ゴミ処理場のゆっくり達 27KB
観察 群れ 都会 現代 『町れいむ』シリーズ秋編2-2
※「町れいむ一家の四季」シリーズ秋編2-2
※テンタクルあき様が一年ほど前『ふたば系ゆっくりいじめ 372 新世代清掃工場』
を書かれた頃に、私も書くとお約束していたモノです
テンタクルさん・・・今いらっしゃるかわかりませんが、遅くなってすいませんでした・・・
『ゴミ処理場のゆっくり達』
D.O
「ゆぴ~、ゆぴ~。っゆ!」
れいむが目を覚ますと、そこは見たこともない変わった空間だった。
四方、上、どこをみてもあるのは巨大な石の壁。
広さでいえば、れいむが数時間かけてようやく壁から壁まで移動できる程度なので、かなり広い場所だ。
上を見ても、れいむが数百匹縦に並んだとしても、なお天井まではたどり着けない高さである。
周囲にはところどころにゴミの山。
そのゴミは生ゴミに限らず、金属やガラス、大きなものから小さなものまで、なんでもゴチャ混ぜで、
コンクリートの地面とゴミの山が大体空間全体を半分こしている状態だった。
れいむは、人間さんのおうちにでも迷い込んでしまったのだろうか、と考えたが、
体中が痛いわ、餡子をかきまわされたような吐き気はするわで、サッパリ頭が冴えない。
「ゆぅぅぅ。れいむ、なんでこんなところにいるの?」
体の所々がズキズキ痛むのを我慢して、それでも自分が眠ってしまう前のことを思い出す。
・・・確か今日は朝ごはんさんを探しに・・・おちびちゃん達と一緒に・・・
ご飯さんがある所にたどり着いた・・おちびちゃんには待っててもらって、ゆっくりしたごはんさん・・・
「ゆゆっ!?にんげんさん!?れいむはごはんさんじゃないよ!!すぃーにのせないでね!!」
・・・れいむは丸一日気を失っていたので、時間としては昨日のことであった。
このれいむは食料を確保するために自分の子供達を連れて、飲食店街のゴミ捨て場まで向かった。
しかし、ようやくたどり着いたゴミ捨て場で、ゴミ漁りに熱中していたところで、
れいむは生ゴミもろともゴミ収集車に放り込まれてしまったのだった。
普通生き残れるはずもないのだが、ゴミの量や内容が、上手くれいむを生かすだけの空間を作ってくれたのである。
今れいむがいるここは、この虹浦市全域のゴミが集まる、総合ゴミ処理施設だった。
無論れいむは、そのゴミ収集車の行きつく場所を知っていた訳ではないので、ここがなんなのかは知らない。
「ゆ、おちびちゃん、おちびちゃんがいないよ!」
ただ、確実な事は、れいむが子供とはぐれてしまったことである。
おちびちゃんは今頃ゴミ捨て場の前で、連れていかれてしまった母れいむを想いながら、
心細い思いをしているのだろうか。
「・・・いむ。れいむ?」
その時、れいむにはるか頭上から声が掛けられた。
「れいむ、いきててよかったよ。めをさまさないから、しんぱいしちゃったよー。」
「ゆぅぅ、ゆゆっ!どす、どすなの!?」
れいむが声のする方向を見上げると、そこには大きな黒い帽子をかぶった、金髪のゆっくりの顔があった。
それは、町の野良ゆっくり達の間では、伝説でしか聞いた事のない存在、ドスまりさ。
その体高はおよそ4m。街中で出会うことはまずない、本物の大物である。
「どすはどすだよ。れいむ、ゆっくりしていってね!」
「ゆ、ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆわーい!!」
「ゆふふ、れいむもゆっくりしてるね。けがもなくて、よかったよ。」
「ゆわーい!ゆわ・・・ゆ・・・ゆぅ。」
ドスの巨体とゆっくりした表情には、ゆっくりをゆっくりさせる特別な力があるようであった。
伝説でしか聞いた事のない、あらゆるゆっくりをゆっくりさせる力を持つと言われるドスまりさに出会い、
れいむは喜びを爆発させてはしゃぎまわった。
しかし、れいむの表情はすぐに曇ってしまう。
「でも・・・ここはどこなの?れいむ、おちびちゃんのところにかえらないと・・・。」
「ゆぅ?そうだね。れいむはおそとからきたんだよね・・・れいむ。ざんねんなことをいわないといけないよ。」
「どす?」
ドスは申し訳なさそうにしながら、静かにれいむに語りかけた。
「れいむ。ここはどすたちのゆっくりぷれいすだよ。・・・それでね。ここからでるほうほうは、ないんだよ。」
「・・・ゆ?なにいってるの?どす?」
「れいむは、これからはずっと、ここでくらしていかないといけないよ。
おそとのおちびちゃんとは・・・あえないんだよ。」
「どす・・・?どうぢで?」
ドスの言葉、それはれいむの、愛するおちびちゃんのと永遠の別離を意味していた。
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れいむは当然悲しみ、怒り、落ち着きを失ったが、
ドス自身がこの大きな空間から外に出た経験がない事、また、
周囲のどこにもゆっくりが出入りできる場所がないことなどを教えられ続け、
10分後には野良ゆっくりの長所である諦めの良さを発揮し、今後の事を考えはじめていた。
きっと、れいむのゆっくりしたおちびちゃんなら大丈夫。
強く生きてくれる。
そう信じて。
「じゃあ、どすのむれのみんなをしょうかいするね!」
そう言ってドスは、れいむを頭の上に乗せてくれた。
「おそらとんでるみたーい!ゆゆ!!あっちにもどすがいるよ!?
