anko2069 虚構の代償

「虚構の代償」

羽付きあき

・理不尽物注意
・第三者視点です
・幾つかの独自設定を混ぜ込んであります。


「ゆゆーん!おとうしゃん!ちょっちぇもゆっきゅりっしちぇるね!すーりすーり!」
「おとうしゃん!まりしゃ!たかーいたかーいしちぇほしいよ!」
「おちびちゃん!そんなにあわてねいでね!さきにすーりすーりをするからね!」

暖かな部屋の中で、まりさは子ゆっくり達と過ごしていた。
はじけるような笑顔のとってもゆっくりできる子供たち、シミ一つない飾りにモチモチの小麦粉の皮。
よく手入れされた砂糖細工の髪は微かに甘いにおいを漂わせている。
ゆっくりできない事など何一つない。幸せな、幸せな子ゆっくり達。
毎日美味しいあまあまをむ~しゃむ~しゃして、暖かい日には家族でぽーかぽーかして・・・
まりさは、この幸せがずっと、ずっと続くと確信していた。

「まりさ!」
まりさはが振り向くとそこには、まりさの番いである「れいむ」がいた。
「れいむ!ゆっくりしていってね!」
愛しのれいむ。泥にまみれ、蹴飛ばされ、飢えに苦しむあの街から救ってくれたのは、このれいむだった。
まりさは元街ゆっくりだったのだ。冷たいアスファルトの森の中で、空虚な灰色の日々を送るまりさはれいむに恋をした。
そして、れいむもまたまりさに恋をした。
二体が番いになるのはすぐだった。まりさが心配していた「街ゆっくりなんかを飼いゆっくりにしてくれるのだろうか?」と
しかし、れいむの飼い主は、快く二体が番いになる事を祝福してくれた。
体を洗ったまりさは金バッジに勝るとも劣らない美しさを備えていたのだ。

「たかーいたかーいだよ!」
「ゆゆーんしゅぎょいよ!」

帽子の唾でポンポンと子まりさを跳ねさせるまりさ。
「おきゃあしゃんしゅーりしゅーり!」
「すーりすーり!ゆふふ!とってもゆっくりしてるね!」
れいむにすーりすーりをする子れいむ。
まりさの望む幸せがそこにあった。

「れいむ!おちびちゃんたち!ずっとみんなでいっしょにゆっくりしようねっ!」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「いやだあああああああああ!!いぎだぐないっ!いぎだぐなよっ!までぃざいぎだぐないよおおおおおおお!!」
・・・まりさは今、加工所職員の手によって砂糖細工のおさげを掴まれて、狭い鉄箱の中から引っ張り出されようとしていた。既に周りのゆっくりは鉄格子のついたカートに入れられ、ドアの向こうへと消えてしまった。
グシャグシャに潰れてまともに動かせない底部をモソモソと動かし、潰れて片方しかない砂糖細工の目を見開いて、必死にしがみついている。
だが、すぐにその抵抗も空しく終わった。
最後に連れて行かれたまりさは、そのまま砂糖細工のおさげを掴まれ、ドアの向こうへと向かっていく。
必死に体をくーねくーねと動かして。何度も、何度も。
だが、意味は無い。そのままドアが開く。

「いやだっ!いやだよっ!までぃざいぎだぐないよおおおおおおおお!だずげでえええええ!"ばねづぎ"っ!おにーざんっ!までぃざをだずげでよおおおおおおおお!!」
既に来るはずもない者の名を叫ぶ。必死に、必死に
まりさは知っていた。あのドアの向こうに行ったゆっくりはもう二度と戻ってこない事を。
まりさは知っていた「金バッジのゆっくり」に危害を加えた街ゆっくりがどうなるかを。

ドアが開き

「ばなじでっ!ばなじでっ!ばなじでっ!ばなじでねっ!ばでぃざをばなじでねえええええええええ・・・!!」

閉まった。

「がごうじょい”や”あ”あ”あ”あ”・・・!」

まりさがなぜここにいるのか、何をしてやってきたのか。
因果応報。望む望まずに関わらず、悪事を働くものには必ず悲惨な最期が待っている。
まりさもまた、「ゲスゆっくり」と呼ぶにふさわしいゆっくりだったのかも知れない。

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暗い曇天が、今にも落ちてきそうな天気。
私と、羽付きはアスファルトの道を歩いていた。

