anko2272 もてないゆっくりの恋

もてないゆっくりの恋 19KB
不運 越冬 野良ゆ 自然界 人間なし 独自設定 17作目です。暑苦しかった夜が、少し涼しくなりましたね



これは、もてないゆっくりれいむの物語


ゆっくりがたくさん生息する山の中、れいむはとてもゆっくりとした両親の間に生まれた。
親まりさは狩りと穴掘りが上手で、親れいむは子育てとお歌が上手だった。
一家のお家はとても広く、貯蔵庫にはいつも食料が蓄えられていた。
れいむはそのような恵まれた環境の中で、
両親+5匹の姉妹といっしょにゆっくりと暮らしていた。
れいむは姉妹の中でも特に変わったゆっくりで、
姉妹とは楽しくお話ししていたのだが、両親の話はほとんど聞かなかった。
れいむは物事を真剣に考えるのが苦手なようで、
たびたび、楽しそうな妄想話に興味を抱いていた。
また、ほかの姉妹は狩りが上手だったり、お歌が上手に歌えたりと、
それぞれ何か特技を持っていたのだが、
れいむは狩りがうまいわけでもない、お歌も下手くそ、お飾りはいつも土で汚れていて、
お家の中ではいつも、隅のジメジメとしたところにいた。
ほかの姉妹たちは、れいむに対してとても優しかったのだが、
両親から見て特にゆっくりできていなかったれいむは、両親からとても嫌われていた。
食事のときなどは、姉妹と比べて半分の量しかごはんを食べることができなかった。
れいむはそのことを両親に怒ったのだが、
ゆっくりしてないからごはんが少ないんだよ、と逆に両親から怒られてしまった。
れいむは自分のことを、とてもゆっくりとしたゆっくりだと思っているようだが、
周りから見ると、れいむはぜんぜんゆっくりできていないゆっくりなのである。

体がひと回り大きくなったれいむは、姉妹といっしょに親もとを離れることにした。
その後、姉妹といっしょにお家を探していたのだが、
日がたつにつれて、ほかの姉妹は伴侶となるゆっくりを見つけ、れいむから離れていった。
相方を見つけられないれいむは、一匹だけで自分の住む場所を探すことにした。

れいむはすぐお家探しに飽きて、自然の中で草を食べたり遊んだりしていたのだが、
偶然、山の斜面に小さな穴があるのを発見した。
穴の周りはちょうど日当たりが悪く、水分が集まってジメジメとしている。
小さいころから、ジメジメとした場所が好きだったれいむにとって、
ここはとてもゆっくりできる場所のようだ。
穴の中には誰もいないので、れいむは穴の中で堂々とお家宣言をした。

れいむはさっそく、お家の地面に草を敷くことにした。
ゆっくりの皮につっかえるような硬い素材は、ゆっくりにとって全然ゆっくりできないのだが、
もともとめんどくさがりなれいむは、やわらかい草を探すのが面倒なので、
近くにある硬い草をとってきて、適当にお家の中に敷いた。しかしすぐに


「このくささんはぜんぜんゆっくりできないよ!!!」


と文句を言いだした。
れいむはこの後すぐに、柔らかい草を探しに出かけたようだ。

れいむのお家付近は湿気が強く、食料となるミミズやキノコが良く取れた。
雨の日はお外に出られないので、
お家の中に生えているキノコを食べて過ごした。


「む~しゃむ~しゃ。きのこさんはおいしいよ!!!」


親まりさの餡子を受け継いでいるおかげか、キノコはれいむの口に合うようだ。

れいむは一日の大半をお家の中で過ごしていたのだが、
そろそろ自分も、姉妹たちのように恋をしてみたいと考え始めていた。
れいむは、きれいなスィーに乗ったゆっくりまりさが自分のもとにやって来るんだ
という妄想を小さいころから抱いていたので、
それに従って、まりさが迎えに来るのをお家の中でずっと待ち続けていた。
だが、まりさはおろか、れいむのお家に寄ってくるゆっくりはほとんどいなかった。
いたとしても、食べ物を探しにきたゆっくりが素通りするぐらいで、
ジメジメした穴の中にいるれいむには、全く目を向けていないようだ。
それでも妄想癖の強いれいむは、お家の前を素通りするゆっくりに対して、
面と向かって自分と会うことに照れているんだろう
と、自分勝手な解釈をしていた。