ゆ、ゆわぁ!こっちにもどすがいるよ!すごいよ!!」
その頭上からの光景は、れいむの想像を超えるものだった。
ゴミの山は、れいむの視界が届かなかった先までいくつもいくつも連なり、
その山一つごとにドスまりさが一匹張りつき、ゴソゴソとなにか作業をしている。
低いゴミ山には、天井の穴から新たなゴミが降り注いでその高さを他のゴミ山に揃えていた。
そしてれいむがいたゴミ山のすそには、十数匹の、これは普通の大きさのゆっくり達が群がって、
ドスまりさとれいむの方を見上げていた。
それが、れいむが新しく加わる事になる、ドスまりさの群れであった。
「むきゅ。れいむ、あたらしいなかまなのね。
ぱちゅりーはぱちゅりーよ。このむれではいちばんはやくからいるわ。」
「わかるよー。ちぇんたちもれいむとおんなじだよー。おそとからきたんだねー。」
「おそとのみんなとはもうあえないけど、ここでいっしょにゆっくりしようなのぜ。」
れいむが群れのみんなのところまでたどり着き、その姿を見た時、
れいむは自分がまだまだ幸運なゆっくりであることを悟らざるを得なかった。
ぱちゅりーは顔面の右側が、右目のあったであろう部分まで、お飾りごとごっそりとえぐられていた。
ちぇんは唇が前歯ごと引きちぎられて、舌がちろちろと見えていた。。
まりさは後頭部が3割方無くなっており、お帽子も前のつばの部分だけの破片を、頭皮に直接縫いつけていた。
おそらくここで生まれたのであろう数匹の子ゆっくり達は健康そうだったが、
外からやってくる際には、ゴミ収集車の中でゴミと一緒に裂かれ、潰され、
命が助かったとしても五体満足とはいかないのが普通なのだ。
いや、そもそも命が助かったのですらかなりの幸運と言うべきだろう。
傷一つなく入ってこれたれいむは、稀に見る幸運を持っていたのである。
「むきゅ。そんな、かなしそうなかおをしないでね。ぱちぇたちは、これでもとってもゆっくりしてるのよ。」
だが、ぱちゅりー達はその悲惨な姿からは想像もつかないほど、
ホントにゆっくりした笑顔でれいむを迎えてくれた。
まるで、この傷と差し引きしてもなお、ここでのドスとの生活は、
ゆっくりできる物であったと言わんばかりに。
「ここでのせいかつは、あとでせつめいしてあげるのぜ。きょうはどすのおうちで、ゆっくりしていくのぜ。」
そして、れいむは『ドスのおうち』と呼ばれる、この広大なゴミ集積室の壁にずらりとドスの数だけ作られた、
人間さんでも数人は暮らせそうなサイズの横穴に案内され、ゆっくりと休ませてもらったのであった。
その後ここでれいむが体験する事になった日々は、れいむのこれまでの野良生活からは想像もつかない、
しかし、本当に信頼できる仲間たちと過ごす、ゆっくりとした日々であった。
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虹浦ゆっくり式清掃工場は、世界で初めてゴミ資源分別を完全自動化したことで知られる、
最新鋭の総合廃棄物処理施設である。
現在虹浦市全域で、ゴミの分別が粗大ゴミを除き一切必要なくなったのは、この施設が完成したためだ。