「で、変わったゆっくりって?」
「このちかくにあるきんばっじのれいむがいるんだぜ。そのれいむにつきまとうまりさがいるらしいぜ」
「でも、危害は加えてないんだろう?別に羽付きが様子を見に行かなくてもいいじゃないか」
「ちいきゆっくりもいそがしいんだぜ。こんなこまごまとしたことはまりさたちみたいなゆっくりにまわってくるからしかたがないんだぜ」
「で、そのまりさって言うのは一体・・・?」
「ゆぅ・・・れいむのかいぬしさんもめいわくしてるっていうんだぜ。いつもれいむがいるまどのまえに、いもむしやむかで、くさったなまごみやがらくたをおいていくというんだぜ」
「・・・それは単にプレゼントをしてるんじゃないだろうか?」
「まりさもそうおもうぜ、でもあんなものはかいゆっくりからみればいやがらせいがいのなにものでもないんだぜ」

・・・金バッジれいむに付きまとうまりさがいると言う。
「おさんぽ」の時もいきなり飛び出して「ゆっくりしていってね!」と言った後、虫の死骸を置いて行ったりする様だ。
飼いゆっくりになるために、バッジ付きのゆっくりに取り入ろうとするゆっくりはいくらでもいる。
だが、それらはもっとソフトな方法を取るのだ。
仲間をけしかけ、自作自演で自分が飼いゆっくりを救って恩を売ったりといった具合に・・・
街ゆっくりと飼いゆっくりとでは持っている価値観や常識が違う。
これはその一例だろう。
加工所に連絡して捕獲してもらうのも忍びないと、その飼い主は地域ゆっくりに追い払う様にと依頼した
しかし地域ゆっくりも余裕がなかったのだ。たらいまわしの末に、羽付きにその話がやってきたというわけだ。
羽付きも建前上は「地域ゆっくり」に入るらしい。
普段からバッジを必要以上につけることを嫌う羽付きは、あまりバッジを付ける事はしない。
それが一体どんな原因でなのかは私にはわからなかった。
私に、それを聞く勇気はない。

そうこうしている内に、依頼のあった金バッジれいむのいる家の前にやってきた。
近くの電柱に隠れて、そのまりさが来るのを伺う。
・・・暫くすると、小汚い一体のゆっくりまりさが跳ねてきた。口には小さな花が加えてある。

「あのまりさかな?」
「さっそくきたんだぜ!」

急いで羽付きが跳ねて飛び出す。
そして大声でこう叫んだ。

「そこのまりさっ!ゆっくりまつんだぜ!」
「ゆ!ゆ!・・・ゆゆ!?」

まりさが面喰った様に立ち止まる。
羽付きは前に立ちふさがり、さらに大声でまくし立てる。
「このきんばっじれいむのかいぬしさんにたのまれてここにきたんだぜ!いますぐここからでていってにどとちかづくんじゃないぜ!」
「ゆ・・・!い、いやだよっ!まりさはれいむとなかよくしたいんだよ!」
「・・・だから、びーだまさんやくだものさんをぷれぜんとしたのかぜ?」
「そ、そうだよ!」
「まりさとれいむではたちばがちがうんだぜっ!まりさはまちゆっくり!れいむはばっじつきなんだぜ!つがいになることもなければはなすことだってかなわないんだぜ!」
「ゆ・・・」
「きんばっじれいむは、おまえをおいはらうだけでいいといったんだぜ。ほんとうならおまえはちいきゆっくりにふくろだたきにされてかこうじょおくりになってももんくがいえないことをして、それでもそんなていどでゆるしてくれてるんだぜ。いまならおそくないから、きんばっじれいむのことはもうわすれるんだぜ」
「い、いやだよ!まりさとれいむがなかよくなってなにがわるいのっ!?」

・・・羽付きはその言葉を聞いて、帽子の唾を深く下げた。
そして見上げるとまりさに向かってこう言い放つ。

「だったら、すなおに"まりさとともだちになってね"となんでいえないんだぜ。」
「ゆ・・・そ、それは・・・」
「ほんとうはおまえもじぶんがわるいことをしているとおもってるんじゃないのかぜ?」
「ゆ・・・ま、まりさはただなかよくしたいだけなんだよ!?どうしてそれができないの!?」