ある日、れいむはめずらしく、日の当たる場所へ出かけていた。
日の当たる場所には草花がよく生えていて、
ちょうちょやバッタなどの昆虫が生息している。


「ちょうちょさんはれいむにゆっくりたべられてね!!!」


狩りが下手なれいむは、素早く逃げる昆虫を捕らえられないようだ。


「ゆ!ちょうちょさんにげないでね!!!れいむはおなかがすいてるんだよ!!!」


れいむがちょうちょを追っていると、きれいなお花が咲いている場所にゆっくりまりさがいるのを発見した。


「むーしゃむーしゃ、しあわせだぜ!!」


ヒラヒラと舞うちょうちょを、そのまりさは一発で捕まえたようだ。
鮮やかな狩り、きれいなお花、ゆっくりまりさ、
そのすべてに見とれたれいむは、素早くまりさに近づいていった。
れいむはかなり興奮しているようだ。


「そこのまりさはゆっくりしていってね!!!」

「ゆゆ!?びっくりしたんだぜ。れいむはゆっくりしていってね!!!」

「まりさはゆっくりできるゆっくりなの?」

「まりさはゆっくりしてるんだぜ!!!れいむはゆっくりできるゆっくりなのぜ??」

「れいむはすごくゆっくりしてるんだよ!!まりさはこれからずっとれいむといっしょにゆっくりしようね!!!」

「ゆ!?れいむがゆっくりできるゆっくりだとわかったら、いっしょにゆっくりしてもいいんだぜ!!!」

「ゆゆ!れいむはおうたがじょうずにうたえるよ!!!」

「ゆ!まりさにおうたをきかせてほしいんだぜ!!!」


れいむはとても嬉しくなった。
とうとう自分にも、いっしょにゆっくりできる相手が見つかったのだ。
両親が『れいむ×まりさ』という組み合わせだったので、
自分も将来はゆっくりまりさといっしょにゆっくりしたい、と小さいころから夢見ていた。
その夢は今、現実のものになろうとしている。
このまりさとカップルになるのが自分の運命なのだと、れいむは信じて疑わなかった。


「ゆっくりうたうよ!!!ゆゆ~~ゆゆ゛っ、ゆ゛ううううっ、ゆゆゆ゛♪゛」

「ゆ??もういいんだぜ。まりさはれいむのおうたにはあまりきょうみないんだぜ。
 ところで、れいむのおうちはゆっくりできるばしょなのぜ??」

「ゆ!れいむのおうちはこっちだよ!!とてもゆっくりできるおうちだよ!!!」


れいむは空腹などすっかり忘れ、まりさを自分のお家に連れていくことにした。
道中、れいむとまりさはいろいろなことを話したのだが、
話をする度に、れいむの顔が嬉しそうになる一方で、まりさの顔は無表情になっていった。
自分のお家にたどりつくと、れいむはくるりとまりさのほうを向き、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び始めた。
このあたりに生息するゆっくりは、2匹いっしょに巣穴の前でぴょんぴょんと飛び跳ねることで、
カップルが成立したということを証明するらしい。
まりさもそのことは当然知っていた。

夢に見たゆっくりまりさとの同居生活がもうすぐ始まる。
れいむは期待と興奮で胸が一杯だった。


「れいむのおうちはここだよ!!まりさはれいむといっしょにぴょんぴょんしてね!!!」

「ゆゆ・・・ここはじめじめしてゆっくりできないんだぜ。まりさはれいむといっしょにぴょんぴょんしたくないんだぜ。」

「ゆ゛!!どぼぢでぞんな゛ごどい゛う゛の゛ぉお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」


その場から離れようとするまりさをれいむは必死にとどめようとするが、
まりさの足はとても速く、あっという間にまりさはどこかへ去ってしまったようだ。


「どうぢでぇえええ!!!れいむとまりさはゆっくりできるかっぷるなんだよ!!!」


まりさにふられた理由が、れいむにはピンと来ないらしい。
自分は完璧だと思っていただけに、まりさにふられたショックは大きい。
残念ながら、夢に見たまりさとの同居生活はおあずけになってしまったようだ。
れいむはその日、何も食べずにお家の中でゆわんゆわんと泣き続けた。


