『地獄の横断歩道』 39KB
虐待 不運 群れ 野良ゆ 姉妹 赤ゆ 子ゆ ドスまりさ 都会 現代 うんしー ただの大量虐殺SS
住宅街にはざわざわと、饅頭の喚き声が響き渡っていた。
ドスまりさに率いられた群れは立派な公害であったが、
ゆっくりたちにとってはゆっくりプレイスなのであった。
ここ数か月で発生し、ダンボールハウスがわらわらと立ち始めたこの群れである。
がっこうも設立され、順風満帆。
そして今日はなんと遠足の日なのだ。
ドスまりさからおちびちゃんたちへのゆっくりしたプレゼントである。
「だいじょうぶなの、ぱちゅりー?」
ドスは体を傾けたが、ぱちゅりーはあくまで自信家だった。
「むっきゅん、ゆうっしゅうなぱちぇならちゃんとおくりむかえできるわ!」
このあたりで一番大きなゴミ捨て場。
住宅街の群れ、おちびちゃん遠足の集合地点であった。
わらわらとちっちゃい子ゆ赤ゆたちがざっと100。
その周りには30ほどの親ゆたちがいってらっしゃいをしにやってきている。
がっこうのただ一人の先生、ぱちゅりーがこの遠足の責任者だ。
「ぱちぇをあまくみないでね、ドス! ぱちぇはけんじゃなのよ!」
「そこまでいうんなら、いいけど……」
そろそろ太陽が真上に上る。
ごちゃごちゃとつめあわさったまんじゅうが、
ぱちゅりーの背に向かってちょこちょこと動き回り始めた。
「ゆっくちいってくりゅにぇ!」
「ゆふふ、おちびちゃん、きをつけていってきてね!」
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薄い雲と青くどこまでも広がる空。
わずかな風は静かに冷気をたたえている。
住宅街をぴょんぴょん歩く101の饅頭。
そんな秋も遠のき始め、そろそろ肌寒くなり始めるこの月であったが、
ぱちゅりーとおちびちゃんたちの心はるんるんと暖かく高揚していた。
「ゆっくちたのちみだにぇ!」
「まりちゃはこーえんしゃんでむちとりをちゅるのじぇ!」
「ありちゅはときゃいはなこーでぃにぇーちょをすりゅわ!!」
なぜならば今日は公園へ遠足にいくのだから。
葉っぱもお花も沢山の、公園へ行くのだから。
「みんな、ちゃんとついてきてるわね?」
「「「ゆっくちついてきてりゅよ!!!」」」
100匹のおちびちゃんたち。
にっこりしながらころがったり、ちょこまかしながら御返事する。
そのお返事はいつもより五倍元気なものに思えた。
住宅街の狭苦しいところを住みかとしているこのおちびちゃんたちにとって、
緑あふれる公園への遠足はそれはそれは楽しみなイベント。
緑の香りは、ゆっくりをひきつけてやまないものだ。
わくわくで元気いっぱい!
しあわせを分け合うように、しゅーりしゅーりとほっぺをぷにゅぷにゅさせる。
こーりょこーりょ、うんうんたいちょー!
ぱちゅりーはぐにゃりと縦に伸び、おちびちゃんたちを俯瞰して、
「いち、に、たくさん……むきゅ、みんなちゃんとついてきているようね」
全員無事についてきていることを確認し、ほっと息をつく。
一風ふいて、枯れ葉がおちびちゃんたちの頭の上をひらひらと舞っていった。
「はっぱさんが、ふぁーしてるよ!」
「「「ゆわあああ!! ちょぎょーい!!」」」
ゆったりもったり、旅は続く。
「しょろーり、しょろーり!」
「ぴょんぴょんするよっ!」
ゆっくちの煩いキンキン声が近づくと、別の群れのゆっくりがごあいさつ。
「ゆゆ! ゆっくりしていってね!!」
「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!」」」
おちびちゃんの集団はそれだけゆっくりできるものなので、
野良ゆはみんなゆっくりしてしまう。
先生ぱちゅりーもなんだか誇らしげだ。
住宅街の固い地面をなんとかかんとか攻略し、落ち葉をさくさく踏みしめて
アスファルトをぽよぽよと跳ね、角を三つ曲がってゆく。
すると通りには大きめの建物が目立ち始め、四車線の大型車道にまでやってくることができる。
びゅんびゅん!!
