『さくのなかとそと』 34KB
いじめ 観察 考証 差別・格差 飾り 実験 群れ 赤ゆ 子ゆ 独自設定 うんしー ※ 初投稿ですよろしくおねがいします 通常種のみ登場します
1
「「ゆっくりしていってね!」」
「「「「「ゆっくちしちぇいっちぇにぇ!!!」」」」」
ここはとあるゆっくりぷれいす
ゆっくりの一家がお家から出てきて朝の挨拶をした
家族は、まりさとれいむの番で、赤まりさ三匹と赤れいむ二匹というスタンダードな構成
他のお家からも次々と家族が外に出て朝の挨拶をしている
どの家族もまりさ種とれいむ種のみで構成されており、早くもゆっくりプレイスはまりさとれいむでいっぱいになった
「ゆううう! なんだかせまいよ!? ゆっくりできないよ!?」
「なんでこんなにゆっくりがいるのおおおおお!?」
少し前は余裕があったゆっくりプレイス
しかし、今現在、ここは四家族の成体とそのおちびちゃんで一杯になってしまっていた
ゆっくりプレイスは網目の柵で囲まれており、その中にゆっくり用のお家が四つ備え付けられている
柵のおかげで外からの外敵の侵入は防げるが、自分たちも外に出ることはできない
食事は、毎朝毎晩の一日に二回お空から勝手に沢山降ってくるので困らなかったが
豊富な食料がゆん口を急激に増加させてしまったのだ
「あっちにいってね! ここはれいむのゆっくりぷれいすだよ!?」
「なにいってるの!? れいむとおちびちゃんはここでゆっくりするんだよ!? そっちこそどっかいってね!」
「ゆーん!? なにかってにひとのとちにいすわってるわけぇ? れいむおこるよ!?」
「もう! みんなばかだね! ここはれいむのゆっくりぷれいすだっていってるでしょおお!?」
「ゆゆ!? なんでまりさがこっちにきてるのお!? ここはまりさのゆっくりぷれいすだよ!?」
「まりさのほうこそなんでこっちにきてるのぜ! もっとあっちにいくのぜ!」
「どぼじでみんなげんがずるのおおおお!? もっどながよぐじようよおおおおお!」
「ゆぴー。 まりさはもうたべられないのぜええ・・・」
親のれいむとまりさ達は毎日のように言い争い、家族同士の溝は次第に深まって言った
そんな親たちをみておちびちゃんたちも家族がいのおちびちゃんと喧嘩をしているようにおもわれるがそんなことはなかった
なぜなら、喧嘩以外にフラストレーションのはけ口を見つけたからである
「やーいやーい! おぼうちのにゃいゆっくちがこっちをみてりゅよおおお!」
「ほんとぢゃ! おぼうちなくしちゃくじゅはゆっくちちねー!」
「もっとこっちくりゅんだじぇ! まりしゃがうんうんをめぐんぢぇやりゅんだぢぇ!」
「ゆぷぷぷぷ! れいみゅのくしぇにかわいきゅないにぇ!」
「あのれいみゅ、おりぼんしゃんなくしてとっちぇもぶしゃいくだにぇ! おお、あわりぇあわりぇ」
「れいみゅのしーしーのみゃしてあげりゅにぇ! しーしー・・・すっきりいいいいい!」
おちびちゃんたちは皆一様に柵に張り付いて外の世界を見ている
その視線の先には、おちびちゃん達と同じくらいの大きさの赤まりさや赤れいむがいた
外にいる赤ゆっくりたちはどのゆっくりもお飾りがなく、やせこけてゆっくりできていなかった
「・・・これ、むーちゃむちゃしちぇもいいにょ?」
「ゆうううう!? こいちゅほんちょにうんうんしゃんたべりゅちゅもりだよ!? きんみょー☆」
一匹の赤まりさが柵の中から外向かってひねり出されたうんうんに近づいて行って尋ねた
その問いに、内側の赤ゆっくり達は嫌悪感をあらわにする
赤ゆっくりには食べられるものが限られている
固い草や昆虫など、一度親が噛み砕いた物ならともかく自力で摂取することはできない
柵の外側にはご飯さんは降ってこないので、内側の赤ゆのうんうんやしーしーは外側の赤ゆにとっての唯一の食料となる
「・・・むーちゃむーちゃ」
「もっちょおいししょうにたべりょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
しょんにゃにいやにゃりゃたべにゃくちぇもいいんだじぇええええええええええ!?」
「・・・むーちゃむーちゃ・・・ちあわしぇー」
「もっちょゆっくちしりょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
しょんなんじゃ、あしたきゃりゃおあじゅけしゃんなのじぇええええええ!」
唯一の食料は内側の赤ゆが握っているので、絶対に外側の赤ゆ達は逆らわない
ただ黙々と、うんうんを咀嚼し、しーしーを舌でなめとるという行為を作業的に行っている
「やーいやーい! びゃーかびゃーか・・・ゆ!しょぢゃ! れいみゅいいこちょおもいちゅいちゃよ!」
外側に向かって罵声をあびせていた一匹の赤れいむがその場をはなれて行った
しばらくすると今朝降って来たご飯を口に咥えて戻って来た
「きゃわいいれいみゅがむーちゃむちゃすりゅちょこりょをゆっくちみちぇいっちぇにぇ!