また別の日のこと、れいむのお家の前にゆっくりぱちゅりーが姿を現した。
まりさにふられたショックで、
とにかく誰でもいいから自分といっしょにゆっくりしてくれるゆっくりが欲しい
と、れいむは考え始めていた。
例のごとく、れいむはお家の外に出て、ぱちゅりーの前でぴょんぴょんと飛び始めた。


「ぱちゅりーはれいむといっしょにぴょんぴょんしてね!!!」

「むきゅ?ここはとてもじめじめしてるわね。ちょっとおじゃまするわ。」

「ゆ!!だいかんげいだよ!!!」


ぱちゅりーはぴょんぴょんと飛ばなかったものの、れいむのお家に興味を持ったようだ。
すぐにぱちゅりーをお家の中に招き入れる。


「むきゅっ!ここはせまくてじめじめして、とてもゆっくりできるおうちだわ!!!」

「ゆゆ!そういってもらえるとれいむもうれしいよ!!!ぱちゅりーはれいむといっしょにゆっくりしようね!!!」


れいむの興奮は最高潮に達した。
目の前にいるぱちゅりーは、ここをゆっくりできるお家だと言ってくれた。
これで完璧だ。自分がふられる理由はどこにも無い。
このぱちゅりーと一緒に、これからずっとゆっくりできるんだなぁ
とれいむは考えていた。

だが・・・


「むきゅ?ぱちぇはここでひっそりとくらしたいのよ。れいむがいるとゆっくりできないわ。れいむはとっととでていってね!!!」

「ゆ!!!ぱちゅりーはれいむといっしょにゆっくりしないの?」

「れいむはぜんぜんゆっくりしてないわ。だかられいむがいたらぱちぇがゆっくりできないでしょ!そんなこともわからないの?」

「ゆうう!ここはれいむのおうちだよ!!れいむといっしょにぴょんぴょんしてくれないぱちゅりーはとっととでていってね!!!」

「むきゅ、いたいわ!!ゆっくりできないれいむがぱちぇをいじめるわ!!!」


ぱちゅりーはゆっくりとその場を去ってしまった。
れいむはまたもやふられてしまったようだ。


「ぱちゅりーがわるいんだよ!ぱちゅりーはぜんぜんゆっくりしてないんだよ!!!」


捨て台詞を吐くれいむの後姿は、落ち葉が似合いそうな哀愁を漂わせていた。
まだ初秋なのにとても冷たい風が吹いてきたので、れいむは自分のお家に入った。
心と体が冷えたれいむは、自分の妄想の中で、憧れのまりさといっしょにゆっくりすることにした。

翌日、れいむは一匹のゆっくりちぇんに出会った。
3度目の正直ということで、れいむは本気モードになっている。


「ゆ!ちぇんはれいむといっしょにゆっくりしていってね!!!」

「れいむはゆっくりしてないんだよ、ちぇんにはわかるよー。」


ちぇんにゆっくりしてないと言われたが、れいむはそれくらいでは引き下がらない。


「ゆう、そんなことないんだよ!!れいむはとてもゆっくりしてるんだよ!!!」

「ならそのしょうこをみせてほしいんだよ。」

「れいむはきれいなおうたがうたえるんだよ!!!ゆ♪゛ゆ゛っ、ゆ~~ゆゆゆ゛」

「わからないよー。れいむのおうたはゆっくりできないんだよ。ところでれいむはかりはとくいなの?」

「ゆ・・・れいむはかりがとくいじゃないんだよ。
 でも、れいむはおうちのなかでゆっくりできるんだよ!!!
 だからちぇんはれいむといっしょに、おうちのなかでゆっくりしようね!!!」