まあ、さすがに粗大ごみはトラックで別に収集する必要があるのだが、
それとて厳密に分ける必要があるわけでもなかったりする。
最終的にゴミの行きつく先は、全て同じ場所だからだ。
そして全てのゴミが行きつく先、その中枢こそが、
れいむがドスと出会った巨大な空間、『ゆっくり式ゴミ分別場』であった。
町のゴミ処理施設の部品としての、れいむの新しい生活が今日から始まったのである。
「むきゅ、じゃあどす。きょうもかりにいきましょう!」
「どすにゆっくりまかせてね。」
「れいむは、はじめてだから、あんぜんなところでみててね。つぎからはいっしょにかりをしましょう。」
「ゆうかりん、ゆっくりよろしくね。」
「ゆぅ?うふふ、れいむはいちばんけんこうだから、みんなのほうがおせわになるかもね。」
れいむは群れの一員のゆうかりんに促され、先頭をドス、その後ろをぞろぞろと、
群れのみんなが付いていく行列の最後列に並んで、昨日と同じゴミ山へと歩いていった。
れいむの教育係になったこのゆうかりんもまた、外からやってきたゆっくりである。
右半分の頭髪が頭皮ごと引きはがされた傷跡が生々しく、
左半分の、元野良とも思えない美しい緑髪との対比がいっそう痛々しさを感じさせた。
それを自分でも気にしているのか、ゆうかりんはいつもれいむの右側に並んで歩いていた。
そうして傷ついたゆっくり達の足に合わせた行進で、
ドス一行は10分ほどで目的のゴミ山へと到着した。
ゴミは昨日からさらに投下され続けているのだろう。
ゴミ山は昨日見たよりも一回り大きくなっていた。
「ゆぅ~。このやまのなかから、ごはんさんをさがすんだね?」
「ええ、そうよ。れいむはかんがいいわね。」
「でも・・・ちょっとたいへんそうだよ。」
ゴミ山は、虹浦市全域がゴミの分別を廃止していることから、
不燃物や金属、瓶、缶、粗大ゴミまでまとめて集められている。
外のゴミ集積所程度の大きさならば、ゴミ漁りもしやすいというものだが、
見上げても頂上が見えないほどのゴミ山となると、ご飯を探すのには大きな危険が付きまとうだろう。
まして、健康体とはとても言えない群れのみんなでは、近づくのも危なそうであった。
だが、群れのみんなにはそんな怯えやら不安の表情はまったくなかった。
「どすがむーしゃむーしゃするよ!みんなはあぶないから、はなれててね!!」
「さあ、れいむ!はなれてましょう!」
「ゆ、ゆっくりりかいしたよ!!」
ドスはそう言って群れのみんながゴミ山から離れたのを確認すると、
その大きなお口を限界まで開けた。
れいむはその時、初めてドスのお口の中をハッキリと見たのであった。
「ゆわぁ・・・す、すごいよぉ。」
ドスの口の中には、黒光りする銀色の牙が、びっしりと生えていた。
その一本一本はれいむの体ほどもある大きさで、形は人間の犬歯を想像してもらえばわかりやすいだろう。
その巨大で禍々しい牙が、口内の上から下まで、舌の上までもびっしりと並んでいたのである。
ボリッ・・・メキメキメキ、ベギンッ!!ボリッ、ボリッ!!