むーちゃむーちゃ・・・・しあわせえええええええええええ!」
「ゆゆ!? おもしろしょうなんだじぇ! まりしゃもじみゃんしにゃがらむーちゃむちゃすりゅんだじぇ!」
一匹がやりだすと伝染したかのように、他の赤ゆ達も真似し始める
我も我もとご飯を柵の前に集めて外側に向かって食べ始めた
食べかすをわざとまき散らし、沢山の食べ残しが地面におちる
その光景を外側の赤ゆ達は文句一つ言わずにただじっと眺めていた
「むーちゃむちゃしちゃらうんうんしゃんしちゃくなっちゃよ! ゆううう・・・しゅっきりー!」
食べたら当然出るわけで、内側の赤ゆは一斉にうんうんを外に向かってしはじめる
外側の赤ゆ達はそれらを残さず綺麗に食べて行った
ゆっくり達はこんなやり取りを毎日のように繰り返していた
2
一匹の赤まりさが目覚めると、いつもと違う光景が目の前に広がっていた
やさしい母れいむも、たよれる父まりさも、仲良く遊んだ兄弟も友達もそこにはいない
ふかふかのべっとも、頑丈なおうちも、ごーきゅごきゅするための水場すらない
ただ、青々とした芝の草原が広がっているだけである
訳が分からず辺りをきょーろきょろと見渡す赤まりさ
ふと、後ろを振り返ると見おぼえがあるものを発見する
あの、柵だった
柵の中では両親や兄弟たちが気持ちよさそうに日向ぼっこをしているのが見えた
お腹の餡子がサーっと冷えて行くような嫌な予感がした
「おとうしゃーん! おきゃあしゃーん! まりしゃなんだじぇ! なかにいれりゅんだじぇ!」
家族の方へと一目散に飛び跳ねて行く赤まりさ
しかし、家族の反応は冷ややかなものだった
「ゆぷぷぷ! みてよおきゃあしゃん! おかじゃりのにゃいくじゅがにゃにかいっちぇりゅよ!」
「おかじゃりがないゆっくちはゆっくちできないにぇ! れいみゅかわいきゅてごめんにぇ!」
「・・・・? ・・・・・!? ・・・・!!!」
おかざりのないゆっくり
その言葉が自分に向かって放たれた言葉だと気づくのに、少し間が空いた
子まりさは頭に違和感を感じ、おさげで頭をさすると命の次に大切なお帽子が無くなっていることに気付いた
「ゆ・・・ゆぅぅぅぅ!? まりしゃのおぼうちぢょこにいっちゃんだじぇええええええええええ!?」
あわてて身の回りを探る赤まりさ
お帽子が見つかることはなく、兄弟たちが嘲り笑う声が辺りに響いている
「ゆう? おちびちゃんたちどうしたの? れいむはおひるねしてるんだよ?」
「おひるねちゅうはしずかにしてねってまりさいったよね・・・ゆ? どうしたの?」
「みちぇみちぇ! おぼうしのにゃいくじゅがいりゅよ!」
「このくじゅ、しゃっきからうりゅしゃいんだよ!」
お昼寝から目が覚めた母れいむと父まりさ
赤まりさ、両親に向かって必死に呼びかけた
「おちょうしゃああああああああん! おきゃあしゃああああああああああん!
まりしゃはまりしゃだじぇ! あしゃおきちゃりゃおしょちょにでちぇちゃんだじぇ!
ゆっくちしにゃいではやきゅたしゅけりゅんだじぇえええええええええ!」
「なにいってるの!? れいむのおちびちゃんはゆっくりしてるよ!
おまえみたいなくずといっしょにしないでね!」
「まったく、おぼうしのないくずはずうずうしいったらないね!
まりさはおまえみたいなくずはしらないよ!」
「どびょじぢぇじょんにゃごじょいゆにょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
両親から拒絶された赤まりさは半狂乱になって柵の隙間に頭を突っ込んで中に入ろうとした
「かべしゃんはじゃましにゃいぢぇまりしゃをなかにいれりゅんだじぇ!? じゃましにゃいでにぇ!?」
頭部だけはかろうじて入ったものの、胴体から下は入らずお尻をぶりんぶりんと横にふっている
そんな赤まりさに、両親は容赦なくしーしーを浴びせた
「ゆびょおおおおおおおおおおおおおおお!?
