全否定(発散編) 39KB
虐待 制裁 家族崩壊 野良ゆ 都会 虐待人間 フェチあきは初心に戻った
***まえがき***
・フェチあきです
・善良なゆっくりが酷い目に遭います
・毎度のことながら、善良なゆっくりとは何なのか
・アシスタントさんはアルバイトです
・パロディタグは付けないけど、ちょっと福本作品からパロがあります
・パロってほどパロなのだろうか
・読む気を削ぐほどの障害にはならないと宣言したい
・お兄さんがちょっと、きもい、うざい、かも
・ちょっとと申したか
*********
街の外れに寂れた空き地がある。
四方がコンクリートの壁に囲まれているが、唯一の出入口として一箇所だけ解放されている門がある。 門と言っても、通行を妨げるもの
はほとんど何もない。 中途半端な高さの所に『私有地につき立ち入り禁止』と書かれたプレートが吊るされたチェーンがある程度だ。 人
間ならくぐるか跨ぐかであっさり中に入ることができる。 そして、ゆっくりも簡単にチェーンの下を潜り抜けることができる。 そんな事
実を証明するかのように、一匹のゆっくりまりさが、ぴょんぴょんと跳ねてチェーンの下を通行し、空き地の中へと入って行った。
陽が昇ってそれなりの時間が経つ頃だ。
そのゆっくりまりさは成体サイズで、そのサイズに見合うだけの”狩り”の成果をお帽子に入れて帰ってきたのである。
「ゆゆ! ぱちゅりー! ゆっくりかえってきたよ!」
「ゆっくりおかえりなさい!」
まりさは一匹のぱちゅりーに近付いて行った。
そう、この空き地には多数のゆっくりが住んでいる。 見れば、空き地の中はダンボールだらけだ。 もちろん、中にはゆっくりの家族が
たくさんいる。
なぜ人間の私有地でこんなことになっているかというと、単に人間が訪れないからであろう。 元々街の外れということもあり、人間は少
ないし、私有地ということもあって内部の状態を気にする人間もいない。 更に決定的なのが、近くに山があるということ。
理由は不明だが、ゆっくりは山から都会に下りてくることがある。
そして都会は当然の如くゆっくりできないので、山に帰ろうとするものが多い。 そんな中で、ふと、この空き地に気付くのだ。
仲間がこの空き地で非常にゆっくりしている、と。
一番の外敵である人間が来ないので、危険がほとんどないのだ。
更に、空き地にはたくさんの雑草が生えており、非常食には事欠かない。 いざとなれば、山の方まで食糧を取りに行くことができる。
もっと言うならば、近くにガードの甘いゴミ捨て場が複数あることも大きな要因であろう。
ある程度の広さもあり、百匹程度のゆっくりが住んでもまだまだ余裕がある。
最大の幸運は、空き地内に水が出る蛇口があることだろう。 蛇口を捻れるゆっくりに限りはあるが、無条件で水を手に入れることができ
るのだ。
広さもあり、優れた餌場も近く、水も容易に入手でき、何より人間が来ない。
ゆっくにとって、この場所は最高のゆっくりプレイスであった。
「むきゅ! まりさののるまさんはよゆうでたっせいよ! かぞくのぶんのごはんさんをもっていってね!」
「ゆっくりりかいしたよ! ゆっくりかえるよ!」
「まりさはすっごくゆっくりしてるわね!」
「ゆゆっ! それはぱちゅりーのおかげだよ!」
まりさが褒める、一匹のゆっくりぱちゅりー。
この広場にある群れの長のような存在で、食糧やゆん口の管理、狩りの場所の指示などを行っている。 知識も野良経験も豊富なため、群
れのブレインとして大活躍しているのだ。
いかに最高のゆっくりプレイスと言えど、このぱちゅりーの管理能力がなければ、これほどゆっくりはできなかっただろう。 群れに所属
するゆっくりたちは、だいたいがそう思っているし、実際にその通りである。
当のぱちゅりーは、褒められても苦笑いするだけであるが。
「そんなことはないとおもうけど……このすごいゆっくりぷれいすのおかげよ!」
「そうだね。 このゆっくりぷれいすはすごいよ……もっとはやくみつけていたら……」
「ゆっ。 そういえば、まりさのところのおちびちゃんは……」
「うん……どうして、むかしのまりさは、にんげんさんにかてるだなんておもってたんだろう……」
詳細は省くが、まりさ一家は山から下りてきて人間に戦いを挑んだのだ。
ゆっくりしている自分たちが、ゆっくりしていない人間に負けるはずがない、と。
結果的に、おちびちゃんが一匹やられただけで逃げられたのは、幸運としか言いようがないだろう。
まりさたちは人間の恐ろしさを餡子の脳に刻み込み、必死で山に逃げ帰ろうとした。
そして、その途中でこのゆっくりぷれいすを発見して、移住したのである。
ここにいるゆっくりたちは、ほどんどが人間の力を恐れており、”ゆっくりは人間に敵わない”ということを理解している。 それが、こ
のゆっくりぷれいすに住む条件の一つでもある。
「でも、いまのまりさはしあわせだよ。 ほんとうに、しあわせだよ」
「むきゅ。 まりさ……ゆっくりしていってね!」
「ゆん。 それじゃあまりさはかぞくのところにかえるよ! ぱちゅりーもゆっくりしていってね!」
二匹はにこにこと笑って、家へと帰っていく。
広いとは言っても、ぴょんぴょんと跳ねればそれほどの距離はない。 まりさは外にいるいくつかの家族に声をかけながら、自分の家へと
帰っていく。
何の変哲もない、普通のダンボールのおうちだ。 雨除のためにビニールシートがかけられており、きちんと重りの石も載っている。 こ
の群れでは標準的なおうちであるが、都会の野良ゆっくりとしては破格の品質と言えよう。
まりさは少しだけ自らのおうちの前で足を止め、何事かを考えた。
それは、幸せな家族のことを考えたのかもしれないし、今までの辛いゆん生を考えたのかもしれないし、これからの幸せなゆん生を考えた
のかもしれない。 あるいは、その全部かもいれないし、明確な何かがあったのではないかもしれない。
ただ、まりさは、一つだけ知っていることがある。
このおうちの中には、かけがえのない宝物があるということを。