「「「ゆううううう!?」」」
ここまではお散歩の延長線上にあったが、ここはちょっとゆっくりできない。
冷たい鉄の車が左右にびゅんびゅん走る忙しい場所で、
公園へ向かう道における最大の問題だった。
「むきゅ、みんな、ゆっくりとまってね! くるまさんがゆっくりするまでまつのよ!!」
「「「ゆっくちりきゃいしちゃよ!!」」」
横断歩道の前で一斉に止まる101匹の饅頭ども。
すでにアスファルト表面のよごれであんよが茶色っぽくなっていたが、
わくわく感からかわがまま一つ言うこともなく、まだまだ元気である。
先生ぱちゅりーはもみあげをすっと上げて、信号を指す。
「あのしんごうさんがあかいときは、くるまさんがうごくときだからね! あおになったらわたるのよ!」
「「「それもききゃいしちゃよ!!」」」
大型トラックやバスが大声をあげながらゆっくちたちの前を通り過ぎてゆく。
ガタガタガタ!
地面がぐらぐらと揺れ、おはだがぽよぽよ波打つ。
排気ガスがもくもくと舞い、おちびちゃんたちの小さなおくちを汚す。
「けひょ、けひょっ!」
「きょわいいい」
「ゆっくちできにゃいいい」
車なんて初めて見たおちびちゃんなどは、吃驚してかたまり、泣きはじめたり。
ゆっくりには、特に大型車両などが、ドスより大きな怪物に見えるのだろう。
「だいじょうぶだよ! ぺーろぺーろ!」
「ここにいればゆっくりだいじょうぶだよ! しんぱいしないでね!!」
それをちょっと年長さんの子ゆっくりたちが、むねをはって学校仕込みの知識を披露しつつ
フォローしてやっている。
「ゆぴぴぃ」
「ゆっくちー」
すーりすーり、しあわしぇー。
怖さ半分ゆっくり半分で、おしくらまんじゅうのようにすりすりまとってゆくおちびちゃん。
車がまばらになればまた、ゆっくりが怖さを上回ってゆき、
なんだかうれちーちーまでしたいきぶんになってしまう。
ちょろろろろ……。
「くちゃいいいい!」
「やめちぇえええええ!!」
またまたどよめく饅頭の群れだった。
しかしなんとゆっくりできる光景なのだろうか。
ゆっくりならばそう思うに違いない。
そんなゆっくりであるぱちゅりーもまた、微笑んでいたのだった。
やがて車の往来はまばらになり、全く無くなる。
ブルブルとやかましい音も収まり始め、しんと静かになってゆく。
ぶるるる、すとん。
車が止まったのである。
横断歩道のすぐそばに止まる車達は、微動だにせず、死んだように静まる。
赤ゆっくちも子ゆっくりも突然の変化に顔を見合わせた。
あんなに元気に動いていたのに。
ちょっと傾いて首(?)をかしげたり、のびのびぴょんぴょんしてみたりする。
そんなことも、溢れる好奇心のあらわれであった。
そしてほどなく横断歩道の信号が青に。
「むきゅ! いまよ! ゆっくりしないでわたるのよ!!」
「「「えいえいゆー!!!」」」
時間制限のある横断歩道という難所。
ここばかりはゆっくりしないことも必要だ。
ぱちゅりーたちはぴょんぴょんとあんよを働かせ、横断歩道にくりだしていった。
ぱちゅりーは虚弱だったが、成ゆであるためそれなりのスピードでぴょんぴょんすることができる。
駆け足は街で生き残るために必須の技術の一つである。
「むっきゅん、むっきゅん」
アスファルトの上をいつものペースで駆けてゆく。
早く渡り切ってしまわないと轢き殺されることを知っていたから。
多少の努力と訓練により、むっきゅりしたぱちゅりーでもゆっくりせず走ることができる。
このペースなら横断歩道を渡りきれるし、実際何度もわたってきた。
ぱちゅりーには妹や幼馴染が何匹もいたが、とろとろ跳ねるものから死んでいった。
少なくともぱちゅりーはそう思っている。
順調なペース。
しかし自分の事しか頭に無いところ、やはり餡子脳である。
「ゆっくちすすみゅよ!」
「しょろーり、しょろーり!!」
ぴょんぴょんずんずん進んでいくぱちゅりーに対して
赤ゆと子ゆの動きはもたもたしたものである。
まず歩道を降りる所からしてゆっくりだった。
「ゆええぇん、きょわいよおおお!!」
「だいじょーびゅだよ! ゆっくちぴょんすればいいだけだよ!!」
赤れいみゅが、赤まりちゃが、おねーちゃんたちに励まされながら飛んでいる。
歩道と車道の高低差は意外とあるのである。
だからこわいのだ。
特にピンポン玉サイズと形容される赤ゆっくりにとっては。
それゆえまず車道に降り立つために、心の準備とおもいきったジャンプが必要であった。
もにゅんもにゅんとバネのように餡子を働かせ、飛ぶ。
「ゆ、ゆ、ゆっくちー!」
「ぴょ、ぴょんぴょんしゅるのじぇえええ!!」
どすん!