しーしーかけにゃいいじぇえええええええええええええええ!」
「ばかなくずにはしーしーをおみまいするよ! れいむのせいっすい!によいしれてねー!」
「ゆぷぷぷぷ! くずにはしーしーがおにあいだよ!」
「ゆ、ゆげ! ゆげええええええ! ゆげえええええええええあああああああ!」
「くじゅがげりょはいちゃあああああああああ! きちゃにゃああああああああいい!」
「しゃっしゃとじぇんぶあんこしゃんはいちぇ、くるしんじぇしんじぇにぇ!」
とうとう非ゆっくり症候群を引き起こして餡子を吐きだした赤まりさ
そのことに同情する家族は一匹もいなかった
「ゆーん! くずをみてたらきぶんがわるくなったよ! きょうはおうちのなかでゆっくりしようね!」
「そうしようね! まりさがおなかでとらんぽりんさんしてあげるよ!」
「ゆぅ!? ほんちょ!? ゆわーい! とらんぽりんしゃんはゆっくちできりゅよ!」
「おとうしゃん! れいみゅも! れいみゅもとらんぽりんしゃんしちゃいよ!!」
「ゆふふふふ。 あわてなくてもおとうさんはどこにもいかないよ!」
幸せそうに話しながらお家の中にはいいて行く家族を、赤まりさは吐きだした餡子に身体をうずめて見送った
3
「まりしゃ・・・? だいじょうびゅ?」
赤まりさが意識を取り戻すと、お飾りのないゆっくり達が赤まりさの顔を覗き込んでいた
かつてバカにしてうんうんやしーしーを食べさせていたあの外側のゆっくり達である
「ゆぅ・・・? ここは・・・・?」
「ここはまりしゃたちにょおうちぢゃよ・・・」
辺りを見回すと、ところどころ破れたりシミができたりしてあまりゆっくりできないが
確かに、段ボールでできた壁と屋根があるお家の中に赤まりさはいた
床には干し草がしかれており、赤ゆっくりが作ったには出来すぎたお家だ
屋根に開いた穴からまた別の天井が見えた
このお家は何かのもっと大きなものの下にあるらしい
「まりしゃはどうしちぇおしょちょにでちぇきちゃかおぼえちぇりゅ?」
「・・・おびょえちぇないんだじぇ。 おっきしちゃりゃおしょちょにいちゃんだじぇ」
「やっぴゃりおぼえちぇないんだにぇ。 まりしゃもおぼえちぇないよ
まりしゃだけじゃなくちぇみんにゃおびょえちぇないよ」
「・・・? なにいってるのじぇ? まりしゃはもちょもちょかべしゃんのなかにいたのじぇ?」
「そうだよ。 まりしゃだけじゃにゃくちぇ、ここにいりゅゆっくちみんにゃがなかにいちゃんぢゃよ」
驚くべきことに、外側の赤ゆ達はもともと内側で暮らしていたのだと言う
だとすると、外側のゆっくり達はかつての友であり、もしかしたら餡子を分けた兄弟だったかもしれないのだ
「どうしちぇいわにゃかったんだじぇ!? なかにいれちぇもらわにゃかったんだじぇ!?」
「まりしゃたちもしょうしちゃかっちゃよ・・・ でも・・・おかじゃりがなくちゃだりぇもあいちぇにしちぇくりぇにゃいんぢゃよ・・・」
そうだった、と赤まりさは思い出した
自分の頭の上についていた、片時も手放したことのないお帽子
これを朝起きた時の自分は失ってしまっていたのだ
「・・・こりぇかりゃどうしゅりゅんだじぇ?」
「まりしゃもきぢゅいちぇりゅはぢゅだよ・・・ そちょにいちゃゆっくちはどうやっちぇいきちぇちゃにょ?」
それを聞いて、赤まりさはサッと餡子の気が引いて行った
自分が外側の赤ゆ達にしていたこと・・・それをこんどは自分がされる側になったのだ
「きょうはゆっくちやしゅんでにぇ・・・ あしちゃかりゃはじびゅんでごはんしゃんをとりにいっちぇにぇ」
「ゆ、ゆううううううううううう・・・・」
外側の赤ゆ達のリーダーがそう言うと、赤まりさはさめざめと泣きだした
4
「おにぇがいだじぇ! まりしゃにごはんをわけちぇほしいんだじぇ!」
「ゆぷぷぷぷ! かわいいれいみゅはかんだいだかりゃ、おぼうしのにゃいくじゅにごはんをわけちぇあげりゅよ!」
『むりむりむり、もりゅん!』
「すっきりー!」
「ゆぴいいいいいいいい!? これはごはんしゃんじゃなくちぇうんうんなんだじぇえええ!?」
「おぼうしないくじゅのくしぇになみゃいきだよ!
かわいいれいみゅのうんうんたべれりゅんだかりゃありがちゃくおもっちぇにぇ!」
次の日、赤まりさは早速ご飯をねだりに柵の内側のゆっくりに話しかけた
初めは、兄弟や両親にちゃんと話せば分かってくれるとふんでいたがやはり甘かった
だれ一ゆとして赤まりさを家族として認めず、屑といって見下した
赤まりさに出されたのは、生みたてほやほやのうんうんだけである
「おねがいなんだじぇ・・・ まりしゃなんにもたべちぇなくちぇおなきゃがぺーこぺこなんだじぇ・・・」
そう言って、赤まりさは地面に額をこすりつけてどけ座で頼み込んだ
それに対する答えは残酷なものだったのは言うまでもない
「れいみゅのしーしーでそのきちゃにゃいぼでぃをきれいにしちぇあげりゅにぇ!」
「ゆうううううううう!? やめりゅんだじぇえええええええええええ!?」
顔を上げた瞬間、顔面に赤れいむのしーしーをもろに受けてしまう赤まりさ
鼻をつんざく臭いに耐えきれず、そこらじゅうをのた打ち回る
「ゆぴゃぴゃぴゃぴゃ! くじゅはしょこでえいえんにこーりょこりょしてちぇにぇ!」
そういって赤れいむは内側の奥へと行ってしまった
どうして、なんで
疑問符が次から次へと頭の中に浮かんでくる
その回答はどこを探しても見つからない
ただただ残酷な運命に、ひたすら耐えるほか道はないのだ
「ゆ、ゆううううううううう!? くしゃいいいいいいいいいい!
こんにゃにょたべらりぇにゃいんだじぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
うんうんに顔を近づける子まりさ
これを食べるなど考えることもできない
しかし、他に食べるものはない
隣では、外側の赤ゆ達がもそもそとうんうんを口に含んで噛まずに飲み下している
そうすることでうんうんを食べる時の精神的な負担を少しでも減らそうとしているのだ
赤まりさもそれにならい、うんうんを口に含んで・・・
「・・・・・・・・・!