「ゆゆっ? まりさ?」
ゆっくりの気配に気付いたのか、中から一匹の成体れいむが出てきた。 まりさのつがいである。
美れいむではないだろう。 どこにでもいる、薄汚れた野良のれいむだ。 つがいであるまりさから見ても、それほど美ゆっくりであると
は思わなかった。
ただ、この世で二つとない最高の伴侶であることは、全く疑っていない。 そして、それが全てであった。
無言でおうちと自分を眺めているまりさを見て、れいむは首を傾げた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
「かりでつかれたでしょう? おうちでゆっくりしようね。 おちびちゃんたちもまってるよ」
「……うん」
れいむは、続いて何も言わずに、たたまりさの側に寄り添って、すーりすーりした。
すると、何かが決壊したように、まりさの目から涙が溢れた。
「れいむぅ……しあわせだよぉぉおお……まりさは、しあわせだよおおおお……」
「れいむもだよ」
しばらく二人はすーりすーりをしてから、おうちの中に入った。
おうちの中では、赤ゆっくりがぐーすかと眠っている。 その横で、子ゆっくりが幸せそうに赤ゆっくりの寝顔を見ている。 赤ゆっくり
の数は全部で四匹、子ゆっくりは二匹。 親も合わせて八匹の家族だ。
入ってきた両親に気付いたのか、子ゆっくりたちが振り返る。
「おとーさんおかえりなさい!」
「おかえりなさい!」
「ただいま」
その大きな声の挨拶で、赤ゆっくりも目を覚ましたのか、身を震わせた。
すかさずまりさが目覚めの挨拶を叫ぶ。
「ゆゆっ。 おちびちゃん、ゆっくりおはよう!」
「「「「ゆっくりおはよう!」」」」
「おとーしゃん、おにゃかへったよー!」
「ゆっくりりかいしたよ! きょうはおてんきがいいから、みんなでおそとでたべようね!」
「ゆわーい! おしょと! おとしょと!」
喜ぶ赤ゆっくりを見てから、軽くれいむに視線を向ける。
育児を一手に担ってきたれいむは、大丈夫だ、と嬉しそうに頷いた。
子ゆっくりたちが赤ゆっくりに付き添って外まで連れて行くのを見ながら、まりさはおうちの奥に視線を向ける。
そこには、一つの小さなお帽子がある。 死んだおちびちゃんの形見だ。 幸運なことに死臭はない。
「きょうは、おちびちゃんもそとにでようね」
「まりさ……そうだね。 おそとでゆっくりさせてあげようね」
今は、確かに幸せだ。
だが、この幸せに至るまでに、かけがえのないものを失ってしまった。
ゆっくりにとって、死者を敬うという概念は、あまりない。 しかし、この満たされた環境で、まりさの一家は死者に思いを馳せた。
まりさはおちびちゃんの形見のお帽子を咥えると、れいむと共に外に出た。
外では、赤ゆっくりと子ゆっくりのおちびちゃんが楽しそうにはしゃいでいる。
ふと、まりさは空を見上げた。
「……」
日差しが熱を帯びている。
夏が近い。
けれど、不安はない。
最高のゆっくりぷれいすに、最高の宝物。
不安があるはずはなかった。
だが、当たり前であるが。
家畜にも劣る糞饅頭のゆっくりに、楽園などない。
神もない。
しあわせも、必要はない。
最高のゆっくりぷれいすなど、まやかしでしかないのである。
******
空き地に人間が入ってきた。
総勢は二十名くらいであろうか。
狩りも朝食も終わって、一家揃ってゆっくりしていたのが全てである。 例外はない。 空き地に住んでいるゆっくりの全てが、今はここ
にいる。
驚いたゆっくりたちは恐怖に震え、おうちの中に逃げ込んだ。
しかし、人間たちはゆっくりに構わず、何やら多数の機材を中に運び込み、黙々と設置している。
そんな慌ただしい、ゆっくりしていない雰囲気の中で、最後に一口が封鎖された。 前述のように、この空き地に出入口は一つしかない。
それが、封鎖された。 その意味にいち早く気付くのは長ぱちゅりーであるが、今はまだ入り口に気を配る余裕もなかった。
密室が完成したところで、一人の男がゆっくりたちの巣に近付いていくる。
白いTシャツに色褪せたジーンズと、かなりラフな格好をした男であった。 ちなみに、他の方々は全員黒スーツにサングラスという、大
変ゆっくりしていない出で立ちである。
「やあ。 長は誰かな」
「ぱ、ぽちゅりーがおさよ!」
人間の機嫌を損ねてはまずい、と長ぱちゅりーはすかさず応えた。
それに気分を良くしたのか、男は笑顔で頷く。
「じゃあ、群れのみんなを集めてくれるかな」
「に、にんげんさんは――――」
「あれ、逆らうの?」
「――――!!」
「ゆっくりしないであつめます!」
ぱちゅりーは体を震わせながら、大急ぎで招集命令をかける。
「全員だからねー。 おうちの中とかお口の中におちびちゃんとか隠してたらだめだからねー」
男はのんびりと声をかけて、黒服の男たちと何やら相談を始める。
ぱちゅりーは必死に全員に呼びかけ、連れてくるように呼びかける。
人間の機嫌を損ねてはいけない。
あの人間は、まずい。
本能的にぱちゅりーは気付いていた。
三十分ほどで全てのゆっくりが集まった。
”表向き”全てのゆっくりが。
それを確認して、男が口を開く。
「へぇ。 ワリとたくさんいるな」
「ぜんいんでひゃくじゅうろくです……」
「すげ」
呆れたように男は行って、黒服の一人に”ある物”を持ってくるように言う。
持ってきたものは、プレート付きのチェーンであった。
黒服はそれが全てのゆっくりに見えるように、掲げる。
「さてみんな。 ここは僕のゆっくりプレイスなんだけど、なんできみたちがいるんだい?」
「「「ゆん!?」」」
ほとんどのゆっくりたちは怒りを込めた表情で驚愕したが、声には出さなかった。
みんな人間の恐怖は知っているのだ。
ぱちゅりーも例に漏れず、後から来た人間の恥知らずなおうち宣言に、餡子を震わせた。
しかし、冷静にならなくてはいけない。
人間は確かに強いが、頭はあまり良くないことをぱちゅりーは知っている。
世の真理を、ぱちゅりーは下手に出ながら教えなくてはいけない。
屈辱だった。