私はそのまりさの主張を聞いて、何故だかそれに同調していた。
・・・確かにゆっくり同士に垣根は無いはずだ。仲良くするぐらいならいいのではないか?と
しかしこのまりさのしている事は悪であることには変わりない。それに対してははっきりと違うと私は思う。
どちらにしろ、実力行使をしてでもあのまりさを追い払わなければならないのだ。
私がそう考えていると、羽付きは驚くべき言葉を口にした。

「・・・だったらきんばっじれいむにあわせてやるんだぜ。こんなまわりくどいことをせずに、ちょくせつつたえるんだぜ」
「ゆ・・・?」

私は驚いた。追い払うと言われたのに羽付きはそのれいむと引き合わせようと言うのだ。
まりさが家の中に入っていく、私は羽付きに近づいていった。

「何であんな事を・・・」
「げんじつをみせてやったほうがいちばんのくすりになるんだぜ」
「でも・・・」
「あのきんばっじれいむは、あしたにはきんばっじのまりさとつがいになるんだぜ」
「・・・なるほどね」

羽付きの意図が分かった。
私は羽付きとともにガラス越しに対面するれいむとまりさを眺めていた。

「れ、れいむ・・・ま、まりさはまりさだよ」
「・・・」
「ま、まりさはれいむとなかよくしたいよ・・・」
「・・・」
「その・・・あの・・・」
「かえってね」
「え?」
「まりさはまちゆっくりだよ。きんばっじのれいむはほんとうははなしちゃいけないんだよ」
「ゆ・・・れ、れいむ・・・なんで・・・」
「れいむはもうあしたばっじつきのまりさとずっといっしょにゆっくりするんだよ」
・・・まりさの動きが止まった。現実を受け付けられないようだ。
しばらくして火が付いた様に喚きだす。癇癪を起した子供の様に。

「どぼじでっ・・・!どぼじでえええええええええ!?」
「ゆ・・・」
「なんでなのおおおおおお!までぃざがばっじつきじゃないがらなのっ!?ごんなのっでないよおおおおおおおお!!」
「そうだよ・・・」
「ぞんなっ!ぞんなのっでないよおおおおおおお!!ゆがあああああああ!!」

窓越しに何度もれいむのところに行こうと体当たりを繰り返すまりさ。
・・・私の目の前で羽付きがまりさに飛びかかった。

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あれから数日が経った。
あのまりさはそれからとんと、こなくなったそうだ。
・・・何故れいむに引き合わせたのか、あれが羽付きの作戦であったと言うのを知ったのは、後の事であった。
まりさは、何処へ行ったのかは羽付きにも、私にもわからなかった。
しかし、この話は、ここで終わりではない。

あのまりさを再び見つけたのだ。
今度は、ひと通りの多い路上の上で。

「・・・!!・・・!」

私と羽付きの耳に、ゆっくりの声が聞こえた。
たいして珍しい光景でも何でもないだろう、ゆっくりが「飼いゆっくりにしてください」と喚いているだけだ。
脇目に通り過ぎようとする時、羽付きが立ち止まった。

「・・・あのゆっくり」
「どうしたんだい?」

羽付きの視線の先に目をやると、そこには薄汚いまりさが涙と涎をまき散らしながら何かを必死にがなりたてていた。

「・・・おでがいでずっ!までぃざをがいゆっぐりにじでぐだざいっ!おでがいじばずっ!」
・・・道行く人々に必死に叫ぶそのまりさは、帽子もボロボロで、砂糖細工の涎と涙が道に砂やごみをくっつけてさらに汚く仕上がっていた、

「あのまりさがどうしたんだ?」
「あのまりさ、このあいだれいむにつきまとっていたまりさなんだぜ」
「え・・・!?」

私からは判別が付かなかったがゆっくりである羽付きにはわかる様だ。
あのまりさは、この間の・・・

「までぃざはきんばっじのがいゆっぐりでじだっ!どっでもゆっぐりでぎるよっ!がりざんだっでじょうずだじがげっごだっでばやいよ!だがら・・・!だがらまでぃざをがいゆっぐりにじでねっ!」

必死に考えた嘘でアピールしているのだろう。バレていないとわかっているのは当のまりさだけであるとも知らずに・・・

「見てられないな・・・」
「じごうじとくなんだぜ」

羽付きがそう吐き捨てた。
私の視界の向こうでまりさは必死に道行く人々に叫び続けている。
「ゆ”!」

・・・まりさが私の方へと向いた。体を上下にのーびのーびさせながら凄まじい形相でこちらに近づいてくる。
「おにーざんっ!ごのあいだのおにーざんなんだねっ!おでがいでずっ!までぃざを!までぃざをがいゆっぐりにじでねっ!」
「うわ・・・」
ベチャリとした感覚がズボン越しに伝わる、すーりすーりをされるたびに汚れが付いて行った。