ゆゆげええええええろゆげろげろおおおおおおおおおおおおお」
飲み込もうとしたが、耐えきれずに吐いてしまった
「ゆわぁ・・・ あのまりしゃきもっ!」
内側で誰かが言った
それを聞いた赤まりさは、ゲロとうんうんにまみれた顔を涙で濡らした
大声で泣きたかった、泣き叫んで両親に甘えたかった
しかし、赤まりさは唇をかみしめて感情をおし殺す
泣いていても誰も助けてくれないのだ
再びうんうんを口に含み、それを飲み下した
5
月日は流れ、赤まりさはテニスボールサイズの子ゆっくりに成長した
他の外の仲間たちも同様に成長したが、いまだに食料は内側のゆっくりの排泄物に頼っていた
「ほ~らほら! かわいいれいむのうんうんをきょうもたんのうしてね!」
「やさしいまりさは、おかざりのないくずにしーしーをかけてあげるよ!」
内側のかつての兄弟たちも順調に成長していた
外側のゆっくり達よりも栄養価の高い物を食べていたので、一回りほど大きくなっている
そんな彼らから浴びせられる罵声は日に日に大きくなっていく
外側のゆっくり達は黙ってそれに耐え続けていた
しかし、ある日のこと
外側の中の一匹があるものをお家に持って帰ってきた
うねうねと奇妙な動きを繰り返すそれを、外側のゆっくり達は目を見開いて見つめていた
その視線は好奇心で満たされたものではなく、どちらかといえば嫌悪感が勝っていた
「ゆぅ? これなぁに? れいむ、みたことないよ・・・」
「なんだかあんまりゆっくりできそうにないんだぜ・・・」
見たことのないひも状の生物に一同がたじろいでいると、それを持ち帰ったリーダーまりさが皆に言った
「それはみみずさんだよ。 じめんさんからはえてくる、とってもゆっくりできるごはんだよ」
「ゆぅ!? これがごはんなの!? れいむ、とてもじゃないけどたべられそうにないよ・・・」
「ましさもなんだじぇ・・・ こんなうねうねもにょもにょさんなんて、おくちさんにいれられないのぜ・・・」
かつての赤まりさ・・・子まりさは、生まれて初めてみるみみずという生き物に恐ろしさすら感じていた
さらにはそれを食べろという
とてもではないが、子まりさには無理だった
他のゆっくり達も同じようにしていると、リーダーがみみずを咥えると一気に飲み下してしまった
「ゆううううう!? りりりりりりーだー!?」
「な、なにしてるのぜえええええええええええええええ!?」
驚愕の光景に驚きを隠せない一同
そんな彼らにリーダーはみみずを全て飲み込むと大声で言い放った
「しあわせええええええええええええええええ!」
「「「「「!?」」」」」
みみずを食べたリーダーはとってもゆっくりした表情でしあわせーと言った
それは誰かに強制されて言わされる物とは違い、心の底からゆっくりしたしあわせーだった
「・・・ほ、ほんとうにしあわせーなのぜ?」
子まりさは恐る恐るリーダーに尋ねる
リーダーはその問いにこくりと頷いて応えると、皆に向かって話しはじめた
「いままではうんうんをむーしゃむしゃしてたけどそれももうおしまいだよ
これからはみんなでかりにいってくささんやむしさんをあつめてそれをむーしゃむしゃするよ」
リーダーの話を聞いて、ざわつく一同
そんなことができるはずない。どうすればいいかわからない。
否定的な意見が場を支配しようとしていたその時、子まりさが声高らかに言い放った
「まりさはりーだーにさんっせい!なんだぜ! もうまりさはうんうんなんてむーしゃむしゃしたくないのぜ!
これからはりーだーについていってかりをするんだぜ!
むしさんやくささんをいっぱいたべて、まりさもしあわせー!っていうんだぜ!」
この子まりさの一言が場の空気を変えて行った
「・・・れ、れいむもかりにでるよ! れいむはむしさんはむりかもしれないけどくささんならたべれそうだよ!」
「れいむも! れいむもさんっせい!するよ! もううんうんもしーしーもごめんだよ!」
「まりさにもかりのしかたをおしえてね! まりさがんばるよ!」
次から次へとリーダーに賛同していって、しまいには全ゆんの意見が賛成になった
リーダーは満足そうにうなずくと、子まりさにそっと耳打ちをした
「まりさのおかげでみんなさんっせい!してくれたよ。 まりさひとりじゃむりだったよ。 ゆっくりありがとう」
子まりさはそれを聞くと、とてもゆっくりした気持ちになった
6
その後、外側のゆっくり達は毎日のように狩りに出かけてゆき草や虫などを集めて回った
れいむ達は芝生に生えた雑草を選んでむしり口いっぱいに咥えてお家に持ち帰る
芝は青々として沢山生えていたが、苦いうえに非常に硬くとても食べられたものではない
一方、芝の間からヒョロっと生える雑草はゆっくりが食べるには丁度良い固さだった
雑草だけを選んで引っこ抜いていたため、芝だけが青々と生い茂るようになっていった
まりさ達は芝の上を這ういもむしさんやピョンピョンとぶバッタさんを捕まえて一匹ずつ運んで行った
お帽子が無いので非常に効率が悪かったが、虫は草よりもゆっくりできる味がするので一匹取れただけでも皆が喜んだ
このように役割分担をすることで効率よく食料を集めることができた