こんな、当たり前のことを、媚びながら説明しなければいけないということが。
「あの、ね……その……おちついてきいてほしいのだけど……ここは、ぱちゅりーたちがさいしょにおうちせんげんしたの。 だから、ここ
はぱちゅりーたちのゆっくりぷれいすなのよ?」
「ふーん」
「わかってもらえるかしら?」
群れのゆっくりは不満そうにしながらも、当たり前のルールに頷いた。
男は無表情で黒服に視線を向ける。
「このプレート、君たちが最初に来たときにあったでしょ?」
「それは……」
黒服が持ってゆっくりたちに見せつけているのは、入り口にあったプレートだ。
『私有地につき立ち入り禁止』
それを、長ぱちゅりーに見せる。
「何て書いてあるか分かる?」
「むきゅ……わからないわ……」
「あっそ。 無能だね」
「むきゅ!?」
「ここは人間のゆっくりぷれいすだから入るな、って書いてあるんだよ」
「「「!?」」」
全てのゆっくりが驚愕の表情を浮かべる。
それが確かなら、ゆっくりたちは無断で他のゆっくりぷれいすに入ったことになる。
ぱちゅりーは無能と言われたことで激昂しかけたが、発言の内容に顔を青くした。
「で……でも……ぱ、ぱちゅりーたちがおうちせんげんをしたとき、だれもとめなかったわ……」
「当たり前だろう。 誰もいないんだから。 入るなって書いてあるのに入ったのはそっちだろう?」
「む、むきゅううううううううううううううううううう!」
ぱちゅりーは絶叫を上げた。
その叫びを聞いて、ゆっくりは身を固くした。
どういうことだ。
これは、どういうことなんだ。
ざわ、ざわ、と騒ぎ出すゆっくりたちを見ながら、男は言う。
「よって、君たちにはここから出て行ってもらう」
「「「ゆ、ゆううううう!?」」」
この、最高のゆっくりぷれいす。
ここから、出ていかなければ、いけない。
「おうぼうだよおおおおお! れいむたちがさきにおうちせんげんしたんだよおおおおおおおおおおお!」
一匹の独身れいむがついに怒りの咆哮を上げた。
恐怖など完全に振り切れた格好だ。
続いて他のゆっくりたちも抗議しようとするが、それを止めるように、素早く黒服が動いていた。
独身れいむのもみあげを掴むと、それを引き上げた。
「静粛に……! 静粛に……! このれいむは今、不当なおうち宣言を正当化しようとした……!」
「ゆぎいいいいい! やべろおおおお! はなぜえええええええ!」
「よって、制裁……っ! 制裁する……っ!」
「!?」
ゆっくりたちは思い出した。
人間たちの横暴さと、強さを。
黒服はもみあげを掴んだまま、地面に叩きつけた。
何度も、何度も。
もみあげが弱れば、次は掴んで地面に投げるといった形で。
「ゆげぇえ!」
「ゆがぁあああ!」
「や、べでぇえええ!」
「ぼ、ぼうゆるじでええええええ!」
「だ、だずげでええええええええええええええええええええ!」
助ける?
とんでもない!
とでも言わんばかりに、ゆっくりたちは震えながら固まっている。
おちびちゃんには、この凄惨な光景を見せないように、視界を防いでいるゆっくりもいる。
「ぼ、ぼっひょ……ゆっひゅり……しひゃきゃった……」
歯も抜け落ち、目玉も潰れ、餡子を地面に撒き散らしながら、独身れいむは死んだ。
黒服は息一つ切らせず、サングラス越しに睨みを効かせる。
「以後は静粛に話を聞くように……!」
「はい、ありがとうございます。 あのね。 じゃあ聞くけど、君たちさぁ。 ゴミ捨て場漁ってたでしょ? ね、ぱちゅりー?」
「むきゅっ! そ、それは……」
「はいアウトー。 この群れは駆除対象ね。 ゆっくりプレイスのおうち宣言とか関係ありませ~っん! みんな加工所行きで~っす!」
「む、むきゅううううううううううう!」
「「「かこうじょはいやああああああああああ!」」」
「嫌なの? 分かった。 じゃあ加工所行きは無しだ」
「「「へ?」」」
暴れて逃げ出したゆっくりたちを屈強な黒服たちが元の場所に戻しながら。
男があっさりと加工所行きをキャンセルしたことで、ゆっくりたちは落ち着きを取り出した。
「ただ、ここは本当に僕のゆっくりプレイスなんだよ。 そこをまず認めてね」
「むきゅうう……み、みとめます」
認められない、などと言えば即加工所行きなのは全員が分かっていた。
いや、加工所にまで行けるかも怪しい。
聞き分けがいいことを確認した男は機嫌良さそうに続ける。
「念のため、改めておうち宣言しておくね。 ここを僕のおうちにするよっ! ゆっくりごときにあげるものなんてなんにもないよ! ゆっ
ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
「……!!」
「どう? 似てた? 似てた?」
最高のゆっくりプレイスを理不尽に奪われた怒りで、ゆっくりたちは歯を噛み締めている。
誰も声には出さない。
しかし、表情が全てを物語っている。
「でもさ。 別にここに住んでてもいいよ。 僕のゆっくりプレイスだって分かってくれるならね」
「むきゅ……ほんと?」
我慢。
そう、我慢すれば、今の生活が続くのだ。
ぱちゅりーは、一瞬だけそう考えた。
だがそれは愚かと言えよう。
「ただし、対価を頂戴ね。 ゆっくりプレイスを借りる・借りたお返しだよ」
「……なにを、どのくらい?」
「そうだな。 おかざりと、もみあげもしくはおさげと、あんよ、後はおうちの中のもの全てだね。 おうちはそのままにしておいてあげる
よ。 あと、餌とかもかな。 子ゆっくり以下は、あんよは残してあげるよ。 そうしないと生きられないだろうし。 あ、すっきり機能も
ダメだな。 没収」
「むきょ? もういっかいいってくれるかしら」
「いや、言う必要はないでしょう。 今から取り立てるから」
「おかざり、とか、あんよ、とかいわなかった……?」
「うん」
「そ、そんなの――――」
「じゃあみんなで加工所に行く?」
「――――っ!」
「ちなみに、ここからは逃げられないからねー。 こわーい人間さんたちが待ってるからね」
総勢二十名の黒服が無言で睨みを利かせる。