ドスは、食べていた。ゴミの山を。
ゴミの大小、金属か、生ゴミか、一切の区別なく、一気に口に頬張り、
凄まじいアゴの力でボリボリとすり潰していく。
ゴミの山は、ドスがかぶりつくたびにその大きさを減らしていった。
しかも、まるで美味しいごちそうを食べているかのように、とてもゆっくりした表情で。
「ゆぅん、『ボリッボリッ!』おなかいっぱいだよ~。みんなはもうちょっとまっててね。」
ドスの『食事』はほんの数分で終わり、その体は2倍近くまで膨らんでいた。
ぺろりと口の周りを舌でぬぐうと、
ドスはその巨体をずりずりと重そうに引きずりながら、壁際へと這い進んでいく。
そこには他にも『食事』を終えたドス数匹が並んでいた。
そして、
「ゆふぅーん、ゆふぅーん!」
「すーりすーり、むほぉー!」
「「すっきりー!!」」
適当に、本当に適当に2匹一組となると、いきなりすっきりーし始めたのであった。
「ど、どす、なにやってるのぉおおおお!?」
「うふふ。れいむ、みていればわかるわ。」
にゅっ、にゅるにゅるにゅる・・・
そして次の瞬間には、ドスのシルエットに明らかな変化が生じ始めた。
「ゆ、ゆぅぅうう!?どすにおちびちゃんができちゃったよ!!」
ドス達はお互いにすっきりーして、全員額から茎をのばし始めたのである。
ゆっくりにも性の営みに対する恥じらいというものがあるので、
れいむドスの方を直視できず、すっかり顔を真っ赤にしていたのだが、
おちびちゃんはゆっくりできるものだ。
ドスのおちびちゃんとなると、たっくさん生まれるのか、れいむくらい大きいおちびちゃんなのか、
れいむは気になったので、じっくりドスの額に伸びた茎を観察していた。
・・・ところが、
「ゆわぁ・・・ゆ?でも、なんかへんだよ?」
「れいむ。あれは、どすのおちびちゃんじゃないわ。」
「ゆ、ゆぅぅう?どういうことなの?」
ゆうかりんに言われるまでもなく、れいむはドスの頭上の茎にぶら下がるモノに、異常を感じていた。
ドスの茎にぶら下がる、一つ一つがれいむほどの大きさにもなるおちびちゃん達、
いや、『おちびちゃんまりさの形をした何か』は、ゆっくりの体から生じたモノとはとても見えない物であった。
その『おちびちゃんの形をした何か』は、表面は金色だったり銀色だったり銅色だったり、
金属のような光沢を持っているモノもあれば、全体が透明なモノや石に近い質感のモノまで様々であった。
形こそゆっくりまりさそっくりなソレは、明らかに命を宿してはいない、金属やガラスの固まりだったのである。
そして良く見れば、それらの金属の塊がぶら下がっている茎もまた、
本来の植物のような茎とは似ても似つかぬものである。
その全体は鉛色に輝いており、いくつもの重い金属の固まりをぶら下げていながら、
ギシギシと揺れるだけで折れそうな気配もない。
「どす・・・びょうきなの?」
「ゆ?ああ、ちがうわ。どすはうまれつき、ああなんだって。」
「ゆぅ~。わからないよぉ。」
すっきりーから10分ほども経った頃には、ドスの頭上には、
通常の赤ゆっくりなら生まれおちてもおかしくないほど育った金属等の固まりが出来上がっていた。
そして、
「ゆ!ゆっくりうまれるよ!!」
ドスがそう叫ぶと同時に、ドスの頭上から大小数百の
『おちびちゃんまりさの形をした何か』が生まれ落ちたのだった。
がらんっ!・・・がしゃんっ、がしゃーん。
ドス達がすっきりーしていた壁際には、ダストシュートのような穴が壁沿いにずらりと並んでいた。
ドスの頭上から生まれ落ちた金属等の固まりは、ドスが転がり落とすたびに、その中へと吸い込まれていった。
そうして頭上にぶら下がっていたモノを全て穴に投下し終わった頃には、
ドスの体は元通りに近いサイズになっていた。
だが、まだドスの行動は終わらない。
「うんうんするよ!すっきりー!!」
次は体を仰向けに寝転ばせ、あにゃるを上に向けてうんうんをし始めた。
その時、ゆうかりんがれいむに声をかける。
「さあ、れいむ、ごはんをあつめるよ!」
「ゆ、ゆゆ?ゆうかりん!?」
わけのわからないれいむを促しながら、ゆうかりんはドスのひり出したうんうんめがけて走っていった。
ドスのうんうんは、近くで見てみると、驚くべき事に餡子などではなく、噛み砕かれた生ゴミそのものであった。
「ゆわぁ。どすのうんうん・・・ごはんさんがいっぱいだよ・・・」