「までぃざはねっ!きんばっじのがいゆっぐりだっだんだよっ!どっでもゆっぐりでぎるんだよっ!」
「やめ・・・」
「おにーざんっ!ずーりずーりっ!ずーりずー・・・ゆぶぁっ!」

・・・突如としてまりさが弾かれた様に横に転がった。少量の餡子が口から洩れている。
「だいじょうぶかぜ?」
「・・・ありがとう」

弾き飛ばされたまりさは横に倒れてブツブツと呟きながら触れている、あにゃるが私の目に映った。

「・・・でがいじば・・・ず・・・までぃざ・・・を・・・がい・・・ゆ・・・」
羽付きが帽子の中から、何かを取り出す。
丸っこい何かがまりさの目の前に放り出された。

・・・それは、まりさが喉から出るほど欲しがった、黄金色のバッジだった。

「ゆ・・・?ばっじ・・・さん・・・?」
「・・・それをくれてやるからさっさとどこへなりともきえるんだぜ」

まりさがずーりずーりと這いつくばりながら必死に舌で金バッジを拾い上げる。
「ばっじ・・・さん・・・まりさの・・・ばっじさん・・・」
舌で何度も現実のものと確かめ、てペタペタと触っている。
「ゆ”・・・!ゆ”ぐ・・・ばっじざん・・・ばっじざんだぁぁ・・・!」
砂糖細工の涙がボロボロと流れ出た。
何度も帽子に付けなおして、その感触を確かめる。

羽付きが振り返って去っていく。
私もそれについて行った。
・・・羽付きが開いた口から発せられたのは、驚くべき言葉だった。

「あのまりさもこれでおわりだぜ」
「え?」
「あのまりさは、きんばっじをつけてあのれいむのところにいくんだぜ」
「まさか・・・」
「きんばっじをあのまりさがてにいれるにはほかのかいゆっくりからうばいとるしかないとおもわれるんだぜ」
「じゃあ、あのまりさを助ける為にバッジを渡したわけじゃないのかい?」
「ばっじつきになるにはほうほうはいくらでもあるんだぜ。ちいきゆっくりになったり・・・でもあのまりさはそれをしなかったんだぜ。それであんなにがいをふりまくならいなくなってもらってけっこうなんだぜ」

羽付きが立ち止まって、後ろを振り返った。
まりさが泣きながら、ずーりずーりとどこかへ移動しているのが遠目でわかる。

「じゃあ、まりさもそろそろいくんだぜ」
「・・・地域ゆっくりの所に?」
「そうだぜ。さきまわりしてつかまえてもらうんだぜ」
「・・・」
「どうせあのばっじはきげんもきれてだれのゆっくりかもわからなくなったやつだぜ。なくなったってかまわないんだぜ」
「羽付き」
「なにかぜ?」
「そんな事をしてたらいつかは羽付きも同じような目に会う日が来るかもしれないよ」
「・・・それはわかってることだぜ」

羽付きはそういうと路地裏の方へと消えていった。
私は、立ちつくしてあのまりさを見る。
せめて幸せの絶頂の内に死ねるだけマシなんだろうか・・・
雑踏の中に、まりさの喜びの嗚咽だけが微かに聞こえている。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「ゆ!ゆ!れいむまっててねっ!」
私のはるか前方を、まりさは必死に跳ねていた。
頭には光り輝く金バッジが付けてある。
薄汚い風貌と金バッジは、アンバランスな違和感を醸し出していた。

「まりさもきんばっじのゆっくりになったんだよ!れいむ!れいむ!待っててね!」
・・・空腹と疲労を喜びが押さえつけ、まりさの原動力となっているのだろう。
全てが報われる、金バッジになれた、まりさの胸中には輝かしい未来が待っているのだろう。
「暖かい部屋」「あまあまを家族でたくさんむ~しゃむ~しゃする」「いっぱいおちびちゃんとこーろこーろしてあそぶ」
全ては虚構なのだ。あのまりさをこれから待っているのは、地域ゆっくりによる壮絶な制裁。
金バッジに手を出すと言う街ゆっくり唯一のタブーを犯したまりさへの、壮絶な制裁・・・