大勢のゆっくりたちは、自分たちが何をされるのか、よく分かっていない。
ただ、とてもゆっくりできないことになるのは理解できた。
「じゃあ最初の家族から。 そこのれいむ。 おうちはどこだい?」
「ゆ? ゆゆ?」
「ほら、早くしないよ加工所だよ。 ちなみに、加工所に行けば間違いなく、ものすっごく辛くて、苦しんで死ぬからね」
「ゆゆうううううううううううううう!?」
「早く! おうち!」
「ゆ、ゆっくりりかいしましたああああああああああ!」
「みんなも移動だよ! ほら、ついてきて!」
皆さん大移動。
やがて、一つのおうちを取り囲むこうに、ゆっくりと人間が集まった。
「ここです……」
れいむとありすの一家。
子れいむと子ありすが二匹ずつで、赤ゆっくりが全部で四匹。
総勢十匹の一家だ。
よくもまぁ、入るものだ、と大きなダンボールのおうちを見ながら男は手を叩く。
「じゃあまずはおうちの物から没収します」
黒服がダンボールを持ち上げ、傾ける。 すると、中の物が全て出てきた。
敷物にしている毛布や、備蓄の食糧、ペットボトルやおちびちゃんたちの遊び道具、宝物など、全てだ。
「ゴミがいっぱいあるねー。 それじゃあお願いします」
「ゆ、ゆううううう!? やめてねえええええええええ!?」
「しょれえええええ! れいみゅのたからもにょおおおおおおおおおおおお!」
「だめよおちびちゃん!?」
次々とゴミ袋に回収されていく自分たちの全てを見て、たまらず一匹の子れいむが飛び出した。
また赤ゆ言葉も抜けていない、子ゆっくりになりたてのれいむ。
まだ、人間の恐ろしさを完全に理解していなかったのだろう。
それが己の死因となった。
黒服が、小さなれいむを掴み上げる。
「静粛に……! このれいむは取り立てを拒否した……! よって連行……っ! 加工所行きだ……!」
慌てて親のありすが飛び出した。
「ゆ、ゆううううううう!? おねがいします! それだけは……! それだけはああああ!!」
「お前も加工所に行きたいのか……?」
「ゆ、ゆぐっ!?」
「大人のお前が取り立てを拒否するのなら、一家全員が加工所行きだ……!」
「そうだったね。 家族の大人が拒否するなら、全員加工所行きだ。 大人の判断を尊重するよ。 言っておくけど、望みは持たない方がい
いよ? 絶対に苦しんで後悔しながら死ぬから。 でも、きちんとこちらの要求に従うなら、命は助かるんだよ」
「ゆっ?」
「その子れいむを見捨てれば、一家の命は全部助かるんだよ、って話。 考えるまでもないでしょ?」
「……!? おきゃーしゃん!? おきゃーしゃん!?」
「ご、ごべんね……おちびちゃん……ごべんねぇえええ!」
「あやまるにゃ、このくそおやああああ! れいみゅをたずげろおおおおおおおお! はなぜくそじじいいいいいいい!」
「あ、ムカついたからそいつは制裁で」
「わかりました」
子れいむは加工所行きがキャンセルされ、地獄へ直行することになった。
黒服が子れいむの皮剥きを始める。
子れいむの生意気な口は十秒ともたず、許しと助けを乞う絶叫に変わった。
それをBGMに、男はにこやかに話す。
「さ、取り立てを再開しようか。 おっと、おうちはきちんとすっからかんになったねー。 あ、こっそり逃げようとした一家が入り口の方
で捕まってるね。 あーあ。 加工所行きだ。 まぁそれはともかく、次はお飾りだよ」
備蓄も、思い出の宝物も、全てを失ってしまった。
一家全員は涙を流しながら、言葉に従う。
死ぬよりは。
家族を助けるためには。
「自分でお飾りを取って、こっちに渡すんだよ」
「「「……!?」」」
認められない。
そんな屈辱は、認められない。
でも、しなければ死ぬ。
死ぬのだ。
「お飾りが取れないゆっくりは他のゆっくりに取ってもらってね。 まずは親が見本だよ。 れいむ。 ありすのカチューシャさんを取って
あげてね」
「ありずぅぅううう!」
「れいむ……おねがい……」
涙を流しながら、れいむは器用にもみあげと舌を使ってカチューシャを外す。
そして、それをありすの舌の上に載せる。
「ゆううううう……!」
カチューシャ。
産まれてからずっと大切にしてきた、命の化身。
嗚咽を漏らしながら、ありすは男にカチューシャを差し出す。
男はつまらなさそうに首を降った。
「あっさり渡すねー。 まぁ、賢いことは良いことだ」
「……」
「あのねー。 僕はそんな汚いカチューシャなんて触りたくないんだよ」
「ぎっ、ぎだないだどおおおお!? だれのぜいだああああああああああ!? だれがやらぜでるんだああああああああ!?」
「あ、拒否? 加工所行く? よし! じゃあ皆殺しだ!」
「ゆ、ぎぎぎぎぎいいいい! うぞです! ごべんんざい! ごべんんざああああいいいいい!」
「しょーがないな……でもさ、一言くらいあってもいいだろ?」
「ゆぐぐぐぐ」
「ほら、大人だろ? 群れのみんなにお手本を見せてあげなよ」
群れのみんなは、涙を浮かべていた。
あれは、僅かな時間の後の自分なのだから、と。
屈辱と、怒りと、悲しみと、恐怖と、全ての感情を飲み込んで、ありすは喉の奥から言葉を捻り出した。
「あ、ありずの……かちゅーしゃさんを……もらっでくだざいいい!」
「…………あっはっはっは! そこまで言うなら貰ってあげるよ! その小汚いカチューシャ! みんなも見たよね!? これがお手本だ
よ!? ちゃんとやらないと加工所行きだからね!?」
群れのゆっくりは、男の大爆笑を聞きながら、顔を白くした。
「じゃ、これ処分だから」
「……!?」
男はありすの目の前でカチューシャを粉々に破壊してゴミ箱に捨てた。
もうありすは何も感じなかった。
何も感じないようにと心を閉ざした。
家族を守るという使命以外、何も残っていないのだから。
「それじゃあみなさん! 取り立てしちゃってください!」
「了解です。 おい! 自分の巣のところに家族で行け……!」
のろのろとゆっくりたちは動き出す。
こうして、盛大に取り立ては始まった。
******
ここはどこだ?