もう、うんうんを食べることも、しーしーを頭や顔にかけられることもないのだ
かつてのころと比べ物にならないほどゆっくりした毎日を送ることができた
子まりさはいち早く狩りに慣れて沢山の食料を集めることができるようになった
一日に何度も草原とお家を行き来して沢山の虫を持って帰る
「ゆわぁ! まりさはかりのてんさいだね! きょうもたいりょうだよ!」
食料管理をまかされた子れいむがとってもゆっくりした笑顔で喜んでくれた
そんな子れいむをみると、子まりさもとってもゆっくりできるのだ
「さすがはまりさだね! むれいちばんのめいしゅさんだよ!」
「それほどでもあるのぜー! ・・・といいたいところだけどりーだーにはまけるのぜ」
「そんなことないよ! まりさはりーだーとおなじくらいすごいよ!」
「そういってもらえるとうれしいのぜ。 ・・・そうなのぜ、これをれいむにとってきたのぜ」
「・・・ゆん!? ゆわぁ!!! とってもゆっくりしたおはなさんだね!」
子まりさは狩りの合間で見つけたタンポポの花を毟って子れいむの為に持って帰って来たのだ
頭の上にたんぽぽを差してあげると、子れいむは涙を浮かべて喜んでくれた
「れいむ、こんなにゆっくりしたぷれぜんとさんもらったのははじめてだよぉ! ゆっくりありがとう!」
「ま、まりさも・・・こんなぷれ、ぷれぜんとさんしたのははははじめてなんだぜ」
喜んで涙をこぼす子れいむに子まりさは顔を赤らめてもーじもじとあんよを動かした
「おふたりさん!あついねぇ!」
「りーだー!? いつからそこにいたのぜ!?」
子まりさが振り返ると、そこには群れを導いた頼れるリーダーがいた
「ぷれぜんとさんをわたすところはばっちりもくげきさせてもらったよ!」
「だれにもいわないでほしいのぜええ!? まりさはれいむとのひみつさんにしたかったのぜええ!!」
「・・・ゆう? まりさそれどういういみ? れいむわからないよ?」
「ぜぜぜぜぜ! なんでもないのぜ! そんなことよりりーだー! ようすはどうだったんだぜ・・・?」
「・・・あんまりゆっくりしてなかったよ」
リーダーは柵の中のゆっくりプレイスの様子を見に度々足を運んでいた
子まりさも一度同行したことがあるが、その時見た光景はあまり思い出したくない
子まりさが暮らしたかつてのゆっくりプレイスは、もはやゆっくりプレイスと呼べるような場所ではなくなっていたのだ
7
「せまいよおおお! くるしいよおおお!」
「ひぎぃ!? おねがいだよ! これいじょうおさないでね! れいむつぶれちゃうよ!」
「もうたくさんねてないよおおおお! いいかげんにまりさにすーやすやさせてねえええ!」
「くさいよおおおおおおお! きたないよおおおおお! ゆっくりできないよおおおお!」
「おどうぜん! おがあざん! おねがいでず! でいぶをおうじにいれでぐだざい!」
「ゆんやあああああああ! どぼじでまりさがごんなべにいいいいいいいいいいい!」
柵の中では、大きく成長した子ゆっくり達がお外に放り出されてひしめき合っている
彼らの両親達は一日中お家の中に閉じこもり、ご飯の時だけ外に出てて来る
子供たちが中に入れるようにせがんでも、新しいおちびちゃんが生まれてくることを理由にお家の中には入れてくれない
「だめだよ! あたらしいおちびちゃんがもうすぐうまれるんだから、おねえちゃんたちはがまんしてね!」
「わがままいうこはきらいだよ! まりさにせいっさい!されたくなかったらがまんしてね!」
両親達は決して新しく生まれるおちびちゃんの為に子ゆっくり達を追い出したのではない
単純に成長した子ゆっくり達が邪魔になり、ゆっくりできなくなったから追い出したのだ
子ゆっくり達は必死に抵抗したが、身体の大きな両親達には逆らうことができず仕方なく外で暮らしている
それでも雨でも降ろうものなら死に物狂いで両親に襲いかかるだろう
しかし、不思議なことに雨が降ると青い天上さんが現れて雨水を防ぐのでそうはならなかった
「ぐざいいいいいい! こっちはゆっくりでぎないいいい!」
「やめでね!? うんうんざんがだぐざんなんだよ!? までぃざのいうごどぎいでね!?」
子ゆっくり達はできるだけ柵から遠ざかろうとして、おしくらまんじゅうするようになっている
なぜ柵から遠ざかろうかとしているかというと
外側のゆっくりたちがうんうんを食べるのをやめてしまったため、処分するものがいなくなり堆積していったのだ
内側と外側を隔てる柵はうんうんまみれになり、内側のゆっくり達はうんうんに囲まれて生活しているということになる
ストレスの捌け口を失い、お家には入れず、押し合いへしあいの窮屈な生活
こんな日常を送っていれば、誰か一匹でも非ゆっくり症候群で永遠にゆっくりしてもおかしくはない
しかし、食べている物が相当栄養価の高い物なのか、誰一匹として永遠にゆっくりすることなく生存して順調に成長している
時間が経つにつれ、刻々と狭まる生活スペース
だが、両親達は現実逃避するかのようにすっきりを繰り返し、おちびちゃん達を量産してゆく
おちびちゃんが増えると、空から降ってくるご飯も増えるので飢えることはなかった
そのため余計に危機感を薄れさせ、両親達は能天気におちびちゃんの誕生を心待ちにしていた