あのれいむのいる場所が見えてきた。まりさの動きもさらに早まる。
しかし、そこに待ち構えていたのは、銅バッジをつけて、口に小石や木の枝を加えたゆっくりの数々だった。

「ゆゆ!?ど、どいてね!まりさはいまかられいむにあいにいくんだよ!」
「うるさいよ!きんばっじにてをだすなんてとんでもないげすだね!」
「ゆう!?ち、ちがうよ!これはもらったんだよ!」
「うそをつかないでねっ!きんばっじはそんなかんたんにもらえるものじゃないんだよ!」

取り囲んだ地域ゆっくり達が一斉に飛び跳ねてまりさを押さえつける。
4体もの成体ゆっくりが押さえつけているのだ。まりさではどうしようもなかった。

「ばなじでねっ!ばりざはれいむにあいにいくんだよっ!」
「ゆぅ!このまりさていこうするよ!」
「いためつけてひったてるんだぜ!」
「ゆっくりわかったよ!」
「この!げすはゆっくりしね!」

・・・4体の地域ゆっくりの内、2体がまりさの砂糖細工の髪を口で加えて動きを押さえている。
そして残りの二体が、舌に持った小石でまりさを思いっきり打ちすえた。

「ゆぎゃっ!いだいいいいいいいいい!までぃざのおがおがああああゆぎっ!」
「この!この!おまえのせいでまりさたちちいきゆっくりのめんつはまるつぶれだよ!」
「ぜったいにゆるさないよ!ゆっくりくるしんでね!」

・・・怒りを口にしながら、小石で何度も打ちすえられるまりさ。
今度は小麦粉の皮と言う皮が滅多撃ちにされ、中の餡子が不規則に変化して腫れあがっていく。
「ゆぎっ!いだっ!いだいいぃぃ・・・ゆぐぇっ!ゆぎ・・・ゆげっ!げぇぇぇ・・・!ゆごぉぇっ!かはっ・・・!ゆがはっ・・・!やべぢぇぇ・・・ぼうやべぢぇよぉぉ・・・ゆびっ!」
餡子を吐き出し、抵抗できぬまま、芋虫のように身をよじるまりさ。
その時、一体の地域ゆっくりの振るった小石が、まりさの寒天の目に当たった。
「ゆぎっ!っぎゃああああああああああああああ!!までぃざのおべべっ!おべべがぁぁあああああっ!いだいいいいいいいいっ!いだいよぉぉぉっ!いだいいいいいいいいい!!」
「げらげら!いいきみだよ!もっとくるしんでね!」
「そろそろばっじさんをとりかえすよ!ぼうしごとゆっくりとってね!」

項垂れて苦しむまりさの帽子を引っぺがす地域ゆっくり達、バッジも、帽子もまりさは奪われていった。
「ゆぁぁ・・・までぃざのおぼうじざんがえじでぇぇ・・・ばっじざんがえじでぇぇ・・・!」
「うるさいよ!ばっじはもともとかいゆっくりのものだよ!」
「かってにじぶんのものにしないでねっ!このげすっ!」
「ゆげぇ!」

地域ゆっくり達から何とか飾りとバッジを取り返そうとするが、すぐに打ち倒されて地面に這いつくばるまりさ。
砂糖細工の髪を掴まれ、返しの付いたハリを差されると、そのまま繋がった糸を引っ張られ、引き立てられる。
「ゆ”げぇ・・・!ゆげほっ!ゆごほっ!ゆひゅー・・・!ゆひゅー・・・!で、でいぶ・・・でいぶぅぅぅ・・・!」
「さっさとすすむんだぜ!」

チラリとまりさが横を向き、目を見開いて動きが止まった。
・・・垣間見えた先にあったのは、金バッジを付けたモチモチの小麦粉の皮のまりさが、金バッジのれいむと寄り添い合ってすーりすーりをしていると言う光景だ。

まりさが口をあんぐりと開けて、砂糖水の涙が零れ落ちる。
「・・・どぼじでっ・・・!どぼじでえええええええええええ!!」

まりさの叫びが、辺りに木霊した。
私がそのまりさを見たのは、それが最後である。

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まりさはあの後、金バッジのゆっくりを殺したゲスとして地域ゆっくり達に引き立てられ、晒し「物」にされ、加工所に連れて行かれた。
下ったのは「処分」
餡子脳の奥にゆっくりは刻みこんでいる「かこじょはゆっくりできない」と。
暗い鉄箱の中でまりさは必死に考えた。何がいけなかったのか、どこでどう間違ったのか。
考えても答えはでない。

