『冬の別れ』 16KB
制裁 観察 自業自得 家族崩壊 駆除 野良ゆ 姉妹 子ゆ 都会 現代 人間なし 創作亜種 独自設定 冬は話が創りやすいです
「冬の別れ」
羽付きあき
* ゆっくり視点です
* いくつかの独自設定を使っております
* 独自ゆっくり登場注意
小麦粉の肌が痛みを感じるほどの寒さの中で空き缶まりさはいた。
季節は冬へと移り変わっており、日の光を阻むかのように時折見えるわずかな青空以外は灰色の雲が街全体を覆っている。
・・・底部に履いた「靴」と帽子があるから寒さ自体はそれほど感じない
空き缶まりさはふと母ありす達と過ごしていた日々を反芻していた。
寒さに震える自分にすーりすーりをしてくれた母ありすの温もりと大きな体、そして「とかいは」な笑顔は今でも心の奥底から忘れる事は決してなかった。
物理的な温かさは今の方が格段に良い。
だが、空き缶まりさは昔の方が暖かいと、なぜかそう感じていた。
空き缶まりさの帽子の一部は継ぎ足すように黒い布が縫い付けてある。
・・・以前ありすにバッヂごと食い破られた為だ。
母ありすの面影を感じたありすにゆっくりにとっては命と同等な程も大事な飾りを傷つけられる。
それがどれ程、痛切で悲しい行為であるかは想像に難くない。
だが、空き缶まりさはそれでも恨んだりする気にはならなかった。
あのありす親子にも事情があっただろうし、何よりも自分の目の前でゆっくりできなくなってしまった。
この街はありす種が少ない。
・・・厳密にいえばありす種は少なくならざる負えない。
数年前まではまりさ種とれいむ種に次いで、ありす種が多いと言う街ではごくありふれた光景が広がっていた。
少なくなった理由は数年前に街にいた「くいーんありすの群れ」が一斉駆除を受けたことに起因するとは知っていたが、それ以上を知る事は無かった。
今では時折捨てありすが街に現れる程度だ。
現に今まで自分が出会ったありす種は全てが元飼いゆっくりだった。
そう頭の中でぐるぐると考えていると、道端に、何かが落ちているのを見つけた。
底部にネチョリとした感覚が伝わる。
「・・・?」
辺りを見ると、小麦粉の皮が少量飛び散った後と尾を引くように電柱の陰へと続くカスタードクリームの跡。
・・・なるほど、捨てありすか何かが車に轢かれたのか。
空き缶まりさが電柱へと向かう。
まだそれほど時間が経ってないなら助けられるかもしれない。
空き缶まりさが電柱の陰を見たとき、そこには確かに三体のありす種がいた。
「みゃみゃっ!みゃみゃぁぁぁ・・・!」
「ゆっきゅりよくにゃりゅにょよ!ぺーろぺーろ!」
ソフトボールほどのサイズの子ありすが二体、一体は砂糖水の涙を流しながら、横たわっているありす種らしきゆっくりにすーりすーりを続けている。
もう一体の方は、小麦粉の皮が裂けた部分を必死にぺーろぺーろしていた。
もう少し近づいてみると、横たわっていたゆっくりの全貌が分かった。
「ゆひゅー”・・・!ゆ”ひゅー・・・!お・・・ぢ・・・び・・・ぢゃ・・・」
後ろの部分が轢き潰されてカスタードクリームが漏れ出ていた。
・・・裂けた部分が多すぎる、そして、漏れたクリームの量も多い。
(これはだめだよ・・・)
空き缶まりさは心の中でそう呟いた。
・・・現にありすの方は寒天の目が白目をむきかけて、弱い呼気を繰り返していた。
脇には落ちたまりさ種の帽子が見える。番いの形見か何かだろうか?
その中に入ってある物が目に入る
(・・・"あまあまさん"!?)