「「「いちゃいいい……」」」
そんなことをやっているうちに時間はどんどん過ぎてゆく。
全ゆんが車道に降りた時、すでにもう30秒近く経過しており、
なのにまだ四車線のうちの一つ目に入った辺りでぷよぷよしているのだ。
「ゆっくち、ゆっくち!」
「しぇんしぇー! まっちぇー!」
体は小さく非常に遅い、まさに亀の歩みそのもの。
「まりちゃもうちゅかれたああ!! ゆんやああああ!!!」
「れいみゅはうんうんちゅるよ! ちゅっきりー!!」
立ち止まってだだをこねこねする糞もいる。
「むぎゅうううう!!! どぼぢておちびちゃんたちあんなにむこうなのおお!!??」
ぱちゅりーのクリーム脳は、そのもたもたさにやっと気がついたようである。
四車線道路の一車線目で100のおちびちゃん全てがよちよちと進んでいて、
先頭集団がようやく二車線目に入ろうかというゆっくりさ。
青信号はもう点滅を始めている。
ほどなく赤になり、車が走り出す。
絶体絶命だった。
ぱちゅりーは体をのーびのーびさせて赤ゆたちの注意をひきつけはじめた。
「むぎゅううう!!! おちびちゃんたち!」
速く走って、わたらせなければ。
ぱちゅりーの脳裏に撥ねられて死んでいった仲間たちの姿が浮かんだ。
「しんごうさんがあかになるのよ!! はやくわたってね! ゆっくりできなくなるわ!」
もちろん横断歩道の真ん中にいるぱちゅりーも危ないのは同じで
さっさと渡りきらなければゆっくりできなくなってしまう。
だからぱちゅりーは、おちびちゃんたちを積極的に助けることはしなかった。
たしかにあの子たちはがっこうの大切な生徒たち。
でもどうせあずかってるだけのおちびちゃん、自分の命のほうが大切だ。
心の底ではそう思っていたのだろう。
ぱちゅりーは命の恐怖から、今までの倍以上のスピードで程へ駆け
早々に車道まで辿りついてしまった。
「ふう、むっきゅり……」
ほっと一息ついた。
しかしおちびちゃんは地獄のまっただなかにある。
「ゆわあああん!! ゆっくちしちゃいいい!!!」
「ゆっくちさせちぇえええ!!!」
ゆっくりできないという発言に泣き、暴れだしてしまう赤ゆたち。
ぴこぴこをふりまわすれいみゅ、もみあげをぽんぽんするまりちゃ。
がっこうの授業でも、車さんはクマのように襲い掛かってくると教えているし、
親や知り合いを車さんに殺されたおちびちゃんも多い。
だから殆どのおちびちゃんの足が恐怖ですくんで前進も後退もできなくなってしまった。
「ゆううう!!! れいみゅはちゅかれんたんだよおおお!!!???」
「おきゃあああしゃあああああん!!! まりちゃおんぶちてえええ!!!」
一方でますますわがままをいう赤ゆもいるし、なにがなんだか。
一方子ゆたちと言えば、
「だいじょうぶだよ! ゆっくりすすもうね!」
「ゆっくちぃ……」
「ぺーろぺーろ!! ゆっくりしようね!」
「ゆぴぃ……」
「わがままいわないでさっさとあるこうね!」バキッ
「ゆええええええ!!! いちゃいいいい!!!」
怯える赤ゆを勇気づけたり、なまけものにカツをいれたりするものがまず一組。
ぺーろぺーろしたりすーりすーりしたり、おけつで直接殴ったり。
なんとかしようとしているが、そんなことをしている時間が無いのは火を見るより明らかであろう。
「ぐずないもうとはおとりになってね! まりさはさきにいかせてもらうよ!!」
「ゆびいいい!! おねーちゃんまっちぇええええ!!」
「ぷっすー☆ おおのろまのろま」
「ゆえええん!! どぼぢでそんにゃこちょいうのおおおお!!??」
姉妹を見捨てて走り去るものが一組。
げらげらと笑いながら跳ね去ってゆく。
多少のゲス気質がみられる、というよりゲスそのものの行動だが、
いっそこういう行動にでるほうが生物としてはむしろ賢いかもしれない。
しかし無常である。
信号はすでに赤になって久しく、車はそろそろ動きだそうとしている。
どちらのグループも歩道には辿りつけそうにない。
「むぎゅうううう!!! ばっでえええええ!!!!」
歩道という安全地帯からぶよぶよと、ただ一匹車さんに呼びかける必死のぱちゅりー。
命をかけるほどではないにせよ、生徒であるおちびちゃんは大切だったし
なによりもしあずかっているおちびちゃんになにかあったら……。
制裁される!