「ええ、そうよ。どすはね、こうやって、あのごみのなかから、ゆうかたちのたべられるものをわけてくれるの!」
ゆうかりんは、ドスのうんうん、と言うよりゴミ山から寄り分けられた生ゴミから、
特に味の良さそうなもの、日持ちのしそうなモノをより分けてビニルの買い物袋に押し込んでいっている。
周りを見れば、ぱちゅりーも、ちぇんも、まりさも、みんな一生懸命ドスのうんうんを掘って、
生ゴミを回収していた。
これが、この群れの『狩り』なのであった。
「どすって、すごいんだね・・・」
「うん。どすって、ゆっくりしてるわよね。」
れいむとゆうかりんは、ドスがゴミを分別していく姿を、感心しながら眺め続けたのだった。
もちろん、普通のドスまりさにそんな能力などないのは周知のことである。
この処理施設で運用されているドス達は、品種改良の末にこのような能力を、人間によって与えられたのであった。
ゴミ分別用ドスまりさ達は、金属非金属を問わずあらゆるゴミを食べ、
その中から生ゴミのような一般有機物をうんうんとして、未消化で排泄する。
無機物やビニル系のゴミ等は、すっきりーによる妊娠機能を人間に改造されて、
赤ゆっくりの代わりに金・銀・銅や鉛、ガラス等、食べた無機物等を、種類ごとに分別できるようにされていた。
ドスによってきれいに分別された金属等は、そのまま再利用可能なほどであるらしい。
元々は、ゆっくりが妊娠した際に、自分の餡子を茎を通して赤ゆっくりに送り込むという機能があるのを利用して、
餡子の代わりに食べた無機物を送らせることはできないか、と言う試みから始まった品種改良だったのだが、
無機物と有機物の分別どころではない高性能な分別機能を得るに至ったのはまったくの偶然とのこと。
なお、この改造の結果ここのドスまりさは、すっきりーによる繁殖能力は完全に失われており、
繁殖自体は人工培養によって行われている。
ドス達自身も知らない事だが、栄養も実は通常の方法では摂取できないため、
専用の餡ペーストを睡眠中に注入することで生命維持させられているのだ。
ドス達自身が行っている、ゴミを食べる方の『食事』は、100%人間のためのものなのである。
群れの作業は30分ほど続き、群れのゆっくり達が持って来ていたビニール袋には、
れいむが外にいた頃はそうそう手に入れられなかったような、素晴らしい生ゴミがギッシリ詰められていた。
その中にはまだ臭いも発していない廃棄弁当や、ほとんど食べられた形跡もない果物、お菓子などもある。
「さあ、みんな!ごはんはじゅうぶんあつまった?」
「むきゅ!いっぱいとれたわ!どす、ありがとう!!」
「じゃあ、あとはしょぶんするね!」
どさどさどさー・・・
当然、10匹そこそこの群れゆっくり全員の数日分の食料程度で、
市内全域から集まってくる生ゴミを処理し尽くせるはずもない。
残りの生ゴミ達は、ドスの『おちびちゃんまりさの形をした何か』が投下されたダストシュートとはまた別の、
生ゴミ専用の大きなダストシュートに、ドスが廃棄していった。
れいむは、収穫の余りの充実ぶりに目を輝かせながらも、
ここからすら捨てられていく生ごみを見て、これを外のおちびちゃん達に食べさせてあげたかった、と、
少しだけ残念そうな表情を浮かべたのであった。
れいむ達はこの後『ドスのおうち』に戻ってごはんをお腹いっぱいむーしゃむーしゃして終わりなのだが、
実はドスのゴミ分別に関しては、もう一つ行程があったりする。
それはしーしーだ。
液体金属や各種オイルが混ざったものを排泄するための機能に改造されている。
この廃液しーしーは、ドスしーしー専用のお便所から、
配管を通って別の処理工程へと、流されていき、安全な水とそれ以外に分けられた後排出されるのである。
よってこの『ゴミ分別場』は、金属等各種資源・生ゴミ・汚水の分別機能を担っているのだ。
ここが、そしてここにいるドス達こそが、施設全体の中枢と呼ばれるのは、
こんな機能を担当しているからなのである。
さて、ここまではれいむとドスの群れのいる、ゴミ分別場についてのみ見ていたが、
少し視点を変えて、他の処理工程についてもいくつか見ていく事にしよう。
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「ゆげぇぇ・・・もうたべられ」
ドサドサドサドサッ
「ゆびぃぃいいい!!どうぢでゆっくりさせてくれないのぉおお!?」