空き缶まりさは驚いた。
・・・そこにはドーナツや菓子パン、飴玉やリンゴ等の果物があった。街ありす、それも捨てありすには到底これだけの量は集められない物だ。
ここで確信した。このありすは恐らく盗んだのだ。「おうち宣言」の様に、窓ガラスを石でたたき割って。
そして急いで自身の「おうち」か何かに戻ろうとして、この道を突っ切った時に轢かれた・・・こういうところだろう。
「お・・・ぢび・・・ぢゃ・・・ゆ”っ・・・!までぃ・・・ざ・・・の・・・おぼう・・・じを・・・もっで・・・にげ・・・で・・・」
・・・子ありす達より先に空き缶まりさに気付いた様だ。
霞む視界の中、銅バッジを見たのだろう。
だが、ありすの意図とは裏腹に、子ありす達は涙を流しながら空き缶まりさの方に振り向くと、こう懇願した。
「おにぇがいっ!みゃみゃをっ・・・!みゃみゃをおいしゃさんにみせちぇあげちぇぇぇっ・・・!」
「みゃみゃちょっちぇもきゅるししょうぢゃわっ・・・!あまあましゃんもあげりゅきゃら・・・!だきゃら・・・!」
空き缶まりさはこの子ありす達に憐憫の情の籠ったまなざしを向ける。
多分、子ありす達は違う所で待っていたのだろう。だから「ままのとってきたあまあま」としか思っていない。
・・・バッヂ付きのゆっくりでなければゆっくりに専門の治療は受けられない。
捨てゆっくりである以上それは知っているのだろう。
涙ぐみ、空き缶まりさを見上げ、必死にあまあまを小さな体で前に押してきながら、必死に、必死に頼んでいる。
「・・・ごめんね、まりさにはどうすることもできないよ」
「どうしちぇっ!?ばっぢちゅきにょゆっきゅりにゃらおいしゃしゃんにみちぇもりゃえりゅんでしょ!?」
「あみゃあみゃだっちぇありゅわっ・・・!」
食い下がる子ありす達を宥めるように、ゆっくりと空き缶まりさは言った。
「ちいきゆっくりやかいゆっくりじゃなきゃおいしゃさんにはみてもらえないよ。まりさがいくらいってもだめなんだよ。」
「ぢゃっちゃりゃありしゅをちいきゆっきゅりにしちぇぇぇっ!」
「ありしゅもっ!いっちょうけんめいがんびゃりゅわっ・・・!ありしゅちゃちはおうちゃだっちぇおどれりゅしおぢょりぢゃっちぇじょうじゅぢゃわ!」
目の前でクネクネと小麦粉の体を動かし、必死に「とかいは」なアピールを繰り返す子ありす達。
・・・この子ありす達は知らない。数年前、くいーんありすの群れが駆除された時から、「ありす種」は地域ゆっくりになる事が出来ない事を。
「・・・だめなんだよ。ありすたちはちいきゆっくりにはなれないんだよ。それにこのあまあまさんは、そこのありすがにんげんさんからぬすんできたものだよ。まりさはそれをうけとるきはないよ。」
子ありす達の動きが止まる。
あらゆる可能性を、母ありすが助かる可能性を考えていたのだろう。だが、空き缶まりさの一言が、そのすべての可能性を奪った。
「ありすも・・・もうたすからないよ。このあまあまさんはにんげんさんのものだからまりさはかえさなきゃいけないよ。そのかわり、いままりさがもってるあまあまさんをぜんぶあげるから、それをもってどこかへいってね、まりさには・・・まりさにはそれぐらいしかできないよ」
後ろでありすが口からカスタードクリームの固まりをゴボリと吐き出した。
いよいよ、クリームの量が無くなってきたようだ。
「ゆぐっ!ゆげぇぇぇっ・・・!ひゅー・・・ひゅー・・・」
「「みゃみゃあああああああ!!」」
子ありす二体が瀕死のありすに向かって跳ねる。
ありすが苦しそうな表情をしながらも笑いながら、こう言った。
「ま・・・で・・・ざ・・・ありが・・・どう・・・おぢび・・・ぢゃ・・・とかい・・・は・・・な・・・ゆっくり・・・に・・・なる・・・の・・・よ・・・」
「みゃみゃっ!みゃみゃぁぁぁっ!ありしゅをおいちぇかにゃいぢぇえええええっ!」
「あしりゅいいきょにしゅりゅわっ!おうちゃぢゃっちぇじょうじゅににゃりゅしおぢょりぢゃっちぇ・・・!」
空き缶まりさが帽子の中から、ありったけのあまあまを、ありすの持っていたまりさ種の帽子の中に詰め込む。
ふっとありすが微笑んだ、そして。
「おぢ・・・び・・・ぢゃ・・・ど・・・が・・・い・・・ば・・・」
「「みゃみゃあああああああああ!!」」
空き缶まりさの目の前で、ありすはゆっくりできなくなった。
