃんたちは"たくさん"いるよ! おにいさんはへんなこといわないでね!」
れいむは、数を数えるのに極限まで集中した。
あまりに夢中で、言い返す頃には、れいむは直前にされたテストの内容など全てすっかり忘れていた。
お兄さんに隠された赤れいむ? 赤れいむは犠牲になったのだ。ぼせい(笑)の犠牲に。
「はあ、これは駄目かも分かりませんね。それではれいむ、"二"の次の数は何ですか?」
「ゆ……"に"のつぎのかずは……えーと……えーと」
「せめて、"五"までは数えて欲しいですね」
野生ゆっくりでもぱちゅりーなら、それなりの確率で"十"まで行ける個体はいる。
だが、普段からいい加減なナマモノであるれいむには、これはかなり厳しい問題と言えた。
「かず……かずは……えーと」
「"二"のつぎは何でしょう? "五"は何番目でしょう?」
「に……ご……。"ご"? そうだよ、れいむはおもいだしたよ! "かず"は、いち、に、さん、し、ごだよ!!」
「……ほう? もう一度御願いします」
お兄さんの顔に、これは素直に感心の色が見えた。
顔色をうかがうれいむは、"きんばっじ"という言葉に反応した時と同じく、これだ、とひらめく。
「ぱちゅりーがいってたんだよ。かずは、いち、にい、さん、し、ごなんだよ、あってるでしょ!?」
「では、"三"の次は何ですか?」
「ゆ……いち、に、さん、し、ご。いち、に、さん、し、ご……さん? さん?」
だが、そこまででれいむは固まってしまった。
このれいむ、どうやらかつて一緒にいたぱちゅりーが"五"まで数えることは出来たらしい。
しかしながら、ぱちゅりーが数えている場面を、理解するでもなく見ていただけなのだろう。
「私の指は今、何本ありますか?」
お兄さんが指を三本立ててれいむに見せた。
「えーと……いち、に、たくさん。あれ? いち、に、たくさん。ゆ……ゆううううううっ!」
物体が三つ存在するという概念と、"さん"という言葉が全く結びついていない。
「本当に数を分かっているんですか? 嘘つきはゆっくりできませんよ?」
「ゆ、れいむはゆっくりりかいしてるよ! かずはいち、に、さん、し、ごなんだよ!
ぱちゅりーがいったから、まちがいないんだよおお! ばかにしないでね、ぷんぷん!」
「……分かりました、まあいいです。それでは次のテストに行きましょうか」
■音楽:ゆっくりおうたをうたおうね!
「それでは次のテストです。れいむには、おうたを歌って貰います」
「ゆ――! ゆわーい。おうたはれいむもだいすきだよ。ゆぷぷぷぷぷ、おにいさんもようやく、
れいむをかいゆっくりにするきになったみたいだね! ゆっくりしてるね!」
れいむは、自分の得意分野が出題された位で得意になっている。
「ただし、私が"止め"と言ったり、手を叩いたり、あるいは何か特別な事が起こったら、
直に歌うのを止めて下さいね」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「金バッジならば、おうたを歌ったりしていても、周囲の危険に気づきますし、
人間の指示を受け取ることもできるのです。れいむはちゃんとできますか?」
「もちろんだよ、れいむはゆっくりうたってあげるよ!」
「本当ですね?」
れいむは勘違いしているが、このテストは要するに、『おうた』の最中であっても周囲の
様子に気を配ることが出来るのか、指示が聞けるのか、というものである。
「おちびちゃんたちも居るので、一緒に歌って貰いましょう」
「おちびちゃんたち! ゆっくりりかいしたよね? それじゃあおかあさんといっしょに、
おうたをうたってあげようね! さん、はい!」
「「「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」」」
一斉に、饅頭達が雑音を垂れ流し始めたのにもめげず、お兄さんは静かに一分待った。
「はい、ストップ」
「ゆん! こんなかんじでいいんだね、おにいさん!」
「まあいいですけど、これだけじゃわかりませんね。もう一度御願いします。
今度は私が号令を出しますからね、さん、はい!」
「「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」」
一分。お兄さんは、今度は手を鳴らして合図した。
「ゆっくり~の――ゆっ! おちびちゃんたち、うたうのをゆっくりやめてね!