制裁! 制裁! 制裁!
保身からの行動だった。
「ぶぎゅううう!!! せいざいはいやあああ!!!」
赤信号とぱちゅりーの様子にいよいよ子ゆ赤ゆの一団もぱにっくに陥った。
じょろじょろじょろ!
おそろしーしーがつめたいアスファルトのすきまに染みこんでゆく。
「ゆぎゃああああ!!!」
「どぼちてくちゃいにょおおおお!!??」
唸り声を上げ始める車さんたち、ぶるるんぶるんとガスを排泄する。
ぐるんぐるんとエンジンがあたたまり、タイヤがぐるぐる回り始める。
走る事をあきらめたいくつかの饅頭は、むしろ車に働きかけようとしている。
「ぷきゅううう!!」ブリ!
「くるましゃん、ゆっくちしにゃいとれーみゅおきょるよ!? ぴゅんぴゅん!!」びぢぢ!
「くりゅなああああああ!!!!」もりゅん!
いくらかのおちびちゃんはおそろうんうんを垂らしながら
必死で追い返そうとぷくうううう、すなわち威嚇を繰り返す。
車はゆっくりゆっくりと、おちびちゃんの一団に向かって進みだした。
一般の人々にとって、害虫・野良ゆっくりの命など配慮に値しない物。
あなたはありさんの群れが砂糖にむかって行進しているという理由で車を止めておけますか?
車たちは、なんの躊躇いも無く殺戮を始めた。
まず犠牲になったのは一番近くに居たぷきゅー組である。
れいみゅの体に、その巨体の影が落ちた。
「ぷきゅうう!! ぷきゅうううう!! ぶぎゅっ!?」
「おきょるよおおお!! おきょ……ぎょっ!?」
必死で威嚇していたれいみゅ姉妹は無残にタイヤに潰され、
空気が一杯入っていたためか、破裂音とともに内臓餡子がそこらへ飛び散った。
餡子の雨が一瞬にして地面を汚す。
二車線目に辿りついていた運動神経のいいまりちゃたち、ちぇんたち。
そのしゅんっそくも車さんの前には無力だった。
「やぢゃあああああ!!! ばりちゃのほうにこにゃげべっ!!!」
「ぐるまさんやべちぇええええ……びょぢぢぢっ!!」
ひと足早く逃げ始めた子まりさの一団、右折車両に惨殺される。
「わがらにゃああああああ、あびょ!」
「ちぇんのしっぽしゃんぎゃああああ!!!」
「らんじゃばああああああああ!!」じょろろろろ
ちぇんは即死するものと尻尾から徐々に削られるものに分かれた。
いずれにせよ様々な大きさの車の波状攻撃に殆どが餡子を散らした。
「あんよしゃんがねちょねちょしゅりゅううう!!」ねちょ
「ぺーろぺーろ……ぐざいいいい!! ぺーろ、ぺーろぉ、ぐざいいいぃぃ……」
おそろうんうんにあんよをとられ、逃げられなくなったありしゅもいた。
この二匹は姉妹であり、姉はその粘性の高いうんうんを取り払おうと
けなげにいもーちょをぺろぺろしていた。
ゆっくりにとって、うんうんはものすごく臭う物である。
涙なしには舐め取れない。
しかし、その努力は無駄に終わる。
「ゆぴょ! びょぎっ!?」
「ぺーりょ、ぺーまぼっ!!!」
ときゃいはなレディーになることを夢にしていたありちゅ姉妹、轢き殺される。
群れ一番の美ゆん姉妹としての、幸せなゆん生は四散した。
仲のいい姉妹だったのに。
おともだちが死んでゆく状況という精神的重圧は、おちびちゃんのぱちゅりーには耐えがたい物だった。
ブチュ、ブチョチョ
ある赤ぱちぇの姉妹は幼馴染のまりちゃが圧死するところをもろに見てしまった。
「んぎゅうううう!!!! んぎゅうううえれえれえれえれ……」
「んぎょおげえええええ!!」
「えれっ、えれれれ……」
飛び散る餡子カスとそれらにまとわりつく死臭に吐き気を催し
えれえれと中枢餡を吐いてその短い一生を終えた。
赤ぱちゅりーや子ぱちゅりーのほとんども同じ道をたどったが、
生き残った者も大抵タイヤの牙から逃れられなかった。
「ぢんぼぉ……」
右頬四分の一を削り取られたみょん。
中枢餡を潰してもらえることも無く、延々と苦しんで死ぬ羽目になった。