ありすの盗んだあまあまを帽子に積め込むと、空き缶まりさは、振り向いて跳ね出した。元の持ち主はだれかは分からないが、とにかくゆっくりが盗んだバッヂ等を見つけた時は、人間さんに報告しなければならない。
・・・少なくとも今の空き缶まりさは、自身が出来る精一杯の事はやったつもりだった。
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「・・・むきゅ、あまあまさんはべつのにんげんさんをつうじてもちぬしにかえしたそうだわ」
「ゆっくりわかったよ」
その夜、地域ゆっくり達の「おうち」が集まる土地に空き缶まりさは戻っていた。
・・・いるのは自身の「おうち」ではなく、ぱちゅりーのおうちだ。
ぱちゅりーとの会話に茶々を挟むように、隣にいたまりさが言った。
「ゆっへっへ!あまあまさんはよごれててもうたべられないのぜ!」
「でもしかたないよ。まりさにできることはここまでなんだよ」
空き缶まりさが反論する、まりさの顔から笑みが消えた。
「・・・ほんとうにじぶんのしたことがいいことだとおもってるのかぜ?」
「ゆ?」
「あきかん。すてありすのこありすがこれからこのまちでいきていけるとおもってるのかぜ?」
「それは・・・」
「あきかん。あまあまをやったのはなんでなんだぜ?かわいそうだからかぜ?」
「・・・ゆゆぅ」
「なんにもできないこありすたちが、それだけのあまあまをもっていどうしている。げすゆっくりやれいぱーありすからすればかもにしかみえないんだぜ」
「・・・」
「あまったれたことをするのもいいかげんにするんだぜ。ちかいうちにそのこありすたちはげすゆっくりたちにせいっさいっされてくるしんで、のたうちまわったあげくにしぬんだぜ。あまあまをあげなけりゃこごえてねむるようにゆっくりできなくなれたものを。あきかん。おまえのしたことはだれもとくをしないことだぜ。」
「まりさ・・・」
「そんなんじゃ、もしまりさやれいむやぱちゅりーがいなくなったときにどうするつもりかぜ?いつまでもまりさたちがいるわけじゃないんだぜ」
まりさはそういうと、ぱちゅりーのおうちを飛び出す。
空き缶まりさは、何も言えずに立っている事しかできなかった。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
あれから数日が経った。
それまでぼちぼち晴れていた空も、灰色に覆われ、今にも雪が降りそうなほど冷え込んでいた。
空き缶まりさは、いつもの様に、空き缶を袋に詰めていく。
・・・あの子ありす達、そしてまりさに言われた言葉がいまだに心の奥に刺さっていた。
しかし、もうどうする事も出来ない。
あの時はああすることが最善の方法だと思っていた。
「誰も得をしない」・・・地域ゆっくりと言っても「街ゆっくり」だ。シビアに考えていかなければならないのは空き缶まりさにも何となくはわかっている。
だが、だからと言って割り切れるものでない。
それでも、割り切らなければならないのか、それとも慣れていくのか、空き缶まりさにはそこらへんの答えをまだ見つけてはいなかった。
空き缶を粗方集め終えて、帰路に就いた時、空き缶まりさは何やら地域ゆっくり達が集まっているのを見た。
近くにれいむがいるのをみつけると、飛び跳ねてれいむの方へと向かう。
「れいむ、なにかあったの?」
「ゆゆ、"あきかん"!それが、ちいきゆっくりのおうちにしのびこんでごはんさんをぬすもうとしたありすがいるみたいなんだよ!」
「・・・ゆ!?もうおおきいの!?」
「まだ、おちびちゃんぐらいだよ!」
・・・れいむの言葉を聞いて空き缶まりさは青ざめた。
ゆっくり達を割り行って、輪の真ん中へと身を投じる、そこには、ボロボロの風貌になりながらも以前あったあの子ありす二体が、カタカタと震えながら辺りを見回していた。
「ちいきゆっくりの、ましてやまりさのおうちのごはんさんをぬすもうなんてむぼうなゆっくりなんだぜ」
「ゆ、ゆ、ゆるしちぇぇぇ・・・ありしゅちゃちはおなきゃがすいちぇちゃだけにゃにょ・・・」
「おねーしゃんっ・・・!わりゅいにょはありしゅよ!おねーしゃんにはにゃにもしにゃいぢぇっ!」
・・・相当他のゆっくりに痛めつけられたのだろう。生傷だらけだ。それに砂糖細工の歯も欠けている。
地域ゆっくり達にやられたのか、それとも別のゆっくりにやられたのかは分からない。
まりさが空き缶まりさの姿を見つける。
「あきかん!ちょうどよかったんだぜ。くるのぜ」