生ゴミが絶えず投下されつづけるここは、『生ゴミ処理場』。
ドスとれいむ達のいた『ゴミ分別場』でドスに選り分けられ、群れのゆっくり達の狩りも終わった後、
ダストシュートから廃棄された生ゴミ達の行きつく場所である。
ここには『ゴミ分別場』と異なり、ドス級のゆっくりは一匹も配置されていない。
いるのは普通のサイズの、普通のゆっくり達だ。
ここまでたどり着くのは100%生ゴミなので、外からゆっくりが入る事は無い。
この施設が運用され始めた時期に、食用・飼育用双方に不適格とされ、
加工所からほとんどタダ同然で放り込まれたのが初代の生ゴミ処理ゆっくり達だった。
現在ここで生ゴミを処理しているのは、そのゲス達の子孫なのである。
「むっぢゃむっぢゃ、ぐざいぃぃ。」
「もーぐもーぐ、ぶぇへぇ、ふしあわせぇぇ。」
今や数千匹とも数万匹とも言われる生ゴミ処理ゆっくり達の表情は、
腹いっぱいご飯が食べられると言うのに野良ゆっくりより悲痛なものである。
ここに届く生ゴミは、ゆっくり達が溶けて死んでしまわないように途中で腐敗液を搾りとってはあるものの、
まさしく生ゴミと言うレベルの腐臭漂うモノばかりなのだから、当然であろう。
ちなみに、食事の拒否は許されない。
他に食べられるモノを与えてくれる存在などどこにもいないのだから、どうにもなりはしないのである。
「むっぢゃ、むっぢゃ・・・ぎびぇぅっ!?これどくはいっぢぇるぅ!!ゆべぇ・・・。」
「おぢびぢゃ、ゆっぐぢ、ゆっぐぢぢでぇぇええ!!」
それに、香辛料などが混ざっているゴミを食べると、当然餡子を吐いて絶命する。
腐敗し混ざりきったそれらを、ゆっくり達は選り分ける事など出来ない。
毒に対する知識を蓄える前に、絶命してしまうからだ。
ぶるるるるるるる・・・
「ゆぎぃ、ゆひぃ、ずっぎりぢだぐないぃぃ・・すっぎりぃぃ。」
「ゆばぁぁ、おぢびぢゃんでぎぢゃっだぁぁ、こんなにゆっぐぢでぎないのにぃぃ。」
「おぢびぢゃん、さっさとうばれで、いっしょにむーしゃむーしゃしてねぇぇ。」
そして、ゆっくり達の生ゴミ処理が遅れると、施設内の床に微弱の振動が与えられる。
振動でゆっくり達が発情し、すっきりーして子供を作るように促すためだ。
子供ができれば腹が減る。腹が減れば食事を取るしかない。
味や臭いに文句を言っている場合ではないのだ。
それに、子供が生まれれば個体数が増える分生ゴミの処理も早くなる。
大抵は生まれて早々にカラシなど毒を舐め、命を落としてしまうのだが。
「うんうんずるよ・・・ずっぎり」
「ずっぎり・・・もうやだぁ・・・」
「しゅっきち・・・みゃみゃ、れいみゅ、どうちてゆっくちできにゃいの・・・」
こうして、生ゴミを食ったゆっくり達は、室内の隅に大量に作られている『といれ』、
直径10cmほどの小さな穴に、うんうんを吐き出していくのだ。
最終的にうんうんは、各種薬剤と混ぜられ熟成され、農作物用の安価な肥料として販売される。
農家にとってゆっくりは敵であり・・・そして今ではなくてはならない肥料の供給元なのであった。
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「ひゅいー・・・ひゅいー・・・」
『にとりが鳴いてる・・・水質が低下してるな。フィルターを30単位交換しろ』
『了解。』
ここは施設内最下層、『廃水処理場』。
『ゴミ分別場』でドスが排泄した廃水しーしー、『生ゴミ処理場』に向かう生ゴミから絞り出された腐敗液、
それ以外にも施設内で発生した汚水・廃液をまとめてろ過・除菌し無害な排水として処理する場所である。
ちなみに、先ほどにとりが鳴いていたのは、処理済み排水槽。
フィルターで処理が完了した排水が一時貯水される場所で、
外部に排水する前に水質のチェックが行われている。
センサー役となるのはこれまた品種改良済みの『センサーにとり』。
野生ではきれいな水でしか生活できないにとり種の敏感な体質を利用し、
水質汚染度への感覚を強化してある。
処理済み排水の汚染度が一定以上に高くなれば、鳴いて水質悪化を知らせ、
さらに悪化すれば、にとりの死体が浮かびあがり、水面を埋め尽くすことになる。
さすがにそこまでの状況になった事は無いが。
そして、フィルターに使われているのが、
『よーし、カートリッジ30単位、交換完了。』