死ぬに死ねず地獄を見るおちびちゃんも数えきれないほどだった。
遠慮なく行き交う車達。
留まったがために潰されるゆっくり、逃れようとして潰されるゆっくり……。
ブチッ
ブチュン
ブチョッ
ベチャブチャ
「ゆぎゃああああああ!!! いだいいいいい!!!」
「いぼおおぢょおおおおおお!!!!!」
「どぼぢでごんなごどずるのおおおお!!!????」
黒白黄色の餡の花が、赤黒白のおかざりたちが道路をカラフルに染め上げてゆく。
ここまで色とりどりに汚れるのはなかなかない。
最初の30秒で60匹が命を落とし、残った時間で一匹づつ潰されていった。
「ゆっぐぢ! ゆっぐぢ!」
「おねーちゃんゆっぐちしちゃだみぇええええ!!」
あまりにも簡単につぶされてゆき、最期まで生き残ったのはたったの八匹。
それも皆五体満足というわけではなく、餡子を減らしたり、皮膚が傷まみれだったり、
非ゆっくち症にかかっているものまでいた。
「むぎょっ! えれえれ……」
歩道でクリームを吐き出す先生ぱちゅりー。
「ゆぎゃああああ!!! ぼうおうちがえるううう!!!」
「ゆんやあああああ!!! おねーぢゃんぎゃあああああ!!!」
「ごんなのときゃいはじゃにゃいわああああ!!!」
「わがらにゃああああああ!!!!」
「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」
残ったおちびちゃんたちは汗もだらだら涙はぼろろ
ムンクのようにどろどろと体をゆがませ、苦痛で甘味もたっぷりだ。
青信号になり車が止まったにもかかわらず、
あまりの精神的ダメージでもう動けそうにない。
すぐにでも餡子を吐いて死にそうな様子さえあった。
そのときである。
住宅街方面の道からのっそりと成ゆの一団が。
「やっぱりぱちゅりーだけにまかせるのはしんぱいだね!」
「そうだね、やっぱりドスもついていったほうがよかったね!」
ドスと、おちびちゃんたちのご両親たちである。
やはりぱちゅりー一人でおちびちゃんをまとめるのは大変であろうとやってきたらしい。
群れのドス、そして保護者のみなさま30匹はその餡咲き乱れる惨状を見て。
「「「……」」」
固まった。
しかし嗅覚と視覚ははっきりと現実をつきつけてくる。
「ゆぎゃあああああああ!!!!」
「なんなのごればあああああああああ!!!!!!」
「ぱぴぷぺぽ!!」
異様な死臭と、大量の死骸を見て驚きとともに叫んだ。
しかも良く見ればあれは自分達のおちびちゃんである。
「なんでえええええええ!!??」
「ゆっぐりできないよおおおお!!!!」
親ゆたちは一斉に、微塵もゆっくりしないで死骸の海へ駆け寄った。
残ったわずかなおちびちゃんが、自分のおちびちゃんであることを祈って。
「こわかっちゃよおおおお!!! おねーちゃんぎゃ、おねーちゃんぎゃああ……」
「ゆううう!!! れいむのおちびちゃん! ひとりだけでもぶじでよかったよぉおお……」
れいむのおちびちゃんは一匹を除いて皆死んでしまったらしい。
しかしこのれいむはまだ幸せな方だ。
中には……
「ありずのとがいばなおちびちゃんどぼぢでじんじゃっだのおおお!!??」
「ゆぎゃあああああ!! ばりざのゆうじゅうなおちびちゃんがああああ!!!!」
一度に全てのおちびちゃんを失った親ゆもいる。
その中には、まむまむを潰されもう子供を作れない身であった親ゆもいる。
半分潰れてタイヤの跡がついた無残なおかざりにおいおいと泣きついている。
「おちびちゃんなおってね! ぺーろぺーろ!! どぼぢでなおらないのおおお!!???」
死を受け入れられず無駄なあがきをする個体。
「ゆふ、ゆふ、ゆふふふふふ!!!」
「ゆっぢ! ゆっぐぢ!」
ショックで狂ってしまう個体も。
しーしーをぶちまけて、汚らしい。
かけがえの無い命が無残に散っていったのだ。
群れのみんなの餡子はぐつぐつと煮えたぎることになった。