ビクリと震える。水飴の冷や汗が流れ出た。
ゆっくりと進み寄ると、子ありす二体が空き缶まりさの小麦粉の皮をすーりすーりし始める。どうやら自分の事を覚えている様だ。
「まりしゃぁぁ・・・ちゃすけちぇぇぇ・・・」
「ありしゅちゃちあみゃあみゃをいなきゃもにょにちょられちゃっちゃの・・・だきゃら・・・しきゃちゃにゃいにょ・・・」
「ゆ・・・」
子ありす達が必死に空き缶まりさに食らいつく。
「しょ、しょうぢゃわ!しかちゃなかっちゃにょよ・・・!まりしゃはわかっちぇきゅりぇりゅわよにぇ・・・」
「ありしゅちゃちをたすけちぇっ・・・!」
・・・空き缶まりさがたじろいでいると、まりさは、帽子の中から小石を取り出して、空き缶まりさに渡す。
「おまえがやるのぜ」
「ゆ・・・!?まりさ、それって・・・!」
「そうだぜ。あきかん。おまえがこのありすたちをらくにしてやるのぜ。できなきゃちいきゆっくりからついっほうっするんだぜ。」
全身がガタガタと震える。目の前が真っ暗になった。息が苦しい。
今まで、そんな事をした事は無かった。する必要は無かったし、させてもくれなかった。
だが、目の前でまりさは、小石を置いた。
「このありすたちがこんなことをしたのも、すべてのげんいんはおまえにあるのぜ。このままでもゆっくりできなくなるのはきまってるんだぜ。だったら、せめておまえがらくにしてやるんだぜ」
「ま、まって、まってね」
「はやくするんだぜ!」
空き缶まりさは頭が真っ白になりながらも小石を取った。
「ゆんやぁぁぁ!まりしゃっ!まっちぇっ!ありしゅちゃちのおはにゃしをきいちぇぇぇ!」
「たすけちぇっ!たすけちぇぇぇっ!」
・・・底部をもそもそと動かしながら、遅々としたスピードで殆ど移動していない。
底部が潰れているのだ・・・多分、まりさがやったのだろう。
「ご、ご、ごめ、ごめんね・・・ごめんねっ・・・ごめんねぇぇぇぇっ!」
目をつぶって、小石を振り下ろす。柔らかいものをクッションに、地面に当たった様な感触を感じた。
「ゆ”ぎゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”っ”!い”ぢゃ”い”わ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”っ”!!」
「おねぇしゃあああああん!?」
「ゆわぁぁーーーーっ!?」
空き缶まりさは恐怖で声を上げた。外したのだ。
目を開けると、底部付近の小麦粉の皮が裂けて、カスタードクリームが飛び散っている。
そして、苦しそうにぐーねぐーねと小麦粉の体を動かし、絶叫する子ありす。
「い”ぢゃ”い”ぃ”ぃ”ぃ”っ!い”ぢゃ”い”ぃ”ぃ”ぃ”わ”ぁ”ぁ”ぁ”っ”!!」
「ゆひぃぃぃ・・・!ゆはっ・・・!ゆは・・・!ゆひ!ゆひいいいいいい!まりしゃ!ちょかいはっ!ちょかいはぁぁぁっ!!」
・・・もう一体の子ありすがうんうんとしーしーをもらしながら、空き缶まりさの名を呼んでカタカタと震えている。
空き缶まりさは、震える舌で、半乱狂になりながら、小石を振り下ろした。
「あぎっ!や”べぢぇ”ぇ”ぇ”ぇ”っ”!や”べぢぇ”ぇ”ぇ”ぇ”よ”ぉ”ぉ”ぉ”っ”!!み”ゃ”み”ゃ”っ”!み”ゃ”み”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”っ”!!」
今度も外してしまった。何度も振り下ろすたびに、小麦粉の皮が裂け、カスタードクリームが飛び散っていく。
それでもなお、子ありすは苦しみ、泣き叫び、絶叫しながらも、ぐーねぐーねとその場から逃げようとする。
「ゆ”わ”ぁ”ぁ”っ!!ごべんねっ!ごべんねっ!ごべんねっ!ごべんねええええええええええ!!」
震える舌で出来るだけ正確に小石を振り下ろすが、出来ない。
やがてズタズタになった子ありすの動きが徐々に鈍くなっていく。
「い”・・・ぢゃ・・・ぃ”・・・わ”・・・ぁ”ぁ”・・・!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ゆ”っ・・・!ぎびっ!」
最後の一撃がカチューシャ越しに決まると、ぼてりと前のめりに倒れて、ピクピクと小麦粉の体を動かしながら、徐々に動かなくなっていった。
「つぎはそこのありすなんだぜ」
まりさの声が突き刺さる。
呆然としながら、まりさの方へと空き缶は顔を向けた。