どう、おにいさん? れいむたちゆっくりしてるでしょ?」
「ええ、たしかにゆっくりしています。でも、少し声が小さくなってきましたね」
「おちびちゃんたち、かいゆっくりになるために、もっとおおきなこえでおうたをうたうんだよ!
さん、はい!」
「「「「「「ゆっくり~のひー♪ まったり~のひー♪」」」」」」
一分。お兄さんが足を踏みならす。
「ゆん! おちびちゃんたち、うたうのをやめてね!」
れいむが指示を出すと、おちびちゃんたちはぴたりと歌うのを止めた。
「……ゆふん」
ドヤ顔でお兄さんを見上げるれいむ。
歌声は秋空へと綺麗に響き渡っていたし、注意深く周囲を警戒したれいむはお兄さんの
合図を見逃すこともなかった。
そのうえ、おちびちゃんたちはれいむの指示に段々素早く反応するようになって、
ざわざわと騒がなくなっていった。
これはもう、合格以外あり得ないおうただっただろう、そういう自負がれいむにはあった。
「……まあいいでしょう。次のテストが最後ですよ」
「ゆゆゆ……ゆわーーーい!」
やった、合格だ!
れいむは喜びのあまりちょっとうれしーしーをもらしつつ、きりっとした顔で
おちびちゃん達に自分の姿を見せてあげた。
――みんな、れいむのすがたをみて、おかあさんみたいなきんばっじさんをめざすんだよ!
れいむの餡子な脳内では、既に金色に輝くバッジが赤いおりぼんさんに付けられている。
さあ、いち、に、たくさんのおちびちゃんたちと一緒に"飼いゆっくり"の玉座に着くのはもうすぐだ!
■体育:みんなおくちにはいってね!
「それでは最後のテストです」
「ゆん! いまのれいむはむてきだよ! どんなてすとさんでも、どんとこい、だよ!」
「「「「どんときょい、じゃよ!」」」」
小さいおちびちゃん達までが、れいむの真似をしてふんぞりかえっている。
「危険なものが迫っている時、お母さんはおちびちゃんを守ってあげなければなりませんよね?」
「ゆ、そうだね! それでれいむはどうすればいいの?」
「小さなゆっくりのみなさんを、お口に入れて守って下さい。理解出来ましたか?」
「……ゆっくりりかいしたよ」
「おちびちゃんたちきこえた? まずはいちばんおおきなおねえちゃんのおくちに、はいれるだけ
はいるんだよ! のこったおちびちゃんたちはおかあさんのおくちにはいってね!」
「「「ゆっくちりかいしちゃよ!」」」
母れいむがゆっくりならざる即断即決を下すと、おちびちゃんたちはこーろこーろと転がって、
先ずは大口を開けたおねえちゃんゆっくりのお口に入っていった。
「ゆゆ? のこったのはれいむだけなの?」
「しょうだよおきゃあしゃん!」
お口に入りきれなかったのは、なんと赤れいむが一体だけだった。
「ゆゆーん、いつのまにか、おねえちゃんもおおきくなってたんだねえ!」
我が子の成長を喜ぶ母れいむ。
「あかちゃんれいむは、おかあさんのおくちにゆっくりはいってね!」
「ゆっくちおかあしゃんのおくちにはいりゅよ!」
これで、残った子ゆっくり達はみんな、大きなゆっくりのお口に入った。
「…………」
「…………」
「……もう出しても大丈夫ですよ」
「おちびちゃんをぺー、するよ!」
「こーろこーろ、でりゅよ!」
「どう、おにいさん! これでれいむのてすとさんはぜんぶおわったんでしょ?」
「ええ、テストは全て終了ですね」
「ゆふん!」
ようやくだ。やっとここまでれいむはこれた!
「やくそくだよおにいさん! れいむたちをかいゆっくりに――「勿論、しませんよ」……ゆ?」
■採点:うそつきさんはふごうかくだよ、りかいしてね!