「ぱちゅでぃいいいい!!! こればどういうことだああああ!!!!」
怒りの第一の矛先は、監督責任のある先生ぱちゅりーへ向けられた。
「このゆっくりごろじいいいい!!!」
「じねえええええええ!!!」
「ごのげずがああああああああああ!!!!」
「なにがけんじゃだああああああ!!!!」
「おちびちゃんどぼぢでぐれるのおおおおお!!!??」
「ゆ゛っ、ゆ゛っ……」
「ばがああああああ!!!!」
「げろぶぐろおおおおお!!!」
考えられる限りの罵声が浴びせられた。
「むぎゅ……ぱっちぇのせきにんじゃ……」
のーびのーび、ぱーくぱーくとしていいわけを探すぱちゅりー。
しかしこの場をうまく収める方法は全く思いつかなかった。
鬼意山に襲われたと言い逃れをしてなんとかごまかすつもりだったのに、
実際に現場を見られては、これはどう転んでもぱちゅりーが悪いということになる。
そもそもぱちゅりーは遠足の責任者なのだ。
こんな危険な道を選ばなければおちびちゃんは無事だったかもしれない。
「む、むっきゅりにげるわ!!」
ぱちゅりーは言葉に詰まって逃げだした。
捕まったら制裁され、殺される……かもしれない。
すくなくともあの様子だと死刑の見込みが高い。
そうでなくともこのことを責められながら暮らすのはゆっくりできない。
生存へ向けた打算からの行動であった。
別の群れにころがりこんで、ゆん生をやりなおせばいいや。
そんななまぬるい計画が餡の中でまとまりはじめたころ、
チリンチリン、グシャ。
「むぎょげえええ!!!」べちょ
「あっ、いきなり飛び出してくるなよ糞饅頭!」
ちょうど歩道を走っていた自転車に轢かれ、皮がびりびりになってしまった。
ぱちゅりーの行動はその寿命をわずかに縮めるのみであった。
自転車の重量で真っ二つになった体は、空しく風に乗ってぷるぷると震えていたが、
そのうち力尽きたのか全く動かなくなってしまった。
「……」
「……」
「……みんな、ぱちゅりーのことはわすれて、のこったおちびちゃんをたすけようね!」
さて、横断歩道の上には8匹のおちびちゃんだけではなく、
30匹の成ゆと、体長1メートル程度の中型ドスまりさがいる。
ぱちゅりーが死んだ今、どのゆっくりも車たちを恨めしそうに睨んでいる。
「ゆっくりしねえええ!!!」
「おちびちゃんをかえぜえええ!!!」
車にぽよぽよ体当たりを始めるゆっくりさえいる。
歯ぎしりの音がギリギリとうるさく響き渡っていた。
ドスはあたりを見回す。
「みんな、おこるきもちも、かなしいきもちもわかるけど、いまはおちびちゃんをたすけるのがさきだよ!!」
悲しみに暮れている暇はない。
ドスまりさは今のところ、あくまで冷静なのであった。
車さんはゆっくりしてくれないから、さっさと助けて撤収しなければならない。
信号が再び赤になるまで、制限時間は一分も無いだろう。
「じね! じねえ!」
言う事を聞かないゆっくりもいたが、それはほおっておくしかなかった。
「おちびちゃんはゆっくりしないでおかーさんのおくちにはいってね!」
「ゆうぅ! きょわかっちゃよおおお!!!」
「のこったかちゅーしゃさんはおちびちゃんのかたみさんにしておくわ……」
「おちびちゃんのおぼうしさん……」
ゆっくりたちはてきぱきと働き始める。
おちびちゃんの救助、死体やおかざりの回収など、まだやることがある。
(親ゆっくりは子供が死ぬと未練がましくおかざりをとっておく習性があるらしい)
しかし許されている時間はあまりにも短い。
信号はまた点滅を始め、もう赤になりそうな気配だ。
「ドスにまかせてね!!!」
ドスは今に走ろうと待ち構えている車に、会心のぷくーをくわえた。
「ぷっくううううううううううううううううう!!!!!!」
一メートルをわずかに越すドスまりさが、ぷくーひとつで倍の大きさになってしまった。
「いまのうちにおちびちゃんをどうにかしてね! ぷくう!」