最高のゆっくりプレイスではなかったのか。
まりさは、ひっくり返されたおうちを見ていた。
中から食糧と、ベッドと、トイレ、宝物が根こそぎ出てくる。
それを機械的に黒服はゴミ袋に入れて行く(※きちんと分別しています)。
ある一つのものに手を伸ばしたとき、まりさは思わず叫びだした。
「ぞれはあああああああああああああああああああああ!」
あまりの叫び声に、周囲のゆっくりと黒服が振り向く。
そして、興味津々な顔をして、男がやって来た。
「なんだいなんだい? おうちの物を没収中かい? 何か凄い宝物でもあったのかい?」
全員の視線の先にあるものを、男は追った。
そこにあったのは、小さなまりさ種の帽子だ。
ひょいと男はそれをつまみ上げると、まりさは再び叫ぶ。
「それは! それだけはゆるじでくだざい!」
「何これ?」
「しんじゃったおちびちゃんの、かたみなんです!」
「あ、そ。 なんじゃそれ。 期待して損した」
「まっで! まっでええええ! まりさのせいです! まりさのせいでおちびちゃんがゆっくりしちゃったんでううう! だから、おちびち
ゃんのおぼうしだけはっ! それだけはまりさがまもらないと……!」
「いや、もうバラバラにして捨てたから」
土下座するように叫んでいたまりさが顔を上げる。
視線の先には、残骸とも言えないようなボロが、地面に落ちていた。
まりさの顔から全てが消える。
「なんて、嘘だよ」
そう言って男は手のひらの上にある、小さなお帽子を見せた。
まりさは全身から安堵の汗を吹き出し、身を震わせた。
「事情を聞かせてくれるかい?」
男は優しく微笑んで尋ねた。
まりさは震えながら、口を動かす。
「ま、まりさがとかいにきて……にんげんさんにひどいこといっちゃったんです……そしたらにんげんさんはおこって……まりさはたたかっ
たけど、ぜんぜんかてなくて……にげたくてもにげられなくて……でも、おちびちゃんが……おちびちゃんがたすけてくれたんです」
「ほお?」
「おちびちゃんがにんげんさんのきをひいてくれて……そのあいだに、ゆっくりしかとおれないみちをさがしてにげたんです……」
「んん? 罵詈雑言でも吐いたのかな。 そりゃ、怒ってそっちに注意が行くか」
「おちびちゃんはそのとき、おぼうしをまりさにわたしたんです。 じぶんだとおもって、だいじにしてくれって……」
「すげぇ子ゆっくりだな。 大人が助けられてちゃ世話ねーな。 お前、それで自分の子どもを見捨てたの?」
「ゆ……! でも、それしかほうほうは……っ!」
「人間にケンカ売ったお前が悪いんだろ」
「だからっ! だから、まりさは、おちびちゃんのおぼうしだけはまもらないと……!」
男は呆れたように息をつくが、ゆっくりの反応は違った。
周囲のゆっくり――まりさの家族だけに留まらない――は、涙を浮かべて尊敬の眼差しを送っていた。
男は舌打ちして、持っていた小さなお帽子をまりさのおさげに渡す。
「にんげんさん……?」
「ほら、そのお飾りを人間にきちんと渡しなさい。 ”お手本通り”に」
「な、なにを……!?」
「例外なんてあるわけないだろ。 それもバラバラだよ」
「そんな、そんなあああああ!? にんげんさん、そんなのってないよ!? ひどいよおおお!?」
「いや、あのな。 お前の話は感動する話じゃなくて、単にお前が無能で家族を犠牲にしたってだけだろ」
「ゆ……!? でも、それは!?」
「あーどうでもいい。 いーから。 そういうの求めてないから。 拒否なら、一家全員加工所行き」
「ぞんなああ……!?」
「まりさ」
れいむだった。
れいむはまりさに寄り添うように触れた。
まりさは振り返る。
れいむも、おちびちゃんも、まりさの視界に入る。
みんな、一つの意志を示していた。
「にんげんさん。 れいむたちはとりたてをきょひするよ。 みんなでかこうじょにいくよ」
「れいむ……っ!?」
「おとーしゃん! みんな、みんな、だいじょうぶだよ!」
「おちびちゃんたち……っ!?」
「にんげんさん。 ゆっくりには、いのちよりだいじなものがあるんだよ。 にんげんさんにはわからないかもしれないけど」
「ん? ああ、取り立て拒否? 加工所行きでいいの?」
「か、こうじょなんてこわくにゃいよ!」
「みんな……! まりさたちには、ゆずれないものがあるんだよ! まりさたちはかこうじょにいくよ!」
「了解。 おーい。 こっちお願いします」
まりさ一家はみんなで寄り添い合って、男に澱みのない視線を向けた。
それは悟りとも言うべきだろうか。
強い意志を、表している。
男はそれを見ずに、周りに声を呼びかけていたが。
黒服たちが続々と機器を運んでくる。
「いやー。 何気に初の加工所行き選択だな。 まりさくん。 君の判断に心を打たれたよ。 特別に、君の心変わりを許そう」
「……ゆ?」
「なに。 その形見のお帽子を差し出すなら、加工所行きをキャンセルさせてあげるよ」
「そんなことはないよ。 ぜったいに」
「まぁ別にいいけど。 じゃあ、その形見のお帽子は最後だな」
「さいご……?」
何か準備を始める男たちに、一家は少しだけ不安そうに眉根を寄せる。
男は準備が完了したのを確認して、一家の方を見た。
「それじゃあ取り立てを始めます」