「れいむ・・・」

空虚な妄想で意識をつないだ。
金バッジをつけてれいむにあいにいくと、金バッジのまりさはれいむの番いになる事を辞退して自分が番いになる。
そして、かわいい子ゆっくり達が生まれ、あまあまをむーしゃむーしゃして、みんなで日向ぼっこをして、寄り添い合ってすーやすーやする。
ずっとゆっくりしていくのだ。ずっと。

眠る間もなく、鉄箱が開いた。

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

「いやだあああああああ!!だずげでっ!だずげでよおおおおおおお!!」
ベルトコンベアに載せられたまりさが叫ぶ。前方1m先ではローラーが他のゆっくり達を引き潰して破砕していた。
どんどんコンベアが自分を流していく。

「までぃざじにだぐないよ”お”お”お”っ!!もっどゆっぐりじだいよ”お”お”お”!!!」

底部を叩き潰され、動けなくなったまりさがひたすら縦にのーびのーびして泣き叫ぶ。

「までぃざはきんばっじになっだんだよっ!どぼじで!?どぼじでゆっぐりざぜでぐれないのっ!?」

機械的な鈍色の空間にまりさの叫びが反響する。

「までぃざはれいむどずっどいっじょにゆっぐりじでっ!がわいいおぢびぢゃんをうんでっ!いっじょにあまあまざんをむーじゃむーじゃじでっ!みんなでずーりずーりじでっ!おぼうじざんにのぜでいっばいあぞんでっ!みんなでっ!みんなでずっどいっじょにゆっぐりじだいよっ!」

・・・叫びは聞こえない。当り前だ。ここには引き潰されるゆっくり達以外、何もいないのだから。

「どぼじでっ!?どぼじでなのっ!までぃざがなんでゆっぐりぢじゃいげないのっ!?」

ローラーが近付いてくる。まりさのひとつ前にいたありすが、金切り声をあげながら引き潰される。

「どがいばっ!どがいばああああああ!!おねえざんっ!おねえざんだずげでええええええ!ぼうわるいごどじばぜんっ!おねえざんにずっぎりじだりじばぜんがらっ!だずげでっ!だずげっ・・・ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”っ!!どがいばっ!どがいばっ!どがいばあ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」

カスタードクリームがまりさの小麦粉の皮にこびり付いた。
「ゆ”あ”あ”あ”あ”あ”!?までぃざのあんよざんゆっぐりうごいでねっ!うごいでねええええええ!」
どんどんとゴウゴウと音を立ててうごくローラーが近付いてくる。

「までぃざはゆっぐりじだいだげなのにい”い”い”い”い”っ!!」

・・・ローラーが目の前に迫る
「いやだっ!いやだっ!いやだっ!いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだあ”あ”あ”あ”!!!!じにだぐないっ!!じにだぐないよお”お”お”お”お”!!!!」

ローラーがまりさの小麦粉の皮を巻き込み始めた。
ブチブチバチバチと音がして小麦粉の皮から餡子が破れ出る。

「あぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!!だずげでっ!だずげでえええええええええ!!"ばねづき"!にんげんざん!でいぶっ!ゆ”わ”あ” あ”あ”あ”あ”あ”!!ごわいっ!ごわいよっ!いだいよっ!ぐるじいよお”お”お”お”お”お”っ!!いだいよお”お”お”お”っ!!あぎゃあ”あ” あ”あ”!!!」

ジタバタと残った小麦粉の体を動かし、叫ぶ無情にもローラーは、まりさの体を引き潰していった。

「もっど・・・ゆっ・・・ぐり・・・じだがっ・・・!」

声がローラーに掻き消えて、まりさは物言わぬ饅頭となり果てた。

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私は時々考える。
世の中には、「悪」は本当に存在するのだろうか?
あのまりさのした事は善であっても、受け取ったれいむの方には「悪」にしか映らない。
この街と同じく、世界は灰色なのかもしれない。

しかし確かに言える事は、因果応報は必ずあると言う事だ。
あのまりさもその一例だろう。
そしていつかは羽付きも・・・
街が眺められる小高い丘で、夜風が吹いている。
街は煌びやかに、光っているだけだった。

それ以降、あのまりさは、街の何処にも、その姿を見たものは居ない。
最終更新:2010年10月09日 16:51
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