「ゆゆゆゆゆゆゆ? いま、おかしなことがきこえたよ? れいむはかいゆっくりになれ――」
「――貴方が飼いゆっくりになることは有り得ません。ゆっくり理解して下さい」
「は……はああああああ!? おかしいよおにいさん! れいむはさいごまでてすとさんを
うけたでしょおおおおおっ!? ごうっかくっ! なんでしょおおおおおおおぉぉっ!?」
「れいむは最後までテストを受けましたが、途中で不合格が決まってましたから」
あれだけのテストを受けて、今更不合格だったとは納得できないれいむだが、
れいむとお兄さんは確かに、約束していたのだ。
――結果は最後に言いますが、もしも途中で不合格だったとしても、テストは最後までやりますか?
――ゆーん……やるよ! れいむはさいごまでてすとさんをうけるんだよ!
不合格であっても、最後までテストはやると。
「どぼじでぞんなごどいうの!?」
しかし、れいむは納得ができない。
「れいむがいつ、どのてすとさんにふごうかくだったっていうの! ゆっくりせつめいしてね!」
テストに合格していた思い込みが、テストの全てを完璧にこなしたというプライドに転化されて、
不合格を認めることができない。
「れいむは最初から、全てのテストに不合格でしたよ?」
そんなれいむに、お兄さんは死刑宣告にも等しい採点結果を、告げた。
「……はああああああああ!?」
「まずは、最後のテストからいきましょう。『危険なものからおちびちゃんを守れるか?』という
テストでしたが、れいむはおちびちゃん達を守り切れていません。ですから不合格です」
「なにいってるのおにいさん! れいむのおちびちゃんたちは、このとおり、いち、に……あれ?
いち……に…………」
「れいむ、貴方のおちびちゃんは、どれだけ残っていますか?」
「……"に"だよ」
れいむは、周囲をきょろきょろと見回している。
「おちびちゃんたちが"ふたり"いるよ……」
だが、"たくさん"いた筈のおちびちゃんが、どれだけ確認しても、二体しか居ない。
「……どうして、どうしておちびちゃんたちが"ふたり"しかいないの?」
「それはれいむが、貴方たちにとって危険な物から、守ることが出来なかったからです。
続けてその前にやった、おうたのテスト結果ですが、これも不合格ですよ」
「おちびちゃ……なんで? どおして?」
れいむは、れいむたちは、とてもゆっくりした"おうた"を歌えたはずだ。
「あのテストは、『お歌の最中に周囲が見えているか?』です。歌いながら気を配っていれば、
おちびちゃんたちが"減っている"事にも気付いた筈です。よっておうたのテストも不合格」
そしてさらに、とお兄さんは言葉をつなげる。
「あるいは、れいむが本当に『三以上を数える事が出来る』のなら、途中でおちびちゃんの
数の変化に気付いた筈なのです。つまり、数のテストも不合格」
採点は続けられる。
弾劾は、続いている。
「おちびちゃん……そうだよ!」
そこで、れいむは気付いた。
「さいごのてすとさんで、おちびちゃんたちはおねえちゃんのおくちにかくれたはずなんだよ!
なーんだ! おねえちゃんがまだおくちに、いれたまんま……じゃ」
そして、疑問を覚える。
どうして一番上のまりさおねえちゃんは、まだお口におちびちゃん達を入れたままなんだろう? と。
れいむの"おちびちゃん"は、困惑したれいむを、冷たい瞳で見下ろしていた。
「ゆ……?」
……見下ろす?
「どうしてれいむのおちびちゃんが、れいむより大きくなってるの?」
「そして、一番最初のテストで『お飾りが無いゆっくりを区別出来て』いれば、そのゆっくりが
そもそも、貴方のおちびちゃんですら無い事に気付いていた筈なんです」
よって、最初のテストも不合格。と、小さなつぶやきがれいむのテスト結果を"零点"と宣告。
「もういいですよ、"ふらん"」
お兄さんは、れいむの眼前に居る"まりさ"からおぼうしを取り去った。
「ほんとうに、こんないたづらはにどとこんてにゅーしないでほしいよ、お兄さん」
お飾りをとられても身じろぎどころか、嫌がる素振りすらしない"のっぺらぼう"は、
大きく口を開け、「げぷ」と"ゆっくりの死臭に満ちた吐息"をれいむに浴びせかける。
その赤い口。
鋭く尖った砂糖菓子の牙。
殺意に満ちたとげとげしい眼光。
七色に輝く飴細工の羽。
もはや、特有のお飾りを付けていなくても分かる。
それは、野良ゆっくりが遭遇する中でも、最大級に禍々しい捕食種のひとつ。
「ふ……ふらんだあああああああああああああああああああああっ!」
「うー……死ね!」
「お、おかあしゃあああああん! ゆげっ! いちゃいよ、ゆっくちできにゃいゆっくちめ!
