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anko2017 丘の上の楽園

『丘の上の楽園』
  D.O



「ゆぅ~・・・このうえから、ゆっくりしたおはなさんのにおいがするよ。」
「「ゆっくちりかいしちゃよ!」」
「おちびちゃんたち!れいむたちは、きょうこそ『ほんとうのゆっくりぷれいす』をてにいれるんだよ!」
「「ゆっくちりかいしちゃよ!!」」

そんな事を話しているのは、バレーボール大の母れいむと、テニスボール大の子れいむ2匹の、
過酷な町中に住む野良れいむ一家。
その視線の先にあるのは石垣に斜面を固められた低い丘、そしてその斜面中央に一直線に伸びる、30段近い石段だった。

れいむ一家は、その高い石段を登ったことなどもちろんない。
だが丘の上から発せられる草木の薫りは、れいむ一家を含めた町の野良ゆっくり達に、
食料も住み家も困らない、自然に包まれた楽園、ゆっくりプレイスの存在を確かに伝えていた。

「「「えいっ!えいっ!ゆーっ!!」」」

だかられいむ一家は、ゆっくりにとっては余りにも高い石段
(人間からすれば普通の階段より緩めだったりするが)、そこを登る決意をしたのであった。



「ゆっくり!」ぽゆんっ!
「「ゆっくち!」」ぽゆゆんっ!

石段、とくに登りとなると、手足もなければ体も小さいゆっくりには過酷な道だ。

「ゆぴぃ・・・ゆぅ、れいみゅ、つかれちゃよぉ・・・」
「おち、おちびちゃん、がんばっで、ゆっぐぢのぼるんだよぉ・・・」

まして、子れいむではまさしく登山と言ってもよい過酷さであろう。
だが、母れいむは手を貸せない。
もしも母れいむが、子れいむ達をお口に入れて石段を登ったりしたら、
跳ねまわる母れいむのお口の中で、子れいむ達は噛み砕かれて餡ペーストになってしまうだろう。

ゆっくりプレイスへは、自分のあんよでたどり着くしかないのである。

「ゆひぃ・・・っぐぢぃ!」

子れいむ達は石段を一段づつ、全身をバネのように屈伸させて飛び上がり、
汗と傷だらけになりながら登っていく。

「おぢびぢゃん・・・ゆっぐぢだよぉ、ゆっぐぢのぼっでねぇ・・・」

母れいむは子れいむ達を補助するため、上の段から舌を伸ばし、跳ねる子れいむ達をキャッチして引き上げる。
自分の舌がもう10センチ長ければ、おちびちゃん達が苦労せずにすむのにと苛立ちつつ。

れいむ一家にとっては永遠に思えたその旅路。
だが、所詮は30段弱の石段。終わりは意外と早かった。



「おぢびぢゃん!これでさいごだよぉっ!ゆっぐぢとんでね!」
「「ゆぅぅ・・・ゆぐぢぃぃいい!!」」

ぽゆゆんっ!ぼでぼでっ。

「ゆぅ・・・ゆぅぅ・・・」「つ・・かれぢゃよぉ・・・」

息も絶え絶えな子れいむ達、だが、母れいむの表情は、そんな苦しそうな子れいむ達を見てもなお、
頬が緩むのが我慢できないというような、喜びに満ちたものであった。

「おぢびぢゃんだぢ、がんばっだねぇ・・・あれをみてね・・・。」
「「ゆ・・くちぃ・・・・・・ゆ、ゆぁぁぁぁあああ・・・」」

もう一段だって登れない。
それほど消耗していた子れいむ達も、目の前の景色を見た瞬間、疲れを忘れた。



そこには、楽園が広がっていた。



丘の上に広がっていたのは、小さな広場だった。
小さな、しかし、青々と輝く美しい芝生と、それを鮮やかに彩る草花、
涼しげな木陰を生む青葉豊かな木々が広がる、野良ゆっくりが夢にしか見る事のない光景。
そこはまぎれもなく、『本当のゆっくりプレイス』であった。

「みゃみゃ・・・れいみゅ、ゆっくちしちぇいいの?」
「おちびちゃん、ゆっぐぢしていいんだよ・・・」

すーやすーやお昼寝するための木陰も、こーろこーろ転がり遊ぶ芝生も、ここにはいくらでもあった。

「みゃみゃー・・・れいみゅ、おはなしゃん、むーちゃむーちゃしちゃいよ・・・。」
「おぢびぢゃん・・・、どれでも、ぜーんぶ、むーしゃむーしゃしていいんだよぉ。」

柔らかい若草さんも、ほんのり蜜の甘いお花さんも、ここには生涯食べきれないくらいあった。

「みゃみゃ・・・ゆっくちしちぇっちぇにぇ!」
「おちびちゃん、ゆっくりしていってね!」
「「ゆっくちしちぇっちぇにぇ!!」」
「ゆっくりしていってね!」

「「「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」」」

れいむ一家はこの日、生まれて初めて、心の底から『ゆっくりしていってね!』と元気にご挨拶したのであった。



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と、町中の丘の上にある、小さな自然公園の中で騒ぐれいむ親子を見つけたので、
私は彼女たちをそっと胸に抱え上げ、公園を出て石段を降りた。



石段を降り終えると、石段の入り口手前の歩道に、そっとれいむ親子を下ろしてあげる。

「「「う・・・ゆぅぁぅぅ・・・うぃぅひぅぇぇぇ・・・」」」

何だか、泣きたいのか茫然としているのか怒っているのかよくわからない表情で唸っているれいむ一家に、
私は優しく語りかけた。

「広場のお花は食べ物じゃないんだよ。駆除されちゃうから、もう二度と入っちゃダメだよ、ね。」
「「「ひぅぁぁぁ・・・ゆぅぇぅぅぅ・・ぴぅ・・・」」」

丘の上、この石段か、あるいは長いスロープを登らないとたどり着けない場所ということもあり、
あの公園はゆっくり対策が甘い。

「はぁ。まったく。たまにたどり着いちゃうんだよねぇ、野良ゆっくり。」

だから、迷い込んだ野良ゆっくりは、花壇や芝生が荒らされないように、
公園に来ている者が外へと運び出してあげるのが暗黙のルールなのだ。

「まぁ、めんどくさいんだけどね。しょうがないかー。」
「「「ゆばぁぁぁ・・・びぅぇぇぇ・・ぅうぅぅぇぅぅ・・・」」」



翌日も公園に行ってみると、石段の3段目辺りで昨日の子れいむ達が、8段目辺りでは昨日の母れいむが、
疲れ果てた表情で餓死していた。
あれだけ教えたのに、結局また登っちゃったらしい。
野良にも困ったものだ。



なお、このしばらく後、石段を登りきった先の、自然公園の入り口に、
ゆっくりの侵入を防ぐための門が設置された。
やっぱり、ゆっくりに入られるのは問題だったらしい。



石段の途中の、ゆっくりの餓死体は増えたんだけどね。
最終更新:2010年10月06日 20:00
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