「ゆううううん! まりさとれいむのおちびちゃんたちとってもゆっくりしてるね!」
「ゆふふふふ。 まりさとれいむのおちびちゃんなんだからとうっぜん!だよ」
「ゆっくりしないではやくうまれてね! そしたらおとうさんがたくさんあそんであげるからね!」
「まったく、まりさったらせっかちさんだね! おちびちゃんたちはにげたりしないよ!」
幸せそうに談笑する両親を見つめて、子ゆっくり達は恨めしそうに額から生えた茎にぶら下がる妹たちを睨みつけていた
8
「ゆぅぅぅ・・・・ これじゃあすーやすやできないよぅ・・・」
「まったくなんだぜ・・・」
外側のゆっくり達はすーやすやを十分に取ることができず疲れ切っていた
ゆっくりプレイスから聞こえてくる内側のゆっくり達の絶叫が夜遅くまで聞こえてくるからだ
日に日に大きくなる絶叫に頭を悩ませるリーダー
このままではゆっくりできなくなって中身を吐き出してしまうものも出てくるかもしれない
答えが出ないまま悩んでいると、リーダーの補佐を務めるだぜ口調の子まりさが話しかけてきた
「りーだー、まりさにあいであさんがあるのぜ」
「ゆぅ? そのあいであさんをきかせてね。 すぐでいいよ」
「もう、こうなったらおひっこしするしかないのぜ」
「おひっこしさん!? むりだよ、ここのほかにゆっくりできるばしょなんてないよ」
リーダーの行動範囲は外側の誰よりも広く、芝の草原はほぼ踏破している
草原以外にもいろいろ見て回っていたがお家になりそうな場所はなかった
まして、ゆっくりできるゆっくりプレイスなどどこにも・・・
「それがあるのぜ。 まりさはとっておきのゆっくりぷれいすをみつけたのぜ!」
「・・・ゆう!?」
リーダーは自信満々に言う補佐まりさを疑ったが、とりあえず自分の目で見て確かめることにした
どのみち、このままでは皆ゆっくりできなくなってしまう
信じる信じないは別にして、とりあえずは補佐まりさの言うとおりにしてみよう
翌日、補佐まりさと共に新たなるゆっくりプレイスを探しに出かけた
広大な草原を力強く跳ねて行く補佐まりさとそれに続くリーダー
補佐まりさの背中を見て、リーダーはしみじみと昔のことを思い出した
思えばずいぶんと立派になったものである
うんうんを涙ながらに飲み込んでそれを戻してしまって、無理やり他のゆっくりにそれをまた飲み込まされていた補佐まりさ
それが今では外側の群れを支える幹部として立派に役目を果たしている
正直、補佐という立場は役不足に思える
本当ならリーダーも任せられる能力があるし、実際リーダーを交代しないかと持ちかけたこともあった
しかし、補佐まりさは今の自分があるのはリーダーのおかげだと言って頑なにその提案を受け入れようとしなかった
そんな恩義を感じさせるようなことは何一つしていない
補佐まりさの背中に、リーダーは無言で語りかけた
「ついたのぜ! ここがあたらしいゆっくりぷれいすなのぜ!」
補佐まりさのに連れられてやってきた場所には、岩が沢山積み重なっていた
岩と岩の間には隙間があり、その奥には成体ゆっくりが入れるほどの大きな穴があいていて奥は空洞になっている
ゆっくりがすむにはうってつけな場所だった
「ここなら群れのみんなものーびのびくらせるのぜ! すーやすやもたーくさんできるのぜ!」
補佐まりさは興奮してなんどもピョンピョンしていた
そんな補佐まりさを横目に、リーダーは何か腑に落ちないと言った感じで岩を眺めていた
確かここはなんどか来たことがある場所だった
しかし、その時は穴なんてどこにもなかったのだ
「リーダー! どうかしたのかぜぇ!? ここはきにいらないのかぜ!?」
補佐まりさが心配そうにリーダーに尋ねる
今にも泣きそうな顔をしていたのでリーダーはあわてて答えた
「そ、そんなことないよ! ここをみんなのゆっくりぷれいすにするよ!」
「ゆわぁーい! ここにみんなでおひっこしするんだぜえ!」
まってましたと言わんばかりに飛び跳ねる補佐まりさを見て、リーダーは先ほどの疑問を頭の隅へと追いやった
9
「おきてよ! ねぇおきてってば! たいへんだよ!」
「ゆぅ? なんなのぜ? まりさはまだおねむなのぜ・・・」
「はやくおきてよおお! このねぼすけばかまりさぁ!」
「うるさいのぜ! いいかげんにし・・・ゆわぁ!れいむいったいそれどうしたのぉ!?」
「わからないよぉ! あさおきてたらこうなってたんだよぉ!」
出発の日の朝、補佐まりさは大仕事の前に沢山すーやすやしていた
れいむの声で覚醒した補佐まりさの目には信じられない物が目に飛び込んできた
れいむの頭の上に、真っ赤なおリボンが着いていたのだ
「れいむ・・・れいむとってもゆっくりしてるのぜぇ!」
「そうかなぁ!? れいむとってもゆっくりしてるかなぁ!?」
「さいっこう!にゆっくりしてるのぜ! こんなにゆっくりしたゆっくりみたことないのぜ!」
「ゆふふふふ! もぉ、まりさったらぁ!」
よく見るとお飾りが着いているのはれいむだけではなく、他のゆっくりも皆お帽子やおリボンをつけていた
まりさ達はお帽子に頬を何度も何度もすーりすりとさすりつけてその存在を確かめた