ゆびゃ! やみぇちぇね! れいみゅいちゃいいちゃいはいやじゃよ、ゆぎゃ!」
硬直するれいむの目の前で、ゆっくりふらんは悠々と赤れいむを嬲り始めた。
苦痛を味合わせて甘くする、ふらん種の本能だ。さっきまではれいむの背後で"手早く"
子ゆっくり達を食っていたので、鬱憤を晴らすかのようにハッスルしている。
「や……やめてよ。れいむにのおちびちゃんがいたがってるでしょ? おにいさん?」
「私は、『テストに合格するまでは手助けしない』と言いましたよ?」
「ほ、ほかのおちびちゃんたちはどこにいったのおおおおっ!?」
「とっくの昔に、ふらんのお腹の中です」
「うそつき! おにいさんはうそつきだよ! てすとさんがおわるまでは、れいむたちに
いたいいたいをしないっていったでしょおおおお! どぼじでふらんをつれてきたのおおおっ!」
「いいえ、ふらんは最初から居たんです。れいむが気づかなかっただけですよ」
「……ゆ?」
「お飾りを付けていなかったので、れいむは気づきもしませんでしたが、最初から私の
隣に居たのです。線路に入り込んだまりさ達を駆除して、もらうためにね」
お兄さんが、ゆっくり対策課に電話連絡を入れるや否や、洗濯中のお飾りを付けもせずに、
文字通り飛んで――というよりお姉さんにぶん投げられて――来たのがふらんだった。
「ゆっべ! おがああじゃああ! だずげ! れいみゅをだずげでねえええ、おかあじゃあんん!
どぼじでだずけないの!? れいみゅをだずげりょおお、こにょ、くしょおやあああ!」
「う……うそつき。うそつきうそつきうそつきうそつき! おまえはうそつきだああああ、
このげす、くそどれい! くそじじいいいぃぃぃぃ!」
「……ほう?」
ふらんは飽くことなく、昏い情熱を燃え上がらせて赤れいみゅを嬲る。
その悲鳴を背後に、親れいむはお兄さんを"下衆"と詰る。
お兄さんの目に、危険な光が宿った。
「そうだよ、れいむはゆっくりしたおかあさんだから、れいむはきんばっじさんなんだよ!
てすとさんは、ぜんぶぜんぶ、ぜーーーーんぶ、ごうかくしてるにきまってるんだよおおおおおっ!
れいむはごうかくだよ! れいむはきんばっじだよ! おまえだけがうそつきの、くそじじいなんだよ!
さっさとれいむをゆっくりさせろ、この……くそどれいいいいいいいいいいいぃぃぃぃいぃ!!」
「……お兄さん。こいつ、ツブそうか?」
尖った歯で、痙攣する赤れいみゅの中枢餡を"こりこり"しつつ、ふらんが言う。
「いいえ、それには及びませんよ。……れいむ、私は"飼いゆっくりになりたい"という貴方の為に、
最大限のチャンスを提示しましたよ」
「あたりまえだああああっ! れいむはしんぐるまざーなんだよ! じじいはやさしくしなきゃいけないんだよ、
それがていっせつっなんだあああ!」
「ふらん」
「ぶちいっ!(もっちょ……ゆっくちしちゃかっちゃ……)」
ふらんの口の中で、れいむ最後のおちびちゃんが永遠にゆっくりした。
「ああ……これでしんぐるまざーでもなくなりましたね」
「だったらなんだっていうのおお!? ぜんぶじじいがうそつきだからわるいんでしょおおおお!?