「わからないよー。れいむはやっぱりゆっくりしてないんだよー。」

「ゆ!れいむはゆっくりしてるんだよ!!!ちぇんはれいむのおうちにきていっしょにぴょんぴょんしてね!!!」

「ちぇんはれいむといっしょにぴょんぴょんしたくないんだよ。わかってねー。」

「どうじでみんなれいむといっしょにゆっくりしてくれないのぉおおおお!!!」


二度あることは三度ある、
れいむはちぇんにもふられてしまった。

これ以降もれいむはほかのゆっくりにアタックしてみたが、
返事はいつもNOだった。
ふられっぱなしのれいむだが、
いつかきっと、ゆっくりしたまりさといっしょになれるんだと信じて、
ジメジメしたお家の中で、まりさをずっと待っていた。


晩秋になり、気温はますます下がり始めた。
多くのゆっくりは冬篭りの支度をしているのだが、
れいむは冬篭りの支度をする気が全くないようだ。
というか、れいむは食料が豊富にある環境に育ったので、
冬篭りが何なのか、どれだけ苦労することなのか、全く何も知らないらしい。
れいむの中では現在、いっしょにゆっくりする相手を見つけることが何よりも優先事項になっている。
ときどきれいむのお家の前を、カップルのゆっくりが通るのだが、
れいむはそんなカップルをうらやましそうに見つめていた。
あんなまりさといっしょにゆっくりできたらいいなぁ。
れいむはお家の中でずっと妄想にふけっていた。


冬が近づくある日のことだった。
家の外が急激に冷えてきたので、
れいむは入り口に草を敷き詰める作業をしていた。
自慢のお歌をうたいながら作業していたのだが、
何の前触れもなしに突然、ゆっくりまりさが草を払いのけてお家の中に入ってきた。


「ゆゆ!?ここはれいむのおうちだよ!!!まりさはゆっくりしていってね!!!」


返事は無い。れいむは続けて聞いてみる。


「まりさはゆっくりできるゆっくり?」


やはり返事は無い。
そしてまりさは突然、れいむに寄り添ってきた。


「ゆゆゆ!!!ま・・・まりさ・・・・いきなりどうしたの!?」


何も答えずに、まりさはれいむに擦り寄ってくる。
大胆なまりさの行動にれいむは興奮し、核心を突く質問をした。


「ゆううくすぐったいよ!!れいむはまりさといっしょにゆっくりしてもいいのよ!まりさはどうなの??」


するとまりさが突然、れいむの頬をすりすりし始めた。
お家の外でぴょんぴょんはしていないが、
まりさの気持ちがれいむには分かったようだ。


「ゆっ!まりさ!!!」


今までれいむはふられ続けたが、
ついに、自分を好いてくれるまりさが現れたのだ。
スィーには乗ってこなかったが、まりさはとてもゆっくりしているゆっくりに見える。
とうとう、小さいころからのれいむの夢が叶うのだ。


「ゆうううううう!!!」


れいむの高鳴る気持ちはもう誰にも止められない。
れいむは欲するがままに、まりさの頬をすりすりする。
一方のまりさは快くれいむを受け入れてくれる。
まりさの頬はとてもぷにぷにしていて、
れいむがすりすりする度に、まりさの頬がキュッキュッと音をたてる。
すりすり感の最高なまりさの肌に、れいむはメロメロになってしまったようだ。


「まりさぁあああああああ!!!!」


まりさは何も答えない。


「ゆうううううううう!!!すっきりーーーーー!!!」


一度のすっきりでは物足りず、れいむはその後、続けて3回すっきりした。
そして、れいむは疲れてそのまま眠ってしまった。

翌朝、れいむはゆっくりできない夢で目を覚ました。


「ゆゆっ、なんなの???」


目を覚ました後、ゆっくりできない気持ちでいっぱいだったが、
夢を見たことをれいむはすぐに忘れてしまったようだ。
なので、ゆっくりできない原因がれいむには分からない。
周りを見回してみるものの、特に変わった様子は無い。
お家の中には誰もいない。いつもと同じ光景だ。
するとれいむは、昨日のゆっくりしたできごとを思い出す。
昨日、まりさがお家の中に入ってきて、いっしょにゆっくりしていた。
その肝心のまりさが今、お家の中にいないのだ。