「・・・ふるえてちゃさっきのにのまいなんだぜ、ふみつぶしてやったほうがまだいいとおもうんだぜ」
「ゆ・・・」
空き缶まりさがもう一体の子ありすの方へと振り向いた。
子ありすはその瞬間、さらにしーしーとうんうんを漏らしながら、穴と言う穴から砂糖水の液体を垂れ流し、口を大きく開けて叫び始める。
まりさが、子ありすを空き缶まりさの目の前に突き出した。
「ゆ”あ”あ”あ”あ”っ”!!あ”あ”あ”あ”----------------っ”!!!」
子ありすは、子ゆっくりとも思えぬ声を上げて、ぐーねぐーねと小麦粉の皮を激しく歪ませていく。
空き缶まりさは、目をつぶって震えた。そして、底部に力を込めていく。
「や”べぢぇ”え”え”え”え”え”え”え”っ”!!あ”り”ぢゅ”じにぢゃぐに”ゃ”い”わ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ” あ”ぁ”ぁ”あ”あ”ぁ”ぁ”あ”あ”ぁ”ぁ”あ”あ”!!!!!!!だぢゅげぢぇ”よ”お”お”お”お”お”お”お”-----------っ”!!」
空き缶まりさが飛び上がる。
「み”ゃ”み”ゃ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”びょっ!!!」
グチリと音がして、子ありすは、弾け飛んだ。
・・・空き缶まりさが我に帰る。
飛び散った小麦粉の皮やカスタードクリームを見たとき、空き缶まりさは、口から餡子を吐いた。
「ゆ"・・・ゆ"・・・ゆげぇぇぇえええーーーーっ!げぇぇぇえええええっ!!」
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雪が降っている。
街の明かりに火がともり出した頃、空き缶まりさは空を見上げた。
・・・地域ゆっくりになれば、必ずしなければならない事。
「羽付きの推薦」で入ってきた自分には関係のない事と思っていた。
だが、まりさは空き缶まりさにそれをするように言った。
何故そうしたのかは今となってはわからない。
空き缶は考えていた。まりさは、何を伝えたかったのだろうか?
・・・既にまりさは地域ゆっくりから姿を消していた。
厳密にいえば、人間さんに乞われて、金バッジ待遇でゆっくりブリーダーの補助をする為に、抜擢されたそうだ。
空き缶まりさを叱りつけた段階で、既に決まっていたことらしい。
街かどで、何やら声が聞こえたのでそちらを見る。
見れば、バスケットボール程のれいむが、左後部がグシャシャに潰れて、餡子の圧力で、寒天の目玉の片方が飛び出たソフトボール程の子れいむのぴこぴこを咥えて引っ張りながら、必死に叫んでいた。
「おでがいでずっ!でいぶのおぢびぢゃんをだずげでぐだざい”い”い”い”い”っ”」
「ゅ”・・・!おぎゃ・・・じゃ・・・い・・・ぢゃ・・・い・・・ぃ・・・よ・・・どぼ・・・じ・・・で・・・」
ぴこぴこを上下に振り、砂糖水の涙を流して、砂糖水の涎を周りに飛び散らしながら、れいむは叫んでいた。
道行く人々は当然無視をする。当然だ。
やがてれいむは、空き缶まりさを見つけたのか、必死にずーりずーりとこっちの方に気ながら、空き缶まりさに捲し立てる。
「までぃざぁぁああ!おぢびぢゃんをおいじゃざんにみぜであげでねっ!ごのままじゃゆっぐりでぎなぐなるよおおおおおお!」
「・・・」
「でいぶはただおうだをうだっでだだげなのにいいいいいいいい!ゆっぐりでぎないぐるまざんがっ!ぐるまざんがああああああ!」
・・・嘘だろう。見ればわかる。
車に轢かれた様な後じゃない。
この子れいむの傷は、どう見ても成体のゆっくりに踏まれた後だ。
空き缶まりさは振り向くとそのままれいむ親子から離れ出す。
暫く未練がましく叫んでいたれいむであったが、すぐに他の人混みに向かって叫び始めていた。
「おでがいじばずっ!おぢびぢゃんがっ!でいぶの・・・!ゆゆ!?ゆぎゃぁああ!いだいいいいいいいいいい!!」
・・・れいむの悲鳴が上がった。
うるさいので蹴飛ばされたのだろう。
恐らく、もう会う事も無い。
まりさは何を伝えたかったのか、空き缶まりさには何となくわかった。
小さい頃から兄貴分として一緒にいたのだ。それが、何故あんなことを言ったのか。
優しさと甘さは違うのか、空き缶まりさはそれを考えながら今日も街を行く。
それ以来、空き缶まりさがまりさと会う事は二度となかった。
最終更新:2010年12月31日 18:58