「「「!?」」」
一家が驚愕の表情を浮かべる。
周りで動向を見守っていたゆっくりたちも、同じだった。
ついでに男も目を丸くした。
「へ? 何を驚いてるの?」
「だ、だって。 とりたてをするか、かこうじょにいくかって!?」
「言ってないよそんなこと! 取り立てを拒否したら加工所行きってだけだよ!」
「おなじでしょ!?」
「同じじゃないよ! 取り立てをしてから加工所行きってことだよ!」
「「「「「!?」」」」」
全てのゆっくりが固まった。
まさか理解してなかったのか、と男は驚いた。
「だってそうでしょ? 君たちは好き勝手このゆっくりプレイスを使ったんだよ? 水も勝手に使ってるし。 その分の取り立てをしないと
おかしいでしょ?」
「ゆ……?」
「じゃあまずはお飾りからだね。 ”お手本通り”にね」
「ゆ……そ、そんな。 この、おちびちゃんのおぼうしは……?」
「それは最後にしてあげるよ。 あ、それを先に差し出すなら加工所行きはキャンセルしてあげるよ。 取り立てだけで済ませてあげるよ。
第一、加工所に行ったらもっと酷い目にあうんだよ? 何を心配してるの?」
「や、やじゃ……よぉ……」
「なーんだ。 なんてことはない。 嫌なことを先延ばしにしただけか。 それじゃあ強制取り立てを行いまーす」
「ゆ、ゆあああああああ!」
まずは一家を全て確保。
キャスター付きの透明な箱の中に入れる。
「やっぱりあんよから行こう。 どうせ加工所行きだから、子ゆっくり以下は見逃すという温情はなしね」
男は適当に子ゆっくりと赤ゆっくりを手に取る。
すぐ近くに、熱せられた鉄板が用意されている。
バーベキューセットのような、移動式の機器だ。
「やべでえええええええ! はなじでえええええええええええ!」
「だ、だじゅげでええええええ!」
「はっはっは。 ケツがブリンブリン動いてて気持ち悪いなこれ! いーよいーよ。 思う存分動かせよ! 今からあんよが動かなくなるん
だからねー!」
「お、おちびちゃああああああああああああん!」
「助けて欲しかったら、その形見のお帽子を差し出してね。 そしたら赤ゆっくりと子ゆっくりは免除だから」
「おどーしゃん! おどーしゃあああん!」
「はいドン!!」
じゅっ
赤ゆっくりと子ゆっくりのあんよが鉄板に触れる。
耐熱性に優れた謎の手袋をした男は、手でじっくりとゆっくりを押さえつける。
「ゆ、ゆぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「あぢゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「お、おちびちゃあああああん!」
「たじゅげでええええ!」
「おどうじゃん! おどうじゃああああああああああああん!」
「いやじゃああああああああああああ! あんよがああああああああああああ! あんよがあああああああああああああああああ!」
結論から先に言うなら、まりさはおちびちゃんの形見のお帽子を差し出さなかった。
涙を呑んでプライドを守った。
どれだけおちびちゃんが焼かれようとも。
「ゆへぇ……あんよが……うごかにゃいよ……」
「どぼじで……たすけてくれないの……?」
「ごべんねえええええええ! おちびちゃんごべんねええええええええええ!」
「あんだけ覚悟があるとか言っといてこれかよ! それじゃあガンガン行くよおおおおおお!」
男は子ゆっくりを一匹だけ残すようにして、残りのちびたちを鉄板の上に乗せた。
もう男には未来が見えていた。
この、まりさというゆっくりがどういうゆっくりなのか、分かっていたのだ。
「あぎゃあやややああああああああああああ!」
「あじゅうううううううううううううううううううううううううう!」
「ゆきょ!? よきゅゆdfさゆいfyすあああああああああああああ!!」
しばらく経って。
「はい、完了」
「「「「……」」」」
焼かれた方はもう言葉もなかった。
涙を浮かべる親ゆっくりと、子ゆっくり。
最後に残った一匹の子ゆっくり――子まりさ――は、次は自分の番かと身を固くした。
この子ゆっくりの心中を覗くことは、あえてしない。
本来ならば焼かれずに済んだはずなのを悔いて、親を責めているのか。
あるいはプライドに殉じるのか。
それらを紐解き、目の前に晒すのは無粋といえるからだ。
そして、意味もない。
次の生贄は、子ゆっくりではなかった。
「次はお母さんれいむだよ!」
「かくごはできてるよ……!」
「だよねぇ! 本来ならあんよは無事なはずのおちびちゃんを犠牲にしちゃったんだから、それしかないよねええええ!?」
「まりさ、だいじょうぶだからね!」
「れいむ。 まりさもかくごはできてるよ」
「まりさ……ゆっくりしてってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「ほい、それじゃあスタート」
れいむが鉄板の上に乗る。
熱い。
痛い。
熱せられた鉄板の上に寝そべったことはあるのか?
それがどれほどの痛みなのか分かるだろうか。
きっと、分かる人は少ない。
痛い。
熱い。
痛い。
失われていく。
全部、失われていく。
覚悟?
覚悟ってなんだ?