どうやらドスは車の通行を体づくで止めてしまうつもりらしい。
確かにこんな膨れたドスを轢いてしまえば車の前部がへこんでしまうかもしれないし
フロントガラスがあんこまみれになるから、運転手は多分嫌がるだろう。
しかしドスがとうせんぼできるのは、せいぜい行き帰り四車線のうちのたった一車線ぐらいだ。
ププー、ぐしゃ。
信号はすでに真っ赤。
歩道へ向かうためドスの真後ろから離れ、隣の車線へ向かった一団が永遠にゆっくりした。
「ゆぎゃああああ!!! おがーじゃああああああ!!!」
「ゆっぐりできないよおおおおお!!!!」
「あぢずのとがいばなおちびちゃんがあああああ!!!」
せっかく助かったおちびちゃんを失うおかーさん。
せっかく再開できたおかーさんを失うおちびちゃん。
大人と子供、あわせて六匹、轢かれてあわれ。
「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ……」
そして死体はさらに増える。
子供を失って狂った一団が自殺行為を始めたのだ。
「おちびちゃん、おかーさんもいまからそっちへいくよ……」
「おそらのゆっくりぷれいすさん、まっててね……」
プー、ぐしゃ
ぐしゃぐしゃぐしゃ
べちょん
六匹の親ゆたちは我も我もとタイヤに向かい、死んだ。
「なにじでるのおおおお!!?? おんこうなドスでもおこるよおおおお!!」
正義感の強いドスはとうとう怒りだす。
躊躇なくゆっくりを殺す車さんは非常にゆっくりできないものだった。
残酷な車さんたち!
悪びれもせず、ついには二度目の強行に及んだ!
人間さんの知り合いだからかんべんしてやろうと思ったが、
いや怖いのでかんべんしてやろうと思ったが、ドスはもう許せなかった。
ドス爆発!
饅頭にしては高めのその知性は義憤により崩壊した。
「せいっさいするよおおおお!!!」
そうしてなんと、ドスまりさは自分がとおせんぼした車線の先頭車両に
体当たりを始めてしまったのである。
人間さんのものに手を出すと言う禁忌。
普段のドスならもうちょっとマシな行動をとれたかもしれない。
「じね! じねええええ!!! むれのみんなをがえぜえええええ!!!!」
それなりの重量でがんがんぶつかるから、ぐらぐらゆれる。
まりさの柔らかめの皮のためダメージにはとぼしかったが……。
「ゆわあああ!!! かっきょいいいい!!!」
「どちゅー! くるましゃんをころちぇー!!!」
絶体絶命のこのタイミング、そこで始まったドスの攻撃。
「すごいよ! どすってつよいね!!」
「ゆっくちー!」
ゆっくりどもも勇気づけられたのか、にこにこわらってドスを応援し始める。
相手は反撃してこない。風は明らかにドスに味方をしていた。(ように見えた)
「まだまだいくよおおおお!!!」
今度は車に飛び乗って、プレス攻撃を仕掛けてゆくつもりらしい。
しかしこれは実現しなかった。
ドスの快進撃も、ここで終わり。
車の中の人間さんはドスの様子を見て危険を感じた。
このままじゃ車に傷をつけられかねないと思った。
急アクセルからの、車さんの体当たりが炸裂すると、
バァンと爆発音のような、破裂音の様な大きくゆっくりできない音がそこらじゅうに響いた。
1トンを超える鉄の塊が思いっきりぶつかってくるのだ。
ドスには勝ち目が無い。
餡子汚れが嫌だから今まで死なずに済んだのだ。
ドスのおなかは一撃で千切れ、餡子はぶちまけられる。
あたりの地面と車さんに餡子の雨が降る。
「ゆぎゃああああああ!!!! いだいいいいいい!!!!」
餡子を撒き散らし、ころげまわるドス。
餡子の跳ねる音がびちょびちょと聞こえてくる。
ドスは自分が傷つくような激しい戦いをしたことが無かったから、
体がちぎれるような痛みにうぶで、物凄く弱かった。
この世の終わりの様な痛みだとドスは思った。
どうにか逃れようと、だだっこのように暴れる。
ぷりん! ぷりん!