「「「「わきゃるよー・・・わきゃるよー・・・」」」」
『作動状況よーし。』
というわけで、汚水処理用に生み出された、フィルターちぇん達である。
「わきゃるよー・・・ちろ、ちろっ、・・・わきゃるよー・・・」
フィルターちぇん達が設置されているのは、何百本もの廃水用水路と、処理済み水路が流れ続けている室内。
廃水路と処理済み水路は交互に並ぶように掘られており、
その2本の水路の間の狭い隙間に、フィルターちぇん達は備え付けられているのだ。
水路沿いに、赤ゆっくりサイズのちぇん達が、隙間なくびっしりと固定されている。
その口は廃水路に舌が届く位置に、そのお尻はしーしーが処理済み水路に直に入るように、
うつぶせの姿で固定されているのだった。
固定方法も、なるべく作業が楽なように、『100匹』を『1単位』であらかじめ腹を板に接着されており、
ちぇん達が固定された板は通称『フィルターカートリッジ』と呼ばれている。
古くなったフィルターは板ごと取り除かれ、新しいフィルターに交換されるのであった。
「わきゃるよー・・・ちろちろっ・・・わきゃるよー・・・」
もはや生ゴミですらない、文字通りの廃水を、
ちぇん達は文句ひとつ言わず、黙々と舌を延ばして飲み続ける。
「わきゃるよー・・・しーしーしゅるよー・・・わきゃるよー・・・」
そして、腹がパンパンになるまで廃水を飲んだちぇん達は、しーしー穴を閉める事も忘れたかのように、
ダラダラとだらしなくしーしーを排泄する。
このしーしーは、通常のゆっくりのような糖分等の不純物を含んだものではなく、
品種改良によって真水に近い成分のしーしーをする。
体内に一度取り込んだ不純物は、ちぇん達にとっても有害であるにも関わらず、
一切体外に排出することがないように作られていたのだった。
「わ・・・きゃ・・・」
そして、廃水を飲めば飲むほど、ちぇん達の体内は汚染され、
数日もすれば体の表皮まで薄暗い色に変色していく。
そうなるとフィルター機能も低下するので交換される。
フィルターちぇん達の寿命は、短い。
「わきゃるよー・・・わきゃるよー・・・わきゃるよー・・・」
しかし、ちぇん達は今日も、不満一つ吐かず、ちろちろと廃水を舐め続ける。
それは、絶望とか、諦めとかいうものでは無い。
このちぇん達は、目の前の廃水を舐め、体自体をフィルターにしてろ過した水を、しーしーとして排泄する、
それ以外の知能も、機能も、全てを奪われてしまっているのだ。
もちろんこれも、品種改良によって。
それはある意味では、外の野良達よりも幸福なことなのかもしれない。
『ほんじゃ、今日はA-37区画のフィルター、総交換な。』
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「おきゃーしゃ~ん。しゅーりしゅーり、ちあわちぇ~。」
「うふふ、おちびちゃんったら、あまえんぼうだね。」
「ゆぁ~ん。だっちぇ、おかーしゃんのほっぺしゃん、とってもゆっくちできりゅんだよ~。」
「うふふ。おとーさんともすーりすーりしようね。すーりすーり。」
「ゆぁ~ん、ゆっくち~。」
れいむがドスの群れに迎えられてから、数カ月が経った。
今ではれいむも群れの一員として完全に溶け込み、そして、家庭を持っていた。
つがいの相手は、れいむがやって来たばかりの頃に、色々世話を焼いてくれたゆうかりん。
そして、れいむは間もなく妊娠し、一匹の可愛らしい赤ゆうかりんを産みおとした。
赤ゆうかりんが生まれた日、群れは新しい命を迎えた喜びで、お祭り騒ぎになったものだ。
それもそうだろう。
この満身創痍のゆっくりの群れで、現在生殖機能を持っているのは、れいむとゆうかりん、
あとは先輩のまりさと、最近やってきたみょんくらい。
本来多産であるはずのゆっくり達にとって、これほども新しい生命に出会えない環境もないのだから。
「おちびちゃん、どすにもおかおをみせてね!」
「ゆうか、ゆっくちしちぇるでしょ!?」
「ゆゆ~ん!とってもゆっくりしてるよ~!」
「おちびちゃーん。ちぇんともあそぼうね~。」
「ちぇんおねーしゃん、おかおがこわいわ!ゆっくちできにゃい!」
「ゆ、ゆがーん!わがらないよー!!」
「ご、ごめんにゃしゃいー。」
「おちびちゃん。ぱちぇとおべんきょうしましょう。」
「ゆぅ~ん。おとーしゃんと、おはなしゃんのおべんきょうしたいわ!こめんにぇ!」