ばかなのおおおぉ? しぬのおおおおぉぉぉ!?」
「私は貴方との約束を破ってはいません。それでも私を、"嘘つき"と言いますか!」
「そうだああああっ! おまえがうそつきなのがわるいんだあああっ! しゃざいしろ、ばいしょうしろ!
れいむをっ! ゆっくり……させろおおおおおおっ! そしてれいむを"かいゆっくりに"――」
「――分かりました」
厳かな声が、れいむの中枢餡を打った。
「ゆ……? ゆふふふふふ! ようやくじじいもれいむのいだいさがわかったみたいだね!
さあ、くそどれいは、このれいむさまにびゆっくりのまりさをつれてきてすっきりーさせるんだよ!」
「れいむがそう思うのなら、私は嘘つきなのでしょう、れいむの中では……。
なので私はせめて少しでも嘘つきから離れるために、自分の言葉を守りたいと思います。
『出来もしないことを出来ると言い張るような嘘つきは、絶対にゆっくり出来ない』と、
私は確かに言いました」
そう、テストは既に終わっているのだ。
お兄さんがれいむをどうしようが、既に約束の外。
「ゆふふふふふ。れいむはきんばっじさんだよー! ゆっくりしたけっかがこれなんだよー」
お兄さんはおもむろに、懐からおもむろにピーラーを取り出した。
この皮むき器、ゆっくりの餡子を傷つけずに皮だけを剥くための特別製で、
商品名も少し変わっている――すなわち、『謝罪と賠償』。
■放課後
「オラァ! 居るなら返事しやがれ……って、あれ? アイツが居たんじゃ無かったのかよ、ふらん?」
数分経って、ゆっくり対策課駆除班のお姉さんが駅に着いた。
そこで目にしたのは、綺麗に掃除された無人のホームと、日向でうとうとするふらんの姿だけだ。
「うー……おにいさんなら、おっきなすぃーにのっていったよ。
おねえさんにでんごん、"すこしはせがのびましたか?"だって」
「野郎……次に会った日を命日にしてえらしいな、おい」
お姉さんの身長は、九年前から四尺八寸――現在の単位に直して148cm――で変化が無い。
ちょっと物足りないと感じているのをわざわざつつく命知らずは、お兄さんくらいのものだ。
踵を浮かせて背筋を伸ばし、精一杯見栄を張った体勢で辺りを見回していると、奇妙なオブジェが
目に付いた。
「……なんだこれ?」
喫煙コーナーの灰皿代わりに置かれているそれは、表面をニスで塗り固められた、黒い餡子玉だ。
時折蠕動している所を見るに、まだ生きているようである。
「このぴこぴこの形からみるに、元はれいむっぽいがよ……」
「おにいさんがつくったよ。ふらんはまずそうだからたべないけど」
「……そうだな、れいむなんざどうなったっていいや、放っておこう。ほれ、帽子だ」
「うー、おねえさんありがとう!」
ゆっくりんぴーすのメンバーが聞いたら怒り出しそうな台詞だが、命の価値が違うんだから仕方ない。
お姉さんとふらんが仲良く駅を去って、黒い餡子玉はちょっと蠢くオブジェとして、
駅のホームに取り残された。
――れいむは――
二度とゆっくりはできなかった……。
餡子とゆっくりの中間の不思議物体となり、中枢餡が非ゆっくり症で脳死するまで、
駅のホームに佇むのだ。
そして死にたいと思っても餡子が無くならないし。
餡子むき出しの激痛に、考えるのも止められなかった。
~おわり~
■あとがき
鬼威惨がまたヒグマさんにむーしゃむーしゃされました。三人目です。
加工所謹製『謝罪と賠償』シリーズ。
対ゆっくり駆逐用品のブランド。
玄翁、のこぎり、鉋などの大工用具から始まり、キリライター、半田ごて等の工具、果ては包丁や、
作中でお兄さんが使ったピーラー等の料理器具に至るまで、幅広いラインナップを誇っている。
自殺願望のあるゆっくりの『謝罪と賠償』要求に応えるべく、「一撃で行動不能になるが決して即死はしない」
使い勝手を目指して常に改良が続けられている。
――が、本来の用途においてもかなり"使える"事が、加工所の技術力に対する評価を高めている。
最終更新:2010年11月08日 19:56