「あぢゅいいいいいいいいいいいいいいいいい! ゆぎゃあああああああああああああああ!」
「れ、れいむ……?」
「他のゆっくり家族はみんな足焼きのステップまで進んでないから分からないと思うけど、これめっちゃキツイからね」
「あ、ぎゅぼ! あ、あ、あ、あああああああああああああああああああああああ!」
「あー。 他のみなさん。 取り立てを拒否しても同じですからねー。 むしろおちびちゃんも酷い目にあって可哀想です。 しかも後で加
工所で苦しんで死ぬんですよー? わかるー? はっきり言って、取り立て拒否とかバカのすることですよー!」
「ああああああああああああああああああああ! まりざああああああああああああああああ! たづげでええええええ! だずげでえええ
ええええええ!」
「子ゆっくりと赤ゆっくりは安心してね! 取り立てさえ拒否しなければ、大丈夫ですよ! ほら、見てよ! あれだけ『かくごはできてる
ぅ~』とか言ってた大の大人が、あんだけ惨めに騒いでるんだよ? おちびちゃんが大事な大人はゆっくり理解してね!」
「たずげでえええええええええええ! たずげでえええええええ! まりざああああああああああ! いやだ! しにたくないいいいいいい
いいいい!」
終了。
足をこんがりと焼かれたれいむが透明な箱に戻される。
目の焦点は合わず、びくっ、びくっと痙攣している。
まりさは恐る恐る声をかけた。
「れいむ……?」
「ま、まりさ……」
「はい、次はお父さんまりさの番ですよ」
「い、いやだ……」
「へ?」
「いやだよ……まりさはいやだよ……いたいのはいやだよ! ぴょんぴょんできなくなるなんていやだよおおおお!」
「まりざああああああああああああああ!? ふざけるなあああああああああああああああ!?」
「いやぢゃああああああああああああああああああ!」
「うわ醜悪。 予想通りとはいえ、こりゃ酷いわ」
男はぽい、と鉄板の上にまりさを乗せる。
「ゆぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「やっすいプライドにしがみついて家族を守るフリ。 ほんとは痛い目にあいたくない。 自分が悲劇のヒーローにでもなったつもりなんだ
ろうか」
「あぢゅっ! あぢゅっ! これめっちゃあぢゅい!」
「お前、ただのゲスまりさだよ。 環境が良くて本性を見せる機会がなくなっただけだって」
「あげますうううううううううううううううううううううううううううううううううううううう! おちびちゃんのおぼうしをあげますうう
うううううううううううううううう! だから、だずげでええええええええええええええええええええ!」
「はっはっはっは。 まりさ一家のみなさーん。 聞きました? みなさんが信じて足を犠牲にしたお父さんだけど、こんなこと言ってるよ
おおお?」
呆然と。
呆然と、一家は泣き喚く父親を見上げていた。
なんだこれは。
こんなものを自分たちは信じていたのか。
こんなもののために、あんよを焼かれたのか。
「ふじゃけるにゃああああああああああ!」
「しにぇえええ! げすなおやはしにぇえええええええ!」
「まりさが、こんなゲスだったなんて……うらぎったなああああああああああ!」
実は、まりさはゲスではない。
善良と言うほどでもない。
ゆっくりは、ゆっくりだ。
普通のゆっくりは足焼きに耐えられない。
本当にただ、それだけである。
男は分かっていて煽っている。
「おぼうし! おぼうしあげます! いやあああ! さしあげまずううう! もらっでくだざいいいいいいいいいいいいい!」
「みんな聞いた!? 助けてあげたいと思う人ー?」
皆無。
全てのゆっくりが、白眼視を向けている。
このまりさは失った。
全てを失った。
富も名誉も家族も、全て。
「はいしゅーりょー」
足がこんがり焼けたまりさを透明な箱に戻す。
殺意を向けて飛びかかったのは、唯一無事な子まりさだ。
しかし、体格差があって、どれだけ当たってもダメージを与えられない。
「しねえええええええええええ! いもうとたちをきずつけたげすはしねえええええええええええ!」
「ゆゆ!? どぼじでこんなごどいうのおおおおお!? れいむ! れいむもなんとかいってね!」
「しね」
「……ゆ?」
「げすは、しね」
「ゆゆっ? れいむ……?」
「はいはい。 お取り込み中の所悪いんだけど、約束のお帽子を貰うよ。 ほーらビーリビーリ!」
みんなが黙って、お帽子が破れるのを見ていた。
自分を犠牲にして守ったはずのものが、無残に破壊されていくところを。
子ゆっくり以下は涙を流し、全てを見送る。
親ゆっくりは、ただ痛い目にあいたくないとだけ考えていた。
「ということで加工所行きはキャンセル! そこのおちびちゃんは足焼き免除! もう焼いちゃったものは仕方ない! ところで、これから
生きていくために狩りができるのは、この無事なおちびちゃんだけだねー。 じゃあアドバイスだよ! 餌は絶対に足りないから、誰を生か
すのかよぉぉおおく考えて餌を配分した方がいいよ」
「ゆっくりりかいしたよ……」
「はい、じゃあきちんとお飾りを渡してねー」
これから通常通りの取り立てが行われた。
みんな、素直に従った。
去勢ですら、わずかに抵抗しただけだった。
この一家の動向を見ていたゆっくりも同じだった。
逆らっても無駄だと、ようやく真に悟ったのである。
******
長ぱちゅりーは、お飾り没収、もみあげ破壊、足焼きまで終えていた。
つがいのゆっくりまりさも同様である。
ぱちゅりー種は髪が長いだけに、もみあげを根元から引っこ抜かれた格好は大層奇妙なものであった。 足焼きをされていないおちびちゃ
んも同様。
つがいのまりさは三つ編みがなく、遠くから見るとゆっくりありすとの違いが分からないかもしれない。
「や、長」
男はまるで十年来の友に声をかけるかのように、長ぱちゅりーに声をかけた。
ぱちゅりーもまりさも、足焼きのときは泣き叫んだ。 それはもう、醜態を見せつけた。
それでも、まだ動く子ゆっくりたちは沈痛な面持ちで、愛情を込めてすーりすーりを親にしている。
元々出産が困難なぱちゅりー種の一家であるから、総員は少ない。
子ゆっくりサイズのぱちゅりーとまりさが一匹ずついるだけだ。
「次は去勢だよ。 これは子ゆっくりもだからね」
「……まって、ください」
「拒否にする? 子ゆっくりも焼いちゃうよー? うん、こっちの方が目の前の驚異が見えていいね」
「…………おねがいします」
「まずは、まりさちゃんからいこうねっ!」
「ゆ……!」
男は成体まりさを取り上げてぶるぶると揺する。
すると、当然のようにまりさのぺにぺにが大きくなった。