れいむ達はおリボンの着いた自分の姿を確かめようと水たまりを探しまわった
誰もが感極まって涙する中、補佐まりさは一匹だけお帽子が無いまりさが居ることに気付いた
それは、他ならぬ自分自身であった
「・・・どうして? どうしてまりさのおぼうしだけないままなの?」
「ゆぅ・・・ そんなのきかれてもわからないよぉ」
微妙な雰囲気になり、誰もが同情の目で補佐まりさを見ていた
そんななか、リーダーが補佐まりさへと歩み寄る
「これをまりさにあげるね」
そう言ってリーダーは被っていたお帽子を補佐まりさに被せた
驚いて言葉も出ない補佐まりさ
数秒後我に返り物すごい勢いで顔を横に振った
「だめなんだぜ! これはりーだーのおぼうしなんだぜ! うけとるわけにはいかないんだぜ!」
「ううん・・・ これをうけとってもらわないとまりさはまりさにかおもみせられないんだよ」
「どういうことなのぜ!? せつめいしてほしいのぜ!」
「・・・みんなもよくきいてね
きょうおひっこしするゆっくりぷれいすはこのまりさがみつけてくれたんだよ
でもね、そのゆっくりぷれいすはもともとただのいわさんだらけだったんだよ
そのいわさんだらけにだれかがひとりであなをほっておうちをつくったんだよ
ゆっくりがやるにはとってもたいへんなことだよ
でも、それをやってくれたゆっくりがいるんだよ・・・」
リーダーはそこで一呼吸おくと、ゆっくりと補佐まりさの方を向いた
「このまりさがみんなのぶんのおうちをつくってくれたんだよ」
「・・・!? りーだー!? なんでわかったのぜえ!?」
驚いて飛び上がる補佐まりさ
リーダーは落ち着いた口調で話しはじめた
「このまりさはとってもかりがじょうずなまりさだよ
でも、かりでとってかえるりょうはそれなりーだったよ
なんでかぎもんにおもってたけどこれでなぞはとけたよ
ひとりであなさんをほってたからだったんだよ」
群れのゆっくり全ゆんが補佐まりさを見ていた
補佐まりさはどうしていいかわからず、顔をリーダーのお帽子で蔽った
「・・・りーだーはしってたのぜ?」
「ゆん? しらなかったよ! ためしにかまさんをかけてみたんだよ!」
「な、なんなのぜそれええええええええええ!?」
リーダーは真剣な顔から急にとぼけた顔になりどっと笑い声が上がった
どのゆっくりもお飾りのあるなしに関わらず、お飾りのないゆっくりをゆっくりとして受け入れていた
かつて自分たちが受けたような屈辱を仲間に行う者などいないゆっくりしたゆっくりの群れ
他のまりさ達も同じように帽子を補佐まりさに差し出し、結局皆でお帽子を共有するという結論に至った
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「いいはなしだなぁー・・・・・」
「おにいさん、なにないてるの?」
モニターに向かって涙を流すおにいさんに、ありすはそっとハンカチを差し出した
「ああ、別に泣いてないから大丈夫だよ」
「まぁ、うそなきでありすをだますなんてとかいはじゃないわぁ」
ぷくーっと膨れるありすの頭をなでながら、机に置かれたお帽子に目をやる
これもそのうち返してやることしよう
なにせ課題はクリアしたも同然なのだから・・・
お兄さんは虐待の合間にゆっくりを育てる、奇特なタイプのブリーダーだった
ゆっくりが苦しむ姿をみたい、でも善良ないい子は可愛がりたい
そんな彼の行きついた先が、ゆっくりをゆっくりさせずにゆっくりしたゆっくりを育てる
という少しおかしな考え方だった
今回行った実験は、ずばりお飾りが無くてもゆっくりできるゆっくりは作れるか、というものだ
ご存じのとおり、ゆっくりはたとえ我が子であってもお飾りを失ったゆっくりは容赦なく暴行し場合によっては死に至らしめる
その悪癖を矯正するために、今回大がかりな仕掛けを作って実験に臨んだのだ
仕掛けといっても、ゆっくりのお家を柵で囲みそこから出られないようにして
自動の給餌機を設置しておしまいという単純なものだ
後は、夜寝静まったころに子供を適当にさらい、お飾りを取って外側に放置する
朝起きた子供は両親や兄弟から容赦なく罵声を浴びせられ孤立する
ただし、柵があるので暴行を受ける心配性はなく、されるとしてもしーしーをかけられるくらいだった
こうしてお飾りのないグループとお飾りの着いたグループに分け様子を見る
予め外側のグループにもお家を用意しておき、その動向は監視カメラで見ることができる
外に追い出したお飾りのないグループが全滅した場合、再び柵の中から子供をさらう
それを三回ほど繰り返したところ、ようやく変化が起きたのだ
うんうんばっかり食べていたゆっくり達が誰に教わるでもなく狩りを始めたのだ
これは素晴らしい変化だった
それまでの実験では、うんうんを食べ続けてストレスで死ぬか食べないで干からびて死ぬかのどちらかで群れの形成までいたらなかったのである
これは群れの中心となっているリーダーのまりさがとても優秀だと言う証拠だろう
優秀なのはリーダーだけではない
その補佐をしているまりさも相当優秀でなおかつ善良な個体だった
補佐まりさは狩りの合間に巣となる穴をたった一匹で掘り続けていたのである