「むきゅーん。つれないたいども、かわいいわー!むっきゅー!」
赤ゆうかりんは、群れのアイドルになった。
みんなの暖かい愛情に包まれたおちびちゃん、赤ゆうかりんは、
これからどんなにゆっくりした生涯を送ることができるのだろう。
れいむは、野良だった頃の自分には想像もつかないであろう、
赤ゆうかりんの明るく輝く未来に思いを馳せ、まるで我がことのように喜び続けたのだった。
そんなある日、れいむが赤ゆうかりんを寝かせつけていた時、
赤ゆうかりんが小声でぽつりとこんなことを質問した。
「ねぇ、おかーしゃん。」
「ゆぅ?なあに、おちびちゃん。」
「ゆうかたち、こんなにしあわせーで、ゆっくちできて・・・いいのかにゃ・・・。」
それはきっと、れいむから赤ゆうかりんに、餡子の記憶として受け継がれた、
漠然とした不安がさせた質問だったのだろう。
その答えは、誰よりもれいむ自身が知りたいと思っていた事なのであった。
ドスも、信頼できる群れの仲間達も、ゆうかりんも、いつでも側にいてくれる。
ゆっくりした食料の大量に混じったゴミは、空から定期的に降ってくる。
体が汚れてきたら、ドス用の水場があるからいつでも水浴びが出来る。
ドスのおうちは、雨も風も通さない、世界一安全なおうちだ。
それに、ここには・・・ゆっくりを傷つける生き物が、誰ひとり存在しない。
それは、とてもゆっくりできることであった。
「おちびちゃん。いいんだよ。ここは、れいむたちの、ほんとうのゆっくりぷれいすなんだから・・・」
「ゆぅ、ゆっくちー。ゆうか、ゆっくちしていいんだにぇ。」
「うん、そうだよ。ずっと、ずっとゆっくりしようね・・・」
ドスのおうちには、いつのころからか、小さな草花が育てられるようになった。
赤ゆうかりんが、成長して立派な、美しいゆうかりんとして育った頃からであった。
土も植物の種も、ゴミに付着していたモノを丹念に集めたもので、
鉢植えもいいものが見つからなかったので、傷ついていない食器などが使われていた。
だが、そうした雑多さが、かえってドスのおうちを明るく、美しく飾り上げていった。
美しく成長したゆうかりんは、両親と、ドスと、優しい仲間達のために、
この殺風景でコンクリートがむき出しのおうちを、美しい植物園にしたいと思っていた。
それは、このゆっくりと時間の流れる楽園の中では、
約束された未来であろうと、皆が信じ続けたのであった。
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ところで、ゴミ分別場に生きた野良ゆっくりが紛れ込んでいる事実は、
施設管理者達の間では周知の事実であった。
ゴミ収集車の構造上の欠陥から、ゴミに紛れたゆっくりを確実には殺せず、
時にゴミ分別場内で繁殖を始めることすらある、という、原因から結果まで全て調査済みだったのである。
では、なぜ見逃されているかというと、それは、ドスまりさという種族の特性を考慮した結果であった。
はじめは偶然だった。
ゴミ分別場内に一匹の野良ゆっくりが紛れ込んだのは。
だが、どうしたものかと管理者達が考えていた所で、思わぬ効果が現れ始めていたのである。
その野良ゆっくりを保護したドスまりさのゴミ処理速度が、
それ以外のドスまりさの処理速度の5倍以上にも激増したのである。
おそらくは、ドスまりさという種族にとって、『ゆっくりを保護する』という目的は、
活動する事の大きなモチベーションだからではないか、と推測された。
そして、その後も野良ゆっくりは時々生きたままゴミ分別場に紛れ込み続け、
管理者達はそれをあえて放置しておく事にしたのである。
それは、元野良ゆっくり達にとって、小さな世界の、ささやかな幸福であった。
同時に、余りにも脆い世界に存在した、砂上の楼閣でもあった。
管理者達の計算上では、ドス達が劣化し、処理能力が低下するまでは、運用開始からおよそ18カ月ほど。
その期間が経過すれば、メンテナンスと称する新ドスへの一斉交換が行われるだろう。
その時、今のドス達に保護されているゆっくり達が、どのような処分を受けるかは決まっていない。
だが、少なくとも確かな事は、現在の生活が続くのは、あと6週間ほどである、と言う事だ。
れいむ達が今いるのは、最も優しく、暖かく、そして儚いゆっくりぷれいすなのである・・・
最終更新:2010年10月06日 19:58