様々な感情に襲われながら、まりさは努めて無表情でいることを心がけていた。
「もげっ」
「――――!?」
男はまりさのぺにぺにを根元から引きちぎった。
そしてすかさず用意してあったハンダごてを患部に当てる。
「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「あ、これ、足焼きより辛いかもね」
「ゆっ、ゆっ、ゆあああ……」
患部が焼けて固まり、もう餡子が漏れ出すこともない。
「これで胎生出産は無理だな。 あとは、額を」
「ゆ、お、お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ハンダごてで真っ黒になるように額を焼いていく。
「これで、茎さんは生えないね!」
ぽい、とまりさを地面に捨てる。
あんよと額を真っ黒にした不気味な饅頭は、ころころと転がった。
「次、長ぱちゅりーね」
「い、いやあ……」
「拒否?」
「……」
「いーよいーよ。 好きなこと叫ぶくらい許してあげるよ! なんせ子孫を残せなくなるんだもんね! ぱちゅりー種にとって、子どもって
大切だよね? それが一生ダメになるってのはどんな気持ち? ねぇどんな気持ち?」
「いや、いやよ、いやああああああああああああああああ!」
「それじゃあスタート」
長ぱちゅりーを揺すってぺにぺにを大きくする。
「ちっちぇーぺにぺにだなこれ!」
「いやああ! やめて! みないでえええ!」
「みんな見てよこれ! 長のぺにぺに超ちっちぇー!」
男は長ぱちゅりーを持ってそこら中にぺにぺにを見せて回る。
例外なくゆっくりは顔を赤くして目を背けた。
男は知る由もないが、長ぱちゅりーは群れの中で最高の美ゆっくりだったのである。 頭も良くて優しくて、その上美ゆっくり。 誰もが
憧れる長だったのだ。
「じゃあ、もぐぜええええ!」
「む、きゃ」
簡単に取れる。
そして、クリームがこぼれ落ちないように仰向けにして、ハンダごてを当てる。
「むきょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「あー、患部がちっちぇからラクだこれ。 続いて額焼き」
「おぎょ、むぎょむぎょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
終わり。
処置を終えたぱちゅりーを、男は地面に置く。
「ぱちゅりー。 どう、感想は。 もう子どもは産めないよ。 できないよ」
「……」
「正直に言ってみな」
「ど、どぼじでええええ……どぼじでこんなごとにいいいいいいいいいいい! ゆうしゅうなぱちぇのいでんしが……もうのこせないなんて
……」
「あ、そんなこと言っちゃう?」
男はパンパンと手を叩いて、周囲の注目を集める。
そしてぱちゅりーを再び手に持ち、全てのゆっくりが見えるように、中央に歩いていく。
「はーい注目。 これ長ぱちゅりーでーす。 飾りなくても分かる? あ、分かるんだ。 へー。 はい、さっき長ぱちゅりーを去勢しまし
た。 つまり、子どもが産めないってことだね。 そのとき、ぱちゅりーは面白いことを言っていました。 こんな感じで『ゆうしゅうなぱ
ちぇのいでんしが……もうのこせないなんて……』」
大根役者も裸足で逃げ出すような声真似をして、男は言う。
それに対して、他のゆっくりたちはぱちゅりーの台詞を当然のものだと判断した。
男はそんな空気を感じたのか、むっとしたように声を張り上げる。
「おかしいよね!? この長ぱちゅりー無能だよね!?」
「む、むきゃ。 ぱちゅは、むのうじゃない!」
「そうだよ! おさはゆうしゅうっ! だよ!」
「そーだそーだ!」
「黙らっしゃい! じゃあ聞くけど、なんで君たちこんな目に遭ってるの?」
「「「ゆ?」」」
全てのゆっくりの動きが止まる。
「ここに入るなって書いてあるのが読めたら、君たちこんなことにならなかったよね!?」
「むきゅうううう!?」
「ぱちゅりー種のくせに字も読めないなんて、無能だよね?」
「ゆ……たしかに……」
「むきゃ、まりさああああ!?」
「そうそう! 今こんな目に遭ってるのは、この長ぱちゅりーのせいなんだぜっ!」
「ゆ……」
ざわ、ざわ、とゆっくりたちがし始める。
小さな声で内容も知れないそれは、一つの共通点を核に大きくなり始めた。
「そうだよね……おさのせいだよね……」
「よくみるとぜんぜんゆっくりしてないよね」
「ぺにぺにもちっさいしね……」
「お、おまえらあああああああああああ! い、いだいなけんじゃのぱちゅにむかってええええ!」
そんなぱちゅりーの激昂が鍵となってしまった。
反感を覚えた群れのゆっくりたちは声を大きくしていく。
「だまれむのう!」
「たんしょう!」
「おまえのせいだろおおお!」
あまりの反撃にぱちゅりーは唖然としてしまった。
なんだこれは。
「い、いままですごくゆっくりさせてあげたでしょおおお!?」
「だから? 確かにそうかもしれないけど、こうやって罰が下るのを確定させちゃったんだよ。 もうすぐ死ぬけどゆっくりさせてあげる、
ってことでしょ? そんなの簡単じゃーん。 越冬前にお腹空いてむーしゃむーしゃ……しあわせー! ってするようなもんだろ? お前の
やったことは、そういうこと」
「そ、そんなつもりは……」
「それにぃ。 今、これからゆっくりさせてあげなきゃ意味ないでしょ? 過去のゆっくりがどれだけ役に立つの? 昨日いっぱいむーしゃ
むーしゃできても、今日できなきゃ意味ないでしょ? りきゃいできりゅ?」
男の言い草は無茶苦茶なものであったが、ぱちゅりーをやり込めるには十分だったようだ。
周りのゆっくりもヒートアップして、ぱちゅりーへの罵倒を強め始めた。
ぱちゅりーは、男の理屈を受け入れて、もう考えることを止めた。
こいつらをどれだけゆっくりさせても、ゆっくりできなくなったらこうなるのだ。
男は反応のなくなったぱちゅりーを地面に下ろした。
そこに殺到するのは、処置を終えた子ゆっくりたち。
「せーさいするよ!」
「むのうなおさはせーさいだよ!」
「せーさい! せーさい!」
子ゆっくりと成体ゆっくりの差と言っても、ぱちゅりー種は弱い。
噛み付かれればすぐに皮は破け、クリームが流れ出す。
鬼気、いや、嬉々として自分を制裁するゆっくりたちを見て、ぱちゅりー種は最期に男に視線を向けた。
そして、長ぱちゅりーは答えを見た。
なぜ、こんな目に遭うのか。
なぜ、ゆっくりできないのか。
なぜ、こんな脆弱な生き物として生きなければいけないのか。
ぱちゅりーが手に入れた答えは、自分たちの全ての否定であった。
(収束編へ)
最終更新:2010年10月09日 20:14