それはゆっくりにとってまるで、暴れまわる象そのものなのであった。
「ゆぴいいいい!!! こっぢこないでねえ<グシャ>」
「ゆっぐぢできないよおおお<グシャ>」
「おがあじゃ<ベチョ>」
応援していた生き残りのゆっくりたちが、信頼していたドスにぷちぷちと潰されてゆく。
せっかく助かった命が無残な餡子ペーストに変えられてゆく。
「どずやべでえええええ!!!」
「でいぶのかばいいおちびちゃんがあああああ!!!!」
ドスは帽子が脱げてかぶりなおす余裕さえなく、同胞の悲鳴に耳を傾ける余地はなかった。
ゆっくりを叩きつぶす一つの凶器と化したドス。
群れが崩壊してゆく。
「ゆっくりにげるよ!」
「あんなどすはもういらないよ! ゆっくりしね!!」
要領のいいことにさっさと逃げ出すゆっくりもいた。
車一つ潰せない無能がどうしてドスをやってるの?
軽蔑の視線を向け、べろべろと舌を出し歩道の方へ駆けてゆく。
「ゆびゃ!」
「ゆびゅげ!!」
そんなゆっくりたちはみな潰された。
車がびゅんびゅん行きかっているドスのいない車線は、
ドスがたった今暴れ回っている車線よりよっぽど危ないということを忘れていた。
トラック・バス・タクシーに、様々な色の乗用車。
無残にぷちぷちと、命は消えてゆく。
ドスを突き飛ばした車はそのまま前進し、倒れたドスの上に乗り上げた。
回転するタイヤがガリガリとドスの肌を削り、中の餡子へずぶずぶと沈み込んでゆく。
「いだいいいいい!!! ごべんなざいいいい!!!!」
ドリルで筋肉を削られるような痛み。
壮絶だった。
もう土下座したい気分だった。
「どずがばぢがっでばぢだ!! ぐるばさんはゆっくちぢでばず!!!」
群れゆっくりをかばい、そして車を殺そうとした勇猛なドスまりさは、
あっというまにおさげをぱたぱたとさせて泣き叫ぶあわれな糞饅頭になり下がった。
「ぼうくるまざんにぷくーしばぜん!! たいあたりもぼうじばぜん!!」
目をつぶってぼろぼろと涙を流すが、そんなもの鳴き声だ。
1000キロの重量がどんどんドスまりさの形をひしゃげさせてゆく。
傷口からは止めどなく餡が流れ、今や中枢餡もいびつな形になって
意識がだんだんと混濁してくる。
いよいよタイヤが、中枢餡を削りだした。
しーしーとうんうんをぶりぶりぶちまけながら、大饅頭が不気味に痙攣しまくる。
ゆ゛っ、と一つ鳴く。だんだんと冷たく黒ずむ。
どうしてこんなことに……。
ドスはただおちびちゃんたちに遠足に行ってもらおうとしただけなのに……。
信号が明滅するだけの時間が過ぎる。
車の運転手が車をドスまりさからどけると、
そこには目玉がこぼれ、餡子の海と化したドスの死骸だけがあった。
成ゆも子ゆも赤ゆちゃんも、一匹も生き残っていない。
すべてぐちゃぐちゃに餡の海と化してしまった。
この日からゆっくりの高く騒がしい声が失せ、住宅街は静けさを取り戻しはじめた。
生後間もないゆっくり、未熟ゆ、足りない子など、
住宅街の群れのうち、おいてきぼりにされたわずかなゆっくりだけが生き残った。
残っているのはほんのわずかな、それも吹けば飛ぶようなお子様ばかりだった。
冬に備えて食料が貯めこまれているからすぐには死なないかもしれないが、
一月もすれば餓死してしまうだろう。
「ゆ~♪」
「ゆっくち~♪」
ダンボールハウスで調子っぱずれに歌い、ゆっくり過ごすれいみゅたち。
外を除けばみな夕陽のオレンジにそまって、何もかもが悲しく輝いている。
「たいようしゃん、きりゃきりゃしちぇるにぇー!」
れいみゅが一匹、ぴこぴこをわさっとさせながら、嬉しさに悶える。
その喜びもきっと長くは続かない。
親ゆを待ち続け、それでも決して帰ってこない。
住宅街に静寂が戻る日もきっと近いだろう。
【おわり】
さく とかいはうんうん
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最終更新:2010年12月31日 18:57