あまりに無茶なその行動に、ルール違反だとは思いつつ代わりに穴を掘ってあげたりもした
流石に、掘り終わるのを待っていたら一年近くかかってしまっただろう
他のゆっくり達もお互いに助けあう善良な性格に育っていた
これはもう間違いないということで最後のテストを行い彼女たちは見事合格した
そのテストというのが、一匹だけお飾りを返さないで他のゆっくりにはお飾りを返すというものだ
もしここで一匹だけお飾りのないゆっくりが迫害されるようなことがあればテストは当然不合格
お飾りを返さないゆっくりは補佐まりさにした
れいむや、平まりさではリーダーまりさと補佐まりさがかばってしまうと考えたからだ
不合格が確定した瞬間お兄さんは鬼意山へと変身し、肩パットを装着して農作業用のバーナーでヒャッハー予定だった
しかし、その変身セットは使わないまま終わってしまった
外を見ると新しいお家へと向かって移動する群れが見えた
その先頭でお帽子を被っていないゆっくりが元気に跳ねて群れを先導している
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さて、柵の内側に取り残されたゆっくりたちはというと・・・
「ぐるじ・・・ だずげじぇ・・・」
「おべがいでぶ・・・ でいぶのうべがらどいでぐばざび・・・」
「ゆんやああああああ! くしゃいいいいいいい! おしょとでちゃいいいいい!」
「きゃわいいれいみゅがどぼじじぇごんにゃめにいいいいいいいいいいいい!」
「ゆひぃ・・・ ゆひぃ・・・ もうすっきりしたくないよおおおおおお」
「あがじゃっ! でいぶのあがじゃ! ゆひひひひひひ・・・・」
柵いっぱいに増え続け、潰れることもできずにぎゅうぎゅうに詰まっていた
下敷きになったゆっくりが潰れない理由は、途中から餌に寒天を混ぜたからだ
寒天を混ぜると中身が固まりつぶれにくく頑丈になるのだ
餌には精力剤も混ぜておいたので、親ゆっくりは四六時中すっきりーを繰り返し子供の数は際限なく増えてゆく
給餌機の補給に来るたびに、一度に出す餌の量を多く設定しなおしていたので餌が足りなくなるということもない
下敷きになったゆっくりは上に乗っているゆっくりのうんうんやしーしーでなんとか生きながらえているようだ
勿論それができないで死ぬ個体もいるが、つねにすーりすりし続けているこの状態では減るより増える量の方がはるかに多い
そしてついにかんせいしたゆっくりぷれいす
四角く囲まれた土地に、柵いっぱいまで増えたゆっくり達
天井に金網をかけたので脱出することももはや不可能
お兄さんは満足そうにそれを眺めて煙草を一服した
これからどうしようか・・・
上から熱湯をかける?
まわりにれみりゃでも放つ?
いっそのことこのままスクラップっていうのも・・・
「おにいざぁん!? おでがいだよ! でいぶをだずげでねえええ!?」
「うん?」
一匹のれいむが話しかけてきた
それに呼応するかのように、他のゆっくり達も一斉にお兄さんに助けを求める
「おでがいでず! ばでぃざぼごごがだだじでぐだばい!」
「おでがびだがらでいぶぼごごがだだじでね? ずぐでびびぼ!?」
「ごごはゆっぐぢでぎないんでず! おでがいでずがだゆっぐじざぜでぐだざい!」
「ゆぴいいいいいいいいいいい! しゃっしゃときょきょからだしぇこのくじゅうううううう!」
「ここはくしゃくちぇゆっくちできないんだじぇ! はやくここからだしゅんだじぇ!」
「ゆひひひひひひ・・・ でいぶぼおじびじゃん・・・ がばいいべー・・・」
「ばでぃざはぜがいいじのゆっぐぢなんだぜ・・・ えいびゅんなんだぜ・・・」
必死に何かを言おうとしているかつての子ゆっくり達
余裕があるのか普通に喋るゲス化した赤ゆッくり
正気を失って妄想の世界に逃げ込んでしまった親ゆっくり達
みんなみんな素敵だよ、だからずっとこのままでいようね
お兄さんは給餌機の中身を固形のものから液状のものへと切り替え、大量の薬品を混ぜ込んだ
こんなことをしても一銭にもならないが、このままこれがどうなるのか見届けたくなったのだ
柵には有刺鉄線を巻き、頑丈な金具で固定して破裂しないようにしておいた
これで当分柵のメンテナンスはしなくて大丈夫だろう
「いぐなあああああああああもどでええええええええええええ!」
「でいぶをだずでどおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「そんなこというけどさぁ、きみたちはお飾りのないおちびちゃんが中に入れてって言った時どうしたっけ?」
「おがざびのないおじびじゃんんんっ!!?? ぞんだのじだないよ!」
「ぞんなごどよりばでぃざをごごがらだぜええええええええええ!」
「ですよねー。 まぁまともな答えが返ってくるとは思ってなかったけどね
じゃあね、そこでゆっくりくるしんでいってね!!!」
「「「「「「どぼじでぞんだごぼいぶぼおおおおおおおおおお!?」」」」」」
まだ後ろから呼ぶ声がしたがそれには答えず自宅へと戻るお兄さん
柵の中のゆっくり達は届かない願いを訴えかけ続けた
終
最終更新:2010年10月06日 20:12