「ゆ!?まりさがいないよ!!!どこにいっちゃったの??」


外は白い雪が降っている。
さすがに、ゆっくりたちはそろそろ冬篭りを始めなければならない。
だがれいむのお家の中には、冬篭りするための食料がほとんど無い。
普段から食料を蓄えていなかったのだから当然だ。
お家から一歩出てみると、尋常ではない寒さがれいむの全身を襲った。
これから食料を集めようにも外はとても寒く、食料を探せるような環境ではない。
れいむはそこで初めて、冬の間は食料がとれなくなる、という現象に気がついたようだ。


「これじゃあごはんがたべられないよ!!!おなかがすいてれいむはゆっくりできなくなるよぉおおお!!!」


危機感を持ち始めるれいむだが、もうすでに遅い。
お家の中にある、わずかな食べ物だけで、これから訪れる厳しい冬を越さなければならないのだ。


「おなかがすいたよぉおおおお、まりさぁあああ!!!ゆっ・・・・・・・ゆゆ!」


まりさがいなくなった理由が、れいむにはピンときたようだ。


「れいむがおなかをすかせてるから、まりさはかりにでかけてるんだね!!
 まりさはとてもゆっくりとしたゆっくりなんだよ!!
 れいむはそんなまりさといっしょにゆっくりできて、とてもしあわせーなんだよ!!!」


自分自身に対してのろけ話をしながら、れいむはお家の中でまりさの帰りを待つことにした。


れいむは肝心なことに気がつかない。
こんな寒い中、ひ弱なゆっくりが狩りなどできるわけないということに。


翌日になってもまりさは帰って来なかった。
たくさんごはんを持って帰るために、まりさは遠くまで狩りに出かけているのだろう、とれいむは考えていた。

その日の昼ごろ、れいむはある異変に気づく。
頭が重い。
頭の上に何か乗っているような感覚だ。
そして、普段以上にお腹が減るような気がする。
これはもしかすると・・・
そう、ゆっくりがとてもゆっくりできるあれだ。


「ゆゆ!おちびちゃんができたんだよ!!!れいむはとうとうおかあさんになったんだよ!!!」


とてもゆっくりとしたまりさとの間にできた子供だ。
これからずっと子供を大切にするだろう。
まりさが狩りから帰ってきたら、まりさにすぐ見せてあげよう。
そのときに、子供ができたことをまりさにどう伝えようか。
れいむとまりさの子供だよ!!
それとも、まりさへのプレゼントだよ!!
いやいや、シンプルにゆっくりしていってね!!!にしようか。

れいむは一匹、お家の中でいろいろなことを考えていた。
まりさが帰ってくるまで、お家の中に生えているわずかなキノコを食べて飢えをしのぐ。
まりさや子供のことを考えていると、多少の空腹など気にならないようだ。
れいむの頭は徐々に重たくなっているようで、出産への期待はいっそう増していった。


「おちびちゃんはゆっくりしていってね!!!」


れいむは空腹を忘れ、
とてもゆっくりとした笑顔を見せていた。


その翌日もまりさは帰って来なかった。
れいむはとうとう、お家の中に生えているキノコを食べつくしてしまった。
れいむが食べるものはもう何も残っていない。


「ゆうう、おなかがすいたよぉおおお。れいむがゆっくりしてないと、
 おちびちゃんはげんきにうまれてこないんだよ。まりさははやくかえってきてね!!!」


れいむは空腹でゆっくりできなくなっていたが、まりさが帰ってくるのを信じて、ずっとお家の中で待っていた。

翌日は吹雪になった。
体の冷えたまりさが帰ってきたら、すぐに体をすりすりして温めてあげよう
と、れいむは考えていた。
しかし、どれだけ待ってもまりさはれいむのお家に帰ってこない。


「れいむはもうおなかぺこぺこだよ!!!まりさはなんでかえってこないの???
 はやくしないと、れいむとおちびちゃんはゆっくりできなくなっちゃうんだよ!!!」


れいむの頭はさらに重たくなり、空腹感は普段と比べて強くなっているようだ。
それだけ、子供がすくすくと成長しているのだろう。

それから数時間後、れいむはとうとう空腹に耐えられなくなり、
仕方なく自分の子供を食べることにした。
ほかのゆっくりにとっては、自分の子供を食べるなどもってのほかだが、
そのあたりのことに関しては、れいむは無頓着のようだ。


「ごめんねおちびちゃん。れいむはおなかがすいてゆっくりできないんだよ!!
 だかられいむにゆっくりたべられてね!!!」


自分の子供を頭から振り落とそうと、一生懸命に体をゆらす。
だが、れいむの頭からは全く子供が落ちてこない。


「どうぢでおちびちゃんはおちてこないの??れいむはおなかがすいてるんだよ!!!」


やはり、子供は落ちてこない。
それだけしっかりと、れいむの頭にくっついているのだろう。
しっかりと母体に根付く子供は、とてもゆっくりしている証拠だ。
それだけ、親ゆっくりの栄養をたくさん吸収して、大きく成長しているのだから。
まるまるしていたれいむの頬は、ここ数日で痩せこけて、ガリガリになっていた。


そして翌日、れいむの体力がとうとう限界に達してしまった。
れいむはもう動けない。
まりさがちょうど帰ってきたとしても、今から何かを食べたとしても、もう手遅れだろう。
れいむは、自分が永遠にゆっくりしてしまうことを悟ったようだ。


「もっど・・ゆっぐりじだがっだよ・・・・ま゛り゛ざ・・・・・・・」


れいむはそれっきり動かなくなり、永遠にゆっくりしてしまった。








動かなくなったれいむの頭には、
子ゆっくりではなく、キノコが生えていた。


春になると、れいむの死骸はカビだらけになっていた。
冬越えに成功したゆっくりが巣穴から飛び出してくるように、
冬越えに成功したカビの胞子が、れいむの巣穴から勢い良く飛び出ていった。


春真っ盛りだが、まりさはれいむのお家に帰って来ない。
そしてこれからもずっと、まりさはれいむのお家に帰って来ないだろう。





なぜならまりさは





れいむの妄想が生み出した、架空のゆっくりなのだから


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※作品を書き終えた後に、内容の類似した作品が既に出ているかも?
 と、いつも気になってしまいます。
 本作品のストーリーが、既出作品とかぶってしまっている場合はご容赦ください。


 なんということでしょう!
 anko2235れいむへの愛情 の挿絵をエアあきさんに描いていただきました。
 嬉しいような、恥ずかしいような、不思議な高揚感で胸がいっぱいです。
 実を言うと、挿絵に描いていただいた、実ゆっくりがもがき苦しむ場面は
 エアあきさんの作品に感化された要素がとても強く、
 まさか、その本人に挿絵を描いていただけるとは夢にも思っていませんでした。
 エアあきさん、ありがとうございます!!!


 読者様からご指摘を受けたゆっくりの設定に関して。
 人間が、野生動物の食べ物を『えさ』と表現することは多々ありますが、
 ゆっくりの視点から、ということで改めて考えてみると、
 ゆっくりが自分たちの食べ物を「えさ」と呼ぶことには、確かに違和感を感じます。
 「巣」という言葉もしかり。
 これは私自身が、ゆっくりの設定を十分に把握できていない証拠です。
 このようにまだまだ未熟な点が多いですが、
 これからもっと、ゆっくりの視点からストーリーを眺め、
 より適切な表現を作品の中に取り入れて参りたいと思います。


鉄籠あき
過去の作品

anko1922 鉄籠
anko1941 野良まりさたちの行く末
anko1951 ゆっくりの住む牧場
anko1968 正義感
anko1973 あんころ草
anko1993 50%
anko2013 カウンセリング
anko2024 カレーの作り方
anko2047 露店のゆっくり
anko2059 ゆっくりおばさんの船旅
anko2085 赤ゆ合戦
anko2107 たこつぼ
anko2120 線香台
anko2187 生きる
anko2207 野良ゆをゆっくりさせない工夫
anko2235 れいむへの愛情
最終更新:2010年11月15日 18:59
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